JP7638559B2 - 自律協調制御システム、及び自律協調制御方法 - Google Patents

自律協調制御システム、及び自律協調制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、自律協調制御システム、及び自律協調制御方法に関する。
近年、世界中の多くの国々でマイクログリッドに対する関心が高まっている。マイクログリッドは、再生可能エネルギー発電機(例えば、太陽光発電機、風力発電機、及び地熱発電機)、バッテリ、及び電力負荷(例えば、一般家庭、工場、商業施設、EV(Electric Vehicle)の充電スタンド)などを含むスマートな電力システムである。
再生可能エネルギー発電機は、主にDC(Direct Current)電力を出力する。そのため、AC(Alternative current)バスを利用して発電機、バッテリ、及び電力負荷を接続するACグリッドでは、DCからACへ変換する際にエネルギー変換ロスが発生する上、ACバスの電圧位相と同期をとる必要がある。そのため、多くのマイクログリッドは、DCバスを利用して発電機、バッテリ、及び電力負荷を接続するDCグリッドを採用している(特許文献1及び非特許文献1を参照)。
再生可能エネルギー発電機からの電力供給は不安定であるため、多くのマイクログリッドは、コントローラによる中央制御、分散制御、又はそれらの組み合わせによって、DCバスに接続される発電機、バッテリ、及び電力負荷を制御し、DCバスの電圧を安定させようとする。また、コントローラは、電力負荷の消費電力が急増してDCバスの電圧が、ある下限レベルまで低下したときにDCバスを電力系統に接続する(非特許文献1を参照)。また、特許文献1には、DCバスと蓄電池との間に電圧変換部を設け、電圧変換部を制御して、DCバスの電圧が上昇して閾値以上になると充電動作を開始させ、閾値以下になると充電動作を停止させる方法が開示されている。
特開2014-128047号公報
Fahad Saleh Al-Ismail, "DC Microgrid Planning, Operation, and Control: A Comprehensive Review", IEEE Access, Volume 9, pp.36154-36172.
特許文献1及び非特許文献1に記載された様々なシステムのように複雑な制御を行うことによってDCバス電圧がある程度安定化されるとしても、突然の電力負荷の増減によってDCバス電圧が不安定になることもある。そのため、DCバスには、ある程度の電気的慣性力を持たせておくことが必要になる。電気的慣性力とは、電力負荷の大きさが突発的に変化して瞬時に大きな電力が必要となる又は余る場合に、バスが瞬間的に電力を生み出す又は吸収する能力を言う。
DCバスに電気的慣性力を持たせる1つの方法は、急に大きな電力が必要になった場合又は余ったときに備えて、DCバスにバッテリを直接装荷することであると本発明者は考えた。他の方法として、PV(Photovoltaic)デバイスを最大出力状態から敢えて外した状態で動作させておき、急に大きな電力が必要となったとき又は余ったときに、瞬時に最大出力状態での動作又は出力を更に絞った動作に移行させ、発電電力を増減させて疑似的に電気的慣性力を生み出す方法もあると考えられる。
特許文献1のシステムでは、蓄電池が電圧変換部を介してDCバスに接続されているため、電気的慣性力が効きにくくなり、相対的に電気的慣性力は小さくなるため、バッテリによる電圧変動の抑制効果は限定的となる。また、特許文献1及び非特許文献1のシステムでは、コントローラに入出力される制御信号の伝送遅延などがあるため、突然の電力負荷の増減に対応しきれずにDCバスの電圧が一時的に下限レベル未満に落ち込む又は上限レベルを超過するリスクがある。そのため、電力システムの安定動作を保証するには、そのような突発的な電力負荷の増減に対するDCバスの電圧変動を、より効果的に抑える工夫が必要である。
本発明の第1の態様によれば、電力負荷及び発電機が接続されたDCバスと、DCバスに直接的に接続された複数のバッテリユニットとを備える、自律協調制御システムが提供される。複数のバッテリユニットは、DCバス上に分散装荷され、各バッテリユニットの端子電圧は、DCバスの基準電圧と一致又は近似させる。
本発明の第2の態様によれば、電力負荷、発電機、及び複数のバッテリユニットが接続されたDCバスの電圧を電圧計によって計測することであって、複数のバッテリユニットは、DCバスに直接的に接続される形態でDCバス上に分散装荷され、各バッテリユニットの端子電圧は、DCバスの基準電圧に一致又は近似する、ことと、DCバスの電圧が、基準電圧を中心とする第1の電圧範囲内から、第1の電圧範囲の上限又は下限に達したとき、制御回路によって、DCバスを電力系統に接続し、電力系統によるアシストを得て動作するアシスト運転状態に切り替えることと、アシスト運転状態で、DCバスの電圧が、第1の電圧範囲内の特定範囲の境界に達したとき、制御回路によって、DCバスを電力系統から切断し、電力系統からのアシストなしに動作する自律運転動作に切り替えることと、を含み、自律運転動作では、DCバスに接続された発電機の少なくとも一部は、DCバスの電圧を監視し、事前設定された上限レベルを超える場合に発電又はDCバスへの電力供給を停止する自律動作を行う、自律協調制御方法が提供される。
本発明によれば、DCバスを利用した電力システムの安定性を向上できる。
本発明の実施形態に係る自律協調制御システムの例を模式的に示した図である。 本発明の実施形態に係るDCバスの例を模式的に示した図である。 本発明の実施形態に係るDCバスの等価回路の例を模式的に示した図である。 電気的慣性力の減衰特性及び電力線の太さと減衰の速さとの関係について説明するための図である。 DCバス上に装荷されるバッテリユニットの数と、DCバス上の各位置における電気的慣性力の強さとの関係について説明するための図である。 図8に示したN=1~5のグラフに対応するバッテリユニットの配置を模式的に示した図である。 本発明の実施形態に係るスイッチの構造例を模式的に示したブロック図である。 本発明の実施形態に係る自律協調制御方法の例を示した図である。 自律協調制御システムのシミュレーションモデルを示した図である。 シミュレーション結果を示した図である。 本発明の実施形態に係るDCバスの第1の安定性条件を示した図である。 本発明の実施形態に係るDCバスの第2の安定性条件を示した図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することがある。
(1.自律協調制御システム)
まず、本発明の実施形態に係る自律協調制御システムについて説明する。図1は、自律協調制御システム10を模式的に示した図である。図1に示した自律協調制御システム10は、本発明の実施形態に係る自律協調制御システムの一例であり、本発明の実施形態に係る技術の適用範囲はこの例に限定されない。
自律協調制御システム10は、1つ以上の電力負荷及び1つ以上の発電機が接続されたDCバス11と、DCバス11に直接的に接続された複数のバッテリユニットとを含む。発電機は、太陽光発電機(PVデバイスなど)、風力発電機、及び地熱発電機などの再生可能エネルギー発電機である。電力負荷は、一般家庭、工場、商業施設、及びEVの充電スタンドなどの電力消費設備である。
図1には、DCバス11に接続される複数のバッテリユニットの例として、3つのバッテリユニット12a、13a、14aが模式的に記載されている。また、図1には、1つ以上の発電機の例として発電機12b、13b、14bが模式的に記載され、1つ以上の電力負荷の例として電力負荷12c、13c、14cが模式的に記載されている。バッテリユニット、発電機、及び電力負荷の数はこの例に限定されず、それぞれ3以外であってよい。以下、自律協調制御システム10の要素及び動作について具体的に説明する。
(1-1.DCバス及びバッテリユニットについて)
DCバス11は、図2に示すように、少なくとも2本の電力線11a、11bで構成される。図2は、本発明の実施形態に係るDCバスの例を模式的に示した図である。例えば、DCバス11は、5.5SQの2コアCVケーブル(Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath cable)、即ち、コアの断面積が約5.5mmの2コアCVケーブルで構成されうる。DCバス11の電圧は、後述する自律協調制御システム10内の制御機構によって、規定の電圧レベル(基準電圧)を中心とする予め設定された電圧範囲(許容電圧範囲)内に維持される。基準電圧は、例えば、400Vに設定されうる。
図2に示すように、DCバス11の電力線11a、11bには、各バッテリユニットが直接的に接続される。また、各バッテリユニットは、その端子電圧がDCバス11の基準電圧にほぼ等しくなるように構成される。例えば、3.2Vのバッテリセルを60個直列接続したバッテリを2つ用意し、それらを接続することで384V(約400V)の端子電圧を有する1つのバッテリユニットが得られる。
各バッテリユニットのバッテリとしては、リチウム鉄リン酸塩(LiFePO)バッテリなどのリチウムイオンバッテリ、又は鉛酸バッテリなどが好適に利用されうる。リチウムイオンバッテリ及び鉛酸バッテリは、電力負荷が重くなるにつれて端子電圧が単調に低下していく特性(所謂、垂下特性)を有する。また、蓄電率(SOC(State Of Charge))がある一定の範囲内にあるとき、端子電圧がSOCに対してほぼ直線的に変化する特性(図2のグラフ21aを参照)を有する。これらの特性により、負荷の変動に対して安定な動作が得られると共に、端子電圧から蓄電率を容易に推定することができる。
複数のバッテリユニットは、DCバス11の電気的慣性力を高めるために、DCバス11上に分散装荷される。電気的慣性力は、電力負荷による電力消費量の急激な増加及び発電機による電力供給量の急激な増加に対するDCバス11の電圧の変化しにくさを表す。例えば、電力負荷に1Aの突発的な電流変動があったときにDCバス11の電圧がΔV1変化するDCバス11の電気的慣性力f1は、同一条件下においてDCバス11の電圧がΔV2(ΔV1>ΔV2)変化するDCバス11の電気的慣性力f2より小さい。このことは、電気的慣性力f2を有するDCバス11の方が、電気的慣性力f1を有するDCバス11よりも安定であることを意味する。
(1-2.電気的慣性力について)
ここで、図3を参照しながら、DCバス11の電気的慣性力の源について、さらに説明する。図3は、バッテリユニット(蓄電池)を分散装荷したDCバスの等価回路の例を模式的に示した図である。
図3の例は、2つのバッテリユニット31、32が接続されたDCバス11の等価回路を模式的に表したものである。バッテリユニット31は、バッテリ容量31a及び内部抵抗31bで表現されている。同様に、バッテリユニット32は、バッテリ容量32a及び内部抵抗32bで表現されている。電力線11aのインダクタンス及びレジスタンスは、分布インダクタ33a、33b及び分布抵抗34a、34bでそれぞれ表現されている。同様に、電力線11bのインダクタンス及びレジスタンスは、分布インダクタ33c、33d及び分布抵抗34c、34dでそれぞれ表現されている。電力線11a、11b間の容量は、線間容量35で表現されている。
バッテリユニット31、32の端子電圧がDCバス11の基準電圧に等しい場合、バッテリユニット31、32の内部抵抗31b、32bが小さいほど電気的慣性力が大きく、逆に内部抵抗31b、32bが大きいと電気的慣性力は小さくなる。DCバス11の電気的慣性力は、電力線11a、11bの分布抵抗34a、34b、34c、34dにも関係する。例えば、電力負荷の接続点と、バッテリユニット31、32の接続点との間の距離が短い(即ち、電力線11a、11bの抵抗が小さい)ほど電気的慣性力が大きくなる。
電力負荷は、DCバス11上の任意の地点(場所)に接続される可能性があり、バッテリユニットを1カ所に集中装荷すると、バッテリユニットから遠い電力負荷での消費電力の急増に対して電気的慣性力が十分に働かない。一方、複数のバッテリユニットをDCバス11上の複数箇所に分散装荷すれば、DCバス上のどの地点に装荷されている電力負荷において消費電力が急増しても、期待される電気的慣性力が働き、DCバス11の急激な電圧低下を抑制することができる。同様に、PVなどの再生可能エネルギー発電機もDCバス上の任意の地点に接続される可能性があるが、どの発電機からの電力供給が急増した場合でも、DCバス11上にバッテリユニットが分散装荷されていれば、電気的慣性力によってDCバス11の急激な電圧上昇を抑制することができる。
上記の理由から、本発明の実施形態では、複数のバッテリユニットをDCバス11上に分散装荷する構成を採用する。バッテリユニットの装荷方法(数及び配置)は、必要とされる電気的慣性力の強さに基づいて決定されうる。例えば、バッテリユニットの装荷方法は、想定される環境において、必要に応じてDCバス11を電力系統に接続する制御を併用することにより、DCバス11の電圧が常に許容電圧範囲内に維持されるように、シミュレーションなどによって決定されうる。
上記のように、DCバス11を安定稼働させる上で電気的慣性力は重要である。また、電力負荷の消費電力及び/又はPVなどの発電機の発電電力の急激な変動によるDCバス11の電圧変動を抑制する作用に加え、より長期の電圧変動を抑制することもDCバス11の安定稼働のために重要である。電気的慣性力を持続させることのできる時間は、バッテリユニット31、32のバッテリ容量31a、32aが大きいほど長く、バッテリ容量31a、32aが小さいと短くなる。即ち、各バッテリユニットの容量が大きいほど、電力消費量及び発電量の変動に対するDCバス11の電圧変動を長期にわたって抑制することが可能となる。
以上のことから、電気的慣性力の大きさはバッテリユニットなどの電気抵抗によって決まり、電気的慣性力の持続時間はバッテリ容量によって決まると言える。
上述したように、複数のバッテリユニットをDCバス11上に分散装荷することで、DCバス11上のどの場所においても電気的慣性力が効果的に働くようになり、DCバス11を安定稼働させることが可能になる。加えて、各バッテリユニットの容量を大きくすることで慣性持続時間が長くなり、DCバス11をより長期間安定稼働させることに寄与する。なお、特許文献1及び非特許文献1に記載されたシステムのように、バッテリがDC/DCコンバータなどを介してDCバスに間接的に接続されている場合にはバッテリの電気的慣性力が効きにくくなり、相対的に電気的慣性力は小さくなるため、バッテリによる電圧変動の抑制効果は限定的となる。
ここで、上述した電気的慣性力について、その特性をより良く理解できるように、さらに説明を追加する。
まず、上述した電気的慣性力について直感的に理解しやすいように、一旦DCバス上の議論から離れ、既存の電力網を例に、電気的「慣性力」についての簡単な考察を行う。
既存の電力網における慣性力の源は、電力網の最上流にある発電所である。例えば、火力発電所の場合、大型の蒸気タービンを回転させることによって発電機を回している。タービンは、重たい回転体が高速で回転することで大きな慣性モーメントを有している。そのため、突然大きな電力負荷がかかってタービンの回転を減速させる力が働いても、大きな慣性モーメントによって回転数をあまり落とさずに回転を続けることができる。タービンの回転体の慣性モーメントをM、回転角速度をωとすると、このタービンの回転運動のエネルギーKは、以下の式(数1)で与えられる。
Figure 0007638559000001
発電所では、上記のタービンの回転運動のエネルギーを発電機により電気エネルギーに変換し、途中何箇所かの変電所で降圧されて最終的に電力負荷まで届けられる。ここで、基線電圧がVの送電線に突然電力負荷が接続されて、I(A)の電流が取り出されるケースについて考える。このケースにおいて、電力負荷で消費される電力Pは、P=VIである。この電力Pは、途中の送電線での送電損失及び変電所での電圧変換損失を考慮しなければ、エネルギー保存則により、発電所のタービンの回転エネルギーの時間変化に等しいはずである。従って、電力Pと、タービンの回転体が有する慣性モーメントMとの間には、以下の関係(数2)がある。
Figure 0007638559000002
上記の関係から、接続された電力負荷によってタービンの回転速度を減速させようとする力に抗して働く慣性力の強さ(慣性モーメントM)は、接続された電力負荷によって取り出せる電力Pに比例することが分かる。このことから、電力線に接続された電力負荷によって、接続時に瞬発的に取り出せる最大電力Pmaxを用いて電気的慣性力の特性を評価できることが分かる。これにならい、以下では、Pmaxを用いてDCバス上の電気的慣性力の特性について、さらに考察する。
まず、DCバスに1つのバッテリユニットが直接装荷され、バッテリユニットが電力線と一体になっているDCバスを考える。DCバスの基準電圧をV(無負荷状態でのバッテリユニットの端子電圧も等しくVである)と表記し、バッテリユニットの内部抵抗をrと表記すると、DCバス上のある位置に1つの電力負荷を接続した場合、Pmaxは、以下の式(数3)で与えられる。式中のr’は、バッテリユニットから電力負荷の接続点までの電力線による電気抵抗を表す。
Figure 0007638559000003
電力線による電気抵抗r’はバッテリユニットから電力負荷の接続点までの距離に依存するため、電気的慣性力は、DCバス上の位置によって異なることが分かる。また、上記の式(数3)から、バッテリユニットから遠ざかるほど電気的慣性力が弱まることが分かる。例えば、V=400(V)、r=1(Ω)、r’=1(Ω)の場合にはPmax=2×10(W)となり、r’=4(Ω)の場合にはPmax=0.8×10(W)となる。また、電力線による電気抵抗r’は、電力線の芯線断面積にも依存する。芯線断面積が大きいほど単位長さ当たりの電気抵抗drは小さくなるため、芯線断面積が大きいCVケーブルを利用することで、バッテリユニットから遠い位置まで電気的慣性力を作用させることができる。この点に関し、芯線断面積の違いによるPmaxの特性変化を図4に示した。
図4のグラフは、DCバスの全長を1km、基準電圧Vを400(V)、バッテリユニットの内部抵抗を0.1(Ω)とし、1つのバッテリユニットをDCバス上の一端(0mの位置)に配置するという条件で、Pmaxの特性変化を比較したものである。比較したCVケーブルの芯線断面積は、8SQ(2×dr=4.34Ω/km)、22SQ(2×dr=1.08Ω/km)、60SQ(2×dr=0.397Ω/km)、200SQ(2×dr=0.121Ω/km)である。
いずれのグラフもバッテリユニットから遠ざかるにつれてPmaxが落ち込むが、8SQと200SQのケースを比較すると、200SQでは、バッテリユニットから800(m)の距離離れても、Pmaxが2×10(W)以上を維持しているが、8SQの場合には50(m)以下の距離で2×10(W)以下まで落ち込むことが分かる。このように、電気的慣性力は、バッテリユニットからの距離に加え、電力線の芯線断面積に依存する。従って、DCバス上で満遍なく電気的慣性力が働くようにするには、バッテリユニットの数及び配置に加え、電力線の芯線断面積が1つの重要な要素になる。
逆に、電力線の芯線断面積が決まると、個々のバッテリユニットによる電気的慣性力が十分な強さで作用するDCバス上の範囲もある程度決まってくる。既に説明したように、電気的慣性力の強さは、各バッテリユニットの容量ではなく、主にバッテリユニットと電力負荷の接続点との間の距離(つまり、電気抵抗)に影響される。なお、各バッテリユニットの容量は、電気的慣性力が働く持続時間に主に影響を与える。そのため、DCバス上のどこに接続された電力負荷に対しても十分な電気的慣性力を作用させるには、適切な数のバッテリユニットをDCバス上の適切な位置に配置することが重要になる。
そこで、DCバス上にバッテリユニットを等間隔で配置するモデルを用いて、バッテリユニット数Nの違いによるPmaxの特性変化について検討した。N=1~5、10、20のケースについてのPmaxの計算結果を図5に示した。なお、N=1~5のケースについては、バッテリユニットの配置例を図6(a)~(e)に示している。N=1のケース(a)ではDCバスの中央にバッテリユニットを配置し、N=2のケース(b)ではDCバスの両端に1つずつバッテリユニットを配置している。N=3~5のケースでは、図6(c)~(e)に示すように、バッテリユニットの間隔が同じ間隔になるように配置している。N=10、20のケースも同様にバッテリユニットの間隔が等しくなるように配置している。なお、これらの配置例は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限定されない。
図5を参照すると、N=1のケースでは、バッテリユニットが配置されているDCバス上の位置でPmaxがピークとなり、その位置から遠ざかるにつれてPmaxの値が大きく低下している。仮に、DCバスの安定稼働にPmax=3×10(W)以上が必要な場合、N=1のケースでは、バッテリユニットから300m以上離れた位置で、その条件を満たさなくなる。一方、N=2のケースでは、DCバス全域でPmax=3×10(W)以上になっており、DCバスのどこに電力負荷が接続されても十分な電気的慣性力が働く。Nが大きくなると、DCバス上でのPmaxの値が大きくなり、電気的慣性力がより強く働くようになることが分かる。N=10、20のケースのように、Nがさらに大きくなるとDCバス全域でPmaxの値がほぼ一定のレベルに近づいていく。
このように、複数のバッテリユニットをDCバス上に分散装荷することによって、DCバス上の全体又は必要な領域全体にわたって十分な電気的慣性力を働かせることが可能になり、DCバスの安定稼働を実現することができる。このような作用効果は、1カ所にバッテリユニットを集中装荷した場合(N=1のケースを参照)には得られない。従って、電気的慣性力によるDCバスの安定動作を実現するには、複数のバッテリユニットをDCバス上に分散配置すること、そして、各バッテリユニットをDCバスに直接装荷することが必要である。また、より太い電力線を利用することが好適である。
(1-3.発電機及び電力負荷について)
再び図2を参照する。上記のように自律協調制御システム10の各バッテリユニットは、DCバス11上に分散装荷され、DCバス11の電力線11a、11bに直接的に接続される。一方、発電機及び電力負荷は、図2に示した発電機22、及び電力負荷23、24のようにDCバス11に間接的に接続されて自律的に動作する。
図2の例において、発電機22は、DC/DC変換器22aを介してDCバス11に接続されている。DCバス11が電力系統と繋がっていない場合(オフグリッドの場合)、発電機22は、DCバス11の電圧を監視し、DCバス11の電圧が予め設定された上限レベルを超える場合に、発電を停止するか、又はDC/DC変換器22aがDCバス11への電力供給を停止する。これらの自律動作によって、DCバス11の電圧が異常に増大するリスクを低減することができる。一方、DCバス11が電力系統と繋がっている場合(オングリッドの場合)、発電された電力のうち、消費しきれず、蓄電もできない余剰電力は電力系統が吸収してくれるため、発電機22は、上記の自律動作を行う必要はない。この場合、発電機22は、発電電力を全てDCバス11に流し込むことができる。
一方、DCバス11に接続される電力負荷は、必要とする時にはDCバス11から必要な電力の供給を自由に受けられることが望ましい。従って、自律的動作は馴染まない。しかし、ブラックアウトを回避するため、電力負荷23のように、非常時や異常時にはバスから強制的に切り離すことを可能とするための外部制御可能なCB(Circuit Breaker)23aを介してDCバス11に接続されることが好ましい。CB23aは、DCバス11の電圧が、ある異常なレベルを下回る場合に、DCバス11から電力負荷23への電力供給を遮断する役目がある。なお、異常なレベルは、後述する第1の電圧範囲の下限値LV1より大幅に低いレベルに設定され、また、既存の電力系統で許容される許容電圧範囲(後述する第3の電圧範囲)の下限値LV2よりも低いレベルに設定されうる。
AC駆動の電力負荷24をDCバス11に接続する場合、電力負荷24は、DC/AC変換器24aを介してDCバス11に接続される。DC/AC変換器24aは、DCバス11からのDC電力をAC電力に変換して電力負荷24に供給する。DC/AC変換器24aは、DCバス11の電圧が、上記の異常なレベルを下回る場合に、DCバス11から電力負荷24への電力供給を遮断してよい。代わりに、DCバス11と電力負荷24との間にCBを別途設けてもよい。これらの制御によりブラックアウトを回避できる。
(1-4.自律協調制御について)
再び図1を参照する。図1に示すように、DCバス11は、スイッチ15及び変換器16を介してローカルグリッド17に接続される。ローカルグリッド17は、火力発電、水力発電、風力発電、及び原子力発電などを利用して安定的に電力を供給可能な電力系統、又は他の電力グリッドなどの外部電力システムである。ローカルグリッド17は、接続されたDCバス11に電力を供給することに加え、接続されたDCバス11の余剰電力を受容することもできる。
スイッチ15がオンになると、DCバス11とローカルグリッド17とが接続状態となる。接続状態において、DCバス11の電圧があるレベルよりも低い場合には変換器16を介してローカルグリッド17からDCバス11に電力が供給され、逆にDCバス11の電圧があるレベルよりも高い場合には、ローカルグリッド17によってDCバス11からの電力が受容される。変換器16は、DCバス11側のDC電力をローカルグリッド17側のAC電力に変換し、又はローカルグリッド17側のAC電力をDCバス11側のDC電力に変換する。
(A)スイッチの構成例
上述したスイッチ15の機能は、例えば、図7に示したスイッチ40によって実装されうる。図7は、スイッチ40の構成を模式的に示したブロック図である。図7に示すように、スイッチ40は、電圧計41と、スイッチング機構42と、制御機構43とを含む。電圧計41は、DCバス11とローカルグリッド17との接続点(電圧監視点)における電圧を計測する手段である。スイッチング機構42は、DCバス11とローカルグリッド17との間の接続/切断を切り替える手段である。制御機構43は、電圧計41の計測値に基づいてスイッチング機構42の切り替え動作を制御する手段(例えば、制御回路)である。電圧計を採用する図7の構成は、後述する電圧監視システムの構成を採用する場合に比べてコスト面で有利である。制御機構43による制御の詳細については、図8を参照しながら後述する。
変形例として、制御機構43の機能を省略し、DCバス11とローカルグリッド17との接続点での電圧監視とスイッチ15の制御とを行う外部の電圧監視システムを設けるようにしてもよい。この場合、電圧監視システムによって、各バッテリユニットの接続点、各発電機の接続点、及び各電力負荷の接続点でDCバス11の電圧を監視する仕組みに、さらに変形することができる。電圧監視システムは、プロセッサ、及びメモリを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)などである。メモリは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はフラッシュメモリなどである。例えば、プロセッサは、各接続点に設けられた電圧計の計測データを、通信回線を通じて取得し、取得した計測データをメモリに格納する。
(B)スイッチの動作及び自律協調制御方法
次に、本発明の実施形態に係る自律協調制御方法について説明する。
既に説明したように、DCバス11に接続される各バッテリユニットは、SOCが一定範囲内において、端子電圧がDCバス11の基準電圧にほぼ等しくなるように構成され、運用中はSOCが一定範囲内に維持されるように制御される。また、DCバス11に接続される各電力負荷は、CBなどによる遮断制御が作動しない範囲で、DCバス11から必要に応じて自由に電力供給を受けられるように構成される。また、DCバス11に接続される各発電機は、ローカルグリッド17との間での電力授受の無いオフグリッドの場合、DCバス11の電圧が、あるレベルを超える場合に発電を停止又は電力供給を遮断するように自律的に動作する。一方、各発電機は、ローカルグリッド17との間での電力授受が可能なオングリッドの場合には自律動作の必要が無く、発電した電力を無制限にDCバス11に流すことができる。
DCバス11に接続される各要素が自律的に動作することで、ローカルグリッド17からDCバス11が切り離されたオフグリッド状態での自律運転動作でも、DCバス11から各電力負荷への安定的な電力供給が、ある程度維持されうる。しかし、各発電機による発電量、各バッテリの容量及びSOC、DCバス11に接続される電力負荷の数及び負荷の大きさ、又はその他の要因によって、DCバス11の電圧は、予め設定された第1の電圧範囲外になりうる。そのため、DCバス11の電圧が第1の電圧範囲を逸脱しそうなとき、スイッチ15がオンとなり、自律運転動作から、DCバス11がローカルグリッド17に接続されたオングリッド状態となり、ローカルグリッド17によるアシスト制御動作に切り替わる。
ここで、図8を参照しながら、制御機構43による制御について、より具体的に説明する。図8は、本発明の実施形態に係る自律協調制御方法の例を示した図である。図8に例示したグラフの縦軸は電圧監視点でのDCバス11の電圧であり、横軸は時間である。図中のLV0、LV1、LV2、HV0、HV1、HV2は、予め設定された電圧閾値である。LV0は、基準電圧(この例では400V)より低いレベルに設定され、LV1は、LV0よりさらに低いレベルに設定される。一方、HV0は、基準電圧より高いレベルに設定され、HV1は、HV0よりさらに高いレベルに設定される。また、既存の電力系統で許容される電圧範囲は基準電圧の±5%であり、その電圧範囲の上限値及び下限値をそれぞれHV2、LV2と表記している。電気的慣性力を効果的に働かせるためには、バッテリの端子電圧がSOCに対してほぼ直線的に変化する特性を示す範囲内に収まるように、LV1からHV1の範囲(第1の電圧範囲)を設定する必要がある。
上記の例では、第1の電圧範囲を逸脱しようとすると、スイッチ15がオンとなり、ローカルグリッド17からのアシスト動作が開始される。そして、自律協調制御システム10では、全ての時点でのDCバス11の電圧が第1の電圧範囲内に収まるように制御する。但し、若干のアンダーシュート及びオーバーシュートは許容され、電圧監視点でのDCバス11の電圧が、HV1からHV2までの範囲及びLV1からLV2までの範囲に達することもあるが、第1の電圧範囲を逸脱したときには、できるだけ速やかに第1の電圧範囲内に引き戻されるようなアシスト制御が行われる。なお、LV0からHV0までの範囲を第2の電圧範囲と表記する。第2の電圧範囲は、基準電圧を含み第1の電圧範囲内にある。また、LV2からHV2までの範囲を第3の電圧範囲と表記する場合がある。第3の電圧範囲は、既存の電力系統(又は接続されるローカルグリッド)によって許容される規定の電圧範囲(許容電圧範囲)に設定される。また、第1の電圧範囲は、第3の電圧範囲内に設定される。
図中の曲線51は、DCバス11とローカルグリッド17との接続点(即ち、DCバス11とスイッチ15との接続点)での電圧を表している。この例では、初めにオフグリッドの自律運転状態(DCバス11の電圧が第2の電圧範囲内にある状態)においてDCバス11の電圧は基準電圧付近にあるが、DC11バス内の全発電機(PVなど)による発電電力が電力負荷全体の消費電力を上回る状態が続くと、その差分の電力はバッテリユニットに流れることになる。その結果、バッテリユニットの蓄電率が増加するため端子電圧も上昇し、DCバス11の電圧が上昇する。DCバス11の電圧は、時間とともに上昇してHV0を超え、P1の時点でHV1に達する。このように、DCバス11の電圧が上昇してHV1に達した場合、制御機構43は、DCバス11をローカルグリッド17に接続する制御を行う。接続後、DCバス11からローカルグリッド17に余剰電力が送電され、DCバス11の電圧が低下し始める。つまり、変換器16のDCバス11側の電圧が基準電圧(この例では400V)となるように変換器16を動作させておけば、電圧の高いDCバス11から変換器16へと電流が流れて、高くなり過ぎたDCバス11の電圧は低下を始める。
既に説明したように、自律協調制御システム10では、複数のバッテリユニットがDCバス11上に分散装荷され、電気的慣性力が強化されている。そのため、発電量の急増に対してもDCバス11の急激な電圧上昇が抑えられ、それによって、制御信号の伝送遅延など何らかの理由で、オングリッドに切り替わる直前に電圧がHV1を僅かに超えても、DCバスの電圧は第1の電圧範囲内へと引き戻され、速やかにHV1以下のレベルに戻る。このように、電気的慣性力を高めることで、DCバス11の電圧が第1の電圧範囲外に逸脱する時間を限りなく短くすることができる。なお、HV1以下のレベルに戻るまでの時間は、所定時間(例えば、1秒)以内であることが好ましい。つまり、自律協調制御システム10は、DCバス11に直接接続された複数のバッテリユニットへのDCバス11からの充電及びローカルグリッド17によるアシスト動作によって、第1の電圧範囲を逸脱した場合でも、第3の電圧範囲を逸脱せず、かつ所定時間以内に第1の電圧範囲内に戻るように機能する。
P1の時点でオングリッドになった後、DCバス11の電圧が下降してHV1を下回り、さらにP2の時点でHV0に達する。このように、DCバス11の電圧が下降してHV0に達した場合、制御機構43は、DCバス11をローカルグリッド17から切断する制御を行い、ローカルグリッド17によるアシスト動作を終了する。
図8の例では、アシスト動作を終了したP2以降、DCバス11内の全発電機による発電電力がDCバス11の電力負荷全体の消費電力を下回る状態が続くと、その差分の電力はバッテリユニットから放電されることになる。その結果、バッテリの蓄電率が減少するため、端子電圧も減少し、バス電圧が減少する。この結果、DCバス11の電圧が下降してLV0を下回り、P3の時点でLV1に達する動作を示している。このように、DCバス11の電圧が下降して第1の電圧範囲の下限であるLV1にまで達した場合、制御機構43は、DCバス11をローカルグリッド17に接続し、再びローカルグリッド17からのアシストを得る。接続後、ローカルグリッド17からDCバス11に電力が供給され、DCバス11の電圧が上昇を始める。
自律協調制御システム10では電気的慣性力が強化されているため、負荷の急増に対してもDCバス11の急激な電圧低下が抑えられ、それによって、制御信号の伝送遅延など何らかの理由で、オングリッドに切り替わる直前に電圧がLV1を僅かに下回っても、速やかに第1の電圧範囲内へ引き戻され、すぐにLV1以上のレベルに戻される。このように、電気的慣性力を高めることで、DCバス11の電圧が第1の電圧範囲外に逸脱する時間を限りなく短くすることができる。なお、LV1以上のレベルに戻るまでの時間は、所定時間(例えば、1秒)以内であることが好ましい。つまり、自律協調制御システム10は、DCバス11に直接接続された複数のバッテリユニットからDCバス11への放電及びローカルグリッド17によるアシスト動作によって、第1の電圧範囲を逸脱した場合でも、第3の電圧範囲を逸脱せず、かつ所定時間以内に第1の電圧範囲内に戻るように機能する。
P3の時点でオングリッドになった後、DCバス11の電圧が上昇してLV1を超え、更にP4の時点でLV0に達する。DCバス11の電圧が上昇してLV0に達した場合、制御機構43は、DCバス11をローカルグリッド17から切断し、ローカルグリッド17によるアシスト動作を終了する。
以上説明したように、電圧監視点でのDCバス11の電圧が上昇してHV1に達したとき、及び電圧が下降してLV1に達したときに、制御機構43は、スイッチ15をオンにして、DCバス11をローカルグリッド17に接続する。また、電圧監視点でのDCバス11の電圧が下降してHV0に達したとき、及び電圧が上昇してLV0に達したときに、制御機構43は、スイッチ15をオフにして、DCバス11をローカルグリッド17から切断する。これらの制御により、DCバス11の電圧は、おおむね第1の電圧範囲内に維持され、若干のオーバーシュート又はアンダーシュートが生じても第3の電圧範囲を逸脱することなく速やかに第1の電圧範囲内に収束する。なお、電圧監視システムを利用する場合(変形例)の制御も上記と同様である。
<2.DCバス電圧の安定性条件>
上記の通り、DCバス11にバッテリユニットを分散して直接接続することにより電気的慣性力を強化し、各バッテリユニットの容量を適切に設定して十分な慣性持続時間を確保することで、想定される環境において、自律協調制御によるDCバス11の安定稼働が実現されうる。但し、安定稼働の条件(安定性条件)は、DCバス11に装荷される電力負荷のスケール、バス電線ケーブルの心線の太さ(電気抵抗)及び長さなどに依存する。そこで、シミュレーションにより安定性条件を探った。
(2-1.シミュレーションモデル及び想定環境について)
シミュレーションには、図9に示したシミュレーションモデルを利用した。図9は、自律協調制御システムのシミュレーションモデルを示した図である。
このモデルでは、バッテリ61a、61bを接続した第1のバッテリユニット61と、バッテリ62a、62bを接続した第2のバッテリユニット62と、バッテリ63a、63bを接続した第3のバッテリユニット63とがDCバス11上に装荷されている。各バッテリは、リチウムイオンバッテリを想定し、その端子電圧がDCバス11の基準電圧にほぼ等しくなるようにセルを構成し、SOCに対して端子電圧が線形に変化する領域で動作するようにしている。DCバス11には、電力負荷61c、62c、63c、及び発電機61d、62d、63dがさらに装荷されている。DCバス11は、スイッチ64に接続され、ローカルグリッド65に接続できるように構成される。
ここで、第1のバッテリユニット61と電力負荷61cとの間の距離(電力線の長さ)をL1とし、電力負荷61cと発電機61dとの間の距離をL2とする。また、第2のバッテリユニット62と発電機61dとの間の距離をL3とし、第2のバッテリユニット62と電力負荷62cとの間の距離をL4とする。電力負荷62cと発電機62dとの間の距離をL5とし、発電機62dと第3のバッテリユニット63との間の距離をL6とし、第3のバッテリユニット63と電力負荷63cとの間の距離をL7とする。また、電力負荷63cと発電機63dとの間の距離をL8とする。
このモデルでは、DCバス11の各電力線を5.5SQのCVケーブルとした。また、DCバス11の基準電圧を400Vに設定し、一方の電力線を接地電位に対して+200Vとし、他方の電力線を接地電位に対して-200Vとする方式を採用した。また、DCバス11の全長を200mとし、接続点間の距離L1~L8を全て等しく25mに設定した。この例では、どの電力負荷で消費電力の急増が生じても同程度の電気慣性力が作用する。
シミュレーションでは、各発電機の停止又は遮断制御を省略しており、各発電機からの発電電力は制限なくDCバス11に供給されるようにした。また、各発電機からの電力供給量は、日本の仙台市の1月における日照量に相当するPVでの発電量を想定し、各電力負荷による電力消費量は、仙台市の1月における一般家庭の電力消費量を想定している。また、電圧閾値LV2、LV1、LV0、HV0、HV1、HV2をそれぞれ380V、385V、395V、405V、415V、420Vに設定した。既存の電力系統で許容される電圧範囲が基準電圧の±5%であり、電圧閾値HV2、LV2はそれぞれ、その電圧範囲の上限値及び下限値に設定されている。なお、シミュレーションツールとしてMALTAB/Simulinkを利用したが、当業者であれば、上述したシミュレーション条件を参照して任意のツールで以下のシミュレーション結果を追検証しうる。
スイッチ64の制御により、図8に示した制御方法で、ローカルグリッド65とDCバス11との接続状態が切り替わるようにした。上記のモデル及び環境下でのシミュレーション結果を図10に示す。図10は、ローカルグリッド65との接続点でのDCバス電圧の変化を、1月の1か月間にわたってシミュレーションした結果を示した図である。
(2-2.シミュレーション結果)
図10(a)のグラフ71は、各バッテリユニットの容量をそれぞれ(20/3)kWhとし、DCバス11に接続されたバッテリの総容量が20kWhになるようにした第1のシナリオに対応するシミュレーション結果を示す。グラフ71が示すように、DCバス11の電圧は、必要に応じてローカルグリッド65からのアシストを受けることにより、LV1とHV1との間の範囲に維持される。DCバス11にバッテリユニットが分散装荷されて十分な電気的慣性力が作用しているため、その範囲から電圧が大きく逸脱することはなく、DCバス11の電圧が常に安定している。
図10(b)のグラフ72は、各バッテリユニットの容量をそれぞれ(10/3)kWhとし、DCバス11に接続されたバッテリの総容量が10kWhになるようにした第2のシナリオに対応するシミュレーション結果を示す。グラフ72が示すように、DCバス11の電圧は、必要に応じてローカルグリッド65からのアシストを受けることにより、LV1とHV1との間の範囲に維持される。第1のシナリオと同様、十分な電気的慣性力が作用しているため、その範囲から電圧が大きく逸脱することはなく、DCバス11の電圧が常に安定している。但し、各バッテリユニットの容量が減少したことで、第1のシナリオよりも、第2のシナリオの方が、ローカルグリッド65からのアシストを受ける頻度が増している。
図10(c)のグラフ73は、各バッテリユニットの容量をそれぞれ(5/3)kWhとし、DCバス11に接続されたバッテリの総容量が5kWhになるようにした第3のシナリオに対応するシミュレーション結果を示す。グラフ73が示すように、DCバス11の電圧は、必要に応じてローカルグリッド65からのアシストを受けることにより、LV1からHV1までの範囲内に維持される。第1のシナリオと同様、十分な電気的慣性力が作用しているため、その範囲から電圧が大きく逸脱することはなく、DCバス11の電圧が常に安定している。但し、各バッテリユニットの容量がさらに減少したことで、第2のシナリオよりも、第3のシナリオの方が、ローカルグリッド65からのアシストを受ける頻度が更に増している。
上記のシミュレーション結果から、バッテリ容量が減少すると、オングリッドになる頻度が増加して、ローカルグリッド65からのアシストを受ける頻度及び時間が増していくことが分かる。一方、バッテリ容量が最も小さい第3のシナリオでも、ローカルグリッド65のアシストを受けた直後、DCバス11の電圧が、LV1以上又はHV1以下の範囲に回復しており、DCバス11の安定稼働が実現されている。このことは、バッテリユニットが小型でも、複数のバッテリユニットをDCバス11上に分散装荷し、ローカルグリッド65からの適切なアシストが得られることで、自律協調制御によりDCバス11の安定稼働を実現できることを示している。
但し、電力負荷のスケール(例えば、DCバス11に接続される電力負荷の数又は負荷の大きさ)が大きくなれば、消費電力の急激な変動に伴う電圧変動の幅も大きくなる。これに対応するためには、DCバス11に装荷されるバッテリ容量を大きくする必要がある。しかし、バッテリ容量の増加はコスト増に繋がるため、バッテリコストと、DCバス電圧の安定性との最適なバランスを見つける必要がある。そこで、上記のシミュレーションモデルをベースに、電力負荷のスケールとバッテリ容量とを変えながらシミュレーションを繰り返し実行してDCバスの安定性条件を探った。
図11は、本発明の実施形態に係るDCバスの安定性条件を示した図である。図中の安定領域81は、必要に応じてローカルグリッド65からのアシストを受けることで、DCバス11の電圧が第1の電圧範囲内にほぼ維持される条件(安定性条件)を示している。一方、不安定領域83は、ローカルグリッド65からのアシストを受けても、第1の電圧範囲を逸脱したDCバス11の電圧が、第1の電圧範囲内に回復できないか、或いは回復できたとしても非常に長い時間(ある規定値A(例えば、60秒)以上)がかかる条件を示している。遷移領域82は、安定領域81と不安定領域83との間の中間的な状態であり、DCバス11の電圧が第1の範囲外に頻繁に逸脱し、ローカルグリッド65からのアシストを受けても、第1の電圧範囲内に回復するに要する時間がある規定値Aよりは短いが、ある規定値B(例えば、1秒)よりも長くかかる条件を示している。
安定領域81を参照すると、バッテリ容量が十分に大きければ、電力負荷のスケールによらずDCバス11を安定稼働させることが可能であることが分かる。しかし、コストの観点から、バッテリ容量は小さい方が好ましい。そこで、安定領域81と遷移領域82との境界に着目すると、電力負荷のスケールが一定以上(この例では4以上)の範囲において、DCバス11の安定稼働に必要なバッテリ容量は、電力負荷のスケールに比例することが分かる。図11に示した安定性条件によれば、DCバス11に装荷される各バッテリユニットの容量は、電力負荷のスケールに比例した最小限の容量に設定してよく、そのような小容量のバッテリユニットでも分散装荷によってDCバス11の安定性を維持できる。
既に説明したように、DCバス11の安定性は、バッテリ容量だけではなく、電気的慣性力に依存する。電気的慣性力は、バッテリの内部抵抗だけでなく、電力線の分布抵抗にも関係する。電力線の分布抵抗は、電力負荷の接続点とバッテリユニットの接続点との間の距離が長くなるにつれて、或いは、電力線が細くなるにつれて増加する。電力線の分布抵抗が増加すると、電気的慣性力が作用しにくくなる。そのため、電力負荷の接続点とバッテリユニットの接続点との間の距離が短く、電力線が太い方が、DCバス11の安定にとって好適である。
図12は、本発明の実施形態に係るDCバスの安定性条件を、図11とは異なる観点から示した図である。図12のグラフは、横軸を、電力線に用いるCVケーブルの芯線の断面積とし、縦軸を、CVケーブルの長さとして、安定領域91、遷移領域92、及び不安定領域93をマッピングしたものである。
安定領域91は、必要に応じてローカルグリッド65からのアシストを受けることで、DCバス11の電圧が第1の電圧範囲内にほぼ維持される条件(安定性条件)を示している。一方、不安定領域93は、ローカルグリッド65からのアシストを受けても、第1の電圧範囲を逸脱したDCバス11の電圧が、第1の電圧範囲内に回復できないか、或いは回復できたとしても、ある規定値A以上がかかる条件を示している。遷移領域92は、安定領域91と不安定領域93との間の中間的な状態であり、DCバス11の電圧が第1の範囲外に頻繁に逸脱し、ローカルグリッド65からのアシストを受けても、第1の電圧範囲内に回復するに要する時間がある規定値Aよりは短いが、ある規定値Bよりも長くかかる条件を示している。図12のグラフから分かるように、CVケーブルが細くて長いほど電力線の分布抵抗が大きくなり、DCバス11の安定性が低くなる傾向にある。このことから、DCバス11の安定動作を保証するためには、可能な限り芯線が太いCVケーブルを用いること、そして、CVケーブルの長さを一定以下に留めておくことが重要であると分かる。
以下の表1は、CVケーブルの芯線の太さと、安定領域91の状態が維持できるDCバス11の全長との関係を示している。SQは、CVケーブルの芯線の断面積であり、Lは、DCバス11の全長である。表1から、CVケーブルの芯線を太くすることで、DCバス11の全長を伸ばしても、DCバス11の安定性を維持できることが分かる。これは、芯線を太くすればCVケーブルの分布抵抗が小さくなり、芯線が細い場合に比べて電気的慣性力がより強く働くことに起因する。つまり、芯線を太くして電気的慣性力を強化した分だけ、DCバス11の安定性を維持しつつDCバス11の全長を伸ばすことができる。
Figure 0007638559000004
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
10 自律協調制御システム
11 DCバス
11a、11b 電力線
12a、13a、14a バッテリユニット
12b、13b、14b 発電機
12c、13c、14c 電力負荷
15 スイッチ
16 変換器
17 ローカルグリッド

Claims (6)

  1. 自律協調制御システムであって、
    電力負荷及び発電機が接続されたDC(Direct Current)バスであって、前記DCバスは、前記DCバスの基準電圧を中心とする第1の電圧範囲内から、前記第1の電圧範囲の上限又は下限に達したときに、電力系統又は他の電力システムからなるローカルグリッドに接続されて、前記ローカルグリッドによるアシストを得て動作する、DCバスと、
    前記DCバスに直接的に接続された複数のバッテリユニットであって、前記複数のバッテリユニットは、前記DCバス上に分散装荷され、各バッテリユニットの端子電圧は、前記DCバスの基準電圧に一致又は近似する、複数のバッテリユニットと
    を備え
    前記自律協調制御システム内の前記DCバスの全長を、前記DCバスを形成する電力線の断面積に比例して長くするように設定することによって、前記DCバスの電圧が前記ローカルグリッドで許容される第3の電圧範囲を逸脱せず、かつ所定時間以内に前記第1の電圧範囲内に戻る安定領域の状態が維持される、自律協調制御システム。
  2. 前記DCバスの電圧が、前記基準電圧を中心とする第1の電圧範囲内から、前記第1の電圧範囲の上限又は下限に達したとき、前記DCバスは、電力系統又は他の電力システムからなるローカルグリッドに接続されて、前記ローカルグリッドによるアシストを得て動作するアシスト運転状態に切り替わり、
    前記アシスト運転状態で、前記DCバスの電圧が、前記第1の電圧範囲内の第2の電圧範囲の境界に達したとき、前記DCバスは前記ローカルグリッドから切断されて、前記ローカルグリッドからのアシストなしに動作する自律運転動作に切り替わり、
    前記自律運転動作では、前記DCバスに接続された発電機の少なくとも一部は、前記DCバスの電圧を監視し、事前設定された上限レベルを超える場合に発電又は前記DCバスへの電力供給を停止する自律動作を行う、
    請求項1に記載の自律協調制御システム。
  3. 前記複数のバッテリユニットは、前記DCバスに直接的に接続されることによって、前記DCバス上の電力負荷による消費電力及び発電機による発電量が急増したときに前記DCバスの急激な電圧変化を抑制するように機能する、
    請求項2に記載の自律協調制御システム。
  4. 前記第1の電圧範囲は、前第3の電圧範囲内に設定され、前記自律協調制御システムは、前記消費電力及び前記発電量が急増して前記DCバスの電圧が前記第1の電圧範囲を逸脱したとしても、前記複数のバッテリユニットによって前記DCバスの急激な電圧変化を抑制する機能及び前記ローカルグリッドによるアシストによって、前記DCバスの電圧が前記第3の電圧範囲を逸脱せず、かつ所定時間以内に前記第1の電圧範囲内に戻るように機能する、
    請求項3に記載の自律協調制御システム。
  5. 前記DCバスに直接的に接続される各バッテリユニットの容量を、前記DCバスに接続される電力負荷のスケールに比例して増加するように設定することによって、前記DCバスの電圧が前記第3の電圧範囲を逸脱せず、かつ前記所定時間以内に前記第1の電圧範囲内に戻る安定領域の状態が維持される、
    請求項4に記載の自律協調制御システム。
  6. 電力負荷、発電機、及び複数のバッテリユニットが接続されたDC(Direct Current)バスの電圧を電圧計によって計測するステップであって、前記複数のバッテリユニットは、前記DCバスに直接的に接続される形態で前記DCバス上に分散装荷され、各バッテリユニットの端子電圧は、前記DCバスの基準電圧に一致又は近似する、ステップと、
    前記DCバスの電圧が、前記基準電圧を中心とする第1の電圧範囲内から、前記第1の電圧範囲の上限又は下限に達したとき、制御回路によって、前記DCバスを、電力系統又は他の電力システムからなるローカルグリッドに接続して、前記ローカルグリッドによるアシストを得て動作するアシスト運転状態に切り替えるステップと、
    前記アシスト運転状態で、前記DCバスの電圧が、前記第1の電圧範囲内の第2の電圧範囲の境界に達したとき、前記制御回路によって、前記DCバスを前記ローカルグリッドから切断して、前記ローカルグリッドからのアシストなしに動作する自律運転動作に切り替えるステップと、を含み、
    前記DCバスと前記複数のバッテリユニットとを備える自律協調制御システム内の前記DCバスの全長を、前記DCバスを形成する電力線の断面積に比例して長くするように設定することによって、前記DCバスの電圧が前記ローカルグリッドで許容される第3の電圧範囲を逸脱せず、かつ所定時間以内に前記第1の電圧範囲内に戻る安定領域の状態が維持され、
    前記自律運転動作では、前記DCバスに接続された発電機の少なくとも一部は、前記DCバスの電圧を監視し、事前設定された上限レベルを超える場合に発電又は前記DCバスへの電力供給を停止する自律動作を行う、
    自律協調制御方法。
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