JP7638904B2 - 小麦全粒粉を含有するパスタ類 - Google Patents
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Description
小麦全粒粉とは、精選した小麦粒を任意に調質した後、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕機を使用してまるごと粉砕し、表皮、胚芽、胚乳を含む小麦粒全てを粉にしたもの、あるいは、精選した小麦粒を任意に調質した後、ロールミルで複数回粉砕して胚乳の微粒画分(小麦粉、以下「胚乳画分」という)、胚芽画分、胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)を含む粗粒画分に分画し、胚芽画分及び/又は粗粒画分をそのまま又はピンミル、ハンマーミル、ジェットミル、グラインダーミル等の粉砕機を使用して微粉砕するなどして胚芽画分及び小麦ふすま画分を得たのち、胚乳画分、胚芽画分及び小麦ふすま画分を小麦粒における構成比で混合して得られるものである。小麦全粒粉は栄養素を豊富に含む一方で、ふすま臭やエグミがあり、パスタに使用すると脆くぼそついた食感となるため、パスタとしてのおいしさに欠けるという問題があった。
小麦全粒粉を使用したパスタに関しては、種々検討されている。例えば、特許文献1では、平均粒径が60~100μmで且つ粒径200μm以下の粒を90質量%以上含むデュラム小麦粉80~98質量%、並びに穀類全粒粉、穀類粒の外皮部及び穀類粒の胚芽からなる群から選択される1種以上を含む粒径60~80μmの微粉原料(但し焙焼したものを除く)を2~20質量%含有したパスタの製造方法が開示されており、風味に優れ、喫食した際に小麦などの穀類の風味が口腔に広がるような風味豊かな麺類が提供されると記載されている。しかし、特定のデュラム小麦粉を麺原料として用いる必要があり、パスタ製造で一般的に使用されるデュラム小麦のセモリナなどを用いた場合に、良好な風味、食感を有するパスタの製造方法については言及されていなかった。
特許文献2では、粒径180μm未満の微粒子を30~90質量%含有する微粉画分と、粒径180μm以上の粗粒子を10~70質量%含有する粗粉画分とを含んで構成されている小麦全粒粉を含む穀類原料で製造した麺類の製造方法が開示されており、栄養的に優れた特徴を有しつつも、滑らかな麺線表面と良好な粘弾性とを有していて食感に優れ、且つ喫食時の麺のほぐれが良好な麺類が得られると記載されている。しかし、小麦などの穀類の風味を得られることには言及がなく、また、粗粉砕した後に、分級し、粗い画分を微粉砕し、細かい画分と混合するといった、工程が複雑で、かつ設備も複数必要であるという問題があった。
[1]小麦粒粉砕物の胚乳画分及び小麦ふすま画分を含む混合物を少なくとも含むパスタ類であって、
前記胚乳画分が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物由来の胚乳画分(GA-SX小麦粉)からなり、
前記パスタ類に含まれる穀粉原料の全質量に対して、前記混合物の質量が2~50質量%であり、かつ前記混合物の質量に対する小麦ふすま画分の質量が0.2~20質量%である、上記パスタ類。
[2]前記混合物がGBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物由来の全粒粉(GA-SX小麦全粒粉)である、[1]記載のパスタ類。
[3]前記GA-SX小麦全粒粉が、GA-SA小麦全粒粉である、[2]記載のパスタ類。
[4]前記小麦ふすま画分が、普通小麦の小麦ふすま画分を含み、又は普通小麦の小麦ふすま画分からなる、[1]記載のパスタ類。
[5]前記混合物が、さらに普通小麦の胚芽画分を含み、胚乳画分:小麦ふすま画分:胚芽画分の質量比が81~85:12~15:1~3である、[1]又は[4]記載のパスタ類。
[6]胚乳画分がGBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物由来の胚乳画分からなる全粒粉(GA-SX小麦全粒粉)を含むパスタ類であって、パスタ類用穀粉原料の全量に対して前記GA-SX小麦全粒粉を2~50質量%含む、前記パスタ類。
[7]GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)と普通小麦の小麦ふすまを含むパスタ類であって、パスタ類用穀粉原料の全量に対して前記GA-SX小麦粉と前記普通小麦の小麦ふすまを合計で2~50質量%含み、かつ、前記GA-SX小麦粉と前記普通小麦の小麦ふすまの合計に対して前記普通小麦の小麦ふすまを20質量%以下で含む、前記パスタ類。
普通系コムギは、異質6倍体であり、その染色体には同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムがそれぞれ1~7番まで存在する(1A~7A、1B~7B、1D~7D)。
「GBSSI」とは、アミロースの合成に関与する顆粒結合性澱粉合成酵素であり、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1が、それぞれ7A、4A、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
「SSIIa」とは、アミロペクチンの分岐鎖合成に関与する澱粉合成酵素であり、SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1が、それぞれ7A、7B、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
GA-SA小麦:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギ;
GA-SB小麦:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-B1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギ;
GA-SD小麦:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-D1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギ。
またGA-SX小麦粉は、好ましくは、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SA小麦粉)である。
本発明において、小麦粒粉砕物の胚乳画分及び小麦ふすま画分を含む混合物が、さらに普通小麦の胚芽画分を含んでいても良く、好ましくは胚乳画分:小麦ふすま画分:胚芽画分の質量比が81~85:12~15:1~3である。胚芽画分はGA-SX小麦由来であってもその他の小麦(軟質、硬質を含む普通小麦)由来のものであっても良いが、好ましくはGA-SX小麦由来である。
小麦全粒粉とは、一般的には小麦粒の胚乳、胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)、胚芽の各構成成分の粉末が、小麦粒における各構成割合(胚乳:胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま):胚芽=83:15:2)と略同一の構成割合で含まれるものである。本発明において、小麦全粒粉における胚乳:胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま):胚芽の構成割合は、好ましくは81~85:12~15:1~3、より好ましくは83:15:2である。
このような小麦全粒粉は、製粉工程において、胚乳と胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)と胚芽とを分離することなく全てを粉砕して得ることができ(製造方法1)、ないしは、胚乳の微粒画分(小麦粉、「胚乳画分」に相当)と、胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)の粗粒画分(「小麦ふすま画分」に相当)と胚芽画分とに分画し、任意に小麦ふすま画分及び/又は胚芽画分を更に微粉砕した後に、胚乳画分、小麦ふすま画分及び胚芽画分を混合して得ることもできる(製造方法2)。製造方法2の場合、胚乳画分、小麦ふすま画分及び胚芽画分の各画分は同一の品種又は銘柄の小麦に由来してもよく(例えば全ての画分の由来がGA-SX小麦)、異なる品種又は銘柄の小麦由来であってもよい(例えば各画分の由来がそれぞれGA-SX小麦、DNS、WW)。
具体的には、製造方法1では、精選した小麦粒を任意に調質し、ピンミルやジェットミル等の衝撃式粉砕機で粉砕して全粒粉を得ることができる。製造方法2では、精選した小麦粒を任意に調質し、ロール粉砕機等で粉砕した後シフター等で分画し、大きな小麦ふすま断片が含まれる小麦ふすま画分を任意に調質してピンミル、ジェットミル、グラインダーミル等で微粉砕したものと、小麦粉(胚乳画分)と、任意に微粉砕した胚芽画分とを混合して全粒粉を得ることができる。胚芽及び胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)は、タンパク質やミネラル、食物繊維等の成分を豊富に含有している。なお、市販されている小麦ふすま製品(例えば日本製粉株式会社「小麦ふすま」等)は、製粉工程で分画した胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)を含む粗粒画分であり、本発明における小麦ふすまに加えて少量の小麦粉や胚芽が混入する。
GA-SA小麦:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギ;
GA-SB小麦:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-B1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギ;
GA-SD小麦:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-D1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギ。
本発明において「小麦粉」は小麦の胚乳部分を製粉したものであってセモリナよりも粒度が細かいものを意味し、セモリナとは区別される。
(1)パスタ類用穀粉原料100質量部に水28質量部を加え、麺用ミキサーで10分間ミキシングして水和生地を得た。
(2)水和生地を真空ミキサーで約80kpaの真空度で脱気しつつ、マカロニ類成形機にて孔径約1.9mmのロングパスタ用ダイスから100bar前後で押出し、生パスタ麺線を得た。これを竿にかけ、乾燥機で水分13%以下まで調湿乾燥させ、長さ25cmに裁断して直径1.7mm程度の乾燥ロングパスタを得た。
小麦を精選し、加水・調質せずに衝撃式微粉砕機(西村機械製作所製 商品名「SPM-R200」)で粉砕し、小麦全粒粉を得た。
なお、小麦粒における胚乳、胚乳よりも外層の部分(小麦ふすま)及び胚芽の構成割合は、生育条件や品種等により多少の増減はあるものの、おおよそ83:15:2の割合とされており、以下の試験例において「小麦全粒粉」に占める小麦ふすま画分の割合は15質量%とみなす。
デュラム小麦のセモリナとGA-SA小麦全粒粉、及び普通小麦全粒粉を表1記載の割合にした以外は製造例1に従って乾燥パスタを製造した。デュラム小麦のセモリナには日本製粉株式会社製「ジョーカーA」を、普通小麦全粒粉には日本製粉株式会社の「FH全粒粉」を使用した。それらを沸騰湯浴中に投入して茹で歩留が240%になるよう茹で上げ、茹で直後の食感を熟練パネラー10名により評価基準表1に従って評価した。
なお、官能評価において、比較例として、デュラム小麦のセモリナのみを使用して製造例1に従って製造した小麦全粒粉を含まない標準的な乾燥パスタの風味を3点、ぼそつき感を5点とした。普通小麦の全粒粉を20%配合したパスタ(従来の全粒粉パスタ)のぼそつきを3点とした。結果を表1に示す。
試験例1で用いたのと同じ乾燥パスタを茹で歩留が240%になるよう茹で上げ、冷水で冷やし、麺さばき用の油を茹で麺100質量部に対し2質量部和えたものを、樹脂製容器に200gを盛り付けて密封包装し、4℃で24時間保存した。500Wで2分間レンジアップし、熟練パネラー10名により評価した。結果を表2に示す。3点及び5点の基準評価点は試験例1と同様である。
パスタ原料として70質量部のデュラム小麦のセモリナ、24.6質量部のGA-SA小麦粉又は普通小麦粉(ニップン北海道、日本製粉株式会社)及び5.4質量部の小麦ふすま自家調製品(83%が小麦ふすまで、残余が小麦粉に相当、普通小麦の小麦ふすま4.5質量部を含んでいる)を用いた以外は試験例1に従って茹でパスタを得て評価した(実施例5又は比較例5に相当)。なお、使用した小麦ふすまを含む粗粒画分の歩留は18質量%(小麦穀粒を製粉して分画し、得られた小麦ふすまを含む粗粒画分が粉砕物全量に対して18質量%)であり、微量の小麦粉が混入しているものであった。
その結果、GA-SA小麦粉を使用して製造したパスタは、ぼそつきがなく、小麦の風味があり、実施例1-5と同等の評価であった。それに対して普通小麦粉を使用して製造したパスタは、比較例1-5と同等で、ぼそつきがあり、ややふすま臭とエグミがあった。
Claims (5)
- 小麦粒粉砕物の胚乳画分及び小麦ふすま画分を含む混合物、並びにデュラム小麦のセモリナを含むパスタ類であって、
前記胚乳画分が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物由来の胚乳画分(GA-SX小麦粉)からなり、
前記パスタ類に含まれる穀粉原料の全質量に対して、前記混合物の質量が5~40質量%であり、前記デュラム小麦のセモリナの質量が60~95質量%であり、かつ前記混合物の質量に対する小麦ふすま画分の質量が0.2~20質量%である、上記パスタ類。 - 前記混合物がGBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物由来の全粒粉(GA-SX小麦全粒粉)である、請求項1記載のパスタ類。
- 前記GA-SX小麦全粒粉が、GA-SA小麦全粒粉である、請求項2記載のパスタ類。
- 前記小麦ふすま画分が、普通小麦の小麦ふすま画分を含み、又は普通小麦の小麦ふすま画分からなる、請求項1記載のパスタ類。
- 前記混合物が、さらに普通小麦の胚芽画分を含み、胚乳画分:小麦ふすま画分:胚芽画分の質量比が81~85:12~15:1~3である、請求項1又は4記載のパスタ類。
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