JP7641817B2 - アルカリ水電解用隔膜、及びその製造方法 - Google Patents

アルカリ水電解用隔膜、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルカリ水電解用隔膜、及びその製造方法に関する。より詳しくは、熱アルカリ中におけるイオン伝導性の安定性に優れる、アルカリ水電解用隔膜、及びその製造方法に関する。
水の電気分解(「電解」ともいう。)は、水素ガスの工業的な製造方法の一つとして知られており、一般的に、導電性を高めるために水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を電解質として添加した水に電流を印加することにより行われる。このような水の電気分解には、陽極(アノード)と陰極(カソード)がそれぞれ配置された陽極室と陰極室を有し、これらが隔膜により仕切られた電解槽が使用される。
水の電気分解は、電子(又はイオン)の移動により行われる。そのため、上記隔膜には、電気分解反応が効率良く行われるために、高いイオン伝導性が必要とされる。更に、水の電気分解は、30%程度の高濃度のアルカリ水を使用して、80~100℃、場合によっては1MPa以上の高圧力下で行われるため、高いイオン伝導性を維持するためには、耐熱性、耐アルカリ性等も必要とされる。
水の電気分解に使用される隔膜としては、非溶媒誘起相分離法(NIPS法)によって製造された多孔性膜がこれまでに種々知られている。非溶媒誘起相分離法による多孔性膜の製膜においては、溶媒と非溶媒の置換速度等により孔径等の多孔構造が影響され、たとえば、溶媒と非溶媒の置換速度を小さくすることにより、マクロボイドのような粗大な孔が多孔性膜の表面に生成し難いことが一般的に知られている。そして溶媒と非溶媒の置換速度は、多孔性膜を作成するために用いる塗料組成物へのポリビニルピロリドンや塩化リチウム等の親水性添加剤の添加や該親水性添加剤による塗料組成物の親水化や増粘等により影響されることが知られている(たとえば非特許文献1、非特許文献2)。
また、水の電気分解に用いられる隔膜においては、隔膜のイオン伝導性を高いものとするために、樹脂からなる隔膜中に無機粒子を含有させることが知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
国際公開第2019/021774号公報 特開2020-169349号公報
Desalination,2006,Vol.192,p.190-197 Desalination,1988,Vol.68,p.167-177
本発明者らの検討によれば、無機粒子を配合した多孔質層を有する隔膜はイオン伝導性に優れるものの、該多孔質層を有する隔膜をアルカリ水電解用隔膜として使用すると、イオン伝導性が経時的に変動し易いという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、熱アルカリ中におけるイオン伝導性の安定性に優れるアルカリ水電解用隔膜を提供することを目的とする。
本発明者は、無機粒子を含有する多孔質層を有する隔膜について検討した結果、イオン伝導性の安定性には多孔質層に含まれるマクロボイドの大きさと含有量が深く関与していることを見いだした。さらに隔膜における多孔構造の指標として単位膜厚あたりのガス透過性もイオン伝導性の安定性に影響することを知見した。そして、多孔質層を形成するための無機粒子を含む組成物として、特定の粘度特性を有する組成物を用いることにより、マクロボイドの生成、成長が抑制され、多孔構造が制御された多孔質層を有する隔膜が得られ、得られた隔膜は、イオン伝導性の安定性に優れるものとなることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のアルカリ水電解用隔膜は、有機ポリマーおよび無機粒子を含む多孔質層を有するアルカリ水電解用隔膜であって、
該多孔質層は、該隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層であり、該多孔質層の厚み方向の断面における、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下であり、
下記式(1)で表されるXが0.6以上である
ことを特徴とするアルカリ水電解用隔膜である。
X=隔膜の透気度(秒)/隔膜の膜厚(μm) (1)
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、熱アルカリ中におけるイオン伝導性の安定性に優れる。そのため、アルカリ水電解装置に本発明のアルカリ水電解用隔膜を用いれば、長期間安定して高純度の水素ガスを製造することができる。
塗布時における最大剪断速度を説明するための概念図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
1.アルカリ水電解用隔膜
本発明の実施形態1である、アルカリ水電解用隔膜について説明する。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、有機ポリマーおよび無機粒子を含む多孔質層を有するアルカリ水電解用隔膜であって、
該多孔質層は、該隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層であり、該多孔質層の厚み方向の断面における、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下であり、
下記式(1)で表されるXが0.6以上である
ことを特徴とする。
X=隔膜の透気度(秒)/隔膜の膜厚(μm) (1)
なお、本明細書において、有機ポリマーおよび無機粒子を含む多孔質層を単に多孔質層ともいう。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、その少なくとも一方の表面を構成する層として、有機ポリマーおよび無機粒子を含む多孔質層を含む。すなわち、本発明のアルカリ水電解用隔膜を構成する多孔質層は、該隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層である。該多孔質層を有することにより、多くの電解液を含浸することができ、イオン透過性が発揮される。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、上記多孔質層のみから構成されていてもよいが、さらに多孔性支持体を含んでいてもよい。上記多孔性支持体を更に含むことにより、上記多孔質層の強度が向上し、アルカリ水電解用隔膜の強度を向上させることができ、電解中のイオン透過膜の破損等を抑制することができる。上記多孔性支持体は、シート状の部材であることが好ましい。
本発明のアルカリ水電解用隔膜が多孔性支持体を含む場合、該多孔質層が該隔膜の少なくとも一方の表面を構成する形態である限り、その形態は特に限定されない。たとえば、上記アルカリ水電解用隔膜の構成としては、多孔質層が多孔性支持体の一方の面に積層されている形態(1)、多孔質層が多孔性支持体の両方の面上に積層されている形態(2)が好ましい実施形態としてあげられる。
さらに、形態(1)であって、多孔質層を構成する有機ポリマーおよび無機粒子と同様の有機ポリマーおよび/または無機粒子が、多孔性支持体の内部の一部または全部に含まれる形態(1a)も好ましい実施形態である。
同様に、形態(2)であって、少なくとも一方の多孔質層を構成する有機ポリマーおよび無機粒子と同様の有機ポリマーおよび/または無機粒子が、多孔性支持体の内部の一部または全部に含まれる形態(2a)も好ましい実施形態である。
上記形態(1a)の中でも、多孔性支持体の一方の面に、上記多孔質層を有し、且つ多孔質層と多孔性支持体との界面より多孔性支持体の内部の一部または全部に、多孔質層を構成する材料と同様の成分が含侵してなる層(含侵層)を有する形態(1b)が好ましい実施形態としてあげられる。
同様に、上記形態(2a)の中でも、多孔性支持体の両方の面に、上記多孔質層を有し、且つ多孔質層と多孔性支持体との界面より多孔性支持体の内部の一部または全部に、少なくとも一方の多孔質層を構成する材料と同様の成分が含侵してなる層(含侵層)を有する形態(2b)があげられる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、なかでも、隔膜の強度がより一層高くなる点で、上記形態(1a)、(1b)、(2a)または(2b)が好ましく、中でも形態(1b)または(2b)がより好ましく、形態(1b)がさらに好ましい。
上述したように本発明のアルカリ水電解用隔膜は、その表面層を構成する少なくとも一つの多孔質層は、多孔質層の厚み方向の断面における、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下である。「多孔質層の厚み方向の断面における、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下である」との条件を条件(Y)ともいう。また、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率を、単にマクロボイド含有率ということもある。
本発明のアルカリ水電解用隔膜が多孔性支持体を含む場合において、その形態によらず、本発明のアルカリ水電解用隔膜の表面を構成する多孔質層の少なくとも1つは条件(Y)を満足する。本発明のアルカリ水電解用隔膜の表面を構成する多孔質層が両面にある場合は、いずれの多孔質層も条件(Y)を満足することが好ましい。
本発明において、マクロボイドとは、長径が10μm以上、短径が5μm以上であるボイドを意味する。長径および短径は以下のようにして決定する。
すなわち、本発明のアルカリ水電解用隔膜における厚み方向、すなわち、隔膜の表面に対して垂直方向に切断した隔膜断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し、測定対象とする多孔質層の断面観察画像を得る。電界放出型走査電子顕微鏡による撮影倍率は特に限定されないが、マクロボイドの大きさ等を勘案すれば、100~2000倍であることが好ましく、200~1000倍であることがより好ましい。
上記長径および短径は、得られた断面観察画像において観察されるボイド像より、厚み方向長さ(Lt)および面方向長さ(Lf)を求め、(Lt)および(Lf)の内、大きい方を長径,小さい方を短径とする。
厚み方向長さ(Lt)は、隔膜の厚み方向、すなわち、隔膜の表面に対して垂直方向における長さであり、具体的には、ボイドにおける隔膜(多孔質膜)表面に最も近い点と、その反対側の表面に最も近い点との、隔膜の厚み方向(隔膜の表面に対して垂直方法)における距離を該ボイドの厚み方向長さ(Lt)とする。該ボイドの面積(S)を厚み方向長さ(Lt)で除した値を該ボイドの面方向長さ(Lf)とする。このようにして求めた(Lt),(Lf)の内、大きい方を該ボイドの長径(Lb),小さい方を短径(Ls)とする。
上記ボイドにおける厚み方向長さ(Lt)、面積(S)は、上記断面観察画像を、画像解析ソフト(例えば、Scion Image、Scion社製)を用いて、ボイド部分を暗部として抽出し、求めることができる。
このようにして求めた長径が10μm以上、短径が5μm以上のボイドをマクロボイドというが、本発明のアルカリ水電解用隔膜においては、その表面層を構成する少なくとも一つの多孔質層が、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下であることが重要である。
上記マクロボイド含有率は、上記断面観察画像における、多孔質層の面積に対する長径が30μm以上であるマクロボイドの合計面積の割合(百分率)を意味する。通常、上記断面観察画像において、隔膜(多孔質膜)の厚み方向における多孔質層の厚み(全厚み)と、隔膜(多孔質層)の面方向における長さ400μmの線分で囲まれた領域を測定領域とする。
そして、上記測定領域において、画像解析ソフト(例えば、Scion Image、Scion社製)を用いて、長径が30μm以上であるマクロボイドの総面積(すなわち、該マクロボイドの個々の面積の合計)(Sy)および上記測定領域の面積(St)を求め、(St)に対する(Sy)の割合(百分率)を求め、得られた値を、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率とする。
本発明のアルカリ水電解用隔膜における多孔質層は、上述のようにして求めた長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下である。本発明のアルカリ水電解用隔膜が、さらに引張強度等の強度特性にも優れる観点から、上記マクロボイド含有率が35%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。
また同様の理由から、同様にして求めた長径が20μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下であることが好ましい。より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、最も好ましくは25%以下である。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、下記式(1)で表されるXが0.6以上である。
X=隔膜の透気度(秒)/隔膜の膜厚(μm) (1)
式(1)において、隔膜の透気度は、隔膜の透気度を意味する。透気度は従来公知の測定方法により求めることができ、市販の測定装置を用いて測定した値を採用することができる。測定時に用いるガスは空気である。たとえば、王研式透気度試験機(旭精工社製、型番:EGBO)を用いて透気度を測定し、その測定値を本発明のアルカリ水電解用隔膜の透気度とすることができる。一試料について、複数箇所、たとえば3点を任意に選んで測定し、その平均値を透気度とすることが好ましい。
式(1)における、隔膜の膜厚は、本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みを意味する。測定方法はマイクロメーターにより測定した値を採用する。通常、複数箇所、たとえば10点を任意に選んで測定し、その平均値を、隔膜の膜厚とすることが好ましい。マイクロメーターとしては市販品、たとえば、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いることが好ましい。
上記の測定方法により測定した、本発明のアルカリ水電解用隔膜の透気度(秒)、膜厚(μm)を用いて、Xを求めることができる。Xは、0.65以上であることがより好ましく、0.70以上であることがさらに好ましく、0.75以上であることが特に好ましい。一方、Xの上限は特に限定されないが、4.00以下であることが好ましく、3.50以下であることがより好ましい。
本発明のアルカリ水電解用隔膜について、上記マクロボイド含有率および上記Xを求めるための透気度、膜厚を測定するにあたり、該隔膜の任意の部分を測定試料とすることができるが、隔膜がシート状である場合、シートの中心をその中心とし、シートの面方向の全面積の80%となる面積の円を描いた時、該円の範囲内より、測定部位を選択する(測定試料を得る)ことが好ましい。
該選択部位としては1か所であってもよいが、3か所以上が好ましく、5か所が好ましい。そして、選択した各箇所について、上記マクロボイドの含有率、Xをそれぞれ測定し、それぞれの単純平均値を該隔膜における、マクロボイド含有率、Xとすることが好ましい。
上記多孔質層は、有機ポリマー、及び、無機粒子を含む。
上記有機ポリマーとしては、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、芳香族炭化水素系樹脂等が挙げられる。
上記フッ素系樹脂としては、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。
なかでも、上記有機ポリマーは、耐熱性、耐圧性や耐アルカリ性に優れる点で、芳香族炭化水素系樹脂であることが好ましく、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、隔膜を容易に製造することができる点で、ポリスルホンがさらに好ましい。上記有機ポリマーは、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記有機ポリマーの含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中5~40質量%であることが好ましい。上記有機ポリマーの含有量が上述の範囲であると、アルカリ溶液中での隔膜からの無機成分の溶出が抑制できる。上記有機ポリマーの含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
上記有機ポリマーの含有量は、アルカリ水電解用隔膜が後述する多孔性支持体を含まない場合、アルカリ水電解用隔膜100質量%中28~40質量%であることが好ましい。上記有機ポリマーの含有量が上述の範囲であると、上記有機ポリマーによって制御されたボイド構造を隔膜内に形成しやすくなる。上記有機ポリマーの含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中、31質量%以上であることがより好ましく、38質量%以下であることがより好ましく、36質量%以下であることが更に好ましい。
また、上記有機ポリマーの含有量は、アルカリ水電解用隔膜が後述する多孔性支持体を含む場合、アルカリ水電解用隔膜100質量%中5~35質量%であることが好ましい。上記有機ポリマーの含有量が上述の範囲であると、上記有機ポリマーによって制御されたボイド構造を隔膜内に形成しやすくなる。上記有機ポリマーの含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中、8質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることが更に好ましく、17質量%以上であることが更により好ましく、また、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましく、23質量%以下であることが更により好ましく、21質量%以下であることが特に好ましい。
上記無機粒子としては、例えば、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、アルミニウム、タンタル等の金属水酸化物又は金属酸化物;カルシウム、バリウム、鉛、ストロンチウム等の硫酸塩;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の窒化物;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の炭化物等が挙げられる。上記無機粒子は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでもよい。
なかでも、イオン透過性を向上させることができる点で、金属水酸化物又は金属酸化物が好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化チタンがより好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、酸化チタンが更に好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化チタンがより更に好ましく、水酸化マグネシウムが特に好ましい。
上記無機粒子は、表面が未処理のものであっても、表面処理されたものであってもよい。上記表面処理としては、シランカップリング剤、ステアリン酸、オレイン酸、リン酸エステル等を用いた公知の表面処理が挙げられる。
上記無機粒子の形状は、特に制限されず、不定形状;粒状;顆粒状;薄片状、六角板状等の板状;繊維状等のいずれの形状であってもよい。なかでも、なかでも、樹脂との密着性が優れる点で、上記無機粒子の形状は、粒状、板状であることが好ましく、板状であることがより好ましく、薄片状であることが更に好ましい。また構造が緻密になり、隔膜強度を向上させることができる点で、上記無機粒子の形状は、板状であることが好ましく、薄片状であることがより好ましい。
上記無機粒子は、構造が緻密になり、隔膜の強度を向上させることができる点で、平均粒子径が0.05μm以上であることが好ましく、2.0μm以下であることが好ましい。上記無機粒子の平均粒子径は、0.08μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。
上記平均粒子径は、レーザー回折法による粒度分布測定から求められる体積平均粒子径(D50)である。具体的には、平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製「型番LA-920」)を用いて粒度分布を測定し、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)を平均粒子径とする。なお、粒子をエタノールに混合し超音波照射して分散させたものを測定試料とする。
上記無機粒子は、アスペクト比が2.0~8.0であることが好ましい。アスペクト比が上述の範囲であると、イオン透過性がより一層優れ、均一性に優れた隔膜とすることができる。上記アスペクト比は、2.5~7.0であることがより好ましく、3.0~6.0であることが更に好ましい。
上記アスペクト比とは、最長径(a)と最短径(b)との比[(a)/(b)]を意味し、無機粒子をSEMで観察し、得られた画像の任意の10粒子において、解析ソフト等を使用して、各粒子の最長径(a)と最短径(b)との比[(a)/(b)]を測定し、それらの比の単純平均値をその粒子のアスペクト比として求めることができる。通常、最長径(a)の中点を通って最長径と直交する径のうちの最も短い径を最短径(b)とすることが好ましい。
上記最長径(a)としては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合、粒子の板面の長径を採用し、繊維状である場合は、繊維の長さを採用する。
上記最短径(b)としては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合は、粒子の厚みを採用し、繊維状である場合は、繊維の太さを採用する。粒子の厚み及び繊維の太さとしては、最長径aの中点における厚み、太さをそれぞれ採用することが好ましい。
上記無機粒子としては、なかでも、耐アルカリ性、耐久性に特に優れ、比較的安価でアルカリ水電解用隔膜を得ることができる点で、水酸化マグネシウムが好ましい。本発明において使用することができる水酸化マグネシウムは、その平均粒子径、アスペクト比が各々、上記平均粒子径,上記アスペクト比であることが好ましい。
上記水酸化マグネシウムは、X線回折により測定される(110)面に垂直な方向の結晶子径が35nm以上であることが好ましい。上記(110)面に垂直な方向の結晶子径が上述の範囲であると、隔膜のイオン透過性や隔膜の均一性がより一層優れる。上記(110)面に垂直な方向の結晶子径は、40nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることが更に好ましく、65nm以上であることが特に好ましい。上記(110)面に垂直な方向の結晶子径は、その上限値は特に限定されないが、通常は例えば400nm以下であり、好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下である。
また上記水酸化マグネシウムは、X線回折により測定される(001)面に垂直な方向の結晶子径が15nm以上であることが好ましい。
上記(001)面に垂直な方向の結晶子径は、18nm以上であることがより好ましく、21nm以上であることが更に好ましく、24nm以上であることが特に好ましい。上記(001)面に垂直な方向の結晶子径は、その上限値は特に限定されないが、通常は例えば300nm以下であり、好ましくは250nm以下、更に好ましくは200nm以下である。上記結晶子径は、粉末X線回折法により水酸化マグネシウム粒子のX線回折パターンを測定し、対象の格子面に帰属される回折線の広がり(半値幅)から、Scherrerの式を用いて結晶子径(上記格子面に垂直方向の結晶子径)を算出して求めることができる。
上述した特定の結晶子径範囲の水酸化マグネシウムを得るための方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
マグネシウム塩(塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等)の水溶液、又は、従来公知の方法で得られた酸化マグネシウムの水分散液を原料とし、アルカリ性物性(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等)の添加により、水和反応を行うことで水酸化マグネシウムを調製する。この際に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、硝酸、硫酸等の多塩基酸、又は、これらの混合物の添加により、生成した水酸化マグネシウムの溶解度を調整したり、水熱反応の温度(例えば150℃から270℃)や時間(例えば30分~10時間)を適宜調整したりすることにより、結晶子径の異なる粒子を調製できる。酸の添加量が多い方が結晶成長は進み、結晶子径が大きくなる。また、水熱反応の温度は高い方が、時間は長い方が、結晶成長が進み、結晶子径は大きくなる。
本発明においては、無機粒子として、一般的な市販品を使用することもできる。例えば、本発明において使用することができる水酸化マグネシウムの市販品としては、協和化学工業社製の200-06H、宇部マテリアル社製UP650-1、タテホ化学工業社製MAGSTAR♯20、神島化学工業社製♯200等が挙げられる。
上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中30~90質量%であることが好ましい。上記無機粒子の含有量が上述の範囲であると、上記アルカリ水電解用隔膜は、イオン透過性に優れたものとなる。上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜が後述する多孔性支持体を含まない場合、アルカリ水電解用隔膜100質量%中50~90質量%であることが好ましい。上記無機粒子の含有量が上述の範囲であると、構造を緻密にすることができ、隔膜の強度を向上させることができる。上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
また、上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜が後述する多孔性支持体を含む場合、アルカリ水電解用隔膜100質量%中30~50質量%であることが好ましい。上記無機粒子の含有量が上述の範囲であると、構造を緻密にすることができ、隔膜の強度を向上させることができる。上記無機粒子の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中、32質量%以上であることがより好ましく、34質量%以上であることが更に好ましく、また、46質量%以下であることがより好ましく、42質量%以下であることがさらに好ましく、39質量%以下であることがさらにより好ましい。
上記多孔質層は、上記無機粒子100質量部に対して、上記有機ポリマーを40~80質量部含むことが好ましく、45~70質量部含むことがより好ましく、45~60質量部含むことが更に好ましい。上記無機粒子と有機ポリマーの含有割合が上述の範囲であると、隔膜の強度を向上させることができ、所定範囲の質量減少率を有する隔膜が得られやすくなる。また、上記アルカリ水電解用隔膜は、上記無機粒子100質量部に対して、上記有機ポリマーを40~80質量部含むことが好ましく、45~70質量部含むことがより好ましく、45~60質量部含むことが更に好ましい。
上記多孔質層の厚みは、特に限定されないが、通常、30~2000μmが好ましい。本発明のアルカリ水電解用隔膜が、多孔質層のみからなる場合、多孔質層の厚みは、30~2000μmが好ましく、100μm以上はより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。上限は1000μm以下がより好ましく、500μm以下が更に好ましい。本発明のアルカリ水電解用隔膜が多孔性支持体を含む場合、多孔質層の厚みは、好ましくは30~1000μm、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、最も好ましくは60μm以下である。
上記多孔質層の厚みの測定方法は特に限定されないが、本発明のアルカリ水電解用隔膜における厚み方向、すなわち、隔膜の表面に対して垂直方向に切断した隔膜断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し、得られた顕微鏡像より求めることができる。通常は、任意の複数箇所、たとえば5箇所における厚みを測定し、その平均値を、多孔質層の厚みとすることができる。
上記アルカリ水電解用隔膜が多孔質層のみからなる場合は、本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みの場合と同様に、市販の測定器で測定することができる。たとえばデジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した値を採用することができる。任意の厚み5点以上(たとえば10点)を測定し、その平均値を多孔質層の厚みとすることができる。
上記多孔性支持体の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、優れた耐熱性及び耐アルカリ性を発揮できる点で、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことがより好ましい。
上記多孔性支持体の形態としては、例えば、不織布、織布、メッシュ、多孔質膜、又は不織布と織布の混合布等が挙げられるが、好ましくは、不織布、織布、又はメッシュが挙げられ、より好ましくは、不織布、メッシュが挙げられ、更に好ましくは不織布が挙げられる。
上記多孔性支持体としては、なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、不織布、織布、又はメッシュが好ましい。更に、多孔性支持体としては、ポリフェニレンサルファイドを含む、不織布又はメッシュが好ましい。
上記多孔性支持体がシート状である場合、上記多孔性支持体の厚みは、本発明のアルカリ水電解用隔膜が本発明の効果を発揮できる限り特に限定されないが、例えば、好ましくは30~2000μm、より好ましくは50~1000μm、更に好ましくは80~500μm、最も好ましくは80~250μmである。
多孔性支持体の厚みは、本発明のアルカリ水電解用隔膜における厚み方向、すなわち、隔膜の表面に対して垂直方向に切断した隔膜断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察し、得られた顕微鏡像より求めることができる。通常は、任意の複数箇所、たとえば5箇所における厚みを測定し、その平均値を、多孔性支持体の厚みとすることができる。
また、多孔性支持体を単離できる場合は、本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みの場合と同様に、市販の測定器で測定することができる。たとえばデジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した値を採用することができる。任意の5点以上(たとえば10点)を測定し、その平均値を多孔性支持体の厚みとすることができる。
本発明のアルカリ水電解用隔における透気度は、特に限定されないが、50~5000秒であることが好ましい。透気度が上述の範囲であると、ガスバリア性が良好であり、酸素ガスと水素ガスが混合するのを良好に防ぐことができる。上記透気度は、100~1000秒であることが好ましく、150~800秒であることが更に好ましい。透気度は測定用ガスとして空気を用い、上記した測定方法により求めることができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の厚みは、特に限定されず、使用する設備の大きさや取り扱い性等に応じて適宜選択すればよいが、50~2000μmが好ましく、100~1000μmがより好ましく、100~500μmが更に好ましく、150~350μmが最も好ましい。上記厚みの測定方法は特に制限されないが、たとえばマイクロメーターにより測定した値を採用することが好ましい。通常、複数箇所、たとえば10点を任意に選んで測定し、その平均値を、隔膜の膜厚とすることが好ましい。マイクロメーターとしては市販品、たとえば、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いることが好ましい。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、空隙率が25~80%であることが好ましく、30~75%がより好ましく、35~70%がさらに好ましい。膜全体としての空隙率が上述の範囲であると、隔膜中の空隙に電解液がより連続的に満たされるため、より高いイオン伝導性を示すものとなり易い。
上記空隙率は、下記に示す方法により測定された隔膜の実測密度値、および隔膜を構成する各成分の密度値(真密度)および組成比を用いて算出される隔膜の計算密度値より、下記式から算出できる。
空隙率(%)=[1-(実測密度値)/(計算密度値)]×100
実測密度値は、得られた隔膜の任意の場所から切り出した試験片について、質量と体積を測定し、質量を体積で除すことにより算出できる。体積は、試験片の縦方向の長さ、横方向の長さを、ノギスを用いて測定、膜厚を上記膜厚測定方法に基づき測定することにより算出できる。また、試験片の質量は、体積を測定した試験片について小数点以下4桁の精密天秤を用いて測定できる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜のイオン伝導度は、実施例に記載の方法で算出できる。本発明のアルカリ水電解用隔膜のイオン伝導度は、100mS/cm超であることが好ましい。このようにした場合に、アルカリ水電解における電解効率をより高くできる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、30℃の水中で、周波数38kHz、出力100Wで3分間の超音波処理後の隔膜成分の脱落による質量減少率が2%以下であることが好ましい。隔膜を超音波処理に供することにより、隔膜成分が一部脱落する場合がある。隔膜の強度が低いと、超音波処理により隔膜成分が脱落しやすく、また脱落する量も増大する。上記隔膜成分の脱落による質量減少率は、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
上述した、アルカリ水電解用隔膜における、30℃の水中で、周波数38kHz、出力100Wで3分間の超音波処理前後の隔膜成分の脱落による質量減少率は、下記の式により求めることができる。
質量減少率(%)=100-(超音波処理後の隔膜質量)/(超音波処理前の隔膜質量)×100
上記超音波処理試験において、隔膜は隔膜全体が水中に浸漬した状態となるように設置する。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、たとえば、下記に示す熱アルカリ耐久試験を行った場合の下記式で算出される膜抵抗比が、0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上である。
膜抵抗比=(240時間後の膜抵抗)/(24時間後の膜抵抗)
(熱アルカリ耐久試験)
本発明のアルカリ水電解用隔膜を3cm角に切り出し、これを試験片とする。該試験片2枚を、フッ素樹脂容器(PFA製)に入れ、30gの30%KOH水溶液に浸漬し、90℃で保持する。浸漬24時間後と240時間後の試験片を取り出し、室温にて膜抵抗を測定する。
膜抵抗は、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜は上記構成よりなるため、熱アルカリ水中におけるイオン伝導性の安定性に優れるものとなる。そのため、アルカリ性水溶液を電解液とした水の電気分解装置の隔膜に本発明のアルカリ水電解用隔膜を用いることにより、長期間安定して高純度の水素ガスを製造することができる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、特に制限されないが、好ましい製造方法としては、たとえば、後述する製造方法(1)(実施形態3)、あるいは製造方法(2)(実施形態4)があげられる。
2.アルカリ水電解用隔膜用の組成物
本発明における好ましい一実施形態(実施形態2)である、アルカリ水電解用隔膜用の組成物について説明する。実施形態2にかかる、上記組成物を本発明の組成物(i)あるいは単に組成物(i)とも称する。
上記組成物(i)は、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が30000mPa・s以下であり、かつ剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上であるアルカリ水電解用隔膜用の組成物である。
粘度(25℃)とは、常温(25℃)における粘度であり、下記方法により測定した粘度である。
(粘度(25℃)の測定方法)
レオメーター(HAAKE社製レオスト6000)、プレートPP35Ti(D=35mm)を用いて、試料を25℃雰囲気に2時間静置し、試料ステージを25℃に調温後適量投入する。剪断速度500s-1にて30秒間処理して試料を均一化し、その後剪断なしで調温のため10秒間保持した後、剪断速度0から300s-1まで9分間で測定点1000点を取得する。得られたデータから0.1s-1、10s-1、250s-1のそれぞれについて最も近しい測定点前後5点で線形近似式を求め、そこから計算される各々の値を、各剪断速度(0.1s-1、10s-1、250s-1)における粘度(25℃)値とする。
上記組成物(i)は、アルカリ水電解用隔膜を製造するための組成物、特に塗布用組成物として好ましく用いることができ、本発明の実施形態1として説明したアルカリ水電解用隔膜を製造するための組成物としても好ましく用いることができる。なお、下記に説明する組成物(i)の好ましい態様は、塗布用組成物として用いる場合の好ましい態様でもある。
組成物(i)は、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が30000mPa・s以下である。剪断速度10s-1における粘度(25℃)が、25000mPa・s以下であることが好ましく、20000mPa・s以下であることがより好ましい。
上記組成物(i)は、塗布用組成物として用いた場合、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が低いため、塗布時において、塗布性能に優れたものとなり、たとえば、塗布量(塗布厚み)を制御し易く、多孔性支持体に塗布した時の含侵性に優れるといった作用効果を発揮する組成物としても有用である。
上記組成物(i)は、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が、10000mPa・s以上であることが好ましい。10000mPa・s未満であると、流動性が高すぎて塗布時の歩留まりが低下する場合がある。剪断速度10s-1における粘度(25℃)は12000mPa・s以上であることがより好ましく、14000mPa・s以上であることがさらに好ましい。
上記組成物(i)は、剪断速度250s-1における粘度(25℃)が、15000mPa・s以下であることが好ましく、12000mPa・s以下であることがより好ましく、10000mPa・s以下であることがさらに好ましい。上記組成物(i)は、剪断速度250s-1における粘度(25℃)が、5000mPa・s以上であることが好ましい。剪断速度250s-1における粘度(25℃)は6000mPa・s以上であることがより好ましく、7000mPa・s以上であることがさらに好ましい。
上記組成物(i)は、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である。剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が200000mPa・s以上であることが好ましく、300000mPa・s以上であることがより好ましい。剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上であることにより、上記組成物(i)は、マクロボイドの生成、成長が抑制された膜を得るための組成物として有用である。
上記組成物(i)は、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が600000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは500000Pa・s以下であり、さらに好ましくは450000Pa・s以下である。
上記組成物(i)において、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)をA、剪断速度10s-1における粘度(25℃)をBとするとき、Bに対するAの比(A/B)が5以上であることが好ましい。上記比(A/B)は8以上であることがより好ましく、さらに好ましくは15以上、特に好ましくは20以上である。一方、上限は特に限定されないが、通常、60以下であり、50以下が好ましく、より好ましくは40以下である。
上記組成物(i)は、有機ポリマーを含む。該有機ポリマーは、本発明のアルカリ水電解用隔膜を構成する多孔質層に含まれる有機ポリマーと同様のものを用いることができ、その好ましい態様も同様である。
上記組成物(i)は、無機粒子を含む。該無機粒子は、本発明のアルカリ水電解用隔膜を構成する多孔質層に含まれる無機粒子と同様のものを用いることができ、その好ましい態様も同様である。
上記組成物(i)は、さらに溶媒を含むことが好ましい。上記溶媒としては、特に制限されないが、有機溶媒が好ましく、また、有機ポリマーを溶解することができるものが好ましい。好ましい有機溶媒としては、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、有機ポリマーの溶解性に優れ、無機粒子の分散性にも優れる点で、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。上記溶媒は、水等の有機溶媒以外を含んでいてもよい。
上記組成物(i)は、また、金属塩化物を含んでいてもよい。金属塩化物としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシム等が挙げられる。これらの塩は1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、溶媒への溶解性が優れる点で、塩化リチウムが好ましい。金属塩化物を含むことにより、組成物(i)における粘度を上記の好ましい範囲に制御し易くなる。 金属塩化物の含有量は、組成物(i)に含まれる無機粒子100質量%に対する割合で0.001質量%以上、1質量%未満であることが好ましい。金属塩化物の含有量は、無機粒子100質量%に対する割合で0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、また、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。上記組成物(i)が金属塩化物を含む形態もまた本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記組成物(i)は、上記以外の添加剤を含んでいてもよい。たとえば、可塑剤、界面活性剤等があげられる。上記組成物(i)が溶媒を含まない場合は可塑剤を含むことが好ましい。
上記組成物(i)は、上記の粘度(25℃)特性を有する限り、各成分の含有量、組成比等は特に限定されない。
たとえば、上記組成物(i)が溶媒を含み、組成物(i)における無機粒子および有機ポリマーの合計含有量が、組成物(i)100質量%に対して、40質量%以上であることが好ましい。より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは48質量%以上である。一方、上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは55質量%以下である。
また、上記組成物(i)における、上記無機粒子の含有量は、上記無機粒子と上記有機ポリマーとの合計含有量100質量%に対し、50~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
また、組成物(i)に含まれる金属塩化物の含有量は無機粒子100質量%に対する割合で0.001質量%以上、1質量%未満であることが好ましい。さらに該含有量が上述した好ましい範囲であることがより好ましい。
上記組成物(i)が溶媒を含まない場合、有機ポリマーと無機粒子との合計含有量は、組成物(i)100質量%に対し、80~100質量%であることが好ましい。含有量が上記範囲であると、組成物(i)における粘度を上記の好ましい範囲に制御し易くなる。
上記組成物(i)は上述したように、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度が低い状態では所定値以上の高い粘度(25℃)を有しながら、剪断速度が高い状態では相対的に低い粘度(25℃)を有することにより、マクロボイドの生成よび成長を抑制する等の膜の構造制御に有利なだけでなく、塗布量(塗布厚み)の制御性や含侵性等の塗布性能にも優れるため、たとえば、熱アルカリ中におけるイオン伝導性の安定性に優れるアルカリ水電解を製造するための塗布用組成物として好ましく用いることができる。
さらに、上記組成物(i)が有する上記粘度特性によるマクロボイドの生成、成長の抑制効果は、上記組成物(i)を用いて得られた塗膜を、非溶媒誘起相分離法を利用した反応(凝固反応)に供した場合に、より顕著となる。よって、上記組成物(i)は、非溶媒誘起相分離工程を含むアルカリ水電解用隔膜の製造方法において塗布用組成物として特に好ましく用いることができる。
また、上記組成物(i)を塗布用組成物として用いる場合、組成物(i)は溶媒を含むものであることが好ましい。上記組成物(i)は、溶媒を含むことにより、塗布性能に一層優れるものとなるとともに、上記組成物(i)を用いて得られた塗膜を非溶媒誘起相分離工程に供した場合に多孔質構造を制御し易くなる。
上記組成物(i)はまた、アルカリ水電解用隔膜を製造するための成形用組成物としても好ましく用いることができる。特に、成形により得られた膜に対し熱誘起相分離法を適用する、アルカリ水電解用隔膜の製造方法において好ましく用いることができる。
このように上記組成物(i)を成形用組成物として用いる場合、溶媒を含まないものであることが好ましい。
上記組成物(i)の調製方法は、特に制限されず、上記組成物(i)は有機ポリマーと、無機粒子とを混合することにより調製することができる。
上記混合する方法は、特に限定されず、従来公知の混合、分散方法を採用し得る。たとえば、溶融混錬法、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、ディスパー、サンドミル、ロールミル、ポットミル、ペイントシェーカー等を用いる方法等、公知の混合分散の手段が挙げられる。また、必要に応じて分散剤等を適宜添加してもよい。
有機ポリマーと無機粒子とを均一に混合し易い点から、溶媒を用いることが好ましい。溶媒を用いた混合物の調製方法としては、たとえば、有機ポリマーと無機粒子と溶媒とを混合する場合、3成分を同時に混合してもよいし、無機粒子を溶媒に分散させた分散液を予め調製し、次いで上記分散液と有機ポリマーを混合してもよいし、無機粒子を分散させた分散液、有機ポリマーを溶媒に分散又は溶解させた樹脂液をそれぞれ予め調製し、次いでこれらの分散液と樹脂液を混合してもよい。溶媒としては、上記溶媒と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
なかでも、無機粒子の分散状態を制御し易く、有機ポリマーと無機粒子を均一に混合することができる点で、無機粒子を分散させた分散液、有機ポリマーを溶媒に分散又は溶解させた樹脂液をそれぞれ予め調製し、次いでこれらの分散液と樹脂液を混合する方法が好ましい。ここで用いる有機ポリマー、無機粒子は、実施形態2で説明した有機ポリマー、無機粒子とそれぞれ同様である。
上記分散液中の無機粒子の濃度は、特に限定されないが、混合が容易な点で、分散液100質量%に対して30~60質量%が好ましい。より好ましくは40~60質量%、更に好ましくは50~60質量%である。上記分散液がさらに金属塩化物を含む場合においても分散液中の無機粒子の濃度は上記と同様である。
上記有機ポリマーを分散または溶解した樹脂液中の有機ポリマーの濃度は、特に限定されないが、混合が容易な点で、樹脂液100質量%に対して10~50質量%が好ましい。より好ましくは20~40質量%、更に好ましくは25~35質量%である。上記樹脂液がさらに金属塩化物を含む場合においても樹脂液中の有機ポリマーの濃度は上記と同様である。
上記混合や分散の方法としては、特に制限されず、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、ディスパー、サンドミル、ロールミル、ポットミル、ペイントシェーカー等を用いる方法等、公知の混合分散の手段が挙げられる。また、分散剤等を適宜添加してもよい。
上記のようにして得られた、無機粒子、有機ポリマーおよび溶媒を含む混合物を、組成物(i)とすることもできるし、さらに、金属塩化物等の添加剤を混合したものも組成物(i)とすることもできる。たとえば、添加剤の混合方法は、特に限定されない。金属塩化物を混合する場合、たとえば、上記の方法で得られた上記混合物に金属塩化物を添加してもよいし、無機粒子を溶媒に分散させた分散液を調製する際に金属塩化物を混合してもよいし、無機粒子を溶媒に分散させた分散液に添加してもよいし、有機ポリマーを溶解または分散した樹脂液に添加してもよい。金属塩化物以外の添加剤を混合する場合も同様である。
上記組成物(i)の調製時における増粘等が起こり難く、各成分の均一な混合状態が得られ易い点で、金属塩化物の添加方法としては、無機粒子を溶媒に分散させた分散液に添加する方法、および無機粒子、有機ポリマーおよび溶媒を含む混合物に金属塩化物を添加する方法等が好ましい。
なお金属塩化物を上記分散液等に混合する際に、金属塩化物を粉末状で混合してもよいし、予め金属塩化物を溶媒に溶解または分散した液(添加液)を予め調製しこれを用いてもよい。該溶媒としては上記有機ポリマーや無機粒子と混合する溶媒と同様のものを好ましく用いることができる。
上記組成物(i)が溶媒を含む場合は、上記の溶媒を用いた調製方法を採用し、上記組成物(i)の有機ポリマーの種類(材質、分子量)、無機粒子の種類(材質、形状、粒径)、溶媒の種類(溶解力、極性)、これら各々の含有量、これらの組合せ、金属塩化物等の添加剤の添加の有無、量等を適宜選択し、粘度特性を調整することにより、本発明の実施形態2に係る組成物(i)を得ることができる。
3.アルカリ水電解用隔膜の製造方法
本発明のアルカリ水電解用隔膜を製造する方法について説明する。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法は、下記製造方法(1)、(2)である。
上記製造方法(1)は、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が30000mPa・s以下であり、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用いることを特徴とする。
上記製造方法(2)は、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用い、該組成物の粘度が30000mPa・s以下となる剪断速度で該組成物を塗布する工程を含むことを特徴とする。
これらの製造方法(1)あるいは(2)を用いることにより、本発明のアルカリ水電解用隔膜(実施形態1)を効率的に製造することが可能となる。またこれらの製造方法(1)あるいは(2)を用いることにより、熱アルカリ中におけるイオン伝導性の安定性に優れるアルカリ水電解用隔膜を効率的に製造することが可能となる。
<アルカリ水電解用隔膜の製造方法(1)>
本発明における好ましい一実施形態(実施形態3)である、アルカリ水電解用隔膜の製造方法(1)について説明する。
上記製造方法(1)において用いる組成物を組成物(A)とも称する。
組成物(A)としては、上記組成物(i)と同様の組成物を用いることができ、その好ましい態様も上記組成物(i)と同様である。
上記製造方法(1)は、上記組成物(A)を用いて、膜を形成し、得られた膜を相分離することにより多孔質構造の膜を製造する方法であることが好ましい。
中でも、下記工程(1a)~(3a)を含む製造方法であることが好ましい。
(1a)組成物(A)を調製する工程
(2a)組成物(A)を用いて塗膜を形成する工程
(3a)該塗膜を非溶媒誘起相分離法により多孔質構造とする工程
工程(1a)において組成物(A)を調製する方法としては、実施形態2において説明した組成物(i)の調製法をそのまま採用することができる。好ましい態様も同様である。工程(1a)は、好ましくは、溶媒を含む組成物(塗布用組成物)を調製する工程である。
工程(2a)は、上記工程(1a)で得られた組成物(A)を用いて塗膜を形成する工程である。
該組成物(A)としては溶媒を含む組成物(塗布用組成物)を用いることが好ましい。上記組成物(A)を、塗布用組成物として用いた場合、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が低いため、塗布時において流動性に優れるため、塗布性能に優れたものとなる。よって上記組成物(A)は、たとえば、塗布量(塗布厚み)を均一に制御し易く、多孔性支持体に対する含侵性に優れる塗布用組成物として用いることができる。上記組成物(A)を上記製造方法(2)における塗布用組成物として用いる場合の好適な態様は、上述した組成物(i)の好適な態様と同様である。
上記塗膜を形成する方法としては、例えば、上記組成物(A)を基材上に塗布する方法等が好ましく挙げられる。上記工程(2a)は、上記組成物(A)を多孔性支持体に塗布する工程を含むことが好ましい。
上記塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、ダイコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スプレー、アプリケーター、コーター等を用いる方法等の公知の塗布手段が挙げられる。
上記基材としては、上記組成物(A)を塗布して塗膜を形成することができるものであれば、特に限定されず、多孔性支持体以外にも例えば、ポリテトラエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等の樹脂からなるフィルム又はシート、ガラス板等が挙げられる。なかでも、ポリテトラエチレンテレフタレートのフィルム又はシートが好ましい。
上記多孔性支持体としては、実施形態1の説明において上述したものと同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
上記アルカリ水電解用隔膜が多孔性支持体を含む場合は、多孔性支持体に上記組成物(A)を塗布するとよい。塗布方法としては、多孔性支持体に上記組成物(A)を直接塗布する方法、多孔性支持体を上記組成物(A)中に浸漬する方法が挙げられる。また、上記組成物(A)を上述した基材上に塗布し、塗布物に多孔性支持体を接触させて、上記組成物(A)を多孔性支持体に含浸させる方法等が挙げられる。多孔性支持体に上記組成物(A)を含浸させることにより、上記組成物(A)由来の塗膜と多孔性支持体とが一体化した複合体を作製することができる。
上記組成物(A)の塗布量としては、特に制限されず、得られる隔膜が、上述した効果が発揮できる厚さを有するよう適宜設定すればよい。
上記工程(3a)は、工程(2a)で得られた塗膜を非溶媒誘起相分離法により多孔質構造とする工程である。工程(3a)は、工程(2a)で得られた塗膜を有機ポリマーに対する非溶媒を含む液に接触させて上記塗膜を多孔質構造とする工程ということもできる。上記有機ポリマーに対する非溶媒を含む液を非溶媒含有液とも称する。
上記塗膜を、上記有機ポリマーに対する非溶媒を含む液と接触させることにより、上記塗膜中に上記非溶媒が拡散し、上記非溶媒に溶解しない有機ポリマーは凝固する。一方で、上記非溶媒に溶解しうる塗膜中の溶媒は、塗膜から溶出する。このような相分離が生じることにより、有機ポリマーが凝固し、多孔質構造が形成される。
塗膜を形成する組成物(A)が、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上であると、上記組成物からなる塗膜の相分離速度が低くなるよう抑制されるため、マクロボイドの生成、成長が抑制された多孔質構造が得られ易くなる。
上記塗膜と上記非溶媒含有液とを接触させる方法としては、上記塗膜を上記非溶媒含有液中に浸漬させる方法(凝固浴)等が挙げられる。多孔質層を形成するための上記組成物(A)を多孔性支持体に塗布し塗膜を形成した場合は、該塗膜を形成した多孔性支持体を上記非溶媒中に浸漬させるとよい。
上記有機ポリマーに対する非溶媒としては、上記有機ポリマーを実質的に溶解しない性質を有する溶媒が挙げられる。上記有機ポリマーを実質的に溶解しないとは、25℃で、溶媒100gに対し、有機ポリマーの溶解度が100mg以下である場合をいう。
上記非溶媒としては、例えば、純水、蒸留水、イオン交換水等の水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコール;又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、なかでも経済性と排液処理の観点から水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。
上記非溶媒含有液は、上記有機ポリマーに対する非溶媒を含んでいればよく、その濃度が特に限定されないが、たとえば、非溶媒含有液における該非溶媒の濃度が100質量%である形態もしくは100質量%に近い濃度に維持する形態も好ましい実施形態の一つである。
一方、非溶媒含有液は、非溶媒以外の溶媒を含む形態も好ましい実施形態の一つである。この場合、非溶媒含有液における該非溶媒の濃度が10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。一方、上限は90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
非溶媒含有液はまた、非溶媒含有液に含まれる非溶媒と非溶媒以外の溶媒の合計量100質量%に対し、非溶媒を10質量%以上、90質量%以下の割合で含むことが好ましい。より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、一方、上限のより好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
また、非溶媒以外の溶媒としては、特に限定されないが、塗膜中に含まれる溶媒と同様の溶媒を含むことが好ましい。非溶媒含有液が、塗膜中に含まれる溶媒と同様の溶媒を含む場合、塗膜中に含まれる溶媒と同様の溶媒の含有量は、非溶媒含有液に含まれる非溶媒と非溶媒以外の溶媒の合計量100質量%に対し、10質量%以上、90質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上、80質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上、60質量%以下である。
上記工程(3a)の温度条件は、塗膜を均一に凝固させることができる点で、5~30℃であることが好ましく、10~30℃であることがより好ましく、15~30℃であることが更に好ましい。
上記工程(3a)により、上記工程(2a)で形成した塗膜は、凝固し多孔質構造となる。凝固し多孔質構造となった塗膜は、上記非溶媒等の工程(3a)で用いた非溶媒含有液に含まれる溶媒成分および/または工程(2a)で形成した塗膜に含まれる溶媒成分を含む。
本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法(1)は、更に、下記工程(4a)を含むことが好ましい。
(4)工程(3a)により得られた多孔質構造とした塗膜を乾燥させて多孔質層を得る工程。
工程(4a)においては、工程(3a)により得られた多孔質構造とした塗膜に含まれる非溶媒等の揮発成分を除去することにより、多孔質層を得ることができる。
乾燥温度としては、60~100℃が好ましく、60~80℃がより好ましい。乾燥時間としては、2~60分間が好ましく、2~30分間がより好ましく、5~30分間が更に好ましい。
上記アルカリ水電解用隔膜の製造方法(1)は、上述した工程(1a)~(4)以外に、隔膜の密度を均一にするためにプレス処理する工程等、公知の他の工程を含んでいてもよい。
上述したように、本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法(1)は、上記の工程(1a)~(3a)を含む製造方法であることが好ましく、工程(1a)~(4a)を含む製造方法であることがより好ましい。ただし、本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法(1)は、これらの好ましい形態に制限されるものではない。
<アルカリ水電解用隔膜の製造方法(2)>
本発明における好ましい一実施形態(実施形態4)である、アルカリ水電解用隔膜の製造方法(2)について説明する。
上記製造方法(2)は、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用い、該組成物の粘度が30000mPa・s以下となる剪断速度で該組成物を塗布する工程を含むことを特徴とする。
上記製造方法(2)において用いる組成物を組成物(B)と称する。
上記組成物(B)は、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である。
上記有機ポリマー、上記無機粒子は、製造方法(1)で用いる有機ポリマー、無機粒子と同様であり、その好ましい態様も同様である。
上記組成物(B)は、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である。剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が200000mPa・s以上であることが好ましく、300000mPa・s以上であることがより好ましい。
上記組成物(B)は、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が600000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは500000Pa・s以下であり、さらに好ましくは450000Pa・s以下である。
上記組成物(B)は、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が30000mPa・s以下であることが好ましく、25000mPa・s以下であることがより好ましく、20000mPa・s以下であることがさらに好ましく、一方、下限値は、10000mPa・s以上であることが好ましく、12000mPa・s以上であることがより好ましい。
上記組成物(B)は、剪断速度250s-1における粘度(25℃)が、15000mPa・s以下であることが好ましく、12000mPa・s以下であることがより好ましく、10000mPa・s以下であることがさらに好ましい。剪断速度250s-1における粘度(25℃)は、5000mPa・s以上であることが好ましく、6000mPa・s以上であることがより好ましく、7000mPa・s以上であることがさらに好ましい。
上記組成物(B)は、さらに溶媒を含むことが好ましい。上記溶媒としては、特に制限されないが、有機溶媒が好ましく、有機ポリマーを溶解することができるものが好ましい。好ましい有機溶媒としては、上記組成物(i)において用いることのできる溶媒と同様である。
上記組成物(B)は、金属塩化物を含んでいることが好ましく、好ましい金属塩化物の種類、金属塩化物の好ましい含有量等は、組成物(i)における金属塩化物の場合と同様である。
上記組成物(B)は、上記以外の添加剤を含んでいてもよい。その好ましい態様も組成物(i)の場合と同様である。
上記組成物(B)は、上記の粘度(25℃)特性を有する限り、各成分の含有量、組成比等は特に限定されない。
たとえば、上記組成物(B)が溶媒を含み、組成物(B)における無機粒子および有機ポリマーの合計含有量が、組成物(B)100質量%に対して、40質量%以上であることが好ましい。より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは48質量%以上である。一方、上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは55質量%以下である。
また、上記組成物(B)における、上記無機粒子の含有量は、上記無機粒子と上記有機ポリマーとの合計含有量100質量%に対し、50~90質量%であることが好ましい。上記含有量は、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
また、組成物(B)が上記金属塩化物を含む場合、組成物(B)に含まれる金属塩化物の含有量は無機粒子100質量%に対する割合で0.001質量%以上、1質量%未満であることが好ましい。金属塩化物の含有量は、無機粒子100質量%に対する割合で0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、また、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。
上記組成物(B)は、実施形態2において説明した組成物(i)の調製法と同様にして調製することができる。
上記製造方法(2)は、上記組成物(B)を用い、該組成物の粘度が30000mPa・s以下となる剪断速度で該組成物を塗布する工程を含む限り、特に制限されないが、下記工程(1b)~(3b)を含む製造方法であることが好ましい。
(1b)組成物(B)を調製する工程
(2b)組成物(B)を用いて塗膜を形成する工程
(3b)該塗膜を非溶媒誘起相分離法により多孔質構造とする工程
工程(1b)においては、実施形態2において説明した組成物(i)の調製法、すなわち、工程(1a)における組成物(A)の調製法を準用することにより、組成物(B)を調製することができる。工程(1b)は、組成物(B)として溶媒を含む組成物(塗布用組成物)を調製する工程であることが好ましい。
工程(2b)は、上記工程(1b)で得られた組成物(B)を用いて塗膜を形成する工程である。該組成物(B)としては溶媒を含む組成物(塗布用組成物)を用いることが好ましい。
工程(2b)においては、組成物(B)の粘度が30000mPa・s以下となる剪断速度で該組成物(B)を塗布することが必要である。
上記剪断速度は、塗布時において組成物(B)にかかる最大剪断速度を意味する。最大剪断速度について図1を例として用いて説明する。図1は、コーターを横から見たときの構成を模式的に示したものである。剪断速度は、基材の搬送速度をV(m/s)、ギャップをH(m)としたとき、V/Hで決定される。図1に示すように、組成物(B)等の塗布液は、コーター付近に投入されて、コーターとバックロールに挟まれるため、コーターとバックロール間の距離、すなわちギャップHに対応した剪断を受ける。ギャップHはコーター先端方向に向けて段々小さくなり、ブレード先端時において最小となる。速度一定の場合、ギャップHが最小となる位置において塗布液にかかる剪断速度は最大となる。該剪断速度が上記最大剪断速度であり、コーターの場合は、ブレード先端時における塗布液にかかる剪断速度となる。
言い換えれば、工程(2b)においては、塗布する際の組成物(B)の粘度を30000mPa・s以下となるように、最大剪断速度を制御することが必要である。
塗布する際の粘度を上記範囲とすることにより、塗布厚みの均一性、多孔性支持体への含侵性等に優れる塗布が可能となる。
塗布する際の組成物(B)の上記粘度が30000mPa・s以下となるように最大剪断速度を調整することが好ましく、25000mPa・s以下となるよう最大剪断速度を調整することがより好ましく、20000mPa・s以下となるよう最大剪断速度を調整することがさらに好ましい。一方、上記粘度の上限値は、5000mPa・s以上が好ましく、6000mPa・s以上がより好ましい。
塗布する際の組成物(B)の温度は特に限定されないが、0~50℃であることが好ましく、10~40℃であることがより好ましく、15~35℃であることがさらに好ましい。
上記塗膜を形成する方法としては、例えば、上記組成物(B)を基材上に塗布する方法等が好ましく挙げられる。上記工程(2a)は、上記組成物(B)を多孔性支持体に塗布する工程を含むことが好ましい。
上記塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、ダイコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スプレー、アプリケーター、コーター等を用いる方法等の公知の塗布手段が挙げられる。中でも、塗布する際の組成物(B)の粘度を、上記の好ましい温度範囲において、30000mPa・s以下となるように最大剪断速度を調整し易い点から、ダイコーティング、コーター等を用いる塗布方法が好ましい。
上記基材、上記多孔性支持体については、上記製造方法(1)における工程(2a)と同様であり、好ましい態様も同様である。
多孔性支持体を含むアルカリ水電解用隔膜を製造する場合は、多孔性支持体に上記組成物(B)を塗布することが好ましく、その塗布方法としては、製造方法(1)における工程(2a)と同様であり、好ましい態様も同様である。また上記組成物(B)の塗布量としては、特に制限されず、得られる隔膜が、上述した効果が発揮できる厚さを有するよう適宜設定すればよい。
上記工程(3b)は、工程(2b)で得られた塗膜を非溶媒誘起相分離法により多孔質構造とする工程である。工程(3b)は、工程(2b)で得られた塗膜を有機ポリマーに対する非溶媒を含む液(非溶媒含有液)に接触させて上記塗膜を多孔質構造とする工程ということもできる。
上記工程(3b)における、非溶媒の種類、非溶媒含有液の組成、温度等の各種条件等は、製造方法(1)における工程(3a)の場合と好ましい態様も含め、同様である。
上記工程(3b)により、上記工程(2b)で形成した塗膜は凝固し多孔質構造となる。
上記塗膜が、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物(B)の塗布により得られた塗膜であるため、塗膜における相分離反応がゆっくりと進行し、その結果、マクロボイドの生成、成長が抑制された多孔質構造が得られ易くなる。
多孔質構造となった塗膜は、工程(3b)で用いた非溶媒含有液に含まれる溶媒成分および/または工程(2b)で形成した塗膜に含まれる溶媒成分を含む。
上記製造方法(2)は、更に、下記工程(4b)を含むことが好ましい。
(4b)工程(3b)により得られた多孔質構造とした塗膜を乾燥させて多孔質層を得る工程。
上記工程(4b)における、乾燥温度、乾燥時間等の各種条件は、製造方法(1)における工程(4a)の場合と好ましい態様も含め、同様である。
上記製造方法(2)は、上述した工程(1b)~(4b)以外に、隔膜の密度を均一にするためにプレス処理する工程等、公知の他の工程を含んでいてもよい。
上述したように、本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法(2)は、上記の工程(1b)~(3b)を含む製造方法であることが好ましく、工程(1b)~(4b)を含む製造方法であることがより好ましい。ただし、本発明のアルカリ水電解用隔膜の製造方法(2)は、これらの好ましい形態に制限されるものではない。
4.実施形態5にかかるアルカリ水電解用隔膜
本発明における好ましい一実施形態(実施形態5)として、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が30000mPa・s以下であり、かつ剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用いて作製されてなるアルカリ水電解用隔膜をあげることができる。
実施形態5にかかるアルカリ水電解用隔膜は、上記組成物を用いて作製されるが、上記組成物における好ましい態様は、実施形態2に係る組成物(i)における好ましい態様と同様であり、また実施形態3にかかる製造方法(1)で用いる組成物(A)における好ましい態様と同様である。また実施形態5にかかるアルカリ水電解用隔膜を製造するための好ましいプロセスや諸条件等についても、実施形態3にかかる製造方法(1)における好ましいプロセスや諸条件等をそのまま準用することができる。
実施形態5にかかるアルカリ水電解用隔膜は、たとえば、熱アルカリ中でのイオン伝導性の安定性に優れるアルカリ水電解用隔膜として、好ましく用いることができる。
5.実施形態6にかかるアルカリ水電解用隔膜
本発明における好ましい一実施形態(実施形態6)として、有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用い、該組成物の粘度が30000mPa・s以下となる剪断速度で該組成物を塗布する工程を含む製造方法により作製されてなるアルカリ水電解用隔膜をあげることができる。
実施形態6にかかるアルカリ水電解用隔膜は、上記組成物を用いて作製されるが、上記組成物における好ましい態様は、実施形態4にかかる製造方法(2)で用いる組成物(B)における好ましい態様と同様である。また実施形態6にかかるアルカリ水電解用隔膜を製造するための好ましいプロセスや諸条件等についても、実施形態4にかかる製造方法(2)における好ましいプロセスや諸条件等をそのまま準用することができる。
実施形態6にかかるアルカリ水電解用隔膜は、たとえば、熱アルカリ中でのイオン伝導性の安定性に優れるアルカリ水電解用隔膜として、好ましく用いることができる。
6.用途
本発明における、上記各実施形態にかかる各アルカリ水電解用隔膜はいずれも、アルカリ性水溶液を電解液とした水の電気分解用の隔膜として好適に使用することができる。本発明の実施形態3にかかる製造方法(1),実施形態4にかかる製造方法(2)により製造される各アルカリ水電解用隔膜についても同様である。
以下に、これらの本発明のアルカリ水電解用隔膜を使用した電解装置と電解方法について説明する。なお、下記に説明される電解装置、電解方法は、実施形態1にかかるアルカリ水電解用隔膜を用いた場合に限定されず、実施形態5、6の各アルカリ水電解用隔膜を用いた場合にも、実施形態3,4にかかる製造方法により製造される各アルカリ水電解用隔膜を用いる場合にもそのまま適用できる。
(電解装置)
本発明のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ水電解装置の部材として用いられる。上記アルカリ水電解装置としては、例えば、陽極、陰極、及び、陽極と陰極の間に配置された上記アルカリ水電解用隔膜を含むものが挙げられる。より具体的には、上記アルカリ水電解装置は、上記アルカリ水電解用隔膜によって隔てられた、陽極が存在する陽極室と、陰極が存在する陰極室とを備えた電解槽を有する。
上記アルカリ水電解用隔膜は、陽極又は陰極と接するように設置されることが好ましく、陽極及び陰極と接するように設置されることがより好ましい。電極間の距離がより小さくなると、電気抵抗がより小さくなり、電解装置の電解効率をより高くすることができる。本発明のアルカリ水電解用隔膜は、電極間の距離が極力小さくなるよう、隔膜と各電極とが接するように設置した、いわゆる「ゼロギャップ構造」の電解装置においても好適に使用することができる。
上記陽極、及び陰極としては、公知の電極であれば特に制限されず、例えば、銅、鉛、ニッケル、クロム、チタン、金、白金、鉄、これらの金属化合物、金属酸化物、及びこれらの金属の2種以上を含む合金等の公知の導電性基体を含む電極が挙げられる。上記電極は、上記導電性基体に触媒層が形成されたものであってもよい。上記触媒層は、特に制限されず、ニッケル、コバルト、パラジウム、イリジウム、又は白金等を含む金属化合物、金属酸化物、あるいは、合金等を含む、公知のものが挙げられる。上記電極の形状は、特に制限されず、シート状、棒状、角柱状等、公知の形状が挙げられるが、上記アルカリ水電解用隔膜との接触面積が大きく、電解装置の電解効率をより一層向上させることができる点で、シート状であることが好ましい。
また、上記電解装置は、通常使用されるその他の部材を備えていてもよい。上記その他の部材としては、例えば、発生したガスと電解液を分離するための気液分離タンク、電解を安定して行うためのコンデンサー、ミストセパレーター等が挙げられる。
(電解方法)
本発明のアルカリ水電解用隔膜を備えたアルカリ水電解装置を用いて行う水の電気分解の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、上述した本発明のアルカリ水電解用隔膜を備えたアルカリ水電解装置に、電解液を充填し、電解液中で電流を印加することにより行うことができる。
上記電解液としては、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等の電解質を溶解したアルカリ性水溶液が好ましく用いられる。上記電解液における電解質の濃度は、特に制限されないが、電解効率がより一層高くなる点で、20~40質量%であることが好ましい。
電気分解を行う場合の温度としては、電解液のイオン電導性がより向上し、電解効率がより一層高くなりうる点で、50~120℃が好ましく、80~90℃がより好ましい。電流の印加条件は、公知の条件・方法で行うことができ、通常0.2A/cm2以上、好ましくは0.3A/cm2以上である。印可する電流密度が高い方が、短時間に多くの水素ガス、酸素ガスを得ることができるため効率的に水素を生産できる。電解電圧は、約2Vとなるように、例えば1.5~2.5Vを越えない範囲で、電流密度が高くなるように調整されることが好ましい。
電気分解を行う場合の圧力は、特に限定されない。常圧であってもよいし、加圧であってもよい。本発明のアルカリ水電解用隔膜は、隔膜の耐摩耗性に優れ、ガスバリア性が良好に維持されるものであるため、3MPa等の1MPa以上の高圧条件で電気分解を行う場合にも有用である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例において、各評価は下記方法により行った。
<塗布用組成物の粘度(25℃)測定方法>
各実施例等で得られた塗布用組成物について、レオメーター(HAAKE社製レオスト6000)、プレートPP35Ti(D=35mm)を用いて、剪断速度500s-1にて30秒間処理してサンプルを均一化し、その後剪断なしで調温のため10秒間保持した後、剪断速度0から300s-1まで9分間で測定点1000点を取得した。得られたデータから0.1s-1、10s-1、250s-1とそれぞれについて最も近しい測定点前後5点で線形近似式を求め、そこから計算される値を0.1s-1、10s-1、250s-1のそれぞれにおける粘度(25℃)値とした。
<膜厚の測定方法>
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜の厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した。任意10点を測定し、その平均値を膜厚とした。
<マクロボイド含有率の測定方法>
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜において、FE-SEM(日本電子社製、型番:JSM-7600F)測定により、該隔膜表面に垂直な断面の観察画像(断面観察画像)を得た。倍率は300倍とした。
得られた断面観察画像に対して、隔膜の最表面から深さ方向に60μmの範囲と、深さ方向と直交する方向に約400μmの範囲を測定領域とし、画像解析ソフト(ScionImage)を用いて、ボイド像を暗部、その他を明部として抽出した。抽出した各ボイド像について、長径(Lb)、短径(Ls)を求め、長径(Lb)が30μm以上のボイド像の個々の面積(S)を求め、それらの合計を求め、得られた合計面積をマクロボイドの総面積(Sy)とした。一方、上記測定領域の面積(St)を求め、(St)に対する(Sy)の割合(百分率)(Sy/St×100(%))を求めた。同様の操作を任意の5つの視野で実施し、その単純平均値を、測定した隔膜における、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率とした。なお、上記長径(Lb)および短径(Ls)は、各ボイド像において、厚み方向長さ(Lt)および面方向長さ(Lf)を求め、(Lt)および(Lf)の内、大きい方を長径(Lb),小さい方を短径(Ls)とした。
ここで、厚み方向長さ(Lt)は、隔膜の厚み方向、すなわち、隔膜の表面に対して垂直方向における長さであり、具体的には、ボイド像における隔膜(多孔質膜)表面に最も近い点と、その反対側の表面に最も近い点との、隔膜の厚み方向(隔膜の表面に対して垂直方法)における距離を該ボイドの厚み方向長さ(Lt)とした。該ボイドの面積(S)を上記厚み方向長さ(Lt)で除した値を、そのボイド像の面方向長さ(Lf)とした。
<膜抵抗>
(測定方法)
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜について、測定用の隔膜試料を2枚準備する。各隔膜試料を用いて、以下のセル構成で形成したセルを25℃の恒温槽内で30分静置した後、以下の測定条件で交流インピーダンス測定を行い、得られた切片成分(Ra)と測定サンプルを入れない場合の切片成分(Rb)及び下記式により膜抵抗を算出する。隔膜試料2枚について上記測定を行い、得られた測定値(2点)の平均値を算出し、これを隔膜の膜抵抗とする。
[膜抵抗(Ωcm)]=(Ra-Rb)×1.77
(測定条件)
・セル構成
作用極:Ni板
対極:Ni板
電解液:30質量%水酸化カリウム水溶液
サンプル前処理:上記電解液に1晩浸漬
測定有効面積:1.77cm2
・交流インピーダンス測定条件
印加電圧:10mV vs.開回路電圧
周波数領域:100kHz~100Hz
<透気度の測定方法>
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜について、王研式透気度試験機(旭精工社製、型番:EGBO)を用いて透気度を測定した。任意3点を測定し、その平均値を透気度とした。
<単位膜厚あたりの透気度>
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜について、上記の方法で求めた、透気度、膜厚より、次式により、単位膜厚あたりの透気度(X)を算出した。
X=隔膜の透気度(秒)/隔膜の膜厚(μm)
<熱アルカリ耐久試験>
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜を3cm角に切り出し、これを試験片とした。この試験片2枚を、フッ素樹脂容器(PFA製)に入れ、30gの30%KOH水溶液に、90℃にて浸漬させた。浸漬24時間後と240時間後の隔膜を取り出し、室温にて膜抵抗を測定し、(240時間後の膜抵抗/24時間後の膜抵抗)を熱アルカリ耐久試験後の膜抵抗比として算出した。
<超音波試験の評価方法>
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜について、下記の超音波試験により、質量減少率を評価した。
(超音波試験)
各実施例等で得られたアルカリ水電解用隔膜について、5×5cmに切り出したものを隔膜試料とし、隔膜試料とイオン交換水6ccをチャック付ポリ袋(生産日本社製、ユニパックC-4)に入れて封止し、水槽を30℃に調温した超音波洗浄機(株式会社エスエヌディ製、型名:US-103、高周波出力:100w、発信周波数:38kHz)を用い、水槽中に1時間静置したのち、3分間超音波を照射した。
(超音波試験後の質量減少率)
上記超音波試験前後における隔膜試料のそれぞれの重さを精密天秤(エー・アンド・デイ社製、型番:GH-200)を用いて測定し、下記式により質量減少率を算出した。
質量減少率(%)=100-(超音波試験後の質量(g)/超音波試験前の質量(g)×100)
[実施例1]
(1.無機粒子分散液の調製)
水酸化マグネシウム(平均粒子径0.20μm、板状、アスペクト比6.21)とN-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬工業社製)を質量比1:1となるよう混合し、ジルコニアメディアボールを入れたポットミルにて、室温で6時間分散処理を行うことにより水酸化マグネシウム分散液を調製した。
(2.塗布用組成物の調製)
上記で得られた水酸化マグネシウム分散液を用いて、固形分が51%、かつ、水酸化マグネシウム100質量部に対してポリスルホン樹脂(BASF社製、品番ウルトラゾーンS3010)(PSU)を40質量部になるように計量し、さらに塩化リチウム(富士フイルム和光純薬工業社製)を水酸化マグネシウム100質量%に対して0.1質量%加えることにより混合物を調製した。得られた混合物を自転公転ミキサー(シンキー社製、品番あわとり練太郎ARE-500)にて室温で1000rpmで約30分間混合することにより塗布用混合物(1)を得た。得られた塗布用組成物(1)の10s-1における粘度(25℃)は24000mPa・sであり、250s-1における粘度(25℃)は6000mPa・sであり、0.1s-1における粘度(25℃)は30万mPa・sであった。
(3.膜の形成)
ポリフェニレンサルファイド不織布(膜厚130μm、目付60g/m2)上に、塗布用組成物(1)を剪断速度50s-1で塗布(塗布時粘度17000mPa・s)して含浸させた。その後、塗布用組成物(1)を含浸させた不織布を、室温にて5分間イオン交換水を満たした水槽に水浴させ、塗液を凝固させて膜を形成した。水浴後、得られた膜を、乾燥機にて80℃で、10分間乾燥し、不織布と水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含む膜との複合体からなるアルカリ水電解用隔膜(1)を得た。得られたアルカリ水電解用隔膜(1)について、上述した方法で評価を行った。
膜厚は210μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は15%であり、単位膜厚当たりの透気度は1.1であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.83であり、また超音波照射後の質量減少率は1.1%であった。
[実施例2]
実施例1と同様にして塗布用組成物(1)と同様の塗布用組成物(2)を調製した。実施例1の(3.膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(2)を用い、水槽中の非溶媒をイオン交換水の代わりにイオン交換水50%N-メチルー2-ピロリドン50%の混合水溶液を用い、凝固後にイオン交換水中にて10分間静置したこと以外は同様にして隔膜(2)を作製した。得られた隔膜(2)の膜厚は195μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は6%であり、単位膜厚当たりの透気度は2.0であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.91であり、また超音波照射後の質量減少率は0.9%であった。
[実施例3]
実施例1と同様にして塗布用組成物(1)と同様の塗布用組成物(3)を調製した。
実施例1の(3.膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(3)を用い、水槽中の非溶媒をイオン交換水の代わりにイオン交換水20%N-メチルー2-ピロリドン80%の混合水溶液を用い、凝固後にイオン交換水中にて10分間静置したこと以外は同様にして隔膜(3)を作製した。得られた隔膜(3)の膜厚は185μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は3%であり、単位膜厚当たりの透気度は2.5であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.89であり、また超音波照射後の質量減少率は1.3%であった。
[実施例4]
実施例1と同様にして塗布用組成物(1)と同様の塗布用組成物(4)を調製した。
実施例1の(3.膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(4)を用い、水槽中の非溶媒をイオン交換水の代わりにイオン交換水70%N-メチルー2-ピロリドン30%の混合水溶液を用い、剪断速度50s-1で塗布(塗布時粘度17000mPa・s)し、凝固後にイオン交換水中にて10分間静置したこと以外は同様にして隔膜(4)を作製した。得られた隔膜(4)の膜厚は200μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は13%であり、単位膜厚当たりの透気度は1.2であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.84であり、また超音波照射後の質量減少率は0.8%であった。
[実施例5]
実施例1の(1.無機粒子分散液の調整)において、水酸化マグネシウムに代わりに酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業社製、品番UEP)を使用し、(2.塗布用組成物の調製)において、固形分を48%に変更したこと以外は同様にして塗布用組成物(5)を調製した。実施例1における(3.膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(5)を用いる以外は同様にして隔膜(5)を作製した。得られた塗布用組成物(5)の10s-1における粘度(25℃)は19000mPa・sであり、250s-1における粘度(25℃)は6300mPa・sであり、0.1s-1における粘度(25℃)は25万mPa・sであった。得られた隔膜(5)の膜厚は205μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は38%であり、単位膜厚当たりの透気度は0.6であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.78であり、また超音波照射後の質量減少率は1.4%であった。
[実施例6]
実施例1の(1.無機粒子分散液の調整)において、水酸化マグネシウムに代わりに酸化チタン(平均粒子径0.5μm)を使用し、(2.塗布用組成物の調製)において、固形分を48%に変更したこと以外は同様にして塗布用組成物(6)を調製した。次に実施例1における(3.膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(6)を用いる以外は同様にして隔膜(6)を作製した。得られた塗布用組成物(6)の10s-1における粘度(25℃)は20000mPa・sであり、250s-1における粘度(25℃)は6500mPa・sであり、0.1s-1における粘度(25℃)は27万mPa・sであった。得られた隔膜(6)の膜厚は225μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は26%であり、単位膜厚当たりの透気度は0.9であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.81であり、また超音波照射後の質量減少率は1.5%であった。
[実施例7]
実施例1の(2.塗布用組成物の調製)において、ポリスルホン樹脂が50質量部になるように変更したこと以外は同様にして塗布用組成物(7)を調製した。実施例1における(3.膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(7)を用いる以外は同様にして隔膜(7)を作製した。得られた塗布用組成物(7)の10s-1における粘度(25℃)は29000mPa・sであり、250s-1における粘度(25℃)は12000mPa・sであり、0.1s-1における粘度(25℃)は57万mPa・sであった。得られた隔膜(7)の膜厚は220μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は3%であり、単位膜厚当たりの透気度は2.4であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.85であり、また超音波照射後の質量減少率は0.7%であった。
[実施例8]
実施例1の(2.塗布用組成物塗液の調製)において、固形分が46%なるように変更したこと以外は同様にして塗布用組成物(8)を調製した。実施例1における(3.塗膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(8)を用いる以外は同様にして膜(8)を作製した。得られた塗布用組成物(8)の10s-1における粘度(25℃)は15000mPa・sであり、250s-1における粘度(25℃)は5300mPa・sであり、0.1s-1における粘度(25℃)は11万mPa・sであった。得られた隔膜(8)の膜厚は240μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は38%であり、単位膜厚当たりの透気度は0.6であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.77であり、また超音波照射後の質量減少率は1.6%であった。
[比較例1]
実施例1の(2.塗布用組成物の調製)において、固形分が39%なるように変更したこと以外は同様にして塗布用組成物(c1)を調製した。実施例1における(3.塗膜の形成)において、塗布用組成物(1)の代わりに塗布用組成物(c1)を用いる以外は同様にして隔膜(c1)を作製した。得られた塗布用組成物(c1)の10s-1における粘度(25℃)は5500mPa・sであり、250s-1における粘度(25℃)は2800mPa・sであり、0.1s-1における粘度(25℃)は7万mPa・sであった。得られた隔膜(c1)の膜厚は260μmであった。長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率は45%であり、単位膜厚当たりの透気度は0.5であった。熱アルカリ耐久試験前後の膜抵抗比は0.61であり、また超音波照射後の質量減少率は2.2%であった。
以上より、実施例のアルカリ水電解用隔膜は、比較例のアルカリ水電解用隔膜と比較して、熱アルカリ溶液中での膜抵抗(イオン伝導性)の安定性に優れることが確認された。よって、実施例のアルカリ水電解用隔膜は、イオン伝導性が良好に維持され、長期間安定性して高純度の水素ガスを製造することができると考えられる。

Claims (3)

  1. 有機ポリマーおよび無機粒子を含む多孔質層を有し、
    該有機ポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    該無機粒子は、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種であるアルカリ水電解用隔膜であって、
    該多孔質層は、該隔膜の少なくとも一方の表面を構成する層であり、該多孔質層の厚み方向の断面における、長径が30μm以上であるマクロボイドの含有率が40%以下であり、
    下記式(1)で表されるXが0.6以上であり、
    下記に示す熱アルカリ耐久試験を行った場合の下記式(2)で表される膜抵抗比が、0.7以上0.91以下であることを特徴とするアルカリ水電解用隔膜。
    X=隔膜の透気度(秒)/隔膜の膜厚(μm) (1)。
    膜抵抗比=浸漬240時間後の膜抵抗/浸漬24時間後の膜抵抗 (2)
    (熱アルカリ耐久試験)
    該アルカリ水電解用隔膜を30%KOH水溶液に浸漬し、90℃で保持し、浸漬24時間後と240時間後とのそれぞれにおいて、該アルカリ水電解用隔膜を室温にて膜抵抗を測定する。
  2. 請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、
    有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度10s-1における粘度(25℃)が30000mPa・s以下であり、かつ剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用いることを特徴とするアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  3. 請求項1に記載のアルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、
    有機ポリマーおよび無機粒子を含み、剪断速度0.1s-1における粘度(25℃)が100000mPa・s以上である組成物を用い、該組成物の粘度が30000mPa・s以下となる剪断速度で該組成物を塗布する工程を含むことを特徴とするアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
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