JP7655482B2 - 耐食性炭化珪素発熱体および耐食性炭化珪素発熱体の製造方法 - Google Patents

耐食性炭化珪素発熱体および耐食性炭化珪素発熱体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐食性炭化珪素発熱体および耐食性炭化珪素発熱体の製造方法に関する。
従来より、炭化珪素からなる発熱体(炭化珪素発熱体)が知られており、係る発熱体においては、棒状の発熱体の端部から通電し炉内に配置した発熱体から放熱することにより、被処理物の加熱処理が行われている(特許文献1等参照)。
特開2010-126427号公報
上記炭化珪素発熱体は、長期間の使用によって経時劣化することが知られており、上記経時劣化は、特に炭化珪素発熱体の使用環境によって影響を受け易いことが知られている。
炭化珪素発熱体の劣化原因として、発熱体の主成分である炭化珪素(SiC)が800℃以上の高温大気雰囲気下で酸素(O)と反応し、二酸化珪素(SiO)を生成する反応が挙げられる。
また、高温の水蒸気含有雰囲気下では、下記反応式(1)または(2)に示すように、上記と同様に炭化珪素(SiC)から二酸化珪素(SiO)を生成すると考えられる。
SiC+2HO→SiO+CH(1)
SiC+4HO→SiO+CO+4H (2)
さらに、高温の水蒸気含有雰囲気においては、下記反応式(3)に示すように、上記二酸化珪素(SiO)から珪酸(Si(OH))を生成すると考えられる。
SiO+2HO→Si(OH) (3)
上記のとおり、炭化珪素は、特に高温の水蒸気含有雰囲気下において水蒸気と反応し、腐食溶解が進行することによりその劣化が促進されると考えられる。
炭化珪素発熱体は、MLCC(積層セラミックコンデンサ)などの電子部品を焼成処理したり、リチウムイオン二次電池用正極材の合成過程で焼成処理する際等に熱源として広く用いられているが、これ等の焼成処理は水蒸気を含む雰囲気下で行われる場合があり、特にリチウムイオン二次電池の正極材の合成工程では、被焼成物である原料粉末から水蒸気が大量に発生し、炉内に多量の水蒸気が存在する状態で焼成することが多いことから、炭化珪素発熱体の寿命が短くなり易い。
本発明者等は、上記高温水蒸気による劣化を抑制するために、保護膜を設けた炭化珪素発熱体を着想するに至った。
上記保護膜としては、高温水蒸気との反応性が低く、熱膨張係数が炭化珪素の熱膨張係数に近いYbSiO、YbSi等のイッテルビウム(Yb)の珪酸塩(珪酸イッテルビウム)からなるものが考えられた。
しかしながら、YbSiOやYbSi等の珪酸イッテルビウムはその融点が1800℃を超える一方で、炭化珪素の耐熱温度は1400℃程度であることから、炭化珪素製基材の表面においてYbSiOやYbSi等を溶融し、製膜することは困難である。
YbSiOまたはYbSi等からなる保護膜を低温で形成する方法として、プラズマPVD法(プラズマ物理気相蒸着法)や、EB-PVD(電子ビーム物理気相蒸着法)等も考えられたが、いずれも特別な装置を必要とし、その製造には高いコストが必要となる。
このように、従来、炭化珪素製基材の表面に珪酸イッテルビウム含有膜を優れた定着性の下、簡便かつ低コストに製膜することは困難であった。
このような状況下、本発明は、炭化珪素性基材の表面に定着性に優れた珪酸イッテルビウム含有膜を有する、簡便かつ低コストに製造可能な新規な耐食性炭化珪素発熱体を提供するとともに、耐食性炭化珪素発熱体の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決するために、本願発明者等が鋭意検討を行った結果、YbSiOまたはYbSi等を溶融することに代えて、YbとSiOとを含むスラリーを炭化珪素製発熱体の少なくとも一部に塗布した後、1000~1350℃という比較的低温度で加熱処理することにより、簡便かつ低コストに炭化珪素製基材表面にYbSiOまたはYbSiを含む保護膜を形成し得ること、係る保護膜は、炭化珪素製基材に対して優れた定着性を発揮し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)炭化珪素製基材の少なくとも一部の表面に保護膜が設けられた耐食性炭化珪素発熱体であって、前記保護膜が、
Yb 25~85質量%、
YbSiO10~50質量%、
YbSi0~20質量%、
SiO 2~10質量%
を含有することを特徴とする耐食性炭化珪素発熱体、
(2)前記保護膜の厚みが30~200μmである上記(1)に記載の耐食性炭化珪素発熱体、
(3)前記炭化珪素製基材が、炭化珪素の含有割合が98質量%以上であり、表面に平均細孔径が1~30μmである複数の細孔を有し、開孔率が10%以上のものである上記(1)または(2)に記載の耐食性炭化珪素発熱体、
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の耐食性炭化珪素発熱体を製造する方法であって、
YbとSiOとを含むスラリーを炭化珪素製基材の少なくとも一部に塗布した後、
1000~1350℃で加熱処理する
ことを特徴とする耐食性炭化珪素発熱体の製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、炭化珪素性基材の表面に定着性に優れた珪酸イッテルビウム含有膜を保護膜として有する、簡便かつ低コストに製造可能な新規な耐食性炭化珪素発熱体を提供することができるとともに、耐食性炭化珪素発熱体の製造方法を提供することができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の形態例を示す概略図である。 本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体を構成する炭化珪素製基材の形態例を示す概略図である。 本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の形態例を示す概略図である。 実施例で得られた耐食性炭化珪素発熱体の断面における観察画像を示す図である。 実施例で得られた耐食性炭化珪素発熱体の断面における外周面近傍における観察画像の拡大図である。 実施例で得られた耐食性炭化珪素発熱体の断面における中央部における観察画像の拡大図である。 実施例で得られた耐食性炭化珪素発熱体および比較例で得られた炭化珪素発熱体の耐水蒸気能力の評価結果を示す図である。
先ず、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体について説明する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体は、炭化珪素製基材の少なくとも一部の表面に保護膜が設けられた耐食性炭化珪素発熱体であって、前記保護膜が、
Yb 25~85質量%、
YbSiO10~50質量%、
YbSi0~20質量%、
SiO 2~10質量%
を含有することを特徴とするものである。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体は、炭化珪素製基材の表面の少なくとも一部保護膜が設けられた状態で使用され、通電することにより発熱して発熱体として機能するものであって、その形状は中実状のものであってもよいし、中空状のものであってもよいが、中空円筒状のものであることが好ましい。
図1は、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の形態例を示す概略図であって、図に示す耐食性炭化珪素発熱体Hは、発熱部Mと発熱体Mの両端に接合された端部E、Eにより構成される。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体は、例えば図1に示す上記発熱部Mとして使用され、この場合、発熱部Mは、通常、同図に示すように中空円筒形状を有している。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体は、炭化珪素製基材と、炭化珪素製基材の少なくとも一部の表面に設けられた保護膜とを有している。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、Ybを、25~85質量%含有するものであり、25~75質量%含有するものであることが好ましく、25~60質量%含有するものであることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、YbSiOを、10~50質量%含有するものであり、20~50質量%含有するものであることが好ましく、30~50質量%含有するものであることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、YbSiを、0~20質量%含有するものであり、5~20質量%含有するものであることが好ましく、10~20質量%含有するものであることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜中におけるYbSiOおよびYbSiの含有割合が、各々上記規定を満たすものであることにより、保護膜および炭化珪素製基材の熱膨張係数の差による炭化珪素製基材や保護膜の破損の発生を抑制しつつ、高温水蒸気による炭化珪素製基材の劣化を効果的に抑制することができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、YbSiOおよびYbSiを、合計で、10~70質量%含有するものであることが好ましく、40~70質量%含有するものであることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜中におけるYbSiOおよびYbSiの合計含有割合が、上記規定を満たすものであることによっても、保護膜および炭化珪素製基材との熱膨張係数の差による炭化珪素製基材や保護膜の破損を抑制しつつ、高温水蒸気による炭化珪素製基材の劣化をより効果的に抑制することができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、SiOを、2~10質量%含有するものであり、5~10質量%含有するものが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、Yb、YbSiO、YbSiおよびSiOを、合計で、37~100質量含有するものであることが好ましく、70~100質量%含有するものであることがより好ましく、Yb、YbSiO、YbSiおよびSiOのみからなることがさらに好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜中におけるYb、YbSiO、YbSiおよびSiOといった各構成成分の含有割合は、耐食性炭化珪素発熱体の表面に設けられた保護膜を削り取って得られた測定サンプルを用いて、以下の方法により得られる値を意味する。
(1)X線回折(XRD)スペクトルの測定
以下の条件により上記測定サンプルのX線回折(XRD)スペクトルを測定する。
X線回折装置 :(株)リガク製 全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab
ゴニオメーター :SmartLab
X線電圧 :40kV
X線電流 :30mA
測定角度範囲(2θ):10°~90°
測定ステップ :0.001°
走査速度 :5°/分間
(2)RIR(Reference Intensity Ratio)法による各成分の定量
(1)で得られたX線回折スペクトルデータを、(株)リガク製「統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL2.2」を使用して解析し、ICDDカードを使用したRIR(Reference Instensity Ratio:参照強度比)法により、保護膜を構成する各成分量を特定する。
なお、Yb、YbSiO、YbSiおよびSiOのICDDカード番号は以下のとおりである。
Yb:01-075-6636
YbSiO:00-040-0386
YbSi:01-082-0734
SiO:01-083-1831
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜は、炭化珪素製基材の少なくとも一部の表面に設けられており、その表面の36~100%の範囲に設けられていることが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体が中空円筒形状を有するものである場合、保護膜は、中空円筒状の炭化珪素製基材の外周面全体に設けられていることが好ましく、中空円筒状の炭化珪素製基材の外周面全体および内周面全体に設けられていることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜の厚みは、30~200μmであることが好ましく、50~200μmであることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、保護膜の厚みが上記範囲内にあることにより、高温水蒸気に対する耐食性を長期間に亘って容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記保護膜の厚みの範囲の下限値および上限値は、各々、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の垂直断面を走査型電子顕微鏡で10箇所観察したときにおける、各観察画像における保護膜の最小膜厚の算術平均値および保護膜の最大膜厚の算術平均値を意味する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材は、炭化珪素の含有割合が、98質量%以上(98~100質量%)であるものが好ましく、99質量%以上(99~100質量%)であるものがより好ましく、100質量%であるものがさらに好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材を構成する炭化珪素の含有割合が上記規定を満たすものであることにより、被処理物を高い効率で加熱処理することができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材中の炭化珪素の含有割合は、耐食性炭化珪素発熱体を構成する炭化珪素製基材を所定量削り取って測定サンプルとした上で、JIS R 6124.14備考における「炭化けい素の定量方法」の規定により測定される値を意味する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材は、表面に複数の細孔を有するものが適当であり、当該細孔の平均細孔径は、1~30μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、20~30μmであることがさらに好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材が、表面に上記規定を満たす複数の細孔を有するものであることにより、保護膜の一部が炭化珪素基材の内部に侵入し、いわゆるアンカー効果により、炭化珪素製基材に対する保護膜の強固な密着性を容易に発揮することができる。
なお、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材表面における平均細孔径は、耐食性炭化珪素発熱体から切り出した炭化珪素製基材において、JIS R 1655に規定する水銀圧入法により求められる値を意味する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材は、開孔率が10%以上であるものが好ましく、10~50%であるものがより好ましく、10~30%であるものがさらに好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材の開孔率が上記規定を満たすものであることにより、炭化珪素製基材に対する保護膜の密着性をより容易に向上させることができる。
なお、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、炭化珪素製基材表面における開孔率は、耐食性炭化珪素発熱体から切り出した炭化珪素製基材において、JIS R1655に規定する水銀圧入法により求められる値を意味する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体において、上記細孔径および開孔率の規定を満たす炭化珪素製基材は、例えば、炭化珪素(SiC)粉末に、バインダーおよび水を加えて捏合し、炭化珪素発熱体の発熱部の形状に対応する形状に成形し、乾燥した後、窒素ガス雰囲気中、2100~2400℃の温度で焼結することにより作製することができる。
図2(a)は、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体を構成する炭化珪素製基材の形態例を示す概略図であって、同図において、中空円筒状の炭化珪素製基材bを、その長手方向に対する垂直断面図として示している。
図2(b)は、図2(a)における破線部分の拡大図であって、同図に示すように、炭化珪素基材bの表面および内部には複数の細孔hが形成されている。
一方、図3(a)は、図2(a)に示す炭化珪素製基材bの外表面および内表面に保護膜cを設けた、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の形態例を示す概略図であって、同図において、中空円筒状の耐食性炭化珪素発熱体Mは、その長手方向に対する垂直断面図として示している。
図3(b)は、図3(a)における破線部分の拡大図であって、同図に示すように、中空円筒形状を有する炭化珪素製基材bにおいて、その外周面および内周面の表面に各々設けられた保護膜cの一部は、炭化珪素基材bの表面に形成された複数の細孔h内に侵入して密着していることが分かる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体は、本発明に係る製造方法により容易に製造することができる。
本発明によれば、長期間に亘って高温水蒸気に対して高い耐食性を発揮することができ、簡便かつ低コストに製造可能な耐食性炭化珪素発熱体を提供することができる。
次に、本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法について説明する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法は、本発明に係る炭化珪素発熱体を製造する方法であって、
YbとSiOとを含むスラリーを炭化珪素製基材の少なくとも一部に塗布した後、
1000~1350℃で加熱処理する
ことを特徴とするものである。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、炭化珪素製基材としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法においては、YbとSiOとを含むスラリーを炭化珪素製基材の少なくとも一部に塗布する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、塗布液となるスラリー中におけるYb濃度およびSiO濃度は、各々、得ようとする保護膜中の各成分濃度に応じて適宜調整すればよい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、塗布液となるスラリー中におけるYb濃度は、固形分換算で、65~80質量%が好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、塗布液となるスラリー中におけるSiO濃度は、固形分換算で、7~14質量%が好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、塗布液となるスラリー中には、YbおよびSiO以外の成分として、塗布液中の成分分散を目的とした分散剤や、加熱処理前(焼付前)における塗膜強度の確保を目的とするバインダー(例えば、アクリルエマルジョン)等を含有することができる。
スラリーを構成する分散媒としては、特に制限されないが、環境面や作業性を考慮した場合、水であることが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、塗布液となるスラリーは、各構成成分を分散媒中で混合することにより調製することができる。
上記スラリー中の固形分濃度は、70~80質量%であることが好ましい。
また、上記スラリーの粘度は、100~800Pa・sであることが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、塗布液となるスラリーを炭化珪素製基材に塗布する方法も特に制限されず、刷毛塗りによりスラリーを塗布する刷毛塗り法の他、スラリーを吹き付けるスプレー法や、スラリー中に炭化珪素製基材を浸漬するディッピング法により塗布してもよい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法においては、YbとSiOとを含むスラリーを、炭化珪素製基材の少なくとも一部に塗布する。
スラリーを塗布する位置や範囲は、得ようとする保護膜の形成位置や範囲に対応して決定すればよい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、中空円筒形状を有する炭化珪素製基材の外周面に保護膜を設けようとする場合は、刷毛塗り法またはスプレー法によりスラリーを塗布することが好ましく、中空円筒形状を有する炭化珪素製基材の外周面および内周面の両者に保護膜を設けようとする場合は、ディッピング法によりスラリーを塗布することが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法においては、所定厚みの保護膜を得る上で、複数回塗布処理を施してもよい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、上記スラリーを塗布した後、適宜乾燥処理することが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法においては、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を、1000~1350℃で加熱処理する。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を加熱処理する温度は、1000~1350℃であり、1100~1350℃であることが好ましく、1250~1350℃であることがより好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を加熱処理する温度が上記範囲内にあることにより、炭化珪素製基材の耐熱温度を超えることによる基材の破損を抑制しつつ、特殊な加熱装置を使用することなく、簡便かつ低コストに保護膜を形成することができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を加熱処理する時間は、1~30分間であることが好ましく、3~20分間であることがより好ましく、5~10分間であることがさらに好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を加熱処理する時間が上記範囲内にあることにより、炭化珪素製基材に対する密着性(定着性)に優れた保護膜を容易に形成することができる。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を加熱処理する際の雰囲気は、特に制限されないが、不活性ガス雰囲気であることが好ましく、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等を挙げることができ、窒素ガスであることが好ましい。
本発明に係る耐食性炭化珪素発熱体の製造方法において、表面の少なくとも一部に上記スラリーが塗布された炭化珪素製基材を加熱処理する際の雰囲気中の水分濃度は、1000質量ppm以下であることが好ましい。
本発明によれば、炭化珪素性基材の表面に定着性に優れた珪酸イッテルビウム含有膜を有する耐食性炭化珪素発熱体を簡便かつ低コストに製造可能な方法を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(1)基材接合物の形成
炭化珪素製基材として、外径20mm×内径10mm×全長300mmの中空円筒形状を有する再結晶SiC質基材(炭化珪素の含有割合98質量%、表面に分布する複数の細孔の平均細孔径が20μm、気孔率(開孔率)23%)を用意した。
上記炭化珪素質基材の両端に、外径20mm×内径10mm×全長300mmの中空円筒形状を有するSiC/C質端部を各々接合することにより、塗布膜の形成対象となる基材接合体(外径20mm×内径10mm×全長900mm)を得た。
(2)コート液の調製
W.R.グレース社製コロイダルシリカ懸濁液(グレード:ルドックスHS-40)を17.5質量%、日本イットリウム(株)製Yb粉末(グレード:3N)を65質量%およびイオン交換水を17.5質量%となるように各々量り取り、乳鉢内で5分間混合することにより、スラリー状の原料混合物を得た。
得られた原料混合物に対し、さらに、バインダーとして、信越化学工業(株)製メトローズ(グレード:SM-400)の1.5質量%水溶液を、上記原料混合物が90質量%、上記分散剤が10質量%となるように混合して、スラリー状のコート液を調製した。
(3)コート液の塗布
(1)で作製した基材接合体を、その全体が(2)で調製したコート液中に浸漬するように90分間静置することにより、基材接合体の外周面および内周面の全体に上記コート液を含浸させた。
(4)加熱処理
上記コート液から基材接合体を引き上げて充分乾燥させた後、熱処理炉中で、大気雰囲気下、1300℃で4分間加熱して焼き付け処理を行うことにより、耐食性炭化珪素発熱体の両端に端部が接合された接合物を得た。
上記接合物の外周面および内周面の全体には、保護膜が形成され剥離等を生じていないことが視認でき、この保護膜の一部を削りとって測定したところ、当該保護膜は、Yb26質量%、YbSiO48質量%、YbSi17質量%、SiO9質量%を含有するものであった。
また、上記接合物を構成する耐食性炭化珪素発熱体の一部を切り出して、図4左側に概略図で示すように、その断面における外周面近傍と中央部を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた各観察画像を図4の右側に示す。
また、上記耐食性炭化珪素発熱体の外周面近傍および中央部におけるSEM観察画像(倍率:100倍、反射電子像)の拡大図を、各々図5および図6に示す。
図6より、炭化珪素質基材には、図中、濃い黒色で示される細孔が形成されていることが分かる。
また、図5より、灰色で示される炭化珪素質基材の外周面には白色で示される保護膜が層状に形成されていること、この保護膜はその一部が炭化珪素製基材表面に形成されている複数の細孔内に侵入して同基材に密着して形成されていることが分かる。
上記保護膜の厚さは35~190μmであった。
(実施例2)
実施例1(4)において、1300℃で4分間加熱することにより焼き付け処理を行ったことに代えて1100℃で4分間加熱することにより焼き付け処理を行った以外は、実施例1と同様にして、耐食性炭化珪素発熱体の両端に端部が接合された接合物を得た。
上記接合物の外周面および内周面の全体には、保護膜が形成され剥離等を生じていないことが視認でき、この保護膜の一部を削りとって測定したところ、当該保護膜は、Yb80質量%、YbSiO13質量%、YbSi3質量%、SiO4質量%を含有するものであった。
また、上記耐食性炭化珪素発熱体の一部を切り出して、その断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、表面に厚さ50~120μmの保護膜が形成されており、この保護膜はその一部が炭化珪素製基材表面の細孔に侵入して炭化珪素製基材に密着して形成されていることを確認できた。
(比較例1)
実施例1において、「(2)コート液の調製」工程および「(3)コート液の塗布」工程を行うことなく、「(1)基材接合物の形成」で作製した基材接合物を、そのまま「(4)加熱処理」工程に供した以外は、実施例1と同様に処理することにより、炭化珪素発熱体の両端に端部が接合された接合物を得た。
(比較例2)
実施例1の「(2)コート液の調製」工程において、W.R.グレース社製コロイダルシリカ懸濁液(グレード:ルドックスHS-40)が38.9質量%、日本イットリウム(株)製Yb粉末(グレード:3N)が48.1質量%、イオン交換水が13.0質量%となるように各々量り取った以外は、実施例1と同様に処理することにより、炭化珪素発熱体の両端に端部が接合された接合物を得た。
上記接合物の外周面および内周面には保護膜が形成されたが、部分的に定着しておらず、剥離を生じていることが視認された。保護膜のうち定着した部分を削りとって測定したところ、当該保護膜は、Yb0質量%(検出無し)、YbSiO79質量%、YbSi4質量%、SiO17質量%を含有するものであった。
また、上記耐食性炭化珪素発熱体のうち、保護膜が定着した箇所の一部を切り出して、その断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、表面に厚さ10~25μmの保護膜が形成されていた。
各実施例および比較例で得られた耐食性炭化珪素発熱体および炭化珪素発熱体の保護膜の特性を表1に示す。
表1中、「保護膜定着性」については、保護膜が炭化珪素質基材の外周面および内周面の全体に形成され剥離を生じていないことが視認される場合は「〇」、保護膜が炭化珪素質基材の外周面および内周面の一部において剥離を生じていることが視認される場合は「×」として評価した。
Figure 0007655482000001
<耐水蒸気能力の評価>
実施例1および比較例1に記載の方法で得られた接合物を各々2本づつ用意した(以後、実施例1記載の方法で得られた接合物を実施例1(a)および実施例1(b)に係る接合物と称し、比較例1記載の方法で得られた接合物を比較例1(a)および比較例1(b)に係る接合物と称する)。上記各接合物の端部に電極を設け、通電可能な状態とした。
上記通電可能な状態とした各接合物を、耐食性炭化珪素発熱体ないしは炭化珪素発熱体が函型試験炉(炉内幅180mm、炉内高さ180mm、炉内長300mm)内に収容されるように、各々配置した。
上記各接合物に通電し、上記各接合物の耐食性炭化珪素発熱体ないしは炭化珪素発熱体の表面負荷密度が2W/cmになるように保持しつつ、函型試験炉の炉内温度が1050℃、電気炉内の水蒸気量が82.8g/m(露点50℃)となるように制御しつつ、連続運転を行った。
上記連続運転において、通電開始時における接合物の抵抗値を100%としたときの抵抗値の増加割合(抵抗増加率)を測定した。
図7より、実施例1(a)および実施例1(b)に係る接合物を構成する耐食性炭化珪素発熱体は、炭化珪素製基材の表面に特定組成を有する保護膜が設けられたものであることから、炉内で2000時間連続して運転しても、抵抗増加率が30%以内に抑制されており、炭化珪素発熱体の高温水蒸気による腐食劣化を長期に亘って抑制し得るものであることが分かる。
一方、図7より、比較例1(a)および比較例1(b)に係る接合物を構成する炭化珪素発熱体は、表面に特定組成を有する保護膜が設けられていないことから、炉内で連続して運転したときに、運転時間が1000時間を超える付近で抵抗増加率が急激に上昇し、時間経過とともに抵抗増加率が上昇することから、炭化珪素発熱体の高温水蒸気による腐食劣化を抑制し得ないものであることが分かる。
本発明によれば、炭化珪素性基材の表面に定着性に優れた珪酸イッテルビウム含有膜を保護膜として有する、簡便かつ低コストに製造可能な新規な耐食性炭化珪素発熱体を提供することができるとともに、耐食性炭化珪素発熱体の製造方法を提供することができる。

Claims (3)

  1. 炭化珪素製基材の少なくとも一部の表面に保護膜が設けられた耐食性炭化珪素発熱体であって、前記保護膜が、
    Yb 25~85質量%、
    YbSiO 10~50質量%、
    YbSi 0~20質量%、
    SiO 2~10質量%
    を含有し、
    前記保護膜の厚みが30~200μmである
    ことを特徴とする耐食性炭化珪素発熱体
  2. 前記炭化珪素製基材が、炭化珪素の含有割合が98質量%以上であり、表面に平均細孔径が1~30μmである複数の細孔を有し、開孔率が10~50%のものである請求項1に記載の耐食性炭化珪素発熱体。
  3. 請求項1または請求項2に記載の耐食性炭化珪素発熱体を製造する方法であって、
    YbとSiOとを含むスラリーを炭化珪素製基材の少なくとも一部に塗布した後、
    1000~1350℃で加熱処理する
    ことを特徴とする耐食性炭化珪素発熱体の製造方法。
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