JP7668201B2 - 光学素子 - Google Patents

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Description

本開示は、光学素子に関する。
光学素子の一つとして、光などの電磁波の偏光状態を制御する波長板がある。可視域においては、例えば下記特許文献1に示される水晶波長板などが用いられる。
特開2006-16239号公報
ところで、通信の大容量化、高速化の要望にともなって、第5世代移動通信システム(5G)が商用化されている。また、次世代である第6世代移動通信システム(6G)の実用化に向けた研究開発がなされている。ここで、6Gでは、サブテラヘルツ帯(例えば、0.1THz~1.0THz)を含む周波数帯域の利用が検討されている。このため、当該周波数帯域に利用可能な光学素子の研究開発もなされている。
上記光学素子として、上記特許文献1に示されるような水晶波長板の利用なども挙げられる。ここで、周波数帯域が低いほど波長板の厚さは大きくなる。例えば、サブテラヘルツ帯における水晶製の1/4波長板の厚さは10mm以上になり得る。このため、サブテラヘルツ帯を含む低周波数帯域においては、光学素子が巨大化してしまう課題がある。
本開示の一側面の目的は、サブテラヘルツ帯などの低周波数帯域においても実用可能であって小型化を実現可能な光学素子の提供である。
光学素子の材料には、多くの場合、レストストラーレンバンドが存在することは通常知られている。また、上記材料は、レストストラーレンバンドに相当する周波数帯域における光をほぼ吸収もしくは反射することも知られている。このため一般に、レストストラーレンバンドが存在する材料を含む光学素子は、当該レストストラーレンバンドよりも高周波数である周波数帯域(例えば、可視域、紫外域または赤外域)にて用いられる。しかしながら、本開示の完成に至るまでの鋭意検討の末、上記材料のレストストラーレンバンドよりも低周波の周波数帯域における吸収率は、当該レストストラーレンバンドよりも高周波の周波数帯域と比較して大きい一方で、レストストラーレンバンド内よりも顕著に小さいことが見出された。この知見に基づき、レストストラーレンバンドを示す光学部品を、当該レストストラーレンバンドよりも低周波の周波数帯域(例えば、サブテラヘルツ帯)にて用いたところ、光学部品としての機能を発揮できる可能性が見出された。
以上に説明した知見に基づいてなされた本開示の一側面に係る光学素子は、第1主面及び第2主面を有し、複屈折性を示す基板と、第1主面上に位置する反射防止膜と、を備える反射防止膜のレストストラーレンバンドよりも低周波数である低周波数帯域用の光学素子であって、当該低周波数帯域における基板の第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、0.2以上であり、基板の厚さは、15μm以上4000μm以下である。
本開示の他の一側面に係る光学素子は、第1主面及び第2主面を有し、複屈折性を示す基板と、第1主面上に位置する反射防止膜と、を備え、反射防止膜のレストストラーレンバンドよりも低周波数である低周波数帯域における基板の第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、0.2以上であり、基板の厚さは、15μm以上4000μm以下であり、上記低周波数帯域の光であって、上記光学素子に入射する上記光の反射率は、10%以下である。
これらの光学素子によれば、レストストラーレンバンドを示す反射防止膜の当該バンドよりも低周波数である低周波数帯域(例えば、サブテラヘルツ帯)における基板の第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、0.2以上である。一方、サブテラヘルツ帯における水晶の屈折率差の絶対値は、約0.05である。よって、例えばサブテラヘルツ帯における電磁波に対する上記基板の厚さは、水晶製の基板と比較して、約1/4以下にできる。このため、例えばサブテラヘルツ帯などの低周波数帯域にて光学素子が用いられる場合であっても、基板の厚さを4000μm以下に設定できる。ここで、上記絶対値が高いほど、基板の屈折率自体が高い傾向がある。このため、基板に対する光の透過率は低くなる傾向がある。これに対して、基板上に上記反射防止膜が位置することによって、上記低周波数帯域における光学素子の透過率を実用可能な程度に設定できる。したがって本開示によれば、サブテラヘルツ帯などの低周波数帯域においても実用可能であって小型化を実現可能な光学素子を提供できる。
低周波数帯域における第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、0.8以上でもよい。この場合、基板の厚さを良好に薄くできる。
低周波数帯域における第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、1.4以上5.0以下でもよい。この場合、基板の厚さをより良好に薄くできる。
基板は、リチウムを含む三方晶系結晶構造を有してもよい。基板は、ニオブ酸リチウム、及びタンタル酸リチウムの少なくとも一方を含んでもよい。この場合、第1屈折率と第2屈折率との差を比較的高くできるので、光学素子の小型化を良好に実現できる。
低周波数帯域における反射防止膜の屈折率と、第1屈折率の平方根との差の絶対値、及び、反射防止膜の上記屈折率と、第2屈折率の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.5以下でもよい。この場合、光学素子の透過率をより向上可能である。
低周波数帯域における反射防止膜の屈折率と、可視域における反射防止膜の屈折率との差の絶対値は、0.5以上でもよい。
低周波数帯域において、反射防止膜は、複屈折性を示し、低周波数帯域における反射防止膜の第3屈折率と、第1屈折率の平方根との差の第1絶対値は、0.5以下であり、低周波数帯域における反射防止膜の第4屈折率と、第2屈折率の平方根との差の第2絶対値は、0.5以下でもよい。この場合、光学素子内における2つの屈折光のそれぞれに対する透過率を向上可能である。
反射防止膜の厚さは、光学素子に入射される光の波長と、上記第1絶対値と、第2絶対値とに基づいて設定され、基板の厚さは、反射防止膜の厚さと、光学素子によって生じさせなければならない位相差から反射防止膜により生じる位相差を差し引いた値と、第1屈折率と第2屈折率との差とに基づいて、設定されてもよい。この場合、反射防止膜が複屈折性を示す場合においても、光学素子全体として所望の位相差を示すことができる。
基板の進相軸は、反射防止膜の進相軸に対して一致し、基板の退相軸は、反射防止膜の退相軸に対して一致してもよい。この場合、基板と反射防止膜との間における反射損失を低減させやすくなる。
基板の進相軸及び退相軸の少なくとも一方は、反射防止膜の進相軸及び退相軸に対して不一致でもよい。この場合、光学素子を利用可能な周波数帯域を拡張可能である。
基板は、酸化チタンを含み、反射防止膜は、酸化アルミニウムを含んでもよい。この場合、小型化を良好に実現可能になる。
反射防止膜は、フッ化物を含んでもよい。フッ化物は、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、及びフッ化バリウムの少なくとも一つを含んでもよい。
上記光学素子は、第2主面上に位置する第2反射防止膜をさらに備えてもよい。この場合、光学素子を利用可能な周波数帯域を拡張可能である。
上記光学素子は、反射防止膜上に位置し、反射防止膜よりも低い屈折率を有する光透過膜をさらに備えてもよい。この場合、光学素子を利用可能な周波数帯域を拡張可能である。
本開示の一側面によれば、サブテラヘルツ帯などの低周波数帯域においても実用可能であって小型化を実現可能な光学素子を提供できる。
図1(a)は、実施形態に係る光学素子の概略斜視図を示し、図1(b)は、実施形態に係る光学素子の概略要部断面図を示す。 図2(a)~(c)は、実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための模式図である。 図3(a)~(c)は、実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための模式図である。 図4は、低周波数帯域におけるニオブ酸リチウム結晶の屈折率を示す図である。 図5は、低周波数帯域におけるニオブ酸リチウム結晶の反射損失を示す図である。 図6(a),(b)は、光学素子の透過率のシミュレーション結果を示す図である。 図7は、入射光の波長に対するフッ化マグネシウムの屈折率を示す図である。 図8(a),(b)は、第1変形例の光学素子の透過率のシミュレーション結果を示す図である。 図9(a)は、第2変形例に係る光学素子の概略斜視図を示し、図9(b)は、第2変形例に係る光学素子の概略要部断面図を示す。
以下、添付図面を参照して、本開示の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。以下では、「光」は、可視光、紫外光、赤外光等の光だけでなく、可視光よりも低周波数の周波数帯域である電磁波も含む。可視光よりも低周波数の周波数帯域は、例えば、0.1THz以上100THz以下である。以下にて説明する各実施形態では、サブテラヘルツ帯(0.1THz~1.0THz)と、一部のテラヘルツ帯(1THz~10THz)とを含む周波数帯域を、可視光よりも低周波数の周波数帯域(以下、単に「低周波数帯域」とも呼称する)とする。
図1(a)は、本実施形態に係る光学素子の概略斜視図を示し、図1(b)は、本実施形態に係る光学素子の概略要部断面図を示す。図1(a),(b)に示される光学素子1は、光学機器、光学系を構成する素子であり、低周波数帯域にて利用される素子である。光学素子1は、主面2a,2bを有する基板2と、主面2a上に位置する反射防止膜3と、主面2b上に位置する反射防止膜4とを備える。基板2と、反射防止膜3,4とは、光学素子1の厚さ方向において互いに重なる。当該厚さ方向において、基板2は、反射防止膜3,4の間に位置する。基板2と、反射防止膜3,4とのそれぞれには、オリエンテーションフラットもしくはノッチが形成されてもよい。光学素子1は、例えばレンズ、窓材、偏光子、波長板、分光器、電磁波光源、変調器、吸収体、各種センサ等に含まれる。本実施形態では、光学素子1の基板2は、波長板として機能する。波長板は、Xは自然数とした場合、(2X-1)/2波長板でもよいし、(2X-1)/4波長板でもよいし、(2X-1)/8波長板でもよいが、これらに限られない。
基板2は、低周波数帯域において複屈折性を示す光学部品であり、反射防止膜3に対向する主面2a(第1主面)と、反射防止膜4に対向する主面2b(第2主面)とを有する。本実施形態では、基板2は略円盤形状を有するが、これに限られない。基板2の各寸法は、光学素子1の用途、基板2に含まれる材料、及び、光学素子1に入射する光の周波数などに応じて適宜調整される。本実施形態では、基板2の厚さは、15μm以上4000μm以下である。基板2の厚さが15μm以上であることにより、搬送時などにおける光学素子1の破損が発生しにくくなる。このため、光学素子1の取り扱いが容易になる。基板2の厚さが4000μm以下であることにより、例えば光学素子1をサブテラヘルツ帯における1/4波長板に利用する場合であっても、光学素子1の大型化を抑制できる。基板2の厚さの下限は、例えば、20μmでもよいし、50μmでもよいし、100μmでもよい。基板2の厚さの上限は、3000μmでもよいし、2500μmでもよいし、2000μmでもよいし、1500μmでもよいし、1000μmでもよい。
基板2における2つの光軸は、常軸と、異常軸である。常軸に沿った偏光方向に対する屈折率を第1屈折率no1とし、異常軸に沿った偏光方向に対する屈折率を第2屈折率ne1とする。第1屈折率no1は、第2屈折率ne1よりも大きい。基板2においては、常軸は退相軸に相当し、異常軸は進相軸に相当する。基板2内を光が伝搬する場合、常軸に沿って伝搬する成分は、異常軸に沿って伝搬する成分よりも遅く伝搬する。一般的に、屈折率には周波数依存性がある。このため本実施形態では、第1屈折率no1と第2屈折率ne1とのそれぞれは、可視光よりも低周波数の周波数帯域における屈折率の実部である。各屈折率の実部は、例えば最小偏角法、臨界角法などによって測定される。低周波数帯域における第1屈折率no1と第2屈折率ne1とのそれぞれは、例えば、2.0以上でもよいし、2.3以上でもよいし、2.5以上でもよいし、3.0以上でもよいし、5.0以上でもよいし、6.5以上でもよいし、9.0以上でもよい。
低周波数帯域における第1屈折率no1と第2屈折率ne1との差(屈折率差)の絶対値は、例えば0.2以上5.0以下である。当該屈折率差の絶対値が0.2以上である場合、光学素子1をサブテラヘルツ帯における1/4波長板に利用する場合であっても、基板2の厚さを上記範囲内に設定できる。上記絶対値が大きいほど、基板2を薄くできる。このため、上記絶対値の下限は、0.25でもよいし、0.3でもよいし、0.5でもよいし、0.8でもよいし、1.4でもよい。よって、上記絶対値は、0.25以上5.0以下でもよいし、0.3以上5.0以下でもよいし、0.5以上5.0以下でもよいし、0.8以上5.0以下でもよいし、1.4以上5.0以下でもよい。また、上記絶対値の上限は、4.5でもよいし、4.0でもよいし、3.5でもよいし、3.0でもよい。なお、上記絶対値が大きい材料ほど波長板などにより適する傾向があり、上記絶対値が小さい材料ほど窓材、レンズなどにより適する傾向がある。
基板2は、低周波数帯域において複屈折性を示す材料を含む。当該材料は、例えば、酸化物、ホウ化物、窒化物、塩化物、臭化物、フッ化物などである。上記材料は、複屈折を示す結晶(複屈折結晶)でもよい。この場合、基板2は、複屈折結晶から形成されてもよいし、複屈折結晶を主成分として含んでもよい。複屈折結晶は、2種類以上の元素を含み、特に限定されないが、例えば、酸化物結晶、窒化物結晶、塩化物結晶、臭化物結晶、フッ化物結晶などである。複屈折結晶の結晶構造は、特に限定されないが、例えば、三方晶系結晶構造、正方晶系結晶構造、斜方晶系結晶構造、六方晶系結晶構造などである。基板2の材料は、光学素子1が透過する波長、光学素子1の大きさ等に応じて、適宜選択される。
複屈折結晶の結晶構造が三方晶系結晶構造である場合、複屈折結晶は、例えば、リチウム、ホウ素などを含んでもよい。複屈折結晶がリチウムを含む場合、当該複屈折結晶の結晶構造は、三方晶系イルメナイト類似構造でもよい。また、基板2は、例えば、ニオブ酸リチウム、及びタンタル酸リチウムの少なくとも一方を含んでもよい。基板2の小型化の観点から、基板2は、ニオブ酸リチウムを含んでもよい。複屈折結晶がホウ素を含む三方晶系結晶構造を有する場合、基板2は、例えばBBO結晶(βホウ酸バリウム結晶、β-BaB)などを含んでもよい。
複屈折結晶の結晶構造が正方晶系結晶構造または斜方晶系結晶構造である場合、複屈折結晶は、例えば、チタンなどを含んでもよい。この場合、基板2は、例えば酸化チタンを含んでもよい。複屈折結晶の結晶構造が六方晶系結晶構造である場合、複屈折結晶は、例えば、アルミニウム(Al)などを含んでもよい。この場合、基板2は、例えば酸化アルミニウム(特に、α-アルミナの一種であるサファイア)を含んでもよい。基板2がチタンもしくはアルミニウムを含む場合、基板2がリチウムを含む場合と比較して、基板2を安価に製造できる。
反射防止膜3は、基板2の主面2aにおける表面反射を低減するための光学部品であり、単層構造を有する。また、反射防止膜4(第2反射防止膜)は、基板2の主面2bにおける表面反射を低減するための光学部品であり、単層構造を有する。本実施形態では、反射防止膜3,4は、互いに同様の構造及び組成を有する。このため以下では、反射防止膜3のみを詳細に説明する。
反射防止膜3の厚さは、光学素子1の用途、基板2に含まれる材料、反射防止膜3に含まれる材料、及び、光学素子1に入射する光の周波数などに応じて適宜調整される。例えば、反射防止膜3の理想厚さは、光学素子1に入射する光の波長を1/4とし、かつ、反射防止膜3の屈折率で除すことによって定められる。本実施形態では、反射防止膜3の厚さは、2μm以上550μm以下である。例えば、低周波数帯域の光が光学素子1に入射した場合、光学素子1に入射する上記光の反射率は、低いほどよく、例えば10%以下である。この場合、光学素子1における上記光の透過率は、90%以上になり得る。上記反射率は、8%以下でもよいし、5%以下でもよいし、3%以下でもよいし、1%以下でもよいし、0.5%以下でもよい。反射防止膜3は、主面2aに対して直接的に固定されてもよいし、主面2aに対して間接的に固定されてもよい。前者の場合、反射防止膜3は、例えば主面2aに対するコーティング部である。後者の場合、反射防止膜3は、例えば接着剤等を介して主面2a上に固定される。
反射防止膜3は、レストストラーレン効果を示す材料を含む。レストストラーレン効果は、特定のエネルギーバンド(周波数帯域)の光が媒体内を伝搬しにくくなる現象である。特定のエネルギーバンドに相当する周波数帯域は、上記媒体に含まれるイオンの振動周波数に近い。上記特定のエネルギーバンドは、レストストラーレンバンドとも呼称される。特定のエネルギーバンドの光の波長は、多くの場合、可視光の波長の約100倍程度である。換言すると多くの場合、レストストラーレンバンドに相当する波長域は、10μm~100μmの範囲内であり、レストストラーレンバンドに相当する周波数帯域は、約5THz~100THzの範囲内である。よって、本実施形態における可視光よりも低周波数の周波数帯域(低周波数帯域)の少なくとも一部は、反射防止膜3のレストストラーレンバンドよりも低周波数の周波数帯域に相当するといえる。
上述したように、基板2の低周波数帯域における第1屈折率no1と第2屈折率ne1とのそれぞれは、比較的高い。このため、低周波数帯域における反射防止膜3の屈折率もまた、比較的高くてもよい。例えば、レストストラーレンバンドよりも低周波数の周波数帯域(例えば、低周波数帯域)における反射防止膜3の屈折率と、レストストラーレンバンドよりも高周波数の周波数帯域(例えば、可視域)における反射防止膜3の屈折率との差の絶対値は、0.5以上でもよい。この場合、基板2に対する反射防止膜3の反射防止機能を良好に発揮できる傾向がある。特に、第1屈折率no1と第2屈折率ne1とのそれぞれが5.0以上である基板2に対して、反射防止膜3の機能を良好に発揮できる傾向がある。
低周波数帯域において、反射防止膜3の屈折率は、空気の屈折率以上(1以上)であって基板2の屈折率以下(第2屈折率ne1以下)である。基板2から反射防止膜3への光透過性の観点から、低周波数帯域における反射防止膜3の屈折率は、基板2の第1屈折率no1の平方根と、第2屈折率ne1の平方根との両方に近い。例えば、低周波数帯域における反射防止膜3の屈折率と、基板2の第1屈折率no1の平方根との差の絶対値、及び、低周波数帯域における反射防止膜3の屈折率と、第2屈折率ne1の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.5以下である。この場合、基板2から反射防止膜3に入射する低周波数帯域の光の反射率を5%以下に抑制できる。上記絶対値は、0.3以下でもよいし、0.1以下でもよい。上記絶対値が0.1以下である場合、基板2から反射防止膜3に入射する低周波数帯域の光の反射率を1%未満に抑制できる。
反射防止膜3は、例えば、酸化物、ホウ化物、窒化物、塩化物、臭化物、フッ化物などを含む。これらは、結晶でもよい。この場合、反射防止膜3は、結晶から形成されてもよいし、結晶を主成分として含んでもよい。上述した性能を有する(すなわち、レストストラーレン効果を示すと共に上記屈折率を有する)酸化物としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。上述した性能を有する塩化物としては、塩化セシウム(CsCl)等が挙げられる。上述した性能を有する臭化物としては、例えば臭化セシウム(CsBr)などが挙げられる。上述した性能を有するフッ化物としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)等が挙げられる。反射防止膜3がフッ化物を含む場合、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウムの少なくとも一つを含んでもよい。
次に、図2及び図3を参照しながら、光学素子1の製造方法の一例について説明する。図2(a)~(c)及び図3(a)~(c)のそれぞれは、本実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための模式図である。以下では、光学素子1として0.3THzの光に適する1/4波長板の製造方法の一例を説明する。
まず、図2(a)に示されるように、基台S上に第1基材11を載置する(第1ステップ)。第1ステップでは、種々の接着剤を用いて、基台Sの水平面S1上に第1基材11を固定する。第1基材11は、後に反射防止膜3になる部材であり、反射防止膜3よりも厚い。第2ステップでは、第1基材11として、例えば1.5インチのフッ化カルシウム結晶ウエハーが用いられる。
次に、図2(b)に示されるように、第1基材11を薄くすることによって反射防止膜3を形成する(第2ステップ)。第2ステップでは、第1基材11の厚さが所望の厚さになるまで、第1基材11を薄くする。このとき、第1基材11の頂面が水平面S1に対して平行になるように、第1基材11を薄くする。例えば、化学機械研磨(CMP)、フライカットなどによって、第1基材11を薄くする。第2ステップ後、例えば90μm以上120μm以下(目標:107μm)の厚さを有し、露出面3aを有する反射防止膜3が形成される。
次に、反射防止膜3上に第2基材12を載置する(第3ステップ)。第3ステップでは、第3ステップでは、反射防止膜3の縁部に設けられる平部3b(オリエンテーションフラット)と、第2基材12の縁部に設けられる平部12a(オリエンテーションフラット)とを合わせるように、第2基材12を反射防止膜3上に載置する。このとき、種々の接着剤を用いて、反射防止膜3の露出面3a上に第2基材12を固定する。第2基材12は、後に基板2になる部材であり、基板2よりも厚い。第3ステップでは、第2基材12としてニオブ酸リチウム結晶が用いられるが、これに限られない。反射防止膜3と第2基材12との間に位置する接着剤(第2接着剤)は、基台Sと第1基材11との間に位置する接着剤(第1接着剤)と異なる。第2接着剤は、第1接着剤の溶剤に対して難溶性であればよい。
次に、図3(a)に示されるように、第2基材12を薄くすることによって基板2を形成する(第4ステップ)。第4ステップでは、第2基材12の厚さが所望の厚さになるまで、第2基材12を薄くする。このとき、第2基材12の露出面12bが水平面S1に対して平行になるように、第2基材12を薄くする。第4ステップ後、例えば130μm以上180μm以下(目標:161μm)の厚さを有すると共に1/4波長板として機能する基板2が形成される。
次に、図3(b)に示されるように、基板2上に反射防止膜4を形成する(第5ステップ)。第5ステップでは、まず、後に反射防止膜4になる第3基材(不図示)を基板2の主面2b上に載置する。このとき、基板2と第3基材とは、上記第2接着剤によって固定される。続いて、第3基材を所望の厚さになるまで薄くすることによって、反射防止膜4を形成する。第5ステップ後、例えば90μm以上120μm以下(目標:107μm)の厚さを有する反射防止膜4が形成される。
次に、基板2と反射防止膜3,4とを有する光学素子1を基台Sから取り外す(第6ステップ)。第6ステップでは、溶剤を用いて第1接着剤を除去する。当該溶剤は、第1接着剤が易溶性を示し、かつ、第2接着剤が難溶性を示すものであればよい。基台Sから取り外された光学素子1は、適宜加工されてもよい。
本実施形態に係る光学素子1の作用効果について、上述した製造方法によって製造された光学素子1を用いながら説明する。すなわち、ニオブ酸リチウム結晶から形成されると共に0.3THzの光に適する1/4波長板である基板2と、フッ化カルシウム結晶から形成される反射防止膜3,4とを有する光学素子1を具体例として用いつつ、光学素子1の作用効果を説明する。
図4は、低周波数帯域におけるニオブ酸リチウム結晶の屈折率を示す図である。図4において、縦軸は屈折率の実部を示し、横軸は周波数を示す。プロット21は、ニオブ酸リチウム結晶の第1屈折率の実部を示し、プロット22はニオブ酸リチウム結晶の第2屈折率の実部を示す。周波数が0.3THzである場合、第1屈折率の実部は6.61であり、第2屈折率の実部は5.06である。このため、周波数が0.3THzである場合、第1屈折率と第2屈折率との差(屈折率差)の絶対値は、約1.5である。これにより、基板2がニオブ酸リチウム結晶から形成される場合、0.3THzの光に適する1/4波長板の基板2の厚さを、130μm以上180μm以下に設定できる。なお、基板2がニオブ酸リチウム結晶から形成される場合、0.9THzの光に適する1/4波長板の基板2の厚さは、約50μmに設定できる。
これに対して、サブテラヘルツ帯における水晶の屈折率差の絶対値は、約0.05である。このため、0.3THzの光に適する1/4波長板の基板に水晶が用いられる場合、当該基板の厚さは約5.3mm(約5300μm)となる。この基板の厚さは、ニオブ酸リチウム結晶から形成される基板2の厚さの約30倍になる。また、シミュレーションによれば、0.1THzの光に適する1/4波長板に含まれる基板の屈折率差の絶対値が0.2である場合、当該基板の厚さは約3.75mm(3750μm)と推定される。以上より、本実施形態に係る光学素子1に含まれる基板2のように、屈折率差の絶対値が0.2以上であることによって、光学素子1がサブテラヘルツ帯などの低周波数帯域にて用いられる場合であっても、基板2の厚さを4000μm以下に設定できる。
図5は、低周波数帯域におけるニオブ酸リチウム結晶の反射損失を示す図である。図5において、縦軸はニオブ酸リチウム結晶の反射損失を示し、横軸は周波数を示す。プロット25は、ニオブ酸リチウム結晶の常軸に沿った偏光成分の反射損失を示し、プロット26は、ニオブ酸リチウム結晶の異常軸に沿った偏光成分の反射損失を示す。図5に示されるように、低周波数帯域では、ニオブ酸リチウム結晶は、いずれの偏光成分も70%以上の反射損失を示す。一般的に、複屈折を示す物質においては、屈折率差の絶対値が大きいほど、当該物質の反射損失は高い傾向がある。よって反射損失の観点から、ニオブ酸リチウム結晶を含む基板2は、低周波数帯域において必ずしも有用とは言えない。
このため本実施形態では、基板2の反射損失低減の解決手法の一つとして、反射防止膜3が設けられる。図6(a),(b)は、光学素子の透過率のシミュレーション結果を示す図である。図6(a)は、常軸に沿った偏光成分の透過率のシミュレーション結果を示し、図6(b)は、異常軸に沿った偏光成分の透過率のシミュレーション結果を示す。図6(a),(b)のそれぞれにおいて、縦軸は透過率(%)を示し、横軸は周波数(GHz)を示す。図6(a)において、プロット31は、光学素子がニオブ酸リチウム結晶のみである場合(すなわち、光学素子が基板のみである場合)の透過率を示す。プロット32は、光学素子の基板がニオブ酸リチウム結晶であって、各反射防止膜がフッ化カルシウム結晶である場合の透過率を示す。図6(b)において、プロット33は、光学素子がニオブ酸リチウム結晶のみである場合(すなわち、光学素子が基板のみを有する場合)の透過率を示す。プロット34は、光学素子の基板がニオブ酸リチウム結晶であって、各反射防止膜がフッ化カルシウム結晶である場合の透過率を示す。
図6(a),(b)に示されるように、光学素子が基板のみを有する場合、エタロン効果にて極一部の周波数帯においてのみ透過率が高い。ただ、0.3THz(300GHz)における透過率は、いずれの偏光成分においても0.4を下回る。このため、基板のみを有する光学素子は、0.3THzに適する1/4波長板として実用可能とは言えない。これに対して、光学素子が反射防止膜を有する場合、0.3THzにおける透過率は、いずれの偏光成分においても0.9を上回る。加えて、0.9を上回る透過率を示す周波数帯は、光学素子が基板のみを有する場合と比較して、明らかに広がる。以上より、レストストラーレンバンドを示す材料を含む反射防止膜3をレストストラーレンバンドよりも低周波の周波数帯域(例えば、サブテラヘルツ帯)にて用いたところ、基板2に対する反射防止膜3としての機能を十分実用可能な程度(例えば、光学素子1に入射する光の反射率が10%以下)に発揮できることがわかる。したがって本実施形態によれば、上述したように、サブテラヘルツ帯などの低周波数帯域にて用いられる場合であっても、実用可能であって小型化を実現可能な光学素子1を提供できる。
本実施形態では、第1屈折率no1と第2屈折率ne1との差の絶対値は、0.8以上でもよいし、1.4以上5.0以下でもよい。上記絶対値が大きいほど、基板2の厚さをより薄くできる。なお、0.3THzにおけるニオブ酸リチウム結晶の上記絶対値は、約1.55である。また、0.3THzにおけるタンタル酸リチウム結晶の上記絶対値は、0.366であり、0.25THzにおけるBBO結晶の上記絶対値は、約0.24であり、0.3THzにおけるサファイアの上記絶対値は、約0.33であり、0.3THzにおける酸化チタン結晶の上記絶対値は、約3.7である。また、0.25THzにおけるBBO結晶の第1屈折率の実部は2.81であって、第2屈折率の実部は2.57である。0.3THzにおけるサファイアの第1屈折率の実部は3.412であって、第2屈折率の実部は3.083である。0.3THzにおける酸化チタン結晶の第1屈折率の実部は12.85であって、第2屈折率の実部は9.15である。
本実施形態では、基板2は、リチウムを含む三方晶系結晶構造を有してもよい。また、基板2は、ニオブ酸リチウム、及びタンタル酸リチウムの少なくとも一方を含んでもよい。
本実施形態では、低周波数帯域における反射防止膜3の屈折率と、基板2の第1屈折率no1の平方根との差の絶対値、及び、反射防止膜3の上記屈折率と、基板2の第2屈折率ne1の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.5以下である。このため、光学素子1の透過率をより向上可能である。
具体的に説明すると、反射防止膜3の屈折率は、基板2の屈折率の平方根に近いほど、基板2から反射防止膜3へ光が透過しやすいことが通常知られている。周波数が0.3THzである場合、ニオブ酸リチウム結晶の基板2の第1屈折率(実部)の平方根は2.335であり、基板2の第2屈折率(実部)の平方根は2.173である。また、波長が5μm(周波数が約60THz)である場合、フッ化カルシウム結晶の屈折率は、約1.4と通常知られている。また、フッ化カルシウム結晶の透過波長領域は、通常0.13μm以上1μm以下とも通常知られている。一方、レストストラーレンバンドよりも低周波数の周波数帯域におけるフッ化カルシウム結晶の屈折率は、通常知られていない。なお、フッ化カルシウム結晶のレストストラーレンバンドに相当する周波数帯域は、7THz~15THzである。調査の結果、周波数が0.3THzである場合、フッ化カルシウム結晶の屈折率は、2.54であることが判明した。当該屈折率と基板2の第1屈折率(実部)の平方根との差の絶対値、及び、上記屈折率と基板2の第2屈折率(実部)の平方根との差の絶対値とのそれぞれは、0.5以下である。これらの絶対値は、少なくともフッ化カルシウム結晶のレストストラーレンバンドよりも低周波数の周波数帯域にて、概ね満たされる。よって、ニオブ酸リチウム結晶から形成される基板2と、フッ化カルシウム結晶から形成される反射防止膜3とを有する光学素子1であって、基板2と反射防止膜3との厚さが適宜調整された光学素子1においては、例えば基板2から反射防止膜3に入射する低周波数帯域の光の反射率を良好に低減できる。
本実施形態では、低周波数帯域における反射防止膜3の屈折率と、可視域における反射防止膜の屈折率との差の絶対値は、0.5以上でもよい。この場合、基板2に対する反射防止膜3の反射防止機能を良好に発揮できる傾向がある。特に、第1屈折率no1と第2屈折率ne1とのそれぞれが5.0以上である基板2に対して反射防止膜3の機能を良好に発揮できる傾向がある。
本実施形態では、光学素子1は、反射防止膜3に加えて、主面2b上に位置する反射防止膜4を備える。これにより、光学素子1を利用可能な周波数帯域を拡張できる。
次に、上記実施形態の各変形例について説明する。各変形例の説明において、上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、各変形例に上記実施形態の記載を適宜用いてもよい。
(第1変形例)
第1変形例に係る光学素子は、少なくとも低周波数帯域において複屈折性を示す反射防止膜を用いた点で、上記実施形態と異なる。第1変形例においては、反射防止膜3の常軸に沿った偏光方向に対する屈折率を第3屈折率no2とし、異常軸に沿った偏光方向に対する屈折率を第4屈折率ne2とする。第3屈折率no2は、第4屈折率ne2よりも大きい。複屈折性を示す反射防止膜3においては、常軸は退相軸に相当し、異常軸は進相軸に相当する。
第1変形例においては、基板2の常軸と反射防止膜3,4の常軸とを一致させ、かつ、基板2の異常軸と反射防止膜3,4の異常軸とを一致させるように、基板2と反射防止膜3,4とが配置される。加えて、低周波数帯域における反射防止膜3の第3屈折率no2と、基板2の第1屈折率no1の平方根との差の絶対値(第1絶対値)、及び、低周波数帯域における反射防止膜3の第4屈折率ne2と、第2屈折率ne1の平方根との差の絶対値(第2絶対値)のそれぞれは、例えば0.5以下である。この場合、光学素子1に入射する低周波数帯域の各偏光成分の反射率を7%以下に抑制できる。上記絶対値は、0.3以下でもよいし、0.1以下でもよい。上記絶対値が0.1以下である場合、光学素子1に入射する低周波数帯域の各偏光成分の反射率を1%未満に抑制できる。
反射防止膜3に含まれる材料は、上記実施形態と同様に、酸化物、ホウ化物、窒化物、塩化物、臭化物、フッ化物などを含む。当該材料は、結晶でもよい。酸化物としては、例えば酸化アルミニウムの一種であるサファイアなどが挙げられる。フッ化物としては、例えばフッ化マグネシウムなどが挙げられる。0.3THzにおけるサファイアの各屈折率の実部は上述の通り、3.412,3.083である。また、0.3THzにおけるフッ化マグネシウムの各屈折率の実部は、2.335,2.173である。
図7は、入射光の波長に対するフッ化マグネシウムの屈折率を示す図である。図7において、縦軸は屈折率の実部もしくは屈折率の虚部を示し、横軸は入射光の波長を示す。図7において、プロット41,42は、フッ化マグネシウムの屈折率の実部を示し、プロット43,44は、フッ化マグネシウムの屈折率の虚部を示す。図7に示されるように、波長が10μm~100THzにおける範囲では、屈折率(特に、虚部)が高い。当該範囲は、フッ化マグネシウムのレストストラーレンバンドに相当する。また、当該レストストラーレンバンドよりも長波長(すなわち、低周波数)における屈折率は、全体的に、上記レストストラーレンバンドよりも短波長(すなわち、高周波数)における屈折率よりも、0.5以上大きい。ただ、例えば波長が100μm以上であれば、フッ化マグネシウムの屈折率の虚部は、0.01以下である。
例えば、反射防止膜3の材料として酸化アルミニウムであるサファイアが用いられ、かつ、基板2の材料として酸化チタンが用いられる場合、0.3THz及びその付近の周波数帯域において、反射防止膜3の第3屈折率no2と、基板2の第1屈折率no1の平方根との差の絶対値、及び、低周波数帯域における反射防止膜3の第4屈折率ne2と、第2屈折率ne1の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.2以下になる。また、反射防止膜3の材料としてフッ化マグネシウムが用いられ、かつ、基板2の材料としてニオブ酸リチウムが用いられる場合、0.3THz及びその付近の周波数帯域において、反射防止膜3の第3屈折率no2と、基板2の第1屈折率no1の平方根との差の絶対値、及び、低周波数帯域における反射防止膜3の第4屈折率ne2と、第2屈折率ne1の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.25以下になる。
以上に説明した第1変形例においても、上記実施形態と同様の作用効果が発揮される。また、第1変形例においては、少なくとも上記周波数帯域における光の各偏光成分に対して高い透過率(例えば、99%以上)を示す光学素子1を提供できる。図8(a),(b)は、第1変形例の光学素子の透過率のシミュレーション結果を示す図である。図8(a)は、常軸に沿った偏光成分の透過率のシミュレーション結果を示し、図8(b)は、異常軸に沿った偏光成分の透過率のシミュレーション結果を示す。図8(a),(b)のそれぞれにおいて、縦軸は透過率(%)を示し、横軸は周波数(GHz)を示す。図8(a)において、プロット35は、光学素子の基板がニオブ酸リチウム結晶であって、各反射防止膜がフッ化マグネシウム結晶である場合の透過率を示す。図8(b)において、プロット36は、光学素子の基板がニオブ酸リチウム結晶であって、各反射防止膜がフッ化カルシウム結晶である場合の透過率を示す。図8(a),(b)に示されるように、第1変形例においても、0.3THzにおける透過率は、いずれの偏光成分においても0.9を上回る。また、0.9を上回る透過率を示す周波数帯は、光学素子が基板のみを有する場合と比較して、明らかに広がる。加えて第1変形例においては、上記実施形態よりも高周波数帯域における適正が高いことがわかる。
上記第1変形例においては、基板2と反射防止膜3,4との両方が複屈折性を示す。このため、基板2のみが所望の波長に対する1/4波長板になるように基板2の厚さを調整した場合、光学素子1を透過した光の位相は、複屈折性を示す反射防止膜3,4の影響により、透過前の光の位相と比較して1/4よりずれる現象が発生し得る。この現象を踏まえ、光学素子1を全体として(2X-1)/4波長板、(2X-1)/2波長板、もしくは(2X-1)/8波長板(Xはともに自然数)になるように、基板2の厚さと反射防止膜3,4の厚さとが調整されてもよい。この場合、例えば、光学素子1に入射する光の波長に応じた反射防止膜3,4の厚さを設定する。ここで、基板2と、第1変形例に係る反射防止膜3,4とのそれぞれは、複屈折率を有する。よって、反射防止膜3の第3屈折率no2と、基板2の第1屈折率no1の平方根との差の第1絶対値、並びに、反射防止膜3の第4屈折率ne2と、第2屈折率ne1の平方根との差の第2絶対値の関係を踏まえて、反射防止膜3,4の厚さを設定する。したがって、光学素子1に入射する光の波長と、上記第1絶対値と、上記第2絶対値とに基づいて、反射防止膜3,4の厚さが設定される。このため、反射防止膜3,4のそれぞれの厚さは、第3屈折率no2における理想厚さと、第4屈折率ne2における理想厚さとの中間値に限られない。続いて、基板2によって生じさせなければならない位相差pdに応じて、基板2の厚さを設定する。位相差pdは、光学素子1によって生じさせなければならない位相差pdから、反射防止膜3,4により生じる位相差pdを差し引いたもの(pd=pd-pd)に相当する。基板2の厚さは、基板2の第1屈折率no1と第2屈折率ne1との差を踏まえて、設定される。以上に記載した方法を実施することによって、反射防止膜3,4が複屈折性を示す場合においても、光学素子1全体として所望の位相差を示すことができる。
例えば、光学素子1が0.3THzの光に適する1/4波長板として機能するために、基板2としてニオブ酸リチウム結晶が用いられ、かつ、反射防止膜3,4としてフッ化マグネシウム結晶が用いられる場合、基板2の厚さは138μmに設定され、反射防止膜3,4のそれぞれの厚さは111μmに設定されてもよい。
また、1/4波長板として機能する光学素子を用いて直線偏光の光を円偏光に変換したい場合を考察する。円偏光は、互いに直交する2軸(例えばx軸とy軸)の偏光の振幅が等しく、かつ、これらの偏光の位相差が1/4波長となっている光に相当する。このため、互いの偏光の位相差が1/4波長であっても、互いの偏光の振幅が等しくないと円偏光にはならず、楕円偏光となる。例えば、上記第1変形例に係る光学素子に対して0.3THzの光を照射したときであって、常軸に沿った偏光成分の反射率と、異常軸に沿った偏光成分の反射率とが異なる場合、上記光学素子を透過した光は楕円偏光になる。光学素子を透過した直線偏光の光を円偏光としたい場合、基板2と反射防止膜3,4とのそれぞれに含まれる材料及び反射率を加味して、基板2の厚さと、反射防止膜3,4のそれぞれの厚さとの少なくとも一つを、さらに適宜調整してもよい。
具体例として、光学素子を透過した光であって、常軸に沿った偏光成分の振幅(第1振幅)と、異常軸に沿った偏光成分の振幅(第2振幅)とは互いに異なり、かつ、第1振幅が第2振幅よりも大きいとする。この場合、例えば、反射防止膜3,4のみを透過した光であって、常軸に沿った偏光成分の振幅(第3振幅)と、異常軸に沿った偏光成分の振幅(第4振幅)とを互いに異ならせるように、反射防止膜3,4の厚さを調整する。ここで、第4振幅は、第3振幅よりも大きくし、かつ、第4振幅と第3振幅との比が、第1振幅と第2振幅との比に等しくする。これにより、光学素子内にて各偏光成分の振幅が調整され、当該光学素子を透過する光が円偏光になる、もしくは、円偏光に近づく。上述した具体例では、反射による振幅の不一致の例であるが、各軸の吸収の違いに基づく振幅の不一致を発生させてもよい。もしくは、反射による振幅の不一致と、吸収の違いに基づく振幅の不一致との両方の影響を利用して、光学素子が設計されてもよい。
上記第1変形例では、基板2の常軸と反射防止膜3,4の常軸とを一致させ、かつ、基板2の異常軸と反射防止膜3,4の異常軸とを一致させるように、基板2と反射防止膜3,4とが配置されるが、これに限られない。例えば、基板2の常軸と反射防止膜3,4の異常軸とが一致し、かつ、基板2の異常軸と反射防止膜3,4の常軸とが一致してもよい。もしくは、基板2の常軸及び異常軸の少なくとも一方は、反射防止膜3,4の常軸及び異常軸に対して不一致でもよい。この場合、基板2の常軸が反射防止膜3,4の常軸及び異常軸のいずれか一方に一致し、基板の異常軸が反射防止膜3,4の常軸及び異常軸に対して不一致でもよい。もしくは、基板2の常軸が反射防止膜3,4の常軸及び異常軸に対して不一致であり、基板の異常軸が反射防止膜3,4の常軸及び異常軸のいずれか一方に一致してもよい。これらの場合もまた、光学素子全体として所望の機能を発揮できるように設計できる。また、使用したい波長全域においておおよそ所望の位相差になるように、互いに積層される複数の複屈折性材料の厚さおよび光軸方位などを調整する。例えば、光学素子に含まれる各部材の厚さ、材料、角度、部材数を変数として、最適化計算を実施することによって、調整する。これにより、利用可能な周波数帯を広域化できる。
(第2変形例)
第2変形例に係る光学素子は、少なくとも一対の光透過膜を備える点で、上記実施形態とは異なる。図9(a)は、第2変形例に係る光学素子の概略斜視図を示し、図9(b)は、第2変形例に係る光学素子の概略要部断面図を示す。図9(a),(b)に示される光学素子1Aは、基板2と反射防止膜3,4と、反射防止膜3上に位置する光透過膜5と、反射防止膜4上に位置する光透過膜6とを備える。光透過膜5,6のそれぞれは、光学素子1の反射率を低減するための光学部品であり、単層構造を有する。第2変形例では、光透過膜5,6は、互いに同様の構造及び組成を有する。このため以下では、光透過膜5のみを詳細に説明する。
光透過膜5の厚さは、光学素子1Aの用途、基板2に含まれる材料、反射防止膜3に含まれる材料、光透過膜5に含まれる材料、及び、光学素子1Aに入射する光の周波数などに応じて適宜調整される。本実施形態では、光透過膜5の厚さは、反射防止膜3の厚さに応じて変化し、反射防止膜3と光透過膜5との合計厚さは、2μm以上550μm以下である。第2変形例では、反射防止膜4と光透過膜6との合計厚さも、2μm以上550μm以下である。光透過膜5は、主面3xに対して直接的に固定されてもよいし、主面3xに対して間接的に固定されてもよい。前者の場合、光透過膜5は、例えば主面3xに対するコーティング部である。後者の場合、光透過膜5は、例えば接着剤等を介して主面3x上に固定される。
低周波数帯域において、光透過膜5の屈折率は、例えば、空気の屈折率以上(1以上)であって反射防止膜3の屈折率以下である。反射防止膜3から光透過膜5への光透過性の観点から、低周波数帯域における光透過膜5の屈折率は、反射防止膜3の屈折率の平方根に近い。例えば、低周波数帯域における光透過膜5の屈折率と、反射防止膜3の屈折率の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.5以下である。この場合、反射防止膜3から光透過膜5に入射する低周波数帯域の光の反射率を5%以下に抑制できる。上記絶対値は、0.3以下でもよいし、0.1以下でもよい。上記絶対値が0.1以下である場合、反射防止膜3から光透過膜5に入射する低周波数帯域の光の反射率を1%未満に抑制できる。
光透過膜5は、例えば、酸化物、ホウ化物、窒化物、塩化物、臭化物、フッ化物などを含む。これらは、結晶でもよい。この場合、光透過膜5は、結晶から形成されてもよいし、結晶を主成分として含んでもよい。光透過膜5は、例えば、BBO結晶、水晶などを含んでもよい。例えば、反射防止膜3の材料として酸化アルミニウムであるサファイアが用いられ、かつ、基板2の材料として酸化チタンが用いられる場合,光透過膜5は、フッ化カルシウム結晶などを含んでもよい。
以上に説明した第2変形例に係る光学素子1Aにおいても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて第2変形例においては、上記第1変形例よりも0.9を上回る透過率を示す周波数帯を広げることができる。
上記第2変形例において、光透過膜5は、複屈折性を示してもよい。例えば、光透過膜5は、水晶などの複屈折性を示す材料によって形成されてもよい。光透過膜5の常軸に沿った偏光方向に対する屈折率を第5屈折率no3とし、異常軸に沿った偏光方向に対する屈折率を第6屈折率ne3とする。第5屈折率no3は、第6屈折率ne3よりも大きい。複屈折性を示す光透過膜5においては、常軸は退相軸に相当し、異常軸は進相軸に相当する。この場合、基板2の常軸と、反射防止膜3,4の常軸と、光透過膜5,6の常軸とを一致させ、かつ、基板2の異常軸と、反射防止膜3,4の異常軸と、光透過膜5,6の異常軸とを一致させるように、基板2と反射防止膜3,4と光透過膜5,6が配置されてもよいが、これに限られない。光透過膜5,6の常軸は、基板2の常軸及び反射防止膜3,4の常軸の少なくとも一方に対して不一致でもよいし、光透過膜5,6の異常軸は、基板2の異常軸及び反射防止膜3,4の異常軸の少なくとも一方に対して不一致でもよい。光透過膜5,6の常軸は、基板2の異常軸及び反射防止膜3,4の異常軸の少なくとも一方に対して一致してもよいし、光透過膜5,6の異常軸は、基板2の常軸及び反射防止膜3,4の常軸の少なくとも一方に対して一致してもよい。もしくは、基板2の常軸及び異常軸と、反射防止膜3,4の常軸及び異常軸と、光透過膜5,6の常軸及び異常軸とは、互いに不一致でもよい。
低周波数帯域における光透過膜5の第5屈折率no3と、反射防止膜3の第3屈折率no2の平方根との差の絶対値、及び、低周波数帯域における光透過膜5の第6屈折率ne3と、第4屈折率ne2の平方根との差の絶対値のそれぞれは、例えば0.3以下である。この場合、反射防止膜3から光透過膜5に入射する低周波数帯域の各偏光成分の反射率を5%以下に抑制できる。上記絶対値は、0.2以下でもよいし、0.1以下でもよい。上記絶対値が0.1以下である場合、反射防止膜3から光透過膜5に入射する低周波数帯域の各偏光成分の反射率を1%未満に抑制できる。
以上、本開示の一側面を上記実施形態及び上記各変形例に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示の一側面は上記実施形態及び上記各変形例に限定されるものではない。本開示の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。また、上記実施形態及び上記各変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記第1及び第2変形例を組み合わせてもよい。この場合、例えば、光透過膜の常軸が反射防止膜の常軸と一致してもよいし、光透過膜の常軸が反射防止膜の異常軸と一致してもよいし、光透過膜の常軸と反射防止膜の異常軸とが不一致でもよい。また、光透過膜の異常軸が反射防止膜の常軸と一致してもよいし、光透過膜の異常軸が反射防止膜の異常軸と一致してもよいし、光透過膜の異常軸と反射防止膜の異常軸とが不一致でもよい。基板、反射防止膜、光透過膜の厚さは、適宜調整されてもよい。
上記実施形態及び上記各変形例では、光学素子は2つの反射防止膜を備えるが、これに限られない。光学素子は、1つの反射防止膜を備えてもよい。この場合、例えば光学素子の基板における露出面は、他の光学素子(例えば、センサ、テラヘルツ波光源など)に直接接してもよい。また、反射防止膜は単層構造を有するが、これに限られない。反射防止膜は多層構造を有してもよい。
上記実施形態では、光学素子の常軸と反射防止膜の常軸とが一致させ、かつ、基板の異常軸と反射防止膜の異常軸とを一致させるように、基板と反射防止膜とが配置されるが、これに限られない。例えば、基板の常軸と反射防止膜の異常軸とが一致し、かつ、基板の異常軸と反射防止膜の常軸とが一致してもよい。もしくは、基板の常軸及び異常軸の少なくとも一方は、反射防止膜の常軸及び異常軸に対して不一致でもよい。
上記第2変形例では、光学素子は2つの光透過膜を備えるが、これに限られない。光学素子は、1つの光透過膜を備えてもよい。また、光透過膜は単層構造を有するが、これに限られない。光透過膜は多層構造を有してもよい。
1,1A…光学素子、2…基板、2a…主面(第1主面)、2b…主面(第2主面)、3,4…反射防止膜、3a…露出面、3b…平部、5,6…光透過膜、11…第1基材、12…第2基材、no1…第1屈折率、ne1…第2屈折率、no2…第3屈折率、ne2…第4屈折率、no3…第5屈折率、ne3…第6屈折率。

Claims (16)

  1. 第1主面及び第2主面を有し、複屈折性を示す基板と、
    前記第1主面上に位置する反射防止膜と、
    を備える前記反射防止膜のレストストラーレンバンドよりも低周波数である低周波数帯域用の光学素子であって、
    前記低周波数帯域における前記基板の第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、0.2以上であり、
    前記基板の厚さは、15μm以上4000μm以下であり、
    前記第1屈折率は、常軸に沿った偏光方向に対する屈折率であり、
    前記第2屈折率は、異常軸に沿った偏光方向に対する屈折率であり、
    前記低周波数帯域の光であって、前記光学素子に入射する前記光の反射率は、10%以下である、
    光学素子。
  2. 第1主面及び第2主面を有し、複屈折性を示す基板と、
    前記第1主面上に位置する反射防止膜と、
    を備える光学素子であって、
    前記反射防止膜のレストストラーレンバンドよりも低周波数である低周波数帯域における前記基板の第1屈折率と第2屈折率との差の絶対値は、0.2以上であり、
    前記基板の厚さは、15μm以上4000μm以下であり、
    前記第1屈折率は、常軸に沿った偏光方向に対する屈折率であり、
    前記第2屈折率は、異常軸に沿った偏光方向に対する屈折率であり、
    前記低周波数帯域の光であって、前記光学素子に入射する前記光の反射率は、10%以下である、
    光学素子。
  3. 前記低周波数帯域における前記第1屈折率と前記第2屈折率との差は、0.8以上である、請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 前記低周波数帯域における前記第1屈折率と前記第2屈折率との差は、1.4以上5.0以下である、請求項3に記載の光学素子。
  5. 前記基板は、リチウムを含む三方晶系結晶構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学素子。
  6. 前記基板は、ニオブ酸リチウム、及びタンタル酸リチウムの少なくとも一方を含む、請求項5に記載の光学素子。
  7. 前記低周波数帯域において、前記反射防止膜の屈折率と、前記第1屈折率の平方根との差の絶対値、及び、前記屈折率と、前記第2屈折率の平方根との差の絶対値のそれぞれは、0.5以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学素子。
  8. 前記低周波数帯域において、前記反射防止膜の前記屈折率と、可視域における前記反射防止膜の屈折率との差の絶対値は、0.5以上である、請求項7に記載の光学素子。
  9. 前記低周波数帯域において、前記反射防止膜は、複屈折性を示し、
    前記低周波数帯域における前記反射防止膜の第3屈折率と、前記第1屈折率の平方根との差の第1絶対値は、0.5以下であり、
    前記低周波数帯域における前記反射防止膜の第4屈折率と、前記第2屈折率の平方根との差の第2絶対値は、0.5以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学素子。
  10. 前記基板の進相軸は、前記反射防止膜の進相軸に対して一致し、
    前記基板の退相軸は、前記反射防止膜の退相軸に対して一致する、請求項9に記載の光学素子。
  11. 前記基板の進相軸及び退相軸の少なくとも一方は、前記反射防止膜の進相軸及び退相軸に対して不一致である、請求項9に記載の光学素子。
  12. 前記反射防止膜は、フッ化物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学素子。
  13. 前記フッ化物は、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、及びフッ化バリウムの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の光学素子。
  14. 前記基板は、酸化チタンを含み、
    前記反射防止膜は、酸化アルミニウムを含む、請求項1~4及び7~11のいずれか一項に記載の光学素子。
  15. 前記第2主面上に位置する第2反射防止膜をさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の光学素子。
  16. 前記反射防止膜上に位置し、反射防止膜よりも低い屈折率を有する光透過膜をさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の光学素子。
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