JP7671987B2 - 繊毛関連疾患モデルおよびその利用 - Google Patents
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Description
[1]繊毛関連疾患患者由来の体細胞から得られた人工多能性幹(iPS)細胞を分化誘導して得られた腎臓オルガノイドまたはそれに含まれる尿細管細胞(尿細管上皮細胞を含む、以下同様)などの腎構成細胞を、薬剤候補物質と接触させる工程、および当該腎臓オルガノイドまたは尿細管細胞などの腎構成細胞における、カルシウム動態、および/または嚢胞形成を測定する工程、を含む、繊毛関連疾患治療薬のスクリーニングまたは評価方法。
[2]前記体細胞が変異型PKD(Polycystic Kidney Disease)遺伝子を保持する、[1]に記載の方法。
[3]前記体細胞がPKD1遺伝子および/またはPKD2遺伝子に変異を有する繊毛関連疾患患者由来である、[2]に記載の方法。
[4]前記繊毛関連疾患が常染色体優性多発性嚢胞腎である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]嚢胞形成促進物質による刺激により嚢胞形成を誘導したのち、嚢胞形成を測定する、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]嚢胞形成促進物質がフォルスコリン、8-Bromo-cAMPまたはブレビスタチンである、[5]に記載の方法。
[7]嚢胞形成の測定が嚢胞のサイズ、数、もしくは真円度の測定である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]mTOR阻害剤またはCFTR阻害剤を陽性コントロールとして使用する、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]測定結果を、健常者由来の体細胞から得られたiPS細胞または遺伝子変異修復iPS細胞を分化誘導して得られた腎臓オルガノイドまたはそれに含まれる腎構成細胞のカルシウム動態、および/または嚢胞形成と比較する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]腎臓オルガノイドが、以下の工程により得られたものである、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
(i)多能性幹細胞を、FGF(線維芽細胞増殖因子)2、BMP(骨形成タンパク質)4、GSK(グリコーゲン合成酵素キナーゼ)-3β阻害剤およびレチノイン酸またはその誘導体を含む培地で培養する工程;
(ii)工程(i)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤およびBMP7を含む培地で培養する工程;
(iii)工程(ii)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7およびTGF(トランスフォーミング増殖因子)β阻害剤を含む培地で培養する工程;
(iv)工程(iii)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7、アクチビンおよびROCK阻害剤を含む培地で培養する工程;
(v)工程(iv)で得られた細胞を、レチノイン酸またはその誘導体、BMP阻害剤およびFGF9を含む培地で培養する工程;
(vi)工程(v)で得られた細胞を、GSK-3β阻害剤およびFGF9を含む培地で培養する工程;および
(vii)工程(vi)で得られた細胞を非接着培養することにより細胞塊を形成させて培養する工程。
[11]繊毛関連疾患患者由来の体細胞から得られたiPS細胞を分化誘導して得られた腎臓オルガノイドを含む繊毛関連疾患モデルであって、嚢胞形成促進物質による刺激により嚢胞形成を生じた、繊毛関連疾患モデル。
PKD1遺伝子は膜蛋白質“Polycystin (PC)1, transient receptor potential channel interacting”(Ensembl gene ID:ENSG00000008710)(旧称:polycystic kidney disease 1 (autosomal dominant))をコードする。PKD1としては、例えば、UniProtKBデータベースのアクセッション番号:P98161に登録されているアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。ただし、PKD1のアミノ酸配列は人種などにより異なるため、この特定のアミノ酸配列には限定されず、当該アミノ酸配列と80%以上、90%以上、95%以上、または98%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってよい。
PKD2遺伝子は“polycystin(PC)2, transient receptor potential cation channel”(Ensembl gene ID:ENSG00000118762)(旧称:polycystic kidney disease 2 (autosomal dominant))をコードする。PKD2としては、例えば、UniProtKBデータベースのアクセッション番号:Q13563に登録されているアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。ただし、PKD2のアミノ酸配列は人種などにより異なるため、この特定のアミノ酸配列には限定されず、当該アミノ酸配列と80%以上、90%以上、95%以上、または98%以上の同一性を有するアミノ酸配列であってよい。
PKD1
W429S, S2235L, V3008M, S3404Y, S3405Y, Missense
G3818R, Missense
E2111K, R2327W, Missense
Q3895X Nonsense
PKD2
A190T, Missense
(i)iPS細胞を、FGF2、BMP4、GSK-3β阻害剤およびレチノイン酸またはその誘導体を含む培地で培養する工程;
(ii)工程(i)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤およびBMP7を含む培地で培養する工程;
(iii)工程(ii)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7およびTGFβ阻害剤を含む培地で培養する工程;
(iv)工程(iii)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7、アクチビンおよびROCK阻害剤を含む培地で培養する工程;
(v)工程(iv)で得られた細胞を、レチノイン酸またはその誘導体、BMP阻害剤およびFGF9を含む培地で培養する工程;
(vi)工程(v)で得られた細胞を、GSK-3β阻害剤およびFGF9を含む培地で培養する工程;および
(vii)工程(vi)で得られた細胞を非接着培養により細胞塊を形成させて培養する工程。
接着培養とは、細胞が培養基材に接着した状態で培養されることを意味し、例えば、コーティング処理された培養皿にて培養することを意味する。コーティング剤としては、細胞外基質が好ましく、例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリンおよびラミニンといった物質またはこれらの断片が挙げられる。これらの細胞外基質は、組み合わせて用いられてもよく、例えば、BD Matrigel(商標)などの細胞からの調製物であってもよい。細胞外基質は好ましくは、ラミニンまたはその断片である。本発明においてラミニンとは、α鎖、β鎖、γ鎖をそれぞれ1本ずつ持つヘテロ三量体構造を有するタンパク質であり、サブユニット鎖の組成が異なるアイソフォームが存在する細胞外マトリックスタンパク質である。ラミニンは、5種のα鎖、4種のβ鎖および3種のγ鎖のヘテロ三量体の組合せで約15種類のアイソフォームを有する。特に限定されないが、例えば、α鎖は、α1、α2、α3、α4またはα5であり、β鎖は、β1、β2、β3またはβ4であり、ならびにγ鎖は、γ1、γ2またはγ3が例示される。ラミニンは、より好ましくは、α5、β1およびγ1からなるラミニン511である(Nat Biotechnol 28, 611-615 (2010))。ラミニンは断片であってもよく、インテグリン結合活性を有している断片であれば、特に限定されないが、例えば、エラスターゼにて消化して得られる断片であるE8フラグメント(ラミニン511E8)(EMBO J., 3:1463-1468, 1984、J. Cell Biol., 105:589-598, 1987、WO2011/043405)であってもよい。ラミニン511E8は市販されており、例えばニッピ株式会社等から購入可能である。
工程(i)では、iPS細胞を当該分野で公知の方法で分離し、培養することができる。iPS細胞の分離の方法としては、例えば、力学的分離や、プロテアーゼ活性とコラゲナーゼ活性を有する分離溶液(例えば、Accutase(TM)およびAccumax(TM)(Innovative Cell Technologies,Inc)が挙げられる)またはコラゲナーゼ活性のみを有する分離溶液を用いた分離が挙げられる。
工程(i)で用いるレチノイン酸またはその誘導体の濃度は、例えば、1nMから100nM、好ましくは、5nMから50nM、より好ましくは、5nMから25nMである。
工程(ii)で使用されるFGF2は工程(i)で説明したものと同様であり、その好ましい濃度範囲も同様である。
工程(iii)において使用されるFGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7は工程(ii)と同様であり、その好ましい濃度範囲も同様であるが、GSK-3β阻害剤の濃度範囲は0.01μMから100μM、好ましくは、0.1μMから10μM、さらに好ましくは、1μMから7.5μMであり、特に好ましくは2から5μMである。
培養液中におけるTGFβ阻害剤の濃度は、ALKを阻害する濃度であれば特に限定されないが、0.5μMから100μM、好ましくは、1μMから50μM、さらに好ましくは、5μMから25μMである。
工程(iv)において使用されるFGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7は工程(ii)と同様であり、その好ましい濃度範囲も同様であるが、GSK-3β阻害剤の濃度範囲は0.01μMから100μM、好ましくは、0.1μMから10μM、さらに好ましくは、1μMから7.5μMであり、特に好ましくは2から5μMである。
工程(v)において使用されるレチノイン酸またはその誘導体は工程(i)で説明したとおりであり、その好ましい濃度範囲は例えば、10nMから500nM、好ましくは、50nMから250nMである。
BMP阻害剤としては、Chordin、Noggin、Follistatin、などのタンパク質性阻害剤、Dorsomorphin (すなわち、6-[4-(2-piperidin-1-yl-ethoxy)phenyl]-3-pyridin-4-yl-pyrazolo [1,5-a]pyrimidine)、その誘導体 (P. B. Yu et al. (2007), Circulation, 116:II_60; P.B. Yu et al. (2008), Nat. Chem. Biol., 4:33-41; J. Hao et al. (2008), PLoS ONE, 3(8):e2904)およびLDN193189(すなわち、4-(6-(4-(piperazin-1-yl)phenyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidin-3-yl)quinoline)が例示される。
BMP阻害剤としてより好ましくはNOGGINであり、その濃度は、例えば、1ng/mlから100ng/ml、5ng/mlから50ng/ml、10ng/mlから30ng/mlである。
工程(vi)において使用されるGSK-3β阻害剤およびFGF9はそれぞれ工程(i)および工程(v)で説明したとおりであり、その好ましい濃度範囲も同様である。
腎前駆細胞から腎臓オルガノイド、すなわち糸球体、尿細管、集合管、血管、間質組織を内包する細胞凝集体を得る方法としては、例えば、上記方法で得られた腎前駆細胞を非接着培養して細胞塊を作製し、それを、3T3-Wnt4細胞などのフィーダー細胞、マウス胎仔脊髄細胞、またはマウス胎仔腎細胞と共培養する方法、またはCHIR99021などのGSK-3β阻害剤を含む基礎培地を使用して半気相培養を行う方法(参考文献 Nature, 526, 564-568 (2015))が挙げられる。培地は、GSK-3β阻害剤に加えて、FGF9やFGF2、さらにはROCK阻害剤を含むことができる。FGF9やFGF2、ROCK阻害剤の好ましい濃度は上記と同様である。なお、半気相培養を行う場合のある態様においては、GSK-3β阻害剤やFGF2を、例えば、当該培養開始~1日後まで、当該培養開始~2日後まで、当該培養開始~3日後までの日数のみ培地に含有させることを含む方法があげられる。
具体的には、Fura-2(同仁化学研究所)、Fluo4、Fluo3、Fura2、Indo1、Rhod2、Quin2、Fura-PE3、Fura Red、calcium green1、calcium crimson、Oregon green 488 BAPTA-1、fluo-3FF、fluo-5N、mag-fura-5、mag-indo-1、rhod-5N、Calbryte-590、Cal-520等(R. Y. Tsien, Methods Cell Biol., 1989, 30, 127)のカルシウム感受性色素(カルシウム指示薬)を細胞にロードし、蛍光強度の変化を指標として細胞内カルシウム動態をFDSS(浜松ホトニクス社)などの測定器で測定する方法が挙げられる。薬剤によるカルシウム放出を測定する過程と、その後細胞外からのカルシウム流入を測定する過程の両者の測定が好ましい。
<実験手順>
iPS細胞からの腎前駆細胞の誘導
PKD1遺伝子に変異を有するADPKD患者の体細胞にレトロウイルスベクターによってOCT4, SOX2, KLF4, c-MYC遺伝子を導入してiPS細胞を作製した(CiRA00009株、CiRA00007株)。得られたiPS細胞をWO 2018/216743の実施例に記載の方法で培養し、腎(ネフロン)前駆細胞を得た。コントロールとして、健常人由来iPS細胞から同様にして腎(ネフロン)前駆細胞を得た。なお、CiRA00009株はQ3895X, Nonsense変異を有し、CiRA00007株はG3818R, Missense変異を有する(Ameku et al. Sci Rep 2016 ;6:30013)。
1)PKD2遺伝子に変異を有するADPKD患者の体細胞にレトロウイルスベクターによってOCT4, SOX2, KLF4, c-MYC遺伝子を導入して作製したiPS細胞(Ameku et al. Sci Rep 2016;6:30013)。
2)PKD1またはPKD2遺伝子に変異を有するADPKD患者の体細胞にエピゾーマルベクターによって、OCT4, SOX2, KLF4, L-MYC, LIN28, shp53またはp53DDを導入して作製したiPS細胞。
3)健常人体細胞由来のiPS細胞に変異型PKD1およびPKD2遺伝子を導入して作製したiPS細胞。
(実験方法)
1.上記の通り、未分化ヒトiPS細胞(患者由来又は健常人由来)から、WO 2018/216743の実施例に記載の分化誘導系を用いてネフロン前駆細胞を作製し、それを用いて以下の手順で腎臓オルガノイドを作製した。
2.day 11-12のネフロン前駆細胞を、Accumaxを用いて単一の細胞に解離する。24 well plateの1 wellあたり100 μLのAccumaxを加え、37℃、5% CO2で10-15分間インキュベートする。10% FBS 900 μLを加え反応停止した後、P-1000ピペットマンでgentle pipettingを行い、単一の細胞まで解離する。
3.細胞懸濁液の細胞数を測定する。
4.DMEM/F12 Glutamax 培地(Thermo Fisher Scientific)、ビタミンA不含有B27サプリメント(Thermo Fisher Scientific)、500 U/ml PSからなる無血清培地に200 ng/ml FGF9および1 μM CHIR99021を添加した培地にY-27632を終濃度10 μMになるように加え、細胞凝集体作製時の培地とする。
5.細胞凝集体1個あたり1.0-1.5 x 105 cellsとなるように細胞懸濁液をエッペンドルフチューブにとり、300 G x 3 minで遠心する。
6.上清を捨て、4で作製した培地を用いて、細胞凝集体1個あたり50-100 μLとなるように、細胞を再懸濁する。
7.U底の96 well plate(非接着)に50-100 μLずつ細胞懸濁液をとり、300 G x 3 minで遠心する。
8.1-2日培養後、形成された細胞凝集体を24-wellトランズウェルのinsert上に移し、気相液相界面培養とする(day 0:オルガノイド培養開始)。KR5 medium (DMEM/F12 Glutamax containing 0.1 mM non-essential amino acids, 500 U/ml PS, 55 μM 2-mercaptoethanol and 5% KSR)に、200 ng/ml FGF2、5 μM CHIR99021を加えたものを培地とする(1 wellあたり120 μLで培地交換する)。
9.48時間後にKR5 mediumに培地交換し(day 2)、その後は2日ごとにKR5 mediumで培地交換を行う。day 8には、糸球体および尿細管様構造を持つネフロンオルガノイドまで分化する。
10.嚢胞形成誘導と嚢胞の測定は以下の手順で行った。
day 8から、KR5 mediumに10 μM フォルスコリン(あるいは100 μM 8-Br-cAMP)を加えたものに変更する(2日ごとに培地交換)。コントロールは、同濃度のDMSOを使用する。
11.day 15まで培養を継続し、KEYENCE BZ-X700で位相差像を撮影して、画像データを取得する。
12.画像データの解析は、IN Cell Developer Toolbox (GE healthcare)を用いる。嚢胞の指標としては、オルガノイド全体に占める嚢胞部分の面積率(cystic area)、嚢胞の真円度を用いる。嚢胞のサイズが上位の一定順位内に入るものだけに限定して解析するプロトコルが有用である。
13.CFTR阻害薬(Yang B et al. JASN 2008)、およびmTOR阻害薬(Shillingford J et al. Proc Natl Acad Sci USA 2006)等を用いて、嚢胞形成に対する効果を調べた。day 8でフォルスコリンを開始する3時間前から、100 μM CFTR inhibitor 172、50 μM CFTR inhibitor II、10 μM ラパマイシンまたは10 μM エベロリムスをプレインキュベーションする。その後、これらの薬剤とともに10 μM フォルスコリンを含む培地に変更し、2日ごとに培地交換を行う。前述のプロトコルを用いて、day15での嚢胞部分の面積率、および真円度を測定する。
(実験方法)
1.上記の手順1-9に従ってトランズウェル上で腎臓オルガノイドを作製する。KR5 mediumでの培地交換を続けることにより、day 12まで腎臓オルガノイドを維持することができる。
2.day 8-12の腎臓オルガノイドをエッペンドルフチューブに回収する。P-1000ピペットマンを用いてPBS(-)を適度な強さで吹きかけ、insertに接着しているオルガノイドをはがし、1.5 mLのエッペンドルフチューブあたり約10個のオルガノイドを回収する。
3.上清部分のPBS(-)を捨てる。
4.TrypLE select (Thermo Fisher Scientific)500 μLを加え、37℃、5% CO2で30分間インキュベートする。約15分の時点で一度、P-1000ピペットマンを用いてgentle pipettingを行う。
5.10% FBS 500 μLを加え、gentle pipettingで単一の細胞に解離する。
6.セルストレーナー(35 μm)を通した後、細胞数を計測する。
7.CD326 (EpCAM) MicroBeads (ミルテニー, 130-061-101)を用いて、EpCAM+ MACSによる尿細管上皮細胞の濃縮を行う(Forbes T et al. Am J Hum Genet 2018)。manufacturer's protocolに従いつつ、細胞数に応じてbufferの量は適宜調節する。既報と同様に、1回のMACSでEpCAM+細胞の十分な純化(98.5%)が可能である。
8.Renal Epithelial Cell Growth Medium 2, RECGM2 (PromoCell)に、Y-27632を終濃度50 μMになるように加え、5.0×104 cellあたり50 μLとなるよう細胞懸濁液を作製する。透明底のハーフエリア96 well plate (Greiner, 675090)に、1 wellあたり5.0×104 cell (50μL)でEpCAM+細胞を播種し、37℃、5% CO2で一晩インキュベートする。
9.翌日にはコンフルエントとなるため、FDSS-μCELLによるCa flux測定を行う。RECGM2にCa指示薬であるCal-520 (AAT Bioquest, 21131)を4 μM、water soluble probenecid (Thermo Fisher Scientific, P36400)を2.5 mMとなるように加える。このRECGM2混合液をそれぞれのwellに50 μLずつ加えていく(終濃度は、Cal-520 2 μM、probenecid 1.25 mMとなる。)。37℃、5% CO2で、30分間インキュベートする。
10.測定の直前に、それぞれのwellを200μL のHBSS (Ca、Mg、およびフェノールレッドを含まない)で洗浄する。その後、各wellにHBSS (Ca、Mg、およびフェノールレッドを含まない)を 80 μLずつ入れる。この際、water soluble probenecid 1.25 mM、クエンチャーとして0.05~0.5 mg/mLのAcid Red 27(東京化成, A0583)を加えてもよい。
11.2段階の薬液注入(それぞれ20 μLずつ)で、Ca releaseの後、Ca influxを測定するように、FDSS-μCELLの撮影プロトコルを設定する。
12.第一段階では、Thapsigargin(終濃度10 μM)、Angiotensin II, human(終濃度10 μM)、[Arg8]-Vasopressin(終濃度10 μM)など、Ca releaseを引き起こす薬剤をCa-free HBSSに溶解したものを注液する。第二段階では、終濃度2 mMのCaCl2を注液してストア作動性Ca流入を測定する(ベースラインに対する蛍光強度の比を測定する)。
13.ポジティブコントロールとして、第一段階で終濃度5 μM ionomycin、第二段階で終濃度30 mM EGTAを用いて、細胞内Ca濃度の変化を測定できていることを示す。
14.第一段階 (Ca release)のピーク値、AUC (area under the curve)値、第二段階 (Ca influx)のピーク値、AUC値、プラトー値を解析する。
(実験方法)
1.上記手順1-6と同様に、day 8-12のネフロンオルガノイドから細胞を調製する。
2.Renal Epithelial Cell Growth Medium 2, RECGM2 (PromoCell)に、Y-27632を終濃度50 μMになるように加え、1.0×105 cellあたり100 μLで細胞懸濁液を作製する。透明底の96 well plateに、1 wellあたり1.0×105cell (100 μL)で細胞を播種し、37℃、5% CO2で一晩インキュベートする。96 well plateへのコーティングは不要である。
3.翌日にはコンフルエントとなるため、IN Cell Analyzer 6000 (GE healthcare)によるCa flux測定を行う。
4.近位尿細管細胞を標識するため、RECGM2に20 μMの6-carboxyfluorescein (6-CF)を加え、100 μLずつwellに加えていく(終濃度10 μM)。37℃、5% CO2で1時間インキュベートする。
5.1時間後、RECGM2にCa指示薬であるCalbryte-590 (AAT Bioquest, 20700)を4 μM、water soluble probenecid (Thermo Fisher Scientific, P36400)を2.5 mMで加え、1 wellあたり100 μLで培地交換を行う。37℃、5% CO2で、1時間インキュベートする。
6.測定の直前に、各wellを200μL のHBSS (Ca、Mgおよびフェノールレッドを含まない) で洗浄する。その後、HBSS (Ca、 Mgおよびフェノールレッドを含まない) 100 μLずつ各wellに加える。
7.IN Cell Analyzer 6000のLiquid Handling機能を用いて、2段階の薬液注入(それぞれ100 μLずつ)によるCa fluxを測定する。第一段階の撮影が終了した後、ピペットマンを用いてwell中の溶液を100 μLに減らす。
8.Ca fluxの測定対象を、6-CFで蛍光標識された細胞に限定することで、近位尿細管細胞のCa flux測定が可能である。上記12-13と同様の計測を行う。
図1に示すように、ADPKD患者由来iPS細胞株から尿細管を含む腎臓オルガノイドを作製でき、近位尿細管マーカーLTLと繊毛マーカーARL13Bの発現により、尿細管に一次繊毛が確認できた。
オルガノイド培養開始から8日目にフォルスコリンまたはブレビスタチンを添加し、培養を継続したところ、15日目の時点で、腎嚢胞の形成が見られた(図2)。マーカー染色により確認したところ、糸球体由来の嚢胞はほとんど目立たず、尿細管由来の嚢胞が確認された(図3)。なお、フォルスコリン処理を行うことで、実際はday 30-40程度までネフロンオルガノイドの嚢胞増大がみられる。
なお、面積比は以下の通り算出した。
腎嚢胞の面積比 (%) = 腎嚢胞総面積 / オルガノイド総面積 × 100
結果を図4に示す。このように、腎嚢胞の面積比は、患者由来腎臓オルガノイドにおいて顕著に増加しており、また、真円度は健常者由来腎臓オルガノイドよりも低い(嚢胞の形態が不整である)ことが確認でき、腎嚢胞形成および薬剤の効果の定量評価が可能であることが分かった。
実施例1と同様にしてADPKD患者(Patient-A、B)からiPS細胞を作製した。
なお、Patient-A、Bはそれぞれ、実施例1のCiRA00009、CiRA00007に相当する。
作製されたiPS細胞を用い、ADPKD患者(Patient-A、B)由来のiPS細胞から、実施例1と同様の手順に従って腎臓オルガノイドを誘導した。
また、健常者(Normal Subject-AおよびB)からも同様にして腎臓オルガノイドを誘導した。
CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて健常者由来iPS細胞株に変異PKD1遺伝子を導入した変異導入iPS細胞株(PKD1ヘテロ株(PKD1+/-)およびPKD1ホモ株(PKD1-/-))を作製し、解析した。
Ishida et al. (Site-specific randomization of the endogenous genome by a regulatable CRISPR-Cas9 piggyBac system in human cells, Sci. Rep. 8 (2018) 310.)に記載の方法を用いて、PKD1遺伝子のエクソン34のスプライシング受容部位(splicing acceptor site)に、非相同末端結合(non-homologous end joining (NHEJ))により変異を導入した。
具体的には、Okita et al. (An efficient nonviral method to generate integration-free human-induced pluripotent stem cells from cord blood and peripheral blood cells, Stem Cells 31 (2013) 458-466.)に記載された健常者由来ヒトiPS細胞株である585A1株をwild-type株として、このwild-type株に対してpiggyBacトランスポゾンベクター(Addgene ID 100596およびAddgene ID 100598およびPiggyBac Transposase発現用ベクター)を用いて、TetO-Cas9-GR遺伝子およびPKD1遺伝子のエクソン34のスプライシング受容部位をターゲットとしたgRNA発現用配列を導入し、薬剤投与によりinducibleにCas9活性を誘導して非相同末端結合(NHEJ)によるゲノム編集を生じさせた。
ゲノム編集後のiPS細胞は、フローサイトメトリーによりシングルコロニーに単離され、その後シークエンス解析を行うことで、片アレルにフレームシフト変異を確認したものをPKD1ヘテロ株、両アレルにフレームシフト変異を確認したものをPKD1ホモ株とした。
Claims (6)
- PKD1遺伝子および/またはPKD2遺伝子に変異を有する常染色体優性多発性嚢胞腎患者由来の体細胞から得られた人工多能性幹(iPS)細胞を分化誘導して得られた腎臓オルガノイドを、薬剤候補物質と接触させる工程、および当該腎臓オルガノイドにおける、嚢胞形成を測定する工程、を含む、常染色体優性多発性嚢胞腎治療薬のスクリーニングまたは評価方法であって、前記嚢胞形成を測定する工程は、ミオシンII阻害剤による刺激により嚢胞形成を誘導したのち、嚢胞形成を測定することを含む、前記方法。
- ミオシンII阻害剤がブレビスタチンである、請求項1に記載の方法。
- 嚢胞形成の測定が嚢胞のサイズ、数、もしくは真円度の測定である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
- mTOR阻害剤またはCFTR阻害剤を陽性コントロールとして使用する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 測定結果を、健常者由来の体細胞から得られたiPS細胞または遺伝子変異修復iPS細胞を分化誘導して得られた腎臓オルガノイドの嚢胞形成と比較する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 腎臓オルガノイドが、以下の工程により得られたものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
(i)多能性幹細胞を、FGF(線維芽細胞増殖因子)2、BMP(骨形成タンパク質)4、GSK(グリコーゲン合成酵素キナーゼ)-3β阻害剤およびレチノイン酸またはその誘導体を含む培地で培養する工程;
(ii)工程(i)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤およびBMP7を含む培地で培養する工程;
(iii)工程(ii)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7およびTGF(トランスフォーミング増殖因子)β阻害剤を含む培地で培養する工程;
(iv)工程(iii)で得られた細胞を、FGF2、GSK-3β阻害剤、BMP7、アクチビンおよびROCK阻害剤を含む培地で培養する工程;
(v)工程(iv)で得られた細胞を、レチノイン酸またはその誘導体、BMP阻害剤およびFGF9を含む培地で培養する工程;
(vi)工程(v)で得られた細胞を、GSK-3β阻害剤およびFGF9を含む培地で培養する工程;および
(vii)工程(vi)で得られた細胞を非接着培養することにより細胞塊を形成させて培養する工程。
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