JP7680702B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、主として冬用タイヤやオールシーズンタイヤのトレッド部に用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物に関する。
雪上路面で使用されることが想定されたタイヤ(冬用タイヤやオールシーズンタイヤ)においては、雪上路面における走行性能(スノー性能)に優れることが求められる。また、タイヤの基本性能として、湿潤路面における走行性能(ウェット性能)や耐摩耗性能に優れることも求められる。例えば、特許文献1のタイヤは、ガラス転移温度が低いスチレンブタジエンゴムにシリカや各種樹脂成分を配合し、低温性能の低下を抑えながら、ウェット性能などの常温での性能を向上することを提案している。
しかしながら、近年、タイヤに対する要求性能が高くなっており、上述の対策だけでは必ずしも十分であるとは言えなくなっている。このため、タイヤ用ゴム組成物において、スノー性能、ウェット性能、および耐摩耗性能を、より高度にバランスよく両立するための対策が求められている。
日本国特許第6888948号公報
本発明の目的は、スノー性能、ウェット性能、および耐摩耗性能を改善し、これら性能をバランスよく高度に両立することを可能にしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が-55℃以下であるスチレンブタジエン共重合体55質量%以上とブタジエンゴム5質量%以上とを含むジエン系ゴム100質量部に対し、白色充填剤を30質量部以上100質量部未満、熱可塑性樹脂を15質量部以上80質量部以下配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記ジエン系ゴムおよび前記熱可塑性樹脂を質量比1:1で配合した混合物において、前記ジエン系ゴムおよび前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度から計算される前記混合物のガラス転移温度の理論値Tgaと、前記混合物のガラス転移温度の測定値Tgmとの差Tga-Tgmが10℃以下であることを特徴とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定のガラス転移温度を有するスチレンブタジエン共重合体と所定量のブタジエンゴムとを含むジエン系ゴムに、特定の熱可塑性樹脂、白色充填剤を配合するようにしたので、スノー性能、ウェット性能、および耐摩耗性能を向上することができる。
本発明においては、タイヤ用ゴム組成物に含まれるオイルの合計が、ジエン系ゴム100質量部に対し25質量部未満であることが好ましい。これにより、スノー性能を向上するには有利になる。
本発明においては、スチレンブタジエン共重合体のガラス転移温度は-64℃以下であることが好ましい。また、スチレンブタジエン共重合体の少なくとも1つの末端は官能基で変性されていることが好ましい。これにより、スノー性能やウェット性能を向上するには有利になる。
本発明においては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が40℃~120℃であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
本発明においては、スチレンブタジエン共重合体の油展量が、該スチレンブタジエン共重合体100質量部に対し、10質量部以下あることが好ましい。これにより、耐摩耗性を向上するには有利になる。
本発明においては、前記熱可塑性樹脂をすべてオイルに置き換えたことを除き前記タイヤ用ゴム組成物と同じ組成を有するゴム組成物Bとの関係で、前記タイヤ用ゴム組成物の-40℃~60℃における損失正接の最大値tanδMAXAと、前記ゴム組成物Bの-40℃~60℃における損失正接の最大値tanδMAXBが、下記式(1)を満たすことが好ましい。
tanδMAXA/tanδMAXB > 0.8 (1)
上述したタイヤ用ゴム組成物は、冬用タイヤやオールシーズンタイヤのトレッド部に好適に用いることができる。上述したタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤは、上述したタイヤ用ゴム組成物の優れた物性により、スノー性能、ウェット性能、および耐摩耗性能を良好に発揮することができる。尚、本発明のタイヤ用ゴム組成物が使用されるタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましいが、非空気式タイヤであってもよい。空気入りタイヤの場合は、その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体を充填することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を構成するゴム成分はジエン系ゴムであり、このジエン系ゴム100質量%中、ガラス転移温度(以下、「Tg」と記載することがある。)が-55℃以下であるスチレンブタジエン共重合体55質量%以上を必ず含む。Tgが-55℃以下のスチレンブタジエン共重合体を含むことにより、シリカの分散性を良好にし、耐摩耗性およびウェット性能を確保することができる。Tgが-55℃以下のスチレンブタジエン共重合体は、ジエン系ゴム100質量%中55質量%以上、好ましくは55質量%~80質量%、より好ましくは60質量%~75質量%であるとよい。スチレンブタジエン共重合体が55質量%未満であると、シリカの分散性を良好にする作用が十分に得られずウェット性能が低下する。
スチレンブタジエン共重合体は、Tgが-55℃より高いと、ウェット性能を十分に確保することができない。Tgは、好ましくは-64℃以下、より好ましくは-65℃以下、更に好ましくは-70℃以下であるとよい。スチレンブタジエン共重合体のTgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件により得られたサーモグラムから転移域の中点の温度として測定することができる。また、スチレンブタジエン共重合体が油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるスチレンブタジエン共重合体のTgを測定するものとする。
Tgが-55℃以下のスチレンブタジエン共重合体は、その少なくとも1つの末端が官能基で変性されているとよい。Tgが-55℃以下のスチレンブタジエン共重合体が変性されていることで、シリカの分散性を良好にし、タイヤの転がり抵抗をより小さくすることができる。官能基として、例えばエポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アルコキシシリル基、アミド基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボニル基、アルデヒド基等が挙げられ、なかでもポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有するものが好ましく挙げられる。ポリオルガノシロキサン構造またはアミノシラン構造を有する官能基を有することにより、シリカの分散性を良好にし、ウェット性能を優れたものにすることができる。
スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは5質量%~30質量%、より好ましくは8質量%~25質量%であるとよい。スチレン含有量をこのような範囲内にすることにより、タイヤを低転がり抵抗性にすることができ好ましい。スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量は、1H-NMRにより測定することができる。
スチレンブタジエン共重合体のビニル含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは9モル%~45モル%、より好ましくは20モル%~45モル%、さらに好ましくは25モル%~45モル%、特に好ましくは28モル%~42モル%であるとよい。ビニル含有量をこのような範囲内にすることにより、シリカの分散性を良好にし、転がり抵抗の温度依存性を小さくすることができ、また耐摩耗性を確保することができ好ましい。スチレンブタジエンゴムのビニル含有量は、1H-NMRにより測定することができる。
スチレンブタジエン共重合体は、油展成分を含有することができる。その油展量は、スチレンブタジエン共重合体100質量部に対し、好ましくは10質量部以下であるとよい。油展量を10質量部以下にすることにより、耐摩耗性を効果的に高めることができる。油展量は、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下であるとよい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述のスチレンブタジエン共重合体の他に、ジエン系ゴム100質量%中にブタジエンゴム5質量%以上を必ず含む。ブタジエンゴムを含むことにより、上述の性能に加えてスノー性能を向上することができる。ブタジエンゴムは、ジエン系ゴム100質量%中5質量%以上、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であるとよい。また、ブタジエンゴムは、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは65質量%以下、より好ましくは50質量%以下が配合されるとよい。ブタジエンゴムが5質量%未満であると、スノー性能を向上する効果が十分に得られない。
タイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエン共重合体およびブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを含むことができる。他のジエン系ゴムとして、例えばTgが-55℃超のスチレンブタジエン共重合体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、およびこれらゴムに官能基を付した変性ゴム等を例示することができる。これら他のジエン系ゴムは、単独または任意のブレンドとして使用することができる。他のジエン系ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは40質量%以下、より好ましくは0質量%~35質量%、さらに好ましくは0質量%~25質量%であるとよい。
タイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、白色充填剤を30質量部以上100質量部未満配合する。白色充填剤を配合することにより、ウェット性能および低転がり抵抗性を優れたものにすることができる。白色充填剤が30質量部未満であるとウェット性能および/または低転がり抵抗性が不足する。白色充填剤が100質量部以上であると低転がり抵抗性が却って悪化する。白色充填剤は、好ましくは40質量部以上100質量部未満、より好ましくは45質量部以上100質量部未満配合するとよい。
白色充填剤の種類は特に限定されないが、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレイ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムを挙げることができる。これらは単独または2種以上を組合わせて使用することができる。なかでもシリカが好ましく、ウェット性能および低発熱性をより優れたものにすることができる。シリカとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いるとよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカ(デュアル・フェイズ・フィラー)、シランカップリング剤またはポリシロキサンなどシリカとゴムの両方に反応性或いは相溶性のある化合物で表面処理したシリカなどを使用することができる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法シリカが好ましい。
タイヤ用ゴム組成物は、白色充填剤以外の他の充填剤を配合することにより、ゴム組成物の強度を高くし、タイヤ耐久性を確保することができる。他の充填剤として、例えばカーボンブラック、マイカ、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の無機フィラーや、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマー等の有機フィラーを例示することができる。
なかでもカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物の強度を優れたものにすることができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのカーボンブラックを種々の酸化合物等で化学修飾を施した表面処理カーボンブラックも用いることができる。
白色充填剤としてシリカを使用する場合、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を向上することができる。シランカップリング剤の種類は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤を例示することができる。これらのなかでも、特に、分子中にテトラスルフィド結合を有するものを好適に用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の20質量%を超えるとシランカップリング剤どうしが縮合し、ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることができない。
タイヤ用ゴム組成物は、特定の熱可塑性樹脂を配合することにより、その動的粘弾性の温度依存性を調節することができる。特定の熱可塑性樹脂は、ジエン系ゴム100質量部に対し15質量部以上80質量部以下、好ましくは20質量部以上75質量部以下、より好ましくは25質量部以上60質量部以下配合する。熱可塑性樹脂が15質量部未満であると、耐摩耗性およびウェット性能に優れ良好な低転がり抵抗性およびその温度依存性を小さくするという本発明の目的を達成することができない。また、特定の熱可塑性樹脂が75質量部を超えると、耐摩耗性が低下する虞がある。
特定の熱可塑性樹脂は、ジエン系ゴムとの間で以下の関係を満たすものとする。すなわち、上述したジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂を質量比1:1で配合した混合物において、ジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂のガラス転移温度から計算される混合物のガラス転移温度の理論値Tgaと、混合物のガラス転移温度の測定値Tgmとの差Tga-Tgmが10℃以下になるようにする。差Tga-Tgmを10℃以下にすることにより、耐摩耗性およびウェット性能に優れ、かつ転がり抵抗性を小さくし、その温度依存性を小さくすることができる。差Tga-Tgmは、好ましくは7℃以下、より好ましくは5℃以下であるとよい。差Tga-Tgmが10℃以下であると、ジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂が相溶関係にあり、その熱可塑性樹脂を比較的多量に配合することにより、ゴム組成物の引張破断強度を大きくし、tanδなどの粘弾性特性の改良に寄与すると考えられる。本発明において、混合物のガラス転移温度の理論値Tgaは、ジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂のガラス転移温度および質量比から加重平均値として算出することができる。また、ジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂のガラス転移温度、並びに混合物のガラス転移温度Tgmは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度として測定するものとする。なお、サーモグラムに複数の転移域があるときは、最も大きな転移域における中点を混合物のガラス転移温度Tgmとする。
熱可塑性樹脂とは、タイヤ用ゴム組成物へ通常配合する樹脂であり、分子量が数百から数千くらいで、タイヤ用ゴム組成物に粘着性を付与する作用を有する。熱可塑性樹脂として、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂が好ましい。例えば、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂などの天然樹脂、C5成分、C9成分からなる石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、例えばα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンおよびフマル化ロジン等の変性ロジン、これらのロジンのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステルおよびトリエチレングリコールエステルなどのエステル誘導体、並びにロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂が挙げられ、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5C9共重合石油樹脂などが例示される。
熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が好ましくは40℃~120℃、好ましくは45℃~115℃、より好ましくは50℃~110℃であるとよい。熱可塑性樹脂のTgを40℃以上にすることにより、ウェット性能を向上することができる。また、熱可塑性樹脂のTgを120℃以下にすることにより、耐摩耗性能を向上することができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、上述した方法で測定することができる。
以下の説明に際し、本発明のタイヤ用ゴム組成物をゴム組成物Aとし、ゴム組成物Aに含まれる熱可塑性樹脂をすべてオイルに置き換えたことを除き、ゴム組成物Aと同じ組成を有するものをゴム組成物Bとする。また、ゴム組成物Aの-40℃~60℃における損失正接の最大値をtanδMAXA、ゴム組成物Bの-40℃~60℃における損失正接の最大値をtanδMAXBとする。このとき、tanδMAXAおよびtanδMAXBが、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
tanδMAXA/tanδMAXB > 0.8 (1)
損失正接の最大値の比tanδMAXA/tanδMAXBが0.8より大きいと本発明のタイヤ用ゴム組成物(ゴム組成物A)の引張破断強度が大きくなり、タイヤにしたときの耐摩耗性がより優れたものになり好ましい。ゴム組成物Bは含有するジエン系ゴムおよびオイルの相溶性が高く引張破断強度が大きい傾向がある。ゴム組成物AのtanδMAXAが、ゴム組成物BのtanδMAXBに近い値であることは、ゴム組成物の粘弾性挙動が類似し、ジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂の相溶性が良好で、熱可塑性樹脂が破壊の起点になるのが抑制され引張破断強度が大きくなるものと推測される。比tanδMAXA/tanδMAXBは、より好ましくは0.85より大、さらに好ましくは0.9より大であるとよい。本明細書において、tanδMAXAおよびtanδMAXBは、ゴム組成物AおよびBの硬化物の動的粘弾性を、粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度-40℃~60℃の条件にて測定し、測定温度を横軸、損失正接(tanδ)を縦軸にした粘弾性カーブを求め、tanδの最太値(ピーク値)を、それぞれtanδMAXAおよびtanδMAXBとすることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更にオイルを含んでいてもよい。オイルの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは25質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは8質量部であるとよい。このようにオイル量を抑制することで、スノー性能を良好に維持するには有利になる。オイルの配合量が25質量部以上であると、スノー性能の経時変化が大きくなりスノー性能を良好に維持することが難しくなる。
タイヤ用ゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、加工助剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫または架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって調製することができる。
タイヤ用ゴム組成物は、雪上路面を走行することが想定される冬用タイヤやオールシーズンタイヤのトレッド部やサイド部を形成するのに好適であり、とりわけ、これらタイヤのトレッド部を形成するのに好適である。これにより得られた冬用タイヤやオールシーズンタイヤは、スノー性能、ウェット性能、および耐摩耗性能を良好に発揮することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
表3に示す共通の添加剤処方を有し、表1,2に示す配合からなる17種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例1,実施例1~8、比較例1~8)を調製するに当たり、それぞれ硫黄および加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、そのマスターバッチをミキサー外に放出し室温冷却した。このマスターバッチを同バンバリーミキサーに供し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。表1の比較例8に関し、SBR4が25質量部の油展品であるため、下段の括弧内に油展成分抜きの配合量を記載した。表3の添加剤処方は、表1,2に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で記載している。また、上述した実施例1~8、比較例1~8のタイヤ用ゴム組成物をそれぞれゴム組成物Aとし、熱可塑性樹脂をすべてオイルに置き換えたことを除き、各ゴム組成物Aと同じ組成を有するものをゴム組成物Bとして、上記と同様に調製した。さらに、各実施例および比較例のタイヤ用ゴム組成物を構成するジエン系ゴムおよび熱可塑性樹脂を質量比1:1で配合した混合物において、ガラス転移温度(Tgm)を上述した方法で測定すると共に、ガラス転移温度の理論値Tgaを算出し、ガラス転移温度の測定値Tgmとの差Tga-Tgmを算出し、表1,2に記載した。これに加えて、表1,2には、各ゴム組成物AのtanδMAXAと各ゴム組成物BのtanδMAXBとの比tanδMAXA/tanδMAXBを示した。tanδMAXAおよびtanδMAXBは、ゴム組成物AおよびBのそれぞれの硬化物の動的粘弾性を、粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度-40℃~60℃の条件にて測定し、測定温度を横軸、損失正接(tanδ)を縦軸にした粘弾性カーブを求め、tanδの最太値(ピーク値)を、それぞれtanδMAXAおよびtanδMAXBとして求めた。
上記で得られたタイヤ用ゴム組成物を、それぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して評価用試料を作製した。得られた評価用試料を使用し、耐摩耗性、ウェット性能、スノー性能を以下の方法で測定した。
耐摩耗性
得られたタイヤ用ゴム組成物の評価用試料をJIS K6264に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所株式会社製)を使用して、荷重15.0kg(147.1N)、スリップ率25%の条件にて、摩耗量を測定した。得られた結果それぞれの逆数を算出し、標準例1の摩耗量の逆数を100にする指数として表1,2の「耐摩耗性」の欄に記載した。耐摩耗性の指数が大きいほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。
ウェット性能
キャップトレッドに前述の17種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例1、比較例1~8、実施例1~8)をそれぞれ使用して、タイヤサイズが195/55R15である空気入りタイヤ(試験タイヤ)を製造した。これら試験タイヤについて、リムサイズ15インチのホイールに組み付けて、空気圧を230kPaとして試験車両に装着し、ウェット路面からなるテストコースにおいて、速度40km/hでの走行状態からABS制動を行って車両が停止するまでの制動距離を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、標準例1を100とする指数値として表1,2の「ウェット性能」の欄に記載した。この指数値が大きいほど制動距離が短く、ウェット性能が優れていることを意味する。
スノー性能
キャップトレッドに前述の17種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例1、比較例1~8、実施例1~8)をそれぞれ使用して、タイヤサイズが195/55R15である空気入りタイヤ(試験タイヤ)を製造した。これら試験タイヤについて、リムサイズ15インチのホイールに組み付けて、空気圧を230kPaとして試験車両に装着し、圧雪路からなるテストコースにおいて、速度40km/hでの走行状態からABS制動を行って車両が停止するまでの制動距離を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用いて、標準例1を100とする指数値として表1,2の「スノー性能」の欄に記載した。この指数値が大きいほど制動距離が短く、スノー性能が優れていることを意味する。
Figure 0007680702000001
Figure 0007680702000002
表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20(ガラス転移温度:-65℃)
・SBR1:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol NS612(ガラス転移温度:-61℃、スチレン含有量:15質量%、ビニル含有量:31モル%、非油展品)
・SBR2:ポリオルガノシロキサン構造を有する末端変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol NS616(ガラス転移温度:-23℃、スチレン含有量:22質量%、ビニル含有量:67モル%、非油展品)
・SBR3:バッチ重合で製造された末変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR社製 HPR850(ガラス転移温度:-25℃、スチレン含有量:27質量%、ビニル含有量:59モル%、比油展品)
・SBR4:連続重合で製造されたアルコキシシラン変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、LG社製 M2520(ガラス転移温度:-48℃、スチレン含有量:27質量%、ビニル含有量:27モル%、油展量:25質量部)
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol BR1220(ガラス転移温度:-105℃)
・CB:カーボンブラック、東海カーボン社製 シースト7HM
・シリカ1:Solvey社製 Zeosil 1165MP(窒素吸着比表面積:159m2/g)
・シリカ2:Evonic社製 ULTRASIL 9100GR(窒素吸着比表面積:220m2/g)
・シリカ3:Solvey社製 Zeosil 115GR(窒素吸着比表面積:110m2/g)
・樹脂1:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製 HSR-7(ガラス転移温度:72℃)
・樹脂2:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO-105(ガラス転移温度:57℃)
・樹脂3:インデン樹脂、三井化学社製 FMR0150(ガラス転移温度:89℃)
・樹脂4:フェノール変性テルペン樹脂、荒川化学工業社製 タマノル803L(ガラス転移温度:95℃)
・シランカップリング剤1:硫黄含有シランカップリング剤、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik社製 Si69
・シランカップリング剤2:3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、Evonik Degussa社製 NXTシラン
・オイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号S
Figure 0007680702000003
表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・老化防止剤:LANXESS社製 VULANOX 4020
・ワックス:NIPPON SEIRO社製 OZOACE-0015A
・硫黄:鶴見化学工業社製 サルファックス5
・加硫促進剤:大内振興化学工業社製 ノクセラーCZ-G
表2から明らかなように、実施例1~8のタイヤ用ゴム組成物は、耐摩耗性、ウェット性能およびスノー性能に優れ、これら性能をバランスよく向上した。
一方、表1から明らかなように、比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムを含まないため、スノー性能が低下した。比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムの配合量が少ないため、ウェット性能が低下した。比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、差Tga-Tgmが10℃を超えるので、耐摩耗性およびウェット性能が低下した。比較例4のタイヤ用ゴム組成物は樹脂量が多すぎるので、耐摩耗性およびスノー性能が低下した。比較例5のタイヤ用ゴム組成物は、シリカの配合量が多いため、スノー性能が低下した。比較例6のタイヤ用ゴム組成物は、シリカの配合量が少ないため、ウェット性能が低下した。比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度が高いので、耐摩耗性とスノー性能が低下した。比較例8のタイヤ用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度が高いので、耐摩耗性とスノー性能が低下した。

Claims (9)

  1. ガラス転移温度が-55℃以下であるスチレンブタジエン共重合体55質量%以上とブタジエンゴム5質量%以上とを含むジエン系ゴム100質量部に対し、白色充填剤を30質量部以上100質量部未満、熱可塑性樹脂を15質量部以上80質量部以下配合したタイヤ用ゴム組成物であって、前記ジエン系ゴムおよび前記熱可塑性樹脂を質量比1:1で配合した混合物において、前記ジエン系ゴムおよび前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度から計算される前記混合物のガラス転移温度の理論値Tgaと、前記混合物のガラス転移温度の測定値Tgmとの差Tga-Tgmが10℃以下であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記ジエン系ゴム100質量部に対して25質量部未満のオイルが配合されたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記スチレンブタジエン共重合体のガラス転移温度が-64℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記スチレンブタジエン共重合体の少なくとも1つの末端が官能基で変性されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が40℃~120℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、テルペン、変性テルペン、ロジン、ロジンエステル、C5成分、C9成分から選ばれる少なくとも1つからなる樹脂、およびそれら樹脂の二重結合の少なくとも一部が水添された樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. 前記スチレンブタジエン共重合体の油展量が、該スチレンブタジエン共重合体100質量部に対し、10質量部以下あることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂をすべてオイルに置き換えたことを除き前記タイヤ用ゴム組成物と同じ組成を有するゴム組成物Bとの関係で、前記タイヤ用ゴム組成物の-40℃~60℃における損失正接の最大値tanδMAXAと、前記ゴム組成物Bの-40℃~60℃における損失正接の最大値tanδMAXBが、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
    tanδMAXA/tanδMAXB > 0.8 (1)
  9. 請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物からなるトレッド部を有するタイヤ。
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