JP7701039B2 - 覆工用セントルと覆工コンクリートの打設方法 - Google Patents

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Description

本発明は、覆工用セントルと覆工コンクリートの打設方法に関する。
山岳トンネルの施工においては、トンネルの掘進方向に移動可能な鋼製型枠である覆工用セントル(単にセントル)のセントルフォーム(型枠)と地山との間の打設空間に覆工コンクリートを打設し、覆工コンクリートが所定の強度を発現した後に覆工用セントルを移動させ、同様に覆工コンクリートを打設する施工を順次繰り返す施工方向が適用される場合がある。
覆工用セントルは、ガントリー(台車)と、ガントリーにて支持されるセントルフォームを備えている。トンネルの路盤には覆工用セントルが移動するためのレールが敷設され、レールに沿ってガントリーが移動するように構成されているのが一般的である。セントルフォームと地山との間に覆工コンクリートを打設した後、覆工コンクリートが所定の強度を発現した際にセントルフォームをトンネルの内空側へ移動させて脱型する、所謂セントルダウンを行うことにより、覆工用セントルは移動可能な状態となる。
ところで、上記する覆工用セントルを用いてトンネルの掘進方向に覆工コンクリートを順次施工する方法においては、トンネル施工の全体工程との兼ね合いから、打設された覆工コンクリートが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行されることも往々にしてある。そして、このように強度発現が十分でない段階でセントルダウンが実行されることにより、覆工コンクリートは自重により下方へ変位し、この変位に起因して覆工コンクリートにひび割れが発生することが課題となっている。
覆工コンクリートにひび割れを発生させる要因には様々なものが考えられるが、強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行される場合においては、覆工コンクリートの自重による下方への変位が主たる要因の一つとなる。従って、工期の短縮を目的として、覆工コンクリートが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンを実行する場合であっても、覆工コンクリートに発生し得るひび割れを抑制することのできる、覆工用セントルと覆工コンクリートの打設方法が望まれる。
ここで、特許文献1には、掘削済みトンネルの内周に沿った内方に、拡径ないし縮径可能な枠体の外周を位置させ、拡径時の枠体外周と掘削済みトンネルの内周との間に形成された閉鎖空間に覆工コンクリートを打設するセントルが提案されている。このセントルは、枠体の既設の覆工コンクリート側の端部外周に、覆工コンクリートへの当接圧を検出する圧力検出手段を備えている。
特開2019-44477号公報
特許文献1に記載のセントルによれば、既設覆工コンクリートへの枠体の当接圧を直接検出してこれを管理できることにより、覆工コンクリートに過度な当接圧が加わることがなく、施工目地部のひび割れ等の発生を防止できるとしている。しかしながら、上記する課題、すなわち、セントルダウンにより覆工コンクリートが自重によって下方へ変位し、この変位に起因して覆工コンクリートにひび割れが発生することを防止することはできない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、覆工コンクリートが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンを実行する場合であっても、覆工コンクリートに発生し得るひび割れを抑制することのできる、覆工用セントルと覆工コンクリートの打設方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による覆工用セントルの一態様は、
トンネルの覆工コンクリートを打設する際に適用される、覆工用セントルであって、
前記覆工用セントルは、ガントリーと、前記ガントリーに支持されるセントルフォームと、を有し、
前記セントルフォームは、中央のクラウン部と、前記クラウン部の左右のアーチ部と、前記アーチ部の側方であって前記セントルフォームの左右下方にある側壁部とを備え、
前記セントルフォームの少なくとも前記クラウン部にプレストレス力が導入されて、前記トンネルの内空側へ引っ張られていることを特徴とする。
本態様によれば、セントルフォームの少なくともクラウン部にプレストレス力が導入されてトンネルの内空側へ引っ張られていることにより、セントルフォームの周方向の線形を、覆工コンクリートの自重が作用した際の変位ラインに予め近似させておき、このように予め変形されたセントルフォームに対して覆工コンクリートを打設して支持させることにより、仮に覆工コンクリートが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行された場合でも、覆工コンクリートの自重による下方への変位が生じない、もしくは生じ難いことから、この下方への変位に起因するひび割れを抑制することができる。このことにより、覆工コンクリートに発生し得るひび割れを抑制しながら、トンネル施工の工期の短縮を図ることが可能になる。
本態様によれば、覆工コンクリートが打設された段階で、セントルフォームは、覆工コンクリートの自重によって変形する変位ラインを既に形成していることから、セントルフォームの係る変位は抑制もしくは抑止されることになり、打設された覆工コンクリートはセントルフォームの変位の影響を受けることなく、徐々に硬化して強度発現することができる。このことにより、セントルダウンが可能な弱材令の段階で、セントルフォームがセントルダウンされた際に、それまでの強度発現段階で覆工コンクリートはセントルフォームの変位の影響を受けておらず、覆工コンクリートのひび割れの抑制が図られる。
ここで、「少なくともクラウン部にプレストレス力が導入されて」とは、セントルフォームのクラウン部のみにプレストレス力が導入されることの他に、クラウン部とアーチ部にプレストレス力が導入される形態、クラウン部と側壁部にプレストレス力が導入される形態、クラウン部とアーチ部と側壁部にプレストレス力が導入される形態を含む意味である。
いずれの形態であっても、覆工コンクリートの自重による変位が最も大きくなるクラウン部を下方(鉛直下方や斜め下方)に引っ張ることにより、セントルフォームに対して覆工コンクリートの自重によって変形する変位ラインを形成し易くなる。また、クラウン部を下方へ引っ張ることにより、逆にアーチ部は地山側へはらむように変形し得るが、例えばアーチ部をトンネルの内空側へ引っ張ることにより、アーチ部の地山側への過度なはらみ出しを抑制できる。このアーチ部の地山側への過度なはらみ出しの抑制は、アーチ部を直接引っ張ることの他に、アーチ部に隣接する側壁部を引っ張ることによっても図ることができる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記セントルフォームの前記クラウン部と前記側壁部がプレストレス力導入手段にて繋がれ、前記クラウン部と前記側壁部の双方が引っ張られていることを特徴とする。
本態様によれば、クラウン部と側壁部がプレストレス力導入手段にて繋がれ、クラウン部と側壁部の双方が共通のプレストレス力導入手段にて引っ張られていることにより、可及的に少ないプレストレス力導入手段にて、クラウン部の下方への変位とアーチ部の地山側へのはらみ出し抑制の双方を実現することができる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記セントルフォームの前記クラウン部と前記アーチ部の双方にプレストレス力導入手段が設けられ、前記プレストレス力導入手段が前記ガントリーに前記プレストレス力の反力を取るようになっており、
前記プレストレス力によってガントリーが浮上する場合は、前記ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられて前記浮上が抑止される、もしくは、前記ガントリーが移動するレールを前記ガントリーの脚部が把持して前記浮上が抑止されるようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、クラウン部とアーチ部の双方に設けられているプレストレス力導入手段がそれぞれガントリーに取り付けられて、プレストレス力の反力を取ることにより、重量のあるガントリーにてプレストレス力の反力を容易に取ることが可能になる。その一方で、プレストレス力が大きく、プレストレス力によってガントリーが浮上する場合において、ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられている形態や、ガントリーが移動するレールをガントリーの脚部が把持している形態が適用されることにより、プレストレス力によるガントリーの浮上を効果的に抑止することができる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記セントルフォームの前記クラウン部と前記アーチ部がプレストレス力導入手段にて繋がれ、前記アーチ部と前記ガントリーが別途のプレストレス力導入手段にて繋がれて前記ガントリーに前記プレストレス力の反力を取るようになっており、
前記プレストレス力によってガントリーが浮上する場合は、前記ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられて前記浮上が抑止される、もしくは、前記ガントリーが移動するレールを前記ガントリーの脚部が把持して前記浮上が抑止されるようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、クラウン部とアーチ部がプレストレス力導入手段にて繋がれ、アーチ部が別途のプレストレス力導入手段によりガントリーに取り付けられて、プレストレス力の反力を取ることにより、重量のあるガントリーにてプレストレス力の反力を容易に取ることが可能になる。その一方で、プレストレス力が大きく、プレストレス力によってガントリーが浮上する場合において、ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられている形態や、ガントリーが移動するレールをガントリーの脚部が把持している形態が適用されることにより、プレストレス力によるガントリーの浮上を効果的に抑止することができる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記セントルフォームの前記クラウン部と前記アーチ部と前記側壁部のそれぞれにプレストレス力導入手段が設けられ、前記プレストレス力導入手段が前記ガントリーに前記プレストレス力の反力を取るようになっており、
前記プレストレス力によってガントリーが浮上する場合は、前記ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられて前記浮上が抑止される、もしくは、前記ガントリーが移動するレールを前記ガントリーの脚部が把持して前記浮上が抑止されるようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、クラウン部とアーチ部と側壁部に設けられているプレストレス力導入手段がそれぞれガントリーに取り付けられて、プレストレス力の反力を取ることにより、重量のあるガントリーにてプレストレス力の反力を容易に取ることが可能になる。その一方で、プレストレス力が大きく、プレストレス力によってガントリーが浮上する場合において、ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられている形態や、ガントリーが移動するレールをガントリーの脚部が把持している形態が適用されることにより、プレストレス力によるガントリーの浮上を効果的に抑止することができる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様において、
前記プレストレス力の大きさは、前記覆工コンクリートを打設した際の前記クラウン部の下方への変位量に相当する、打設前変位量を前記クラウン部に付与する大きさであることを特徴とする。
本態様によれば、プレストレス力の大きさが、覆工コンクリートを打設した際のクラウン部の下方への変位量に相当する大きさであることにより、覆工コンクリートを打設した際のセントルフォームのクラウン部の変位を解消でき、クラウン部の変位に起因する覆工コンクリートのひび割れを抑止できる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記プレストレス力導入手段により、前記プレストレス力が、前記覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるようになっていることを特徴とする。
本態様によれば、プレストレス力が、覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるようになっていることにより、覆工コンクリートの強度発現の過程でセントルフォームの変位量を漸次変化させ、強度発現の過程で変化し得る覆工コンクリートの変位量を一定に保持することが可能になる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記プレストレス力導入手段が、PC鋼材であることを特徴とする。
本態様によれば、プレストレス力導入手段がPC鋼材であることにより、セントルフォームやガントリー等への設置も容易となり、プレストレス力の導入管理も容易となる。ここで、PC鋼材には、PC鋼棒やPC鋼線等が含まれる。
また、本発明による覆工用セントルの他の態様は、
前記プレストレス力導入手段が、ジャッキであることを特徴とする。
本態様によれば、プレストレス力導入手段がジャッキであることにより、セントルフォームやガントリー等への設置も容易となり、プレストレス力の導入管理も容易となる。ここで、ジャッキには、油圧ジャッキやエアジャッキ、電気ジャッキ等が含まれる。
また、本発明による覆工コンクリートの打設方法の一態様は、
ガントリーと、前記ガントリーに支持されるセントルフォームとを有し、前記セントルフォームは、中央のクラウン部と、前記クラウン部の左右のアーチ部と、前記アーチ部の側方であって前記セントルフォームの左右下方にある側壁部とを備えている、覆工用セントルを使用して、トンネルの覆工コンクリートを打設する、覆工コンクリートの打設方法であって、
前記覆工コンクリートを打設する前に、前記セントルフォームの少なくともクラウン部にプレストレス力を導入して前記トンネルの内空側へ引っ張り、前記覆工コンクリートを打設した際の前記クラウン部の下方への変位量に相当する、打設前変位量を前記クラウン部に付与する、A工程と、
地山と前記セントルフォームの間に前記覆工コンクリートを打設する、B工程とを有することを特徴とする。
本態様によれば、セントルフォームの少なくともクラウン部にプレストレス力を導入してトンネルの内空側へ引っ張ることにより、セントルフォームの周方向の線形を、覆工コンクリートの自重が作用した際の変位ラインに予め近似させておき、このように予め変形させたセントルフォームに対して覆工コンクリートを打設して支持させることにより、仮に覆工コンクリートが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行された場合でも、覆工コンクリートの自重による下方への変位が生じない、もしくは生じ難いことから、この下方への変位に起因するひび割れを抑制することができる。このことにより、覆工コンクリートに発生し得るひび割れを抑制しながら、トンネル施工の工期の短縮を図ることが可能になる。
また、本発明による覆工コンクリートの打設方法の他の態様は、
前記B工程において、前記プレストレス力が、前記覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるように、前記プレストレス力を調整することを特徴とする。
本態様によれば、プレストレス力が、覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるようになっていることにより、覆工コンクリートの強度発現の過程でセントルフォームの変位量を漸次変化させ、強度発現の過程で変化し得る覆工コンクリートの変位量を一定に保持することが可能になる。
以上の説明から理解できるように、本発明の覆工用セントルと覆工コンクリートの打設方法によれば、覆工コンクリートが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンを実行する場合であっても、覆工コンクリートに発生し得るひび割れを抑制することができる。
第1実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、覆工コンクリートを打設した際のセントルフォームに作用する曲げモーメントを示すとともに、セントルフォームのクラウン部とアーチ部における変位をともに示す図である。 第1実施形態に係る覆工用セントルにおいて、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。 第2実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。 第3実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。 第4実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。 第5実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。
以下、各実施形態に係る覆工用セントルと覆工コンクリートの打設方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[第1実施形態に係る覆工用セントルと実施形態に係る覆工コンクリートの打設方法]
はじめに、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る覆工用セントルの一例と、実施形態に係る覆工コンクリートの打設方法の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、覆工コンクリートを打設した際のセントルフォームに作用する曲げモーメントを示すとともに、セントルフォームのクラウン部とアーチ部における変位をともに示す図である。また、図2は、第1実施形態に係る覆工用セントルにおいて、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。
覆工用セントル100は、門型のガントリー10と、ガントリー10から鉛直方向や水平方向、及び斜め方向に延びる支保部材25,26,27にて支持されるセントルフォーム20とを有する。ガントリー10は、門型の移動式架台であり、左右の脚11の下端には車輪12があり(脚11と車輪12により脚部13が形成される)、トンネルTの路盤BにおいてトンネルTの長手方向に敷設されているレールRに沿ってガントリー10が移動できるようになっている。
セントルフォーム20は、トンネルTの周方向及び長手方向に並ぶ複数のフォーム21からなるフォーム群により形成される。セントルフォーム20は例えばトンネルTの長手方向に10m程度の長さを有するが、セントルフォーム20におけるトンネルTの長手方向の端部には、妻型枠(図示せず)が設けられている。
セントルフォーム20は、中央のクラウン部と、クラウン部の左右のアーチ部と、アーチ部の側方であってセントルフォーム20の左右下方にある側壁部といった、主として3つの領域に形式的に区分けできる。
発破や機械掘削等により地山Gに造成された、例えば図示例のような馬蹄形や円形の孔壁の内側には、覆工用セントル100が到達する前段階において、トンネルTの周方向と長手方向の双方に亘る覆工用の鉄筋(図示せず)が配筋される。そして、図1に示すように覆工用セントル100が到達した際に、セントルフォーム20と孔壁の間に覆工用コンクリートが打設される打設空間Sが形成される。ここで、孔壁の内周面に吹付けコンクリートが施工されている場合は、セントルフォーム20と吹付けコンクリートの間に打設空間Sが形成される。
セントルフォーム20には、複数の点検口(図示せず)が開設されている。この点検口は、トンネルT内を延設する打設用ホース(図示せず)の筒先が通過して打設空間Sに臨み、打設空間Sにコンクリートを打設するための開口であり、その他、バイブレータを打設空間Sに挿入するための開口であり、さらには、コンクリートの打設状況を確認する開口である。
覆工用セントルを用いてトンネルTの掘進方向に覆工コンクリートCを順次施工する方法においては、トンネル施工の全体工程との兼ね合いから、打設された覆工コンクリートCが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行されることも往々にしてある。そして、このように強度発現が十分でない段階でセントルダウンが実行されることにより、覆工コンクリートCは自重により下方へ変位し、この変位に起因して覆工コンクリートにひび割れが発生することが課題となる。
例えば、図1に示すように、打設開口Sに覆工コンクリートCが打設された際に、セントルフォーム20には、覆工コンクリートCの自重載荷により曲げモーメントMが生じ、同時に覆工コンクリートCの自重により、各部位には変位が生じる。一般には、セントルフォーム20のクラウン部に最大の曲げモーメントが生じ、同様に下向きの最大変位δ1が生じる。
図1に示すように、曲げモーメントMは例えばセントルフォーム20のアーチ部において反転した後、側壁部の下端に向かって曲げモーメントゼロに収束するようなモーメント分布が生じ得る。そして、クラウン部において下向きの最大変位δ1が生じるとともに、アーチ部においては地山側へ向かう変位δ2(<δ1)が生じ得る。尤も、このアーチ部における変位δ2は、打設済みの覆工コンクリートCによって変位しようとするセントルフォーム20がトンネルTの内空側へ押し戻されるため、実際の変位は変位δ2未満となる。
いずれにしても、セントルフォーム20のクラウン部において下向きの最大変位δ1が生じることに起因して、覆工コンクリートCのクラウン部のトンネル内空側には、ひび割れC1が生じ得る。また、セントルフォーム20のアーチ部においても、地山側への変位に起因して、覆工コンクリートCのアーチ部の地山側には、ひび割れC2が生じ得る。
打設された覆工コンクリートCが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行される場合も、打設後のセントルフォーム20の変位によって弱材令の覆工コンクリートCも変位するため、この変位に起因してひび割れC1,C2が生じる可能性が高くなる。
そこで、覆工用セントル100では、覆工コンクリートCを打設する前に、セントルフォーム20の少なくともクラウン部にプレストレス力を導入して、トンネルTの内空側へセントルフォーム20のクラウン部を引っ張った状態とし、予めクラウン部に下向きの最大変位δ1に相当する変位を与えておく。その上で覆工コンクリートCを打設することにより、覆工コンクリートCの打設後のセントルフォーム20の変位を抑制し、セントルフォーム20の変位に追随して覆工コンクリートCが変位することにより生じ得るひび割れを抑制もしくは抑止することとしている。
図1に示すように、覆工用セントル100では、セントルフォーム20のクラウン部と左右の側壁部を、PC鋼棒やPC鋼線等のPC鋼材30(プレストレス力導入手段の一例)にて繋ぐ構成としている。
そして、図2に示すように、PC鋼材30にプレストレス力P1を導入することにより、セントルフォーム20のクラウン部と側壁部の双方を引っ張った状態とし、セントルフォーム20のクラウン部には、想定される下向き変位δ1程度の変位を予め与えておく。すなわち、プレストレス力P1の大きさは、覆工コンクリートCを打設した際のクラウン部の下方への変位δ1に相当する、打設前変位量をクラウン部に付与する大きさである。
また、このプレストレス力P1の導入により、セントルフォーム20の側壁部に隣接するアーチ部は、トンネルTの内空側へ荷重Q1で引っ張られることになり、この引張荷重Q1により、図1に示す地山側への過度な変位δ2を抑制することが可能になる。
ここで、図示を省略するが、プレストレス力導入手段には、PC鋼材の他に、油圧ジャッキ(ジャッキの一例)等が適用されてもよい。油圧ジャッキを適用する場合は、セントルフォーム20のクラウン部において、セントルフォーム20をトンネルTの内空側へ引っ張る油圧ジャッキをガントリー10に搭載し、さらに、ガントリー10の脚11の側方に別途の油圧ジャッキを取り付け、図2と同様にセントルフォーム20の側壁部を別途の油圧ジャッキにて引っ張ることにより、PC鋼材と同様にプレストレス力P1をセントルフォーム20に導入することが可能になる。
例えば、覆工コンクリートCの自重によるセントルフォームの変形を低減するべく、セントルに使用される鋼材の断面サイズを上げることでセントル自体の剛性を高める方策もあるが、このようなセントルの剛性アップはセントルの製作コストを上昇させることになる。これに対して、覆工用セントル100によれば、PC鋼材30を用いてセントルフォーム20の所望箇所にプレストレス力を導入することで覆工コンクリートCの自重によるセントルフォーム20の変位を抑制することから、セントルの製作コストを上昇させることなく、覆工コンクリートCに生じ得るひび割れを抑制することができる。特に、覆工コンクリートCが弱材令で強度発現が十分でない段階においてセントルダウンが実行された場合でも、覆工コンクリートCの自重による下方への変位が生じない、もしくは生じ難いことから、この下方への変位に起因するひび割れを抑制することができるため、覆工コンクリートCに発生し得るひび割れを抑制しながら、トンネル施工の工期の短縮を図ることが可能になる。
ここで、実施形態に係る覆工コンクリートの打設方法の一例について概説する。この打設方法は、図1及び図2に示す覆工用セントル100を用いて、覆工コンクリートCを打設空間Sに打設する方法である。
覆工コンクリートCを打設する前に、セントルフォーム20の少なくともクラウン部にプレストレス力P1を導入することにより、クラウン部をトンネルTの内空側へ引っ張り、覆工コンクリートCを打設した際のクラウン部の下方への変位量δ1に相当する、打設前変位量をクラウン部に付与する(A工程)。
次に、地山Gとセントルフォーム20の間の打設空間Sに対して、覆工コンクリートCを打設する(B工程)。
このB工程では、プレストレス力が、覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるように、プレストレス力を調整することにより、覆工コンクリートCの強度発現の過程でセントルフォーム20の変位量を漸次変化させ、強度発現の過程で変化し得る覆工コンクリートCの変位量を一定に保持することが可能になることから好ましい。
[第2実施形態に係る覆工用セントル]
次に、図3を参照して、第2実施形態に係る覆工用セントルの一例について説明する。ここで、図3は、第2実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。
覆工用セントル100Aは、セントルフォーム20のクラウン部とアーチ部の双方にPC鋼材31,32が設けられ、PC鋼材31,32がガントリー10にプレストレス力P2,P3の反力を取るように構成されている。図示を省略するが、PC鋼材31,32の一例は、覆工用セントル100Aの長手方向に延びるトラス架構をガントリー10に固定し、このトラス架構の縦部材をPC鋼材31,32とすることにより、ガントリー10に取り付けられる。
さらに、上向きのプレストレス力P2の反力に起因する浮力Fにより、ガントリー10が浮上する場合の対策として、ガントリー10には重量Wのカウンターウェイト40が取り付けられている。
このように、重量のあるガントリー10に対してプレストレス力P2,P3の反力を取ることにより、プレストレス力P2,P3の反力を容易かつ安定的に取ることが可能になる。その一方で、上向きのプレストレス力P2が大きく、プレストレス力P2によってガントリー10が浮上する対策として、ガントリー10にカウンターウェイト40が取り付けられていることにより、上向きのプレストレス力P2によるガントリー10の浮上を効果的に抑止することができる。
[第3実施形態に係る覆工用セントル]
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る覆工用セントルの一例について説明する。ここで、図4は、第3実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。
覆工用セントル100Bは、ガントリー10にカウンターウェイト40を取り付ける代わりに、ガントリー10が移動するレールRをガントリー10の脚部13が把持部材50を介して把持する点において、覆工用セントル100Aと相違する。
レールRをガントリー10の脚部13が把持部材50を介して把持することによっても、プレストレス力P2によるガントリー10の浮上を効果的に抑止することができる。
[第4実施形態に係る覆工用セントル]
次に、図5を参照して、第3実施形態に係る覆工用セントルの一例について説明する。ここで、図5は、第3実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。
覆工用セントル100Cは、セントルフォーム20のクラウン部とアーチ部がPC鋼材33にて繋がれ、アーチ部とガントリー10が別途のPC鋼材34にて繋がれることにより、PC鋼材34に導入されるプレストレス力P5の反力をガントリー10に取るように構成されている。
プレストレス力P4の大きさは、覆工コンクリートCを打設した際のクラウン部の下方への変位δ1に相当する、打設前変位量をクラウン部に付与する大きさである。また、アーチ部にプレストレス力P4,P5が直接作用して、セントルフォーム20のアーチ部がトンネルTの内空側へ荷重Q1で引っ張られることにより、図1に示す地山側への過度な変位δ2を抑制することが可能になる。
覆工用セントル100Cにおいても、上向きのプレストレス力P5の反力に起因する浮力Fにより、ガントリー10が浮上する場合の対策として、ガントリー10には重量Wのカウンターウェイト40が取り付けられている。ここで、カウンターウェイト40に代わり、図4に示す把持部材50を介してガントリー10の脚部13がレールRを把持する浮上対策が講じられてもよい。
覆工用セントル100Cによっても、重量のあるガントリー10に対してプレストレス力P5の反力を取ることにより、プレストレス力P5の反力を容易かつ安定的に取ることが可能になる。
[第5実施形態に係る覆工用セントル]
次に、図6を参照して、第4実施形態に係る覆工用セントルの一例について説明する。ここで、図6は、第4実施形態に係る覆工用セントルの正面図であって、プレストレス力導入手段にプレストレス力が導入されている状態を示す図である。
覆工用セントル100Dは、セントルフォーム20のクラウン部とアーチ部と側壁部のそれぞれにPC鋼材35,36,37が設けられ、各PC鋼材35,36,37がガントリー10に繋がれることにより、PC鋼材33に導入されるプレストレス力P6,P7,P8の反力をガントリー10に取るように構成されている。
プレストレス力P6の大きさは、覆工コンクリートCを打設した際のクラウン部の下方への変位δ1に相当する、打設前変位量をクラウン部に付与する大きさである。また、アーチ部に直接作用するプレストレス力P7と側壁部に作用するプレストレス力P8によって、セントルフォーム20のアーチ部がトンネルTの内空側へ荷重Q1で引っ張られることにより、図1に示す地山側への過度な変位δ2を抑制することが可能になる。
覆工用セントル100Dにおいても、上向きのプレストレス力P6,P8の反力に起因する浮力Fにより、ガントリー10が浮上する場合の対策として、ガントリー10には重量Wのカウンターウェイト40が取り付けられている。ここで、カウンターウェイト40に代わり、図4に示す把持部材50を介してガントリー10の脚部13がレールRを把持する浮上対策が講じられてもよい。
覆工用セントル100Dによっても、重量のあるガントリー10に対してプレストレス力P6,P7,P8の反力を取ることにより、プレストレス力P6,P7,P8の反力を容易かつ安定的に取ることが可能になる。
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10:ガントリー
11:脚
12:車輪
13:脚部
20:セントルフォーム
21:フォーム
25,26,27:支保部材
30,31,32,33,34,35,36,37:プレストレス力導入手段(PC鋼材)
40:カウンターウェイト
50:把持部材
100,100A,100B,100C,100D:覆工用セントル
T:トンネル
G:地山
S:打設空間
B:路盤
R:レール
C:覆工コンクリート
C1,C2:ひび割れ
M:曲げモーメント

Claims (11)

  1. トンネルの覆工コンクリートを打設する際に適用される、覆工用セントルであって、
    前記覆工用セントルは、ガントリーと、前記ガントリーに支持されるセントルフォームと、を有し、
    前記セントルフォームは、中央のクラウン部と、前記クラウン部の左右のアーチ部と、前記アーチ部の側方であって前記セントルフォームの左右下方にある側壁部とを備え、
    前記セントルフォームの少なくとも前記クラウン部にプレストレス力が導入されて、前記トンネルの内空側へ引っ張られていることを特徴とする、覆工用セントル。
  2. 前記セントルフォームの前記クラウン部と前記側壁部がプレストレス力導入手段にて繋がれ、前記クラウン部と前記側壁部の双方が引っ張られていることを特徴とする、請求項1に記載の覆工用セントル。
  3. 前記セントルフォームの前記クラウン部と前記アーチ部の双方にプレストレス力導入手段が設けられ、前記プレストレス力導入手段が前記ガントリーに前記プレストレス力の反力を取るようになっており、
    前記プレストレス力によってガントリーが浮上する場合は、前記ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられて前記浮上が抑止される、もしくは、前記ガントリーが移動するレールを前記ガントリーの脚部が把持して前記浮上が抑止されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の覆工用セントル。
  4. 前記セントルフォームの前記クラウン部と前記アーチ部がプレストレス力導入手段にて繋がれ、前記アーチ部と前記ガントリーが別途のプレストレス力導入手段にて繋がれて前記ガントリーに前記プレストレス力の反力を取るようになっており、
    前記プレストレス力によってガントリーが浮上する場合は、前記ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられて前記浮上が抑止される、もしくは、前記ガントリーが移動するレールを前記ガントリーの脚部が把持して前記浮上が抑止されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の覆工用セントル。
  5. 前記セントルフォームの前記クラウン部と前記アーチ部と前記側壁部のそれぞれにプレストレス力導入手段が設けられ、前記プレストレス力導入手段が前記ガントリーに前記プレストレス力の反力を取るようになっており、
    前記プレストレス力によってガントリーが浮上する場合は、前記ガントリーに対してカウンターウェイトが取り付けられて前記浮上が抑止される、もしくは、前記ガントリーが移動するレールを前記ガントリーの脚部が把持して前記浮上が抑止されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の覆工用セントル。
  6. 前記プレストレス力の大きさは、前記覆工コンクリートを打設した際の前記クラウン部の下方への変位量に相当する、打設前変位量を前記クラウン部に付与する大きさであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の覆工用セントル。
  7. 前記プレストレス力導入手段により、前記プレストレス力が、前記覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるようになっていることを特徴とする、請求項2乃至5,請求項2乃至5のいずれか一項に従属する請求項6のいずれか一項に記載の覆工用セントル。
  8. 前記プレストレス力導入手段が、PC鋼材であることを特徴とする、請求項2乃至5,請求項2乃至5のいずれか一項に従属する請求項6、請求項7のいずれか一項に記載の覆工用セントル。
  9. 前記プレストレス力導入手段が、ジャッキであることを特徴とする、請求項2乃至5,請求項2乃至5のいずれか一項に従属する請求項6、請求項7のいずれか一項に記載の覆工用セントル。
  10. ガントリーと、前記ガントリーに支持されるセントルフォームとを有し、前記セントルフォームは、中央のクラウン部と、前記クラウン部の左右のアーチ部と、前記アーチ部の側方であって前記セントルフォームの左右下方にある側壁部とを備えている、覆工用セントルを使用して、トンネルの覆工コンクリートを打設する、覆工コンクリートの打設方法であって、
    前記覆工コンクリートを打設する前に、前記セントルフォームの少なくともクラウン部にプレストレス力を導入して前記トンネルの内空側へ引っ張り、前記覆工コンクリートを打設した際の前記クラウン部の下方への変位量に相当する、打設前変位量を前記クラウン部に付与する、A工程と、
    地山と前記セントルフォームの間に前記覆工コンクリートを打設する、B工程とを有することを特徴とする、覆工コンクリートの打設方法。
  11. 前記B工程において、前記プレストレス力が、前記覆工コンクリートの打設中から打設終了まで漸次荷重開放されるように、前記プレストレス力を調整することを特徴とする、請求項10に記載の覆工コンクリートの打設方法。
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