以下では、本発明の実施の形態に係る波長変換デバイスなどについて、図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
本明細書において、平行又は直交などの要素間の関係性を示す用語、及び、円形又は楕円形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
また、本明細書において「平面視」とは、基板が有する光反射面の垂直方向に沿って波長変換デバイスを見た場合を意味する。
また、本明細書において、波長変換デバイスの構成における「上」及び「下」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構造における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語である。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、基板が有する光反射面に平行な二軸をx軸及びy軸とし、光反射面に直交する方向をz軸方向としている。また、以下で説明する各実施形態において、z軸正方向を上方と記載し、z軸負方向を下方と記載する場合がある。
(実施の形態)
[波長変換デバイスの構成]
まず、本実施の形態に係る波長変換デバイス1の構成について図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る波長変換デバイス1の斜視図である。図2は、図1のII-II線における波長変換デバイス1の切断面を示す断面図である。
図1及び図2が示すように、波長変換デバイス1は、光反射面13を有する基板10と、蛍光体セラミックス層20と、反射防止層30とを備えるデバイスである。
本実施の形態においては、波長変換デバイス1はプロジェクタに用いられ、励起光L1を受光して蛍光を含む反射光を放つ蛍光体ホイールである。波長変換デバイス1は円盤形状を有しており、平面視で波長変換デバイス1の中央には回転駆動するモータ4が設けられている。このため、波長変換デバイス1は、モータ4によって、モータ4を軸に図1が示す矢印の方向に回転駆動される。
なお、図1においては、モータ4が設けられている蛍光体ホイールの構成が示されているが、波長変換デバイス1は、モータ4を備えていなくてもよい。すなわち、波長変換デバイス1は、回転駆動されない、固定されたデバイスであってもよい。このような構成であると、波長変換デバイス1が小型になるので、コンパクトなプロジェクタを提供できる。
蛍光体セラミックス層20は、基板10が有する光反射面13の上方に位置する層である。本実施の形態においては、波長変換デバイス1が蛍光体ホイールであるため、蛍光体セラミックス層20は、蛍光体リングである。蛍光体セラミックス層20は、波長変換デバイス1の回転中心部(つまりはモータ4が設けられる箇所)からの距離が等しい円周上にリング状に設けられている。つまり、蛍光体セラミックス層20は、平面視において周方向に沿う帯状に設けられている。
蛍光体セラミックス層20は、ガーネット構造を有する第1結晶相を含む。より具体的には、本実施の形態においては、蛍光体セラミックス層20は、ガーネット構造を有する第1結晶相のみによって構成されている。つまり、本実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20は、ガーネット構造とは異なる構造を有する結晶相を含まない。ガーネット構造とは、A3B2C3O12の一般式で表される結晶構造である。元素Aには、Ca、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びLuなどの希土類元素が適用され、元素Bには、Mg、Al、Si、Ga及びScなどの元素が適用され、元素Cには、Al、Si及びGaなどの元素が適用される。このようなガーネット構造としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet))、LuAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(Lutetium Aluminum Garnet))、Lu2CaMg2Si3O12(ルテチウム・カルシウム・マグネシウム・シリコン・ガーネット(Lutetium Calcium Magnesium Silicon Garnet))及びTAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット(Terbium Aluminum Garnet))などが挙げられる。本実施の形態においては、蛍光体セラミックス層20は、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(つまりは、(Y1-xCex)3Al5O12)(0.001≦x<0.1)で表される第1結晶相、つまりはYAGによって構成されている。
なお、蛍光体セラミックス層20を構成する第1結晶相は、化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体であってもよい。このような固溶体としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-dCed)3Al2Al3O12(0.001≦d<0.1)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-a)(Y1-xCex)3Al5O12・a(Lu1-dCed)3Al2Al3O12(0<a<1))が挙げられる。また、このような固溶体としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-zCez)2CaMg2Si3O12(0.0015≦z<0.15)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-b)(Y1-xCex)3Al2Al3O12・b(Lu1-zCez)2CaMg2Si3O12(0<b<1))などが挙げられる。蛍光体セラミックス層20が化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体から構成されることで、蛍光体セラミックス層20が放つ蛍光の蛍光スペクトルがより広帯域化し、緑色の光成分と赤色の光成分が増える。そのため、色域の広い投射光を放つプロジェクタを提供できる。
また、蛍光体セラミックス層20を構成する第1結晶相は、前記した一般式A3B2C3O12で表される結晶相に対して、化学組成がずれた結晶相が含まれていてもよい。このような結晶相としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表される結晶相に対してAlがリッチな(Y1-xCex)3Al2+δAl3O12(δは正の数)が挙げられる。また、このような結晶相としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表される結晶相に対してYがリッチな(Y1-xCex)3+ζAl2Al3O12(ζは正の数)などが挙げられる。これらの結晶相は、一般式A3B2C3O12で表される結晶相に対して、化学組成がずれているが、ガーネット構造は維持している。蛍光体セラミックス層20が化学組成がずれた結晶相から構成されることで、蛍光体セラミックス層20の中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光L1及び蛍光がより散乱され、蛍光体セラミックス層20の発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い波長変換デバイス1及びプロジェクタを提供できる。
さらに、蛍光体セラミックス層20は、第1結晶相と、ガーネット構造以外の構造を有する異相とを含んでいてもよい。蛍光体セラミックス層20がこのような第1結晶相及び異相から構成されることで、蛍光体セラミックス層20の中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光L1及び蛍光がより散乱され、蛍光体セラミックス層20の発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い波長変換デバイス1及びプロジェクタを提供できる。
YAGで構成される蛍光体セラミックス層20は、波長変換デバイス1の上方から入射する光を励起光L1として受光して、蛍光を放つ。より具体的には、後述する励起光源から出射した光が励起光L1として蛍光体セラミックス層20に照射されることで、蛍光体セラミックス層20から波長変換光として蛍光が放たれる。つまり、蛍光体セラミックス層20から放たれる波長変換光は、励起光L1の波長よりも長い波長の光である。
本実施の形態において、蛍光体セラミックス層20から放たれる波長変換光には、黄色系光である蛍光が含まれる。蛍光体セラミックス層20は、例えば、波長が380nm以上490nm以下の光を吸収し、波長が490nm以上580nm以下の領域に蛍光ピーク波長を有する黄色系光である蛍光を放つ。蛍光体セラミックス層20がYAGで構成されることで、容易に波長が490nm以上580nm以下の領域に蛍光ピーク波長を有する蛍光を放つ蛍光体セラミックス層20が実現される。
蛍光体セラミックス層20から放たれる波長変換光の色度図のx座標は、0.415以下であればよく、0.410以下であればよりよく、0.408以下であればさらによい。蛍光体セラミックス層20から放たれる波長変換光の色度図のx座標が上記数値であると、蛍光体セラミックス層20の温度消光が小さくなるため、発光効率の高い蛍光体セラミックス層20が実現できる。
蛍光体セラミックス層20の密度は、理論密度の95%以上100%以下であればよく、理論密度の97%以上100%以下であればよりよい。ここで、理論密度とは、層中の原子が理想的に配列しているとした場合の密度である。換言すると、理論密度とは、蛍光体セラミックス層20中に空隙がないと仮定したときの密度であり、結晶構造を用いて計算される値である。例えば、蛍光体セラミックス層20の密度が99%である場合、残りの1%は空隙に相当する。つまり、蛍光体セラミックス層20の密度が高いほど、空隙が少ない。蛍光体セラミックス層20の密度が上記範囲であると、蛍光体セラミックス層20が放つ全蛍光量が増えるため、放射される光量がより多い波長変換デバイス1及びプロジェクタを提供できる。
また、蛍光体セラミックス層20の密度は、4.32g/cm3以上4.55g/cm3以下であればよく、4.41g/cm3以上4.55g/cm3以下であればよりよい。本実施の形態で示すように、蛍光体セラミックス層20がYAGで構成されている場合、蛍光体セラミックス層20の密度が上記範囲であると、蛍光体セラミックス層20の密度がそれぞれ理論密度の95%以上100%以下及び97%以上100%以下となる。蛍光体セラミックス層20の密度が上記範囲であることで、蛍光体セラミックス層20が吸収した励起光L1を効率よく蛍光に変換することができる。つまり、発光効率の高い蛍光体セラミックス層20が実現される。
蛍光体セラミックス層20の膜厚(z軸方向の長さ)は、50μm以上150μm未満であるとよく、50μm以上120μm未満であるとよりよい。また、前記蛍光体セラミックス層の膜厚は、70μm以上120μm未満であればよりよく、80μm以上110μm未満であるとさらによい。
さらに、蛍光体セラミックス層20の上方には、反射防止層30が位置している。
反射防止層30は、励起光L1の反射を防止、より具体的には抑制する層である。反射防止層30は、波長変換デバイス1における励起光L1の反射率を低下させ、蛍光体セラミックス層20に到達する励起光L1の量を増加させる。この結果、蛍光体セラミックス層20が吸収できる励起光L1の量も増えるため、蛍光体セラミックス層20が放つ蛍光の量も増える。つまり、反射防止層30が設けられることで、蛍光体セラミックス層20が放つ蛍光の量が増加する。
反射防止層30は、例えば、誘電体膜、又は、可視光領域の光の波長より小さい周期の微細な凹凸構造(いわゆる、モスアイ構造)などで構成されてもよい。反射防止層30が誘電体膜で構成されている場合、反射防止層30は、無機化合物を含むとよい。この場合、反射防止層30は、SiO2、TiO2、Al2O3、ZnO、Nb2O5及びMgFなどから選ばれる1以上の無機化合物を含む。
また、図1及び図2においては、反射防止層30が設けられている構成が示されているが、波長変換デバイス1は、反射防止層30を備えていなくてもよい。
基板10は、円盤形状の板材であり、蛍光体セラミックス層20及び反射防止層30を支持する基材である。モータ4は、平面視で基板10の中央に設けられている。図2が示すように、基板10は、基板本体11と、光反射層12とを有する。
基板本体11は、熱伝導率が高い材料で構成されているとよい。例えば、基板本体11は、蛍光体セラミックス層20よりも熱伝導率が高い材料で構成されているとよいが、これに限られない。基板本体11は、例えば、ガラス基板、石英基板、GaN基板、サファイア基板、Si基板、金属基板などが例示される。また、基板本体11は、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、または、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの樹脂で構成されてもよい。さらに、基板本体11が金属基板である場合は、基板本体11は、Al、Fe及びTiなどの金属材料から構成されている。
本実施の形態においては、基板本体11は、Alから構成される金属基板である。Alは熱伝導率が高く、かつ、軽量であるため、基板本体11の放熱性を高め、かつ、基板本体11の重量を軽くすることができる。基板本体11の厚みは、例えば、1.5mm以下である。
また、基板10は光反射面13を有する。光反射面13は、蛍光体セラミックス層20が位置する側の基板10の一面である。光反射面13は、本実施の形態においては、光反射面13は、光反射層12が含む一面によって構成されている。
光反射面13は、蛍光体セラミックス層20が放つ蛍光を反射する面である。また、光反射面13は、蛍光体セラミックス層20において蛍光に変換されなかった励起光L1も反射する。光反射面13は、蛍光及び蛍光に変換されなかった励起光L1を上方に反射する。本実施の形態においては、蛍光及び励起光L1は可視光領域の光であるため、光反射面13の可視光反射率が高いほど光のロスが少ない。具体的には、光反射面13の可視光反射率は、90%以上100%以下であればよく、95%以上100%以下であればよりよい。光反射面13の可視光反射率が上記範囲であると、蛍光及び励起光L1がより上方に反射されるようになるため、横方向(つまりは、光反射面13と平行な方向)への蛍光及び励起光L1の導波が抑制され、発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い波長変換デバイス1及びプロジェクタを提供できる。また、光反射面13の490nm以上780nm以下の波長領域の光の反射率は、90%以上100%以下であればよく、95%以上100%以下であればよりよい。光反射面13の490nm以上780nm以下の波長領域の光の反射率が上記範囲であると、蛍光がより上方に反射されるようになるため、横方向への蛍光の導波が抑制され、発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い波長変換デバイス1及びプロジェクタを提供できる。なお、本実施の形態においては、可視光領域とは、波長が380nm以上780nm以下の波長領域である。
光反射層12は、蛍光及び蛍光に変換されなかった励起光L1を上方に反射することができれば、どのような材料で構成されてもよい。本実施の形態においては、光反射層12は、光散乱性粒子121と、光散乱性粒子121が分散されているバインダ122とで構成されている複合層である。つまり、光反射層12は、光拡散性(光散乱性)を有し、光拡散により蛍光及び蛍光に変換されなかった励起光L1を上方に反射する。
光反射層12は、光散乱性粒子121と、バインダ122との屈折率差によって光を拡散させる。光散乱性粒子121は、例えば、無機化合物又は樹脂材料から構成されるフィラー又は白色粒子である。より具体的には、光散乱性粒子121は、SiO2、TiO2、Al2O3、ZnO、Nb2O5、ZrO2及びCaCO3などの無機化合物でもよく、スチレン系樹脂及びアクリル系樹脂などの樹脂材料でもよい。また、バインダ122は、光透過性のあるアクリル系樹脂及びシリコーン系樹脂などの樹脂材料によって構成されているとよい。
光反射層12が設けられることで、光反射面13の可視光反射率を高めることができる。さらに、光反射層12が光散乱性粒子121を含む複合層で構成されることで、光反射面13の可視光反射率をより高めることができる。つまり、波長変換デバイス1における光のロスをより抑制することができる。
なお、光反射層12は、光反射性を有する金属によって構成されている金属層であってもよい。例えば、当該金属は、Ag、Al、又は、これらのいずれかを含む合金である。光反射層12は、当該金属がドライプロセス又はウェットプロセスにより形成されるとよい。このような場合においても、光反射層12が光散乱性粒子121を含む複合層で構成された場合と同様の作用効果が期待される。
また、光反射層12と蛍光体セラミックス層20との間には、接合層が設けられていてもよい。このような構成とすることで、光反射層12と蛍光体セラミックス層20とがより密着するため、蛍光体セラミックス層20で発生した熱を、光反射層12を介して、基板本体11により効率的に伝導させることができる。このため、蛍光体セラミックス層20の温度消光が少ない、高効率の波長変換デバイス1を提供できる。接合層は、シリコーン系樹脂又はエポキシ系樹脂などの透明材料からなるとよい。また、接合層の厚みは、1μm以上100μm未満であればよく、1μm以上20μm未満であればよりよい。
なお、図1及び図2においては、光反射層12が設けられている構成が示されているが、波長変換デバイス1は、光反射層12を備えていなくてもよい。この場合、基板本体11の表面が、光反射面13となる。
[プロジェクタの構成]
以上のように構成されている波長変換デバイス1は、図3及び図4が示すプロジェクタ100に用いられる。図3は、本実施の形態に係るプロジェクタ100の外観を示す斜視図である。図4は、本実施の形態に係るプロジェクタ100の光学系を示す模式図である。以下では、本実施の形態に係るプロジェクタ100の構成について、図3及び図4を用いて説明する。
図3及び図4が示すように、本実施の形態に係るプロジェクタ100は、光源3と、ダイクロイックミラー5と、波長変換デバイス1と、表示素子6と、投射光学部材7と、反射ミラー8とを備える。
光源3は、例えば半導体レーザ光源又はLED(Light Emitting Diode)光源であり、駆動電流によって駆動されて所定の色(波長)の光を放つ。
本実施の形態においては、光源3は半導体レーザ光源である。なお、光源3が備える半導体レーザ素子は、例えば窒化物半導体材料によって構成されたGaN系半導体レーザ素子(レーザチップ)である。本実施の形態において、半導体レーザ光源である光源3は、マルチチップタイプの発光装置である。
一例として、光源3は波長380nm以上490nm以下にピーク波長を有する近紫外から青色の範囲内のレーザ光を放つ。より具体的には、光源3は、ピーク波長が445nmの青色光を放つ。本実施の形態に係る光源3は励起光源の一例である。光源3が放つレーザ光は、ダイクロイックミラー5に到達する。
ダイクロイックミラー5は、光源3の光軸に対して45度の角度で配置されている。本実施の形態に係るダイクロイックミラー5は、青色光の一部を透過し他部を反射し、黄色系蛍光を透過するダイクロイックミラーである。
つまり、ダイクロイックミラー5は、光源3から放たれたレーザ光の波長領域の光を反射及び透過する特性を有している。従って、光源3から放たれたレーザ光の一部は、進行方向が変更されることなく、ダイクロイックミラー5を透過し、当該レーザ光の他部は、ダイクロイックミラー5によって反射され、進行方向が90°変更され、波長変換デバイス1へ向かう。
ここで、光源3から放たれたレーザ光の他部は、励起光L1として、波長変換デバイス1に到達する。波長変換デバイス1は、励起光L1を受光して蛍光を含む反射光L2を放つ。より具体的には、反射光L2は、波長変換デバイス1が備える蛍光体セラミックス層20及び光反射面13によってそれぞれ波長変換及び反射された光を含む。さらに具体的には、反射光L2は、蛍光体セラミックス層20で生じた黄色系蛍光と、蛍光体セラミックス層20で蛍光に変換されなった青色光である励起光L1とを含む光である。ただし反射光L2においては蛍光が占める割合が高いため、反射光L2は黄色系光である。
進行方向が変更されることなく、ダイクロイックミラー5を透過したレーザ光は、透過光L12として、反射ミラー8に到達し、反射ミラー8によって正反射され、ダイクロイックミラー5のもう一方の面へ向かう。そして、当該透過光L12は、ダイクロイックミラー5のもう一方の面によって反射され、進行方向が90°変更され、表示素子6へと向かう。
また、反射光L2は、ダイクロイックミラー5に到達する。このとき、ダイクロイックミラー5は、反射光L2の光軸に対して45度の角度で配置されており、また、黄色系蛍光を透過する。そのため、ダイクロイックミラー5に到達した反射光L2の進行方向は変化しない。
これにより、図4が示すように、反射光L2の光軸と、透過光L12の光軸とが一致して、表示素子6に向かう。このとき、反射光L2は黄色系光、透過光L12は青色光であるため、これらの光が複合された光は白色光である。つまり、ダイクロイックミラー5から表示素子6に向かう光は、白色光である。
反射光L2と透過光L12との混合光である白色光は、表示素子6へと向かう。ここで、反射光L2がエタンデュの大きい光であると、表示素子6のサイズよりも、表示素子6に向けて照射される反射光L2のサイズが大きくなる。そのため、表示素子6に照射されない、無効な(つまりは、利用できない)光成分が多くなる。
表示素子6は、開口部2aを通過した光(白色光)を制御して映像として出力する略平面状の素子である。換言すると、表示素子6は、映像用の光を生成する。表示素子6は、具体的には、DMD(Digital Micromirror Device)を有するDLP(Digital Light Processing)である。また、例えば、表示素子6は、反射型液晶パネルなどであってもよい。なお、表示素子6とダイクロイックミラー5との間には、フライアイレンズ、偏光変換素子及びミラーロッドなどが備えられていてもよい。
表示素子6によって生成された映像用の光は、投射光学部材7によって、スクリーンに拡大投射される投射光となる。
プロジェクタ100では、表示素子6に照射された光のみが投射光として利用される。すなわち、反射光L2のエタンデュが小さいほど、プロジェクタ100の投射光として利用できる光が多くなる。
[波長変換デバイスでの光挙動]
ここで、波長変換デバイス1における光挙動について、本実施の形態と、比較例とを用いて説明する。
図5Aは、本実施の形態に係る波長変換デバイス1とアパーチャ部材2とを示す模式図である。図5Bは、本実施の形態の比較例に係る波長変換デバイス1xとアパーチャ部材2とを示す模式図である。なおここでは、簡単のため、アパーチャ部材2と、波長変換デバイス1及び1xと、励起光L1と、反射光L2とを用いて説明する。
ここで、アパーチャ部材2は、反射光L2のエタンデュの大小を評価するための部材である。アパーチャ部材2は光吸収する部材であって、アパーチャ部材2の中央部には、開口部2aが設けられた部材である。アパーチャ部材2の開口部2aを通過する光成分の割合が相対的に多いと反射光L2のエタンデュは小さいといえる。
比較例に係る波長変換デバイス1xは、蛍光体セラミックス層20xの厚みが本実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20よりも厚い(例えば、200μm)点を除けば、本実施の形態に係る波長変換デバイス1と同じ構成である。
蛍光体セラミックス層20及び20xの密度は、4.41g/cm3以上4.55g/cm3以下であり、密度が高い。つまり、蛍光体セラミックス層20及び20xにおいては、空隙が少なく光散乱が起きにくいため、光が層の平面方向(つまり、x軸方向又はy軸方向)に進みやすく、いわゆる導光が起こりやすい。
まず、図5Aを用いて本実施の形態に係る波長変換デバイス1について説明する。
本実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20のように厚みが十分に薄い(50μm以上120μm以下である)と、励起光L1が入射してから反射光L2が出射するまでの層の平面方向(ここではx軸方向)の距離Dをより短くすることができる。換言すると、本実施の形態においては、蛍光体セラミックス層20の蛍光の発光面積(発光スポット径)が十分に小さい。よって、図5Aが示すように、光反射面13によって反射されて蛍光体セラミックス層20から出射する反射光L2は、アパーチャ部材2の開口部2aを通過しやすい。開口部2aを通過した光は、上述の通り、表示素子6及び投射光学部材7を介して、スクリーンに拡大投射される光として利用することができる。
すなわち、本実施の形態においては、波長変換デバイス1が備える蛍光体セラミックス層20の厚みが十分に薄いため、蛍光の発光面積を十分に小さくすることができる。よって、アパーチャ部材2の開口部2aを通過する光が多いため、プロジェクタ100の投射光として利用できる光が多い。つまり、上記構成によって、光の利用効率が高い波長変換デバイス1が実現される。さらに、このような波長変換デバイス1を備えることで、光の利用効率が高いプロジェクタ100が実現される。
続いて、図5Bを用いて比較例に係る波長変換デバイス1xについて説明する。
比較例に係る蛍光体セラミックス層20xのように厚みが十分に厚い(200μmである)と、励起光L1が入射してから反射光L2xが出射するまでの層の平面方向の距離Dxがより長くなってしまう。換言すると、比較例においては、蛍光体セラミックス層20xの蛍光の発光面積(発光スポット径)が大きくなってしまう。よって、図5Bが示すように、光反射面13によって反射されて蛍光体セラミックス層20xから出射する反射光L2xは、アパーチャ部材2によって遮蔽されやすい。よって、比較例に係る波長変換デバイス1xでは、光の利用効率が低い。
また、上述のように、本実施の形態においては、光反射層12が設けられ、さらに、光反射層12が光散乱性粒子121を含む複合層で構成されることで、光反射面13の可視光反射率をより高めることができる。これにより、波長変換デバイス1における光のロスをより抑制することができるため、光の利用効率が高い波長変換デバイス1が実現される。
[実施例]
ここで、本実施の形態の実施例1~3と、比較例とに係る波長変換デバイスにおいて、製造方法と光の利用効率とについて説明する。
まずは、蛍光体セラミックス層の製造方法について記載する。
実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層は、いずれも、(Y0.9953Ce0.0047)3Al5O12で表される第1結晶相によって構成される。また、実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層は、いずれも、Ce3+賦活蛍光体で構成される。
実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層は、化合物粉末として以下の3種類を原料として使用した。具体的には、Y2O3(酸化イットリウム、純度3N、日本イットリウム株式会社)、Al2O3(酸化アルミニウム、純度3N、住友化学株式会社)及びCeO2(酸化セリウム、純度3N、日本イットリウム株式会社)が使用された。
まず、化学量論的組成の化合物(Y0.9953Ce0.0047)3Al5O12となるように、上記原料が秤量された。次に、秤量された原料とアルミナ製ボール(直径10mm)とが、プラスチック製ポットに投入された。アルミナ製ボールの量は、プラスチック製ポットの容積の1/3程度を充填する程度の量であった。その後、純水がプラスチック製ポットに投入され、ポット回転装置(日東化学株式会社製、BALL MILL ANZ-51S)を利用して、原料と純水とが混合された。この混合は、12時間実施された。このようにして、スラリー状の混合原料を得た。
スラリー状の混合原料が、乾燥機を用いて乾燥された。具体的には、金属製バットの内壁を覆うようにナフロン(登録商標)シートが敷かれ、ナフロン(登録商標)シートの上方に混合原料が流し込まれた。金属製バットとナフロン(登録商標)シートと混合原料とは、150℃に設定した乾燥機で8時間処理され、乾燥された。その後、乾燥後の混合原料が回収され、スプレードライヤ装置を利用して混合原料が造粒された。なお、造粒時には、粘着剤(バインダ)として、ポリビニルアルコールが使用された。
造粒された混合原料は、電動油圧プレス機(理研精機株式会社製、EMP-5)と円筒型の金型(外径58mm、内径38mm、高さ130mm)とを利用して、円筒型に仮成型された。成型時の圧力は、5MPa/cm2とした。次に、冷間等方圧加圧装置を利用して、仮成型後の成型体が本成型された。本成型時の圧力は、300MPaとした。なお、本成型後の成型体は、造粒時に使用された粘着剤(バインダ)を除去する目的で、加熱処理(脱バインダー処理)が行われた。加熱処理の温度は、500℃とした。また、加熱処理の時間は、10時間とした。
加熱処理後の成型体は、管状雰囲気炉を用いて、焼成された。焼成温度は、1675℃とした。また、焼成時間は、4時間とした。焼成雰囲気は、窒素と水素との混合ガス雰囲気とした。なお、焼成後の焼成物の外径及び内径は、それぞれ43mm及び29mmであった。
焼成後の円筒型の焼成物は、マルチワイヤーソーを用いて、スライスされた。スライスされた円筒型の焼成物の厚みは、約700μmとした。
研磨装置を用いて、スライス後の焼成物が研磨され、焼成物の厚みの調整が行われた。この調整が行われることで、焼成物が、蛍光体セラミックス層となる。蛍光体セラミックス層の厚みは、実施例1では53μm、実施例2では75μm、実施例3では106μm、比較例では206μmであった。
なお、実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層の外径及び内径は、それぞれ43mm及び29mmであった。また、実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層は、濃い黄色であった。
続いて、蛍光体セラミックス層の評価について説明する。
まず、アルキメデス法を用いて、実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層の密度が評価された。実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層の密度は、いずれも、4.49g/cm3であった。また、実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層の密度はいずれも、Y3Al5O12の理論密度(4.55g/cm3)の98.7%であった。すなわち、実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層の密度はいずれも、Y3Al5O12の理論密度の97%以上100%以下であった。
続いて、波長変換デバイスの製造方法について記載する。
まず、Alの円盤形状の基板本体(直径50mm、厚み0.5mm)が準備される。続いて、ディスペンサ装置を用いて、基板本体に、TiO2粒子が分散されたシリコーン系樹脂を含む光反射層が円形(外径46mm、内径30mm)となるように塗布された。ここで、光反射層が含むシリコーン系樹脂は、蛍光体セラミックス層と基板本体とを貼り合わせる接着剤としての機能も発揮する。
その後、蛍光体セラミックス層は、円形に塗布された光反射層と重なり合うように配置される。ここで、光反射層の厚みが約50μmとなるように、金属製の治具によって、蛍光体セラミックス層が固定された。その後、乾燥機を用いて加熱処理が行われることで、光反射層を硬化させた。このときの加熱処理の温度は、150℃とした。なお、光反射層が含む一面である光反射面の可視光反射率は、95%以上であった。
このようにして、上記の実施例1~3及び比較例に係る蛍光体セラミックス層のそれぞれと、基板とを備える実施例1~3及び比較例に係る波長変換デバイスが得られた。
さらに、波長変換デバイスの評価について説明する。
反射型レーザ励起方式波長変換デバイスに関する評価装置を用いて、実施例1~3及び比較例に係る波長変換デバイスを評価した。具体的には、当該評価装置においては、回転させた波長変換デバイスに励起光(レーザ光)が照射され、波長変換デバイスから放たれる蛍光の蛍光エネルギーがパワーメータによって評価される。レーザ光の波長、出力及び照射スポット径(1/e2)はそれぞれ、455nm、70W及び1.2mmとした。なおこのレーザ光はガウシアンビームである。また、波長変換デバイスの回転速度は、7200rpmとした。当該評価装置には、波長変換デバイスから放たれる蛍光の一部を遮蔽する、アパーチャ部材が設けられている。このとき、例えば、波長変換デバイスとアパーチャ部材との距離は、3mm以上100mm以下であり、アパーチャ部材の開口部は、開口径が5mm以上10mm以下の円形の穴である。
図6は、本実施の形態の実施例1~3及び比較例に係る波長変換デバイスの評価結果を示す図である。具体的には、図6には、実施例1~3及び比較例に係る波長変換デバイスの、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)及び結合効率が示されている。
ここで、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)とは、アパーチャ部材の開口部を通過した後の、それぞれの波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーの相対値である。なお、開口部を通過した後の比較例に係る波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーを100%とした。
また、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)とは、アパーチャ部材の開口部を通過する前の、それぞれの波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーの相対値である。なお、開口部を通過した後の比較例に係る波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーを100%とした。
また、結合効率とは、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)に対する蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)の割合である。つまり、結合効率は、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)を蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)で割った値である。
プロジェクタでは、開口部を通過した後の蛍光を、投射光の一部として利用する。すなわち、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)が大きいほど、プロジェクタの投射光として利用できる蛍光が多いといえる。
図6が示すように、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例に係る波長変換デバイスの結合効率は、それぞれ85%、86%、84%及び81%であった。すなわち、実施例における結合効率はいずれも、比較例における結合効率よりも高かった。結合効率が高いほど、発生した蛍光のうち開口部を通過した光が多いことを示し、つまり図5A及び図5Bで示したように、波長変換デバイスが放つ蛍光の発光面積が小さいことを示す。すなわち、実施例1~3に係る波長変換デバイスが放つ蛍光の発光面積は、比較例に係る波長変換デバイスが放つ蛍光の発光面積よりも小さく、実施例に係る波長変換デバイスは光の利用効率が高いことを示している。
また、図6が示すように、実施例1~3に係る蛍光体セラミックス層の厚みが50μm以上120μm以下の範囲にあることで、比較例と比べて、充分に高い結合効率となることが明らかである。つまり、上述の本実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20の厚みが50μm以上120μm以下の範囲であることで、光の利用効率が高い波長変換デバイス1が実現される。
また、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)は、それぞれ103%、106%、105%及び100%であった。すなわち、実施例1~3のいずれにおいても、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)は、比較例における蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)よりも高かった。そして、実施例1~3においては、蛍光体セラミックス層の厚みが76μmである実施例2、及び、蛍光体セラミックス層の厚みが106μmである実施例3に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)が、より高かった。
また、図6が示すように、実施例2及び3に係る蛍光体セラミックス層の厚みが70μm以上120μm以下の範囲にあることで、比較例と比べて、充分に高い蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)となることが明らかである。つまり、上述の本実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20の厚みが70μm以上120μm以下の範囲であることで、より光の利用効率が高い波長変換デバイス1が実現される。
さらに、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)は、それぞれ121%、124%、125%及び124%であった。蛍光体セラミックス層の厚みが最も薄い53μmである実施例1に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)は、実施例2及び3並びに比較例に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)よりも低かった。この理由は、実施例1に係る波長変換デバイスでは、蛍光体セラミックス層の厚みが薄いため蛍光体セラミックス層がレーザ光を十分吸収できなかったためと考えられる。
ここで、さらに、本実施の形態の実施例4に係る波長変換デバイスにおいて、製造方法と光の利用効率とについて説明する。
まずは、本実施の形態の実施例4に係る波長変換デバイスが備える蛍光体セラミックス層の製造方法について記載する。
実施例4に係る蛍光体セラミックス層は、いずれも、(Y0.997Ce0.003)3Al5O12で表される第1結晶相によって構成される。また、実施例4に係る蛍光体セラミックス層は、いずれも、Ce3+賦活蛍光体で構成される。
実施例4では、化学量論的組成の化合物(Y0.997Ce0.003)3Al5O12となるように原料を秤量したこと以外は、実施例1~3と同じ手順で焼成物を得た。つまり、実施例1~3に係る蛍光体セラミックス層と、実施例4に係る蛍光体セラミックス層との主な相違点は、YとCeとの組成比が異なる点である。
実施例4に係る蛍光体セラミックス層の厚みは、103μmであった。
なお、実施例4に係る蛍光体セラミックス層の外径及び内径は、41mm及び27mmであった。また、実施例4に係る蛍光体セラミックス層は、濃い黄色であった。
続いて、蛍光体セラミックス層の評価について説明する。
まず、アルキメデス法を用いて、実施例4に係る蛍光体セラミックス層の密度が評価された。実施例4に係る蛍光体セラミックス層の密度は、4.48g/cm3であった。また、実施例4に係る蛍光体セラミックス層の密度はいずれも、Y3Al5O12の理論密度(4.55g/cm3)の98.4%であった。すなわち、実施例4に係る蛍光体セラミックス層の密度は、Y3Al5O12の理論密度の97% 以上100%以下であった。
なお、上記の通り、本実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20は、Ce3+及びCe4+を有するYAGによって構成されており、つまり、蛍光体セラミックス層20は、Ce3+及びCe4+を含む。そこで、次に硬X線XAFS装置を利用して、実施例4に係る蛍光体セラミックス層のCe3+存在比及びCe4+存在比が評価された。具体的には、硬X線XAFS装置を利用して、5687eV~5777eVの範囲で実施例4に係る蛍光体セラミックス層のXAFSスペクトルが取得される。この取得されたXAFSスペクトルに対し、Ce3+のリファレンススペクトル及びCe4+のリファレンススペクトルのフィッティング解析が行われることで、Ce3+存在比及びCe4+存在比が評価された。なお、Ce3+のリファレンススペクトル及びCe4+のリファレンススペクトルを得るために、CeO2及びCeF3が同様の条件で評価された。
表1は、実施例4に係る蛍光体セラミックス層のCe3+存在比及びCe4+存在比を示す表である。表1が示すように、実施例4に係る蛍光体セラミックス層のCe3+存在比及びCe4+存在比は、それぞれ78.3%及び21.7%であった。実施例4に係る蛍光体セラミックス層においては、Ce3+×100%/(Ce3++Ce4+)≧60%を満たし、つまりは、Ce3+存在比は、60%以上であった。
続いて、実施例4に係る波長変換デバイスの製造方法について記載する。
まず、光反射層としてAgがコートされたAlの円盤形状の基板本体(直径50mm、厚み0.5mm)が準備される。なお、この基板本体の中心部には、ネジ穴が開けられている。続いて、この基板本体に、蛍光体セラミックス層が設置される。
蛍光体セラミックス層の内側に、中心部にネジ穴が開けられたAlの円盤形状の第1板部材(外径26.5mm、厚み100μm)が設置される。なお、蛍光体セラミックス層は蛍光体リングであり、第1板部材は、リング状の内側に設置される。そして、さらに、蛍光体セラミックス層及び第1板部材に重なるように、中心部にネジ穴が開けられたAlの円盤形状の第2板部材(外径29mm、厚み200μm)が設置される。そして、基板本体、第1板部材及び第2板部材がネジ止めされる。このようにして、蛍光体セラミックス層が固定され、波長変換デバイスが得られた。つまり、実施例4に係る波長変換デバイスにおいては、蛍光体セラミックス層は、基板本体と、第2板部材とによって挟まれて固定されている。
このようにして、実施例4に係る蛍光体セラミックス層及び波長変換デバイスが得られた。
さらに、波長変換デバイスの評価について説明する。
実施例4に係る波長変換デバイスは、実施例1~3と同じ方法で評価された。
図7は、本実施の形態の実施例4に係る波長変換デバイスの評価結果を示す図である。具体的には、図7には、実施例4に係る波長変換デバイスの、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)及び結合効率が示されている。なお、図7には、比較のため、実施例1~3及び比較例に係る波長変換デバイスの、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)及び結合効率も示されている。
ここで、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)とは、アパーチャ部材の開口部を通過した後の波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーの相対値である。なお、開口部を通過した後の比較例に係る波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーを100%とした。
また、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)とは、アパーチャ部材の開口部を通過する前の波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーの相対値である。なお、開口部を通過した後の比較例に係る波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーを100%とした。
また、結合効率とは、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)に対する蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)の割合である。つまり、結合効率は、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)を蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)で割った値である。
図7が示すように、実施例4に係る波長変換デバイスの結合効率は、85%であった。また、上記の通り比較例に係る波長変換デバイスの結合効率は81%である。より結合効率が高い実施例4に係る波長変換デバイスは、発生した蛍光のうち開口部を通過した光がより多く、蛍光の発光面積がより小さい。例えば、図5A及び図5Bで示したように、実施例4に係る波長変換デバイスにおいては、アパーチャ部材2の開口部2aを通過する光が多いため、プロジェクタ100の投射光として利用できる光が多い。つまりは、実施例4に係る波長変換デバイスは光の利用効率が高いことを示している。
さらに、実施例4に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)及び蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)は、それぞれ108%及び128%であった。この値は、実施例1~3に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)及び蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)に比べて高い値である。
上記の通り、実施例4に係る蛍光体セラミックス層においては、Ce3+存在比が60%以上であり、Ce4+の存在比が40%未満であり少ない。このため、Ce4+による非発光緩和ロスが低減するため、Ce3+存在比が60%以上である実施例4に係る蛍光体セラミックス層は、発光効率が高くなる。よって、このような蛍光体セラミックス層を備えることで、実施例4に係る波長変換デバイスは、光の利用効率を高めることができる。さらに、プロジェクタがこのような波長変換デバイス1を備える場合には、プロジェクタの光の利用効率を高めることができる。例えば、低消費電力のプロジェクタを実現できる。
また、Ce4+による非発光緩和ロスが低減するため、実施例4に係る蛍光体セラミックス層の発熱が低減する。このため、このような蛍光体セラミックス層を備えるプロジェクタにおいては、励起光L1の最大入力エネルギーを高めることができ、つまりは、高出力のプロジェクタを実現できる。
(変形例1)
実施の形態に係る蛍光体セラミックス層20は、第1結晶相のみによって構成されるがこれに限られない。ここでは、第1結晶相と第2結晶相とを含む蛍光体セラミックス層20aを備える波長変換デバイス1aについて説明する。
[波長変換デバイスの構成]
まず、本変形例に係る波長変換デバイス1aの構成について図面を用いて説明する。図8は、本変形例に係る波長変換デバイス1aの斜視図である。図9は、図8のIX-IX線における波長変換デバイス1aの切断面を示す断面図である。
本変形例に係る波長変換デバイス1aは、蛍光体セラミックス層20aを備える点を除いては、実施の形態に係る波長変換デバイス1と同じ構成を有する。つまり、図8及び図9が示すように、波長変換デバイス1aは、光反射面13を有する基板10と、蛍光体セラミックス層20aと、反射防止層30とを備える。
なお、本変形例においても、波長変換デバイス1aは、プロジェクタに用いられ、励起光L1を受光して蛍光を含む反射光を放つ蛍光体ホイールである。
蛍光体セラミックス層20aは、第1結晶相と第2結晶相とを含む。より具体的には、本変形例においては、蛍光体セラミックス層20aは、第1結晶相と第2結晶相とによって構成されている。
第1結晶相は、実施の形態に記載の通りの構成を有する。
また、第2結晶相は、ガーネット構造とは異なる構造を有する結晶相である。つまり、第2結晶相は、第1結晶相が有する構造とは異なる構造を有する。このため、第1結晶相の屈折率と、第2結晶相の屈折率とは、互いに異なる。
蛍光体セラミックス層20aが断面観察された場合に、蛍光体セラミックス層20aを示す画像の面積全体を100%としたとき、第1結晶相を示す面積は、例えば、10%以上99%以下である。なお、第1結晶相を示す面積は、これに限られず、例えば、75%以上98%以下であってもよく、85%以上95%以下であってもよい。つまり、本変形例に係る蛍光体セラミックス層20aは、主には、第1結晶相を含む。
一例として、本変形例に係る第2結晶相は、ペロブスカイト構造を有する結晶相であるが、これに限られず、ガーネット構造及びペロブスカイト構造とは異なる構造を有する結晶相であってもよい。
ペロブスカイト構造とは、EFO3の一般式で表される結晶構造である。元素Eには、Ca、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びLuなどの希土類元素が適用され、元素Fには、Mg、Al、Si、Ga及びScなどの元素が適用される。このようなガーネット構造としては、YAP(イットリウム・アルミニウム・ペロブスカイト(Yttrium Aluminum Perovskite))などが挙げられる。本変形例においては、第2結晶相は、(Y1-yCey)AlO3(0≦y<0.1)、つまりはYAPで表される。
なお、第2結晶相は、化学組成の異なる複数のペロブスカイト結晶相の固溶体であってもよい。
また、第2結晶相は、前記した一般式EFO3で表される結晶相に対して、化学組成がずれた結晶相が含まれていてもよい。
なお、本変形例に係る蛍光体セラミックス層20aは、第1結晶相及び第2結晶相のみによって構成されており、つまり、ガーネット構造及びペロブスカイト構造とは異なる構造を有する結晶相を含まない。
本変形例においては、第2結晶相を表す材料は、一例として、YAPであるが、これに限られない。また、第2結晶相を表す材料の屈折率と、ガーネット構造を有する第1結晶相を表す材料(ここではYAG)の屈折率との差が、0.05以上0.5以下であるように、第2結晶相を示す材料が選択されるとよい。これにより、上記の通り、第1結晶相の屈折率と、第2結晶相の屈折率とは、互いに異なるようになる。なお、第2結晶相を表す材料の屈折率と第1結晶相を表す材料の屈折率との差は、0.06以上0.3以下であるとよりよく、0.07以上0.15以下であるとさらによい。
また、例えば、本変形例に係る第2結晶相がガーネット構造及びペロブスカイト構造とは異なる構造を有する結晶相である場合には、第2結晶相を示す材料として、Al2O3、Y2O3、Y4Al2O9、Lu2O3及びLu4Al2O9などであるとよい。
蛍光体セラミックス層20aは、波長変換デバイス1aの上方から入射する光を励起光L1として受光して、蛍光を放つ。より具体的には、後述する励起光源から出射した光が励起光L1として蛍光体セラミックス層20aに照射されることで、蛍光体セラミックス層20aから波長変換光として蛍光が放たれる。つまり、蛍光体セラミックス層20aから放たれる波長変換光は、励起光L1の波長よりも長い波長の光である。
本変形例において、蛍光体セラミックス層20aから放たれる波長変換光には、黄色系光である蛍光が含まれる。蛍光体セラミックス層20aは、例えば、波長が380nm以上490nm以下の光を吸収し、波長が490nm以上580nm以下の領域に蛍光ピーク波長を有する黄色系光である蛍光を放つ。蛍光体セラミックス層20aがYAG及びYAPで構成されることで、容易に波長が490nm以上580nm以下の領域に蛍光ピーク波長を有する蛍光を放つ蛍光体セラミックス層20aが実現される。
蛍光体セラミックス層20aから放たれる波長変換光の色度図のx座標は、0.415以下であればよく、0.410以下であればよりよく、0.408以下であればさらによい。蛍光体セラミックス層20aから放たれる波長変換光の色度図のx座標が上記数値であると、蛍光体セラミックス層20aの温度消光が小さくなるため、発光効率の高い蛍光体セラミックス層20aが実現できる。
蛍光体セラミックス層20aの密度は、理論密度の95%以上100%以下であればよく、理論密度の97%以上100%以下であればよりよい。ここで、理論密度とは、層中の原子が理想的に配列しているとした場合の密度である。換言すると、理論密度とは、蛍光体セラミックス層20a中に空隙がないと仮定したときの密度であり、結晶構造を用いて計算される値である。例えば、蛍光体セラミックス層20aの密度が99%である場合、残りの1%は空隙に相当する。つまり、蛍光体セラミックス層20aの密度が高いほど、空隙が少ない。蛍光体セラミックス層20aの密度が上記範囲であると、蛍光体セラミックス層20aが放つ全蛍光量が増えるため、放射される光量がより多い波長変換デバイス1a及びプロジェクタを提供できる。なお、理論密度とは、ガーネット構造を有する第1結晶相の理論密度である。
蛍光体セラミックス層20aの密度は、4.32g/cm3以上4.55g/cm3以下であればよく、4.41g/cm3以上4.55g/cm3以下であればよりよい。本変形例で示すように、蛍光体セラミックス層20aがYAG及びYAPで構成されている場合、蛍光体セラミックス層20aの密度が上記範囲であると、蛍光体セラミックス層20aの密度がそれぞれの95%以上100%以下及び97%以上100%以下となる。蛍光体セラミックス層20aの密度が上記範囲であることで、蛍光体セラミックス層20aが吸収した励起光L1を効率よく蛍光に変換することができる。つまり、発光効率の高い蛍光体セラミックス層20aが実現される。
蛍光体セラミックス層20aの膜厚(z軸方向の長さ)は、50μm以上150μm未満であるとよく、50μm以上120μm未満であるとよりよい。また、前記蛍光体セラミックス層の膜厚は、70μm以上120μm未満であればよりよく、80μm以上110μm未満であるとさらによい。
[プロジェクタの構成]
以上のように構成されている波長変換デバイス1aは、実施の形態に係る波長変換デバイス1と同様に、プロジェクタに用いられる。つまり、実施の形態に係る波長変換デバイス1の代わりに、本変形例に係る波長変換デバイス1aが用いられてもよい。
[実施例]
ここで、実施例5及び6に係る波長変換デバイスにおいて、製造方法と光の利用効率とについて説明する。なお、実施例5に係る波長変換デバイスは本変形例に係る波長変換デバイス1aと同じ構成を、実施例6に係る波長変換デバイスは実施の形態に係る波長変換デバイス1と同じ構成を備える。
まずは、実施例5及び6に係る波長変換デバイスが備える蛍光体セラミックス層の製造方法について記載する。
実施例5に係る蛍光体セラミックス層は、主に、(Y0.997Ce0.003)3Al5O12で表される結晶相(つまりは第1結晶相)によって構成される。なお上述の通り、実施例5に係る蛍光体セラミックス層は、第2結晶相も含む。実施例6に係る蛍光体セラミックス層は、(Y0.997Ce0.003)3Al5O12で表される結晶相(つまりは第1結晶相)によって構成される。また、実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層は、いずれも、Ce3+賦活蛍光体で構成される。
実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層は、実施例1~3で使用した原料と同じ原料を使用した。
まず、化学量論的組成の化合物(Y0.997Ce0.003)3Al5O12となるように、上記原料が秤量された。次に、実施例1~3と同じ手順で上記原料を混合し、スラリー状の混合原料を得た。
次に、実施例5では、スプレードライヤ装置を利用しない方法で、造粒された混合原料が得られた。具体的には、乾燥機を用いて乾燥された混合原料100gがアルミナ製乳鉢に投入された。そして、0.5wt%の比率でポリビニルアルコールが水溶された溶液をポリビニルアルコール溶液とし、このポリビニルアルコール溶液18mLがアルミナ製乳鉢にさらに投入された。その後、乳棒を用いて、混合原料とポリビニルアルコール溶液とが混合された。次に、混合原料とポリビニルアルコール溶液との混合物が、目開き512μmのメッシュを用いて、篩われた。この結果、粒子サイズが512μm程度以下となる混合原料とポリビニルアルコール溶液との混合物が得られた。その後、当該混合物が、105℃に設定した乾燥機で30分処理され、水分が取り除かれた。このようにして、実施例5で使用する、造粒された混合原料が得られた。また、実施例6では、実施例1~3と同じ手順で混合原料を造粒し、造粒された混合原料が得られた。
実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層は、同じ方法で仮成型された。具体的には、造粒された混合原料は、電動油圧プレス機(理研精機株式会社製、EMP-5)と円筒型の金型(外径66mm、内径46mm、高さ130mm)とを利用して、円筒型に仮成型された。成型時の圧力は、5MPaとした。次に、冷間等方圧加圧装置を利用して、仮成型後の成型体が本成型された。本成型時の圧力は、300MPaとした。なお、本成型後の成型体は、造粒時に使用された粘着剤(バインダ)を除去する目的で、加熱処理(脱バインダー処理)が行われた。加熱処理の温度は、500℃とした。また、加熱処理の時間は、10時間とした。
加熱処理後の成型体は、管状雰囲気炉を用いて、焼成された。焼成温度は、1675℃とした。また、焼成時間は、4時間とした。焼成雰囲気は、窒素と水素との混合ガス雰囲気とした。なお、焼成後の焼成物の外径及び内径は、それぞれ49mm及び35mmであった。
焼成後の円筒型の焼成物は、マルチワイヤーソーを用いて、スライスされた。スライスされた円筒型の焼成物の厚みは、約700μmとした。
なお、実施例5及び6では、焼成後の焼成物は、1000℃以上の温度で加熱処理された。
研磨装置を用いて、スライス後の焼成物が研磨され、焼成物の厚みの調整が行われた。蛍光体セラミックス層の厚みは、実施例5では118μm、実施例6では117μmであった。
なお、実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層の外径及び内径は、いずれも、49mm及び35mmであった。また、実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層は、濃い黄色であった。
続いて、蛍光体セラミックス層の評価について説明する。
まず、アルキメデス法を用いて、実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層の密度が評価された。実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層の密度は、それぞれ4.48g/cm3及び4.42g/cm3であった。また、実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層の密度は、それぞれY3Al5O12の理論密度(4.55g/cm3)の98.4%及び97.1%であった。すなわち、実施例5及び6に係る蛍光体セラミックス層の密度は、Y3Al5O12の理論密度の97% 以上100%以下であった。
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例5に係る蛍光体セラミックス層の断面SEM画像が評価された。
図10は、本変形例の実施例5に係る蛍光体セラミックス層の断面を示すSEM画像である。図10の(a)は、実施例5に係る蛍光体セラミックス層の広範囲の断面を示すSEM画像である。なお、図10の(a)が示すSEM画像は、図9が示す断面図での破線矩形で囲まれた領域の画像に相当する。図10の(b)は、図10の(a)の一点鎖線の矩形で囲まれた領域が拡大されたSEM画像である。図10の(c)は、図10の(a)の二点鎖線の矩形で囲まれた領域が拡大されたSEM画像である。
ここで、実施例5における蛍光体セラミックス層、つまりは、本変形例に係る蛍光体セラミックス層20aは、単相部と、この単相部と区分された混合相部とを含む。図10の(b)には単相部が、図10の(c)には、混合相部が示されている。
本変形例においては、図10におけるSEM画像において、より色の濃い領域がガーネット構造を有する第1結晶相に相当し、より色の薄い領域がペロブスカイト構造を有する第2結晶相に相当する。また、図10におけるSEM画像において、最も色の濃い領域が空隙に相当する。
単相部には、ガーネット構造を有する第1結晶相、及び、ガーネット構造とは異なる構造(ここではペロブスカイト構造)を有する第2結晶相のうち第1結晶相のみが設けられている。なお、より具体的には、ここでは、単相部には、第1結晶相のみが設けられており、ガーネット構造及びペロブスカイト構造とは異なる構造を有するその他の結晶相などは設けられていない。
また、混合相部には、第1結晶相及び第2結晶相の両方が混合されて設けられている。より具体的には、混合相部には、第1結晶相及び第2結晶相の両方のみが混合されて設けられている。なお、混合相部には、第1結晶相及び第2結晶相の両方と、さらにガーネット構造及びペロブスカイト構造とは異なる構造を有するその他の結晶相とが混合されて設けられていてもよい。
実施例5に係る混合相部は、第1結晶相及び第2結晶相の両方がランダムに入り組んだ構造で混合されて設けられているが、これに限られず、第1結晶相及び第2結晶相の両方が周期的に配列した構造で混合されて設けられていてもよい。
なお、実施例5における蛍光体セラミックス層は、複数の混合相部を含む。図10の(a)で点線で囲まれる領域は、それぞれ混合相部に相当する。
複数の混合相部のそれぞれの周囲は、単相部によって囲まれている。単相部及び複数の混合相部の形状は、海島形状であるとも言える。この場合、単相部が海に、複数の混合相部が島に相当する。
また、混合相部には、第1結晶相と比べて、より多くの第2結晶相が設けられているとよい。例えば、混合相部における第1結晶相と第2結晶相との比率は、以下の通りである。実施例5に係る蛍光体セラミックス層が断面観察された場合(例えば、図10)に、混合相部を示す画像の面積全体を100%としたとき、第2結晶相を示す面積は、例えば、10%以上99%以下である。なお、第2結晶相を示す面積は、これに限られず、例えば、70%以上95%以下であってもよく、80%以上90%以下であってもよい。つまり、本変形例に係る混合相部には、主に、第2結晶相が設けられている。
このように、混合相部には、ガーネット構造を有する第1結晶相及びペロブスカイト構造を有する第2結晶相の両方が混合されて設けられている。上記の通り、第1結晶相の屈折率と、第2結晶相の屈折率とは、互いに異なる。このため、第1結晶相のみが設けられている単相部の屈折率と、混合相部の屈折率とは、互いに異なる。本変形例においては、YAGの屈折率が1.83でありYAPの屈折率が1.91であるため、単相部の屈折率は混合相部の屈折率よりも低い。
さらに、混合相部のサイズについて説明する。なお、混合相部のサイズとは、図10が示すSEM画像における混合相部の長尺方向の長さを示す。混合相部のサイズとは、例えば、図10の両矢印で示される長さである。混合相部のサイズは、0.5μm以上500μm未満であるとよく、1μm以上300μm未満であるとよりよく、2μm以上100μm未満であるとさらによい。
このように、実施例5に係る蛍光体セラミックス層(蛍光体セラミックス層20a)は第1結晶相及び第2結晶相を含み、図10では単相部及び混合相部が設けられていることが示された。一方で、実施例6に係る蛍光体セラミックス層は第1結晶相のみによって構成されている。そのため、実施例6に係る蛍光体セラミックス層では、混合相部が設けられていないことが確認されている。
続いて、実施例5及び6に係る波長変換デバイスの製造方法について記載する。
まず、光反射層としてAgがコートされたAlの円盤形状の基板本体(直径50mm、厚み0.5mm)が準備される。なお、この基板本体の中心部には、ネジ穴が開けられている。続いて、この基板本体に、蛍光体セラミックス層が設置される。
蛍光体セラミックス層の内側に、中心部にネジ穴が開けられたAlの円盤形状の第3板部材(外径34.5mm、厚み100μm)が設置される。なお、蛍光体セラミックス層は蛍光体リングであり、第3板部材は、リング状の内側に設置される。そして、さらに、蛍光体セラミックス層及び第3板部材に重なるように、中心部にネジ穴が開けられたAlの円盤形状の第4板部材(外径39mm、厚み200μm)が設置される。そして、基板本体、第3板部材及び第4板部材がネジ止めされる。このようにして、蛍光体セラミックス層が固定され、波長変換デバイスが得られた。つまり、実施例5及び6に係る波長変換デバイスにおいては、蛍光体セラミックス層は、基板本体と、第4板部材とによって挟まれて固定されている。
さらに、波長変換デバイスの評価について説明する。
実施例5及び6に係る波長変換デバイスは、実施例1~3と同じ方法で評価した。
図11は、本変形例の実施例5及び6に係る波長変換デバイスの評価結果を示す図である。具体的には、図11には、実施例5及び6に係る波長変換デバイスの、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)及び結合効率が示されている。
ここで、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)とは、アパーチャ部材の開口部を通過した後の、それぞれの波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーの相対値である。なお、開口部を通過した後の実施例6に係る波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーを100%とした。
また、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)とは、アパーチャ部材の開口部を通過する前の、それぞれの波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーの相対値である。なお、開口部を通過した後の実施例6に係る波長変換デバイスが放った蛍光の蛍光エネルギーを100%とした。
また、結合効率とは、蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)に対する蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)の割合である。つまり、結合効率は、蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)を蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)で割った値である。
図11が示すように、実施例5及び6に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過後)は、それぞれ101%及び100%であった。さらに、実施例5及び6に係る波長変換デバイスの蛍光エネルギー相対値(開口部通過前)は、それぞれ117%及び122%であった。
また、本変形例に係る波長変換デバイス1aに相当する実施例5に係る波長変換デバイスの結合効率は、87%であった。実施の形態に係る波長変換デバイス1に相当する実施例6に係る波長変換デバイスの結合効率は82%であった。
上記の通り、実施例5に係る波長変換デバイスが備える蛍光体セラミックス層(蛍光体セラミックス層20a)は、互いに屈折率が異なる第1結晶相と第2結晶相とによって構成される。
これにより、蛍光体セラミックス層20aの中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光L1及び蛍光が散乱され易くなる。この結果、実施の形態の図5A及び図5Bで示された層の平面方向(つまり、x軸方向又はy軸方向)への導光が抑制され、蛍光体セラミックス層20aの発光面積がより小さくなる。このため、実施例5に係る波長変換デバイスの結合効率は、実施例6に係る波長変換デバイスの結合効率に比べて高くなる。つまり、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い実施例5に係る波長変換デバイス(波長変換デバイス1a)が実現される。プロジェクタがこのような波長変換デバイス1aを備える場合には、プロジェクタの光の利用効率をより高めることができる。
また、蛍光体セラミックス層20aは、単相部と、この単相部とは区分された混合相部とを含む。単相部には、第1結晶相及び第2結晶相のうち第1結晶相のみが設けられ、混合相部には、第1結晶相及び第2結晶相の両方が混合されて設けられている。このような、単相部の屈折率及び混合相部の屈折率は、互いに異なる。
これにより、蛍光体セラミックス層20aの中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光L1及び蛍光がさらに散乱され易くなる。この結果、蛍光体セラミックス層20aの発光面積がさらに小さくなる。このため、さらにエタンデュが小さく、さらに光の利用効率が高い波長変換デバイス1aが実現される。
また、混合相部のサイズが上記範囲である場合には、励起光L1及び蛍光がさらに散乱され易くなる。
また、蛍光体セラミックス層20aは複数の混合相部を含む。複数の混合相部のそれぞれの周囲は、単相部に囲まれている。
これにより、励起光L1及び蛍光がさらに散乱され易くなる。この結果、蛍光体セラミックス層20aの発光面積がさらに小さくなる。このため、さらにエタンデュが小さく、さらに光の利用効率が高い波長変換デバイス1aが実現される。
以上の結果は、蛍光体セラミックス層20aの膜厚が薄いことによる導光抑制効果だけでなく、蛍光体セラミックス層20a自体の導光抑制効果によって、波長変換デバイス1aの結合効率が高まったことを示唆するものである。つまり、蛍光体セラミックス層20aの膜厚を制御せずとも、波長変換デバイス1aの結合効率を高められることを示唆するものである。
また、第2結晶相を表す材料の屈折率と、第1結晶相を表す材料の屈折率との差は、0.05以上0.5以下である。
これにより、励起光L1及び蛍光がさらに散乱され易くなる。この結果、蛍光体セラミックス層20aの発光面積がさらに小さくなる。このため、さらにエタンデュが小さく、さらに光の利用効率が高い波長変換デバイス1aが実現される。
また、第2結晶相は、(Y1-yCey)AlO3(0≦y<0.1)で表される結晶相である。
これにより、第2結晶相を表す材料の屈折率と、第1結晶相を表す材料の屈折率との差を上記範囲にすることが容易になる。
(変形例2)
さらに、蛍光体セラミックス層20及び20aとは、構成が異なる蛍光体セラミックス層20bについて説明する。
図12は、本変形例に係る蛍光体セラミックス部材の斜視図である。
本変形例に係る蛍光体セラミックス部材は、一例として、層状の形状を有する蛍光体セラミックス層20bである。
蛍光体セラミックス層20bは、実施の形態及び変形例1で示した蛍光体セラミックス層20及び20aと同様に、プロジェクタに用いられる部材である。
蛍光体セラミックス層20bは、以下の1点を除いて、変形例1に係る蛍光体セラミックス層20aと同様の構成を備える。具体的に1点とは、Ce3+存在比が60%以上である点である。
つまり、蛍光体セラミックス層20bは、ガーネット構造を有する第1結晶相と、ガーネット構造以外の構造を有する第2結晶相とを含む。第1結晶相と第2結晶相とは、互いに屈折率が異なる。なお、本変形例においては、第1結晶相及び第2結晶相はそれぞれYAG及びYAPで表される結晶相であり、蛍光体セラミックス層20bも、主には第1結晶相を含む。また、蛍光体セラミックス部材(蛍光体セラミックス層20b)の密度は、理論密度の95%以上100%以下であればよく、理論密度の97%以上100%以下であればよりよい。また、蛍光体セラミックス部材(蛍光体セラミックス層20b)の膜厚は、とくに制限を設けなくともよいが、制限を設ける場合は、50μm以上500μm未満であるとよく、50μm以上300μm未満であるとよりよい。また、当該膜厚は、50μm以上120μm未満であるとさらによい。
蛍光体セラミックス部材(蛍光体セラミックス層20b)が上記構成を備える。このため、蛍光体セラミックス層20bがプロジェクタに用いられ、励起光が照射された場合に、蛍光体セラミックス層20bの中に屈折率の異なる領域が生じるため、励起光及び蛍光がより散乱される。この結果、実施の形態の図5A及び図5Bで示された層の平面方向(つまり、x軸方向又はy軸方向)への導光が抑制され、蛍光体セラミックス層20bの発光面積がより小さくなる。このため、よりエタンデュが小さく、より光の利用効率が高い蛍光体セラミックス部材となる。プロジェクタがこのような蛍光体セラミックス部材(蛍光体セラミックス層20b)を備える場合には、プロジェクタの光の利用効率をより高めることができる。
さらに、蛍光体セラミックス層20bは、Ce3+及びCe4+を有するYAG及びYAPによって構成されており、つまり、蛍光体セラミックス層20bは、Ce3+及びCe4+を含む。ここで、蛍光体セラミックス層20bにおいては、Ce3+×100%/(Ce3++Ce4+)≧60%を満たし、つまりは、Ce3+存在比は、60%以上である。
Ce3+存在比が60%以上である蛍光体セラミックス層20bは、Ce4+による非発光緩和ロスが低減するため、発光効率が高くなる。さらに、このような蛍光体セラミックス層20bを備えるプロジェクタにおいては、光の利用効率を高めることができる。例えば、低消費電力のプロジェクタを実現できる。
また、Ce4+による非発光緩和ロスが低減するため、蛍光体セラミックス層20bの発熱が低減する。このため、このような蛍光体セラミックス層20bを備えるプロジェクタにおいては、励起光の最大入力エネルギーを高めることができ、つまりは、高出力のプロジェクタを実現できる。
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る波長変換デバイス等について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態及び変形例に施したものや、実施の形態及び変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲に含まれる。
なお、実施の形態においては、光源は半導体レーザ光源であったが、これに限られず、LED光源であってもよい。
また、上記の実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。