JP7710084B2 - カルシウム系炭酸化合物及び無機質成形体 - Google Patents

カルシウム系炭酸化合物及び無機質成形体

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Description

本発明は、カルシウム系炭酸化合物及び無機質成形体に関する。
無機質成形体は、大部分が水硬性材料や珪酸質材料等の無機物質で構成されている成形体であり、耐火性、軽量、高強度、作業性等の特性を有することから、住宅等の外壁材、屋根下地材、軒天井材等に広く用いられている。また、強度や耐火性が求められる建造物の基礎部分や壁、柱、床等にも広く用いられている。
無機質成形体に要求される重要な性能の一つである強度を高める技術として、針状の炭酸カルシウムを配合する技術が提案されている(特許第6898926号公報)。
特許第6898926号公報
しかしながら、前記技術によっても得られる無機質成形体の強度が低下する場合があり、また、製造過程における原料の混合物の流動性が低下し、ひいては製造工程全体での作業効率が低下するおそれがある。
本発明は、製造過程における混合物の流動性を維持しつつ、成形体の強度を向上させることができるカルシウム系炭酸化合物及び無機質成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、一実施形態において、
リン原子の含有量が1000ppm以下であり、
硫黄原子の含有量が100ppm以上である
立方体状のカルシウム系炭酸化合物に関する。
本発明者らが検討した結果、カルシウム系炭酸化合物の結晶成長の際に高アスペクト比となるような針状化又は棒状化(以下、併せて「針状化等」ともいう。)の要因として、リン原子が針状化等を促進する一因子として働き、硫黄原子が針状化等を阻害する一因子として働くことを新たに見出した。当該カルシウム系炭酸化合物は、リン原子及び硫黄原子の含有量を特定範囲としているので、形状を効率的に立方体状へと制御することができる。
他方、無機質成形体の分野では、針状炭酸カルシウム等の針状又は繊維状の補強材を用いて無機質成形体の強度を高めることが広く知られている。ところが、さらなる強度の向上のために針状補強材の配合量を増加させると、前述のように混合物の流動性が低下してしまうことから、強度の向上と流動性の維持とはいわばトレードオフの関係にある。本発明者らが検討を重ねたところ、意外にも、立方体状のカルシウム系炭酸化合物であれば、製造過程での混合物の流動性を維持しつつ、得られる無機質成形体の強度を向上させることができることを見出した。
本発明は、これらの新規な知見を発展させて完成に至った。
当該カルシウム系炭酸化合物により流動性と強度とを両立可能となる理由は定かではないものの、次のように推察される。当該カルシウム系炭酸化合物は、立方体状であることから混合物中でのせん断応力が低下して、粘度増大作用が針状物に比して小さくなる。その結果、混合物の流動性を維持することができる。また、立方体状であることによる当該カルシウム系炭酸化合物自体の強度や密度の向上、混合物中での等方性(非配向性)による均質分散ないし均質充填等により、無機質成形体の強度を向上させることができる。さらに、針状物を含む混合物の粘度は高く、混合物中の気泡が抜けにくくなっている。気泡が残存したまま最終品を得ると、最終品の強度が低下するおそれがある。立方体状のカルシウム系炭酸化合物であれば、上述のような流動性や等方性等により混合物中の気泡が抜けやすくなっているので、この点でも強度の低下防止又は向上が可能となると推察される。
本明細書において、「立方体状」とは、正規の立方体形状に限定されず、およそ立方体とみなすことができる形状をいう。例えば、立方体の頂点の1つ又は複数が丸みを帯びていたり、欠けていたりしても、その部分を補完することにより立方体を復元することができる場合は立方体状である。また、対象形状の一辺の長さが他辺の長さに対し50%以上150%以下の範囲内であれば、対象形状は立方体状である。さらに、対象形状の一面の形状は正方形に限定されず、前記2辺の長さ比を満たす限り、台形、ひし形、四辺の長さがそれぞれ異なる四角形等のいずれであってもよい。加えて、当該カルシウム系炭酸化合物を構成する全ての粒子が立方体状である必要はなく、全粒子の中での立方体状である粒子の割合が最も大きい場合、当該カルシウム系炭酸化合物は立方体状である。
本明細書において、「カルシウム系炭酸化合物」とは、炭酸カルシウムを主成分とする化合物であって、製造工程等において取り込まれ得る他の副成分の含有又は共存を許容する概念である。カルシウム系炭酸化合物中の炭酸カルシウムの含有量は90質量%以上であることが好ましい。カルシウム系炭酸化合物中の炭酸カルシウムの含有割合の測定方法は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム滴定法を好適に採用することができる。
<エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム滴定法>
試料としてのカルシウム系炭酸化合物(105℃で2時間乾燥済)1gを量り取り、水50mLで懸濁させ、塩酸(濃塩酸と水とを1:1の体積比で混合した液)10mLを加えて、加熱、溶解させる。冷却後、250mLメスフラスコに移し、同量まで水を加えてメスアップする。ここから5.00mLを分取し、液の全量が約50mLとなるように水を加える。これに緩衝液(水酸化カリウム500gを水に溶解させて1,000mLとした溶液)5mL加え、さらに市販のドータイトNN希釈粉末を加えて、滴定試薬(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム約3.8gを水に溶解させて1,000mLとした溶液)にて滴定する。液の色が赤から青に変わった時点で滴定を終了する。下記式により、炭酸カルシウムの含有量(%)を算出する。
(式中、fは滴定試薬のファクターである。ファクターは、滴定試薬によりBT指示薬を用いて標定して決定する。Vは滴定試薬の消費量(mL)である。Wは試料の採取量(カルシウム系炭酸化合物0.02g)である。)
一実施形態において、前記カルシウム系炭酸化合物のレーザー回折法による平均粒子径が、2μm以上25μm以下であることが好ましい。一実施形態において、前記カルシウム系炭酸化合物のBET比表面積が、0.3m/g以上3m/g以下であることが好ましい。また、一実施形態において、前記カルシウム系炭酸化合物の見掛け比重が、1g/mL以上2g/mL以下であることが好ましい。これらの特性を単独で、又は組み合わせて満たすことで、流動性と強度との両立をより高いレベルで発揮することができる。
一実施形態において、前記カルシウム系炭酸化合物によれば、P漏斗流下時間を7秒以上10秒以下とすることができる。これにより、前記カルシウム系炭酸化合物は良好な流動性を発揮することができる。
一実施形態において、前記カルシウム系炭酸化合物中のマグネシウムの含有量が、1000ppm以上であってもよい。原料や製法等によって当該カルシウム系炭酸化合物中のマグネシウムの含有量は変動する。例えば、マグネシウムが比較的豊富な原料(海水等)を用いると、当該カルシウム系炭酸化合物中のマグネシウムの含有量は1000ppm以上となる。マグネシウムが比較的少ない原料(コンクリートスラッジの上澄み液等)を用いると、当該カルシウム系炭酸化合物中のマグネシウムの含有量は1000ppm未満となる。
一実施形態において、前記カルシウム系炭酸化合物は、生産効率や形状制御性の点で、合成カルシウム系炭酸化合物であることが好ましい。
本発明は、他の実施形態において、
当該カルシウム系炭酸化合物を含む、無機質成形体に関する。
立方体状のカルシウム系炭酸化合物を無機質成形体に適用することで、製造過程での流動性を維持して良好な作業性を保ちつつ、強度の高い無機質成形体を効率的に得ることができる。
本発明の実施例1-1のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。 本発明の比較例1-1のカルシウム系炭酸化合物のSEM写真である。
本発明の一実施形態に係るカルシウム系炭酸化合物及び無機質成形体について、以下に説明する。本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<カルシウム系炭酸化合物>
本実施形態に係るカルシウム系炭酸化合物は立方体状である。当該カルシウム系炭酸化合物において、リン原子の含有量は1000ppm以下であり、硫黄原子の含有量は100ppm以上である。
カルシウム系炭酸化合物において、リン原子の含有量は1000ppm以下である限り特に限定されない。リン原子の含有量は500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。一方、リン原子の含有量は少ないほど好ましいものの、1ppm程度含まれていてもよい。カルシウム系炭酸化合物の針状化等の一因子であるリン原子の含有量を前記所定量とすることで、立方体状のカルシウム系炭酸化合物を効率的に形成することができる。
カルシウム系炭酸化合物において、硫黄原子の含有量はは100ppm以上である限り特に限定されない。500ppm以上であることが好ましく、1000ppm以上であることがより好ましい。硫黄原子の含有量は10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましい。硫黄原子の含有量を前記所定量とすることで、針状化等の阻害作用を奏することができ、立方体状のカルシウム系炭酸化合物を効率的に得ることができる。
前記カルシウム系炭酸化合物のレーザー回折法による平均粒子径は、2μm以上25μm以下であることが好ましく、4μm以上22μm以下であることがより好ましく、6μm以上18μm以下であることがさらに好ましい。これにより、カルシウム系炭酸化合物を含む混合物の流動性を好適に維持することができる。加えて、得られる無機質成形体の強度をより向上させることができる。
前記カルシウム系炭酸化合物のBET比表面積は、0.3m/g以上3m/g以下であることが好ましく、0.4m/g以上2.6m/g以下であることがより好ましく、0.5m/g以上2.4m/g以下であることがさらに好ましい。これにより、カルシウム系炭酸化合物を含む混合物の流動性を好適に維持することができ、また、カルシウム系炭酸化合物の分散性も向上させることができる。加えて、得られる無機質成形体の強度をより向上させることができる。
前記カルシウム系炭酸化合物の見掛け比重は、1.00g/mL以上2.00g/mL以下であることが好ましく、1.05g/mL以上1.80g/mL以下であることがより好ましく、1.10g/mL以上1.60g/mL以下であることがさらに好ましい。これにより、カルシウム系炭酸化合物を含む混合物の流動性を好適に維持することができる。加えて、カルシウム系炭酸化合物の密度や強度が高まり、得られる無機質成形体の強度をより向上させることができる。
前記カルシウム系炭酸化合物についてのP漏斗流下時間は、7秒以上10秒以下であることが好ましく、7.5秒以上9.8秒以下であることがより好ましく、8秒以上9.5秒以下であることがさらに好ましい。当該カルシウム系炭酸化合物は立方体状であることから、優れた流動性を発揮することができる。
前記カルシウム系炭酸化合物中のマグネシウムの含有量は、1000ppm以上であってもよく、5000ppm以上であってもよく、10000ppm以上であってもよい。マグネシウムの含有量の上限は、原料や製法等によるものの、50000ppm程度である。
カルシウム系炭酸化合物の結晶構造としては、カルサイト型、アラゴナイト型又はこれらの組み合わせを好適に採用することができる。立方体状のカルシウム系炭酸化合物を得る点から、カルサイト型の結晶構造は相対的に多く、アラゴナイト型の結晶構造は相対的に少ないことが好ましい。
前記カルシウム系炭酸化合物のX線回折測定において、アラゴナイトのピーク強度Iのカルサイトのピーク強度Iに対する比I/Iは、0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。これにより立方体状のカルシウム系炭酸化合物を効率的に得ることができる。
前記カルシウム系炭酸化合物は、生産効率や形状制御性の点で、合成カルシウム系炭酸化合物であることが好ましい。
(カルシウム系炭酸化合物の製造方法)
カルシウム系炭酸化合物の製造方法としては特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。代表的には、炭酸塩(炭酸イオン)と海水等のカルシウム(カルシウムイオン)とを接触させて塩交換を行うことでカルシウム系炭酸化合物を製造する溶液法を好適に採用することができる。
Ca2++CO 2-→CaCO (A)
反応式(A)で用いる炭酸イオンの塩としては、アルカリ金属塩(Li、Na、K)、アルカリ土類金属塩(Mg、Sr、但しCaは除く)が用いられ、中でもアルカリ金属塩が好適に用いられる。その中でもNa塩(炭酸ナトリウム)が汎用性、コスト面で好ましい。
炭酸塩と海水等との接触は、海水等に炭酸塩の水溶液またはスラリー等を投入して行ってもよく、水溶液またはスラリー等に海水等を投入して行ってもよい。投入は、目的とする立方体状のカルシウム系炭酸化合物が効率的に得られる点から、一度に投入することが好ましい。
海水は、例えば近辺の海からそのまま汲み取って用いてもよく、ろ過等の処理を行ってから用いてもよい。汲み取りは、近海に限らず、海水が得られる限り任意の場所で行えばよい。海水から水酸化マグネシウムを取り除いた際に生じるカルシウムリッチな海水を用いてもよい。
炭酸塩の投入量は、上記反応式(A)に従い、海水等中のカルシウムイオン量との反応に必要な炭酸イオン量が得られるように設定すれば特に限定されない。カルシウムイオン量と炭酸イオン量とは等モル量が好ましいものの、カルシウムイオン量に対して炭酸イオン量がモル比で50~200%の範囲内であってもよい。
炭酸塩と海水等との接触による塩交換反応は比較的速やかに進行する。反応時間は、前記塩交換反応が十分進行する程度に設定すればよく、1秒間以上に設定でき、1分間以上60分間以下が好ましく、5分間以上50分間以下がより好ましい。
生成されたカルシウム系炭酸化合物をろ取し、乾燥して粉末状としてもよく、ろ取及び乾燥を経ることなくスラリー状やケーキ状のままカルシウム系炭酸化合物源として用いてもよい。
<カルシウム系炭酸化合物の用途>
カルシウム系炭酸化合物の用途は特に限定されない。用途としては、例えば、建築材料や建築物に代表される無機質成形体用の高機能化材、樹脂用の充填剤等として好適である。以下、カルシウム系炭酸化合物を無機質成形体に用いる態様について説明する。
<無機質成形体>
無機質成形体としては特に限定されず、代表的には、建築材料用の成形板やコンクリート建造物(コンクリート成形体)等が挙げられる。以下、適用し得る組成等を用途に応じて詳述する。
(建築材料用の成形板)
成形板は、好ましくは、水硬性材料、珪酸質材料、補強繊維材料、カルシウム系炭酸化合物を含む。
(水硬性材料)
水硬性材料としては、セメント質材料、石膏、石灰、スラグ等が挙げられる。セメント質材料としては、一般的に使用されるセメント、例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱セメント、フライアッシュセメント、高炉スラグセメント及びアルミナセメントが挙げられる。石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。スラグとしては、高炉スラグ、転炉スラグ等が挙げられる。これらの水硬性材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
水硬性材料の含有量は、成形板を構成する材料の全量を基準として、5質量%以上45質量%以下が好ましく、8質量%以上42質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。水硬性材料の含有量を前記範囲内とすることで、成形板の曲げ強度や剥離強さ等の物性を向上させることができるとともに、成形板の高嵩比重化を抑制して施工時の作業性等を高めることができる。
(珪酸質材料)
珪酸質材料としては、例えば、珪砂、珪石粉、シリカヒューム、フライアッシュ、珪藻土、層状ケイ酸塩(例えば、マイカ、タルク、カオリン、ベントナイト)、ワラストナイト、軽量骨材(例えばフライアッシュバルーン、パーライト、シラスバルーン、ガラス発泡体等)、等のSiOを多く含む材料が挙げられる。これらの珪酸質材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。タルクやマイカ、ワラストナイトは後述の補強繊維材料としても用いることができる。
珪酸質材料の含有量は、成形板を構成する材料の全量を基準として、10質量%以上55質量%以下が好ましく、12質量%以上50質量%以下がより好ましく、15質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。珪酸質材料の含有量が前記範囲にあれば、成形板の曲げ強さ、嵩比重、吸水率、寸法安定性等を目的の範囲に設定することが可能となる。なお、珪酸質材料として、パーライト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン等の単位容積質量が0.5g/cm以下の軽量骨材を配合する場合、嵩比重が軽くなりすぎ、曲げ強さや剥離強さ等の強度が弱くなることを防ぐため、成形板を構成する材料の全量を基準として、軽量骨材の含有量が20質量%以下となるよう、他の珪酸質材料を併用することが好ましい。
(補強繊維材料)
補強繊維材料としては、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、これらをフィブリル化したパルプ、古紙を解繊したパルプ等のパルプ類、ビニロン繊維、アクリロニトリル繊維、ポリプロピレン繊維等の有機補強繊維材料、ロックウール、ガラス繊維等の無機補強繊維材料を使用することができる。これらの補強繊維材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
成形板の強度の向上、靭性の付与のため、補強繊維材料の含有量は、成形板を構成する材料の全量を基準として、2質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上26質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上22質量%以下であることがさらに好ましい。補強繊維材料の含有量を前記範囲内とすることで、十分な補強効果を発揮しつつ、成形板表面に繊維が突出することを抑制して平滑性を向上させることができる。平均長が1mm~50mmの無機補強繊維材料を補強繊維材料として配合する場合は、成形板の平滑性を良好にするために、成形板を構成する材料の全量を基準として、その含有量が10質量%以下となるように他の補強繊維材料を併用することが好ましい。
(カルシウム系炭酸化合物)
カルシウム系炭酸化合物としては、上述のカルシウム系炭酸化合物を好適に採用することができる。
カルシウム系炭酸化合物の含有量は、成形板を構成する材料の全量を基準として、5質量%以上60質量%以下が好ましく、8質量%以上55質量%以下がより好ましく、12質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。低熱伝導性のカルシウム系炭酸化合物を前記範囲の含有量で配合することにより、成形板の強度や耐火性を向上させることができる
(任意成分)
成形板には、前記材料の他に、様々な機能を付与するために、樹脂中空体、木片、木粉、樹脂粉末、消泡剤、凝集剤、撥水剤、増粘剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、分散剤等の材料を、目的に応じて種々配合することが可能である。また、成形板を加工する際に発生する端材等を粉砕したリサイクル材を適宜添加して使用することも可能である。
前記成形板のかさ密度は、0.7g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましく、0.8g/cm以上1.8g/cm以下であることがより好ましく、0.9g/cm以上1.6g/cm以下であることがさらに好ましい。
(成形板の製造方法)
本実施形態に係る成形板の製造方法については特に限定はされず、一般的に用いられている抄造法、押出成形法、フローオン成形法、流し込み成形法、プレス(圧縮)成形等を用いることができる。成形板は、これらの方法で成形したグリーンシートをプレス脱水またはエンボス等による柄付け加工した後、常温養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等で養生して得ることが可能である。さらに、乾燥を行い、必要に応じて形状加工や塗装を行ってもよい。
(成形板の用途)
成形板の用途は特に限定されず、築壁材、床材、屋根材、各種ボード、外部装飾部材、建具等の内外装仕上げ材、シール材、断熱材、吸音材、防水用材等の性能維持材として好適に用いることができる。成形板は、セメント質材料を含むセメント系成形板であることが好ましく、けい酸カルシウム成形体がより好ましい。
(コンクリート建造物)
コンクリート建造物は、水硬性組成物の硬化体で構成されている。水硬性組成物は、カルシウム系炭酸化合物に加えて、高炉スラグ、膨張材、消石灰、生石灰、フライアッシュおよびポルトランドセメントのうちの少なくとも1種類とを含む粉体からなる。カルシウム系炭酸化合物としては、上述のカルシウム系炭酸化合物を好適に採用することができる。
上記水硬性組成物に加えて、砂や砂利等の骨材、コンクリート用化学混和剤等の薬剤、金属や高分子材料による繊維材料などを配合して水硬性組成物混合材料としてもよい。
水硬性組成物の硬化体は、上記水硬性組成物に水を混練して得たペーストを硬化させたものである。また、水硬性組成物混合材料の硬化体は、上記水硬性組成物混合材料に水を混練して得た混練物(フレッシュモルタルやフレッシュコンクリートに相当)を硬化させたものであり、モルタルやコンクリートに相当するものである。
カルシウム系炭酸化合物の前記粉体中の割合(セメントに対するカルシウム系炭酸化合物の割合)は、1質量%~60質量%の範囲内、好ましくは3質量%~50質量%、さらに好ましくは5質量%~40質量%の範囲内である。
高炉スラグには、JIS(日本工業規格)R5211「高炉セメント」で使用される高炉スラグ微粉末またはJIS A6206「コンクリート用高炉スラグ」に適合する高炉スラグ微粉末を使用するのが望ましい。また、高炉スラグは、比表面積が2000~10000cm/gのもの、好ましくは3500~7000cm/gのものを使用するのが望ましい。
膨張材には、例えば、JIS A6202「コンクリート用膨張材」に規定される膨張材を使用すればよい。膨張材は、水硬性組成物全体に対して2~9質量%割合で添加するのが望ましい。
消石灰には、例えば、JIS R9001「工業用石灰」に規定されるものを使用すればよい。また、生石灰は水と接触すると消石灰になるため、例えば、JIS R9001「工業用石灰」に規定される生石灰を消石灰の代わりに使用することができる。なお、この場合には、生石灰が消石灰に変化する際に必要な水の量を補正しておくとよい。
フライアッシュには、例えばJIS A6201「コンクリート用フライアッシュ」に適合するものを使用すればよい。
ポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメントを使用するが、ポルトランドセメントには、この他、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等、JIS R5210「ポルトランドセメント」において規定されるもの、およびJIS R5214「エコセメント」も使用可能である。
水硬性組成物中にポルトランドセメントを含む場合には、カルシウム系炭酸化合物以外の粉体中のポルトランドセメントの割合を70質量%以下とし、30質量%以下とすることが好ましい。
また、ポルトランドセメントと、高炉スラグまたはフライアッシュを用いる場合には、当該成分を予め混合してある、例えばJIS R5211「高炉セメント」、または、例えばJIS R5213「フライアッシュセメント」をそれぞれ単独で、あるいは混合して用いてもよい。
前記特徴を有するカルシウム系炭酸化合物を用いているので、水硬性組成物や水硬性組成物混合材料は良好な流動性を示すとともに、そのコンクリート硬化体は優れた圧縮強度を発揮することができる。
前記コンクリート建造物の密度は、0.7g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましく、0.8g/cm以上1.8g/cm以下であることがより好ましく、0.9g/cm以上1.6g/cm以下であることがさらに好ましい。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、物性等の測定と評価は、次のようにして行なった。
<カルシウム系炭酸化合物の評価>
各製造例で得られたカルシウム系炭酸化合物等について、以下のような分析を行った。各分析結果を表1及び図1、2に示す。
(1)BET比表面積
8連式プリヒートユニット(MOUNTECH社製)を用いて窒素ガス雰囲気下、約130℃、約30分間で前処理した試料粉末を、BET比表面積測定装置としてMacsorb HM Model-1208(MOUNTECH社製)を用いて、窒素ガス吸着法で、BET比表面積(m/g)を測定した。
(2)レーザー回折法による平均粒子径
エタノール50mLを100mL容量のビーカーに採り、試料粉末約0.2gを前述の100mL容量のビーカーに投入し、3分間の超音波処理(トミー精工社製 UD-201)を施して分散液を調製した。この分散液をレーザー回折法-粒度分布計(日機装株式会社製 Microtrac HRA Model 9320-X100)を用いて、体積基準のD50値を平均粒子径(μm)として、測定した。
(3)見掛け比重
試料粉末の見掛け比重は、JIS K6220に準拠して測定した。
(4)リン原子、硫黄原子及びマグネシウム原子の含有量
<ICP-AES法>
試料としてのカルシウム系炭酸化合物0.2gを量り取り、水で湿らせ、分注器で塩酸(濃塩酸と水とを1:1の体積比で混合した液)10mLを加えて、加熱、溶解した。冷却後、250mLメスフラスコに移し、250mL同量まで水を加えてメスアップした。ここから20mLを50mLメスフラスコに分取し、50mL同量まで水を加えて測定用検体液とした。一方、前記した250mLメスアップした水溶液から20mLを50mLメスフラスコに分取し、各元素(リン原子、硫黄原子及びマグネシウム原子)の標準液をそれぞれ任意に追加添加して濃度の異なる検量線用標準液を調製した。なお、各元素の標準液は、1000ppm原子吸光用標準液(市販)を用いた。
各元素を追加添加した濃度の異なる検量線用標準液と測定用検体液とを誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)装置(日立ハイテクサイエンス社製、「SPECTROBLUE FMS36型」)のオートサンプラーにセットし、下記の条件でマグネシウム原子の量(ppm)を測定した。
<測定条件>
高周波出力:1.4kW
キャリアガス(加湿)流量:0.9L/min
プラズマガス流量:13.0L/min
補助ガス流量;1.0L/min
液性:水溶液
積分回数:3回
試料順序:試料毎
測定方法:標準添加法
検量線の重み付け:なし
測定波長:リン原子177.495nm、硫黄原子182.034nm、マグネシウム原子279.553nm
(5)XRD測定による46°(アラゴナイト)ピーク強度Iの29°(カルサイト)ピーク強度Iに対する比の算出
所定の試料台に試料粉末をスパチュラのヘラで圧粉固着させた後、XRD装置(リガク株式会社製MiniFlex600-C)を用いて測定を行い、結晶物質としての同定解析を行った。なお、測定角度2θにおいて、約29°に現れるピークはカルサイトの主ピークであり、約46°に現れるピークはアラゴナイトの主ピークである。これより、46°(アラゴナイト)ピーク強度Iの29°(カルサイト)ピーク強度Iに対する比(I/I)を求めた。
(6)走査電子顕微鏡観察
アルミ試料台上に両面テープを貼り付け、その上から試料粉末をスパチュラのヘラでなぞるように塗布した。白金蒸着を行った後、試料粉末の粒子像を走査電子顕微鏡(FE-SEM:日立製作所株式会社製S-4700)を用いて2千倍の写真を撮った。図1~図2に実施例及び比較例のSEM写真を示す。
<カルシウム系炭酸化合物の製造>
[実施例1-1]カルシウム系炭酸化合物(立方体状)
炭酸ナトリウムの試薬(和光純薬製:純度99.8%)8510gを、水100Lを予め張った邪魔板付き220L容量SUS容器内に撹拌下に投入して炭酸ナトリウムを調製した。一方、神島化学工業株式会社内で排出される海水から水酸化マグネシウムを除去した後の海水1000L(Ca2+含有量:0.25g/dL)を2000L容量のポリエチレン製容器内に入れ、25℃の撹拌下に前述の炭酸ナトリウム水溶液100Lを一気に添加後、約30分間の撹拌を継続することで反応させたその後、ろ過し、固形分に対して約5倍の水で洗浄し、110℃で24時間乾燥、粉砕し、カルシウム系炭酸化合物の試料粉末を得た。
[実施例1-2]カルシウム系炭酸化合物(立方体状)
海水から水酸化マグネシウムを除去した後の海水1000Lに対し、撹拌下に塩化マグネシウム六水和物を12.7kg加えた後、前述の炭酸ナトリウム水溶液100Lを一気に添加したこと以外は、実施例1-1と同様な操作を行ってカルシウム系炭酸化合物の試料粉末を得た。
[実施例1-3]カルシウム系炭酸化合物(立方体状)
海水から水酸化マグネシウムを除去した後の海水100Lに対し、撹拌下に前述の炭酸ナトリウム水溶液10Lを一気に添加後、約30分間の撹拌を継続させた。この反応後液を種として、さらに海水から水酸化マグネシウムを除去した後の海水100Lを加え、撹拌下に前述の炭酸ナトリウム水溶液10Lを一気に添加後、約30分間の撹拌を継続させた。この一連の操作を合計10回継続した。それらの操作以外は、実施例1-1と同様な操作を行ってカルシウム系炭酸化合物の試料粉末を得た。
[比較例1-1]カルシウム系炭酸化合物(針状)
市販の消石灰粉末(吉見石灰工業株式会社製、工業用最優良消石灰)をCaO換算で69
80g、アラゴナイトの種結晶粉末を630g、および、リン酸水素二ナトリウム・12水和物を3000gを準備し、それぞれ水180Lを予め張った邪魔板付き220L容量SUS容器内に撹拌下に投入して原料の混合スラリーを調製した。その後70℃まで昇温し、その温度下でタービン翼を1段備えた攪拌機を用いて回転速度150rpmで攪拌した。LNGを燃料とする水蒸気製造用ボイラーの排気出口に排ガス取り出し用配管を繋げ、試験用ブロアーを用いて排気ガスを引き込みながら、CO濃度測定器(新コスモス電機株式会社製XP-3140)で測定したところ、CO濃度は10体積%を示した。前述した220L容量SUS容器内に試験用ブロアーを用いて速度100L/minで排ガス導入して7時間反応させた。その後、ろ過し、固形分に対して約5倍の水で洗浄し、110℃で24時間乾燥、粉砕し、カルシウム系炭酸化合物の試料粉末を得た。
<評価>
得られたカルシウム系炭酸化合物を用い、P漏斗流下時間の測定、並びにセメント成形体の製造及び圧縮強度試験を行った。結果を表3に示す。
<P漏斗流下時間>
(セメントミルク1の作製)
セメント(トクヤマ社製、「普通ポルトランドセメント(N)」)2kgを水1600mLに20秒程度で投入し、投入開始から3分間撹拌機(ヤマト科学株式会社製、「ラボスターラ(LR500B)」)で混合した。撹拌を停止し3分間静置した後、人手で攪拌棒(アズワン株式会社製、「攪拌棒(POM製)φ10×300mm」)により10回かき混ぜてセメントミルク1を作製した。
(セメントミルク2~7の作製)
下記表2-1に示す種類及び量の実施例1-1及び比較例1-1のカルシウム系炭酸化合物を水1600mLに投入し、人手で前記攪拌棒により30秒程度撹拌した後、前記撹拌機を用いて400rpmで撹拌して混合物を得た。この混合物にセメント(トクヤマ社製、「普通ポルトランドセメント(N)」)2kgを20秒程度で投入し、投入開始から3分間前記撹拌機で混合した。撹拌を停止し3分間静置した後、人手で前記攪拌棒により10回かき混ぜてセメントミルク2~7を作製した。
(セメントミルク8~10の作製)
下記表2-2に示す種類及び量の実施例1-2のカルシウム系炭酸化合物を用いたこと以外は、セメントミルク2~7の作製と同様な操作を行ってセメントミルク8~10を作製した。
(セメントミルク11~13の作製)
下記表2-3に示す種類及び量の実施例1-3のカルシウム系炭酸化合物を用いたこと以外は、セメントミルク2~7の作製と同様な操作を行ってセメントミルク11~13を作製した。
(P漏斗流下時間試験方法)
「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」(JSCE-F521-1999)に準拠して、P漏斗流下時間を測定した。P漏斗の排出口を指で押さえ、P漏斗の標線まで前記調製した各セメントミルクを注ぎ(1750ml)、タイムウォッチで指を離すと同時に測定を始め、P漏斗からセメントミルクが排出されるまでの時間を測定した。
<セメント成形体の製造>
[実施例2-1]
円柱状のポリエチレン袋(直径約50mm×長さ約550mm×厚さ約0.05mm)の標線まで前記調製したセメントミルク1を400mL注ぎ込んだ。空気を可能な限り注入して封をした後、22℃に設定した恒温機内に吊り下げた。恒温機内に吊り下げたまま28日間放置し、内容物を硬化させることでセメント成形体を計3個製造した。得られたセメント成形体は円柱状であり、直径約5cm、長さ約20cmであった。
[実施例2-2~2-9及び比較例2-1~2-4]
下記表3-1~表3-3に示すセメントミルクを用いたこと以外は、実施例2-1と同様にしてセメント成形体を製造した。
(密度)
JIS A 5430:2008(見掛け密度試験)に準拠して、密度を測定した。
(圧縮強度試験)
JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮試験方法)に準拠して、得られたセメント成形体の圧縮強度を測定した。
実施例のカルシウム系炭酸化合物を用いたセメントミルクでは、カルシウム系炭酸化合物の含有量を増加させたとしても、カルシウム系炭酸化合物を配合していない比較例2-1に対し、大幅なP漏斗流下時間の増加を招来することがなく、良好な流動性を有していた。一方、比較例2-2~2-4では、カルシウム系炭酸化合物の含有量を増加させるにつれ、流動性が大幅に低下した。
さらに実施例のセメント成形体では、カルシウム系炭酸化合物を配合することで、比較例2-1に対し圧縮強度が向上した。一方、比較例2-2~2-4では、カルシウム系炭酸化合物を配合してもブランクの比較例2-1に対し圧縮強度が低下した。なお、比較例2-2~2-4においてブランク比で圧縮強度が低下する理由は定かではないものの、カルシウム系炭酸化合物が針状であり表面エネルギーが増大したことで凝集が生じてしまい、補強作用が低下したことや、針状であることでセメントミルクの粘度が高くなり、気泡が抜けにくくなって、気泡が残存したままセメント成形体が得られたことが影響していると推察される。
以上より、実施例のカルシウム系炭酸化合物を用いたセメントミルクでは、カルシウム系炭酸化合物の含有量を増加させたとしても、ブランク品と遜色のない流動性を示すとともに、セメント成形体にした際には優れた圧縮強度を発揮することが分かった。

Claims (8)

  1. リン原子の含有量が1000ppm以下であり、
    硫黄原子の含有量が100ppm以上であり、
    結晶構造が、カルサイト型、アラゴナイト型又はこれらの組み合わせであり、
    見掛け比重が、1g/mL以上2g/mL以下である
    立方体状のカルシウム系炭酸化合物。
  2. レーザー回折法による平均粒子径が、2μm以上25μm以下である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
  3. BET比表面積が、0.3m/g以上3m/g以下である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
  4. P漏斗流下時間が7秒以上10秒以下である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
  5. マグネシウムの含有量が、1000ppm以上である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
  6. 前記カルシウム系炭酸化合物は、合成カルシウム系炭酸化合物である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
  7. 無機質成形体用である、請求項1に記載のカルシウム系炭酸化合物。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載のカルシウム系炭酸化合物を含む、無機質成形体。
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