JP7710161B2 - 植物成長促進剤の施用方法 - Google Patents

植物成長促進剤の施用方法

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Description

本開示は、植物成長促進剤の施用方法に関する。
近年、植物工場において効率的に、かつ、安定的に植物を生産するための技術開発が求められている。例えば、植物生産を増進させる手法としては、植物の成長促進に関する物質(以下、植物成長促進物質ともいう)を含む植物成長促進剤を植物へ接種する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、例えば、植物の収穫量の低減を抑制する手法としては、植物の生育阻害又は汚染(例えば、藻類による汚染)を抑制する方法が開示されている(特許文献2参照)。特許文献2は、水耕栽培用プレートにおいて植物体(植物ともいう)が植栽されるキャリアを嵌合支持するキャリア配設孔の上面を、当該キャリア配設孔の直上に位置する部位にスリットを有する遮光シートで被覆して水耕培養液を遮光する方法が開示されている。
国際公開第2020/105649号 特開2014-033621号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術を水耕栽培における植物の栽培初期工程(以下、発芽工程と称する)で適用すると、例えば藻類が増殖しやすくなるという問題がある。また、特許文献2に記載の技術を発芽工程で適用すると、遮光シートのスリットからの漏れ光では植物の生育に必要な光量が足りないため、スリットを押し開ける程度に植物が生育できないという問題がある。そのため、これらの技術では、水耕栽培において、効率的に、かつ、安定的に植物を栽培することができるとは言い難い。
そこで、本開示は、水耕栽培において、効率的に、かつ、安定的に植物を栽培することができる、植物成長促進剤の施用方法を提供する。
本開示の一態様に係る植物成長促進剤の施用方法は、水耕栽培における植物成長促進剤の施用方法であって、水耕培養液を含浸させた保水性の担体である固体培地を準備し、水耕培養液と前記植物の成長促進に関与する物質を含む植物成長促進剤との混合液トレイに投入し、前記混合液が投入された前記トレイ内に前記固体培地を載置し、前記植物の種を前記固体培地に播いた後、前記植物の種の発芽前であって、1回目の移植をするまでに前記植物成長促進剤が適用される。
本開示の植物成長促進剤の施用方法によれば、水耕栽培において、効率的に、かつ、安定的に植物を栽培することができる。
図1は、実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法を説明するための図である。 図2は、実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法の一例を示すフローチャートである。 図3は、図2のステップS1の詳細なフローの一例を示すフローチャートである。 図4は、図2のステップS2の詳細なフローの一例を示すフローチャートである。 図5は、混合液に含まれる水耕培養液と植物成長促進剤との比率と、各比率における固体培地に含まれるセルの単位体積当たりの植物成長促進剤量を示す図である。 図6は、実施例1、比較例1及び比較例2の結果を示す図である。 図7は、実験例1~実験例6の結果を示す図である。 図8は、実施例2及び比較例3の結果を示す図である。
(本開示の基礎となった知見)
近年、世界的な異常気象又は自然災害により、農作物の収穫量が変動し、人々への食糧の安定的な供給に支障を来している。そのため、安定的に農作物などの植物を生産する技術開発が求められている。このような技術の1つとして、例えば、植物工場が注目されている。植物工場では、植物の種類に応じて、植物が栽培される区画された空間で植物の生育空間における空調などの環境条件がコントロールされるため、異常気象若しくは自然災害などの天災、季節又は場所に左右されずに、安定的に農作物などの植物を生産することができる。その一方で、植物工場は、設備費用及び電気代等のランニングコストが嵩むため、収益が低いという問題がある。この問題を解決するために、植物工場において植物の生産効率を向上させる必要がある。そこで、植物の生産効率を向上させる手法の1つとして、栽培される植物の成長を促進させるための技術開発が求められている。
例えば、植物の成長を促進させる手法として、植物の成長促進に関与する物質(いわゆる、植物成長促進物質)を含む植物成長促進剤を植物へ接種する方法がある。例えば、特許文献1には、少なくとも発芽した日から12日目までの育苗期間に、葉物野菜の地下部(具体的には、葉物野菜の植物体のうち、土壌又は培地などに接しており、空気中に露出されていない部分)に酸化型グルタチオンを施用する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術を水耕栽培における栽培初期工程(例えば、少なくとも発芽した日から12日目までの育苗期間)で適用すると、栽培される植物の成長が促進される一方で、本来不要なアオコなどの藻類の成長も促進されて、培地上に藻類が増殖するという弊害が生じる。
藻類は、水耕培養液に含まれる窒素及びリン等の栄養成分を資化して、培地上に増殖するが、水耕培養液に植物成長促進剤が含まれると、藻類が植物成長促進剤を資化してその成長(言い換えると、増殖)が促進される。このように、藻類が増殖することにより栽培装置の清掃コストが嵩むだけでなく、藻類が水耕培養液に含まれる栄養成分を吸収するにより水耕培養液の組成が変動するため、栽培される植物の成長が妨げられるなどの悪影響が生じる。
水耕栽培において藻類の増殖を抑制するために、藻類の光合成を抑制することが有効であると考えられている。例えば、特許文献2には、水耕栽培用プレートにおいて植物体が植栽されるキャリア(培地ともいう)を嵌合支持するキャリア配設孔の上面を、当該キャリア配設孔の直上に位置する部位にスリットを有する遮光シートで被覆して水耕培養液を遮光する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、発芽後に植物体(ここでは苗)が根を張った固体培地(いわゆる、培地)を水耕栽培装置に移植した後に適用されるものである。例えば、特許文献2に記載の技術を水耕栽培における栽培初期工程(いわゆる、発芽工程)で適用すると、遮光シートのスリットからの漏れ光では植物の生育に必要な光量が足りないため、スリットを押し開ける程度に植物が生育できない。上述したように、発芽工程は、発芽から子葉展開までの育苗期間であり、この期間に植物の生育に必要な光量が足りないと、スリットを押し開ける程度に子葉又は茎が成長しない。そのため、水耕栽培における栽培初期工程で特許文献2に記載の技術を適用することは難しい。
藻類の増殖は、水耕培養液を含んだ保水性の担体(いわゆる、培地)がトレイに面する下面でも起こるが、特に、光源により露光された面において起こりやすい。さらに、水耕培養液に植物成長促進剤を添加すると、藻類の成長も促進されるため、藻類の増殖が促進される。そのため、一般的に、発芽工程では、植物成長促進剤の施用は積極的に行われない。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、保水性の担体に水耕培養液を含ませた固体培地と、水耕培養液と植物成長促進剤とを混合した混合液を入れたトレイとを準備し、固体培地をトレイにセットする方法を見出した。これにより、固体培地の露光面には植物成長促進剤が含まれず、発芽後に固体培地に植物の根が張った際に根から吸収される範囲に植物成長促進剤が含まれるため、固体培地の露光面における藻類の増殖を抑制すると共に、発芽した植物の成長が促進されることを見出した。
したがって、本開示の植物成長促進剤の施用方法によれば、植物の発芽工程において植物成長促進剤を施用した場合でも、培地表面(言い換えると、固体培地の露光面)に発生する藻類の量を、植物成長促進剤を添加しない場合と同等の水準に抑制することができるため、藻類の増殖を抑制することができる。また、本開示の植物成長促進剤の施用方法によれば、効果的に植物の成長を促進することができるため、効率的に植物を栽培することができる。これにより、水耕栽培において、植物生産が増進され、植物の収穫量が増加する。したがって、本開示の植物成長促進剤の施用方法によれば、水耕栽培において、効率的に、かつ、安定的に植物を生産することができる。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、材料、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
また、以下では、互いに直交する3つの方向としてXYZ方向を規定し、上側を「+Z側」、及び、下側を「-Z側」とする。
また、本明細書において、各構成の位置、姿勢及び向きなどについて説明する際には、通常の使用状態を想定して説明することとする。例えば、本実施の形態の固体培地の上下方向は、鉛直方向に相当する。
また、以下では、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、矩形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
また、本明細書において、菌体と細胞とは、いずれも1つのシアノバクテリアの個体を表している。
(実施の形態)
[植物成長促進剤の施用方法]
[1.概要]
まず、本実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法の概要について説明する。
実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法は、水耕栽培における植物成長促進剤の施用方法であって、植物の種50(図1の(d)参照)を播いてから(以下、「播種してから」ともいう)、種50から発芽した植物を少なくとも1回移植するまでの栽培工程で実施される。
栽培される植物は、例えば、フリルレタス、リーフレタス、ロメインレタス、結球レタス、ホウレンソウ、及び、ミズナ等の葉菜類から選択される少なくとも1種以上の植物であってもよいが、これらの葉菜類に限定されない。例えば、栽培される植物は、葉菜類の他に、果菜類、根菜類、花卉類、果実類、穀類、コケ類、シダ類、観葉植物類、又は、薬草類などであってもよい。
栽培される植物の種子50は、例えば、いわゆる種子と呼ばれる種子を芯材として、その表面に様々なコーティング材が被覆されたものであってもよい。また、栽培される植物の種子5は、コーティング種子に限られず、例えば、薬剤の水溶液中に浸漬し、種子内部まで薬剤を浸透させた種子であってもよい。薬剤は、例えば、殺菌剤、消毒剤、又は、成長促進剤などであってもよい。栽培される植物の種子5は、上記の例に限られず、例えば、種子を薬剤の水溶液に浸漬した後に、種子の表面をコーティング材で被覆してもよい。
植物成長促進剤の施用方法は、植物工場などの閉鎖環境下で実施されてもよいが、特に限定されず、例えば、露地栽培などの開放環境下で実施されてもよい。なお、閉鎖環境には、温室などの半閉鎖環境も含まれる。閉鎖環境における光源の駆動条件、温湿度及び二酸化炭素濃度の調整条件、並びに、空気供給などの空調条件などの環境条件は、栽培される植物に応じて適宜設定されてもよい。
植物を成長させるための光の光源は、自然光(いわゆる、太陽光)及び人工光の少なくともいずれかであってもよい。人工光は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、蛍光灯、又は、有機発光ダイオード(OLED)などの人工光源から発せられる光である。植物工場では、例えば、自然光(いわゆる、太陽光)を取り入れて植物へ照射する採光装置、及び、人工光源を備える発光装置の少なくともいずれかの装置が用いられてもよい。これらの装置によって植物へ照射される光は、植物の光合成及び形態形成などの生理作用に影響を与える。本実施の形態では、植物工場などの閉鎖環境で使用される光源は、人工光源である例を説明するが、これに限られない。例えば、光源は、栽培される植物に応じて適宜選択されてもよい。
[2.方法例]
図1は、実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法の一例を模式的に示す図である。図2は、実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示されるように、実施の形態に係る植物成長促進剤の施用方法は、固体培地10を準備し(S1)、水耕培養液へ植物成長促進剤を添加した混合液30をトレイ20に投入し(S2)、トレイ20内に固体培地10を載置する(S3)。以下、ステップS1~ステップS3の各ステップについて図面を参照しながら具体的に説明する。
[ステップS1(固体培地の準備工程)]
続いて、図1の(a)及び図3を参照しながら、ステップS1の固体培地10の準備工程について説明する。図1の(a)は、固体培地の準備工程の一例を示す模式図である。図3は、図2のステップS1の詳細なフローの一例を示すフローチャートである。
固体培地10の準備工程(ステップS1)では、保水性の担体100aを準備し(S11)、準備された保水性の担体100aを水耕培養液(不図示)に浸漬する(S12)。これにより、水耕培養液を含浸させた保水性の担体100aである固体培地10が準備される。
まず、ステップS11において保水性の担体100aを準備するとは、例えば、図1の(a)に示されるように、保水性の担体100をトレイ20のサイズに応じたサイズに切り分けて保水性の担体100aを準備することをいう。
固体培地10は、植物の種子5(図1の(d)参照)を発芽させるための発芽床として、又は、植物の苗を育成するための育成床(いわゆる、苗床)として利用される。固体培地10は、植物の栽培に必要な栄養成分(例えば、窒素、リン、及び、カリウムなど)の無機物を成分とする水耕培養液を含浸させた保水性の担体100であり、栽培される植物に栄養成分及び水分などを供給する。保水性の担体100は、例えば、スポンジ、発泡体、又は、繊維マットなどの多孔質素材から構成されている。多孔質素材の材料は、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、又は、ポリスチレン樹脂などの発泡樹脂、ロックウール、又は、ココマットなどの繊維材料であってもよい。例えば、図1の(a)に示されるように、保水性の担体100では、上面(+Z側の表面)の中央部に切り込み12を有する複数のセル1が所定方向に整列されて繋がっている。複数のセル1は、それぞれ、隣接するセル1と乖離しない程度に部分的に繋がっていてもよい。これにより、保水性の担体100は、所望の大きさに容易に切り分け可能(例えば、図1の(a)の4×5セルサイズ)であり、さらに、保水性の担体100が水耕培養液(不図示)に浸漬されても複数のセル1が乖離せず所定方向に整列されて繋がっている構造を維持する。つまり、ステップS11において、保水性の担体100が所望の大きさに切り分けられることにより、固体培地10用の保水性の担体100aが準備される。ここでは、保水性の担体100を所望の大きさに切り分けた保水性の担体100aを固体培地10に使用しているが、保水性の担体100をそのまま固体培地10に使用してもよい。
なお、図1では、保水性の担体100は、上面に切り込み12を有する例を示しているが、植物の種子5を収容することができる構造であれば特に限定されず、例えば、窪みであってもよい。また、切り込み12の態様は、固体培地10上で栽培される植物の種類に応じて適宜設計されてもよい。また、固体培地10のサイズは特に限定されず、固体培地10上で栽培される植物の種子5の数に応じて適宜設計されてもよい。
固体培地10のセル1の形状は、立体形状であれば特に限定されないが、例えば、立方体、直方体、柱状体、半球状、又は、テーパ形状であってもよい。なお、以下では、上面(+Z側の表面)に切り込み12を有し、かつ、一辺が30mmである立方体形状の複数のセル1が所定方向に整列された固体培地10を例に説明する。
以下、ステップS12についてより具体的に説明する。図1の(a)には図示していないが、ステップS12では、ステップS11で準備された保水性の担体100aを水耕培養液中に投入する。例えば、ステップS12では、予め水耕培養液を入れた槽(いわゆる、容器)へ保水性の担体100aを投入し、水耕培養液に保水性の担体100aを浸漬する。これにより、保水性の担体100aに水耕培養液が含浸される。
槽は、保水性の担体100aが槽内に収まる容積があればよく、その素材又は形状については、特に限定されない。また、槽内の水耕培養液の量は、少なくとも保水性の担体100aが全て水耕培養液中に収まる量であればよく、作業者によって適宜設定されてもよい。
保水性の担体100aは、水耕培養液中へ浸漬される前に、水道水、又は、地下水等の水を溶媒とした水溶液で洗浄されてもよいし、水溶液で洗浄した後に、水耕培養液で洗浄されてもよい。
なお、本明細書における「保水性の担体100aに水耕培養液が含浸される」とは、保水性の担体100aが水耕培養液を吸収し、吸収した水耕培養液を保水性の担体100aの内部に保持することを指す。保水性の担体100aに水耕培養液を効率的に吸収させるために、例えば、槽内の水耕培養液中に浸漬された保水性の担体100aを槽の底部に向かって押圧するなどの物理的な圧縮を繰り返してもよい。これにより、保水性の担体100a中に含まれる空気が効率的に水耕培養液に置換される。保水性の担体100aに対する物理的な圧縮は、水耕培養液中に浸漬された保水性の担体100a中の空気を水耕培養液に置換できる方法で実行されればよく、その方法は特に限定されない。例えば、保水性の担体100aに対する物理的な圧縮は、作業者によって手作業で行われてもよく、圧縮機などの治具を用いた機械的な方法で行われてもよく、設計に応じて適宜選択されてもよい。なお、保水性の担体100a中の空気を水耕培養液に置換する手法として、例えば、水耕培養液に浸漬された保水性の担体100aを槽ごと真空脱気装置の脱気塔に入れて真空引きしてもよい。
保水性の担体100aに対する物理的な圧縮は、圧縮により保水性の担体100aから空気(ここでは、気泡)が発せられなくなることを目視にて確認できるまで行なわれる。圧縮の回数は、保水性の担体100aのサイズ及び素材によって異なるため、作業において実現可能な範囲内において選択されてもよい。例えば、上記の圧縮は、上述のように、気泡が目視で確認できなくなるまで繰り返されてもよく、作業時間及び効率等を勘案して実施可能な範囲で繰り返されてもよい。
以上の処理を実行することにより、ステップS1では、保水性の担体100aが水耕培養液を十分に吸収して保持した固体培地10が準備される。ステップS1で準備された固体培地10は、固体培地10から水耕培養液が滴るほどの量の水耕培養液を含んでいる。たとえば、固体培地10は、保水性の担体100aの体積の約60%以上約80%以下の水耕培養液を含んでいる。なお、固体培地10に含まれる水耕培養液の量は、保水性の担体100aの素材及び当該素材が有する吸水保持機能(より詳しくは、水耕培養液などの水溶液を吸収して保持する機能)に応じて変動しうる。例えば、後述する実施例では、保水性の担体100aの素材は、ポリウレタン樹脂であり、この場合、固体培地10は、保水性の担体100aの体積の68%の水耕培養液を含んでいる。また、例えば、図1の(a)に示される保水性の担体100aは、縦2.3cm×横2.3cm×高さ2.8cmのサイズのセル1が平面状に4個×5個連なる計20個のセル1から構成されており、その体積は、296cmである。この場合、保水性の担体100aに含まれる水耕培養液の量は、保水性の担体100aの体積の68%に相当する200cm(200mL)であってもよい。なお、水耕培養液の比重は、主成分が水であるため、水と同等の比重(比重=1)として水耕培養液量を算出してもよい。
また、ステップS1で準備された固体培地10は、ステップS12で保水性の担体100aを水耕培養液中に浸漬した後、使用されるまで水耕培養液中で保管されてもよい。例えば、ステップS12で保水性の担体100aを槽内の水耕培養液に浸漬した後、固体培地10を槽内でそのまま保管してもよいし、固体培地10を槽から取り出して、水耕培養液が入れられた保管用の容器又は袋内に移して保管してもよい。なお、固体培地10の保管方法は、固体培地10の乾燥を防ぐことが可能な方法であればよく、上記の保管方法に限られない。
[ステップS2(トレイへの混合液の投入工程)]
続いて、図1の(b)及び図4を参照しながら、ステップS2のトレイ20への混合液30の投入工程について説明する。図1の(b)は、栽培用トレイ(いわゆる、トレイ20)への混合液30の投入工程の一例を示す模式図である。図4は、図2のステップS2の詳細なフローの一例を示すフローチャートである。
トレイ20への混合液30の投入工程(ステップS2)では、水耕培養液と植物の成長促進に関与する物質を含む植物成長促進剤との混合液30を準備し(ステップS21)、準備された混合液30をトレイ20へ投入する(ステップS22)。これにより、混合液30が投入されたトレイ20が準備される。以下、各ステップについて具体的に説明する。
まず、ステップS21について説明する。ステップS21は、混合液30を準備する工程である。なお、ステップS21において混合液30を準備するとは、例えば、予め調製された混合液30を量り取ることであってもよいし、水耕培養液に植物成長促進剤を添加して混合液30を調製することであってもよい。
本明細書における「植物の成長促進」は、植物の成長の促進(具体的には、植物の高さ及び質量の増加、発芽促進、又は、発根促進)、及び、植物の品質向上(具体的には、着果率の着果率の増加、果実の質量の増加、糖度の向上)などの意味が含まれ、さらに、農作物としての収穫量増加の意味も含まれる。「植物の成長促進」は、栄養成分の添加又は栄養成分の吸収促進などにより植物の成長が促進されて達成されるものであってもよく、植物の成長を阻害する藻類又は病害の発生を抑制することによって達成されるものであってもよい。
植物成長促進剤は、液体、粉末、顆粒、又は、錠剤などいかなる剤形であってもよいが、混合液30の調製の容易性の観点から、液体であってもよい。例えば、植物成長促進剤が液体である場合、当該液体を水耕培養液に懸濁、溶解、又は、分散させることで、混合液30を調製してもよい。液体の植物成長促進剤は、例えば、アミノレブリン酸などを含む液体肥料であってもよく、酸化グルタチオン(いわゆる、酸化型グルタチオン)などの植物成長促進物質を水、又は、水系の分散媒もしくは溶媒に懸濁、溶解又は分散させた液体であってもよく、光合成細菌(例えば、遺伝子改変された改変シアノバクテリア)の分泌物であってもよい。なお、改変シアノバクテリア及び改変シアノバクテリアの分泌物については、後述する。また、粉末の植物成長促進剤は、粉末肥料であってもよく、酸化グルタチオンなどの植物成長促進物質の粉末であってもよく、光合成細菌(例えば、改変シアノバクテリア)の分泌物の乾燥粉末であってもよい。また、顆粒又は錠剤の植物成長促進剤は、顆粒又は錠剤の肥料であってもよく、植物成長促進物質の粉末もしくは光合成細菌(例えば、改変シアノバクテリア)の分泌物の乾燥粉末と所定の賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤とが混合された顆粒又は錠剤であってもよい。以下では、植物成長促進剤が液体であり、かつ、改変シアノバクテリアの分泌物である例について説明する。
ステップS21では、改変シアノバクテリアの分泌物を水耕培養液に添加し混合することにより、分泌物に含まれる植物成長促進物質が水耕培養液中に懸濁、溶解、又は、分散された混合液30を調製する。
なお、ステップS21とステップS22とは、同時に行われてもよい。例えば、トレイ20に水耕培養液を投入した後、トレイ20に植物成長促進剤を投入して、トレイ20内で撹拌混合してもよい。
植物成長促進剤は、例えば、シアノバクテリアにおいて外膜と細胞壁との結合に関与するタンパク質(結合関連タンパク質ともいう)の総量が、親株(以下、親シアノバクテリアともいう)における当該タンパク質の総量の30%以上70%以下に抑制されている改変シアノバクテリアの分泌物(以下、単に、「分泌物」ともいう)である。例えば、「結合関連タンパク質の総量が、親株における当該タンパク質の総量の30%に抑制されている」とは、親株における当該タンパク質の総量の70%が喪失し、30%に抑制されている状態のことを意味する。このように、改変シアノバクテリアは、シアノバクテリアの外膜と細胞壁との結合に関与するタンパク質の機能が抑制されているため、外膜と細胞壁との結合(例えば、結合量及び結合力)が部分的に低減して、外膜が細胞壁から部分的に離脱しやすくなる。例えば、非特許文献1(木幡光, Studies on molecular basis of cyanobacterial outer membrane function and its evolutionary relationship with primitive chloroplasts, 博士論文,[オンライン], 2018.03.27,インターネット:<URL: http://hdl.handle.net/10097/00122689>)、及び、非特許文献2(児島征司, 葉緑体表層膜で機能する細菌由来の膜安定化機構と物質透過機構の解明と応用, 科研費, [オンライン], 2018.04.23,インターネット:<URL: https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02117>)には、結合関連タンパク質をコードする遺伝子slr1841又はslr0677遺伝子を欠損させると、細胞の増殖能力が失われることが記載されている。一方、本開示における改変シアノバクテリアは、結合関連タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制しているため、細胞の増殖能力が損なわれない。
シアノバクテリア(藍色細菌又は藍藻とも呼ばれる)は、真正細菌の一群であり、光合成により水を分解して酸素を産生し、得たエネルギーにより空気中のCOを固定する。シアノバクテリアは、種によっては、空気中の窒素(N)も固定できる。このように、シアノバクテリアは、菌体の生育に必要な原料(つまり、栄養分)及びエネルギーの大部分を、空気、水、及び、光から得ることができるため、安価な原料と簡便なプロセスとを用いてシアノバクテリアを培養することができる。
また、シアノバクテリアは、生育が早く光利用効率が高いことが知られており、さらに、その他の藻類種と比較して遺伝子操作が容易であるため、光合成微生物の中でもシアノバクテリアを利用した物質生産に関して活発な研究開発が行われている。しかしながら、遺伝子操作により所望の物質を産生するように改変されても、シアノバクテリアの細胞内で産生された物質は細胞外(つまり、菌体外)に分泌されにくいため、シアノバクテリアの細胞を破砕して細胞内で産生された物質を抽出する必要がある。
本発明者らは、シアノバクテリアの細胞壁を被覆する外膜を部分的に細胞壁から脱離させ、細胞の増殖能力を維持したまま菌体内酸性物質改変シアノバクテリアを遺伝子改変により得ることに成功した。そして、本発明者らは、当該改変シアノバクテリアの菌体内で産生された所望の化合物やタンパク質及び菌体内代謝産物が菌体外に分泌されやすくなることを見出している。また、上記の過程において、本発明者らは、改変シアノバクテリアの分泌物が複数の作物種に対し増収、及び、高品質化の効果を有することも発見した。
例えば、外膜と細胞壁との結合に関与するタンパク質は、SLH(Surface Layer Homology)ドメイン保持型外膜タンパク質、及び、細胞壁-ピルビン酸修飾酵素の少なくとも1つであってもよい。改変シアノバクテリアは、これらの少なくともいずれかのタンパク質をコードする遺伝子(当該遺伝子と塩基配列が50%以上同一である遺伝子も含む)を欠失又は不活化することにより製造される。
このように製造された改変シアノバクテリアは、細胞の増殖機能が損なわれることなく、外膜と細胞壁との結合(例えば、結合量及び結合力)が部分的に低減し、外膜が細胞壁から部分的に脱離しやすくなっている。そのため、シアノバクテリアの菌体内(言い換えると、細胞内)で産生された所望の化合物、タンパク質及び代謝産物(以下、菌体内産生物質ともいう)は、外膜の外、つまり、菌体外に漏出しやすくなる。このような改変シアノバクテリアは、菌体を破砕するなどの、菌体内産生物質の抽出操作が不要となるため、菌体内産生物質、ひいては、菌体内産生物質のうち植物の成長促進に関与する物質(いわゆる、植物成長促進物質)の生理活性及び収率の低下が起こりにくい。また、改変シアノバクテリアは、細胞の増殖機能が損なわれていないため、菌体外に分泌された菌体内産生物質(言い換えると、分泌物)を回収した後も、改変シアノバクテリアを繰り返し使用することが可能である。したがって、植物成長促進剤として改変シアノバクテリアの分泌物を植物に施用することにより、効果的に植物生産を増収させ、生産物を高品質化することが可能となる。
ここで、混合液30に含まれる水耕培養液と植物成長促進剤との比率について、図5を参照しながら説明する。図5は、混合液30に含まれる水耕培養液と植物成長促進剤(単に、促進剤ともいう)との比率と、各比率における固体培地10用の保水性の担体100の単位体積当たりの植物成長促進剤量を示す図である。混合液30に含まれる水耕培養液の量V[mL]、混合液30に含まれる植物成長促進剤の量V[mL]、固体培地10用の保水性の担体100a(以下、保水性の担体100a)の体積V[cm]とする。なお、保水性の担体100aの単位体積当たりの植物成長促進剤量については、ステップS22で説明する。
図5に示されるように、1~6の混合液を準備し、各混合液を用いて植物成長促進効果を検討したところ、混合液30に含まれる水耕培養液と植物成長促進剤との比率(V:V)は、45:5以上20:30以下であってもよい。これにより、上記比率の混合液30を植物に適用した場合に、例えば、植物の地上部重量(シュート重量ともいう)(湿重量)が10%程度増加されるといった植物成長促進効果が期待される。また、混合液30に含まれる水耕培養液と植物成長促進剤との比率(V:V)は、40:10以上30:20以下であってもよい。これにより、上記比率の混合液30を植物に適用した場合に、例えば、植物のシュート重量(湿重量)が20%以上増加されるといった植物成長促進効果が期待される。
ステップS21では、例えば、混合液30でトレイ20の底面が満遍なく覆うために、トレイ20の底面からトレイ20に投入された混合液30の液面までの高さが3mm以上5mm以下となる量の混合液30を準備してもよい。ここでは、トレイ20に3mm以上5mm以下となる混合液30の量を50mLとする。この場合、混合液30は、図5に示される水耕培養液と植物成長促進剤との比率(V:V)から、混合液30(50mL)は、水耕培養液(VmL)と植物成長促進剤(VmL)との和になる。例えば、混合液30(50mL)が図5に記載の混合液2である場合、混合液30は、45mLの水耕培養液と5mLの植物成長促進剤とを混合して調製される。
また、保水性の担体100aの単位体積当たりの植物成長促進剤量V/V(mL/cm)は、例えば、図1の(a)に示されるように、保水性の担体100aが4個×5個のセル1から構成されるとすると、セル1のサイズが縦2.3cm×横2.3cm×高さ2.8cmである場合、保水性の担体100aの体積V=2.3×2.3×2.8×4×5=296.24cm(以下、V=296cmとする)となる。このとき、50mLの混合液30(例えば、混合液30におけるV:Vが0:50である)をトレイ20に投入すると、保水性の担体100aの単位体積当たりの植物成長促進剤量V/V(mL/cm)は、50mL÷296cm=16.9×10-2mL≒17×10-2mL/cmとなる。そのため、保水性の担体100aの単位体積当たりの植物成長促進剤量V/V(mL/cm)は、図5に示されるように、混合液30におけるV:Vが45:5である場合、1.7×10-2mL/cmになり、V:Vが40:10である場合、3.4×10-2mL/cmになり、V:Vが30:20である場合、6.8×10-2mL/cmになり、V:Vが20:30である場合、10×10-2mL/cmになる。
また、植物成長促進剤量Vは、例えば、混合液30におけるV:Vが45:5である場合、保水性の担体100aの単位体積当たりの植物成長促進剤量(V/V)1.7×10-2mL/cmに保水性の担体100aの体積(V)296cmを乗算することにより算出される。
なお、上述の水耕培養液の比重と同様に、植物成長促進剤の比重は、主成分が水であるため、水と同等の比重(比重=1)として混合液30に含まれる植物成長促進剤量V(mL)を算出してもよい。
なお、上記の植物成長促進剤量は、あくまでも一例であり、これに限定されず、植物成長促進剤の種類、及び、植物の種類などに応じて、適宜決定されてもよい。
また、混合液30の調製において、水耕培養液と植物成長促進剤とを撹拌混合して混合液30中の植物成長促進剤の濃度を均一に調整するために、撹拌棒、マグネチックスターラー、又は、撹拌子を備える撹拌機を使用してもよく、設計に応じて適宜選択されてもよい。
続いて、ステップS22について図1の(b)を参照しながら説明する。図1の(b)は、栽培用トレイ(ここでは、トレイ20)への混合液30の投入工程の一例を示す模式図である。ステップS22では、ステップS21で準備された混合液30をトレイ20へ投入する。このとき、トレイ20に均一に広がるように(言い換えると、トレイ20に均一に広がる量の)混合液30がトレイ20内に注ぎ入れられる。例えば、作業者が混合液30の調製に使用した容器から直接トレイ20に所定量の混合液30を注ぎ入れてもよいし、当該容器から混合液30がポンプなどで送液されてトレイ20に投入されてもよい。混合液30トレイ20へ投入する方法は、上記の例に特に限定されず、作業環境及び作業状況に応じて適宜選択されてもよい。なお、上述したように、ステップS21とステップS22とは同時に行われてもよい。
例えば、トレイ20の底面に満遍なく(つまり、均一に)混合液30がいきわたる混合液30の量とは、トレイ20の底面が全て隠れる最小限であってもよい。均一になる量とは、トレイ20の内のりの体積(容積ともいう)を3mm以上5mm以下の範囲で満たす量であり、均一は、トレイ20の内のりの深さが3mm以上5mm以下満たされる状態をいう。例えば、トレイ20に投入される混合液30の液量は、トレイ20の底面からトレイ20に投入された混合液30の液面までの高さが、固体培地10の高さの1/10以上1/6以下となる量であってもよい。例えば、固体培地10の高さ(言い換えると、保水性の担体100a及びセル1の高さ)が約3cmである場合、トレイ20に投入される混合液30の量は、トレイ20の底面からトレイに投入された混合液30の液面までの高さが3mm以上5mm以下となる量であってもよい。
トレイ20は、固体培地10が載置される容器であり、平らな載置面(以下、底面ともいう)の縁が上がっている。トレイの内寸(縦×横×高さ)は、固体培地10の外寸(縦×横×高さ)と同等(より詳細には、固体培地10の外寸と比べて0mm~数mm程度小さい)であり、かつ、固体培地10をトレイ20内に隙間なく収めることができる大きさである。トレイ20は、例えば、底面が矩形のトレイであり、縁の高さは載置される固体培地10のサイズに応じて適宜設計されてもよい。
[ステップS3(トレイ内への固体培地の載置工程)]
続いて、図1の(c)を参照しながら、ステップS3のトレイ20への固体培地10の載置工程について説明する。図1の(c)は、トレイ20内への固体培地10の載置工程の一例を示す模式図である。
トレイ20内への固体培地10を載置する工程(ステップS3)では、ステップS1で準備された固体培地10を、ステップS2で準備された混合液30が入れられたトレイ20内に載置する。より具体的には、固体培地10の下面(-Z側の面)をトレイ20に入れられた混合液30の液面へ被せるようにしてトレイ20内に載置する(図1の(c)参照)。
トレイ20内に固体培地10を載置する方法は、トレイ20内の混合液30を溢れさせることがなければ特に限定されない。例えば、作業者が手で固体培地10を持ってトレイ20内に載置してもよく、作業者が固体培地10を把持する治具を用いてトレイ20内に載置してもよく、作業者に代わりロボットなどの機械が上記動作を行ってもよい。
また、上述のように、トレイ20の内寸は、固体培地10の外寸と同等であり、かつ、固体培地10をトレイ20内に隙間なく収めることができる大きさであるため、トレイ20内に固体培地10を収める(言い換えると、載置する)過程で、固体培地10とトレイ20との境界部分に気泡が噛み込む場合がある。その場合、固体培地10の上面(+Z側の面)をトレイ20の底面に向かって押圧することで、気泡を追い出してもよい。固体培地10の押圧は、作業者の手、治具、又は、ロボットなどの機械等によって行われてもよい。
[播種工程]
続いて、播種工程について図1の(d)及び図1の(e)を参照しながら説明する。図1の(d)は、播種工程の一例を示す模式図である。図1の(e)は、図1の(d)に示される播種後の栽培槽40のI-I断面図である。図2のフローチャートには示されていないが、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法は、ステップS3の後に、播種工程を含んでもよい。播種工程では、植物の種50は例えば、固体培地10上に等間隔で1粒ずつ静置される。より具体的には、図1の(d)に示されるように、植物の種50の全体又は一部が複数のセル1のそれぞれに設けられた切り込み12に収容されるように置かれる。これにより、図1の(e)に示されるように、植物の種50は、固体培地10上に等間隔で静置される。なお、播種工程では、植物の種類、品種、及び、種子の形状に応じて、切り込み12に2粒以上の種50を静置してもよいし、静置後に種50に水耕培養液又は水をかけてもよい。
[3.効果等]
以上説明したように、植物成長促進剤の施用方法は、水耕栽培における植物成長促進剤の施用方法であって、水耕培養液を含浸させた保水性の担体100aである固体培地10を準備し(ステップS1)、水耕培養液と植物の成長促進に関与する物質を含む植物成長促進剤との混合液30をトレイ20に投入し(ステップS2)、混合液30が投入されたトレイ20内に固体培地10を載置する(ステップS3)。
このような植物成長促進剤の施用方法は、水耕培養液を保持する固体培地10を、植物成長促進剤を含む混合液を入れたトレイ20に載置することにより、水耕栽培において藻類の増殖を抑制することができる。上述したように、藻類は、固体培地10が光源により露光される面(いわゆる、露光面)に発生しやすい。さらに、固体培地10に植物成長促進剤が含まれると、藻類の増殖が促進される。しかしながら、植物成長促進剤の施用方法では、栽培開始時には固体培地10の露光面に植物成長促進剤が含まれず、固体培地10の露光面よりも下部に植物成長促進剤が含まれる。そのため、固体培地10の露光面において藻類が植物成長促進剤の影響を受けにくくなり、藻類の増殖を抑制することができる。
また、例えば、混合液30が投入されたトレイ20内に固体培地10を載置すると同時に(言い換えると、栽培開始と同時に)固体培地10に植物の種50を播種した場合に、播種から発芽までの期間は、播種された種50の近傍の固体培地10には植物成長促進剤が含まれない。そして、発芽後の時間経過に伴って、植物の根が固体培地10の下面方向(-Z側)に伸長する現象と、植物成長促進剤が固体培地10の上面方向(+Z側)へ拡散輸送される現象とが同時に進行する。そして、子葉展開時には、植物の根の近傍の固体培地10に植物成長促進剤が十分に含まれるため、水耕栽培において、露光面における藻類の発生及び増殖を抑制しつつ、栽培される植物の成長を促進することができる。
以上のことから、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法によれば、水耕栽培において植物成長促進剤を施用した場合でも、植物成長促進剤を施用しない場合と同水準に固体培地10の露光面における藻類の発生及び増殖を抑制することができる。さらに、植物成長促進剤の施用方法によれば、発芽後の時間経過に伴って、固体培地10のうち植物の根が吸収できる範囲に植物成長促進剤が拡散輸送されるため、効果的に植物の成長を促進することができる。したがって、植物成長促進剤の施用方法によれば、水耕栽培において、植物生産が増進され、植物の収穫量を増加させるため、効率的に、かつ、安定的に植物を生産することができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法は、植物の種50を固体培地10に播いてから、種50から発芽した植物を少なくとも1回移植するまでの栽培工程(いわゆる、栽培初期工程、又は、発芽工程)において適用される。
これにより、栽培開始時には固体培地10の露光面に植物成長促進剤が含まれず、固体培地10の露光面よりも下部に植物成長促進剤が含まれる。より詳細には、固体培地10のうち混合液30と接する部分から混合液30が固体培地10内に徐々に(具体的には、栽培日数の経過とともに)浸透し、混合液30中の植物成長促進剤が固体培地10の上面(+Z側の面)に向かって拡散する。これにより、栽培初期工程において、固体培地10の露光面に植物成長促進剤が含まれない、及び、露光面おける植物成長促進剤の濃度が露光面以外の部位に含まれる植物成長促進剤の濃度と比べて低い期間が比較的長くなる。そのため、固体培地10の露光面において藻類が植物成長促進剤の影響を受けにくくなり、藻類の増殖を抑制することができる。したがって、種50を固体培地10に播いてから種50から発芽した植物を少なくとも1回移植するまでの栽培工程(いわゆる、栽培初期工程)において、藻類の増殖を抑制することができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法は、固体培地の準備において、保水性の担体100aの体積の60%以上80%以下の体積の水耕培養液を保水性の担体100aに含浸させ、混合液30のトレイ20への投入において、トレイ20の底面からトレイ20に投入された混合液30の液面までの高さが、固体培地10の高さの1/10以上1/6以下となる量の混合液30をトレイ20に投入する。
これにより、例えば、トレイ20内に固体培地10が載置されても、混合液30中の植物成長促進剤が固体培地10の下部から上部に向けて徐々に拡散輸送される。そのため、固体培地10の露光面における藻類の発生及び増殖を抑制することができると共に、植物の成長を効果的に促進することができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法では、混合液30に含まれる水耕培養液と植物成長促進剤との比率は、45:5以上20:30以下である。
これにより、植物の地上部重量(いわゆる、シュート重量)が増加されるため、効果的に植物の成長を促進することができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法では、混合液30に含まれる植物成長促進剤の量は、固体培地の単位体積当たり、1.7×10-2mL/cm以上10×10-2mL/cm以下である。
これにより、植物の地上部重量(いわゆる、シュート重量)が増加されるため、効果的に植物の成長を促進することができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法では、植物成長促進剤は、シアノバクテリアにおいて外膜と細胞壁との結合に関与するタンパク質の総量が、親株における当該タンパク質の総量の30%以上70%以下に抑制されている改変シアノバクテリアの分泌物である。
改変シアノバクテリアは、空気、水、及び、光を与えるだけで、安価に、かつ、簡便なプロセスで培養することができる。また、改変シアノバクテリアの菌体内で産生された植物成長促進物質が菌体外に分泌されるため、植物成長促進物質を含む分泌物を容易に回収することができる。また、分泌物を回収した後も改変シアノバクテリアを繰り返し培養することができるため、効率的にシアノバクテリアの分泌物を得ることができる。したがって、安価に、かつ、効率的に植物成長促進剤を得ることができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法では、植物は、フリルレタス、リーフレタス、ロメインレタス、結球レタス、ホウレンソウ、及び、ミズナからなる群から選択される少なくとも1種以上である。
このような植物成長促進剤の施用方法によれば、発芽から少なくとも1回目の移植までの栽培初期工程時に植物成長促進剤を施用するによって、例えば、移植後のフリルレタスの収穫量を増加させるため、効率的に、かつ、安定的に上記の植物を生産することができる。
また、例えば、植物成長促進剤の施用方法は、植物工場で実施される。
これにより、環境条件のコントロールが可能な植物工場で実施されるため、より効率的に、かつ、安定的に、植物を生産することができる。
(その他の実施の形態)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る植物成長促進剤の施用方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
以下、実施例にて本開示の植物成長促進剤の施用方法について具体的に説明するが、本開示は以下の実施例のみに何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法に基づいてフリルレタスの栽培試験を行なった結果を示している。以下では、植物成長促進剤として、改変シアノバクテリアの分泌物を使用した。栽培試験では、(1)植物成長促進剤の発芽工程における藻類増殖抑制効果及びフリルレタスに対する成長促進効果について、(2)植物成長促進剤の添加量とフリルレタスの重量との関係性について、(3)植物成長促進剤のフリルレタスに対する成長促進効果及び増収効果について、検証した。なお、発芽工程は、発芽から1回目の移植までの栽培工程をいう。
(1)植物成長促進剤の発芽工程における藻類増殖抑制効果及び栽培株に対する成長促進効果について
(実施例1)
まず、実施例1について説明する。実施例1では、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法に基づいて、混合液における水耕培養液と植物成長促進剤との比率が30:20である混合液を使用して本開示の効果を検証した。
[固体培地の準備工程]
まず、保水性の担体を準備する。保水性の担体として、縦2.3cm×横2.3cm×高さ2.8cmサイズのセルが平面状に連結された、ポリウレタン製のウレタンスポンジ製品(株式会社エム式水耕研究所製)を用いた。各セルの上面には、種を播種するための窪みが形成されている。当該保水性の担体を、4個×5個のセル(合計20セル、合計体積296cm)の大きさに切り分けて、保水性の担体(以下、単に担体ともいう)を準備した。
次に、4個×5個サイズの保水性の担体の洗浄を行なった。洗浄は、容量6Lのバケツ内に満たされた水道水へ上記の担体を投入し、水中で手作業にて担体の圧縮を繰り返した。担体から抜け出る気泡を目視で確認できなくなるまで圧縮を繰り返した後、水中から担体を取り出した。そして、担体から抜ける水道水が目視で確認できなくなるまで、十分に水気を絞った。
次に、担体を水耕培養液に浸漬し、担体に水耕培養液を含浸させた。水耕培養液は、市販の水耕栽培向け化学肥料の原液を、電気伝導率1.0d/Sになるように水道水で希釈調整した。そして、水耕培養液を入れた容量6Lのバケツを用意した。
次に、バケツ内の水耕培養液へ担体を投入し、水耕培養液中で手作業にて担体の圧縮を繰り返した。担体から抜け出る気泡が目視で確認できなくなるまで圧縮を繰り返した。これにより、水耕培養液を含浸させた保水性の担体である固体培地を準備した。固体培地は、後の工程で使用するまで水耕培養液中に保管された。
[トレイへの混合液の投入工程]
まず、水耕培養液と植物成長促進剤との混合液を準備する。混合液がトレイの底面に満遍なくいきわたる量を検討した結果、トレイの底面少なくともトレイの底面から液面まで3mm~5mm程度の液量が適切であることを見出した。本実施例で使用したトレイでは、40mL~60mL程度の液量でトレイの底面に混合液を満遍なくいきわたらせることができるため、本実施例では、50mLの混合液を準備した。担体の単位体積当たりの混合液量は、混合液量50mLを担体の体積296cmで除算すると、1.7×10-2mL/cmとなる。また、本実施例では、混合液における水耕培養液と植物成長促進剤との比率を30:20としたため、混合液50mL中に含まれる植物成長促進剤の量は、20mLであった。混合液の調製は、30mLの水耕培養液が入った容器へ20mLの植物成長促進剤を添加し、撹拌棒を用いて均一に混合することにより行った。固体培地の担体の単位体積当たりの植物成長促進剤の量は、混合液中の植物成長促進剤量20mLを固体培地の担体の体積296cmで除算すると、6.8×10-2mL/cmとなる。
次に、混合液50mLをトレイ(内寸:縦12cm×横10cm×高さ3cm、樹脂製の容器)に投入した。
[トレイ内への固体培地の載置工程]
続いて、固体培地をトレイ内に載置する手順を説明する。固体培地の準備工程で水耕培養液中に保管された固体培地を取り出し、すみやかにトレイ内に載置した。このとき、固体培地とトレイとの間に挟み込まれた空気(言い換えると、噛み込まれた気泡)を除くために、固体培地の上面を手で軽く押圧した。
[播種工程]
続いて、固体培地上にフリルレタスの種を播種する手順を説明する。固体培地の各セルの窪みに1粒ずつフリルアイス(雪印種苗製)のコート種子を静置し、フリルレタスの種を播種した。そして、播種された固体培地をトレイごと発芽工程用栽培装置へ移動させて、栽培を開始した。
[栽培工程]
続いて、栽培工程について説明する。ここでは、栽培工程は、発芽から1回目の移植までの栽培初期工程(いわゆる、発芽工程)である。播種工程でフリルレタスの種を播種された固体培地は、発芽工程用栽培装置内で、播種直後からLEDを光源とする光を1日16時間照射された。本工程における環境条件は、固体培地の表面の光量子束密度:330μmоL/m・s、温度:22±1℃、及び、湿度:70±10%が維持されるように管理された。栽培期間は、7日間であった。
[評価]
栽培7日後に発芽工程用栽培装置からトレイを取り出し、栽培株のシュート部(いわゆる、地上部)の重量及び藻類の増殖の程度を評価した。なお、発芽しなかった株を評価の対象から外した。
シュート部の重量は、栽培株の茎の最下部を切り取って廃棄し、残りの部分を電子天秤に載せて重量を測定した。評価対象のすべての株のシュート部の重量を測定し、平均値を取ることで、1株当たりのシュート平均重量(mg/株)を算出した。
藻類の増殖の程度は、目視にて藻類が発生した固体培地のセル数を数え、固体培地のすべてのセル数(20個のセル)に対する藻類が発生したセル数の割合を百分率(%)で示した。
評価結果を図6に示す。図6は、実施例1、比較例1及び比較例2の結果を示す図である。実施例1では、1株当たりのシュート平均重量は、82.3mg/株であった。藻類の増殖の程度については、固体培地(20個のセル)のうち8個のセルに藻類の発生が確認され、固体培地のすべてのセル数に対する藻類が発生したセル数の割合は、40%であった。
(比較例1)
続いて、比較例1について説明する。比較例1では、混合液の代わりに水耕培養液50mLをトレイに投入した点で、実施例1と異なる。つまり、比較例1では、トレイへの混合液の投入工程以外の工程は、実施例1と同様に行った。
[トレイへの混合液の投入工程]
比較例1では、混合液の代わりに水耕培養液を使用した。具体的には、水耕培養液50mLをトレイに投入した。
[評価]
比較例1の栽培7日後の栽培株のシュート部の重量及び藻類の増殖の程度の評価結果を図6に示す。比較例1では、1株当たりのシュート平均重量は、64.0mg/株であり、実施例1よりも20%近く低かった。藻類の増殖の程度については、実施例1と同じ結果であった。具体的には、固体培地(20個のセル)のうち8個のセルに藻類の発生が確認され、固体培地のすべてのセル数に対する藻類が発生したセル数の割合は、40%であった。
(比較例2)
続いて、比較例2について説明する。比較例2では、固体培地の準備工程において、保水性の担体に混合液(水耕培養液:植物成長促進剤=30:20)を含浸させる点で、実施例1と異なる。つまり、固体培地の準備工程以外の工程は、実施例1と同様に行った。
[固体培地の準備工程]
(i)洗浄後の担体を、予め調製された混合液に浸漬し、担体に混合液を含浸させた点、(ii)バケツ内の混合液へ担体を投入し、混合液中で手作業にて担体の圧縮を繰り返した点、及び、(iii)固体培地が後の工程で使用するまで混合液中に保管された点以外は、実施例1と同様に行われた。
上記(i)について具体的に説明する。比較例2では、水耕培養液は、実施例1と同様に調製された。そして、3Lの水耕培養液が入った容量6Lのバケツ内に植物成長促進剤を240mL添加し、撹拌棒を用いて均一に混合することにより、混合液を調製した。なお、上記(ii)及び(iii)では、それぞれ、上記(i)と同様に調製された混合液が使用された。
[評価]
比較例2の栽培7日後の栽培株のシュート部の重量及び藻類の増殖の程度の評価結果を図6に示す。比較例2では、1株当たりのシュート平均重量は、81.7mg/株であり、実施例1とほぼ同等の成長促進効果が見られた。藻類の増殖の程度については、固体培地の全てのセル(20個)に藻類の発生が確認された。
比較例2では、藻類が発生しただけではなく、藻類の成長が促進されていた。例えば、図6に示される固体培地の外観を映した写真から、比較例2の固体培地の表面(露光面)が実施例1及び比較例1と比べて濃い緑色に変色していることが分かる。比較例2では、実施例1及び比較例1における藻類の生え方と明らかに異なっており、固体培地に含まれる植物成長促進剤によって藻類の成長も促進されたことが確認された。
(考察)
実施例1及び比較例2のように植物成長促進剤を施用すると、比較例1のように植物成長促進剤を施用しない場合に比べて、シュート重量が約15mg以上増加していた。これにより、植物成長促進剤として改変シアノバクテリアの分泌物を用いると、植物の成長が促進されることが確認された。
また、実施例1及び比較例2の結果を比較すると、実施例1では、外観上においても、藻類が増殖したセルの割合においても、比較例2と同水準で藻類の増殖を抑制している。栽培開始直後は、固体培地は植物成長促進剤を含んでおらず、栽培日数の経過と共に徐々に固体培地の上方に向かって混合液中の植物成長促進剤が拡散輸送されるため、固体培地の露光面(より詳細には、光源に露出した部位)において、植物成長促進剤の濃度が高い状態で維持されている期間が短かったためであると考えられる。言い換えると、実施例1及び比較例2の結果から、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法によれば、栽培初期工程において、トレイに入れられた混合液中の植物成長促進剤が固体培地の上面に向かって徐々に拡散輸送されて、植物の根が伸びる頃に植物成長促進剤が固体培地の上方に含まれることが確認された。このことは、実施例1及び比較例2において、1株当たりのシュート平均重量に殆ど差が見られないこと、及び、藻類の増殖に顕著な差が見られることによって裏付けられると考えられる。
また、実施例1では、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法を水耕栽培における栽培初期工程に適用すると、固体培地上の藻類の増殖を、植物成長促進剤を施用していない場合と同水準に抑えた上で、植物成長促進剤による植物成長促進効果を得る事ができることが示された。したがって、本開示によれば、水耕栽培において、効率的に、かつ、安定的に植物を生産することができることが確認された。
(2)植物成長促進剤の添加量とフリルレタスの重量との関係性について
続いて、植物成長促進剤の添加量と、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法を適用して栽培されたフリルレタスの重量との関係性について説明する。
(実験例1~実験例6)
実験例1~実験例6では、トレイへの混合液の投入工程において、実施例1の混合液を図5に示される混合液1~6に置き換えた点以外は、実施例1と同様に行った。
以下では、植物成長促進剤の添加量は、図5に示される混合液1~6の50mLに含まれる植物成長促進剤量である。より具体的は、実験例1では、図5に示される「混合液1」を使用し、実験例2では、図5に示される「混合液2」を使用し、実験例3では、図5に示される「混合液3」を使用し、実験例4では、図5に示される「混合液4」を使用し、実験例5では、図5に示される「混合液5」を使用し、実験例6では、図5に示される「混合液6」を使用した。そして、実施例1と同様に播種及び栽培し、実験例1~実験例6で栽培されたフリルレタスの1株当たりのシュート平均重量(mg/株)を算出した。結果を図7に示す。図7は、実験例1~実験例6の結果を示す図である。
図7に示されるように、実験例2~実験例5の1株当たりのシュート平均重量が実験例1及び実験例6に比べて10mg/株~20mg/株程度大きかった。特に、実験例3及び実験例4では、フリルレタスに顕著な成長促進効果が見られた。しかしながら、実験例4及び実験例5の結果から、水耕培養液に対する植物成長促進剤の比率が高くなると、植物成長促進効果が低下することが確認された。
具体的には、実験例2~実験例4の結果から、植物成長促進剤(ここでは、改変シアノバクテリアの分泌物)が水耕培養液よりも少ない量で添加されている場合に、植物成長促進剤の添加量の増加に伴いフリルレタスのシュート重量が増加していることが確認された。特に、実験例4は、フリルレタスのシュート重量が最も大きく、植物成長促進効果が最も高かった。一方、実験例5では、実験例2と同水準のシュート重量にまで低下した。このことから、一定以上の植物成長促進剤を施用すると、植物成長促進効果が低下することが確認された。さらに、実験例6では、シュート重量が植物成長促進剤を含まない水耕培養液のみで栽培されたフリルレタス(実験例1)と同水準にまで低下したため、植物成長促進剤の添加量が多すぎると、逆に植物成長促進効果が得られなくなることが確認された。
なお、植物の成長を促進する化合物(いわゆる、植物成長促進物質又は植物成長促進剤)は、植物に施用する濃度が高すぎると逆効果になる(つまり、植物成長促進効果が見られなくなる)という事例が知られている。このような事例について特定のメカニズムを示すことはできないが、植物成長促進剤の施用にあたって最適濃度があることは十分に考えられる。
実験例1~実験例6の結果から、植物成長促進剤として改変シアノバクテリアの分泌物を使用した場合、担体の体積(言い換えると、固体培地の体積)に対して、1.7×10-2倍量~10×10-2倍量の植物成長促進剤を添加することで、栽培株(ここでは、フリルレタス)のシュート重量を10%以上増加させる植物成長促進効果が期待されることが確認された。特に、担体の体積(言い換えると、固体培地の体積)に対して、3.4×10-2倍量~6.8×10-2倍量の植物成長促進剤を添加することで、栽培株のシュート重量を20%以上増加させる植物成長促進効果が期待できることが確認された。
(3)植物成長促進剤のフリルレタスに対する成長促進効果及び増収効果について
続いて、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法を適用してフリルレタスを栽培した場合の、フリルレタスに対する植物成長促進効果及び増収効果について説明する。より具体的には、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法をフリルレタスの栽培初期工程に適用した場合に、移植後の栽培日数の経過に伴うフリルレタスの重量を測定することにより、本開示の植物成長促進効果及び増収効果を検証した。
(実施例2)
実施例2では、固体培地の準備工程~栽培工程(播種から7日間栽培)において、固体培地のセル数、トレイの内寸、使用される水耕培養液量、及び、混合液量以外は、実施例1と同様に行った。さらに、実施例2では、実施例1の栽培工程(播種から7日間栽培)の後、定植プレートに移植して栽培した(以下、移植後の栽培工程という)点で実施例1と異なる。以下、実施例1と異なる点について説明する。
固体培地の準備工程では、保水性の担体は25個×12個のセル(合計300セル、合計体積4444cm)の大きさに切り分けられた。
トレイへの混合液の投入工程では、混合液750mLをトレイ(内寸:縦28cm×横58cm×高さ26cm、発泡スチロール製の容器(株式会社エム式水耕研究所製)に投入した。混合液は、実施例1と同様に、水耕培養液と植物成長促進剤との比率が30:20となるように調製された。
[移植後の栽培工程]
続いて、移植後の栽培工程について説明する。実施例2では、実施例1と同様に播種から7日間栽培する栽培工程を行った後、発芽不良の株を除いた株のうち任意の47株を、水耕栽培用の定植プレートに移植した。そして、定植プレートごと人工気象器へ移動させて、移植後の栽培を開始した。
より具体的には、定植プレートは、縦60cm×横60cm×厚み3cmの板状の発泡スチロール製の定植プレートである。定植プレート上に均等に配置された定植孔に、任意の47株を固体培地のセルごと植え込んだ後、定植プレートを人工気象器内の水耕培養液に浮かべて、栽培を開始した。
人工気象器の内部は、温湿度及びCO濃度が制御されており、底面に水耕培養液プール、天井部にLED光源が設けられている。水耕培養液プール上に定植プレートを浮かせる形で設置することで、栽培物の地上部が光源に露出し、地下部が水耕培養液に浸る構成になっている。
環境条件は、光量子束密度:280μmоL/m・s、光の照射時間:16時間/日、温度:20±1℃、湿度:70±10%、及び、CO濃度:1000±100ppmが維持されるように管理された。水耕培養液は、数日おきに、電気伝導率2.0d/S、及び、pH6.0になるように調整された。栽培期間は、24日間であった。具体的には、栽培16日後に全株の新鮮重量(いわゆる、湿重量)を測定し、平均±標準偏差の範囲内の任意の16株を残して間引いた後、残った16株をさらに8日間栽培することで、合計24日間栽培を行なった。
[評価]
フリルレタスの収穫量の評価は、移植後14日目及び24日目に1株ずつ重量(湿重量)を測定し、1株当たりの重量(言い換えると、1株当たりの平均重量)を算出することで行なった。評価結果を図8に示す。図8は、実施例2及び比較例3の結果を示す図である。
上述したように、実施例2は、実施例1と同様に発芽工程で植物成長促進剤を施用した。図8に示されるように、実施例2では、1株あたりの平均重量が移植14日目で19.2g/株であり、移植後24日目では、89.2g/株であった。
(比較例3)
続いて、比較例3について説明する。比較例3では、混合液の代わりに水耕培養液を使用する点で、実施例2と異なる。つまり、比較例3は、固体培地の準備から栽培工程(播種から7日間栽培)までの工程が比較例1と同様に行われ、移植後の栽培工程及び評価が実施例2と同様に行われた。
[評価]
比較例3の評価結果を図8に示す。図8に示されるように、比較例2では、1株当たりの平均重量が移植後14日目で17.3g/株であり、移植後24日目では、77.6g/株であった。
(考察)
実施例2及び比較例3の結果から、実施例2で栽培されたフリルレタスは、1株当たりの平均重量(以下、単に株重量という)が比較例3のフリルレタスよりも有意に増加していた。具体的には、実施例2のフリルレタスの株重量は、移植後14日目で比較例3のフリルレタスの株重量より11%大きく、移植後24日目では比較例3のフリルレタスの株重量より15%大きかった。これにより、実施例2では、比較例3よりも株重量が有意に増加し(studentのt検定による検定)、収穫量が増加した。つまり、実施例2では、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法を栽培初期工程(いわゆる、発芽工程)で適用することにより、栽培株の増収効果が得られることが確認された。
この結果は、発芽から子葉展開、さらに、本葉展開までの期間(つまり、栽培初期工程)において、植物成長促進剤として改変シアノバクテリアの分泌物を施用されて成長が促進された株は、移植後の栽培工程において、植物成長促進剤を施用されなくても成長が促進されることを示している。このような減少について、現段階で、特定のメカニズムを示すことはできないが、発芽工程において、改変シアノバクテリアの分泌物を植物成長促進剤として施用すると、成長速度が速い“優良株”を得ることができることが確認された。
以上のことから、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法において、栽培初期工程において、植物成長促進剤として改変シアノバクテリアの分泌物を使用することで、栽培初期工程に限らず、移植後の栽培工程においてもフリルレタスの成長が促進され、収穫量が増加することが確認された。したがって、本開示に係る植物成長促進剤の施用方法によれば、水耕栽培において、効率的に、かつ、安定的に植物を栽培することができることが確認された。
本開示に係る植物成長促進剤の施用方法によれば、水耕栽培の発芽工程において、植物成長促進剤を施用した場合でも、植物成長促進剤を施用しない場合と同水準で、固体培地の表面に発生する藻類の発生及び増殖を抑制することができる。さらに、植物成長促進剤が使用されない、発芽工程以降の工程においても、植物の成長が促進され、効果的に植物の生産を増進させることができる。したがって、農業産業(特に、環境条件が制御される植物工場)において、植物の収穫量を増加させることができる。
1 セル
10 固体培地
12 切り込み
20 トレイ
30 混合液
40 栽培槽
50 種
100、100a 保水性の担体

Claims (5)

  1. 水耕栽培における植物成長促進剤の施用方法であって、
    水耕培養液を含浸させた保水性の担体である固体培地を準備し、
    水耕培養液と植物の成長促進に関与する物質を含む植物成長促進剤との混合液をトレイに投入し、
    前記混合液が投入された前記トレイ内に前記固体培地を載置し、
    前記植物の種を前記固体培地に播いた後、前記植物の種の発芽前であって1回目の移植をするまでに前記植物成長促進剤が適用される、
    植物成長促進剤の施用方法。
  2. 前記固体培地の準備において、前記保水性の担体の体積の60%以上80%以下の体積の前記水耕培養液を前記保水性の担体に含浸させ、
    前記混合液の前記トレイへの投入において、前記トレイの底面から前記トレイに投入された前記混合液の液面までの高さが、前記固体培地の高さの1/10以上1/6以下となる量の前記混合液を前記トレイに投入する、
    請求項1に記載の植物成長促進剤の施用方法。
  3. 前記植物成長促進剤は、シアノバクテリアにおいて外膜と細胞壁との結合に関与するタンパク質の総量が、親株における当該タンパク質の総量の30%以上70%以下に抑制されている改変シアノバクテリアの分泌物である、
    請求項1または2に記載の植物成長促進剤の施用方法。
  4. 前記植物は、フリルレタス、リーフレタス、ロメインレタス、結球レタス、ホウレンソウ、及び、ミズナからなる群から選択される少なくとも1種以上である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の植物成長促進剤の施用方法。
  5. 前記植物成長促進剤の施用方法は、植物工場で実施される、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の植物成長促進剤の施用方法。
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