JP7711065B2 - 多層エレクトロスパン心臓弁尖 - Google Patents

多層エレクトロスパン心臓弁尖

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Description

本発明は、心臓弁尖(leaflet)の組織工学に関する。
心臓弁は、血液が心臓血管系を通じて送り出されている間、拍動ごとに大きなストレスを受ける。これらの拍動ごとに受けるストレスに加えて、心臓弁はまた、なるべく一生持続するような高い耐久性を必要とする。
補綴(prosthetic)心臓弁または人工(engineered)心臓弁は、天然の心臓弁に障害または損傷が生じた場合に、天然の心臓弁に置き換わるものである。これらの補綴/人工心臓弁は単層の心臓弁であり、通常は化学的に安定化した生体組織(例えば、心膜)から作製されるが、年月の経過に伴い重度に石灰化する傾向がある。その結果として、弁尖の可動性や耐久性について制限を受けてしまうため、限界がある。
補綴/人工心臓弁には、内因性組織修復(ETR)を可能にするための材料が用いられるものもある。この心臓弁の材料は、多孔性及び生体吸収性を有するため、細胞及び栄養素が孔に内殖する(ingrowth)ことにより、心臓弁が天然の組織に吸収されて、置き換わることが可能となる。一方、このようなETR型心臓弁は長期的なものではないため、心臓弁の耐久性にはさらなる制限が生じる恐れがある。
本発明は、単層の補綴/人工心臓弁の耐久性や可動性、及び/または弁尖の擦り切れ(fray)に起因する問題、並びに、ETRをも所望する心臓弁に起因する問題に対処するものである。
本発明は、一実施形態において、心臓弁の1以上の弁尖として加工された医療用インプラントを提供する。弁尖は2つのエレクトロスパン層を有し、2つのエレクトロスパン層(エレクトロスピニングされることにより製造されるエレクトロスパンファイバの層)の縁部のみが互いに結合されているため、弁尖の一方の層における他方の層に結合していない部分が他方の層に対して動くことを可能にするように構成されている。弁尖は多孔性及び生体吸収性を有するため、細胞や栄養素が孔に内殖すること(ETR)により、弁尖が天然組織に吸収されて、置き換わることが可能である。
他の実施形態では、本発明は、心臓弁の弁尖として加工された医療用インプラントを提供する。ここでは、心臓弁は基部と自由縁とを画定する。弁尖は、単一のエレクトロスパン層(エレクトロスピニングされることにより製造されるエレクトロスパンファイバの層)を折り畳むことにより、心臓弁の自由縁が弁尖の折り畳まれた縁部となるような二層設計となっている。エレクトロスパン層の折り畳まれていない縁部のみが心臓弁の基部に結合され、かつ組み込まれることにより、弁尖の一方の層が他方の層に対して最大限に独立して動くことを可能にするように構成されている。第1の実施形態のように、弁尖は、多孔性及び生体吸収性を有していてもよく、細胞及び栄養素の孔への内殖(ETR)により、弁尖が天然組織に吸収されて、置き換わることが可能となる。
二層設計により、弁尖の可動性が大幅に向上するが、従来の単層設計のものと比べて、耐久性が低下することはない。さらに、折り畳まれた二層設計では、擦り切れのリスクも大幅に低減した。
さらに他の実施形態では、本発明は、心臓弁の弁尖として加工された医療用インプラントを提供する。ここでは、2つのエレクトロスパン層の間に中間層を備える。一例では、中間層は、2つのエレクトロスパン層から独立して動くことを可能とする状態であってもよく、他の例では、中間層は、2つのエレクトロスパン層に接着されていてもよい。
さらに他の実施形態では、本発明は、心臓弁の弁尖として加工された医療用インプラントを提供する。ここでは、中間層は二層設計の層間に設けられている。一例では、中間層は、二層設計の層から独立して動くことが可能であってもよく、他の例では、中間層は、二層設計の層に接着されてもよい。
中間層は次のように様々であってもよい。(i)多孔性及び生体吸収性を有するため、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、中間層が天然組織に吸収されて、置き換わることを可能とする。(ii)多孔性及び生体吸収性を有するエレクトロスパン層(エレクトロスピニングされることにより製造されるエレクトロスパンファイバの層)の中間層は、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、該中間層が天然組織に吸収されて、置き換わることを可能とする。または、(iii)生体吸収性を有しないが、細胞及び栄養素が孔に内殖するために、天然組織に浸透することを可能とする。
中間層及び2つのエレクトロスパン層は、同一の材料または異なる材料によりエレクトロスピニングされる。他の実施形態では、2つのエレクトロスパン層は、それぞれ同一の材料または異なる材料によりエレクトロスピニングされる。同様に、中間層及び二層の設計は、同一の材料または異なる材料によりエレクトロスピニングされる。
また、三層設計では、従来の単層設計と比較して、耐久性を低下させることなく、弁尖の可動性を大幅に向上させる。さらに、この三層設計に用いた折り畳まれた二層設計も、擦り切れのリスクを大幅に低下させた。
さらに他の実施形態では、本発明は、心臓弁の弁尖として加工された医療用インプラントを提供する。ここでは、弁尖は2つのエレクトロスパン外層及び中間層を有し、それにより、中間層は2つの外層の間でラミネートされ、2つのエレクトロスパン外層から独立して動くことができないようになっている。中間層は次のように様々であってもよい。(i)多孔性及び生体吸収性を有するため、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、中間層が天然組織に吸収されて、置き換わることを可能とする。(ii)多孔性及び生体吸収性を有するエレクトロスパン層であって、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、中間層が天然組織に吸収されて、置き換わることを可能とする。または、(iii)生体吸収性を有しないが、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、天然の組織に浸透することを可能とする。中間層及び2つのエレクトロスパン層は、同一の材料または異なる材料によりエレクトロスピニングされる。また、2つのエレクトロスパン層のそれぞれは、同一の材料または異なる材料によりエレクトロスピニングされる。
本発明の例示的な実施形態に係る、円筒形の金属マンドレル110に配置されたエレクトロスパンファイバ120を示す図である。 本発明の例示的な実施形態に係る、エレクトロスパンファイバ120であって、円筒形の金属マンドレル110に配置されているものの、現在は図3に示すようなカットパターンに従ってレーザカットされたエレクトロスパンファイバ120を示す図である。湾曲した縁部210は心臓弁基部を指し、(図6も参照されたい)、ひし形の形状220は心臓弁の交連の形状を指す(図6も参照されたい)。 本発明の例示的な実施形態に係る、円筒形の金属マンドレル110に配置されているエレクトロスパンファイバ120をレーザカットするためのレーザカットパターン300を示す図である(これは3次元形状を2次元化した表現であることに留意されたい)。 本発明の例示的な実施形態に係る、円筒形金属マンドレルから取り外されたレーザカットしたエレクトロスパン心臓弁の形状400を示す図である(図4の形状は、図1~2に対して90度回転していることに留意されたい)。この形状400は、次いで、図5に示すように、線510に沿ってひし形の形状220を横切って折り畳まれる。 本発明の例示的な実施形態に係る、図4の形状400が折り畳まれる折り線510を示す図である(これは3次元形状を2次元化した表現であることに留意されたい)。折り線は、折り畳まれると、図6に示すように、心臓弁の形状の自由縁610となる。 本発明の例示的な実施形態に係る、折り畳まれた心臓弁の形状600を示す図である(これは、3次元形状を2次元化した表現であることに留意されたい)。湾曲した縁部210は心臓弁基部620となり(図2も参照されたい)、ひし形の形状220は心臓弁のV字形の交連630になる(図2も参照されたい)。 本発明の例示的な実施形態に係る、折り畳まれた自由縁610及び心臓弁基部620を備えた折り畳まれた心臓弁の形状600の断面図である。これは、折り線510(図5~6)で折り畳まれ、折り目が自由縁610となったエレクトロスパンファイバの二層であることに注意されたい。他の実施形態では、心臓弁の弁尖は、独立した2つのエレクトロスパン層を有するように加工されてもよく、次いで、(自由折り畳み縁を指すものと同様の)2つのエレクトロスパン層の縁部にのみ結合/接着されることにより、弁尖内で、一方の層が他方の層に対して最大限に独立して動くことを可能にする。中間層を有する第3の設計に関して、当業者が容易に理解できるように、中間層は折り畳まれた層の間に配置される(図12も参照されたい)。 本発明の例示的な実施形態に係る、心臓弁フレームに本心臓弁を縫合、接着、ステッチング、または一般的に接着する前の、図1~7に示すステップから生じる、エレクトロスピニングされた折り畳まれた心臓弁800の3次元図である。 本発明の例示的な実施形態に係る、符号800と同様のエレクトロスピニングされた折り畳まれた心臓弁を心臓弁基部910に組み付けたアセンブリ900を示す図である。 本発明の例示的な実施形態に係る、本明細書で提供される方法ステップによって製造され、流体力学試験中に高速度カメラを介してキャプチャされた心臓弁アセンブリのプロトタイプの完全な閉状態及び開状態を示す図である。 本発明の例示的な実施形態に係る、試験を行ったエレクトロスパン層の厚み及び心臓弁尖の形状を示す図である(表1~2も参照されたい)。 本発明の例示的な実施形態に係る、試験を行ったエレクトロスパン層の厚み及び心臓弁尖の形状を示す図である(表1~2も参照されたい)。 (左)大動脈弁の手術において用いられる三尖弁(tri-leaflet)の上面図、並びに、(右)弁尖の断面図であり、ここで、(A)は内層(材料として記載されたポリマー)、(B)は中間層(PET織シート)、(C)は外層(材料として記載されたポリマー)、及び、(D)は折り畳まれた弁尖の自由縁を示す。 中間層の織物構造の例を示す図である。下部の画像は、中間の耐久性を有する層の実施形態であって、正方形の孔を有するようなメッシュ状にレーザカットされたポリエチレンテレフタレート(PET)織シートを示す。上の画像は、走査型電子顕微鏡(SEM)によりPET微細構造を拡大した様子を示す(上)。PET耐久メッシュを中間層として使用し、内外のXPポリマー層間で慢性的なリモデリングを可能にするための専用孔を設けた。
本発明の実施形態は、当技術分野を進歩させ、心臓弁の弁尖に多層構造を導入することにより、耐久性や可動性、引き裂き、及び/または擦り切れ等の問題を克服することを可能にする。二層(dual-layer)の第1の設計は、二層(bi-layer)構造を形成する折り畳み構造を有するものであり、二層の第2の設計は、2つの独立したエレクトロスパン層の自由縁を互いに接着することにより、二層構造を形成するものである。第3の設計は、二層設計の2つの層の間に1つの層を配置するものである。
各設計において、心臓弁の二層弁尖は、好ましくは、柔軟性及び可動性を向上及び確保するために、層間の最大限の動きを可能にする2つのエレクトロスパン層により画定されるとよい。一実施形態では、二層弁尖設計の各層は、同一の材料、例えば、追って記載する材料から製造されてもよい。他の実施形態では、二層弁尖設計の各層は、異なる材料から製造されてもよい。後者は主に、自由縁が互いに接着される2つの独立したエレクトロスパン層に適している。
二層弁尖設計の背後にあるのは、設計構造の中で独立して動く2つの個別の層は、全体の厚さが同じである場合には、単層の弁尖よりも柔軟性があるという考え方である。二層弁尖設計で組み合わされた2つの層の合計の厚さは、200~500μm、好ましくは、300~400μmであるように構成される。
第2の設計では、2つの層が互いに最大限に独立して動くことを可能にするように、表面全体が互いに接着されないことが好ましい。その効果を得るために、2つの層は心臓弁尖の全体の高さの約10~15%に相当する縁部において互いに接着または連結される。これは、接着、熱溶接、または縁部のステッチング(または同等の方法)により達成されてもよい。上述したように、第1の設計では、シートを折り畳んで、折り目がない方の縁部のみを接着することでコンセプトが達成されるため、表面全体を接着する必要はない。2つの層が最大限に可動することにより、曲げ時の柔軟性が向上する。この柔軟性により、可動性が向上し、圧力勾配が小さくなる。
第1の設計に目を向けると、ファイバは、円筒形の金属マンドレル110においてエレクトロスピニングされることにより、エレクトロスパンファイバ120を作製する(図1)。本明細書の最後に、有用なファイバのリストを記載している。次いで、エレクトロスパンファイバ120が、円筒形の金属マンドレル110上に配置されているときに、レーザカットパターン300に従ってレーザカットされる(図2~図3)。湾曲した縁部210は心臓弁基部を指し(図6も参照されたい)、ひし形の形状220は心臓弁の交連の形状を示す(図6も参照されたい)。レーザカットされると、エレクトロスピニングされた心臓弁の形状400が円筒形の金属マンドレルから取り外される。次いで、形状400は、線510に沿ってひし形の形状220を横切って折り畳まれる(図5)。一例では、約3つの波形と約3つのひし形にカットされる。
図5は、本発明の例示的な実施形態に係る、図4の形状400が折り畳まれる折り線510を示す(これは3次元形状を2次元化した表現であることに留意されたい)。折り畳まれると、折り線は心臓弁の形状において、自由縁610になる(図6)。折り畳まれると、湾曲した縁部210は心臓弁基部620になり(図2も参照されたい)、ひし形の形状220は心臓弁のV字形の交連630になる(図2も参照されたい)。図7は、折り畳まれた自由縁610及び心臓弁基部620を備えた折り畳まれた心臓弁の形状600の断面図を示している。これは、折り線510(図5~図6)で折り畳まれ、折り目が自由縁610になったエレクトロスパンファイバの2つの層であることに留意されたい。上述したように、他の設計及び第2の設計では、心臓弁の弁尖は、次いで、縁部(自由縁を指すものと同様)のみが互いに結合され/接着された独立した2つのエレクトロスパン層を用いて加工されてもよく、エレクトロスパン層は、弁尖の一方の層が他方の層に対して最大限に独立して動くことが可能になる。図8は、エレクトロスピニングされた後、折り畳まれた心臓弁800であって、心臓弁を心臓弁フレームに縫合、接着、ステッチング、または、一般的に接着する前に得られるものを示す。図9は、符号800と同様に、エレクトロスピニングされた後に折り畳まれた心臓弁を、心臓弁基部910に組み付けたアセンブリ900の画像を示す。
二層弁尖(第1及び第2の)設計の各層は、次のように特徴付けられてもよい。
・内因性組織再生(ETR)を可能にするミクロ孔を有する層。その孔径は約1~100μmであるように構成される。
・ファイバの直径が、一実施例では、約4~10μm、他の例では、1~20μmであるように構成されるエレクトロスパン層。
・(生体)吸収性層は必須ではないが、用途によっては必要とされることがある。
・追って記載するポリマーから作製される。
・一実施例において、層の厚みが、通常は、80~200μm、他の例では、50~300μmであるように構成される。
・二層弁尖の設計では、2つの層を組み合わせた合計の総厚みは、200~500μm、好ましくは、300~400μmであるように構成される。
第3の設計では、二層設計の2つの層の間に中間層が配置される。これは、上述したように第1の設計に中間層を追加すること、及び、第2の設計に中間層を追加することを意味する。これにより、第1の設計は、折り畳まれた構造によって二層構造になり、第2の設計は、2つの独立したエレクトロスパン層の自由縁を互いに接着することにより、二層構造を形成する。ある選択肢では、エレクトロスパン層と中間層との折り畳まれていない縁部を互いに結合するように中間層を間に組み込むことにより、各層が互いに最大限に独立して動くことを可能にするようにする。他の選択肢では、中間層は、いかなるアタッチメントも用いることなく、最大限に独立した可動性を維持することを可能とする。
一実施形態では、三層弁尖設計は、同一の材料、例えば、追って記載される材料から製造されてもよい。他の実施形態では、三層弁尖設計は、異なる材料から製造されてもよい。外層に対する中間層の重要な点は、中間層が心臓弁の耐久性を高めるような材料特性を有しつつ、弁尖全体、及びそれに伴う心臓弁の可動性を維持する点である。一般に、中間層は、デバイスの全体的な耐久性をさらに改善するために、より耐久性を有することが好ましい。これは、(例えば、図14に示すように、外層と同じか、またはより気孔率の低い固体/織布/エレクトロスパンシート等の)異なる材料や異なるテクスチャを選択することにより、達成が可能となる。
通常、中間層は、生分解性または非生分解性の材料から製造されてもよい。好ましくは、中間層は、外層と比較して、分解時間が短縮される方法により製造されるとよい。中間層は、ETR互換性を有するものでもETR互換性が無いもの(その後、作製された組織に組み込まれるもの)でもよい。生分解性のセットアップが選択される場合には、ETR互換性を有するものが好ましい。可能であれば(理想的には)、中間層は、その孔を通じてETRを可能にするための、及び/またはエレクトロスピニングを通じて外層が互いに結合されるようにするためのミクロ孔を有する(後者は、マクロ孔及び比較的薄い中間層を必要とする)。
他の実施形態では、中間層は、エレクトロスピニングにより製造されてもよい。より高い強度(ファイバの配列、孔の大きさ、材料、ファイバの厚さなどバリエーションによるもの)を創出するために、エレクトロスピニングのパラメータを適合させる必要がある。特に、ファイバは、本来の弁尖の配向と同様に、弁尖の円周に沿って好ましい配向を有する。あるいは、中間層はフィルムまたは3Dプリント構造であってもよい。
一実施形態では、中間層の材料は、生体適合性を有し、耐久性があり、長い時間をかけて分解するものとするか、または体内に留まるものとする必要がある。一例では、PETで作製された薄い織物を使用してもよい。この層は、強度を上げるために、フィラメントの束を常に織り込むエレクトロスパン外層とは異なるテクスチャを有する。中間層の透過性は、支持構造にパターン化された穿孔を生成することにより、導入されてもよい。PET織物構造は、外層と比較して動的せん断応力に対して耐久性が高いことが望ましく、その厚みは60~100μm(ミクロン)であるように構成される。織物構造の構成(例:束ごとのフィラメント数、糸の角度、透過性、パターン化された穿孔、縫合糸の保持力等)は、特定の弁尖設計に合うように(すなわち、特定のバルブフレームに準拠するように)調整及び適合させてもよい(例えば、図14を参照されたい)。
第2の例では、(例えば、追って記載されるように)ポリマー溶液を60~100μm(ミクロン)の厚さにキャストした(エレクトロスピニングされていない)薄膜を、潜在的に高い耐久性を有し、かつ、分解のペースが遅い中間層に用いてもよい。この中間層は弁尖を安定させるが、その後、体内の人工弁の全寿命を通じてETRプロセスが起こる。実験によると、この三層設計は、単純な二層または単層設計と比較してより高い耐久性を示す。これにより、中間層が応力を吸収する。中間層の透過性は、支持構造のパターン化された穿孔を作製することにより導入されてもよい。
他の例では、PET構造は、ETR並びに/またはエレクトロスピニングによる外層間の結合を可能にするマクロ及び/またはミクロ細孔を含む。
このような多層膜または弁尖を製造するために、いくつかの方法がある。一実施形態によれば、外層は(例えば、エレクトロスピニングにより)製造される。次いで、これらの層は、熱溶接、接着、または他の方法により中間層の周りに結合される。中間層は、エレクトロスパン層間に埋め込まれた心臓弁尖支持構造として説明することもできる。心臓弁尖支持構造は、これらに限定されないが、以下のようなものであってもよい。
・ETRを可能にするために、十分な多孔性を有するよう構成される。
・内側及び外側のエレクトロスパン層が互いにラミネートできるような十分な「開放性(open)」を有する。
・非分解性層でであっても、そうでなくてもよい。
・織(PET)メッシュ、縫合ワイヤ、(金属、例えば、ニチノール)組紐/編物メッシュであるように構成される。
・局所的な多孔性/オープンセル構造を生成するための後処理が行われる可能性がある。
さらに、中間層は、エレクトロスパン層の間に埋め込まれた心臓弁尖支持構造ともいえる。心臓弁尖支持構造は、これらに限定されないが、以下のようなものであってもよい。
・ETRを可能にするために、十分な多孔性を有するように構成される。
・(エレクトロスパン外層と同一の材料または材料分類の)フィルム製であるように構成される。
・エレクトロスパン層にラミネートされるが、エレクトロスパン層が互いにラミネートできるように、必ずしも十分な開放性を有する必要はない(すなわち、この場合、すでにフィルムに付着している)。
層の自由縁が接着されている場合、接着部は、弁尖の高さ(約1mm)の約10~15%に相当すると想定される。その理由は、自由縁が剥離(delaminate)しないようにするためであり、(完全に)ラミネートされている高さの約10~15%を考慮したものである。その接着部の上部にある中間層は自由縁に到達しないが、その約1mm下に到達する。さらに他の実施形態では、二層設計または中間(心臓弁尖支持構造)を備えた三層設計では、ラミネーションが必要となる場合もあるが、その場合は、層同士が互いに自由に動くことができるようにする。
試験
試験を行った弁のインビトロでの可動性を評価及び定量化するために、古典的な市販のパルスデュプリケーター(米国のBDC Labsの「流体力学的テスター」)を用いた。この古典的な試験装置では、弁は、流量と圧力を制御する流動チャンバ内に配置される。試験液と組み合わせた圧縮空気を利用して、生理学的状態及び血管コンプライアンスを模倣する。流体力学的試験装置インターフェースは、弁の寿命性能を分析し、バルブの開状態(すなわち、有効オリフィス面積(EOA)[cm]、最大及び平均正圧差(PPD)[mmHg]等)とバルブの閉状態(すなわち、閉鎖容積(CV)[%]、逆流率(RF)[%])とにおける必須パラメータを測定並びに定量化する。
試験装置は、心臓血管系の生理学的状態の範囲を再現し、任意の圧力において様々な心拍数及び心拍出量に対応することを可能にする。
多層バルブの改善された耐久性を評価及び定量化するために、古典的な市販のバルブ耐久性テスター(米国のBDC Labsの「加速摩耗テスター」)を用いた。このような試験装置では、弁を圧力制御された密閉チャンバ内に配置し、リニアモータ及びピストンを用いて、押し出される流体の流れに弁尖をさらすことにより試験を行う。ピストンの位置は弁尖の開閉を制御し、モータの周波数はバルブサイクルの速度(Hz)を示す。閉じた弁の動的圧力勾配は、生理学的状態をシミュレートするように構成されている。試験を行った弁は通常5~25Hzの周波数で動作するが、本願では、ポリマーとその粘弾性特性を考慮して、10Hzの周波数を選択した。特定の圧力勾配(すなわち、目標圧力)下で、弁が閉じている間のサイクル持続時間の5%以上を耐えた場合にのみ、1サイクルとカウントした。本願では、目標圧力を100mmHgに設定した。
高速度カメラを用いて様々な視点から弁の可動性を評価するために、追加のパラメータを測定した。これらのパラメータは必ずしも(ISO-5840に準拠して)標準化されているわけではないが、例えば、開閉状態における弁尖同士の同調及び全体の均衡、閉じた弁尖のたわみ、並びに交連の偏向等、弁の動的性能の特性評価に役立つことがある。これらのパラメータのいくつかは、主に製品設計開発で用いられる。
図10及び表1は、図11に示すような様々な厚さの弁尖を有する二層及び単層弁の可動性についてのインビトロ試験の結果を示す。図10は、心臓弁アセンブリのプロトタイプの完全な閉状態及び開状態を示しており、流体力学的試験中に高速度カメラを用いてキャプチャされたものである。実験は、二層設計が、通常の単層設計と比較して、耐久性を低下させることなく、弁尖の可動性が大幅に改善したことを示した。さらに、折り畳まれた二層の設計は、擦り切れのリスクも大幅に低減させた。
表1は、流体力学的テスターにおける単層弁尖と二層弁尖との比較を示す。最初の比較では、厚さ400μmの二層弁尖(n=2)の態様は、弁が開状態である間は単層弁尖と同等の可動性があり(有効オリフィス面積と圧力勾配が比較的同等になる)、閉状態の間は劣ることを示した(クロージングボリュームが多いほど、逆流率が高くなる)。2番目の比較では、厚さ300μmの二層弁尖(n=1)の態様は、開状態では単層弁尖よりも可動性が高く(より高い有効オリフィス面積、より低い圧力勾配)閉状態では単層弁尖と同様の可動性を示した(同等のクロージングボリューム)。
表2は、三層プロトタイプと3つの単層プロトタイプとの耐久性の比較の結果、必要な圧力勾配に到達することができない弁尖の破損までのサイクルが少なくとも1段階向上したことを示した。結果として、三層プロトタイプは、400Mサイクルの心臓弁の耐久性に関するISO規格に到達し、合格した。これは、最先端技術(生体組織弁尖)と比較して、同等の耐久性を備えた心臓弁を用いてETRを追求する可能性を示している。
材料
本明細書で参照するエレクトロスパン材料は、ウレイド-ピリミジノン(UPy)四重水素結合モチーフ(Sijbesma(1997)、Science 278、1601~1604によって開拓された)及び、ポリマー主鎖、例えば、生分解性ポリエステルの群から選択されるポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンフマル酸塩を含んでいてもよい。ポリエステルの例としては、ポリカプロラクトン、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(DL-ラクチド)、ポリ(バレロラクトン)、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、及びそれらのコポリエステルが挙げられる。ポリカーボネートの例としては、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジメチルトリメチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)が挙げられる。
特性を注意深く選択し、必要な表面特性を確保するために材料を処理すれば、他の非超分子ポリマーでも同じ結果が得られることがある。これらのポリマーは、生分解性または非生分解性のポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンフマレートを含んでいてもよい。ポリエステルの例としては、ポリカプロラクトン、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(DL-ラクチド)、ポリ(バレロラクトン)、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、及びそれらのコポリエステルが挙げられる。ポリカーボネートの例としては、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジメチルトリメチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)が挙げられる。

Claims (10)

  1. 加工された心臓弁の弁尖を備えた医療用インプラントであって、
    前記弁尖は、エレクトロスピニングされることにより製造される2つのエレクトロスパンファイバの層を、一方の層における他方の層に結合していない部分が、前記他方の層に対して動くことを可能にするように、その縁部のみに於いて互いに結合してなり、
    2つの前記エレクトロスパンファイバの層の間に保持され、2つの前記エレクトロスパンファイバの層に対して少なくとも部分的に動くことを可能にするように構成されている中間層をさらに含む、医療用インプラント。
  2. 前記弁尖が多孔性及び生体吸収性を有し、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、前記弁尖が天然の組織に吸収されて置き換わることを可能にする、請求項1に記載の医療用インプラント。
  3. 前記中間層が、(i)多孔性及び生体吸収性を有し、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、前記中間層が天然の組織に吸収されて置き換わることを可能にし、(ii)多孔性及び生体吸収性を有するエレクトロスピニングされることにより製造されるエレクトロスパンファイバの層であるように構成され、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、前記中間層が天然の組織に吸収されて置き換わることを可能にし、または、(iii)生体吸収性を有さず、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、天然の組織に浸透することを可能とする、請求項1に記載の医療用インプラント。
  4. 前記中間層及び2つの前記エレクトロスパンファイバの層が、互いに同一の材料または異なる材料をエレクトロスピニングすることにより製造される、請求項1に記載の医療用インプラント。
  5. 2つの前記エレクトロスパンファイバの層が、それぞれ同一の材料または異なる材料をエレクトロスピニングすることにより製造される、請求項1に記載の医療用インプラント。
  6. 心臓弁の弁尖を備えた医療用インプラントであって、
    前記心臓弁は自由縁を有し、
    前記弁尖は、エレクトロスピニングされることにより製造される単一のエレクトロスパンファイバの層を含み、前記心臓弁の前記自由縁が前記弁尖の折り畳まれた縁部となるように前記エレクトロスパンファイバの層が折り畳まれることにより、前記弁尖が二層設計となっており、
    前記二層設計の間に保持され、前記二層設計に対して少なくとも部分的に動くことを可能にするように構成されている中間層をさらに含む、医療用インプラント。
  7. 前記エレクトロスパンファイバの層の折り畳まれていない縁部が前記心臓弁の基部に結合され、かつ、組み込まれており、
    前記弁尖において、一方の層における前記弁尖の前記縁部と他方の層に結合した部分とを除いた部分が、前記他方の層に対して動くことを可能にするように構成されている、請求項6に記載の医療用インプラント。
  8. 前記弁尖が多孔性及び生体吸収性を有し、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、前記弁尖が天然の組織に吸収されて置き換わることを可能にする、請求項6に記載の医療用インプラント。
  9. 前記中間層が、(i)多孔性及び生体吸収性を有し、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、前記中間層が天然の組織に吸収されて置き換わることを可能にし、(ii)多孔性及び生体吸収性を有するエレクトロスピニングされることにより製造されるエレクトロスパンファイバの層であるように構成され、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、前記中間層が天然の組織に吸収されて置き換わることを可能にし、または、(iii)生体吸収性を有さず、細胞及び栄養素が孔に内殖することにより、天然の組織に浸透することを可能とする、請求項6に記載の医療用インプラント。
  10. 前記中間層及び前記二層設計が、同一の材料または異なる材料をエレクトロスピニングすることにより製造される、請求項6に記載の医療用インプラント。
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