以下、本発明の区画貫通構造に用いられる措置具の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
区画貫通構造では、建築物の仕切り部に設けられる区画体である床又は壁に区画貫通孔が形成され、区画貫通孔に長尺体である配管が挿通される。前記挿通された配管と区画貫通孔との間には、隙間が発生しており、この隙間を埋める作業が行われる。その埋める作業に使用される措置具が、図1に示されている。この実施形態では、床を例に挙げて説明する。
措置具は、図1~図3に示すように、配管1に外装されるとともに床2に形成された区画貫通孔3内に挿入可能に構成されるスリーブ4と、スリーブ4の内面に配置される熱膨張材5と、スリーブ4の外周面のうちの挿入側先端部に径外方向に突設され区画貫通孔3の径よりも大きな外径を有する鍔部6と、を備えている。また、配管1に区画貫通孔3の外部(上部)で外装したスリーブ4を区画貫通孔3内へ押し込むための取付部材7を備えている。前記配管1としては、給湯管、給水管、排水管、電線管、冷媒管、電線、ケーブル等が挙げられる。
鍔部6は、スリーブ4を区画貫通孔3へ挿入する時に区画貫通孔3の内周面3Aとの当接により変形可能に構成され、変形することにより区画貫通孔3を閉じて区画貫通孔3とスリーブ4との間に充填される充填材8を受け止める充填材受け部として構成される。鍔部6は、例えば、スポンジ、柔らかいゴム、発泡ポリウレタン等発泡材などの復元可能に変形可能な弾性部材から構成されているが、内部が空洞のチューブ体、山谷が収縮変形する蛇腹形状に構成された蛇腹体、樹脂やゴムからなり、ヒレのように根元から先端に向かって薄くなる薄板状体でもよく、流し込まれる充填材8が下方に垂れ落ちないように受け止められる構成であれば、どのような構成であってもよい。
また、鍔部6は、平面視において2つの半割りのリング体9,9からなり、後述する半割り部材10,10に両面テープや接着剤等によりリング体9,9が固定され、後述する半割り部材10,10の両端部同士が係止されて円筒状になったときにリング体9,9が途切れの無い円環状の鍔部6を構成する。
各リング体9は、後述する半割り部材10に固定される基端部(径方向内側部)の上下の厚みよりも先端部(径方向外側部)の上下の厚みの方が薄くなっている。また、各リング体9の底面(下面)9Aが、先端側(径方向外側)ほど上方に位置する傾斜面になっている。このように構成することによって、スリーブ4を区画貫通孔3へ挿入する時に区画貫通孔3との当接により鍔部6のリング体9,9が外側に凸となる湾曲した凹形状になる(図5参照)。これにより、鍔部6は、スリーブ4の外周面4Aと区画貫通孔3の内周面3Aとの間を閉じて区画貫通孔3と区画貫通孔3との間に充填される充填材8を確実に受け止める充填材受け部を構成する。
スリーブ4は、軸方向一端部(図2では下端部)が挿入方向の先端側で、かつ、軸方向他端部(図2では上端部)が挿入方向後端側となる向きで区画貫通孔3に挿入可能に構成されている。また、スリーブ4は、合成樹脂(金属でもよい)で構成され、平面視において半円状で同一構成の2つの半割り部材10,10を一体化することにより、配管1に外装可能に構成されている。各半割り部材10の周方向一端部には、係止孔10aを形成するためのコの字状の被係止部10Aが周方向外側に突出形成され、周方向他端部には、係止孔10aに係止及び係止解除可能な係止突起10Bが形成されている。係止孔10aは、縦長の長方形状に構成され、この係止孔10aに係止する係止突起10Bは、縦長状で半割り部材10の外面(表面)から径方向外側に突出する突起から構成されている。したがって、一方の半割り部材10の一端部の係止孔10aにこれに対向する他方の半割り部材10の他端部の係止突起10Bを係止し、かつ、一方の半割り部材10の他端部の係止突起10Bをこれに対向する他方の半割り部材10の一端部の係止孔10aに係止することによって、円筒状のスリーブ4を構成することができる。
各半割り部材10の外面には、上下2列で周方向に所定長さだけ延びる多数の突起10Tが所定間隔を置いて形成されている。これら突起10Tは、充填されて固化した充填材8に食い込むことにより、区画貫通孔3からスリーブ4が上下方向に抜けてしまうことを抑制するためのものである。また、各半割り部材10の上端部に、他の部分よりも少し厚くなっており、前記取付部材7の下端部が面で当たるようになっている。また、各半割り部材10の下端部には、鍔部6の上下方向への移動を抑制するための上下一対の凸条10C,10Cが形成されている。凸条10C,10Cは、半割り部材10,10の周方向に沿って延び、半割り部材10,10の周方向全域に亘って形成されている。
熱膨張材5は、2つの半割り部材10,10の内面のそれぞれに設けられ、各半割り部材10の周方向全域に亘る周方向の寸法を有し、各半割り部材10の上下端からはみ出すことがないように各半割り部材10の上下寸法よりも少し小さな寸法を有している。また、熱膨張材5は、配管1の外周面に配置されるようにスリーブ4の内部に(奥まって)配置され、かつ、区画貫通孔3へスリーブ4内における鍔部6に径方向において一部が重複した状態でスリーブ4の挿入方向手前側(後端側)に向かって配置されている。このように、熱膨張材5を配置することによって、図5に示すように、熱膨張材5の充填材受け部(鍔部6)よりもスリーブ4の挿入方向手前側(後端側)の部分において、熱膨張材5が火災等の熱により膨張した時に、熱膨張材5が外側に広がることを充填材8で抑制できるので、熱膨張材5が内側に膨張しやすくなって、配管1とスリーブ4との隙間を確実に塞ぐことができる。
また、熱膨張材5は、熱膨張性(加熱により体積が増加する性質)と耐火性(熱に耐えやすい性質、溶融温度が高く燃えにくい性質)とを有する部材である。熱膨張材5としては、公知の材質のものを特に制限なく用いることができ、例えばパテ状部材(熱膨張性パテ状耐火材)を用いることができる。また、熱膨張材5は、例えば所定温度(例えば200℃)以上に加熱された際に、その厚み方向に膨張して図5に示す配管1の外周面1Aとスリーブ4の内周面4Bとの間の隙間を埋めることで区画貫通孔3の一方側で発生した火炎が区画貫通孔3の他方側へ移動することを防止する。
取付部材7は、合成樹脂材料(金属材料でもよい)で構成され、2つの半円状の枠部材11,11から構成され、2つの半円状の枠部材11,11を径方向で合体させることで配管1に外装することができるように構成されている。各枠部材11は、円弧状に延びる上下一対の枠部11A,11Aと、該枠部11A,11Aの周方向中央部を上下方向で連結する中央連結部11Bと、該枠部11A,11Aの周方向両端部を上下方向で連結する端部連結部11C,11Cと、を備えている。中央連結部11Bと一方の端部連結部11Cとの間及び中央連結部11Bと他方の端部連結部11Cとの間のそれぞれに矩形状の開口11Kが形成されている。
また、各枠部材11の一方の端部連結部11Cには、係止孔11eを形成するためのコの字状の被係止部11Eが周方向外側に突出形成され、他方の端部連結部11Cには、係止孔11eに係止及び係止解除可能な係止突起11Fが形成されている。係止孔11eは、縦長の長方形状に構成され、この係止孔11eに係止する係止突起11Fは、縦長状で他方の端部連結部11Cの表面から径方向に突出する突起から構成されている。したがって、一方の枠部材11の被係止部11Eの係止孔11eにこれに対向する他方の枠部材11の係止突起11Fを係止し、かつ、一方の枠部材11の係止突起11Fをこれに対向する他方の枠部材11の被係止部11Eの係止孔11eに係止することによって、円環状の取付部材7を構成することができる。
また、各枠部材11の周方向中央部には、スリーブ4が区画貫通孔3内の所定位置に位置した時に、区画体(床2)におけるスリーブ4を挿入する側の壁面2A(図では上面の床面2A)に当接する当接部12を備えている。
2個の当接部12,12は、径方向で対向する位置に配置されている。各当接部12は、指を押し当てる板状の指当て部12Aと、指当て部12Aの下面から下方に突出して他の指を掛ける横方向に長い長方形で板状の指掛け部12Bと、を備えている。指当て部12Aは、上側枠部11Aから径方向外側に延びており、延出端側ほど幅が狭い略台形状に構成されている。また、指掛け部12Bは、指当て部12Aの幅方向中央部から下方に延びている。
上記のように構成された鍔部6付のスリーブ4及び取付部材7を用いて配管1と区画貫通孔3との間の隙間を埋める作業について説明する。
床面2Aのある階上において区画貫通孔3から上方に突出している配管1に、鍔部6付のスリーブ4及び取付部材7をそれぞれ被せながら両端部同士を前述のように係止することで外装させる(図2及び図3参照)。外装後に、取付部材7を持って下方へ押すことにより(図3参照)、鍔部6付のスリーブ4を区画貫通孔3内へ押し込む。スリーブ4に備える鍔部6が区画貫通孔3の内周面3Aと当接することによって、鍔部6が前述した凹形状に変形し、その先端部が区画貫通孔3の内周面3Aに密着しながら、スリーブ4と共に区画貫通孔3内へ入り込んでいく。そして、取付部材7に備える当接部12,12の指掛け部12B,12Bの下端12b,12bが、床面2Aに当接することによって(図4参照)、スリーブ4が区画貫通孔3内の所定の設置位置に位置し、鍔部6が区画貫通孔3を閉じた状態となり、取付部材7によるスリーブ4の押し込み作業が完了する。完了後は、取付部材7を区画貫通孔3の上方に配管1に沿って移動させる、又は取付部材7を配管1から取り外してから、充填材8をスリーブ4を挿入した同一側から区画貫通孔3へ充填して充填作業が終了する(図5参照)。
充填材8は、水系アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系等を用いる他、モルタルやグラウトを用いてもよい。特に、粘度が汎用の建築用のシーリング材よりも低く、区画貫通孔3に充填しやすい流動性に優れたものを用いることによって、区画貫通孔3と配管1との隙間が小さい場合でも良好に充填できる利点がある。
図5は、スリーブ4が区画貫通孔3に挿入された状態において、充填材8が区画貫通孔3と配管1との隙間に充填材8が充填された状態を示している。図5を見ると、区画貫通孔3のスリーブ4の挿入方向手前側端部となる床面2Aとスリーブ4の上端面4C(軸方向他端部)との間に床面2Aを備える階上の水が区画貫通孔3を通って階下へ流れることを止めるための止水部13が形成されている。この止水部13は、区画貫通孔3と配管1との間に水が入り込む隙間が発生することがなく充填材8のみを充填して確実に止水することができる領域である。また、スリーブ4が区画貫通孔3に挿入された状態において、充填材受け部(鍔部6)が区画貫通孔3のスリーブ4の挿入方向奥側よりもスリーブ4のスリーブ4の挿入方向手前側に位置させることにより、スリーブ4の下端面4Dから区画貫通孔3の下端3Bまでの間に、鍔部6が区画貫通孔3から抜け落ちることがない空間、つまり落ち込み防止クリアランス14を設定することが好ましい。前記空間を形成することによって、区画貫通孔3内に充填する充填材8の量を削減できる。
<第2実施形態>
図6では、前記取付部材7が、一対の押し込み部材15,15から構成されている。また、後述するスリーブ4の上端の2箇所(径方向で対向する位置)に、一対の押し込み部材15,15を係止保持する係止部16,16を備えている。
各押し込み部材15は、指を押し当てる板状の水平部15aと水平部15aの水平方向(横方向)の一端から下方に向かう板状の縦板部15bとを有する押し込み本体15Aと、水平部15aの幅方向中央部から下方に延び、スリーブ4が区画貫通孔3内の所定の設置位置に位置した時に、区画体(床2)におけるスリーブ4を挿入する側の床面2Aに当接する板状で矩形状の当接部15Bと、を備えている。
各係止部16は、スリーブ4の上端から上方に延びるとともに平面視において略L字状の一対の部材16A,16Aから構成され、一対の部材16A,16A間に押し込み部材15の縦板部15bの下端部が挿入されて係止する。尚、押し込み部材15を掴んで上方へ持ち上げることにより係止した縦板部15bを係止解除できる。
スリーブ4は、前述同様に、軸方向一端部が挿入方向の先端側で、かつ、軸方向他端部が挿入方向後端側となる向きで区画貫通孔3に挿入可能に構成されている。また、スリーブ4は、合成樹脂(金属でもよい)で構成され、平面視において半円状で同一構成の2つの半割り部材17,17を一体化することにより、配管1に外装可能に構成されている。各半割り部材17の周方向一端部には、係止孔17aを形成するためのコの字状の被係止部17Aが周方向外側に突出形成され、周方向他端部には、係止孔17aに係止及び係止解除可能な係止突起17Bが形成されている。係止孔17aは、縦長の長方形状に構成され、この係止孔17aに係止する係止突起17Bは、縦長状で半割り部材17の表面から径方向に突出する突起から構成されている。したがって、一方の半割り部材17の一端部の係止孔17aにこれに対向する他方の半割り部材17の他端部の係止突起17Bを係止し、かつ、一方の半割り部材17の他端部の係止突起17Bをこれに対向する他方の半割り部材17の一端部の係止孔17aに係止することによって、スリーブ4を構成することができる。
各半割り部材17の外面の上部には、周方向に所定間隔を置いて上下方向に延びる多数の突起17Tが形成されている。これら突起17Tは、底面が上方に位置し、頂部が下方に位置する逆三角錐形状に構成され、区画貫通孔3からスリーブ4が上下方向に抜けてしまうことを抑制するためのものである。また、各半割り部材10の上端部は、他の部分よりも少し厚くなっており、前記取付部材7の下端部に面で当たるようになっている。また、各半割り部材17の下端部には、鍔部6の上下方向への移動を抑制するための上下一対の凸条17Cが形成されている。凸条17Cは、半割り部材17の周方向に沿って延び、半割り部材17の周方向全域に亘って形成されている。
また、各半割り部材17の内面には、前記と同一構成の熱膨張材5を備え、この熱膨張材5は、各半割り部材17の周方向全域に亘る周方向の寸法を有し、各半割り部材17の上下端からはみ出すことがないように各半割り部材17の上下寸法よりも少し小さな寸法を有している。また、熱膨張材5は、配管1の外周面に配置されるようにスリーブ4の内部に(奥まって)配置され、かつ、区画貫通孔3へスリーブ4内における鍔部6に径方向において一部が重複した状態でスリーブ4の挿入方向手前側に向かって配置されている。このように、熱膨張材5を配置することによって、熱膨張材5の充填材受け部(鍔部6)よりもスリーブ4の挿入方向手前側の部分において、熱膨張材5が火災等の熱により膨張した時に、熱膨張材5が外側に広がることを充填材8で抑制できるので、熱膨張材5が内側に膨張しやすくなって、配管1とスリーブ4との隙間を確実に塞ぐことができる。
上記のように構成された鍔部6付のスリーブ4及び取付部材7,7を用いて配管1と区画貫通孔3との間の隙間を埋める作業について説明する。
床面2Aのある階上において区画貫通孔3から上方に突出している配管1に、鍔部6付のスリーブ4を被せながら両端部同士を前述のように係止することで外装させる。外装したスリーブ4に備える係止部16,16に取付部材7,7をそれぞれ係止する。尚、スリーブ4に備える係止部16,16に取付部材7,7をそれぞれ係止した後、その取付部材7,7を備えたスリーブ4を配管1に外装してもよい。続いて、取付部材7,7をそれぞれ持って下方へ押すことにより、スリーブ4を区画貫通孔3内へ押し込む。スリーブ4に備える鍔部6の外周部が区画貫通孔3の内周面3Aと当接することによって、鍔部6が前述したお椀形状になりながら、スリーブ4と共に区画貫通孔3内へ入り込んでいく。そして、取付部材7,7の当接部15B,15Bの下端が、床面2Aに当接することによって、スリーブ4が区画貫通孔3内の所定の設置位置に位置し、鍔部6が区画貫通孔3を閉じた状態となり、取付部材7,7によるスリーブ4の押し込み作業が完了する。完了後は、取付部材7,7をスリーブ4から係止解除することで取り外してから、充填材8をスリーブ4を挿入した同一側から区画貫通孔3へ充填して充填作業が終了する。尚、充填材8は、前述同様のため、説明を省略する。
図8は、スリーブ4が区画貫通孔3に挿入された状態において、区画貫通孔3と配管1との隙間に充填材8が充填された状態を示している。図8を見ると、止水部13及び落ち込み防止クリアランス14が図5と同様に形成されている。そのため、止水部13及び落ち込み防止クリアランス14の詳細説明は省略する。
<第3実施形態>
図9~図11では、前述した取付部材をスリーブ4に一体化した(この実施形態では、一体形成であるが、別体形成した取付部材をスリーブに接着剤や溶着等により取り外し不能に取り付けてもよい)場合を示している。
取付部材7は、径方向で対向する同一形状の一対の押し込み部材18,18から構成されている。各押し込み部材18は、板状で中心部に開口18Kが形成されたアーチ状の本体部18Aと、本体部18Aの上部外面の幅方向中央部から径方向外側に突出し、スリーブ4が区画貫通孔3内の所定の設置位置に位置した時に、区画体(床2)におけるスリーブ4を挿入する側の床面2Aに当接する板状で矩形状の当接部18Bと、を備えている。本体部18Aは、上方側ほど径方向外側に位置する傾斜姿勢に形成されており、配管1にスリーブ4を外装した状態において、本体部18Aの内面18aと、配管1の外周面1Aとの間に隙間が形成される。また、本体部18Aの幅方向中央部の開口18Kを通して充填材8が通り抜けるので(図11参照)、区画貫通孔3内に本体部18Aの一部が入り込んだ状態で充填材8を充填しても、充填材8の充填に支障が発生するといったことがない。
スリーブ4は、前述同様に、軸方向一端部が挿入方向の先端側で、かつ、軸方向他端部が挿入方向後端側となる向きで区画貫通孔3に挿入可能に構成されている。また、スリーブ4は、合成樹脂(金属でもよい)で構成され、平面視において半円状で同一構成の2つの半割り部材19,19を一体化することにより、配管1に外装可能に構成されている。各半割り部材19の周方向一端部には、係止孔19aを形成するためのコの字状の被係止部19Aが周方向外側に突出形成され、周方向他端部には、係止孔19aに係止及び係止解除可能な係止突起19Bが形成されている。係止孔19aは、縦長の長方形状に構成され、この係止孔19aに係止する係止突起19Bは、縦長状で半割り部材19の表面から径方向に突出する突起から構成されている。したがって、一方の半割り部材19の一端部の係止孔19aにこれに対向する他方の半割り部材19の他端部の係止突起19Bを係止し、かつ、一方の半割り部材19の他端部の係止突起19Bをこれに対向する他方の半割り部材19の一端部の係止孔19aに係止することによって、スリーブ4を構成することができる。
各半割り部材19の外面の上部には、周方向に所定間隔を置いて上下方向に延びる多数の突起19Tが形成されている。これら突起19Tは、底面が上方に位置し、頂部が下方に位置する三角柱形状に構成され、区画貫通孔3からスリーブ4が上下方向に抜けてしまうことを抑制するためのものである。また、各半割り部材19の下端部には、鍔部6の上下方向への移動を抑制するための上下一対の凸条19Cが形成されている。凸条19Cは、半割り部材19の周方向に沿って延び、半割り部材19の周方向全域に亘って形成されている。
また、各半割り部材19の内面には、前記と同一構成の熱膨張材5を備え、この熱膨張材5は、各半割り部材19の周方向全域に亘る周方向の寸法を有し、各半割り部材19の上下端からはみ出すことがないように各半割り部材19の上下寸法よりも少し小さな寸法を有している。また、熱膨張材5は、配管1の外周面に配置されるようにスリーブ4の内部に(奥まって)配置され、かつ、区画貫通孔3へスリーブ4内における鍔部6に径方向において一部が重複した状態でスリーブ4の挿入方向手前側に向かって配置されている。このように、熱膨張材5を配置することによって、熱膨張材5の充填材受け部(鍔部6)よりもスリーブ4の挿入方向手前側の部分において、熱膨張材5が火災等の熱により膨張した時に、熱膨張材5が外側に広がることを充填材8で抑制できるので、熱膨張材5が内側に膨張しやすくなって、配管1とスリーブ4との隙間を確実に塞ぐことができる。
上記のように構成された鍔部6付のスリーブ4及び取付部材7,7を用いて配管1と区画貫通孔3との間の隙間を埋める作業について説明する。
床面2Aのある階上において区画貫通孔3から上方に突出している配管1に、鍔部6を備えかつ取付部材7,7が一体形成されたスリーブ4を被せながら両端部同士を前述のように係止することで外装させる。続いて、取付部材7,7をそれぞれ持って下方へ押すことにより、スリーブ4を区画貫通孔3内へ押し込む。スリーブ4に備える鍔部6の外周部が区画貫通孔3の内周面3Aと当接することによって、鍔部6が前述したお椀形状になりながら、スリーブ4と共に区画貫通孔3内へ入り込んでいく。そして、取付部材7,7の当接部18B,18Bの下端が、床面2Aに当接することによって、スリーブ4が区画貫通孔3内の所定の設置位置に位置し、鍔部6が区画貫通孔3を閉じた状態となり、取付部材7,7によるスリーブ4の押し込み作業が完了する。完了後は、充填材8をスリーブ4を挿入した同一側から区画貫通孔3へ充填して充填作業が終了する。尚、充填材8は、前述と同様のため、説明を省略する。
図11は、スリーブ4が区画貫通孔3に挿入された状態において、区画貫通孔3と配管1との隙間に充填材8が充填された状態を示している。図11を見ると、止水部13及び落ち込み防止クリアランス14が図5と同様に形成されている。充填材8を区画貫通孔3へ充填する際に、前述したように、充填材8を支障なく充填することができるので、止水部13を確実に形成することができる。尚、説明しなかった構成は、前述と同一構成であるため、それらの詳細説明は省略する。
<第4実施形態>
図14~図19では、図9~図11と同様に、取付部材7をスリーブ4に一体化した(この実施形態では、一体形成であるが、別体形成した取付部材をスリーブに接着剤や溶着等により取り外し不能に取り付けてもよい)場合を示している。
取付部材7は、スリーブ4の上端面4Cに径方向で対向するように周方向に90度間隔で配置された同一形状の二対の押し込み部材20,20、20,20から構成されている。各押し込み部材20は、スリーブ4の上端面4Cから上方に真っ直ぐ延びる本体部20Aと、本体部20Aの上端から径方向外側に突出して指を押し当てる略矩形状で板状の指当て部20Bと、を備えている。本体部20Aは、スリーブ4の上端面4Cの内周縁から周方向に沿う平面視にて円弧形状の板状に構成されている。また、本体部20Aの外面の周方向中央部には、径方向外側に突出し、上下方向に延びる補強用の縦リブ20Rが形成されている。縦リブ20Rは、それの下端がスリーブ4の上端面4Cに連結されるとともに、それの上端が指当て部20Bの下端に連結されている。この実施形態では、押し込み部材20,20、20,20及びスリーブ4が、合成樹脂にて一体形成されているが、金属やその他保形性を有する材料で形成されてもよい。
スリーブ4は、前述同様に、軸方向一端部が挿入方向の先端側で、かつ、軸方向他端部が挿入方向後端側となる向きで区画貫通孔3に挿入可能に構成されている。また、スリーブ4は、前記のように合成樹脂(金属でもよい)で構成され、周方向に円筒状(この実施形態では円筒状であるが、角筒状でもよい)に並ぶ複数(この実施形態では2個)の部材21,21を有している。前記複数の部材21,21における周方向で対向する端部同士のうちの1つは、開閉可能となっており、残りは前記1つが開閉するように回動可能な薄肉な連結部22を介して連結されている。したがって、複数の部材21,21における周方向で対向する端部同士のうちの1つを周方向に開放することによって、スリーブ4を配管1に側方から容易に外装することができる。
2個の部材21,21は、共に平面視において半円形状に構成されている。各部材21の外面の上下方向略中央部には、径方向外側に突出し周方向に長い突起21Aが、周方向前後端部にそれぞれ形成されている。この突起21A,21Aが充填されて固化した充填材8に食い込むことにより、区画貫通孔3からスリーブ4が上下方向に抜けてしまうことを抑制することができる。また、図15に示すように、各部材21の上端から水平方向内側に延びる内縁部21Dを備えると共に、各部材21の下端から水平方向外側に延びる外縁部21Eを備えている。
図14に示すように、連結部22は、2個の部材21,21よりも厚みが薄い薄肉部から構成されており、この連結部22を介して2個の部材21,21が周方向に開閉可能に構成されている。2個の部材21,21の開閉端部のうちの一方に被係止部23を備え、他方に被係止部23に係止及び係止解除可能な係止部24を備えている。被係止部23は、一方の部材21の開閉端部の外面に一体形成され、上下方向に縦長の長方形状の上下一対の長孔23a,23aが形成された矩形状の枠部材23Aから構成されている。係止部24は、前記長孔23a,23aに周方向で係止するように他方の部材21の開閉端部の外面に一体形成され、径方向外側に突出する上下方向に長く、平面視において三角形状の上下一対の突出部24A,24Aから構成されている。この実施形態では、連結部22を、2個の部材21,21よりも厚みが薄い薄肉部から構成しているが、上下方向に延びる軸により2個の部材21,21を回動可能に連結する連結部を構成してもよい。
2個の部材21,21の軸方向一端(図14では下端)の周方向複数個所に、下方に突出する平面視において周方向に沿う円弧形状の爪部25が一体形成されている。これら爪部25を鍔部6に形成の平面視において周方向に沿う円弧形状の複数(爪部25と同数)のスリット6Sに差し込むことによって、鍔部6と2個の部材21,21とを一体化することができる。尚、爪部25をスリット6Sに差し込んだ状態では、爪部25の先端部(下端部)が鍔部6から下方に突出してもよいし、突出しない状態であってもよい。この実施形態では、爪部25をスリット6Sに着脱自在に構成しているが、接着剤等を用いて爪部25をスリット6Sに固定してもよい。爪部25とスリット6Sとからなる差込式を構成することによって、鍔部6がスリーブ4の外周面に径方向外方に突設されている。
鍔部6は、周方向1箇所に切れ目6Hを備え、この切れ目6Hは、前記1つの開閉可能に構成された2個の部材21,21の周方向で隣り合う端部21B,21C同士の開閉端位置(図14では端部21B,21CB同士が少し開いた位置であるが、閉じた位置である)21Sと周方向で略同一位置(同一位置を含む)に形成されている。このように切れ目6Hを形成することによって、スリーブ4と鍔部6を周方向の同一位置から開放させてスリーブ4と鍔部6とを配管1に側方から同時に外装することができる。切れ目6Hは、鍔部6の外周縁から径方向内側に切れ込む第1部分と、第1部分の内側端から径方向と交差する方向で内側に向かって切れ込む第2部分と、第2部分の内側端から鍔部6の内周縁に向かって径方向に切れ込む第3部分と、を備えている。つまり第1部分が、開閉端位置21Sと周方向で略同一位置に形成され、他の第2部分及び第3部分が開閉端位置21Sと周方向で少しずれて位置しているが、開閉端位置21Sと周方向で同一位置に形成されるように径方向に一直線状に切れ込む構成であってもよく、切れ目6Hは、どのような形状であってもよい。前記のように、鍔部6の外周縁から径方向内側に切れ込む第1部分に対して、他の第2部分及び第3部分が開閉端位置21Sと周方向で少しずれて位置することによって、切れ目6Hの合わせ面間に隙間が出来にくくなるという効果がある。
また、各部材21の内面には、前記と同一材料でなる円形状に丸めた1枚の熱膨張材(前記と同一材料である)5を備え、この熱膨張材5は、2個の部材21,21の周方向全域に亘る周方向の寸法を有し、部材21,21の上下端からはみ出すことがないように部材21,21の上下寸法よりも少し小さな寸法を有している。また、熱膨張材5の内面には、熱膨張材5と略同一の大きさを有し、復元可能に変形できる円形状に丸めた1枚の弾性部材26が接着剤等により固定されている。この弾性部材26は、配管1に外装したスリーブ4を区画貫通孔3内に迅速に移動させるために設けたものであり、移動抵抗の小さいスポンジが最適であるが、柔らかいゴム、発泡ポリウレタン等の発泡材等であってもよい。尚、弾性部材26は、必ずしも必要ではなく、省略することもできる。
上記のように構成された鍔部6付のスリーブ4及び押し込み部材20,20、20,20を用いて配管1と区画貫通孔3との間の隙間を埋める作業について説明する。
床面2Aのある階上において区画貫通孔3から上方に突出している配管1に、鍔部6を備えかつ押し込み部材20,20、20,20が一体形成されたスリーブ4の開放端部の係止部24と被係止部23との係止を解除してスリーブ4を開放状態にする(図15参照)。このとき、鍔部6もスリーブ4の開放端位置と同一の位置から開放される。この開放状態において、スリーブ4及び鍔部6を配管1に側方から被せる。被せた後に、スリーブ4の開放端部の係止部24と被係止部23とを係止することによって、スリーブ4を閉じた状態に保持させる(図16参照)。続いて、押し込み部材20,20、20,20のうちの任意の個数(例えば2つ)の押し込み部材20,20を持って下方へ押すことにより、スリーブ4を区画貫通孔3内へ押し込む。スリーブ4に備える鍔部6の外周部が区画貫通孔3の内周面3Aと当接することによって、鍔部6が前述したお椀形状になりながら、スリーブ4と共に区画貫通孔3内へ入り込んでいく。そして、押し込み部材20,20、20,20の上端が、床面2Aと略同一高さ位置になる所定の設置位置までスリーブ4を区画貫通孔3に押し込んでいく。スリーブ4が区画貫通孔3内の所定の設置位置に位置すると、鍔部6が区画貫通孔3を閉じた状態となり、スリーブ4の押し込み作業が完了する(図17参照)。完了後は、充填材8をスリーブ4を挿入した同一側から区画貫通孔3へ充填して充填作業が終了する(図18、図19参照)。尚、充填材8は、前述と同様のため、説明を省略する。
図19は、スリーブ4が区画貫通孔3に挿入された状態において、区画貫通孔3と配管1との隙間に充填材8が充填された状態を示している。図19を見ると、止水部13及び落ち込み防止クリアランス14が図5と同様に形成されている。充填材8を区画貫通孔3へ充填する際に、押し込み部材20,20、20,20がスリーブ4の上端の周方向の4箇所のみに配置されているため、充填材8を支障なく充填することができる。よって、止水部13を確実に形成することができる。尚、説明しなかった構成は、前述と同一構成であるため、それらの詳細説明は省略する。
尚、本発明は、上記4つの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
前記第4実施形態では、切れ目6Hを、1つの開閉可能に構成された端部21B,21C同士の開閉端位置21Sと周方向で略同一位置(同一位置を含む)に形成したが、切れ目6Hを、1つの開閉可能に構成された端部21B,21C同士の開閉端位置21Sと周方向で異なる位置に形成してもよい。
前記第1~第3実施形態では、2つの半割り部材の両端部を係止することで両者を一体化してスリーブ4を構成したが、2つの部材を一端部同士を軸により互いに回転可能に連結し、2つの部材の他端部にそれぞれ、係止解除可能な被係止部及び係止部を備えて実施してもよい。また、一端が開放可能に弾性体で構成された円環状の部材、又は可撓性のある平板材や波形材などからスリーブを構成してもよい。
また、前記4つの実施形態では、床を例に挙げたが、壁を例に挙げてもよい。尚、壁の場合には、区画貫通孔の両端にそれぞれ、壁面が存在する。
また、前記4つの実施形態では、取付部材を用いた場合を示したが、取付部材を省略して、スリーブを区画貫通孔に直接押し込むようにしてもよい。
また、前記4つの実施形態では、区画貫通孔3が平面視において丸いものであったが、平面視において矩形状のものであってもよい。このとき、鍔部6の形状も平面視において矩形状とする。
また、前記第1実施形態~第3実施形態の3つの実施形態では、熱膨張材5を、区画貫通孔3へスリーブ4内における鍔部6に径方向において一部が重複した状態でスリーブ4の挿入方向手前側に向かって配置したが、区画貫通孔3へスリーブ4内における鍔部6に径方向において一部が重複しないように、鍔部6よりもスリーブ4の挿入方向手前側(後端側)に熱膨張材5を配置してもよいし、また、図12に示すように、鍔部6に径方向においてほぼ完全に重複するように熱膨張材5を配置してもよい。この場合、スリーブ4の挿入方向中間部に外側に突出する突出部4Tを形成し、その突出部4Tの内部に熱膨張材5を配置している。また、図13に示すように、鍔部6に径方向において重複しないように、鍔部6よりもスリーブ4の挿入方向奥側端部に熱膨張材5を配置してもよい。この場合、スリーブ4の挿入方向奥側端部に外側に突出する突出部4Tを形成し、その突出部4Tの内部に熱膨張材5を配置している。第4実施形態の図19では、鍔部6をスリーブ4の下端から下方に延びる爪に差し込んで保持させているため、熱膨張材5が、鍔部6よりもスリーブ4の挿入方向手前側に位置している。尚、図12及び図13において説明しなかった部分は、図5と同一構成であるため、図5と同一の符号を付すとともに説明を省略する。また、熱膨張材5をスリーブ4の内面に配置したが、熱膨張材5をスリーブ4に配置しないで、熱膨張材5を配管1の外周面に配置してから、スリーブ4を区画貫通孔3内に挿入してもよい。また、熱膨張材5を省略した措置具であってもよい。
また、前記第4実施形態では、スリーブ4が2個の部材21,21を備えていたが、3個以上の任意の個数の部材を備えていてもよい。この場合、3個以上の部材における周方向で対向する端部同士のうちの1つは、開閉可能となっており、残りの2つ以上は前記1つが開閉するように回動可能な連結部を介して連結されることになる。