JP7714921B2 - アルミニウム合金押出材 - Google Patents
アルミニウム合金押出材Info
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Description
Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
B:質量基準でTiの0.050倍以上1.0倍以下、
及び残部がAlと不可避不純物からなり、
押出方向に垂直な断面において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合が90.0%以上であり、
押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のSi粒子の存在密度が50×103個/mm2以上150×103個/mm2以下である
アルミニウム合金押出材。
よって、本発明によれば、低コストで、引張強さ及び耐力が高いアルミニウム合金押出材を提供することができる。
<1.アルミニウム合金押出材>
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の化学組成は、それぞれ後述する含有量のSi、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、B、及び残部からなり、残部がAl及び不可避不純物からなる。なお、後述するが、本実施形態にかかる押出材は、Bを含まなくてもよい。すなわち、本実施形態にかかる押出材は、Si、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、B、及び残部(Al及び不可避不純物からなる)からなる化学組成でもよく、Si、Mg、Cu、Fe、Zr、Ti、及び残部(Al及び不可避不純物からなる)からなる化学組成でもよい。
本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材には、Zrを含有する微粒子が存在することが好ましい。ここで、Zrを含有する微粒子をZr含有微粒子と呼ぶこともある。Zr含有微粒子の詳細については後述する。
〔1-1.アルミニウム合金押出材の各成分〕
[1-1-1.Si]
押出材中のSiの含有率は0.90質量%以上であり、1.03質量%以上であることが好ましく、1.05質量%以上であることがより好ましい。Siは、Mgとの相互作用にて化合物を形成しやすく、Mg2Si析出物が形成されると、押出材の強度向上に寄与するためである。また、後述するMgの添加量に対して、Mg2Siを生成するための添加量を超えて過剰に添加することにより、人工時効処理(後述する時効工程)後の押出材の強度等の特性をより高めることができるためである。
[1-1-2.Mg]
押出材中のMgの含有率は0.65質量%以上であり、0.70質量%以上であることが好ましく、0.72質量%以上であることがより好ましく、0.74質量%以上であることがさらに好ましい。Mgは、Siとの相互作用にて化合物を形成しやすく、Mg2Si析出物が形成されると、押出材の強度向上に寄与するためである。
[1-1-3.Cu]
押出材中のCuの含有率は0.25質量%以上であり、0.28質量%以上であることが好ましく、0.32質量%以上であることがより好ましく、0.36質量%以上であることがさらに好ましい。Cuの含有により、Mg2Si析出物の見かけの過飽和量を増加させ、Mg2Si析出物の析出量を増加させることにより、押出材の時効硬化性が向上するためである。また、Cuを含む化合物が結晶粒内に微細に析出すると強度向上に寄与する。
[1-1-4.Fe]
押出材中のFeの含有率は0.050質量%以上であり、0.080質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることがさらに好ましい。FeはAl、Siと結合して鋳造時に晶出すると共に、結晶粒の粗大化を抑制する効果があるためである。
[1-1-5.Zr]
Zrは、均質化処理時にZr含有微粒子(詳細は後述する)として析出し、押出加工時に発生する結晶粒(詳細は後述する)の核となる。押出材中のZrの含有率は0.10質量%以上であり、0.11質量%以上であることが好ましく、0.13質量%以上であることがより好ましい。この理由は、Zr含有微粒子、すなわち再結晶の核の数を増加させ、後述する結晶粒の粗大化を抑制するためである。
[1-1-6.Ti]
Tiは、鋳造時の結晶粒を微細化する働きがあり、加えて鋳造時の鋳塊割れを抑制する効果がある。押出材中のTiの含有率は0.010質量%以上であり、0.020質量%以上であることが好ましく、0.025質量%以上であることがより好ましい。
[1-1-7.B]
BもTiと同様に結晶粒微細化に有効であり、添加することにより、TiB2粒子が生成し、分散すると考えられる。さらに、TiB2粒子が結晶の凝固核となり、後述する結晶粒の微細化をもたらすと考えられる。Bは含んでもよく、含まなくてもよい。ここで「Bを含まない」とは、不可避不純物以外のBを含まないということであり、不可避不純物としてのBは含んでもよい。Bを含む場合、押出材中のBの含有量は質量基準でTiの0.050倍以上であることが好ましく、0.10倍以上であることがより好ましく、0.15倍以上であることがさらに好ましい。この理由は、後述する結晶粒の粗大化を抑制するためである。
[1-1-8.その他の元素]
押出材中の不可避不純物として、例えば、Mn及びCrは可能な限り含有率を少なくすることが好ましい。この理由は、焼入れ感受性を鈍化させ、冷却速度のばらつきが強度に与える影響を小さくし、押出材の品質をより安定させることができるためである。
〔1-2.結晶粒〕
図1は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の、押出方向に垂直な断面における、光学顕微鏡による偏光組織の写真の一例(後述する実施例1)を示す図である。同図に示すように押出材の、押出方向に垂直な断面(本項では以下、単に断面とすることもある)において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合は90.0%以上であり、95.0%以上であることが好ましく、98.0%以上であることがさらに好ましく、99.0%以上であることが特に好ましい。この理由は、結晶粒間のへき開破壊を抑制し、押出材のせん断応力に対する強度を向上させるためである。
〔1-3.Si粒子〕
図2は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。ここで、Si粒子は、同じ視野のEDXマッピングにおける各元素量の定量分析に基づいて確認される粒子である。具体的には、Si粒子は、この分析においてSiの含有率が90mass%以上、残部がAl(不可避不純物を含んでもよい。また、Siが100mass%(残部なし)でもよい)である粒子とする。図2の写真内の黒い点がSi粒子である。
〔1-4.Zr含有微粒子〕
図4は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の押出方向に垂直な断面における微細構造の走査電子顕微鏡(SEM)による写真の一例(実施例1)を示す図である。図4の写真内の白い部分がZr含有微粒子である。Zr含有微粒子の粒径は0.010μm以上1.0μm以下であり(この範囲にないサイズの粒子は、本発明におけるZr含有微粒子ではない)、粒子のサイズがこの範囲にあるか否かは、後述する二値化した画像に基づいて判定される。本実施形態にかかるアルミニウム合金押出材はZr含有微粒子を含むことが好ましい。この理由は、Zr含有微粒子を核とすることで、結晶粒がより形成しやすくなるためである。Zr含有微粒子は、Al3ZraSi1-a(0<a≦1)であることが好ましい。
〔1-5.アルミニウム合金押出材の機械的性能〕
本実施形態にかかるアルミニウム押出材の500℃における圧縮変形開始応力は、25MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、19MPa以下であることがさらに好ましい。ここで500℃における圧縮変形開始応力とは、後述する実施例の方法にて測定される値である。
<2.アルミニウム合金押出材の製造方法>
図7は、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例を示すフロー図である。以下、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金押出材の製造方法の一例について説明するが、本発明にかかる押出材の製造方法はこれに限られない。
〔2-1.溶融工程〕
溶融工程では、アルミニウム合金の溶湯を調製する。溶湯の化学組成は、得ようとするアルミニウム合金押出材の化学組成と同じであることが好ましく、アルミニウム合金押出材に含まれる各元素については上記したとおりである。
〔2-2.鋳造工程〕
鋳造工程では、溶融工程で得られた溶湯を鋳造することによりビレット(押出用素材)を得る。鋳造方法は、特に限定されないが、例えば、垂直型フロート連続鋳造法、垂直型ホットトップ連続鋳造法、水平型連続鋳造法等が挙げられる。
〔2-3.均質化工程〕
均質化工程では均質化処理を行い、鋳造工程で得られたビレットの金属組織を均質化する、及びアルミニウム合金に含まれる原子を十分に固溶させる。均質化工程によって強度の高い押出材が得られる。均質化工程に用いられるアルミニウム合金(ビレット)の化学組成は、得ようとするアルミニウム合金押出材の化学組成と同じであることが好ましく、アルミニウム合金押出材に含まれる各元素については上記したとおりである。
〔2-4.加熱工程〕
加熱工程では、均質化工程で均質化されたビレットを加熱し、ビレットの変形抵抗を低下させる。また、加熱工程によりビレットを構成する成分を固溶させる。加熱工程において用いられるビレットを構成するアルミニウム合金材に含まれる元素及びその含有量は、アルミニウム合金押出材の説明にて上記したとおりである。
〔2-5.押出工程〕
押出工程では、加熱工程において加熱されたビレットを押出加工して、押出材を得る。具体的には、例えば、加熱工程において加熱されたビレットをコンテナに装填し、所定の開口部形状を有する押出用金型(以降、ダイスと呼ぶ)に押し付けることで、所望の断面形状を有する押出材が得られる。本実施形態にかかる押出材は、中空形状を有することが好ましい。押出速度は5.0mm/min以上であることが好ましく、6.5mm/min以上であることがより好ましい。この理由は、材料にひずみを与えて、上記結晶粒を有する金属組織がより形成しやすくなるためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
〔2-6.ダイクエンチ工程〕
ダイクエンチ工程では、押出加工(押出工程)により得られた押出材の冷却をする。冷却方法は、特に限定されないが、水冷、ミスト冷却、ファン空冷、放冷等が挙げられる。ダイクエンチ工程により、過飽和固溶体が形成される。冷却速度は7.0℃/sec以上であり、10℃/sec以上であることが好ましく、12℃/sec以上であることがより好ましい。この理由は、固溶している成分の析出を抑制し、過飽和固溶体を維持しやすいためである。また、押出材の生産性が向上するためである。
〔2-7.時効工程〕
時効工程では、ダイクエンチ工程において冷却された押出材に、人工時効処理を行う。時効工程により、押出材においてMg2Si系析出物が成長し、押出材の強度が向上する。
<1.アルミニウム合金押出材の作製>
表1に示す元素、Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を用いて、直径156mmの円形断面を有するビレットを連続鋳造にて作製した。得られたビレットを560℃で14時間の均質化処理を施した。その後、ビレットを30℃まで、180℃/hで冷却した。次に、冷却されたビレットを500℃に加熱した。なお参考までに表1においてグレイの背景色が施されている部分は、本発明の要旨を逸脱する部分である。
<2.アルミニウム合金の各種測定>
〔2-1.アルミニウム合金の500℃における圧縮変形開始応力の測定〕
均質化処理を施し、冷却されたビレットの中心部から、φ8mm×12mmの試験片形状に切り出した。なお、φ8mm×12mmの長手方向は、ビレットの長手方向(押出方向)である。切り出した試験片を500℃まで50℃/secで昇温し、500℃で10min保持し、500℃でひずみ速度0.10/sec(1秒ごとの圧縮率の増加量)、圧縮率({圧縮により減少した寸法(試験開始前は0mm)}/圧縮前の寸法(12mm))0.75まで圧縮し、応力-ひずみ(圧縮率)線図を得た。圧縮は真空雰囲気にて実施した。試験機は富士電波工機製のサーメックマスタZを用いた。
〔2-2.押出性〕
上記押出工程(500℃に加熱されたビレットを用いた押出加工)における押出性を、下記判断基準に基づいて判定した。
「良」・・・押出圧力が25MPa未満であり、押出材に割れ及び目視上のクラックがない場合。
「不良」・・・押出圧力が25MPa以上である、押出材に割れが生じている、及び押出材に目視上のクラックがある、の少なくともいずれかである場合。
<3.アルミニウム合金押出材の各種測定>
図9及び図10は記述した通り各実施例及び各比較例で作製されたアルミニウム合金押出材を示す図である。以下の説明において、L、LT、STが示す向きは、図9及び図10の矢符号「L」「LT」「ST」で示される向きを示す。
〔3-1.押出材断面における結晶粒の占める面積割合〕
それぞれの押出材について、LTの向きに厚みを有する部分(側壁)からL:10mm、ST:10mm、LT:2mmの厚さに試験片を切り出した(L-ST面を0.5mm削り、厚さ2mmとしている)。この試験片を樹脂埋めし、Lの向きに垂直な断面をバフ研磨にて鏡面仕上げを行ったのち、バーカー電解液でエッチング処理を施した。処理が施された断面における、光学顕微鏡による偏光組織の画像を、画像処理ソフトウェアImage Jを用いて以下の解析をした。観察範囲は1.95mm×2.60mmで、画像の数は各実施例及び各比較例で2個である。結晶粒の観察のための写真の一例は、図1に示した通りで、これは実施例1の押出材の断面写真である。
〔3-2.Si粒子の存在密度〕
それぞれの押出材について、LTの向きに厚みを有する部分(側壁)からL:10mm、ST:10mm、LT:2mmの厚さに試験片を切り出した(L-ST面を0.5mm削り、厚さ2mmとしている)。切り出された試験片をLの向き(押出方向)に垂直にカットし、日本電子社製クロスセクションポリッシャにて観察用断面を形成させた。日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率10,000倍で、12.1μm×9.09μm=109.989μm2の視野の画像を4個取得し、EDXマッピング分析を行った。
〔3-3.押出材断面におけるZr含有微粒子の存在密度〕
それぞれの押出材について、LTの向きに厚みを有する部分(側壁)からL:10mm、ST:10mm、LT:2mmの厚さに試験片を切り出した(L-ST面を0.5mm削り、厚さ2mmとしている)。切り出された試験片をLの向き(押出方向)に垂直にカットし、日本電子社製クロスセクションポリッシャにて観察用断面を形成させた。日本電子社製電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7000Fを用いて、倍率10,000倍で、12.1μm×9.09μm=109.989μm2の視野の画像を4個取得し、粒径0.010μm以上1.0μm以下のZr含有微粒子を、EDXライン分析(例えば図5)及び二値化した画像(例えば図6)を参照しながらカウントした。4視野分のZr含有微粒子の数NZを4視野分の面積で割って、Zr含有微粒子の存在密度を算出した。
〔3-4.引張強さ及び0.2%耐力〕
各実施例及び各比較例において得られたアルミニウム合金押出材から、JISZ2241に規定されている方法により測定した。測定は5号試験片を切り出して行った。具体的には、押出方向(L方向)に沿って標点間距離50mm及び平行部長さ60mm、幅25mm、厚さ2mm、肩部R30mmで切り出した。引張試験片の常温(24℃)における引張試験(JISZ2241に準拠)を、クロスヘッド速度2mm/minにて行うことで、引張強さを算出し、オフセット法にて0.2%耐力を測定した。
〔3-5.押出材の変形量〕
時効工程後の押出材を押出方向に垂直な面でカットした。押出材のカットされた断面の外形における隣り合う2辺の角度を測定し、図10に示すように90°からの差の絶対値θ[°]を変形量として求めた。各実施例及び各比較例にかかる押出材について、測定された変形量θを表1に示した。
<4.評価>
各実施例にかかるアルミニウム合金は、いずれも押出性に優れている。そのため、各実施例にかかるアルミニウム合金押出材の生産性を向上させることができ、結果として押出材の製造コストの低減が可能である。また、各実施例にかかるアルミニウム合金押出材は、いずれも引張強さ及び耐力が高い。
Claims (5)
- アルミニウム合金押出材であって、
Si:0.90質量%以上2.00質量%以下、
Mg:0.65質量%以上0.90質量%以下、
Cu:0.25質量%以上0.50質量%以下、
Fe:0.050質量%以上0.49質量%以下、
Zr:0.10質量%以上0.25質量%以下、
Ti:0.010質量%以上0.10質量%以下、
B:質量基準でTiの1.0倍以下、
及び残部がAlと不可避不純物からなり、
押出方向に垂直な断面において、アスペクト比が5.0以下かつ長軸方向の長さが50μm以上1000μm以下の結晶粒が占める面積割合が90.0%以上であり、
押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のSi粒子の存在密度が50×103個/mm2以上150×103個/mm2以下であり、
500℃における圧縮変形開始応力が25MPa以下であり、0.2%耐力が285MPa以上であるアルミニウム合金押出材。 - 押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のZr含有微粒子の存在密度は0.30個/μm2以上3.0個/μm2以下である請求項1に記載のアルミニウム合金押出材。
- 前記Zr含有微粒子はさらにSiを含む請求項2に記載のアルミニウム合金押出材。
- 押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のSi粒子の存在密度が53×103個/mm2以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金押出材。
- 押出方向に垂直な断面において、粒径0.010μm以上1.0μm以下のSi粒子の存在密度が120×103個/mm2以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金押出材。
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