JP7721081B2 - 量子ドットおよびその製造方法、緑色の蛍光体、可視化染料並びに顔料 - Google Patents
量子ドットおよびその製造方法、緑色の蛍光体、可視化染料並びに顔料Info
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Description
直接遷移型バンド構造をもつ半導体結晶は、バルクのエキシトンボーア半径よりも小さな結晶に微小化されると、粒子サイズに依存して光吸収・PL(フォトルミネッセンス)スペクトルがシフトする。これは、微小結晶粒子中に電子・正孔や励起子が閉じこめられてエネルギー状態が離散的となった結果であるが、一般にこのような半導体結晶は、量子ドットと呼ばれる。
量子ドットは、発光や光吸収スペクトルを粒子のサイズで変調できることから、波長可変蛍光体、発光ダイオード、レーザー、および受光素子等に応用されている。最近では、可視光域の蛍光体粒子として、例えば特許文献1から3に開示がある、バンドギャップの狭いInPなどからなるコアをバンドギャップの広いZnSeなどからなるシェルで覆ったコア/シェル構造の量子ドットが開発されている。
さらに、蛍光体、量子ドットには、高い量子効率(PLQY:Photoluminesence Quantum Yield)と、狭い半値幅のPL発光、および低い毒性の材料であることが求められている。
(構成1)
コア部と前記コア部を覆うシェル部からなり、
前記コア部の表面は前記シェル部の内面側の表面と接しており、
前記コア部はインジウムリン(InP)の単結晶からなり、
前記シェル部は硫化亜鉛(ZnS)の単結晶からなり、
前記シェル部の厚さが0.2nm以上1.1nm以下である、量子ドット。
(構成2)
前記コア部は球形であり、前記コア部の直径が0.58nm以上2.95nm以下である、構成1記載の量子ドット。
(構成3)
前記コア部の結晶の格子定数と前記シェル部の結晶の格子定数が同一である、構成1または2記載の量子ドット。
(構成4)
前記格子定数は0.56nmである、構成3記載の量子ドット。
(構成5)
前記シェル部の厚さは0.27nm以上1.08nm以下である、構成1から4の何れか1項記載の量子ドット。
(構成6)
前記シェル部の厚さが0.81nmである、構成5記載の量子ドット。
(構成7)
コア部と前記コア部を覆うシェル部からなり、
前記コア部の表面は前記シェル部の内面側の表面と接しており、
前記コア部はインジウムリン(InP)の単結晶からなり、
前記シェル部は、前記コア部に接する第1のシェルと、前記第1のシェルに接する第2のシェルからなり、
前記第1のシェルはガリウムリン(GaP)の単結晶からなり、
前記第2のシェルは硫化亜鉛(ZnS)の単結晶からなり、
前記第1のシェル部の厚さが0.27nm以上1.9nm以下であり、
前記第2のシェル部の厚さが0.27nm以上1.9nm以下である、量子ドット。
(構成8)
前記コア部の直径が2.4nm以上2.95nm以下である、構成1から7の何れか1項記載の量子ドット。
(構成9)
酢酸インジウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムの内いずれか1以上と、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛からなる群より選ばれる1以上と、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸からなる群より選ばれる1以上と、トリオクチルホスフィンと、1-オクタデセン(ODE)、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセンからなる群より選ばれる1以上とを不活性ガス下で混合して第1の混合液を作製することと、
前記第1の混合液を真空下で第1の熱処理を行うことと、
前記第1の熱処理の後不活性ガス環境下で、前記第1の混合液に、トリオクチルホスフィンに亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶解させた第1の溶液を加えることと、
前記第1の溶液添加の後、前記第1の混合液を真空下で第2の熱処理を行うことと、
第2の熱処理の後、前記第1の混合液を不活性ガス下で第3の熱処理を行ってInPコアを作製することと、
前記InPコアと、ODEと、ドデカンチオール(DDT)または硫黄粉末と、オレイン酸亜鉛(Zn-OA)またはステアリン酸亜鉛(Zn-SA)とを混合し、真空下で保持して第2の混合液を作製することと、
前記第2の混合液を不活性ガス下で第4の熱処理を行うことと、
前記第4の熱処理後に、前記第2の混合液にDDTとZn-OAを添加し、不活性ガス下で第5の熱処理を行うことを含む、量子ドットの製造方法。
(構成10)
前記不活性ガスはアルゴンガスである、構成9記載の量子ドットの製造方法。
(構成11)
前記第1の熱処理の温度は、90℃以上140℃以下である、構成9または10記載の量子ドットの製造方法。
(構成12)
前記第2の熱処理の温度は、25℃以上60℃以下である、構成9から11の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
(構成13)
前記第3の熱処理の温度は、210℃以上320℃以下である、構成9から12の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
(構成14)
前記第4の熱処理の温度は、210℃以上320℃以下である、構成9から13の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
(構成15)
前記第5の熱処理の温度は、230℃以上320℃以下である、構成9から14の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
(構成16)
構成1から8の何れか1項記載の量子ドットを含む、緑色の蛍光体。
(構成17)
構成1から8の何れか1項記載の量子ドットを含む、緑色の可視化染料。
(構成18)
構成1から8の何れか1項記載の量子ドットを含む、緑色の顔料
実施の形態1では、InP/ZnSからなるコア/シェル構造をもつ量子ドットについて述べる。
発明者は、図1に示すように、緑色を示す510-540nm波長域に蛍光(PL)ピークを示すサイズに粒子化したInPをコア11にして、1.1nm以下の厚さのZnSシェル12で被覆したコア/シェル構造とした量子ドット1は、PLピークが粒子サイズに依存して500-530nmの波長域で変調でき、PLスペクトルのピーク近傍の対称性が高く、PLピークの半値幅(PL-FWHM)が40nm以下で、量子収率(PLQY)が60%以上が得られることを、多大な研究を通して見出した。さらに光吸収スペクトルの第1エキシトンピークは急峻で、Valley-depthが0.51以下かつ半値幅が50nm以下でという優れた特性をもつことを見出した。
ここで、図19に示すように、Valley-depth(VD)は下記式(1)で定義される。
VD=1-[吸光度(最小)/吸光度(最大)] ・・・(1)
InPコア11を用いて、波長500-530nmの緑の領域の量子ドット1とするために、InPコア11の大きさを調整する。
直接遷移型バンド構造をもつ半導体結晶をバルクのエキシトンボーア半径よりも小さな結晶に微小化すると、その微小結晶粒子中に電子・正孔や励起子が閉じこめられ、それらのエネルギー状態は離散的となり、粒子サイズに依存して光吸収・PLスペクトルはシフトするようになる。この原理を適用して、発光や光吸収スペクトルをドットサイズで変調した。そのためのInPコア11の具体的な直径は、0.27nm以上1.08nm以下である。
このダブルシェル構造は、600nmよりも長い波長域で発光する蛍光体として使用されるときは問題ないが、PL波長が530nmよりも短くなる波長域では、InPのバンドギャップはZnSeのバンドギャップではエネルギー的に挟み込めなくなるほどに増大する。上述のように、挟み込めないとキャリアはシェルにまで染み出し、キャリアの放射性再結合がコア内だけでなく、コア/シェル界面、さらにはシェルでも起こる。その結果、半値幅PL-FWHMは増大し、量子収率PLQYは減少するという問題が起こる。
また、このダブルシェル構造では、セレン、セレン化合物が用いられており、ジョイント・インダストリー・ガイドライン(JIG)における調査対象物質に選定される毒性の問題もある。
コアとシェルが同一の格子定数をもつために、異種半導体が接合しているにも関わらず、コア/シェル界面の格子整合性が良い。さらに、上述のように、コア11のバンドギャップをZnSシェル12がエネルギー的に完全に挟み込めるので、キャリアをコア結晶内に強く閉じ込み(シェルに逃がさず)、放射性再結合確率を増大できる。その結果、60%以上という高い量子収率PLQYを得ることが可能になる。
また、実施の形態1の量子ドット1およびそれを含む材料は、高い量子収率をもち、PL半値幅も狭く、有毒性が指摘されている材料も含まない緑色の可視化染料として使用することもできる。具体的には、手術で用いる緑色の可視化染料などを挙げることができる。光を当てると高輝度で明瞭性の高いマーカーとなり、例えばがんの手術がやりやすくなる。
また、実施の形態1の量子ドット1およびそれを含む材料は、緑色の顔料、緑色の化粧品として使用することもできる。光が当たらない暗闇では目立った色を発色せず、太陽光などの光の下で色度図の緑の頂点付近の色を効率よく発色する、これまでにあまり例のない特徴をもった顔料、化粧品を提供することが可能になる。
量子ドット1の製造方法を、製造フローチャート図である図3を参照しながら説明する。
最初に、酢酸インジウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムと酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛からなる群より選ばれる1以上と、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸からなる群より選ばれる1以上と、トリオクチルホスフィンと、1-オクタデセン(ODE)、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセンからなる群より選ばれる1以上とを不活性ガス下で混合して第1の混合液を作製する(工程S11)。ここで、不活性ガスとしては、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガスなどの希ガスおよび窒素ガスを挙げることができ、混合を行うときの温度は、特に制限はないが、室温(例えば20℃以上25℃以下)が取り扱いが容易で好ましい。なお、酸としては、パルミチン酸が、収率が高く、特に好んで用いることができる。
ここで、真空度としては60Pa以下が好ましい。60Pa以下とすることで光吸収スペクトルの狭い第1エキシトンピークを得ることができる。真空度の下限は特に制限はないが、取り扱いの容易さやコストを鑑みると15Pa以上とするのが好ましい。また、15Pa以下ではODEの蒸発が始まるので、熱処理温度を下げる必要がある。
また、第1の熱処理の温度は90℃以上140℃以下、第1の熱処理の時間は2時間以上12時間以下が、不純物を取り除くのに十分な温度と時間のため、好ましい。
ここで、真空度としては60Pa以下が好ましい。60Pa以下とすることで光吸収スペクトルの半値幅が狭くValley-depthの大きな第1エキシトンピークを得ることができる。真空度の下限は特に制限はないが、取り扱いの容易さやコストを鑑みると15Pa以上とするのが好ましい。
また、第2の熱処理の温度は20℃以上60℃以下、第2の熱処理の時間は5分以上20分以下が、不純物を取り除くのに十分な温度と時間のため、好ましい。
ここで、不活性ガスとしては、アルゴンガスなどの希ガスや窒素ガス、及びそれらの混合ガスを挙げることができ、不活性ガスの圧力としては、特に制約はないが、取り扱いの容易さから大気圧が好ましい。
また、第3の熱処理の温度は210℃以上320℃以下、第3の熱処理の時間は2分以上30分以下が、オストワルド成長を抑制し均一な粒度を得るために、好ましい。
ここで、真空度としては60Pa以下が好ましい。60Pa以下とすることで光吸収スペクトルの半値幅の狭い第1エキシトンピークを得ることができる。真空度の下限は特に制限はないが、取り扱いの容易さやコストを鑑みると15Pa以上とするのが好ましい。
また、熱処理の温度は90℃以上140℃以下、熱処理の時間は20分以上30分以下が、狭いPL半値幅を有する緑色の蛍光体の適切な合成温度と時間のため、好ましい。
ここで、不活性ガスとしては、アルゴンガスなどの希ガスおよび窒素ガス、またはこれらの混合ガスを挙げることができ、不活性ガスの圧力としては、特に制約はないが、取り扱いの容易さから大気圧が好ましい。
また、第4の熱処理の温度は210℃以上320℃以下、第4の熱処理の時間は20分以上30分以下が、作製したInPコア上にZnSシェルを均一に成長させるための適切な温度と時間のため、好ましい。
ここで、不活性ガスとしては、アルゴンガスなどの希ガスおよび窒素ガス、またこれらの混合ガスを挙げることができ、不活性ガスの圧力としては、特に制約はないが、取り扱いの容易さから大気圧が好ましい。
また、第5の熱処理の温度は、所望するZnSシェル膜厚に依存し、230℃以上320℃以下の範囲で制御する。第5の熱処理の時間はいずれの反応温度においても20分以上30分以下が、InPコア/ZnSシェル上にZnSシェルを単分子層ずつ成長させるために適切な温度と時間のため、好ましい。図18に示す熱処理工程図は、DDTとZn-OA添加液量、熱処理温度およびシェル層の関係である。
実施の形態2では、InP/GaP/ZnSからなるコア/シェル/シェル構造をもつ量子ドットについて述べる。
GaPシェルは、厚さ0.27nm以上1.9nm以下、分子数で表すと1単分子以上7単分子以下、ZnSシェルは、厚さ0.27nm以上1.9nm以下、分子数で表すと1単分子以上7単分子以下が好ましく、GaPシェルの厚さは1単分子、ZnSシェルはの厚さは3単分子がより好ましい。
このようにすると、InP/GaP/ZnSの格子整合性が高くなる。すなわち、InP、GaP、ZnSの材料自体の格子定数は、それぞれ0.587nm、0.545nmおよび0.542nmであるが、InPコアは実施の形態1に準拠し、シェルが上記の厚さの場合は、InPコア表面、GaPシェル、ZnSシェルの格子定数は、全て0.56nmに変調される。
さらに、図2に示されているように、GaPシェルのバンドギャップは、InPコアのそれをほぼ挟み込み、ZnSシェルのバンドギャップはGaPシェルのそれを完全に挟み込んでいるので、電荷キャリアをコア結晶内に強く閉じ込み(シェルに逃がさず)、放射性再結合確率を増大できる。
また、実施の形態2の量子ドットおよびそれを含む材料は、高い量子収率をもち、PL半値幅も狭く、有毒性が指摘されている材料も含まない緑色の可視化染料として使用することもできる。具体的には、手術で用いる緑色の可視化染料などを挙げることができる。光を当てると高輝度で明瞭性の高いマーカーとなり、例えばがんの手術がやりやすくなる。
また、実施の形態2の量子ドットおよびそれを含む材料は、緑色の顔料、緑色の化粧品として使用することもできる。光が当たらない暗闇では目立った色を発色せず、太陽光などの光の下で色度図の緑の頂点付近の色を効率よく発色する、これまでにあまり例のない特徴をもった顔料、化粧品を提供することが可能になる。
InPコアは実施の形態1に準拠して作製する。
GaP/ZnSシェルは下記により形成する。InPコア、ODE、GaCl3を混合して、室温、真空度60Pa以下に保持した試料を不活性ガスの大気圧下において200℃に到達した段階で、まずはGaPシェルを形成し、同温度でDDTとZn-OAを添加し、230℃に昇温し、DDTとZn-OAを添加し、その後240℃の熱処理を施すことによりZnSシェルを形成する。
実施例1では、InPコアからなるサンプルAを作製してその特性を評価した。その作製工程を下記に示す。
最初に、酢酸インジウム(0.15mmol)、酢酸亜鉛(0.075mmol)、パルミチン酸 (0.6mmol)および1-オクタデセン(ODE、6.3mL)を混合してアルゴンガスでパージした。なお、アルゴンガスに代えて廉価な窒素ガスを用いてもよかった。
その後、真空度60Pa以下で140℃まで昇温し、同温度で12時間保持した後に、室温まで冷却し、アルゴン大気圧環境に保持した。
続いて0.12mmolの亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶かしたトリオクチルホスフィン(1mL)を加え、真空度60Pa以下で40℃に昇温し、同温度で10分保持した。室温に戻してからアルゴン大気圧にして、300℃へ昇温、10分保持することでInPコアを得た。
図5のサンプルAに示された粉末X線回折法(XRD)から、格子定数は0.58nmと算出された。この値はInP結晶の理論値(0.58nm)と一致している。
図6のサンプルAに示されているように、PLスペクトルは510nmと660nmに2つのピークをもつ低対称なスペクトル形状を有する。510nmに位置するPLピークの半値幅(FWHM)は54nmであった(図7白丸)。また、PL内部量子収率(PLQY)は1%であった(図7黒丸)。また、図8に示されているように、光吸収スペクトルの460nmに表されている第1エキシトンピークは、急峻で、半値幅FWHMは48nmであった(図9)。InPコア単体では量子収率PLQYは十分に小さいものである。
実施例2では、コヒーレントコア/シェル構造の量子ドットであるサンプルBを作製してその特性を評価した。
最初に、上記工程により作製したInPコアであるサンプルAを準備した。
ZnSシェルは下記工程により作製した。
まず、InPコア(サンプルA)(2mL)、ODE(2mL)、ドデカンチオール(DDT、0.52mmol、124μL)、オレイン酸亜鉛(Zn-OA、0.4mol/L、1mL)を混合して、室温、真空度60Pa以下で30分保持した。
続いてアルゴン大気圧にして、230℃へ昇温、230℃で20分保持することでInP/ZnSコア/シェル粒子を得た。これをここでは、サンプルBとする。
HRTEM(High Resolution Transmission Electron Microscope)計測値から見積もった(111)結晶の面間隔は,0.32nmであった(図10)。この面間隔から格子定数は0.56nmと見積もられ、これはXRDより算出された値と一致した。
HRTEM観察から、ZnSシェルの膜厚は0.54nmと見積もられた。この厚さは2単分子膜厚のシェルに相当するものである。
PLスペクトルは、図6に示すとおり、500nmにのみピークをもち、他にピークをもたず、対称性も高かった。図7(同図の左から2番目の点)に示すとおり、量子収率PLQYは37%、PLピークの半値幅であるPL-FWHMは35nmであった。また、光吸収スペクトルの第1キシトンピークのFWHMは、43nmであった。
実施例3では、極大のPL値を与えるコヒーレントコア/シェル構造の量子ドットであるサンプルCを作製してその特性を評価した。
最初に、InPコアとしてサンプルAを準備した。
ZnSシェルは、下記工程により作製した。
InPコア(2mL)、ODE(2mL)、DDT(124μL)およびZn-OA(1mL)を混合して、室温、真空度60Pa以下で30分保持した。続いてアルゴン大気圧にして、230℃へ昇温、同温度で20分保持し、続いてDDT(124μL)とZn-OA(1mL)を添加して240℃に昇温し、20分間保持することで3単分子シェルからなる量子ドット(サンプルC)を作製した。
HRTEM観察から、ZnSシェルの膜厚は0.81nmと見積もられた。
HRTEMから計測した(111)面の面間隔は0.32nmであり、この面間隔から格子定数は0.56nmと見積もられ、XRDから計算された値と一致した。
図7(同図の左から3番目の点)に示されるように、PL内部量子収率(PLQY)は60%であった。PLスペクトルは対称で、ピークは500nmに観察された。PLピークの半値幅FWHMは35nmであり、光吸収スペクトルの第1エキシトンピークFWHMは44nm、Valley-depthは0.51(図19)であった。以上から、3単分子シェルからなるInP/ZnSコヒーレントコア/シェル構造の量子ドットは、高い量子収率PLQYと狭い半値幅PL‐FWHMをもつ量子ドットであった。
実施例4では、コアサイズを変えたコヒーレントコア/シェル構造の量子ドットであるサンプルDを下記の工程により作製してその特性を評価した。
InPコアは、下記工程により作製した。
最初に、酢酸インジウム(0.15mmol)、酢酸亜鉛(0.075mmol)、パルミチン酸(0.6mmol)およびODE(6.3mL)を混合してアルゴンガスでパージした。引き続き、真空度60Pa以下で140℃まで昇温し、同温度で0.12mmolの亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶かしたトリオクチルホスフィン(1mL)を加え、真空度60Pa以下で、40℃に昇温し、同温度で10分保持した。室温に戻してからアルゴン大気圧にして、300℃へ昇温し、15分保持することでInPコアを作製した。
このInPコアのPLピークは、波長535nmに観察された。
このInPコアにZnSシェルをサンプルCと同様の作製条件で形成し、コヒーレントコア/シェル構造の量子ドット(サンプルD)を作製した。
量子収率PLQYは62%、半値幅PL-FWHMは40nm、PLスペクトルは対称で、ピークは525nmに観察された(図12)。波長525nmは、図13に示す色度図の緑領域の頂点付近に位置する波長である。このため、この量子ドットを蛍光体、染料、あるいは顔料として使用するとカバーする色合いの範囲を拡げることができる。その上で、この量子ドットは、62%という高い量子収率PLQYと狭い半値幅PL-FWHMをもつのであることが示された。
実施例5では、コヒーレントInP/GaP/ZnS(コア/シェル/シェル)構造の量子ドットを下記の工程により作製してその特性を評価した。
InPコアは実施例1と同じ方法で得た。
GaP/ZnSシェルは、InPコア(2mL)、ODE(2mL)、GaCl3(3mg)を混合して、室温、真空度60Pa以下で30分保持した後にアルゴン大気圧にし、昇温し、200℃に到達した段階で、DDT(124μL)とZn-OA(1mL)を添加した。引き続いて、230℃に昇温して20分間保持し、続いてDDT(124μL)とZn-OA(1mL)を添加した。その後に240℃に昇温し、20分間保持することで形成した。
得られた量子ドットは、1単分子シェルのGaPシェルと2単分子シェルのZnSシェルからなる3単分子シェルである。したがって、GaPシェルの厚さは0.27nm、ZnSシェルの厚さは0.54nmである。
InPコアのXRDと比較すると、GaP/ZnSシェルにより回折線が広角側へシフトした。
回折線から格子定数は0.56nmと算出され、コヒーレントコア/シェル/シェル構造を有していることがわかった。GaP結晶の格子定数0.545nmはZnS結晶の格子定数0.542nmとほぼ等しいので、InP/ZnSからなるコヒーレントコア/シェル構造のときと同じく0.56nmの格子定数であったと考えられる。
InP/GaP/ZnSからなるコア/シェル/シェル粒子の量子収率PLQYは82%と極めて高く、半値幅PL-FWHMは38nmと狭く、PLスペクトルは対称で、ピークは513nmであった。また光吸収スペクトルの第1エキシトンピークFWHMは44nmであった(図15)。
比較例1では、下記サンプルを作製してInPコア合成時における真空度の影響を調べた。
InPコアは、下記工程で作製した。
最初に、酢酸インジウム(0.15mmol)、酢酸亜鉛(0.075mmol)、パルミチン酸(0.6mmol)およびODE(6.3mL)を混合して、アルゴンガスでパージした。続いて、真空度120-180Pa下で140℃まで昇温し、同温度で12時間保持した後に、室温まで冷却してアルゴン大気圧とした。引き続いて、0.12mmolの亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶かしたトリオクチルホスフィン(1mL)を加え、真空度120-180Pa下で40℃に昇温し、10分間保持することで脱ガスした。その後、室温に戻してから、アルゴン大気圧にして300℃へ昇温し、同温度で10分保持することでInPコアを作製した。
図8に示すとおり、InPコアの光吸収スペクトルの第1エキシトンピークの急峻度はサンプルAに比べると低く、またピークの半値幅FWHMは55nmに留まった。真空度は120-180Paでは不十分で、実施例で示したように60Pa以下にすることが好ましい。
比較例2では、下記サンプルを作製してInPコア合成時における脱ガス時間の影響を調べた。
InPコアは、下記工程で作製した。
InPコアは、酢酸インジウム(0.15mmol)、酢酸亜鉛(0.075mmol)、パルミチン酸(0.5mmol)およびODE(6.3mL)を混合してアルゴンガスでパージした。続いて、真空度120-180Pa下で140℃まで昇温し、同温度で2時間保持した後に、室温まで冷却してアルゴン大気圧とした。引き続いて、0.12mmolの亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶かしたトリオクチルホスフィン(1mL)を加え、真空度120-180Pa下40℃に昇温し、10分間保持することで脱ガスした。室温に戻してからアルゴン大気圧にして、300℃へ昇温、同温度で10分保持することでInPコアを得た。したがって、比較例2は、材料を混合した後の140℃の熱処理時間を比較例1の12時間から2時間に短縮したこと以外は、比較例1に準拠している。
その結果、比較例2の光吸収スペクトルの第1エキシトンピークFWHMは、67nmに拡がった(図16)。脱ガス時間が短いと特性が劣化することが確認された。
比較例3では、下記サンプルを作製してInPコア合成時において、リン源を添加した際に真空引きを行うことの影響を調べた。
InPコアの作製工程は、材料を混合してアルゴンガスでパージした後の真空度を120-180Paから実施例に示した60Paに変更したことと、トリオクチルホスフィン(1mL)を添加した後の脱ガス処理を行わないこと以外は、比較例1に準拠させた。
すなわち、比較例3のInPコアは下記の工程により作製した。最初に、酢酸インジウム(0.15mmol)、酢酸亜鉛(0.075mmol)、パルミチン酸(0.6mmol)およびODE(6.3mL)および1-オクタデセン(ODE、6.3mL)を混合してアルゴンガスでパージした。続いて、真空度60Pa以下で140℃まで昇温し、同温度で12時間保持した後に、室温まで冷却しアルゴン大気圧とした。引き続いて、0.12mmolの亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶かしたトリオクチルホスフィン(1mL)を加え、脱ガス処理を行わず、300℃へ昇温、10分保持することでInPコアを得た。
その結果、比較例3の光吸収スペクトルの第1エキシトンピークFWHMは、55nmであった(図9)。
脱ガスは、新しい薬品を添加した際には全ての工程で必要である。
また、脱ガスを行う真空度については、60Pa以下で行うことで、光吸収スペクトルの狭い第1エキシトンピークを得られる。
また、140℃で行う脱ガスに関しては12時間以上行うことで、光吸収スペクトルの第1エキシトンピークは狭くなる。
以上、酢酸を含む不純物の脱ガス除去を充分に行うことで、光吸収スペクトルの第1エキシトンピークFWHMを小さくすることが可能となる。
比較例4では、下記サンプルを作製して直鎖飽和脂肪酸の分子鎖長の影響を調べた。
InPコアは、酢酸インジウム(0.15mmol)、酢酸亜鉛(0.075mmol)、ラウリン酸 (0.6mmol)および1-オクタデセン(6.3mL)に、0.12mmolの亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶かしたトリオクチルホスフィン(1mL)を加え、アルゴンガス雰囲気中で300℃、10分加熱することで作製した。
ZnSシェル形成は実施例3と同様に行った。
比較例5では、下記サンプルEを作製して、InP/ZnS構造で、シェル層を4層に厚したときの影響を調べた。
InPコアは、実施例1と同じ方法で作製した。
ZnSシェルは下記方法により形成した。
最初に、InPコア(2mL)、ODE(2mL)、DDT(124μL)およびZn-OA(1mL)を混合して、アルゴンガス雰囲気中、230℃で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)とZn-OA(1mL)を添加し、240℃に昇温し、同温度で20分間保持した。引き続いて、DDT(124μL)とZn-OA(1mL)を添加して250℃に昇温し、同温度で20分間保持することでZnSシェルを形成した。
比較例6では、下記サンプルFを作製して、InP/ZnS構造で、シェル層を比較例5よりさらに1層厚して5層にしたときの影響を調べた。
InPコアは、実施例1と同じ方法で作製した。
ZnSシェルは、下記方法により形成した。
最初に、InPコア(2mL)、ODE(2mL)、DDT(124μL)およびZn-OA(1mL)を混合して、アルゴンガス雰囲気中、230℃で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し、240℃に昇温し、同温度で20分間保持した。引き続き、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し250℃に昇温して、同温度で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し260℃に昇温して、同温度で20分間保持した。引き続き、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し270℃に昇温して、同温度で20分間保持した。続いてDDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し、280℃に昇温し、同温度で20分間保持することでZnSシェルを形成した。
比較例7では、下記サンプルGを作製して、InP/ZnS構造で、シェル層を比較例6よりさらに3層厚くして8層にしたときの影響を調べた。
InPコアは、実施例1と同じ方法で作製した。
ZnSシェルは、下記方法により形成した。図18にZn-OA添加工程を示す。
最初に、InPコア(2mL)、ODE(2mL)、DDT(124μL)およびZn-OA(1mL)を混合して、アルゴンガス雰囲気中、230℃で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し、240℃に昇温し、同温度で20分間保持した。引き続き、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し250℃に昇温して、同温度で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し260℃に昇温して、同温度で20分間保持した。引き続き、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し270℃に昇温して、同温度で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し280℃に昇温して、同温度で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し290℃に昇温して、同温度で20分間保持した。続いて、DDT(124μL)、Zn-OA(1mL)を添加し300℃に昇温して、同温度で20分間保持することでZnSシェルを形成した。
ZnSシェルの厚さと量子収率およびPL半値幅の関係を図7に示す。この図は、サンプルAからGまでのデータを左から順に並べたものである。
この図から、ZnSの厚さが3単分子に相当する1.08nm以下で高い量子収率および狭いPL半値幅が得られ、特にZnSの厚さが1.08nmで最も高い量子収率および最も狭いPL半値幅が得られることがわかる。
このため、産業の発展に大いに寄与するものと考える。
11:コア(InP)
12:シェル(ZnS)
Claims (15)
- コア部と前記コア部を覆うシェル部からなり、
前記コア部の表面は前記シェル部の内面側の表面と接しており、
前記コア部はインジウムリン(InP)の単結晶からなり、
前記シェル部は硫化亜鉛(ZnS)の単結晶からなり、
前記シェル部の厚さが3単分子層である、量子ドット。 - 前記コア部は球形であり、前記コア部の直径が0.58nm以上2.95nm以下である、請求項1記載の量子ドット。
- 前記コア部の結晶の格子定数と前記シェル部の結晶の格子定数が同一である、請求項1または2記載の量子ドット。
- 前記格子定数は0.56nmである、請求項3記載の量子ドット。
- 前記シェル部の厚さは1.08nmである、請求項1から4の何れか1項記載の量子ドット。
- 酢酸インジウム、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムのいずれか1種と、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛からなる群より選ばれる1以上と、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸からなる群より選ばれる1以上と、トリオクチルホスフィンと、1-オクタデセン(ODE)、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセンからなる群より選ばれる1以上とを不活性ガス下で混合して第1の混合液を作製することと、
前記第1の混合液を真空下で第1の熱処理を行うことと、
前記第1の熱処理の後不活性ガス環境下で、前記第1の混合液に、トリオクチルホスフィンに亜リン酸トリス(トリメチルシリル)を溶解させた第1の溶液を加えることと、
前記第1の溶液添加の後、前記第1の混合液を真空下で第2の熱処理を行うことと、
第2の熱処理の後、前記第1の混合液を不活性ガス下で第3の熱処理を行ってInPコアを作製することと、
前記InPコアと、ODEと、ドデカンチオール(DDT)または硫黄粉末と、オレイン酸亜鉛(Zn-OA)またはステアリン酸亜鉛(Zn-SA)とを混合し、真空下で保持して第2の混合液を作製することと、
前記第2の混合液を不活性ガス下で第4の熱処理を行うことと、
前記第4の熱処理後に、前記第2の混合液にDDTとZn-OAを添加し、不活性ガス下で第5の熱処理を行うことを含む、量子ドットの製造方法。 - 前記不活性ガスはアルゴンガスである、請求項6記載の量子ドットの製造方法。
- 前記第1の熱処理の温度は、90℃以上140℃以下である、請求項6または7記載の量子ドットの製造方法。
- 前記第2の熱処理の温度は、20℃以上60℃以下である、請求項6から8の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
- 前記第3の熱処理の温度は、210℃以上320℃以下である、請求項6から9の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
- 前記第4の熱処理の温度は、210℃以上320℃以下である、請求項6から10の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
- 前記第5の熱処理の温度は、230℃以上320℃以下である、請求項6から11の何れか1項記載の量子ドットの製造方法。
- 請求項1から5の何れか1項記載の量子ドットを含む、緑色の蛍光体。
- 請求項1から5の何れか1項記載の量子ドットを含む、緑色の可視化染料。
- 請求項1から5の何れか1項記載の量子ドットを含む、緑色の顔料。
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