JP7721879B2 - 神経細胞ネットワーク構造体の形成方法、及びインビトロで神経細胞を評価する方法 - Google Patents
神経細胞ネットワーク構造体の形成方法、及びインビトロで神経細胞を評価する方法Info
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Description
現在、iPS細胞を例とする幹細胞技術の発達により、各種臓器に対応する細胞を作製することができるようになり、従来では生体からの採取が難しく、かつ増殖もできない神経細胞なども利用することができるようになってきた。神経細胞を生体外で培養し、成熟化させることで、人の応答に近い反応を示すことができる細胞組織モデルの開発がなされ、一部は電気的な測定により毒性評価や薬効評価に用いられていることが既に知られている(例えば、特許文献1)。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
本発明の神経細胞ネットワーク構造体の形成方法は、幼若神経細胞を神経細胞凝集塊として成熟化させる成熟化工程と、前記成熟化工程で得られた複数の前記神経細胞凝集塊をそれぞれ、平面視で互いに離間するように、基材表面上に配置する配置工程と、前記配置工程で配置された複数の前記神経細胞凝集塊のうち、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の間を、神経突起を介してお互いに連結させるネットワーク形成工程と、を含む方法である。本発明の形成方法によれば、幼若神経細胞の成熟化工程の長期培養に伴う、基材からの神経細胞の剥がれや神経細胞の凝集を防止し、基材上の神経細胞ネットワークの構造を維持し、安定的に神経細胞モデルを供給することができる。
神経細胞又は神経細胞凝集塊の電気活動特性は、公知の電気生理学的手法を用いて測定することができる。かかる電気生理学的手法としては、これに限定するものではないが、例えば多電極アレイ等の電極を用いて局所的な電場電位を測定する方法、パッチクランプ法等により直接的に活動電位を測定する方法、膜電位感受性色素等を用いて膜電位の変化を測定する方法、カルシウムイメージング法等のカチオン変動を測定する方法等が挙げられる。膜電位感受性色素としては、例えば、カルシウムキレーター及び蛍光団からなるカルシウム感受性色素、styryl系化合物、cyanine系及びoxonol系化合物、rhodamine誘導体等が挙げられる。また、「電気活動が測定される時点において互いに異なる電気活動特性を示す」とは、2以上の神経細胞凝集塊において同一の手法により電気活動特性を計測した場合に、それぞれ異なる結果を示すことを意味する。典型的には、例えば2以上の神経細胞凝集塊に含まれる細胞の種類がそれぞれ異なる、比率がそれぞれ異なる、などの場合に、神経細胞凝集塊が互いに異なる電気活動特性を示すこと等が挙げられる。
神経細胞とは、例えば末梢神経と中枢神経に大別することもできる。末梢神経としては、例えば、感覚神経細胞、運動神経細胞、自律神経細胞が挙げられる。中枢神経としては、例えば、介在神経細胞、投射ニューロンが挙げられる。投射ニューロンとしては、例えば、皮質ニューロン、海馬ニューロン、扁桃体ニューロン等が挙げられる。また、中枢神経細胞は、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンとに大別することもできる。中枢神経系で主に興奮性伝達を担うグルタミン酸作動性ニューロン、主に抑制性伝達を担うGABA(γ-aminobutyric acid)作動性ニューロン等が挙げられる。その他神経調節物質を放出するニューロンとして、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ヒスタミン作動性ニューロン等が挙げられる。本発明に用いられる幼若神経細胞は、神経細胞に分化し得る細胞であれば特に限定されず、神経幹細胞であってもよい。
次に、成熟化工程で得られた複数の神経細胞凝集塊をそれぞれ、平面視で互いに離間するように、基材表面上に配置する。
配置工程においては、まず、神経細胞凝集塊を配置するための基材を用意する。神経細胞凝集塊を配置する基材としては、神経細胞凝集塊を配置でき、神経細胞ネットワーク構造体を形成することができるものであれば、特に制限はなく、表面に電極を有していても、有していなくてもよいが、表面に電極を有する基材は、配置された神経細胞凝集塊およびその後構築される神経細胞ネットワーク構造体の電気活動を測定することができるため、好ましい。
基材は、これら材料を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、細胞接着性のタンパク質やポリマー、ハイドロゲル等を用いて細胞接着領域および非接着領域を基材上にパターニングすることで、構築される神経ネットワーク構造を制御することも可能である。
上記配置方法としては、ピンセットなどの物理的補足や光ピンセットなどの光学的手法、誘電泳道など電気的手法等を用いてもよい。
各神経細胞凝集塊を基材に配置後、基材上に各神経細胞凝集塊が接着するまで、培養する。培養条件としては、例えば、10時間以上48時間以下程度の一定期間、37℃、5%CO2濃度等の通常の細胞培養条件下で培養することができる。また、培養時に使用する培地についても、細胞の種類に応じて適宜選択することができ、上記配置工程において例示されたものと同様のものが挙げられる。
基材に配置された神経細胞凝集塊の電気活動特性は、神経細胞凝集塊の活動電位や神経細胞凝集塊が呈する同期バースト等を、公知の電気生理学的手法を用いて測定することで確認することができる。具体的には、後述する実施例に示すように、MEAを備える基材上に神経細胞凝集塊を配置し、例えば、MED64システム(株式会社SCREENホールディングス製)、Maestro MEA(Axion BioSystems社製)、MEA systems(Multichannel systems製)等のMEAシステムを用いて、活動電位を5分間程度測定することで確認することができる。
本発明の神経細胞ネットワーク構造体は、インビトロで神経細胞を評価するために用いる神経細胞ネットワーク構造体であって、基材と、前記基材表面上に、平面視で互いに離間して配置された複数の神経細胞凝集塊と、を備え、前記神経細胞凝集塊は、前記基材表面上に接着しており、複数の前記神経細胞凝集塊のうち少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊は、神経突起を介して互いに連結されており、複数の前記神経細胞凝集塊のうち少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊は、電気的に同期している。
第1神経細胞凝集塊10は、1細胞以上の神経細胞1を含む神経細胞凝集塊である。第1神経細胞凝集塊10は、集団として特定の電気活動特性を示すものであれば、神経細胞1のみからなる神経細胞凝集塊であってもよく、神経細胞1と該神経細胞1以外の細胞との混合細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよい。また、第1神経細胞凝集塊10が神経細胞1のみからなる神経細胞凝集塊である場合に、1種の神経細胞1からなる神経細胞凝集塊であってもよく、2種以上の神経細胞1の混合細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよい。
第2神経細胞凝集塊20は、神経細胞1と電気信号を伝達し合う細胞2(以下、単に「細胞2」と称する場合がある)を1細胞以上含む神経細胞凝集塊である。第2神経細胞凝集塊20は、第1神経細胞凝集塊10と同一の細胞からなる神経細胞凝集塊であっても、異なる細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよい。
第2神経細胞凝集塊20は、自発的に又は外部からの刺激に応答して、同期的な活動電位を示すものであれば、細胞2のみからなる神経細胞凝集塊であってもよく、細胞2と該細胞2以外の細胞との混合細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよい。また、第2神経細胞凝集塊20が細胞2のみからなる神経細胞凝集塊である場合に、1種の細胞2からなる神経細胞凝集塊であってもよく、2種以上の細胞2の混合細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよい。
第3神経細胞凝集塊30及び第4神経細胞凝集塊40は、第1神経細胞凝集塊10及び第2神経細胞凝集塊20が配置された検出部3以外の検出部3上に、平面視で第1神経細胞凝集塊10及び第2神経細胞凝集塊20と離間して配置されている。
第3神経細胞凝集塊30及び第4神経細胞凝集塊40は、自発的に又は外部からの刺激に応答して、同期的な活動電位を示す神経細胞凝集塊である。第3神経細胞凝集塊30及び第4神経細胞凝集塊40は、第1神経細胞凝集塊10又は第2神経細胞凝集塊20と同一の細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよく、第1神経細胞凝集塊10及び第2神経細胞凝集塊20のいずれとも異なる細胞からなる神経細胞凝集塊であってもよい。第3神経細胞凝集塊30及び第4神経細胞凝集塊40は、第1神経細胞凝集塊10及び第2神経細胞凝集塊20のうち少なくともいずれか一方の神経細胞凝集塊と神経突起を介した結合を形成することができ、図1に示すように、第1神経細胞凝集塊10と第3神経細胞凝集塊30とが神経突起1a及び2bを介した結合を形成しており、第2神経細胞凝集塊20と第4神経細胞凝集塊40とが神経突起2a及び2cを介した結合を形成していてもよい。また、第3神経細胞凝集塊30及び第4神経細胞凝集塊40が、神経突起2b及び2cを介した結合を形成していてもよい。
検出部3は、第1神経細胞凝集塊10、第2神経細胞凝集塊20、第3神経細胞凝集塊30、及び第4神経細胞凝集塊40に含まれる各細胞の活動電位変化により生じる電場電位を検出するように構成されている。なお、ここでいう「検出する」には、電場電位の発生を検出することや、電場電位の変化の具体的な周波数、振幅及び位相を検出することが包含される。検出部3は、基材5内に検出部3の表面が露出し、各神経細胞凝集塊と接するように埋め込まれていてもよく、基材5上に配置されていてもよい。
上記神経細胞ネットワーク構造体は、インビトロで神経細胞を評価する系(以下、単に「評価系」と称する場合がある)として利用することができる。
本実施形態の評価系の使用方法について、以下に詳述する。
例えば、2つの神経細胞凝集塊を備える神経細胞ネットワーク構造体を用いる場合は、第1神経細胞凝集塊10及び第2神経細胞凝集塊20の活動電位の一部の発火パターンが同期した場合には、神経突起を介した結合により第1神経細胞凝集塊10と第2神経細胞凝集塊20と間の電気生理学的な相互作用があると判断することができる。
例えば、切断後における第1神経細胞凝集塊10及び第2神経細胞凝集塊20の電気活動特性が、神経突起を介した結合の形成前と同様に、互いに異なる電気活動特性に戻った場合には、上記活動電位の一部の発火パターンの同期は、当該結合の形成に基づくものであると判断することができる。
(1) 神経細胞ネットワーク構造体の形成方法であって、幼若神経細胞を神経細胞凝集塊として成熟化させる成熟化工程と、前記成熟化工程で得られた複数の前記神経細胞凝集塊をそれぞれ、平面視で互いに離間するように、基材表面上に配置する配置工程と、前記配置工程で配置された複数の前記神経細胞凝集塊のうち、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の間を、神経突起を介してお互いに連結させるネットワーク形成工程と、を含む、神経細胞ネットワーク構造体の形成方法。
(2) 前記基材表面に電極を有する、(1)に記載の形成方法。
(3) 前記成熟化工程で得られた前記神経細胞凝集塊を加工し、異なる特徴を有する神経細胞凝集塊を得る加工工程を含む、(1)又は(2)に記載の形成方法。
(4) 前記配置工程において、前記神経細胞凝集塊を、仕切り部材を用いて前記基材表面に配置する、(1)~(3)のいずれか一つに記載の形成方法。
(5) 前記幼若神経細胞は、幹細胞から分化誘導されたものである、(1)~(4)のいずれか一つに記載の形成方法。
(6) 前記幹細胞は、人工多能性幹細胞である、(5)に記載の形成方法。
(7) インビトロで神経細胞を評価するために用いる神経細胞ネットワーク構造体であって、基材と、前記基材表面上に、平面視で互いに離間して配置された複数の神経細胞凝集塊と、を備え、前記神経細胞凝集塊は、前記基材表面上に接着しており、複数の前記神経細胞凝集塊のうち少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊は、神経突起を介して互いに連結されており、複数の前記神経細胞凝集塊のうち少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊は、電気的に同期している、構造体。
(8) 前記基材表面が電極を有する、(7)に記載の構造体。
(9) インビトロで神経細胞を評価する方法であって、幼若神経細胞を神経細胞凝集塊として成熟化させる成熟化工程と、前記成熟化工程で得られた複数の前記神経細胞凝集塊をそれぞれ、平面視で互いに離間するように、基材表面上に配置する配置工程と、前記配置工程で配置された複数の前記神経細胞凝集塊のうち、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の間を、神経突起を介してお互いに連結させるネットワーク形成工程と、前記ネットワーク形成工程で得られた神経細胞ネットワーク構造体において、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の電気活動を測定する測定工程と、を含む、評価方法。
(10) 前記基材表面が電極を有する、(9)に記載の評価方法。
(11) 前記成熟化工程で得られた前記神経細胞凝集塊を加工し、異なる特徴を有する神経細胞凝集塊を得る加工工程を含む、(9)又は(10)に記載の評価方法。
(12) 前記配置工程において、前記神経細胞凝集塊を、仕切り部材を用いて前記基材表面に配置する、(9)~(11)のいずれか一つに記載の評価方法。
(13) 前記幼若神経細胞は、幹細胞から分化誘導されたものである、(9)~(12)のいずれか一つに記載の評価方法。
(14) 前記幹細胞は、人工多能性幹細胞である、(13)に記載の評価方法。
(15) 前記少なくとも2つの神経細胞凝集塊の少なくとも1つに任意の剤を添加することを更に含む、(9)~(14)のいずれか一つに記載の評価方法。
(16) 前記電気活動の測定結果に基づいて、神経細胞凝集塊に対する候補剤の作用を評価することを更に含む、(15)に記載の評価方法。
(17) 前記神経突起を切断することを更に含む、(9)~(16)のいずれか一つに記載の評価方法。
(幼若な神経細胞の基材への播種)
Cellular Dynamics International社が市販している凍結iPS細胞由来幼若神経細胞(iCell(登録商標)GABA作動性神経細胞)を培地に懸濁し、予め0.05%ポリエチレンイミン(PEI;シグマ製)及び28μg/mLのマトリゲル(Growth Factor Reduced Matrigel;コーニング社製)でコーティングしておいた多点電極アレイ(MEA;株式会社SCREENホールディングス)の電極を含む基材上に播種した。
(神経細胞凝集塊の作製と成熟化評価)
Elixirgen Scientific社が市販している凍結iPS細胞由来神経細胞(GABAergic Neurons from Healthy Donor)を培地に懸濁し、V底マイクロウェルプレートに細胞懸濁液を添加し、培養を行った。図3に培養後、1、4、8、15、33日目の顕微鏡画像を示した。顕微鏡画像により、明らかに異常と思われる神経細胞凝集塊を選別することができた。
次に、神経細胞凝集塊の機能評価を行った。カルシウムイオンは神経細胞で活動電位の発生に伴い流入が起こるため、カルシウム標識蛍光試薬を細胞にロードすることで神経細胞の活動に伴う蛍光強度の変化を観察することができる。そこで、培養22日目でカルシウムイメージングによる神経細胞凝集塊の機能評価を行った。図4に培養22日目の神経細胞凝集塊の蛍光画像を、図5に、神経細胞の活動に伴う蛍光強度の変化のグラフを示す。図4に示したように、培養22日目で、神経細胞凝集塊全体で同期的な活動が見られた。また、図5に示したように、静止時の蛍光強度に対して、同期的活動時の蛍光強度が増加していること、及び周期的に同期的な活動が起こることが確認された。この結果から、カルシウムイメージングは、成熟化の1つの指標として用いることができることが示された。
(神経細胞凝集塊の電気活動測定)
Elixirgen Scientific社が市販している凍結iPS細胞由来神経細胞(GABAergic Neurons from Healthy Donor)をV底マイクロウェルプレートで50日間培養を行った後に、予め0.05%ポリエチレンイミン(PEI;シグマ製)及び28μg/mLのマトリゲル(Growth Factor Reduced Matrigel;コーニング社製)でコーティングしておいた多点電極アレイ(MEA;株式会社SCREENホールディングス)の電極を含む基材上に、PDMSを用いて作製したマイクロウェルを用いて神経細胞凝集塊を配置した。図6に、MEAの電極を含む基材上へ神経細胞凝集塊を配置後1日目の神経細胞凝集塊の顕微鏡画像を示す。図6に示したように、PDMSマイクロウェルにより神経細胞凝集塊が配置され、電極近傍に収まっていることが確認された。また、基材に配置後1日目で神経突起が伸びていることが観察され、神経細胞凝集塊の基材への接着が確認された。
次に、MED64-Basic(MEA;株式会社SCREENホールディングス)の多点電極測定装置を用いた活動電位測定を行った。その結果を、図7に示す。図7に示したように、神経細胞凝集塊近傍の電極で神経発火が多数確認され、複数の電極をまたいで同時に神経発火が検出される同期バーストが検出された。この同期バーストは神経の成熟化の1つの指標とされており、この結果から、同期バーストにより神経細胞凝集塊の成熟化を確認できることが分かった。
(神経細胞凝集塊の基材配置後の接着)
Elixirgen Scientific社が市販している凍結iPS細胞由来神経細胞(Mixed - Human iPSC-derived Neurons)をU底マイクロウェルプレートで36日間培養を行った後に、予め0.05%ポリエチレンイミン(PEI;シグマ製)及び28μg/mLのマトリゲル(Growth Factor Reduced Matrigel;コーニング社製)でコーティングしておいた多点電極アレイ(MEA;株式会社SCREENホールディングス)の電極を含む基材上に、PDMSを用いて作製したマイクロウェルを用いて4つの神経細胞凝集塊を配置した。基材に配置1時間後、2日目の顕微鏡画像を図8に、9日目、13日目、26日目の顕微鏡画像を図9に示す。PDMSマイクロウェルは、神経細胞凝集塊を基材に配置後2日で除去しているが、図8に示したように、PDMSマイクロウェル除去後も、神経細胞凝集塊は位置が固定されていた。また、図9に示したように、基材に配置後9日目、13日目、26日目でも、神経細胞凝集塊の位置が崩れておらず、さらに、神経突起が伸び、細胞の遊走が起こることで神経細胞凝集塊同士が接続されていることが観察された。
(神経細胞凝集塊のネットワーク形成)
実験例4と同様にして、4つの神経細胞凝集塊をMEAの電極を含む基材上に配置し、MED64-Basic(MEA;株式会社SCREENホールディングス)の多点電極測定装置を用いた活動電位測定を用いて、神経発火の同期を指標とした神経細胞同士の接続を解析した。その結果を図10に示す。図10に示したように、神経細胞凝集塊を、電極を含む基材上に配置後2日目では4つの神経細胞凝集塊がそれぞれ散発的に神経発火を繰り返すのに対して、基材に配置後13日目及び26日目では神経発火の同期的な活動が観察された。この結果から、神経細胞凝集塊を、電極を含む基材上へ配置して培養を続けることで、神経細胞凝集塊の間で連結が起こり、ネットワークが形成されることが確認された。
(神経細胞凝集塊のネットワーク形成の評価)
実験例4と同様にして、4つの神経細胞凝集塊をMEAの電極を含む基材上に配置し、バーストが起こったタイミングをタイムスタンプとして、それぞれの電極におけるタイムスタンプの相互相関関数を計算することで、電極同士の接続強度を、フリーソフトウェアMEAnalyzerを用いて解析した。図11に、電極同士の相互相関関数で閾値を超えたものを可視化した結果を示す。なお、図11において、電極同士を結ぶ線は相関が強くなる程太くなっている。図11に示すように、電極同士の相互相関関数で閾値を超えたものを可視化したところ、神経細胞凝集塊を基材に配置2日目ではバーストを指標にした機能接続は確認されず、9日目で各細胞凝集塊を中心とした電極で接続が確認された。13日目には細胞凝集塊同士に部分的な接続が見られ、26日後には全体的な接続が確認された。この結果から、細胞凝集塊が機能的に接続されるタイミングを非侵襲で確認することができ、これをもって薬剤スクリーニングを行うタイミングの指標とすることができる。また、この結果から、神経細胞凝集塊の距離により連結の早さが異なっており、神経細胞凝集塊の基材に配置する距離をコントロールすることで、神経細胞凝集塊を連結するタイミングをコントロールできることが示唆された。
3:検出部(電極)
4:培地
5:基材
10:第1神経細胞凝集塊(神経細胞凝集塊A)
20:第2神経細胞凝集塊(神経細胞凝集塊B)
30:第3神経細胞凝集塊
40:第4神経細胞凝集塊
100:神経細胞ネットワーク構造体
Claims (15)
- 神経細胞ネットワーク構造体の形成方法であって、
幼若神経細胞を神経細胞凝集塊として成熟化させる成熟化工程と、
前記成熟化工程で得られた複数の前記神経細胞凝集塊をそれぞれ、平面視で互いに離間するように、基材表面上に配置する配置工程と、
前記配置工程で配置された複数の前記神経細胞凝集塊のうち、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の間を、神経突起を介してお互いに連結させるネットワーク形成工程と、
を含む、神経細胞ネットワーク構造体の形成方法。 - 前記基材表面に電極を有する、請求項1に記載の形成方法。
- 前記成熟化工程で得られた前記神経細胞凝集塊を加工し、異なる特徴を有する神経細胞凝集塊を得る加工工程を含む、請求項1又は2に記載の形成方法。
- 前記配置工程において、前記神経細胞凝集塊を、仕切り部材を用いて前記基材表面に配置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の形成方法。
- 前記幼若神経細胞は、幹細胞から分化誘導されたものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の形成方法。
- 前記幹細胞は、人工多能性幹細胞である、請求項5に記載の形成方法。
- インビトロで神経細胞を評価する方法であって、
幼若神経細胞を神経細胞凝集塊として成熟化させる成熟化工程と、
前記成熟化工程で得られた複数の前記神経細胞凝集塊をそれぞれ、平面視で互いに離間するように、基材表面上に配置する配置工程と、
前記配置工程で配置された複数の前記神経細胞凝集塊のうち、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の間を、神経突起を介してお互いに連結させるネットワーク形成工程と、
前記ネットワーク形成工程で得られた神経細胞ネットワーク構造体において、少なくとも2つの前記神経細胞凝集塊の電気活動を測定する測定工程と、
を含む、評価方法。 - 前記基材表面が電極を有する、請求項7に記載の評価方法。
- 前記成熟化工程で得られた前記神経細胞凝集塊を加工し、異なる特徴を有する神経細胞凝集塊を得る加工工程を含む、請求項7又は8に記載の評価方法。
- 前記配置工程において、前記神経細胞凝集塊を、仕切り部材を用いて前記基材表面に配置する、請求項7~9のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記幼若神経細胞は、幹細胞から分化誘導されたものである、請求項7~10のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記幹細胞は、人工多能性幹細胞である、請求項11に記載の評価方法。
- 前記少なくとも2つの神経細胞凝集塊の少なくとも1つに任意の剤を添加することを更に含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の評価方法。
- 前記電気活動の測定結果に基づいて、神経細胞凝集塊に対する候補剤の作用を評価することを更に含む、請求項13に記載の評価方法。
- 前記神経突起を切断することを更に含む、請求項7~14のいずれか一項に記載の評価方法。
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