JP7724168B2 - ディーゼルエンジン及びその制御方法 - Google Patents

ディーゼルエンジン及びその制御方法

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Description

本開示は、ディーゼルエンジン及びその制御方法に関する。
ディーゼルエンジンにおいて、燃焼温度が高くなると排気ガス中のNOx量が増加するため、燃焼室内に水を噴射することにより燃焼室内の燃焼温度を低下させてNOxの発生を抑制することが知られている。
例えば、実開平5-10761号公報(特許文献1)には、エンジンの回転数及び負荷に応じて、NOx量を低減するのに必要な燃焼温度を得るための水噴射量を設定することが開示されている(特許文献1参照)。
実開平5-10761号公報
エンジンの回転数及び負荷では、エンジンの状態が変化する過渡運転時にエンジンの状態変化を十分に反映できない可能性がある。その場合、燃焼状態に応じた適量の水噴射量にならず、NOx量を十分に抑制できなかったり、燃焼温度の過度な低下による出力低下が生じたりする可能性がある。
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、エンジンの状態が変化する過渡運転時においても適量の水を噴射可能なディーゼルエンジン及びその制御方法を提供することである。
本開示のディーゼルエンジンは、燃焼室を有するエンジン本体と、燃焼室内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置と、燃焼室内に水を噴射するように構成された水噴射装置と、水噴射装置を制御する制御装置と、燃焼室内に供給される吸気ガスに含まれる酸素の量を示す状態量を取得する取得部とを備える。制御装置は、上記状態量と燃焼室内に噴射された燃料の噴霧温度との予め求められた関係に従って、取得部により取得された上記状態量から噴霧温度を推定し、その推定された噴霧温度と噴霧温度の目標との温度差から、水噴射装置による水噴射量を決定する。
また、本開示の制御方法は、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置と燃焼室内に水を噴射する水噴射装置とを備えるディーゼルエンジンの制御方法であって、燃焼室内に供給される吸気ガスに含まれる酸素の量を示す状態量を取得するステップと、上記状態量と燃焼室内に噴射された燃料の噴霧温度との予め求められた関係に従って、取得された上記状態量から噴霧温度を推定するステップと、推定された噴霧温度と噴霧温度の目標との温度差から、水噴射装置による水噴射量を決定するステップとを含む。
上記のディーゼルエンジン及び制御方法では、燃焼室内の燃焼状態に直接関与する上記状態量から水噴射量が決定されるので、過渡運転時においても燃焼状態に基づいて適切な水噴射量を決定することができる。したがって、このディーゼルエンジン及び制御方法によれば、過渡運転時においても適量の水を噴射することができる。その結果、NOx量を十分に抑制することができ、また、燃焼温度の過度な低下による出力低下を抑制することができる。
ディーゼルエンジンは、EGR装置をさらに備えてもよい。EGR装置は、エンジン本体を経由せずに排気通路を吸気通路と接続し、排気ガスの一部を吸気通路に還流するように構成される。そして、制御装置は、EGR装置による排気ガスの還流量の変更時に、上記温度差から水噴射量を決定してもよい。
EGR装置により排気ガスの一部を燃焼室内に還流させることにより、燃焼温度を抑制してNOx量の発生を抑制することができる。しかしながら、例えば、必要なEGRガス量が増加する過渡運転時に、実際のEGRガス量の増加には遅れが生じる。この場合、エンジンの回転数及び負荷に応じた水噴射量の設定では、実際のEGRガス量が必要量に到達するまで水量が不足し、その結果NOx量を十分に抑制できない可能性がある。上記のディーゼルエンジンでは、燃焼室内の燃焼状態に直接関与する上記状態量から上記温度差及び水噴射量が決定されるので、過渡運転時に上記のような水量不足が生じるのを抑制することができる。したがって、NOx量を十分に抑制することができる。
制御装置は、EGR装置の作動が制限されるエンジン本体の冷間始動時に、上記温度差から水噴射量を決定してもよい。
エンジンの冷間始動時は、EGR装置を作動させると凝縮水が生成されるため、EGR装置の作動が制限される場合がある。EGR装置の作動が制限されると、燃焼温度が高くなりNOx量が増加する可能性がある。このディーゼルエンジンでは、上述のとおり上記状態量から水噴射量が決定されるので、燃焼温度を適切に抑制することができる。したがって、NOx量を十分に抑制することができる。
噴霧温度の目標は、エンジン本体の回転数及び負荷に基づいて決定されてもよい。
これにより、エンジン本体の回転数及び負荷に基づき決定される目標噴霧温度に噴霧温度を近づけることができる。したがって、NOx量を適切に抑制することができる。
予め求められた関係は、上記状態量と、エンジン本体の1ストロークにおける噴霧温度の最大値との関係であってもよい。そして、制御装置は、その関係に従って、取得部により取得された上記状態量から噴霧温度の最大値を推定し、その推定された噴霧温度の最大値と、噴霧温度の最大値の目標との温度差から、水噴射量を決定してもよい。
このように噴霧温度の最大値を用いることにより、噴霧温度を十分かつ適切に抑制することができる。
制御装置は、エンジン本体の運転状態に応じて定まる燃焼室内の噴霧ガスの質量、噴霧内ガス定圧比熱、及び上記温度差を乗算した値を、水の蒸発潜熱値で除算することにより、水噴射量を算出してもよい。
これにより、水噴射量を適切に算出することができる。
本開示のディーゼルエンジン及びその制御方法によれば、エンジンの状態が変化する過渡運転時においても適量の水を噴射することができる。その結果、NOx量を十分に抑制することができ、また、燃焼温度の過度な低下による出力低下を抑制することができる。
本開示の実施の形態に従うディーゼルエンジンの全体構成図である。 シリンダにおける燃料噴射弁及び水噴射弁の配置例を示す図である。 参考例として、エンジンの過渡運転時におけるNOx量の推移の一例を示す図である。 燃焼室内における噴霧平均温度の最大値の推移例を示す図である。 ベース条件からの噴霧温度の温度差と水噴射量との関係の一例を示す図である。 制御装置により実行される水噴射弁の水噴射量の算出処理を説明するフローチャートである。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本開示の実施の形態に従うディーゼルエンジンの全体構成図である。図1を参照して、ディーゼルエンジン1は、エンジン本体10と、吸気管11A,11Bと、吸気マニホールド11Cと、排気マニホールド12Aと、排気管12B,12Cと、ターボ過給機30と、EGR装置13と、制御装置50とを備える。
また、ディーゼルエンジン1は、吸気流量センサ21と、インタークーラ16と、スロットル装置47と、圧力センサ24とをさらに備える。
吸気管11Aは、ターボ過給機30のコンプレッサ35の流入側に接続され、コンプレッサ35の流出側に吸気管11Bが接続される。エンジン本体10の吸気側には、吸気マニホールド11Cが設けられており、吸気管11Bは、吸気マニホールド11Cに接続される。
吸気流量センサ21は、吸気管11Aに設けられ、吸気管11Aに導入される空気の流量を検出する。ターボ過給機30は、コンプレッサインペラ35Aを有するコンプレッサ35と、タービンインペラ36Aを有するタービン36とを含む。コンプレッサインペラ35Aは、排気ガスによって回転駆動されるタービンインペラ36Aにより回転駆動され、吸気管11Aを通じて吸入される空気を過給して吸気管11Bに供給する。
インタークーラ16は、吸気管11Bに設けられ、コンプレッサ35により過給された空気を冷却する空冷式又は水冷式の熱交換器である。スロットル装置47は、吸気管11Bにおいてインタークーラ16の下流側に設けられ、制御装置50からの制御信号に基づいてスロットルバルブ47Aを駆動することにより吸気流量を調整する。圧力センサ24は、吸気管11Bにおいてスロットル装置47の下流側に設けられ、吸気マニホールド11Cに供給される吸気ガスの圧力を検出して制御装置50へ出力する。
ディーゼルエンジン1は、コモンレール41と、燃料配管42A~42Dと、燃料噴射弁43A~43Dと、水供給用コモンレール61と、水配管62A~62Dと、水噴射弁63A~63Dと、供給管65と、ポンプ66と、水タンク67とをさらに備える。
エンジン本体10には、複数のシリンダ45A~45Dが設けられている。なお、この例では、4つのシリンダ45A~45Dが示されているが、シリンダの数はこれに限定されるものではない。
燃料噴射弁43A~43Dは、それぞれシリンダ45A~45Dに設けられる。燃料噴射弁43A~43Dには、コモンレール41からそれぞれ燃料配管42A~42Dを通じて燃料が供給される。燃料噴射弁43A~43Dは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれシリンダ45A~45D内に燃料を噴射する。
水噴射弁63A~63Dも、それぞれシリンダ45A~45Dに設けられる。水噴射弁63A~63Dには、水供給用コモンレール61からそれぞれ水配管62A~62Dを通じて水(非燃焼性液体)が供給される。水噴射弁63A~63Dは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれシリンダ45A~45D内に水を噴射する。
水供給用コモンレール61は、供給管65を通じて水タンク67に連結されている。供給管65には、ポンプ66が設けられ、ポンプ66により水タンク67から供給管65を通じて水供給用コモンレール61へ水が供給される。
エンジン本体10の排気側には、排気マニホールド12Aが設けられており、排気マニホールド12Aに排気管12Bが接続される。排気管12Bの流出側は、ターボ過給機30のタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側に排気管12Cが接続されている。
ディーゼルエンジン1は、温度センサ29と、圧力センサ26とをさらに備える。温度センサ29は、排気管12Bに設けられ、エンジン本体10から排出される排気温度を検出する。圧力センサ26は、排気管12Bに設けられ、排気管12B内の排気ガスの圧力を検出して制御装置50へ出力する。
なお、図1には示されていないが、排気管12Cには、排気ガス浄化装置が設けられている。排気ガス浄化装置は、例えば、酸化触媒、微粒子捕集フィルタ、選択還元触媒等を含んで構成される。
EGR装置13は、EGR配管13A,13Bと、経路切替装置14Aと、EGRバルブ14Bと、EGRクーラ15と、バイパス配管13Cとを含む。EGR配管13Aは、排気管12Bに接続され、EGR配管13Bは、吸気管11Bに接続される。EGR配管13A,13Bによって排気管12Bと吸気管11Bとが連通し、排気管12Bの排気ガスの一部(EGRガス)をエンジン本体10の吸気側に還流させることができる。
経路切替装置14Aは、EGR配管13Aを通じて還流されるEGRガスを、EGRクーラ15を経由して吸気管11Bに戻すEGRクーラ経路と、バイパス配管13CによりEGRクーラ15をバイパスして吸気管11Bに戻すバイパス経路とを切り替える経路切替弁である。
EGRバルブ14Bは、EGR配管13Bに設けられ、バイパス配管13Cの合流部よりも下流側に設けられる。EGRバルブ14Bは、制御装置50からの制御信号に基づいて、EGR配管13B内を流れるEGRガスの流量(すなわち、吸気管11Bに還流されるEGRガスの流量)を調整する。
EGRクーラ15は、EGR配管13AとEGR配管13Bとの間に設けられ、EGRガスを冷却する熱交換器である。EGRクーラ15は、EGR配管13Aから流入するEGRガスを冷却してEGR配管13Bへ吐出する。
制御装置50は、少なくとも、プロセッサ51と、記憶装置53とを含んで構成される。プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって構成される。記憶装置53は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等を含んで構成される。ROMには、プロセッサ51により実行される処理プログラムが記憶されており、プロセッサ51は、ROMに格納されている処理プログラムをRAMに展開して実行する。
制御装置50は、各種センサからの検出信号に基づいてディーゼルエンジン1の運転状態を検出し、燃料噴射弁43A~43D、水噴射弁63A~63D、EGRバルブ14B等を含む各種のアクチュエータを制御する。
ディーゼルエンジン1は、回転角センサ22と、大気圧センサ23と、アクセルペダルセンサ25と、車速センサ27とをさらに備える。回転角センサ22は、エンジン本体10のクランクシャフトの回転角(クランク角度)を検出する。大気圧センサ23は、周囲の大気圧を検出する。アクセルペダルセンサ25は、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出する。車速センサ27は、ディーゼルエンジン1が搭載される車両の車輪の回転速度を検出する。
上記のディーゼルエンジン1においては、シリンダ45A~45D内に形成される燃焼室内の燃焼温度が高くなると排気ガス中のNOx量が増加するため、シリンダ45A~45D内(燃焼室内)に水を噴射して燃焼温度を低下させるための水噴射弁63A~63Dが設けられている。
図2は、シリンダ45Aにおける燃料噴射弁43A及び水噴射弁63Aの配置例を示す図である。なお、その他のシリンダ45B~45Dにおける燃料噴射弁43B~43D及び水噴射弁63B~63Dの配置も、シリンダ45Aにおける燃料噴射弁43A及び水噴射弁63Aの配置と同様である。
図2を参照して、エンジン本体10は、シリンダ45Aが形成されるシリンダブロック71と、シリンダヘッド72とを備えている。シリンダ45A内には、シリンダ45A内を往復運動するピストン73が設けられている。ピストン73とシリンダヘッド72との間のシリンダ45A内に、混合気が燃焼する燃焼室75が形成される。ピストン73の頂面には、凹状に形成されたキャビティ76が形成されている。
燃料噴射弁43Aは、燃焼室75の上壁面の中央に配置され、ピストン73に形成されたキャビティ76内の周辺部に向けて燃料Fが直接噴射されるように構成されている(図2の下図参照)。水噴射弁63Aは、燃焼室75の上壁面の周辺部に、燃料噴射弁43Aに対して斜めに傾斜して配置される。水噴射弁63Aは、燃料噴射弁43Aの複数(例えば8個)の燃料噴射口(図示せず)の周囲の所定領域FLに水68を噴射(供給)するように構成されている(図2の上図参照)。これにより、所定領域FLが水68の気化熱によって燃料Fの着火温度よりも低い温度に冷却される。
水噴射弁63A~63Dによる燃焼室内への水噴射により、燃焼温度を抑制して排気ガス中のNOx量を抑制できる一方で、過度の水噴射は燃焼温度の過度な低下による出力低下を招くため、水噴射弁63A~63Dによる水噴射については適量が求められる。そこで、例えば、エンジンの回転数及び負荷に応じて、燃焼温度を過度に低下させることなくNOx量を低減可能な水噴射量を設定することが考えられる。
しかしながら、エンジンの回転数及び負荷に応じた水噴射量の設定では、エンジンの状態が変化する過渡運転時にNOx量を十分に抑制できない可能性がある。具体的には、必要なEGRガス量が増加する過渡運転時において、実際のEGRガス量の増加には遅れが生じる。そのため、エンジンの回転数及び負荷に応じた水噴射量の設定では、実際のEGRガス量が必要量に到達するまで水量が不足し、その結果NOx量を十分に抑制できない可能性がある。
図3は、参考例として、エンジンの過渡運転時におけるNOx量の推移の一例を示す図である。図3において、EGR率とは、エンジン本体に供給される吸気ガス中に占めるEGRガス量の割合を示す。線L1(点線)は、EGR率の目標値(目標EGR率)であり、目標EGR率は、この例ではエンジンの回転数及び負荷(燃料噴射量等)から決定される。線L2(実線)は、EGR率の実績値(実績EGR率)である。線L3は、NOx量の推移を示す。
図3を参照して、実績EGR率の変化(線L2)は、目標EGR率の変化(線L1)に対して遅れを有する。具体的には、目標EGR率については、時刻t1においてピークとなっているのに対して、実績EGR率については、時刻t1よりも遅れた時刻t2においてピークとなっている。これは、目標EGR率の上昇に応じてEGRバルブの開度が増加してからその開度変化が燃焼室に供給される吸気ガスのEGR率の変化に表れるまでにはタイムラグが生じるためである。この遅れにより、時刻t1から時刻t2の間は、目標EGR率に対して実績EGR率が低くなっている。
この参考例では、目標EGR率がエンジンの回転数及び負荷から決定されることに応じて、水噴射量もエンジンの回転数及び負荷に基づいて決定される。そのため、時刻t1から時刻t2の間において、目標EGR率よりも低い実績EGR率に対しては水噴射量が少ない状態となり、その結果、燃焼温度を十分に抑制できずにNOx量が増加している(線L3)。時刻t3,t4についても同様であり、時刻t3から時刻t4の間のEGR遅れによりNOx量が増加している。
そこで、本実施の形態に従うディーゼルエンジン1においては、エンジン本体10の回転数及び負荷に基づく水噴射量をベースとしつつ、燃焼状態に直接関与する状態量である吸気酸素の量を用いて水噴射量が決定される。吸気酸素は、燃焼室に供給される吸気ガスに含まれる酸素であり、本実施の形態では、上記状態量として、吸気ガス中の吸気酸素の質量分率が用いられる。このような燃焼室内の燃焼状態に直接関与する状態量から水噴射量を決定することにより、過渡運転時においても燃焼状態に基づいて適切な水噴射量を決定することができる。
図4は、燃焼室内における噴霧平均温度の最大値の推移例を示す図である。図4において、線L4は、噴霧平均温度の最大値(以下、単に「噴霧温度」と称する場合がある。)Tmaxを示し、線L5は、噴霧温度Tmaxの目標値(以下、単に「目標噴霧温度」と称する。)Tmax0を示す。この図4では、参考例として、線L4については、上記のような本実施の形態における水噴射量の設定が行なわれない場合の温度推移が示されている。
なお、噴霧平均温度とは、燃焼室内の燃焼温度の空間的平均値を示し、噴霧平均温度の最大値とは、エンジンの1ストロークにおける噴霧平均温度の最大値を示す。目標噴霧温度Tmax0は、目標のNOx量を得るのに必要な噴霧温度Tmaxであり、この実施の形態では、エンジン本体10の回転数及び負荷に基づいて決定される。目標噴霧温度Tmax0は、実験やシミュレーション等により予め求められ、エンジン本体10の回転数及び負荷をパラメータとするマップとして記憶装置53に記憶されている。
図4を参照して、エンジン本体10の状態が変化(例えば、図3で説明した過渡変化)したことにより、時刻t11,t12において噴霧温度Tmax(線L4)が目標噴霧温度Tmax0(線L5)に対して上昇している。この例では、時刻t11において、噴霧温度Tmaxと目標噴霧温度Tmax0との温度差ΔT(1)が生じており、時刻t12において、噴霧温度Tmaxと目標噴霧温度Tmax0との温度差ΔT(2)が生じている。このような噴霧温度Tmaxの上昇は、NOx量の増加を招く。
本実施の形態では、この温度差ΔTを吸気酸素量(吸気酸素の質量分率)から推定する。そして、推定された温度差ΔTに基づいて、温度差ΔTを抑制するように水噴射弁63A~63Dの水噴射量を決定する。これにより、過渡運転時においても適量の水を噴射することができる。その結果、NOx量を十分に抑制することができ、また、噴霧温度の過度な低下によるエンジンの出力低下を抑制することができる。以下、上記の温度差ΔT及びそれに基づく水噴射量の算出方法について説明する。
本実施の形態に従うディーゼルエンジン1においては、事前の実験或いはシミュレーション等から導出された以下の実験式(1)を用いて、燃料の噴霧温度Tmax(K)が算出される。
この式(1)は、NOx発生量と噴霧温度との間にアレニウスの式が成り立つと仮定して、温度パラメータをe(ネイピア数)の指数項に有するアレニウス型のモデルを採用したものである。式(1)において、Yは吸気酸素の質量分率を示し、Y0はベース条件における吸気酸素の質量分率を示す。
吸気酸素の質量分率Yは、吸気流量センサ21により検出される吸入空気量と、EGR量(率)とから、公知の手法を用いて算出することができる。なお、EGR量(率)は、吸気流量センサ21により検出される吸入空気量と、圧力センサ24の検出値とから、公知の手法を用いて推定することができる。
ベース条件とは、ディーゼルエンジン1の定常運転下における、演算時のエンジン回転数及びエンジン負荷に基づく条件である。具体的には、Y0は、演算時のエンジン本体10の回転数及び負荷における吸気酸素の質量分率であり、Tmax0は、演算時のエンジン本体10の回転数及び負荷における噴霧温度(噴射平均温度の最大値)である。このベース条件における吸気酸素の質量分率Y0及び噴霧温度Tmax0は、それぞれ吸気酸素の質量分率Y及び噴霧温度Tmaxの目標値に相当する。吸気酸素の質量分率Y0及び噴霧温度Tmax0は、エンジン本体10の回転数及び負荷をパラメータとして実験やシミュレーション等により予め求められ、マップとして記憶装置53に記憶されている。
ベース条件における吸気酸素の質量分率Y0及び噴霧温度Tmax0を演算時のエンジン本体10の回転数及び負荷に基づいて上記マップから取得し、式(1)を用いて吸気酸素の質量分率Yから噴霧温度Tmaxを算出することができる。なお、エンジン本体10の回転数は、回転角センサ22の検出値から算出することができる。エンジン本体10の負荷は、例えば、燃料噴射弁43A~43Dからの燃料噴射量、及び/又はアクセルペダルセンサ25により検出されるアクセルペダルの踏込量から算出される。
そして、算出された噴霧温度Tmaxとベース条件における噴霧温度Tmax0との温度差ΔTが次式(2)により算出される。
ΔT=Tmax-Tmax0 …(2)
本実施の形態では、この温度差ΔTから、各水噴射弁63A~63Dの水噴射量Qw(g)が算出される。水噴射量Qwは、噴霧温度Tmaxを温度差ΔTだけ下げるのに必要な量として、次式により算出される。
Qw=Ms×Cp×ΔT/Hw …(3)
Msは、燃焼室内に燃料が噴霧されることにより生成される噴霧ガス(吸気ガスと燃料との混合ガス)の質量(g)を示す。また、Cpは噴霧内ガス定圧比熱(kJ/(kg・K))を示し、Hwは水の蒸発潜熱(kJ/kg)を示す。
なお、噴霧ガス質量Msは、各燃料噴射弁43B~43Dからの燃料の噴射量或いは噴射圧力に依存し、エンジン本体10の運転条件によって変化するパラメータである。噴霧ガス質量Msは、例えば、エンジン本体10の回転数及び負荷(燃料噴射量等)をパラメータとして実験やシミュレーション等により予め求められ、マップとして記憶装置53に記憶されている。
図5は、ベース条件からの噴霧温度の温度差ΔTと水噴射量Qwとの関係の一例を示す図である。図5において、横軸は、噴霧温度Tmaxとベース条件における噴霧温度Tmax0との温度差ΔTを示し、縦軸は水噴射量Qwを示す。
図5を参照して、線L11は、エンジンの回転数が1200rpmで燃料噴射量が20qv(mm3/st)(「st」はストロークを示す)であるときの関係を示す。また、線L12は、エンジンの回転数が1600rpmで燃料噴射量が30qvであるときの関係を示し、線L13は、エンジンの回転数が2000rpmで燃料噴射量が50qvであるときの関係を示す。
このように、本実施の形態に従うディーゼルエンジン1では、式(1)を用いて吸気酸素量(吸気酸素の質量分率Y)から燃料の噴霧温度Tmaxが算出され、ベース条件からの噴霧温度の温度差ΔTに基づいて、各水噴射弁63A~63Dの水噴射量Qwが決定される。
図6は、制御装置50により実行される水噴射弁63A~63Dの水噴射量の算出処理を説明するフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、ディーゼルエンジン1の運転中に、所定時間毎或いは所定の条件が成立する毎に繰り返し実行される。
図6を参照して、制御装置50は、まず、燃焼室内の燃焼状態に直接関与する状態量である吸気酸素量を示す吸気酸素の質量分率Yを算出する(ステップS10)。吸気酸素の質量分率Yは、吸気流量センサ21により検出される吸入空気量と、EGR量(率)とから、公知の手法を用いて算出することができる。
次いで、制御装置50は、エンジン本体10の回転数及び負荷を検出する(ステップS20)。回転数は、回転角センサ22の検出値から算出される。エンジン本体10の負荷は、燃料噴射弁43A~43Dからの燃料噴射量、及び/又はアクセルペダルセンサ25により検出されるアクセルペダルの踏込量から算出される。
さらに、制御装置50は、定常運転下におけるエンジン回転数及びエンジン負荷と、吸気酸素の質量分率及び噴霧温度の各々との関係を示すマップを用いて、ステップS20において検出された回転数及び負荷に基づいて、ベース条件における吸気酸素の質量分率Y0及び噴霧温度Tmax0を取得する(ステップS30)。このベース条件における噴霧温度Tmax0は、噴霧温度Tmaxの目標値(NOx低減に必要な目標噴霧温度)に相当する。
そして、制御装置50は、予め求められた実験式の上記式(1)を用いて、ステップS10において算出された吸気酸素の質量分率Y、並びにステップS30において取得されたベース条件における吸気酸素の質量分率Y0及び噴霧温度Tmax0から、演算時の噴霧温度Tmaxを算出する(ステップS40)。
次いで、制御装置50は、ステップS40において算出された噴霧温度Tmaxと、ベース条件における噴霧温度Tmax0(NOx低減に必要な目標噴霧温度)との温度差ΔT(=Tmax-Tmax0)を算出する(ステップS50)。
続いて、制御装置50は、演算時のエンジン本体10の運転状態下における噴霧ガス質量Msを算出する(ステップS60)。具体的には、制御装置50は、エンジン本体10の回転数及び負荷(燃料噴射量等)と、噴霧ガス質量Msとの関係を示すマップを用いて、ステップS20において検出された回転数及び負荷に基づいて噴霧ガス質量Msを算出する。
そして、制御装置50は、ステップS50において算出された温度差ΔTから、各水噴射弁63A~63Dによる水噴射量Qwを算出する(ステップS70)。具体的には、上述の式(3)を用いて、ステップS50において算出された温度差ΔT及びステップS60において算出された噴霧ガス質量Msから水噴射量Qwを算出する。
以上のように、この実施の形態においては、燃焼室内の燃焼状態に直接関与する状態量である吸気酸素の質量分率(燃料酸素量)と、燃焼室内に噴射された燃料の噴霧温度との予め求められた関係(式(1))に従って、吸気酸素の質量分率Yから噴霧温度Tmaxが推定される。そして、その推定された噴霧温度Tmaxとベース条件における噴霧温度Tmax0(目標噴霧温度)との温度差ΔTから、各燃料噴射弁43A~43Dの水噴射量Qwが決定される。
これにより、過渡運転時においても燃焼状態に基づいて適切な水噴射量Qwを決定することができる。したがって、この実施の形態によれば、過渡運転時においても適量の水を噴射することができる。その結果、NOx量を十分に抑制することができ、また、燃焼温度の過度な低下による出力低下を抑制することができる。
また、上記の実施の形態では、EGR装置13が設けられており、EGR装置13による排気ガスの還流量の変更時に、吸気酸素の質量分率(吸気酸素量)から水噴射量Qwが決定される。これにより、過渡運転時にEGRガスの応答遅れによる水噴射不足の問題は生じない。したがって、この実施の形態によれば、NOx量を十分に抑制することができる。
なお、エンジン本体10の冷間始動時は、EGR装置13を作動させると凝縮水が生成されるため、EGR装置13の作動が制限される場合がある。EGR装置13の作動が制限されると、燃焼温度が高くなりNOx量が増加する可能性がある。この実施の形態では、燃焼状態に直接関与する状態量である吸気酸素量(吸気酸素の質量分率Y)から水噴射量Qwが決定されるので、エンジン本体10の冷間始動時においても、NOx量を十分に抑制することができる。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 ディーゼルエンジン、10 エンジン本体、11A,11B 吸気管、11C 吸気マニホールド、12A 排気マニホールド、12B,12C 排気管、13 EGR装置、13A,13B EGR配管、13C バイパス配管、14A 経路切替装置、14B EGRバルブ、15 EGRクーラ、16 インタークーラ、21 吸気流量センサ、22 回転角センサ、23 大気圧センサ、24,26 圧力センサ、25 アクセルペダルセンサ、27 車速センサ、29 温度センサ、30 ターボ過給機、35 コンプレッサ、35A コンプレッサインペラ、36 タービン、36A タービンインペラ、41 コモンレール、42A~42D 燃料配管、43A~43D 燃料噴射弁、45A~45D シリンダ、47 スロットル装置、47A スロットルバルブ、50 制御装置、51 プロセッサ、53 記憶装置、61 水供給用コモンレール、62A~62D 水配管、63A~63D 水噴射弁、65 供給管、66 ポンプ、67 水タンク、71 シリンダブロック、72 シリンダヘッド、73 ピストン、75 燃焼室、76 キャビティ。

Claims (7)

  1. 燃焼室を有するエンジン本体と、
    前記燃焼室内に燃料を噴射するように構成された燃料噴射装置と、
    前記燃焼室内に水を噴射するように構成された水噴射装置と、
    前記水噴射装置を制御する制御装置と、
    前記燃焼室内に供給される吸気ガスに含まれる酸素の量を示す状態量を取得する取得部とを備え、
    前記制御装置は、
    前記状態量と前記燃焼室内に噴射された燃料の噴霧温度との予め求められた関係に従って、前記取得部により取得された前記状態量から前記噴霧温度を推定し、
    推定された前記噴霧温度と前記噴霧温度の目標との温度差から、前記水噴射装置による水噴射量を決定する、ディーゼルエンジン。
  2. 前記エンジン本体を経由せずに排気通路を吸気通路と接続し、排気ガスの一部を前記吸気通路に還流するように構成されたEGR装置をさらに備え、
    前記制御装置は、前記EGR装置による排気ガスの還流量の変更時に、前記温度差から前記水噴射量を決定する、請求項1に記載のディーゼルエンジン。
  3. 前記制御装置は、前記EGR装置の作動が制限される前記エンジン本体の冷間始動時に、前記温度差から前記水噴射量を決定する、請求項2に記載のディーゼルエンジン。
  4. 前記噴霧温度の目標は、前記エンジン本体の回転数及び負荷に基づいて決定される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジン。
  5. 前記関係は、前記状態量と、前記エンジン本体の1ストロークにおける前記噴霧温度の最大値との関係であり、
    前記制御装置は、
    前記関係に従って、前記取得部により取得された前記状態量から前記噴霧温度の最大値を推定し、
    推定された前記噴霧温度の最大値と、前記噴霧温度の最大値の目標との温度差から、前記水噴射量を決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のディーゼルエンジン。
  6. 前記制御装置は、前記エンジン本体の運転状態に応じて定まる前記燃焼室内の噴霧ガスの質量、噴霧内ガス定圧比熱、及び前記温度差を乗算した値を、水の蒸発潜熱値で除算することにより、前記水噴射量を算出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のディーゼルエンジン。
  7. 燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置と前記燃焼室内に水を噴射する水噴射装置とを備えるディーゼルエンジンの制御方法であって、
    前記燃焼室内に供給される吸気ガスに含まれる酸素の量を示す状態量を取得するステップと、
    前記状態量と前記燃焼室内に噴射された燃料の噴霧温度との予め求められた関係に従って、取得された前記状態量から前記噴霧温度を推定するステップと、
    推定された前記噴霧温度と前記噴霧温度の目標との温度差から、前記水噴射装置による水噴射量を決定するステップとを含む、ディーゼルエンジンの制御方法。
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