JP7724557B2 - モデル誤差抑制補償器 - Google Patents

モデル誤差抑制補償器

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特許法第30条第2項適用 刊行物1 令和4年8月24日ウェブサイト掲載 2022年電気学会 電子・情報・システム部門大会 講演論文集 https://www.bookpark.ne.jp/cm/ieej/detail/IEEJ-BTC2022SS03002-PDF/ 刊行物2 令和4年8月31日広島大学東広島キャンパス及び一部オンライン 2022年電気学会 電子・情報・システム部門大会 刊行物3 令和5年2月1日ウェブサイト掲載 電気学会研究会研究資料 https://www.bookpark.ne.jp/cm/ieej/detail/IEEJ-20230205C01201-020-PDF/ 刊行物4 令和5年2月5日愛媛大学教育学部大講義室及びオンライン 電気学会研究会 制御研究会
本発明は、モデル誤差抑制補償器に関する。
近年、産業機械、自動車の自動運転等の広い分野において多くのセンサ、アクチュエータを用いた高度な制御システムの開発が進んでいる。このような複雑な制御システムの効率的な開発手法としてモデルベース開発(Model-Based Development:MBD)が用いられている。モデルベース開発においては、制御対象の物理現象などから構築した理想的なモデルに対して制御系設計を行い、設計された制御器を実装することで、所望の制御性能を得ることができる。しかしながら、実際には制御対象とモデルとの間にはズレ(モデル誤差)が生じ、このモデル誤差が制御性能に影響を及ぼすと考えられる。
モデル誤差を抑制するための制御系設計手法として、制御系に制御対象のモデルを内包し制御出力とモデル出力との差を利用した、外乱オブザーバ(例えば、特許文献1)、モデル誤差抑制補償器(Model Error Compensator:MEC)(例えば、非特許文献1)等が提案されている。このような補償を行い、モデル誤差を抑制することによって、制御対象の応答特性をモデルの応答特性に近づけることができるので、モデルに対して設計した制御器をそのまま実際の制御対象に適用することが可能となる。外乱オブザーバ及びモデル誤差抑制補償器は、外乱、モデル誤差の抑制に特化した制御系であり、産業界で広く用いられているPID制御等の既存の制御器との併用も可能であるという利点を有する。
しかしながら、外乱オブザーバは、制御対象の逆モデルを必要とするという特徴があり、制御対象が厳密にプロパーである場合、制御対象がむだ時間、不安定零点を有する非最小位相系である場合については、プロパー性モデル誤差の抑制性能や安定性を考慮して、適切なフィルタを設計する必要がある。また、制御対象の特性によっては所望の制御性能を得られない可能性がある。これに対し、モデル誤差抑制補償器は、制御対象の逆モデルを必要としないので、むだ時間や不安定零点を持つ非最小位相系を含む幅広い制御対象への適用が可能である。
特開2021-138335号公報
H.Okajima, H.Umei, N.Matsunaga, T.Asai、"A Design Method of Compensator Minimize Model Error"、 SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration、Vol.6, No.4, pp.267-275、2013
しかしながら、モデル誤差抑制補償器は、一般的に制御対象の出力とモデルの出力との差分の影響をハイゲインでフィードバックして制御入力(操作量)を調整するように構成されるので、制御対象の特性、モデル誤差等によっては、制御系が不安定になる等、所望の制御特性を得られないおそれがある。したがって、制御対象の特性を考慮して、適切なモデル誤差抑制補償器を設計、調整することは難しい。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、容易に設計、調整可能なモデル誤差抑制補償器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係るモデル誤差抑制補償器は、
制御対象の応答特性を表すモデルとして予め設定された制御対象モデルの出力と、制御対象の出力との差分に基づいて、制御対象に入力される制御入力を調整するモデル誤差抑制補償器であって、
所定の将来時刻ステップにおける制御対象モデルの出力と制御対象の出力との差分、及び制御入力の調整値と可調整パラメータとの積で表される調整項を含む一般化モデル誤差推定値の分散を最小化するように設定される。
また、上記のモデル誤差抑制補償器は、
制御対象モデルの出力と制御対象の出力との差分に基づいて制御入力の調整値を出力するフィルタを備え、
前記フィルタの伝達特性を表す分母多項式は、前記可調整パラメータの項を含む、
こととしてもよい。
この発明の第2の観点に係るモデル誤差抑制補償器は、
制御対象の応答特性を表すモデルとして予め設定された制御対象モデルの出力と、制御対象の出力との差分に基づいて、制御対象に入力される制御入力を調整するモデル誤差抑制補償器であって、
前記モデル誤差抑制補償器は、
以下の式で表される制御対象について、
ただし、A,Bの次数はn,mであり、yは制御対象の出力、uは制御対象の入力、ξは制御対象のモデル誤差、z-1は遅延演算子、Δは差分演算子、kは制御対象のむだ時間である。
以下の式で表される評価規範を最小化する。
ただし、φ(k+k+1)は、以下の式で表される一般化モデル誤差推定値である。

ただし、y(k+k+1)は制御対象モデルの出力、u(k)はモデル誤差抑制のための補償入力、λは補償入力の差分に対する重み係数である可調整パラメータである。
また、上記のモデル誤差抑制補償器は、
制御対象モデルの出力と制御対象の出力との差分に基づいて制御入力の調整値を出力するフィルタを備え、
前記フィルタの伝達特性を表す分母多項式は、前記可調整パラメータの項を含む、
こととしてもよい。
本発明のモデル誤差抑制補償器によれば、モデル誤差抑制補償器を、容易に設計できるとともに、制御対象の応答特性に応じて容易に修正することが可能である。
本発明の実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器の構成を示すブロック線図である。 実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器の補償則を示すブロック線図である。 むだ時間L=0sの数値例に係るシミュレーション結果を示すグラフであり、(A)はモデル誤差抑制補償器が無い場合のグラフ、(B)はモデル誤差抑制補償器が有る場合のグラフである。 制御対象のむだ時間と制御対象モデルのむだ時間とが不一致である数値例に係るシミュレーション結果を示すグラフであり、(A)はモデル誤差抑制補償器が無い場合のグラフ、(B)はモデル誤差抑制補償器が有り、重み係数λ=0とした場合のグラフであり、(C)はモデル誤差抑制補償器が有り、重み係数λ=10とした場合のグラフである。
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器について説明する。
本実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器1は、図1のブロック線図に示すように、制御対象モデル11、フィルタ12を備え、制御対象20の出力yと制御対象モデル11の出力yとの差分に基づいて、制御対象20へ入力される制御入力uを調整する。これにより、実際の制御対象20がモデル誤差を有する場合であっても、制御対象モデル11に基づいて設計されたコントローラを用いて所望の制御性能に近い制御性能を得ることができる。
モデル誤差抑制補償器1は、例えばコンピュータ装置を用いて構成され、制御システムのコントローラとともに実装される。本実施の形態では、フィルタ12が、一般化最小分散制御(Generalized Minimum Variance Control:GMVC)の設計手法に基づいて設計される点で従来のモデル誤差抑制補償器と異なる。
図1のブロック線図において、P(z-1)は制御対象20、P(z-1)は制御対象20の応答特性を表す数理モデルとして、予め設定されたノミナルモデルである制御対象モデル11を示している。D(z-1)は、制御対象20の出力y(k)と制御対象モデル11の出力y(k)とに基づいて、モデル誤差を抑制するように補償入力u(k)をフィードバックする補償要素としてのフィルタ12である。
また、u(k)は図示しない制御器からの入力、ξ(k)は制御対象20のモデル誤差を表している。モデル誤差抑制補償器1により制御対象20のモデル誤差の影響を抑制することで、モデル誤差抑制補償器1を含む制御対象20の応答特性を、制御対象モデル11の応答特性に近づけることができる。したがって、モデルベース開発によって設計した制御器を実際の制御対象に組み込むことにより、所望の制御性能を発揮することができると考えられる。
本実施の形態では、モデル誤差抑制補償器1の設計に、評価規範の最小化に基づく制御系設計手法である一般化最小分散制御で用いられる設計手法を適用することにより、モデル誤差抑制補償則の導出を行う。一般化最小分散制御は、むだ時間や不安定零点を有する非最小位相系に対しても有効であることが知られており、モデル誤差抑制補償器としても幅広い制御対象に活用することができると考えられる。以下、一般化最小分散制御の設計手法に基づいて設計されるモデル誤差抑制補償器1について、具体的に説明する。
本実施の形態に係る制御対象20は、次式で記述されるCARIMA(Controlled Auto-Regressive Integrated Moving Average)モデルとし、A(z-1),B(z-1)の次数はそれぞれn,mとする。
ここで、y(k)は制御対象20の出力、u(k)は制御対象20の入力である。ξ(k)は制御対象20に加わるモデル誤差を表しており、平均0、分散σのガウス性白色雑音であることとする。また、z-1は遅延演算子を表しており、z-1y(k)=y(k-1)である。Δは差分演算子を表しており、Δ:=1-z-1で定義される。また、kは制御対象20のむだ時間である。尚、制御対象20には、確率的なモデル誤差のみが生じることとし、多項式A(z-1)及びB(z-1)の係数、むだ時間kは既知であることとする。
式(1)の制御対象20に対して、以下の式の評価規範の最小化に基づくモデル誤差抑制補償則を導出する。
上式のφ(k+k+1)は一般化モデル誤差推定値であり、以下の式で定義される。
ここで、y(k+k+1)はモデル出力であり、u(k)はモデル誤差抑制のための補償入力である。λは補償入力の差分に対する重み係数であり、設計者が任意に設定する。
上述のように、本実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器1は、所定の将来時刻ステップ(k+k+1)における制御対象モデル11の出力と制御対象20の出力との差分、及び制御入力の調整値である補償入力u(k)と可調整パラメータである重み係数λとの積で表される調整項を含む一般化モデル誤差推定値φ(k+k+1)の分散を最小化するように設定される。
ここで、次式に示すDiophantine方程式を導入し、E(z-1)及びF(z-1)を求める。尚、ΔA(z-1)及びz-(km+1)からE(z-1)及びF(z-1)が一意に計算されるように、E(z-1),F(z-1)の次数は、それぞれk,nとなっている。
式(1)、(4)、(5)から次式に示す時刻kにおける一般化モデル誤差推定値のk+1段先の予測値を得る。
ここで、式(7)から時刻kにおける最適予測値を次式で定義する。
ただし、G(z-1)は次式で定義され、n:=m+kである。
次に、式(7)、(8)から次式を得る。
式(3)、(10)から、^φ(k+k+1|k)=0とすることにより、次式に示す評価規範Jを最小化するモデル誤差抑制補償則が導出される。
図2は、式(1)及び式(11)によって構成されるモデル誤差抑制補償器1を含む制御系のブロック線図である。図2に示す制御系の入出力関係は以下の式のようになる。
また、図2に示すように、フィルタ12の伝達特性は、以下の式のように表すことができる。
設計者は補償入力の差分に対する重み係数λを適切に設定することにより、制御系の性能を調整することができる。より具体的には、フィルタ12の特性を表す式(14)の分母多項式は、可調整パラメータである重み係数λの項を含む。したがって、設計者は重み係数λを適宜調整することにより、フィルタ12のゲインを調整して、制御性能を調整することができる。
(数値例)
以下、本実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器1を備える制御システムについて行ったコンピュータシミュレーションの例について説明する。本例に係る制御対象は、以下の式に示す2次遅れ系とした。尚、本例では、モデル誤差抑制補償器1の効果を確認するため、むだ時間L[s]を変化させてシミュレーションを行った。
式(15)に示す制御対象を離散化して、以下の式で表される離散時間システムを得る。
上記の制御対象に対し、モデル誤差ξ(k)として、平均0、分散0.01のガウス性白色雑音を与える。また、制御対象に与える入力は、ステップ入力u(k)=10とする。
図3は、むだ時間L=0sでモデル誤差抑制補償器1が無い場合(図3(A))と有る場合(図3(B))におけるシミュレーション結果を示している。また、モデル誤差抑制補償器1における、補償入力の差分に対する重み係数λはλ=0としている。制御対象20にモデル誤差抑制補償器1が付加されていない場合(図3(A))、モデル誤差によって制御対象20の出力が不規則に変動しており、制御対象モデル11の出力から大きく乖離していることがわかる。これに対し、モデル誤差抑制補償器1を備える場合(図3(B))、制御対象20と制御対象モデル11との出力の差異から得られた補償入力をフィードバックしてモデル誤差を抑制することによって、制御対象20の出力が制御対象モデル11の出力に一致するように追従できていることがわかる。
図4は、実システムに係る制御対象20のむだ時間と制御対象モデル11のむだ時間とが不一致であった場合のシミュレーション結果を示している。本例では、制御対象20のむだ時間をd=5、制御対象モデル11のむだ時間をd=3とし、その他の条件は上述の図3に係るシミュレーションと同様であることとした。図4(A)はモデル誤差抑制補償器1の無い場合、図4(B)はモデル誤差抑制補償器1を備え、重み係数λ=0とした場合、図4(C)はモデル誤差抑制補償器1を備え、重み係数λ=10とした場合のシミュレーション結果である。重み係数λ=0とした場合、制御システムの応答は発散しているが、重み係数λ=10とした場合、制御システムは安定化され、制御対象モデル11への追従が達成できていることがわかる。
これらの結果から、本実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器1が、むだ時間を有する制御対象について、有効に働くことがわかる。また、可調整パラメータである重み係数λのみを調整することにより、制御特性を調整することができるので、容易にモデル誤差抑制補償器1の特性を修正し、高い制御性能を得られることがわかる。
以上、詳細に説明したように、本実施の形態に係るモデル誤差抑制補償器によれば、一般化最小分散制御の制御則の導出方法を応用して、モデル誤差抑制補償則を導出することとしている。具体的には、式(3)、(4)に示すように、制御対象の出力と制御対象モデルの出力との差分、及びこの差分に対する重み係数に基づく一般化モデル誤差推定値の分散を最小化するようにモデル誤差抑制補償則を導出する。したがって、むだ時間や不安定零点を持つ非最小位相系を含む広範な制御対象について、モデル誤差抑制補償器を、明確な設計手法に基づいて容易に設計することができる。
また、式(14)に示すように、フィルタ12の伝達特性を表す分母多項式は、重み係数λを含む。したがって、設計者は重み係数λを適宜調整することにより、フィルタ12のゲインを調整して、制御性能を調整することができる。これにより、フィルタ12の過度なハイゲイン化を容易に抑制し、制御システムの不安定化を防ぐことができる。また、重み係数λによって、制御特性を調整できるので、経時的な制御対象20の応答特性の変動、例えばむだ時間の増大、ゲインの低下等が生じ、制御対象20の応答特性が制御対象モデル11の応答特性に対して乖離した場合であっても、容易に制御対象20の応答特性を制御対象モデル11の応答特性に追従させることが可能である。
本発明は、モデル誤差を有する制御対象に係るモデル誤差抑制補償器に好適である。特に、むだ時間や不安定零点を持つ非最小位相系を含む制御対象に係るモデル誤差抑制補償器に好適である。
1 モデル誤差抑制補償器、11 制御対象モデル、12 フィルタ、20 制御対象

Claims (4)

  1. 制御対象の応答特性を表すモデルとして予め設定された制御対象モデルの出力と、制御対象の出力との差分に基づいて、制御対象に入力される制御入力を調整するモデル誤差抑制補償器であって、
    所定の将来時刻ステップにおける制御対象モデルの出力と制御対象の出力との差分、及び制御入力の調整値と可調整パラメータとの積で表される調整項を含む一般化モデル誤差推定値の分散を最小化するように設定される、
    ことを特徴とするモデル誤差抑制補償器。
  2. 制御対象モデルの出力と制御対象の出力との差分に基づいて制御入力の調整値を出力するフィルタを備え、
    前記フィルタの伝達特性を表す分母多項式は、前記可調整パラメータの項を含む、
    ことを特徴とする請求項1に記載のモデル誤差抑制補償器。
  3. 制御対象の応答特性を表すモデルとして予め設定された制御対象モデルの出力と、制御対象の出力との差分に基づいて、制御対象に入力される制御入力を調整するモデル誤差抑制補償器であって、
    前記モデル誤差抑制補償器は、
    以下の式で表される制御対象について、
    ただし、A,Bの次数はn,mであり、yは制御対象の出力、uは制御対象の入力、ξは制御対象のモデル誤差、z-1は遅延演算子、Δは差分演算子、kは制御対象のむだ時間である。
    以下の式で表される評価規範を最小化する、
    ただし、φ(k+k+1)は、以下の式で表される一般化モデル誤差推定値である。

    ただし、y(k+k+1)は制御対象モデルの出力、u(k)はモデル誤差抑制のための補償入力、λは補償入力の差分に対する重み係数である可調整パラメータである。
    ことを特徴とするモデル誤差抑制補償器。
  4. 制御対象モデルの出力と制御対象の出力との差分に基づいて制御入力の調整値を出力するフィルタを備え、
    前記フィルタの伝達特性を表す分母多項式は、前記可調整パラメータの項を含む、
    ことを特徴とする請求項3に記載のモデル誤差抑制補償器。
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