JP7726264B2 - 圧力波発生素子およびその製造方法 - Google Patents

圧力波発生素子およびその製造方法

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Description

本発明は、空気を周期的に加熱することによって圧力波を発生する圧力波発生素子に関する。また本発明は、圧力波発生素子の製造方法に関する。
圧力波発生素子は、サーモホン(thermophone)とも称され、一例として、支持体上に抵抗体層が設けられる。この抵抗体に電流が流れると、抵抗体は発熱し、抵抗体に触れている空気が熱膨張し、続いて通電を停止すると、膨張した空気が収縮する。こうした周期的な加熱によって音波が発生する。駆動信号を可聴周波数に設定すると、音響スピーカとして利用できる。駆動信号を超音波周波数に設定すると、超音波源として利用できる。こうしたサーモホンは、共振機構を利用していないため、広帯域かつ短パルスの音波を発生することが可能である。サーモホンは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換してから音波を発生するため、エネルギー変換効率や音圧の向上が要望される。
特許文献1では、抵抗体として、複数のカーボンナノチューブが相互に平行に並列されたカーボンナノチューブ構造体を設けることによって、空気と接触する表面積を大きくし、単位面積当りの熱容量を小さくしている。特許文献2では、放熱層としてシリコン基板を使用し、断熱層として熱伝導率の小さいポーラスシリコンを使用することによって、断熱特性を改善している。
特開2009-296591号公報 特開平11-300274号公報
特許文献1では、発熱層にカーボンナノチューブを使うことで、熱容量の削減を検討している。カーボンナノチューブは実用化が進んできたものの、コストが高く、製造におけるハンドリングが難しいことから、実用化の際に問題となる可能性が高い。また、カーボンナノチューブの抵抗率(10-5~10-2Ωcm)は、金属材料(10-6Ωcm)と比較して高いことから、同じ電力を投入するためには高い電圧で素子を駆動させる必要がある。
本発明の目的は、改善された音圧および適切な電気抵抗を有する圧力波発生素子を提供することである。また本発明の目的は、こうした圧力波発生素子を製造するための方法を提供することである。
本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、平均細孔径が0.2~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され
前記繊維膜は、繊維径1nm~100nmの繊維を含む
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、繊維径1nm~100nmの繊維を含み、かつ、空隙率が87%~95%の範囲内である繊維膜で構成される。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され、
前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれている。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成され、
前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれている。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され、
前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成される。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成され、
前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成される。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され、
前記金属コーティングは、前記支持体から遠くなるほど厚さが増加している。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成され、
前記金属コーティングは、前記支持体から遠くなるほど厚さが増加している。
本発明の他の態様に係る圧力波発生素子の製造方法は、
支持体を用意するステップと、
該支持体の上に、エレクトロスピニング法を用いた紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成するステップと、
前記繊維膜の上に、金属コーティングを施して繊維層を形成するステップとを含み、
紡糸の際に、濃度の異なる2種類以上の溶液を用いて同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成する。
本発明の他の態様に係る圧力波発生素子の製造方法は、
支持体を用意するステップと、
該支持体の上に、エレクトロスピニング法を用いた紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成するステップと、
前記繊維膜の上に、金属コーティングを施して繊維層を形成するステップとを含み、
紡糸の際に、2種類以上の異種材料を用いて同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成する。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、繊維膜で構成され、
前記繊維膜は、繊維径1nm~100nmの繊維を含み、
前記繊維層への金属コーティングの侵入深さが2.2μm以上である。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれている。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成される。
本発明に係る圧力波発生素子によれば、繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含むことによって、空気と接触する表面積が増加するため、音圧向上が図られる。また金属材料の使用により、繊維層の電気抵抗を適切な値に設定できる。また繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成される。あるいは繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成される。これにより繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
また本発明に係る圧力波発生素子の製造方法によれば、空気と接触する表面積が大きく、適切な電気抵抗を有する繊維層を実現できる。また複合繊維からなる繊維膜を形成することによって、繊維層の細孔径や空隙率が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明の実施形態1に係る圧力波発生素子の一例を示す断面図である。 繊維層の表面を示す電子顕微鏡写真である。 金属コーティングの厚さ分布を示す断面図である。 電極の配置例を示す平面図である。 ビーズが生成された繊維膜の一例を示す電子顕微鏡写真である。 圧力波発生素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。 金属コートの不織布内部への侵入深さの測長例を示す電子顕微鏡写真である。
本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成される。
この構成によれば、繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含む。そのため空気と接触する表面積が増加するようになり、単位入力電力に対する音圧の向上が図られる。繊維は、不織布、織布、編物またはこれらの混合物の形態で配置することができ、繊維の周囲にある空洞が互いに連通して、内部空洞と外部空間との間で通気性が確保される。従って、繊維で構成された多孔質構造と空気との間の接触面積は、非多孔質で平滑な表面と比べて著しく増加するようになる。そのため繊維層から空気への熱伝達効率が高くなり、音圧を向上させることができる。
また、繊維の少なくとも一部に金属コーティングを施すことによって、コーティング膜厚の調整、コーティング材料の選択に応じて、繊維層の電気抵抗を適切な値に容易に設定できる。こうして所望の電気抵抗が得られるようになり、駆動電圧の最適化が図られる。
また、繊維として、例えば、低熱伝導材料を用いた場合、繊維層から支持体への熱伝導を抑制できる。そのため繊維層表面の温度変化が大きくなり、単位入力電力に対する音圧の向上が図られる。こうした繊維を含む繊維層は多孔質構造のため、特許文献2のように音圧向上のための断熱層を導入する必要がない。
また、繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成される。これにより繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明において、前記繊維膜は、繊維径1nm~100nmの繊維を含み、かつ、平均細孔径が0.2μm以上であることが好ましい。これにより繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成される。
これにより繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明において、前記繊維膜は、繊維径1nm~100nmの繊維を含み、かつ、空隙率が87%以上であることが好ましい。これにより繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明において、前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成されることが好ましい。これにより繊維層の細孔径や空隙率が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明において、第1繊維径Φ1は1nm≦Φ1≦100nmの範囲内であり、第2繊維径Φ2は100nm≦Φ2≦2000nmの範囲内であることが好ましい。これにより繊維層の細孔径や空隙率が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明において、前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれていることが好ましい。これにより繊維層の細孔径や空隙率が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明において、前記金属コーティングは、前記支持体から遠くなるほど厚さが増加していることが好ましい。
この構成によれば、繊維層の内部おいて支持体側の発熱を抑制しつつ、支持体とは反対側での発熱を増強できる。そのため繊維層から支持体への熱伝導を抑制しつつ、空気を加熱する効率が向上し、単位入力電力に対する音圧の向上が図られる。
本発明において、前記繊維層は、不織布で構成されることが好ましい。これにより繊維層の比表面積、細孔径、空隙率などが増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明の他の態様に係る圧力波発生素子の製造方法は、
支持体を用意するステップと、
該支持体の上に、エレクトロスピニング法を用いた紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成するステップと、
前記繊維膜の上に、金属コーティングを施して繊維層を形成するステップとを含み、
紡糸の際に、濃度の異なる2種類以上の溶液を用いて同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成する。
本発明の他の態様に係る圧力波発生素子の製造方法は、
支持体を用意するステップと、
該支持体の上に、エレクトロスピニング法を用いた紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成するステップと、
前記繊維膜の上に、金属コーティングを施して繊維層を形成するステップとを含み、
紡糸の際に、2種類以上の異種材料を用いて同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成する。
これらの方法によれば、繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含むようになり、ヒータとして機能する。そのため空気と接触する表面積が増加するようになり、単位入力電力に対する音圧の向上が図られる。また適切な電気抵抗を有する繊維層を容易に実現できる。
また、エレクトロスピニング法を用いることによって、直径が1nm~2000nmの範囲にある繊維、例えば、ナノファイバ、サブミクロンファイバ、ミクロンファイバなどを実現できる。
また、空気と接触する表面積が大きく、適切な電気抵抗を有する繊維層を実現できる。また複合繊維からなる繊維膜を形成することによって、繊維層の細孔径や空隙率が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
また本発明の一態様に係る圧力波発生素子は、
支持体と、
該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
前記繊維層への金属コーティングの侵入深さが1μm以上である。
これにより単位入力電力に対する音圧が大きな圧力波発生素子とすることができる。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る圧力波発生素子1の一例を示す断面図である。
圧力波発生素子1は、支持体10と、繊維層20と、一対の電極D1,D2とを備える。支持体10は、シリコンなどの半導体、またはガラス、セラミック、ポリマーなどの電気絶縁体で形成される。支持体10の上には、支持体10より低い熱伝導率を有する熱絶縁層を設けてもよく、これにより繊維層20から支持体10への熱の散逸を抑制できる。後述するように、繊維層20が熱絶縁機能を有する場合、上述の熱絶縁層は省略してもよい。
支持体10の上には、繊維層20が設けられる。繊維層20は、導電性材料で形成され、電気的に駆動されて電流が流れることによって熱を発生し、空気の周期的な膨張および収縮に起因した圧力波を放射する。繊維層20の両側には、一対の電極D1,D2が設けられる。電極D1,D2は、導電性材料からなる単層構造または多層構造を有する。
本実施形態において、繊維層20は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含む。そのため空気と接触する表面積が増加するようになり、音圧向上が図られる。また繊維に金属コーティングを施すことによって、コーティング膜厚の調整、コーティング材料の選択に応じて、繊維層20の電気抵抗を適切な値に設定できる。
繊維は、支持体10の上に直接配置してもよく、あるいはポリマー材料などの接着層を介して配置してもよい。
図2は、繊維層20の表面を示す電子顕微鏡写真である。ここでは、繊維が、ランダムに配向しており、熱的、機械的または化学的な作用によって接着しまたは絡み合ってシート状になった形態である場合を示す。繊維の表面には、金属コーティングが施されている。
繊維層20は、こうした不織布の形態でもよく、経糸と緯糸を組み合わせた織布の形態でもよく、繊維を編んだ編物の形態でもよく、あるいはこれらが混合した形態でもよい。
繊維は、ポリマーファイバ、ガラスファイバ、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、金属ファイバおよびセラミックファイバからなるグループより選択できる。繊維として、例えば、ポリマー、ガラス、セラミックなどの低熱伝導材料を用いた場合、繊維自体が熱絶縁機能を有するため、繊維層から支持体への熱伝導を抑制できる。そのため繊維層表面の温度変化が大きくなり、単位入力電力に対する音圧の向上が図られる。
ポリマー材料の具体例として、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ABS樹脂、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリウレタンが使用できる。
金属コーティングは、例えば、Au,Ag,Cu,Pt,Rh,Pd,Ru,Ni,Ir,Cr,Mo,W,Ti,Alなどの金属材料、またはこれらの2種類以上の金属を含む合金で形成されることが好ましい。金属コーティングは、単層構造でもよく、あるいは複数の材料からなる多層構造でもよい。
(実施形態2)
図6は、圧力波発生素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。最初にステップS1において、支持体10を用意する。
次にステップS2において、支持体10の上に紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成する。紡糸方法として、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、遠心紡糸法、溶融紡糸法などが採用できる。また、セルロースナノファイバのようにパルプを解砕してシート状に加工した方法が採用できる。特にエレクトロスピニング法を用いた場合、ナノファイバ、サブミクロンファイバ、ミクロンファイバなどを実現できる。紡糸した繊維は、支持体10の上に直接配置して不織布の形態としてもよく、あるいは、経糸と緯糸を組み合わせた織布の形態、または繊維を編んだ編物の形態で支持体10の上に配置してもよい。
なお、支持体10の上に直接に紡糸する代わりに、別の支持体の上に紡糸した後、紡糸した繊維を剥離して支持体10の上に接着することも可能である。
ステップS2において、紡糸の際に、濃度の異なる2種類以上の溶液を用いて複数の紡糸ノズルから同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成してもよい。高い濃度の溶液を用いると、紡糸された繊維の直径が大きくなり、一方、低い濃度の溶液を用いると、紡糸された繊維の直径が小さくなる。従って、濃度の異なる2種類以上の溶液を用いて紡糸すると、繊維径の異なる複数の繊維からなる複合繊維が得られる。これにより繊維層の細孔径や空隙率が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
また、ステップS2において、紡糸の際に、2種類以上の異種材料(例えば、ポリイミド繊維とアクリル繊維など)を用いて複数の紡糸ノズルから同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成してもよい。これにより繊維の各種物性、例えば、比表面積、繊度、比重、機械的性質、劣化性、光学的性質、吸湿および膨潤、熱的性質、燃焼性、電気的性質、摩擦特性、染着性などを所望の値に制御できる。例えば、繊維層の比表面積が増加すると、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
次にステップS3において、得られた繊維膜の上に金属コーティングを施して繊維層20を形成する。コーティング方法として、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキ、イオンプレーティング、原子層堆積法などが採用できる。金属材料として、一般に上述したものが採用できる。
次にステップS4において、得られた繊維層20の上に一対の電極D1,D2を形成する。電極の成膜方法として、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキ、イオンプレーティング、原子層堆積法、印刷、スプレーコート、ディップコートなどが採用できる。電極材料として、Au,Ag,Cu,Pt,Rh,Pd,Ru,Ni,Ir,Cr,Mo,W,Ti,Al,Snなどの金属材料、またはこれらの2種類以上の金属を含む合金で形成されることが好ましい。電極構造は、単層構造でもよく、あるいは複数の材料からなる多層構造でもよい。
(実施例1)
(試料作製方法)
圧力波発生素子を以下の方法で作製した(サンプル1~5)。
N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒として用いて作製したポリアミック酸溶液を紡糸溶液として使用した。溶液濃度は22wt%となるように調製した。
この溶液を用いて、エレクトロスピニング法により、ドラムコレクタの周面に装着したアルミ箔上へポリアミック酸繊維を紡糸した。使用したドラムコレクタは直径200mmを有し、100rpmで回転させながら紡糸を行った。
エレクトロスピニングの条件は、印加電圧23kV、ノズルとコレクタ距離14cmで、繊維膜の厚みが1~80μm程度となるように成膜時間を調整した。得られたポリアミック酸繊維を300℃で2hr熱処理(イミド化)を行うことでポリイミド繊維を得た。作製したポリイミドの繊維径は157nmであった。ポリイミド材料は耐熱性を有するため、熱処理プロセスを適用できる。
次に複合繊維について説明する。空隙率や細孔径の異なるポリイミド繊維膜は、エレクトロスピニング時にマルチノズルを用いてポリアミック酸溶液とアクリル樹脂溶液を同時に紡糸し、熱処理によりアクリル繊維のみを熱分解させることで作製した。
アクリル樹脂溶液は以下のように作製した。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いて作製したアクリル樹脂溶液を紡糸溶液として使用した。溶液濃度は10wt%~25wt%となるように調製した。
22wt%ポリアミック酸溶液と10~22wt%アクリル樹脂溶液を用いて、マルチノズルによるエレクトロスピニング法により、ドラムコレクタの周面に装着したアルミ箔上へポリアミック酸繊維とアクリル繊維を同時に紡糸した。このとき溶液の吐出量は、1:1で実施した。吐出量は吐出速度やノズル本数で調整ができる。使用したドラムコレクタは直径200mmを有し、100rpmで回転させながら紡糸を行った。
エレクトロスピニングの条件は、印加電圧23kV、ノズルとコレクタ距離14cmで、繊維膜の厚みが1~80μm程度となるように成膜時間を調整した。このとき、作製したアクリル樹脂の繊維径は、溶液濃度10wt%で210nm、15wt%で615nm、20wt%で873nm、22wt%で1025nmであった。得られたポリアミック酸繊維とアクリル繊維が混合した繊維膜を300℃で2hr熱処理することで、アクリル繊維の熱分解とポリアミック酸のイミド化を行い、ポリイミド繊維を得た。熱分解温度や融点の低い高分子材料の場合、熱処理プロセスを適用すると繊維膜が得られないが、ポリイミド材料は耐熱性を有するため、熱処理プロセスを適用できる。
作製した各繊維膜をアルミ箔から剥離し、Si基板(支持体)上へ接着させた。基材への接着は、あらかじめ基材へエポキシ等の接着剤の塗布や、両面テープ等を用いることで実施できる。また、基材は、ガラスやアルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素等のセラミック基板や、PETフィルムやポリイミドフィルム等のフレキシブル基板を使用できる。
基板に形成した繊維膜上にスパッタ法により、厚さが1~40nmの範囲で分布するAuを成膜した。繊維への金属コーティングの方法は、蒸着法やイオンプレーティング法、原子層堆積法、無電解めっき法などの手法を用いてもよい。また、金属種はAu、Ag、Cu、Pt、Rh、Pd、Ru、Ni、Ir、Cr、Mo、W、Ti、Al等が使用できる。
金属コーティングの厚さは、繊維の周方向に均一でもよく、あるいは不均一でもよく、例えば、支持体から遠くなるほど厚さが増加していてもよい。金属コーティングは、支持体側に最も近い位置で厚さT1を有し、支持体側から最も遠い位置で厚さT2を有し、T1<T2を満たしてもよい。繊維への金属コーティングの形態は、例えば、図3に示すように、繊維21の周面において支持体10に近接した下部には、金属コーティング22が施されない箇所が存在してもよい。これにより繊維層の内部において支持体側の発熱を抑制しつつ、支持体とは反対側での発熱を増強できる。
金属コーティングされた繊維のコーティング状態(断面像)は下記のように分析できる。例えば、試料を集束イオンビーム(FIB)により加工し、透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM-F200)での観察とエネルギー分散型X線分光法による元素マッピング分析により、繊維へのコーティング状態を分析できる。
作製した素子サイズは5mm×6mmとなるように加工した。一対の電極D1,D2を試料の両サイドに4mm×0.8mm、電極間距離3.4mmの電極を形成した(図4A)。電極の積層構造は支持体側からTi(10nm厚)、Cu(500nm厚)、Au(100nm厚)とした。なお、電極D1,D2は、素子抵抗を調整するために、図4Bに示すように櫛歯状の電極構造でもよい。
電極の成膜方法として、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング法、原子層堆積法、電解メッキ、無電解メッキ、スプレーコート、ディップコート、印刷などが採用できる。電極材料として、Au,Ag,Cu,Pt,Rh,Pd,Ru,Ni,Ir,Cr,Mo,W,Ti,Alなどが使用できる。
(評価方法)
1)音響特性(音圧)
圧力波発生素子の音響特性は、MEMSマイクロフォン(Knowles社SPU0410LR5H)を用いて測定した。圧力波発生素子とマイクロフォンの距離は6cmとし、駆動信号の周波数が60kHz時のマイクロフォンの出力電圧を読み取ることで評価した。圧力波発生素子への入力電圧は6~16Vとした。
圧力波発生素子は、発熱体による空気加熱によって圧力波を発生させる。そのため同じ素子でも投入する電力が大きいほど、音圧も大きくなる。効率(音響変換効率)よく音波を発生できるかを判断するために、同じ電力で音圧の比較を行う必要がある。電力を大きくしていくと出力も線形的に大きくなるが、例えば、音響変換効率が良好な場合、電力の増分ΔWに対するマイクロフォン出力の増加ΔVの比率が大きくなる。ここでは傾きΔV/ΔWを音圧の指標として用いた。指標の比較対象は、比較サンプル1の結果を用いた。
2)繊維径
ポリイミド繊維やアクリル繊維の繊維径の測定は下記のように実施した。繊維膜を、走査型電子顕微鏡(日立製S-4800 加速電圧5kV,3k~120k倍)にて観察してSEM画像を取得し、得られた画像から繊維径を測長することで平均繊維径を算出した。具体的には、得られた画像に含まれる複数の繊維のうち異常なものを除いて1視野当たり10本の繊維をランダムに抽出し、それを5視野について行うことで計50本の繊維をサンプリングし、これらの直径を測長し、平均繊維径を算出した。
3)空隙率
ポリイミド繊維膜の空隙率は、下記式より算出した。
空隙率(%)={1-(かさ密度÷真密度)}×100
その他の空隙率の算出方法として、FIBでの断面加工とSEM観察を繰り返し、3次元立体像を取得する方法で空隙率の算出ができる。具体的には、FEI製HELIOS NANORAB 660iにてFIB加工を行って、SEM像を観察し、続いて、FIBにて再度奥行方向に10nm加工した後、SEM画像を観察する。こうしてFIB加工とSEM観察を繰り返すことで、奥行400nm分(計41枚)のSEM像を取得した。これら41枚のSEM像から繊維層の3D立体像を構築し、空隙率の算出を行うことが可能である。
4)平均細孔径
ポリイミド繊維膜の平均細孔径(貫通孔径)の算出は、パームポロメータ装置(POROUS MATERIALS INC.製CFP-1200AEL)で実施した。平均の貫通孔径をハーフドライ法(ASTM E1294-89)により測定した。試料含侵に使用した液体として、Galwick(POROUS MATERIALS INC.製、表面張力15.9mN/m)を用いた。金属コート後の平均細孔径は、繊維への成膜厚みから推測可能である、例えば、ポリイミド不織布の平均細孔径X(μm)の繊維の周囲に厚みY(μm)の金属がコートされた場合、X-2Yが金属コートされた繊維の平均細孔径として算出できる。
5)金属コートの不織布内部への侵入深さ
図7に示すように、金属コートの不織布内部への侵入深さは、素子の断面を走査型電子顕微鏡(日立製S-4800 加速電圧15kV,1k~20k倍)にて観察して反射電子像またはエネルギー分散型X線分光法による元素マッピング分析により画像を取得し、得られた画像から金属コートされた不織布の表面から不織布内部への金属コートの侵入深さを測長した。観察するサンプルは樹脂固めを行い繊維層が露出するようにサンプルの断面研磨を行った。このようにサンプルを前処理加工することで、金属がコートされた箇所の断面像を得ることができ、樹脂とのコントラストを視認できる領域を金属コートの侵入深さとした。金属コートの不織布内部への侵入深さは、繊維層が多孔質構造であることから凹凸があるため、侵入深さが最大となる箇所を侵入深さと定義した。
(比較サンプル1の作製方法)
比較サンプル1として、100μm厚のポリイミド(PI)フィルム上にAu薄膜(20nm厚)をスパッタ法で形成して作製した。PIフィルムは実質空隙率が0%であり、サンプル1~5と特性を比較した。素子サイズ、電極構造は上記サンプル1と同様である。
[表1]
表1の結果から、繊維層を構成する不織布の細孔径および空隙率が大きくなるほど、繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
また、繊維として、高分子等の低熱伝導材料を用いるため、基板方向への断熱効果があり、発熱体表面の温度変化が大きくなるため、単位入力電力に対する音圧を大きくすることができる。一例として、ポリイミドの熱伝導率は約0.28W/m・Kであり、SiO(Si基板表面の酸化層)の熱伝導率は約1.3W/m・Kであり、ポリイミドのほうが熱伝導率は低く、基板側への断熱効果が高くなるため、音圧が大きくなる。
(実施例2)
(試料作製方法)
圧力波発生素子を以下の方法で作製した(比較サンプル2、サンプル6、7、8)。
(比較サンプル2の繊維膜作製方法)
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いて作製したポリイミド(PI)溶液を紡糸溶液として使用した。溶液濃度は6.5wt%となるように調製し、溶液中へ塩化リチウムを0.05wt%添加した。他に添加剤として、テトラブチルアンモニウムクロリドやトリフルオロメタンスルホン酸カリウム等が利用できる。
この溶液を用いて、エレクトロスピニング法により、ドラムコレクタの周面に装着したアルミ箔上へポリアミック酸繊維を紡糸した。使用したドラムコレクタは直径200mmを有し、100rpmで回転させながら紡糸を行った。
エレクトロスピニングの条件は、印加電圧29kV、ノズルとコレクタ距離14cmで、繊維膜の厚みが1~80μm程度となるように成膜時間を調整した。作製したポリイミドの平均繊維径は46nmであった。
(サンプル6、7、8の繊維膜作製方法)
エレクトロスピニング法を用いて紡糸する際、マルチノズルを用いて濃度の異なる2種類のポリイミド溶液を同時に紡糸し、繊維膜を作製した。ここでは、比較サンプル2で用いた6.5wt%ポリイミド(PI)溶液、およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いて作製した10wt%ポリイミド(PI)溶液を紡糸溶液として使用した。
これらの2種類のポリイミド溶液を用いて、マルチノズルによるエレクトロスピニング法により、ドラムコレクタの周面に装着したアルミ箔上へ同時に紡糸した。このとき6.5wt%ポリイミド(PI)溶液と10wt%ポリイミド(PI)溶液の吐出量は、2:1(サンプル6)、1:1(サンプル7)、1:2(サンプル8)で実施した。吐出量は吐出速度やノズル本数で調整ができる。使用したドラムコレクタは直径200mmを有し、100rpmで回転させながら紡糸を行った。
エレクトロスピニングの条件は、印加電圧29kV、ノズルとコレクタ距離14cmで、繊維膜の厚みが1~80μm程度となるように成膜時間を調整した。10wt%ポリイミド溶液で作製した繊維膜の平均繊維径は126nmであった。こうして平均繊維径がそれぞれ126nmおよび46nmである複合化した繊維膜が得られる。
作製した繊維膜をアルミ箔から剥離し、Si基板(支持体)上へ接着させた。基材への接着は、あらかじめ基材へエポキシ等の接着剤の塗布や、両面テープ等を用いることで実施できる。また、基材は、ガラスやアルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素等のセラミック基板や、PETフィルムやポリイミドフィルム等のフレキシブル基板を使用できる。
基板に形成した繊維膜上にスパッタ法により、厚さが1~40nmの範囲で分布するAuを成膜した。繊維への金属コーティングの方法は、蒸着法やイオンプレーティング法、原子層堆積法、無電解めっき法などの手法を用いてもよい。また、金属種はAu、Ag、Cu、Pt、Rh、Pd、Ru、Ni、Ir、Cr、Mo、W、Ti、Al等が使用できる。
金属コーティングの厚さは、繊維の周方向に均一でもよく、あるいは不均一でもよく、例えば、支持体から遠くなるほど厚さが増加していてもよい。金属コーティングは、支持体側に最も近い位置で厚さT1を有し、支持体側から最も遠い位置で厚さT2を有し、T1<T2を満たしてもよい。繊維への金属コーティングの形態は、例えば、図3に示すように、繊維21の周面において支持体10に近接した下部には、金属コーティング22が施されない箇所が存在してもよい。これにより繊維層の内部において支持体側の発熱を抑制しつつ、支持体とは反対側での発熱を増強できる。
金属コーティングされた繊維のコーティング状態(断面像)は下記のように分析できる。例えば、試料を集束イオンビーム(FIB)により加工し、透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM-F200)での観察とエネルギー分散型X線分光法による元素マッピング分析により、繊維へのコーティング状態を分析できる。
作製した素子サイズは5mm×6mmとなるように加工した。一対の電極D1,D2を試料の両サイドに4mm×0.8mm、電極間距離3.4mmの電極を形成した(図4A)。電極の積層構造は支持体側からTi(10nm厚)、Cu(500nm厚)、Au(100nm厚)とした。なお、電極D1,D2は、素子抵抗を調整するために、図4Bに示すように櫛歯状の電極構造でもよい。
電極の成膜方法として、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング法、原子層堆積法、電解メッキ、無電解メッキ、スプレーコート、ディップコート、印刷などが採用できる。電極材料として、Au,Ag,Cu,Pt,Rh,Pd,Ru,Ni,Ir,Cr,Mo,W,Ti,Alなどが使用できる。
評価方法については、(実施例1)の説明と同様である。
[表2]
表2の結果から、複合繊維の採用により、単一繊維と比べて細孔径および空隙率が大きくなり、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
また、繊維として、高分子等の低熱伝導材料を用いるため、基板方向への断熱効果があり、発熱体表面の温度変化が大きくなるため、単位入力電力に対する音圧を大きくすることができる。
(実施例3)
(試料作製方法)
圧力波発生素子を以下の方法で作製した(サンプル9)。
エレクトロスピニング法を用いて紡糸する際、マルチノズルを用いて濃度の異なる2種類のポリイミド溶液を同時に紡糸し、繊維膜を作製した。ここでは、比較サンプル2で用いた6.5wt%ポリイミド(PI)溶液、およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いて作製した3wt%ポリイミド(PI)溶液を紡糸溶液として使用した。
これらの2種類のポリイミド溶液を用いて、マルチノズルによるエレクトロスピニング法により、ドラムコレクタの周面に装着したアルミ箔上へ同時に紡糸した。このとき溶液の吐出量は、1:1で実施した。吐出量は吐出速度やノズル本数で調整ができる。使用したドラムコレクタは直径200mmを有し、100rpmで回転させながら紡糸を行った。
エレクトロスピニングの条件は、印加電圧29kV、ノズルとコレクタ距離14cmで、繊維膜の厚みが1~80μm程度となるように成膜時間を調整した。
3wt%ポリイミド溶液でエレクトロスピニングを実施すると、溶液粘度が低いために繊維化せず、図5に示すような球状または長球状のビーズが形成される。ビーズのサイズは短径が0.5~3.0μmである。また、それらのビーズは、中空の球形、長球形、または球状が崩れた形となっていてもよい。
つまり、6.5wt%ポリイミド溶液および3wt%ポリイミド溶液を用いてマルチノズルから同時に紡糸することによって、上記のようなビーズおよび平均繊維径46nmのポリイミド繊維が複合化した繊維膜が得られる(図5)。
作製した繊維膜をアルミ箔から剥離し、Si基板(支持体)上へ接着させた。基材への接着は、あらかじめ基材へエポキシ等の接着剤の塗布や、両面テープ等を用いることで実施できる。また、基材は、ガラスやアルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素等のセラミック基板や、PETフィルムやポリイミドフィルム等のフレキシブル基板を使用できる。
基板に形成した繊維膜上にスパッタ法により、厚さが1~40nmの範囲で分布するAuを成膜した。繊維への金属コーティングの方法は、蒸着法やイオンプレーティング法、原子層堆積法、無電解めっき法などの手法を用いてもよい。また、金属種はAu、Ag、Cu、Pt、Rh、Pd、Ru、Ni、Ir、Cr、Mo、W、Ti、Al等が使用できる。
金属コーティングの厚さは、繊維の周方向に均一でもよく、あるいは不均一でもよく、例えば、支持体から遠くなるほど厚さが増加していてもよい。金属コーティングは、支持体側に最も近い位置で厚さT1を有し、支持体側から最も遠い位置で厚さT2を有し、T1<T2を満たしてもよい。繊維への金属コーティングの形態は、例えば、図3に示すように、繊維21の周面において支持体10に近接した下部には、金属コーティング22が施されない箇所が存在してもよい。これにより繊維層の内部において支持体側の発熱を抑制しつつ、支持体とは反対側での発熱を増強できる。
金属コーティングされた繊維のコーティング状態(断面像)は下記のように分析できる。例えば、試料を集束イオンビーム(FIB)により加工し、透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM-F200)での観察とエネルギー分散型X線分光法による元素マッピング分析により、繊維へのコーティング状態を分析できる。
作製した素子サイズは5mm×6mmとなるように加工した。一対の電極D1,D2を試料の両サイドに4mm×0.8mm、電極間距離3.4mmの電極を形成した(図4A)。電極の積層構造は支持体側からTi(10nm厚)、Cu(500nm厚)、Au(100nm厚)とした。なお、電極D1,D2は、素子抵抗を調整するために、図4Bに示すように櫛歯状の電極構造でもよい。
電極の成膜方法として、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング法、原子層堆積法、電解メッキ、無電解メッキ、スプレーコート、ディップコート、印刷などが採用できる。電極材料として、Au,Ag,Cu,Pt,Rh,Pd,Ru,Ni,Ir,Cr,Mo,W,Ti,Alなどが使用できる。
評価方法については、(実施例1)の説明と同様である。
[表3]
表3の結果から、ビーズおよび繊維の複合繊維の採用により、単一繊維と比べて細孔径および空隙率が大きくなり、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。この現象は、ビーズが繊維膜中へ形成され、金属コーティングが設けられた繊維で挟まれている場合、ビーズはスペーサーの役割を果たし、膜中の空孔サイズを大きくし、表面付近の層だけでなく基板近くの層の発熱が効率よく音響出力として変換されたためと推測される。
また、繊維として、高分子等の低熱伝導材料を用いるため、基板方向への断熱効果があり、発熱体表面の温度変化が大きくなるため、単位入力電力に対する音圧を大きくすることができる。
以上説明したように、繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含むことによって、空気と接触する表面積が増加するため、音圧向上が図られる。また金属材料の使用により、繊維層の電気抵抗を適切な値に設定できる。
また、繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成される。これにより繊維層の比表面積が増加して、音響変換効率を高めることができ、音圧向上が図られる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されている
が、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形
や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に
含まれると理解されるべきである。
本発明は、改善された音圧および適切な電気抵抗を有する圧力波発生素子が実現できる点で産業上極めて有用である。
1 圧力波発生素子
10 支持体
20 繊維層
21 繊維
22 金属コーティング
D1,D2 電極

Claims (13)

  1. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され、
    前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれていることを特徴とする、圧力波発生素子。
  2. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成され、
    前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれていることを特徴とする、圧力波発生素子。
  3. 前記ビーズのサイズは短径が0.5~3.0μmである請求項1または2に記載の圧力波発生素子。
  4. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され、
    前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成されることを特徴とする、圧力波発生素子。
  5. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成され、
    前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成されることを特徴とする、圧力波発生素子。
  6. 第1繊維径Φ1は1nm≦Φ1≦100nmの範囲内であり、第2繊維径Φ2は100nm≦Φ2≦2000nmの範囲内である請求項4または5に記載の圧力波発生素子。
  7. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、平均細孔径が0.1~1.0μmの範囲内である繊維膜で構成され、
    前記金属コーティングは、前記支持体から遠くなるほど厚さが増加していることを特徴とする、圧力波発生素子。
  8. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、空隙率が70%~95%の範囲内である繊維膜で構成され、
    前記金属コーティングは、前記支持体から遠くなるほど厚さが増加していることを特徴とする、圧力波発生素子。
  9. 支持体を用意するステップと、
    該支持体の上に、エレクトロスピニング法を用いた紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成するステップと、
    前記繊維膜の上に、金属コーティングを施して繊維層を形成するステップとを含み、
    紡糸の際に、濃度の異なる2種類以上の溶液を用いて同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成する、圧力波発生素子の製造方法。
  10. 支持体を用意するステップと、
    該支持体の上に、エレクトロスピニング法を用いた紡糸による繊維を用いて繊維膜を形成するステップと、
    前記繊維膜の上に、金属コーティングを施して繊維層を形成するステップとを含み、
    紡糸の際に、2種類以上の異種材料を用いて同時に紡糸して、複合繊維からなる繊維膜を形成する、圧力波発生素子の製造方法。
  11. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、繊維膜で構成され、
    前記繊維膜は、繊維径1nm~100nmの繊維を含み、
    前記繊維層への金属コーティングの侵入深さが2.2μm以上である、圧力波発生素子。
  12. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、ビーズを含み、該ビーズは、前記繊維で挟まれていることを特徴とする、圧力波発生素子。
  13. 支持体と、
    該支持体の上に設けられ、通電によって熱を発生する繊維層とを備え、
    前記繊維層は、表面に金属コーティングが少なくとも部分的に設けられた繊維を含み、
    前記繊維層は、第1繊維径Φ1を有する第1繊維、および第1繊維径より大きい第2繊維径Φ2(Φ1<Φ2)を有する第2繊維を含む複合繊維で構成されることを特徴とする、圧力波発生素子。
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