JP7734436B2 - 地盤注入工法 - Google Patents

地盤注入工法

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Description

本発明は、スラグまたはフライアッシュを有効成分とし、かつ、浸透固結性および環境保全性を有する高強度の懸濁型地盤固結材および地盤注入工法に関する。
スラグ系懸濁グラウトを用いた地盤改良工法は、懸濁粒子を主成分としているため細かい土粒子間に浸透し得ないという問題があった。このため、懸濁粒子が浸透し得ない細粒土の混在する地盤においては固結効果が得られず、一体化した地盤改良や止水性の実現が困難であった。本発明は、この問題を解決するために懸濁液のブリーディング液のゲル化を利用した地盤注入工法であって、懸濁液の浸透が期待できない地盤の改良を可能にしたものである。
また、本発明は、安定した固結効果を付与することで、高圧噴射工法に用いることができる地盤固結材および地盤注入工法に関する。さらに、本発明は、地盤中に微粒子スラグを主成分とする微粒子注入材を用いた低炭素グラウト注入工法による地盤改良技術である。
本発明の地盤固結材の主材となる高炉スラグの生産時のCO2排出量は、セメントに比べて10分の1程度であり、セメント系懸濁型の注入材に比べ、CO2削減効果が期待できる。また、本発明は、産業副成品を素材として用いることにより経済的に実施することができ、環境負荷を低減した地盤注入工法であって、近年の地球温暖化防止のための国家的課題となっているカーボンニュートラルにも貢献する技術である。
従来より、高強度地盤改良工法は、セメント系注入液の高圧噴射攪拌工法によって、地盤に高強度固結体を形成する工法が用いられている。
この工法は、地盤に大径の固結体を形成する点において優れているが、その原理は、地盤に存在する土を高圧噴射によってセメントで攪拌混合し、土粒子をセメント固結体と置き換えることにあり、その結果、多量の排土を生ずる。その処理のため、大きな費用とCO2削減が課題となり、カーボンニュートラルの観点から見て環境上の問題がある。
従来より、微粒子化したセメントあるいはスラグ系グラウトを地盤に注入して高強度を得る地盤改良工法が提案されている。しかし、これらの懸濁型グラウトは、砂地盤を主体とする地盤中では、以下の問題がある。
(1)目詰まりを起こしやすい。そのため、細粒土が混在した地盤や粒径の異なる土層からなる地盤では、懸濁粒子の浸透が不十分になり、固結や止水性が不十分となる。
(2)微粒子化すればするほど電気的に再凝集してしまい、実質的には粒径が大きくなる。その結果、浸透性が注入管周りに限定されたり、脈状注入となる。
(3)ブリーディングによって地盤中で懸濁粒子と配合水が分離されて、一体化した固結体が形成されにくい。
(4)ブリーディングが生ずるために、注入量に対する固結体の固結率が小さい。
(5)高圧噴射に用いる場合、噴射力の作用によって注入材が分散して、固結効果が不十分になる可能性がある。
また、微粒子化懸濁液に分散剤を加えても、地盤中に高圧噴射混合する過程で懸濁粒子が配合水と分離してしまい、やはり大きく均質な固結体の形成は困難である。
さらに、従来より、セメントと水ガラスとを混合した懸濁型グラウトなどが知られている。しかし、このような懸濁型グラウトは、ゲル化時間が1分か10分程度でそれ以上ゲル化を長くすることが困難であり、かつ、耐久性が得られず、やはり懸濁物が地盤中で分離し目詰まりを起こし、或いは脈状に圧入されて、その浸透固結領域は注入管周りに限定されるか、目詰まりし、大きく均質な固結体を形成することは困難であった。
以下に、懸濁型グラウトに関する先行技術について説明する。
従来より、水ガラスとセメントとを混合した懸濁型グラウトはLWとして知られているが、ゲルタイムが1分程度で、粘性が高く強度が低い。また、水ガラスと酸とを混合して得られる酸性シリカゾルと、セメントや消石灰を含有してなるグラウトも知られている。このグラウトはゲル化時間が短く、かつ、フロック状の沈澱を生じやすいため、浸透性に劣るものである。
さらに、上記酸性シリカゾルとスラグとを含有してなるグラウトも知られている。この場合、スラグは酸性シリカゾルに対して中和剤として作用してゲル化時間を促進するが、強度的にはほとんど寄与しない。
このため、低モル比水ガラスとスラグセメントとを混合したグラウトも開発されているが、強度は高いものの、ゲルタイムが10分程度で粘性が高く、土砂注入には浸透性が悪いという問題があった。その理由は、低モル比水ガラスはセメントと混合すると粘度が大幅に上昇し、ゲルタイムが短くなる点、および、セメントのカルシウム分が水ガラスと反応して消費され、スラグとの反応が十分行われない点にある。
懸濁型グラウトは、溶液型グラウトに比べて高強度が得られるが、粒子であるため細粒土に対する浸透性が悪い。この点を改良して、砂地盤、粘性土地盤、細粒分を含む砂質土や礫混じりの地盤等の多種多様な地盤において広く適用できれば、その有用性は計り知れない。
これに対し、本出願人は、すでに水ガラスとスラグからなるグラウトを開発している(特許文献1~3)。これらのグラウトは強度に優れているが、懸濁液であるため細粒地盤では浸透性が不十分という問題があった。
特開平8-67875号公報 特許第3413398号公報 特許第6961270号公報
本発明の目的は、懸濁粒子が浸透し得ない地盤においても固結効果が得られ、一体化した地盤改良や止水性の実現を可能とする、浸透固結性および環境保全性に優れた懸濁型の地盤固結材および地盤注入工法を提供することにある。
特許文献1に記載の発明は、モル比2.8以上の水ガラスと微粒子スラグと炭酸水素または炭酸のアルカリ金属塩からなる地盤注入用薬液である。この発明は、水ガラスとスラグを用いるとともに炭酸塩を用いることにより低粘度と長いゲル化時間を得るという効果があるが、炭酸塩のアルカリが弱いため強度が低く、かつ、炭酸塩が地下水に溶けやすいため、炭酸塩が地下水に溶出してしまうと強度増加が低減するという問題があった。
また、特許文献2に記載の発明は、水ガラスとスラグと消石灰のグラウトによる高圧噴射工法であるが、高圧噴射の場合、噴射作用により注入液が分離するため広範囲の固結性が悪く、ゲル化の安定性に問題があった。
以上のスラグを有効成分とするグラウトにおける浸透性およびゲル化の安定性の問題を解決するため、本発明者らは、本出願人による特許文献3に着目して、それをさらに発展させることにより、本発明を完成させた。
本発明者らは、上記懸濁グラウトの浸透性に関する課題の解決のために、ブリーディング液のゲル化に着目した。従来の注入工法では、懸濁液を注入可能な土の粒径範囲や、溶液型の注入液の浸透可能範囲は論じられていたが、懸濁型グラウトのブリーディングやそのゲル化、ゲルの強度、ブリーディング液が浸透した砂の固結性および強度については、着目されたことはなかった。また、高圧噴射工法にスラグ系グラウトを用いる場合の固結の安定性に着目したものはなかった。従来の懸濁型グラウトにおける特徴として、ブリーディングが多いことは欠点とみなされていた。本発明は、このブリーディング液に着目して、懸濁グラウトの浸透固結性の問題を解決したものである。
上述したように本出願人はすでに特許文献1~3に記載された技術を提案している。
これらの発明により、スラグ系グラウトは高強度および長いゲルタイムを得られることが分かった。しかし、懸濁液であるところから、懸濁粒子が浸透し得ない地盤においては固結効果が得られないと考えられる。また、高圧噴射混合工法に用いた場合、噴射作用によってグラウトの成分が分散してしまい、安定した固結性が得られにくかった。
本出願人は、以上の研究により、以下のことを見出した。すなわち、スラグ系グラウトは表1にまとめることができるが、水ガラスのモル比、配合量、スラグの粒径やブレーン値とCa/SiO2添加剤、消石灰、炭酸塩、重炭酸のアルカリ塩、アルミン酸のアルカリ塩、その他の塩、苛性アルカリ、セメントなどによって、ゲルタイム、強度、浸透特性、砂の粒径、浸透距離などによる地盤への浸透性、注入効果が異なることから、確実な浸透固結性が得られる材料の選定や配合処方は困難であった。
本発明者らは、本出願人による先願(特許文献3)において、注入液の浸透先端部のスラグ量が少ない部分がゲル化することを見出した。本発明者らは、この現象に基づき懸濁グラウトの浸透固結性を改善すべく、ブリーディング液のゲル化、ブリーディング液のホモゲルの自立性、ブリーディング液によるサンドゲルの自立性や強度を研究し、それを条件とすることにより、従来は適用不可能と考えられていた細粒地盤や細粒土を含む砂地盤への懸濁グラウトの浸透固結性を改善して、本発明を完成した。
まず、本出願人は、本出願人による特許文献3の明細書中の浸透試験に着目した(特許文献3の段落[0127]~[0134]、[0149]、[表15][図8][図9][図11])。特許文献3に記載されたスラグ系グラウトの浸透試験において、スラグを含む注入液は180cmまで浸透していることが示されている。また、180cmの末端部ではスラグの充填率が少ない部分でもゲル化することを示し、固結体同士の一体化が可能であることも記載されている。さらに、大きな強度の固結径の外周部に強度が小さくてもシリカが固結している固結ゾーンが形成されているので、止水効果に優れた一体化した連結固結体ができること、ブリーディングの上澄み液はゲル化することも記載されている。さらにまた、セメント系グラウトであってゲル化を伴わないグラウトは、地盤中でブリーディングを起こし、セメントの浸透がなければ固化しないことも記載されている。
本出願人は、さらに、以下の知見から本発明を完成した。
(1)溶液型グラウトによる細粒土浸透可能範囲(図8)。
(2)溶液型グラウトの低シリカ濃度におけるホモゲルの自立性、サンドゲルの固化と固結砂の自立性(表13)。
(3)浸透試験に用いた砂の粒径分布(図9)。
以上のように、本発明者らは、特許文献3において懸濁液を注入した外周部は、シリカ分の多い懸濁液の固結体が形成され、隣接する固結体同士を連結することに着目した。従来、懸濁液におけるブリーディングが多いことは欠点とみなされていたが、本発明は、懸濁粒子が浸透し得ない土粒子間にブリーディング液が浸透し得ることに着目し、ブリーディング液のゲル化の研究を行った。その結果、ブリーディング液そのもののゲル化や強度、ブリーディング液の砂への浸透性とサンドゲルの強度が懸濁型グラウトの浸透固結性の改善に大きく影響することが分かった。これらの知見に基づき、懸濁粒子が浸透し得なかった領域へのブリーディング液の浸透とゲル化、ブリーディング液のホモゲル、サンドゲルの強度の条件を知り、これにより懸濁型グラウトの上記浸透固結性の課題を解決したものである。
また、本発明は、スラグを主成分とする非セメント系地盤固結材を使用することにより、耐久性に優れた固結体を得ることができ、CO2削減効果を期待できる地盤固結工法を提供するものである。
本発明者らは、以下のように具体的研究を進めた。本発明者らは、水ガラスとスラグを有効成分とする懸濁液のブリーディング液のゲル化、或いは、水ガラスと水酸化カルシウムや石膏を有効成分とする懸濁液のブリーディング液のゲル化、一次元柱状浸透試験における懸濁粒子の浸透と水ガラスを含む場合はブリーディング液による固結の研究を行った。これらの結果より、スラグ粒子が浸透しない部分でも、ブリーディング液がゲル化し固化しうることを見出した(図7、図5、図6)。また、水ガラスを含まないスラグを含む懸濁液の浸透固結試験を行い、ブリーディング液によるゲル化は生じないことを確認した。さらに、懸濁液に水ガラスの他にCa、Mg、Al等の塩や水酸化物や塩化物が含まれていると、ブリーディング液に水溶性のCaやMgが含まれるため、ブリーディング液のゲル化や自立性、ブリーディング液によるサンドゲルの自立性や強度が向上することが分かった。
本発明者らは、スラグと水ガラスを有効成分とする懸濁液並びにスラグと水ガラスと消石灰を有効成分とするグラウトの研究をさらに進めた結果、ブリーディング液がゲル化して、かつ、ブリーディング液によるホモゲルが自立する強度を持つこと、および/または、ブリーディング液が浸透したサンドゲルが固化しかつ自立する強度を生ずる処方を用いることにより、懸濁粒子が浸透し得ない地盤を固結することが可能となり、従来は懸濁粒子の浸透可能が困難だった条件下でも、一体とした固結体を形成することを見出した。
その結果、対象とする注入領域が複雑な粒径を有する地盤であっても、溶液型シリカグラウトが浸透しうる砂地盤では、高強度を呈する懸濁液が浸透した部分と一体とした固結体が形成でき、高強度でかつ止水効果のある、環境保全性に優れた低炭素注入工法による地盤固結工法を発明した。
また、本発明は、高圧噴射工法にも適用できる固結材および注入工法を提供する。
高圧噴射工法はセメント懸濁液を地盤に噴射混合して地中の土砂をセメント懸濁液に置き換える工法であるが、セメント固結材そのものと噴出した土砂の処理の点でCO2を多く排出する。これに対し、スラグ系グラウトを地盤に注入する方法の材料は低炭素グラウトで、工法は低炭素注入工法ということができる。しかし、スラグと水ガラスを有効成分として高圧噴射注入すると、噴射作用で水ガラスが逸脱してしまうと水ガラスのアルカリが作用しなくなり、スラグの固結性が困難になる。これに対し、スラグ懸濁液が消石灰や石膏、Ca、Mg、Alの塩や酸化物、水酸化物を有効成分とすると、セメントや水ガラスがなくてもスラグ自体がこれらと反応して十分固化するため、それにさらに水ガラスが加わるとブリーディング液自体で十分な自立強度が保たれ、高圧噴射工法でも安定した固結効果を得ることができる。
本発明は、地盤に設けた複数の注入孔から、スラグまたはフライアッシュからなる懸濁粒子と水ガラスを有効成分とする懸濁液からなる地盤固結材を、該地盤に注入する地盤注入工法であって、
前記地盤固結材のブリーディング液がゲル化するとともに、そのホモゲルが自立する強度を有し、該ブリーディング液が浸透して固結したサンドゲルが自立する強度を有し、
前記ブリーディング液が、前記地盤のうち前記懸濁粒子が浸透し得なかった部分に浸透して、該地盤のうち該懸濁粒子が浸透した部分と一体化して固結体を形成することにより、隣接する前記注入孔からの該懸濁粒子による固結体同士を連結して、掘削地盤の削面を、自立しかつ地下水を止水できるものとすることを特徴とするものである。
ここで、上記において、前記ブリーディング液がゲル化してそのホモゲルが自立するとは、該ブリーディング液のシリカ濃度が0.5w/v%以上であって、モールド内において、該ホモゲルを斜めに傾けてもゲルが崩れず自立する状態を意味する。
また、前記サンドゲルが自立するとは、前記ブリーディング液のシリカ濃度が0.5w/v%以上であって、6号珪砂を用い該ブリーディング液を使用して相対密度60%になるように直径5cm×高さ10cmで混合法により作製された該サンドゲルが自立し、該サンドゲルを用いて測定された一軸圧縮試験における最小強度が2.0kN/m2以上であることを意味する。
さらに、前記スラグのブレーン値は4000~15000cm2/g、配合量は50~150kg/400リットルであり、前記水ガラスのモル比は1.0~5.0、配合量は10~150リットル/400リットルである。
掘削地盤の削面でも、ブリーディング液の固結効果により地下水が止水され、かつ、ブリーディング液の固結面が破壊されず自立しうる。
本発明においては、前記地盤固結材が、さらに、多価金属化合物を含むことが好ましい。本発明において、前記多価金属化合物としては、Ca、Mg若しくはAlの水酸化物、酸化物若しくは塩のうちのいずれか1種または複数種、および/または、石膏であることが好ましい。
本発明においては、前記地盤固結材が、さらに、多価金属化合物以外のアルカリ剤を含み、該アルカリ剤が以下の条件を満足することが好ましい。
(1)ブレーン値:4000~13000cm2/g。
(2)配合量:1~50kg/400L。
本発明においては、前記ブリーディング液の浸透固結体の一軸圧縮強度が、一軸圧縮強度試験で用いられる供試体サイズで7日後に2.0kN/m2以上となり、前記懸濁粒子が浸透しきれなかった部分に前記ブリーディング液が浸透し、ゲル化して地盤を固結することが好ましい。
本発明の地盤注入工法においては、前記地盤固結材を、高圧噴射混合法に用いることができる。
本発明の地盤注入工法においては、前記懸濁粒子の固化による改良効果を、非破壊試験によって確認することができる。前記非破壊試験は、弾性波速度検層法、音響トモグラフィーまたは表面波探査によるものであることが好ましい。
本発明によれば、懸濁粒子が浸透し得ない地盤においても固結効果が得られ、一体化した地盤改良や止水性の実現を可能とする、浸透固結性および環境保全性に優れた懸濁型の地盤固結材および地盤注入工法を提供することができた。
実施例2のブリーディング状態を示す写真図である。 比較例1のブリーディング状態を示す写真図である。 実施例2の浸透後数日経過後の状態を示す写真図である。 比較例1の浸透後数日経過後の状態を示す写真図である。 浸透距離に対応した一軸圧縮強度を示すグラフである。 図5の浸透距離90cm~120cmの部分を拡大したグラフである。 ブリーディング液がゲル化し、斜めにしてもゲルが崩れない(自立している)状態を示す写真図である。 溶液型グラウトによる液状化対策を行った種々の現場砂の粒径加積曲線である。 浸透試験に用いた砂の粒径分布を示すグラフである。 実施例14の7日目強度測定状況を示す写真図である。 実施例14の強度測定後の供試体の状態を示す写真図である。 本発明のグラウトで固結した豊浦砂供試体における一軸圧縮強さ(28日強度)と、ベンダーエレメント法によるS波速度の関係を示すグラフである。 養生日数とせん断波速度の関係の例を示すグラフである。 固結ゾーンまたは固結予定ゾーンに、受信孔と発信孔を設置して、S波速度VsやP波速度Vpを測定する説明図である。 現場土を用いた固結供試体の室内試験における一軸圧縮強さとS波速度Vsの関係を示すグラフである。 懸濁型地盤固結材の室内浸透試験における装置を示す写真図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の地盤固結材は、スラグまたはフライアッシュからなる懸濁粒子と、水ガラスとを有効成分とする懸濁型の地盤固結材である。
本発明で用いる懸濁グラウトは、スラグやフライアッシュを主成分とする懸濁型グラウトである。硬化剤としては、シリカ溶液や石膏、消石灰やアルカリ性を呈する塩や水酸化物あるいはCa、MgまたはAlの塩や酸化物や苛性アルカリ等を挙げることもできる。また、セメント等を添加して固結時間や強度を調整してもよい。さらに、本発明の地盤固結材は、多価金属化合物を含むことが好ましく、多価金属化合物としては、Ca、Mg若しくはAlの水酸化物、酸化物若しくは塩のうちのいずれか1種または複数種、および/または、石膏であることが好ましい。
また、これらにポリアクリル酸塩やアクリル酸ポリマーやCMC(カルボキシメチルセルロース)等の高分子系増粘剤を加えて粘性を増加させて高圧噴射においても分散されにくくしたり、マイクロバブルやナノバブルを加えて流動性を増加させて、大きな固結体を形成することもできる。
上述したようにスラグと水ガラスを有効成分とする非セメント系硬化性材料は、高炉スラグ微粉末に水ガラスのアルカリが作用して、スラグの潜在水硬性を刺激するとともに水ガラスのシリカがゲル化をもたらすことにより、長いゲルタイムで高強度を発現する。また、そのブリーディング液はゲル化して自立するホモゲル、砂に浸透して、自立するサンドゲルを形成することができる。この場合、水ガラスは低モル比を用いた方が、スラグの潜在水硬性をより発展して高強度を得られる。水ガラスを3号水ガラスや高モル比とした場合やゲルタイムをコントロールするときは、Ca、MgまたはAlの塩化物や水酸化物を添加することが好ましい。
また、スラグとアルカリ剤(例えば、消石灰やドロマイト、炭酸塩などのアルカリ性を呈する塩)を有効成分とする材料を用いることもできる。以上の懸濁型グラウトは、低炭素グラウト(本出願人による商標登録第6683218号)ということができる。
上記において懸濁粒子は、スラグおよび/またはフライアッシュを用いることができる。
また、上記において、スラグやフライアッシュの代わりに、またはそれに加えて、焼成スラッジや二和土、三和土、火山灰、凝石灰、珪藻土、焼成粘土等、炭酸ナトリウム系、Ca(炭酸カルシウム、塩化カルシウムなど)やMg(塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等)と反応してポゾラン作用で固化する材料を用いることもできる。
さらに、スラグやフライアッシュの一部をセメントに置き換えることもできる。さらにまた、シリカ溶液として水ガラスまたは水ガラスとシリカコロイドの混合物を用いることもできる。
さらにまた、近年、地球温暖化防止の観点から、非アルカリセメント系またはセメント量を低減した低炭素型地盤改良工法の実現が課題となっているが、上記固結材料は、産業副生品を用いることにより、その課題を解決した環境保全型地盤改良工法ということができる。
さらに、本発明は上述の水ガラス-スラグ系に、セメントおよび/または石灰類、特に比表面積が4000cm2/g以上、好ましくは8000cm2/g以上で、平均粒子径が10μm以下のそれぞれ、微粒子セメントや石灰類を添加混合し、さらにはカルシウム溶出量調整剤を添加混合し、ゲル化時間、浸透性あるいは固結強度の調整を図ることもできる。
カルシウム溶出量調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ヘキサメタリン酸ソーダをとりあげたが、これらのカリウム塩はもちろん、ピロリン酸塩、酸性ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、酸性メタリン酸塩等の金属イオン封鎖剤としての縮合リン酸塩およびエチレンジアミン四酢酸塩、ニトロトリ酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の金属イオン封鎖剤ならびにリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等の通常のリン酸塩類等があげられる。このうち、重炭酸塩、炭酸塩、縮合リン酸を含めたリン酸塩といった可溶性アルカリ剤が特に適している。
なお、本発明においては、ゲル化時間を調整し得る任意の反応剤を併用してもよい。この反応剤を列挙すると、以下のとおりである。
エステル類:酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸アミル類のような1価アルコールの脂肪酸エステル。エチレングリコールジ酢酸エステル、グリセリントリ酢酸エステル、コハク酸ジエステルのような多価アルコールの脂肪酸エステル。全エステル。δ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンのような分子内エステル。環状エステル:ラクトン類。エチレングリコールモノギ酸エステル、エチレングリコールモノ酢酸エステル、エチレングリコールモノプロピオン酸エステル、グリセリンモノギ酸エステル、グリセリンモノ酢酸エステル、グリセリンモノプロピオン酸エステル、グリセリンジギ酸エステル、グリセリンジ酢酸エステル、ソルビトールモノギ酸エステル、ソルビトールモノ酢酸エステル、グリコール酸モノ酢酸エステル、低重合度部分ケン化酢酸ビニル等のような多価アルコール部分エステル。ジアセトオキシエチレンのような不飽和脂肪酸エステル。炭酸エチレン(エチレンカーボネート)、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)、グリセリンカーボネート等の環状カーボネートのようなカーボネート類。
アルデヒド類:グリオキザール、コハク酸ジアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルジアルデヒド、フルフラールジアルデヒド等のジアルデヒド類。
アミド類:ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、アクリルアミド、マロンジアミド、ピロリドン、カプロラクタム等。
アルコール類:エチルアルコール、メチルアルコール、アミルアルコール、グリセリン、ポリビニルアルコール等、1価、多価のアルコール、あるいは合成高分子アルコール。
酸類:硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸。ギ酸、酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸等の有機酸。
無機塩:塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリ、塩化アルミニウム等の塩化物、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム等のアルミン酸塩、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等の塩酸塩、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の塩素酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の炭酸塩、重硫酸ナトリウム、重硫酸カリウム、重硫酸アンモニウム等の重硫酸塩、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩、ケイフツ化ナトリウム、ケイフツ化カリウム等のケイフツ酸塩、珪酸のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等の珪酸塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸塩、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウム等のリン酸水素塩、ピロ硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸アンモニウム等のピロ硫酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸アンモニウム等のピロリン酸塩、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、重クロム酸アンモニウム等の重クロム酸塩、過マンガン酸カリ、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩等。
有機塩:酢酸ソーダ、コハク酸ソーダ、ギ酸カリ、ギ酸ソーダ、クエン酸ソーダ等。
生石灰、アルミナ、酸化鉄、酸化マグネシウム等の金属酸化物、Ca,Al,Mg塩。
さらに、本発明では、シリカコロイド、酸性珪酸水溶液やその他、任意のゲル化剤を併用することができる。さらにまた、フライアッシュ、珪華、珪藻土、白土類等のポゾラン類を併用して、それぞれの特性を生かした地盤注入用薬液を配合することもできる。また、沈降を防ぐために分散剤を少量併用して均質な固結体とすることができる。
上述の本発明の地盤固結材は、注入に当たって、例えば、ゲル化時間を長く調整した一液式の薬液を作り、これをそのまま地盤中に注入することができ、あるいは、あらかじめ地盤中にセメント系やスラグ系注入材を注入しておき、その後、この注入個所に上記薬液を注入してもよい。
また、本発明に係る水ガラス配合液をA液とし、本発明に係る微粒子スラグを含む配合液をB液とし、これらAB両液を合流して注入してもよく、また、前述の水ガラスおよびスラグ、あるいはさらに、カルシウム溶出量調整剤を含む配合液をA液とし、ゲル化促進剤配合液あるいはその他の任意のゲル化剤配合液をB液とし、これらAB液を合流し、薬液のゲル化時間を任意に調整して注入してもよい。
さらに、二重注入管を用意し、ゲル化時間を長く調整した本発明の薬液をA液とし、ゲル化促進剤配合液をB液とし、まず、AB両液を二重注入管の別々の管路から地盤中に送液し、この先端部分で両液を合流してゲル化時間の短いグラウトとし、これを注入管まわりの空隙に注入してパッカーを形成し、次いで、A液のみを注入することもできる。
さらにまた、本発明に係る水ガラス配合液、または、水ガラスとスラグ、あるいはさらにこれらにカルシウム溶出量調整剤を含む配合液をA液とし、緩結性反応剤配合液をB液とし、瞬結性反応剤配合液をC液とし、まず、AC両液を合流して得られるゲル化時間の短いグラウトを地盤中に注入した後、次いで、AB合流液の注入に切り換え、注入ステージを上げながら上記ステップを繰り返して注入してもよい。
さらにまた、水ガラスとスラグ(必要に応じてカルシウム溶出量調整剤を含んでもよい)をA液とし、瞬結性反応剤配合液をC液とし、AC合流液からなる瞬結性グラウトを二重管の上部吐出口から、A液からなる緩結性グラウトを下部吐出口から、それぞれ同時に地盤中に注入することもできる。
さらにまた、水ガラスにスラグ、さらには必要に応じてカルシウム溶出量調整剤を加えて、ゲル化時間が数時間と長い薬液をA液とし、スラグまたはさらに他の反応剤を含む配合液をB液とし、施工の際にA液にB液を加えて所定のゲル化時間と強度を呈する本発明の薬液を作製し、これを地盤中に注入することもできる。
さらにまた、モル比が2.8よりも高い3号水ガラス配合液をA液とし、モル比が1.0~5.0の範囲の水ガラス配合液をB液とし、瞬結性反応剤配合液をC液とし、本発明に係る微粒子スラグ配合液をD液とし、AC合流液からなる瞬結性グラウトを地盤中に注入したのち、BD合流液からなる緩結性薬液を注入して、複合注入を行うこともできる。水ガラスの濃度は固結強度および粘性の面から、全薬液中、SiO2成分として1.5~20%程度が適当である。
また、本発明に使用されるスラグ、石膏および石灰類は、水ガラスのゲル化、粘性および固結強度の調整にそれぞれ役立つが、これらの粒子の大きさに左右され、平均粒子径が10μm以下であって、比表面積が5000cm2/g以上、好ましくは8000cm2/g以上において、適量の水ガラスのアルカリ分を刺激剤として、スラグの大きなシリカ分と、水ガラスの小さなシリカ分と、カルシウムとが結合し、密度の大きい強固な複合シリカカルシウムのゲルを形成する。
換言すれば、スラグに起因する大きなシリカのネットの空間に水ガラスに起因する小さなシリカが填充し、これらをカルシウムが連結して固結し、密な硬化物を形成する。
さらに、本発明の系にカルシウム溶出量調整剤を添加すると、例えば、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩を添加すると、不活性の炭酸カルシウムやリン酸カルシウムを生成してゲル化を遅延することができる。
上記において、水ガラスのモル比が1.0より低いと、アルカリ分が過剰になって、ゲル化しないか、あるいは注入材としては実用的でないほどゲル化時間が延長して固結が不充分になったり、また、粘度が増大し、粘性が増大したままの状態で明確なゲル化が行われにくくなる。よって、水ガラスのモル比は、1.0以上であることが好ましい。
水ガラスのモル比が3号水ガラス以上、すなわち、モル比が約2.8以上では、水ガラス中のアルカリが少なく、スラグの潜在水硬性を刺激して硬化せしめるには不充分なアルカリ量となり、したがって、スラグ本来の強度を発現し得ない。このため、水ガラスとスラグがなかなか反応せず、ゲル化が大幅に延長するのみならず、スラグと水ガラスが分離して均質な固結体が得られにくくなる。しかし、消石灰や石膏やアルカリが加えられるとスラグは硬化する。
また、スラグの粒子径が上記範囲よりも粗くなると、水ガラスのアルカリやCa分とスラグとの反応が大幅に低下して、注入に適したゲル化の範囲でゲル化せず、しかも、水ガラスのアルカリによる固結性の発現が不充分となる。
すなわち、本発明によれば、平均粒子径が10μm以下で、比表面積が5000cm2/g以上の反応性が活発になっている微粒子スラグ、および、水ガラスを用いてブリーディング液がゲル化し、かつ、ブリーディング液が浸透したサンドゲルが自立する処方を用いることにより、はじめて広範囲にわたるゲル化時間を得、かつ、細粒土に対する優れた浸透性を得ることができる。
しかも、このような水ガラスとスラグの系に石膏および/または石灰やドロマイト類またはCa、Mg、Alの塩やその酸化物を併用することにより、効果的にゲル化時間を短縮することができ、さらに、カルシウム溶出量調整剤を併用することにより、ブリーディング液が浸透したサンドゲルの強度の増加やゲル化時間の効果的遅延が可能になり、これによりゲル化時間を容易にコントロールできることがわかった。
水ガラスのモル比が1.0よりも低いときは、石灰類やセメントの添加によるゲル化時間の短縮には極めて多量を必要とし、しかも、粘性は大幅に増大してチキソトロピックな性状を呈し、このため浸透性は大幅に低下する。しかも、ゲル化時間の大幅な短縮は不可能である。
それに対し、水ガラスの本発明に係る範囲では、石膏や石灰類やCa、Mg、Alの塩やその酸化物や水酸化物の添加量は少量でも、効果的にゲル化時間を短縮せしめる。このため、粘度の大幅な増加を来すことなく、したがって、浸透性を阻害しない。なお、水ガラスの本発明に係る範囲では、スラグは水ガラスとの共存下でセメントや石灰類のようなチキソトロピックな性状を示さずに、低粘性を維持できる。これは、スラグのCaO中にはセメントや石灰類のように遊離しやすいCaOが少なく、水ガラスのアルカリの所定量以上の存在によって、はじめて遊離してくるためと思われる。
上記課題を解決するために、本発明は、スラグと好ましくはモル比1.0以上の水ガラスを有効成分とする地盤固結材を用いて地盤の固結を行う地盤注入工法であって、注入液のブリーディング液がゲル化してブリーディング液が浸透したサンドゲルが自立する強度を有することによって、懸濁粒子が分散しても、または、脈状になっても上溶液が懸濁粒子による固結部分を一体化し、かつ、注入液の固結率を高めることを可能にしたものである。また、スラグと石膏および/または消石灰の混合物がそれ自体で高強度の固結体を形成するところから、上記懸濁液に水ガラスを加えることによって、さらに固結の安定性、確実性を得ることができる。さらに、高分子系増粘剤を加えても分散しにくい固結体を形成できるし、また、マイクロバブル(或いはナノバブル)を加えることにより、そのローリング作用で浸透性を向上させることができる。
さらにまた、本発明者らは、高圧噴射注入にスラグ系グラウトを用いるには注入材が噴射力に対して分散しにくく確実な固結を伴うことが必要であることを見出し、そのために懸濁液のブリーディング液自体がゲル化し、かつ、ブリーディング液が浸透したサンドゲルが自立する強度を持つことが必要であることを見出した。さらに、その強度が一軸圧縮試験で1~7日目強度が2.0kN/m2以上の配合処方を用いることが必要であることを見出した。
本発明は、ブレーン値が4000~15000cm2/gの微粒子スラグと、モル比が1.0~5.0の範囲にある水ガラスを有効成分とする懸濁型の地盤固結材、または、さらにアルカリ添加剤や石膏や水酸化カルシウムやCa、Mg、Alの塩やその酸化物や水酸化物のいずれか或いは複数を有効成分として含有する懸濁型の地盤固結材であることが好ましく、以下のA、Bの条件を満たすことにより、地盤固結材の懸濁粒子が浸透しきれなかった部分にブリーディング液が浸透し、ゲル化して地盤を固結する地盤固結材である。
A.地盤固結材の組成の範囲
1.微粒子スラグ
(1)ブレーン値:4000~15000cm2/g
(2)配合量:50~150kg/400リットル(3~16w/v%)
2.水ガラス
(1)モル比:1.0~5.0
(2)配合量:10~150リットル/400リットル
3.以下のアルカリ剤を併用する場合
(1)アルカリ剤、特には水酸化カルシウムまたは石膏のブレーン値:4000~13000cm2/g。
(2)配合量:1~50kg/400L。
B.ブリーディング液がゲル化し、ブリーディング液が浸透したサンドゲルが固化し自立する。
ここで、上記サンドゲルは、一軸圧縮強度試験で用いられる供試体サイズで自立することが好ましく、好適には、一軸圧縮強度で2.0kN/m2以上を呈する。本発明において、ブリーディング液の浸透固結体の一軸圧縮強度は、一軸圧縮強度試験で用いられる供試体サイズで7日後に2.0kN/m2以上となり、懸濁粒子が浸透しきれなかった部分にブリーディング液が浸透し、ゲル化して地盤を固結することが好ましい。
本発明の地盤固結材において、ブリーディング液は、SiO2濃度0.5w/v%以上でゲル化することが好ましい。
表2に、一般的な水ガラスの成分値を示し、二酸化ケイ素と酸化ナトリウムの値よりモル比を算出した。また、本発明において水ガラスは、モル比1.0以上の水ガラスにナトリウムを加えて、モル比を下げたものを用いてもよい。さらに、モル比1.0以上の水ガラスにコロイダルシリカを加えて、水ガラスを有効成分とするシリカ溶液のモル比を高くすることもできる。この場合は、シリカコロイドを加えた水ガラスのモル比は5.0以上でモル比を100程度まで上げることができる。併用しなくてもシリカコロイドのモル比は103となる。水ガラスのモル比は100以上にすることもできる。
表3にスラグ、表4に消石灰の、比表面積、平均粒径および粒径を示す。これらは代表例である。
ここで、高モル比水ガラスとは、低モル比水ガラスのモル比が2.8以下であることに対し、2.8よりも高いモル比の水ガラスを表現したものである。
また、本発明の地盤注入工法は、上記本発明の地盤固結材を用いたことを特徴とするものである。特には、本発明の地盤注入工法は、高圧噴射混合法に用いることが好ましい。
本発明の地盤注入工法においては、懸濁粒子の固化による改良効果を、非破壊試験によって確認することができる。このような非破壊試験としては、弾性波速度検層法、音響トモグラフィーおよび表面波探査を挙げることができる。
本発明は、地盤中に広範囲に懸濁型の地盤固結材の固結領域を形成し、地盤を広範囲に固結するものである。固結地盤は上記弾性波速度検層や音響トモグラフィーによる改良効果の確認に有効であることを本発明者らは見出したものである。
本発明の懸濁型地盤固結材は、強度および浸透特性に関わる以下の特性を持つことから、弾性波速度検層が本懸濁液による地盤改良効果の把握に極めて有効であることを見出した。
(ベンダーエレメントによる一軸圧縮強さと弾性波速度の関係)
以下に、具体的に説明する。図12は、本発明の地盤固結材で固結した豊浦砂供試体における一軸圧縮強さ(28日強度)と、ベンダーエレメント法によるS波速度の関係を示す。
図13は、養生日数とせん断波速度との関係の例を示す。
図14は、固結ゾーンまたは固結予定ゾーンに、受信孔と発信孔を設置して、S波速度VsやP波速度Vpを測定する説明図である。
注入孔を受信孔、発信孔としてS波速度VsやP波速度Vpを測定してもよい。
室内試験では、ベンダーエレメント法によって、固結供試体の両端に発信部と受信部を設置して、S波速度VsやP波速度Vpを測定するが、現地においては表面波探査や速度検層によってS波速度VsやP波速度Vpを測定する。
本発明の地盤固結材は、懸濁液中の懸濁粒子の配合量で強度がほぼ一義的に決まることから、懸濁粒子の量とS波速度VsやP波速度Vpを知ることによって、改良効果を推定できるという効果を持つ。
現場土を用いた固結供試体の室内試験における一軸圧縮強さとS波速度Vsとの関係、および、懸濁液中の懸濁粒子の量と一軸圧縮強さとの関係を図15に示し、注入地盤におけるA地点とB地点におけるS波速度の測定値をプロットした。
これより、A地点およびB地点における一軸圧縮強さを推定できる。また、その地点における懸濁液中の懸濁粒子の量も推定できる。
このようにして、注入現場における固結範囲および固結強度を把握することができる。図15の例では、A地点およびB地点において目標S波速度Vsを満たし、したがって設計Vsを満たしていることがわかる。
また、室内試験で、その一軸圧縮強さは、懸濁粒子の充填率と含有量とS波速度やP波速度の関係を求めておけば、現場におけるS波速度やP波速度の測定値より、地盤中における充填量や組成の状況を知ることができる。図16は本発明の懸濁型地盤固結材の室内浸透試験における装置を示し、図3,4はモールド長1.5mに1次元注入試験後の状態を示す。図5は浸透距離に対応した一軸圧縮強度を示す。この一軸試験結果から、図12より各浸透距離における固結体のせん断波速度を知ることができる。また、地盤中に填充させた懸濁粒子の量を知ることができる。
また、注入前後の注入地盤の貫入試験値やコアサンプリングによる供試体の強度試験値とその地点のせん断波速度や強度の推定値と比較することによって、非破壊試験結果の解析に役立てることができる(図15)。
また、注入前に受信部と発信部を設置しておけば(図14)、注入中においてリアルタイムで地盤における浸透状況を把握して、リアルタイムで注入量の補正や懸濁粒子の配合量の補正をすることができる。養生に伴い変化するS波速度やP波速度を非破壊にて測定することにより、最終的に目的とする改良効果を得られたかどうかを判断することができる。
以上のように、本発明の地盤固結材の流動特性と注入設計と注入効果を把握して、設計に組立てることができる。
以下に、試験結果を示す。
(試験方法)
1.固結材試験材料
以下に、使用した固結材の材料を記載する。
3号水ガラス:比重1.41、シリカ濃度29w/w%、モル比2.9。
1号水ガラス:比重1.35、シリカ濃度21w/w%、モル比2.0。
消石灰:比重2.5。
スラグ:比重2.9、ブレーン値8000cm2/g。
アルミン酸ソーダ:比重1.6。
石膏:比重2.16。
フライアッシュ:比重2.15。
セメント:比重3.0。
コロイダルシリカ:比重1.2。
2.配合
試験に使用した配合を表5~12に示す。なお、1ショット配合で行っても同様である。
(流動性試験)
カップ倒立法でゲル化時間を測定し、カップを傾けても流れ出なくなった時間あるいは粘度計で100mPa・sを終えた時点をゲル化時間とした。
表5~12に、各配合のゲルタイムを示す。
(ブリーディング試験)
φ5×50cmのポリエチレン袋(グラウト袋)に所定量投入し、JSCE-F-522-2013に準じ測定を行って、ブリーディング率を測定した。その結果を、表13に示す。また、ブリーディング率を測定したときのブリーディング液のゲル化の有無を確認した。
ここで、ブリーディング率=100×(L1/L)であり、L=L1+L2で求められる。
L1:ゲル化ブリーディング液の長さ
L2:懸濁粒子部の長さ
L:固結懸濁液の長さ
ブリーディング試験においては、経過日数とともに青黒く変色し水和反応が進んでいる様子が確認された。また、上部のブリーディング部分はゲル化によって不透明となり、固化していることが確認された(図1参照)。一方、図2に示す比較例では、ブリーディング部分は透明でゲル状になっていなかった。
(強度試験)
(サンドゲル供試体の作製)
6号珪砂を用い、ブリーディング液を使用して、相対密度60%になるように直径5cm×高さ10cmの混合法による供試体を作製し、28日目の一軸圧縮強さを測定した。表13にブリーディング率およびブリーディング液を用いたサンドゲルの強度を示す。
ブリーディング率は水ガラス量が多いほうが多く、スラグ量が少なくなると多くなる。ブリーディング液を用いたサンドゲルでは、水ガラスおよびスラグ量が多い方が強度が発現した。また、実施例7は実施例2に石膏を併用したもので、石膏を添加するとブリーディング率が減少し、強度が増加した。
ブリーディング液のゲル化とその自立性やブリーディング液により固結した砂(サンドゲル)の強度や自立性は、懸濁液中のスラグや水ガラスの配合量、水ガラスのシリカ濃度(SiO2)とスラグのCaO分の比率(CaO/SiO2)、ゲルタイム、ブリーディング液によって固化する砂の粒径や密度によって異なる。そこで、これらのいくつもの要因を含んだサンドゲルの自立性が懸濁粒子の浸透固結性が困難であった細粒土部分または浸透するに至らなかった部分を一体化するために、ブリーディング液が浸透したサンドゲルが自立することを条件とし、その強度の最小値を知る試験を行った。表13に、ブリーディング率(%)とともに、ブリーディング液によって固結した砂の強度の測定結果を示した。
この結果より、ブリーディング率が50%以上でも、また50%以下でもゲル化し、ブリーディング液が浸透してサンドゲルが自立する組成を得られることが分かった。そのサンドゲルが自立する最小強度は2.0kN/m2であった。スラグと水ガラスのみの配合(実施例14)の自立可能なサンドゲルの強度が28日目で15kN/m2であることがわかった。また、ブリーディング液中にCa、Mg、Al等の塩が含まれれば、サンドゲルの強度はさらに増加するとみてよい。
実施例14については、1日および7日目の強度も測定した。1日強度では2.0kN/m2の強度が得られた。7日目は10kN/m2であった。また、豊浦砂でも同様な傾向が得られた。本発明において、供試体は土の一軸圧縮試験に供試体サイズに合わせ、直径D0(mm)は、通常、35mmまたは50mmとし、高さH0(mm)は、直径D0(mm)の1.8倍~2.5倍とする自立するサンドゲルであればどの材令でも判定ができる。図10に試験状況を示す。このことより、現場砂でも注入率40%で2.0kN/m2の強度が得られれば自立することがわかった。また、注入率40%の注入率とは、改良地盤1m3当たりの注入液の注入量で0.4m3となる。
図11には試験終了後の供試体状況を示す。
実施例1~7において、消石灰の添加量が多くなるとゲルタイムが短縮された。また、スラグ量が多いと強度が増大した。
実施例8は全体がゲル化し、ブリーディング部分も固化した。
比較例1は固結部分は固化するが、ブリーディング部分はゲル化しなかった。
実施例9はブリーディング部分もゲル化したが、実施例8よりもゲルタイムが長かった。
実施例10は低モル比と消石灰の組合せであって、ブリーディング液のゲル化を確認した。
実施例11ではスラグの代わりにフライアッシュを用いた。スラグのときと同様にブリーディング液がゲル化した。
実施例12および実施例14は、明確なゲル化時間はなかったが最終的にはゲル化し、ブリーディング液はゲル化した。
実施例13のブリーディング液はゲル化した。
比較例2は明確なゲルタイムがなく、ブリーディング液もゲル化しなかった。
実施例15のブリーディング液はゲル化した。コロイダルシリカと水ガラスを併用しても、ブリーディング液がゲル化することがわかった。
ブリーディング液を用いたサンドゲルが自立しない場合は、スラグが浸透しきれず、一体化せず地盤が固結すると思われる。
一次元浸透試験に使用した砂は、5号珪砂、6号珪砂、7号珪砂、豊浦砂であった。その粒径分布を図9に示す。また、これらを長さ2mまたは1mの長尺モールドに相対密度を変えて充填し、浸透試験を実施した。
(シリカ濃度と強度との関係)
底面が外れるアクリルモールドに表13に用いた中性~アルカリ領域の薬液を入れて固化させ、ホモゲルのシリカ濃度別のゲル化の有無、および、ゲルの自立性を確認した。また、サンドゲルでも同様に行い、固化および固結砂の自立性を確認した。その結果を表14に示す。
シリカ濃度0.5%未満においては、ホモゲルとサンドゲルの自立性が得られなかった。
また、さらに試験を追加して、シリカ濃度0.25%でもゲル化することが分かった。
図7に、ブリーディング液がゲル化し、斜めにしてもゲル化が崩れず自立している状態を示す。また、ブリーディング液の全量がゲル化しなくても、ブリーディング液中でゲル化し同様に斜めにしてゲルが崩れない状態も、サンドゲルでは自立性があった。
(浸透性試験)
(試験装置および試験方法)
1次元浸透装置(長さ2m)を用いて、6号珪砂に対する浸透試験を行い、浸透長および強度分布を調べた。
試験条件:アクリルモールドh=2m、配合液3L
試料に水を飽和させた後、懸濁液を下部から注入し、排出液が排出されなくなるまで注入した。
実施例2および比較例1の配合にて行った(図3、図4)。
図3は、実施例2の配合にて行った結果を示す。浸透距離120cmでも強度測定が可能であった。なお、90cm以降サンドゲルの変色はなかったが、強度測定ができたのは、ブリーディング液が90cm以降で固化したためと思われる(図5,図6)。90cm以降の部分は、表14から、0.5%以上のシリカが含有されていると思われる。
図4は、比較例1の配合にて行った結果を示す。90cmまで強度測定できたが、90cm以降は変色がなく、強度測定できず、ブリーディング液がゲル化していなかったことが分かった。
浸透試験でスラグの変色反応がなかった部分はスラグが浸透していないと思われ、ブリーディング液がゲル化するほどCa分が含有されていないことが分かった。それに対し、図3ではブリーディング液がゲル化し、ブリーディング液が自立し、かつ、サンドゲルが自立して強度発現するほどCa分とシリカ分が含有されていたと推察される。
以上より、土の粒径密度および懸濁粒子の粒径分布によっては土粒子間に浸透し得ない条件下では、ブリーディング液のみが浸透することになる。そして、そのブリーディング液の浸透可能な地盤の粒径が、図8の現場砂の粒径加積曲線の範囲ならば浸透固化することが分かる。
図6より、懸濁液の懸濁粒子の浸透距離が90cm弱でも、120cmまでブリーディング液が浸透し、その間のブリーディング液が自立する強度があり、または、サンドゲルが自立する強度があれば、シリカ濃度は0.5~2%以上であることが予測できる。したがって、注入孔間隔が30×2=60cmは自立する高強度を得る懸濁粒子が浸透している固結体同士をブリーディング液のホモゲルが連なることになる。
このようにして、懸濁粒子が浸透し得ない地盤条件でも一体化した固結体を形成して、また、注入孔間隔を広くとってもその間の固結体同士を自立可能なブリーディング液のゲル化物で連結して、一体化した固結地盤を形成できる。

Claims (6)

  1. 地盤に設けた複数の注入孔から、スラグからなる懸濁粒子と水ガラスとアルカリ剤としての消石灰とを有効成分とする懸濁液からなる地盤固結材を、該地盤に注入する地盤注入工法であって、
    前記水ガラスは3号水ガラスであり、前記消石灰のブレーン値は4000~13000cm 2 /g、配合量は1~50kg/400Lであり、
    前記地盤固結材のブリーディング液のシリカ濃度が0.5w/v%以上であって該ブリーディング液がゲル化するとともに、そのホモゲルが自立する強度を有し、該ブリーディング液が浸透して固結したサンドゲルが自立する強度を有し、
    前記ブリーディング液が、前記地盤のうち前記懸濁粒子が浸透し得なかった部分に浸透して、該地盤のうち該懸濁粒子が浸透した部分と一体化して固結体を形成することにより、隣接する前記注入孔からの該懸濁粒子による固結体同士を連結して、掘削地盤の削面を、自立しかつ地下水を止水できるものとすることを特徴とする地盤注入工法。
    ここで、上記において、前記ブリーディング液がゲル化してそのホモゲルが自立するとは、該ブリーディング液のシリカ濃度が0.5w/v%以上であって、モールド内において、該ホモゲルを斜めに傾けてもゲルが崩れず自立する状態を意味する。
    また、前記サンドゲルが自立するとは、前記ブリーディング液のシリカ濃度が0.5w/v%以上であって、6号珪砂を用い該ブリーディング液を使用して相対密度60%になるように直径5cm×高さ10cmで混合法により作製された該サンドゲルが自立し、該サンドゲルを用いて測定された一軸圧縮試験における最小強度が1日強度で2.0kN/m2以上であることを意味する。
    さらに、前記スラグのブレーン値は4000~15000cm2/g、配合量は50~150kg/400リットルであり、前記水ガラスの配合量は10~150リットル/400リットルである。
  2. 前記地盤固結材が、さらに、多価金属化合物を含む請求項1記載の地盤注入工法。
  3. 前記多価金属化合物が、Ca、Mg若しくはAlの水酸化物、酸化物若しくは塩のうちのいずれか1種または複数種、および/または、石膏である請求項2記載の地盤注入工法。
  4. 前記地盤固結材を、高圧噴射混合法に用いる請求項1記載の地盤注入工法。
  5. 前記懸濁粒子の固化による改良効果を、非破壊試験によって確認する請求項1記載の地盤注入工法。
  6. 前記非破壊試験が、弾性波速度検層法、音響トモグラフィーまたは表面波探査によるものである請求項5記載の地盤注入工法。
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