JP7734764B2 - 油井用金属管 - Google Patents

油井用金属管

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Description

本開示は、金属管に関し、さらに詳しくは油井用金属管に関する。
油井やガス井(以下、油井及びガス井を総称して、単に「油井」という)には、油井用金属管が使用される。油井用金属管は、ねじ継手を有する。具体的には、油井採掘地において、油井の深さに応じて、複数の油井用金属管を連結して、ケーシングやチュービングに代表される油井管連結体を形成する。油井管連結体は、油井用金属管同士をねじ締めすることによって形成される。また、油井管連結体に対して検査を実施する場合がある。検査を実施する場合、油井管連結体は、引き上げられ、ねじ戻しされる。そして、ねじ戻しにより油井管連結体から油井用金属管が取り外され、検査される。検査後、油井用金属管同士が再びねじ締めされ、油井用金属管は油井管連結体の一部として再度利用される。
油井用金属管は、ピン及びボックスを備える。ピンは、油井用金属管の端部の外周面に、雄ねじ部を含むピン接触表面を有する。ボックスは、油井用金属管の端部の内周面に、雌ねじ部を含むボックス接触表面を有する。本明細書において、雄ねじ部と雌ねじ部とを総称して、「ねじ部」ともいう。なお、ピン接触表面はさらに、ピンシール面とピンショルダ面とを含む、ピンねじ無し金属接触部を含む場合がある。同様に、ボックス接触表面はさらに、ボックスシール面とボックスショルダ面とを含む、ボックスねじ無し金属接触部を含む場合がある。
油井用金属管のピン接触表面及びボックス接触表面は、ねじ締め及びねじ戻し時に強い摩擦を繰り返し受ける。そのため、ピン接触表面及びボックス接触表面は、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返した時に、ゴーリング(修復不可能な焼付き)が発生しやすい。したがって、油井用金属管には、摩擦に対する十分な耐久性、すなわち、優れた耐焼付き性が要求される。
従来、油井用金属管の耐焼付き性を向上するために、ドープと呼ばれる重金属粉入りのコンパウンドグリスが使用されてきた。ピン接触表面及び/又はボックス接触表面にコンパウンドグリスを塗布することで、油井用金属管の耐焼付き性を改善できる。しかしながら、コンパウンドグリスに含まれるPb、Zn及びCu等の重金属粉は、環境に影響を与える可能性がある。このため、コンパウンドグリスを使用しなくても、耐焼付き性に優れる油井用金属管の開発が望まれている。
油井用金属管の耐焼付き性を高める技術が、たとえば、国際公開第2006/104251号(特許文献1)、国際公開第2008/108263号(特許文献2)、及び、国際公開第2016/170031号(特許文献3)に提案されている。
特許文献1に開示される油井用金属管は、ねじ継手を有し、ピン及びボックスの少なくとも一方の接触表面に、粘稠液体又は半固体の潤滑被膜と、その上に形成された乾燥固体被膜とを有する。この油井用金属管によれば、コンパウンドグリスを使用しなくても、錆の発生を抑制し、かつ、耐焼付き性及び気密性を高められる、と特許文献1には開示されている。
特許文献2に開示される油井用金属管は、ねじ継手を有し、ピン及びボックスの少なくとも一方の接触表面に、Cu-Zn合金及びCu-Zn-M1合金(M1はSn、Bi及びInからなる群から選択される1種以上の元素)からなる群から選択されるCu合金めっき層を有する。この油井用金属管によれば、コンパウンドグリスを使用しなくても、隙間腐食の発生が防止でき、気密性及び耐焼付き性を高められる、と特許文献2には開示されている。
特許文献3に開示される油井用金属管は、ねじ継手を有し、ピン及びボックスの少なくとも一方の接触表面に、Zn-Ni合金めっき層を有する。この油井用金属管によれば、コンパウンドグリスを使用しなくても、耐食性及び耐焼付き性を高められる、と特許文献3には開示されている。
国際公開第2006/104251号 国際公開第2008/108263号 国際公開第2016/170031号
特許文献1に開示された技術によれば、ピン及びボックスの少なくとも一方の接触表面の上又は上方に潤滑被膜を形成することで、油井用金属管の耐焼付き性を高めることができる。特許文献2及び3に開示された技術によれば、ピン及びボックスの少なくとも一方の接触表面の上にめっき層を形成することで、油井用金属管の耐焼付き性を高めることができる。
ところで、油井用金属管では、生産性及び製造コストの観点から、ピン及びボックスの一方の接触表面の上又は上方にのみ、めっき層が形成される場合がある。たとえば、後述する油井用金属管の一形態であるT&C(Threaded and Coupled)型の油井用金属管では、長尺の鋼管にピンが形成され、短尺の鋼管(カップリング)にボックスが形成される。ここで、カップリングの方が、長尺の鋼管と比較して特殊な装置等が必要なく、表面にめっき層を容易に形成できる。そのため、ボックス接触表面の上又は上方にのみ、めっき層が形成され、ピン接触表面の上又は上方には、めっき層が形成されない場合がある。
このように、工業的な生産性を考慮して、ピン及びボックスの一方の接触表面の上又は上方にのみめっき層が形成された場合であっても、優れた耐焼付き性を有する油井用金属管が求められてきている。しかしながら、上記特許文献2及び3では、ピン及びボックスのうち一方の接触表面の上又は上方にのみめっき層を形成する場合、めっき層が形成されない接触表面の構成と、油井用金属管の耐焼付き性との関係について、何ら検討されていない。
本開示の目的は、ピン及びボックスのうち一方の接触表面の上又は上方にのみめっき層が形成されても、優れた耐焼付き性を有する油井用金属管を提供することである。
本開示による油井用金属管は、
第1端部と第2端部とを含む管本体を備え、
前記管本体は、
前記第1端部に形成されているピンと、
前記第2端部に形成されているボックスとを含み、
前記ピンは、
雄ねじ部を含むピン接触表面を含み、
前記ボックスは、
雌ねじ部を含むボックス接触表面を含み、
前記油井用金属管はさらに、
前記ピン接触表面及び前記ボックス接触表面のうち、いずれか一方の上に形成される、酸化ジルコニウム被膜と、
前記酸化ジルコニウム被膜の上又は上方に形成される、第1樹脂被膜と、
前記ピン接触表面及び前記ボックス接触表面のうち、他方の上又は上方に形成される、めっき層と、
前記めっき層の上又は上方に形成される、第2樹脂被膜とを有する。
本開示による油井用金属管は、ピン及びボックスのうち一方の接触表面の上又は上方にのみめっき層が形成されても、優れた耐焼付き性を有する。
図1は、後述する実施例におけるねじ締め回数(回)と、耐焼付き性の指標であるショルダリングトルク(ft.lbs)との関係を示す図である。 図2は、本実施形態による油井用金属管の側面図である。 図3は、図2に示す油井用金属管のカップリングの管軸方向に平行な断面(縦断面)を示す一部断面図である。 図4は、図3に示す油井用金属管のうちのピン近傍部分の、油井用金属管の管軸方向に平行な断面図である。 図5は、図3に示す油井用金属管のうちのボックス近傍部分の、油井用金属管の管軸方向に平行な断面図である。 図6は、図3と異なる他の構成の本実施形態の油井用金属管の縦断面を含む一部断面図である。 図7は、本実施形態によるインテグラル型の油井用金属管の縦断面を含む一部断面図である。 図8は、本実施形態による油井用金属管のピン接触表面近傍の断面図である。 図9は、図8に対応するボックス接触表面近傍の断面図である。 図10は、図8と異なる構成の他のピン接触表面近傍の断面図である。 図11は、図10に対応するボックス接触表面近傍の断面図である。
以下、図面を参照して、本実施形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
本発明者らは、ピン及びボックスのうち一方の接触表面の上又は上方にのみめっき層が形成された油井用金属管の耐焼付き性を高める手段について、詳細に検討した。その結果、次の知見を得た。
まず、本発明者らは、ピン及びボックスのうち一方の接触表面の上又は上方にのみめっき層が形成された油井用金属管について、ピン及びボックスの両方の接触表面の上方に、樹脂被膜を形成することを検討した。樹脂被膜が形成されれば、油井用金属管同士がねじ締めされる際、接触表面の間に樹脂被膜が入り込む。その結果、接触表面に焼付きが発生するのを抑制することができる。ピン及びボックスの両方の接触表面の上方に樹脂被膜が形成されればさらに、ピン及びボックスの接触表面の耐食性をある程度高めることができる。
ここで、本実施形態による油井用金属管では、ピン及びボックスの一方の接触表面の上又は上方にのみ、めっき層が形成される。すなわち、本実施形態による油井用金属管は、上又は上方にめっき層が形成されない接触表面を含む。これまでに、めっき層が形成されない接触表面の上方に樹脂被膜を形成する場合、樹脂被膜の下方(樹脂被膜と接触表面との間)には、化成処理被膜が形成される場合があった。化成処理被膜は接触表面の耐食性を高める。さらに、化成処理被膜のうちリン酸亜鉛被膜は、樹脂被膜の密着性を高める。
具体的に、リン酸亜鉛被膜は、結晶粒が粗大になりやすく、その表面粗さが高くなりやすい。そのため、リン酸亜鉛被膜の上に樹脂被膜が形成されれば、いわゆるアンカー効果により、樹脂被膜の密着性が高まる。上述のとおり、油井用金属管同士がねじ締めされる際、接触表面には高い面圧がかかる。そのため、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返し実施した場合、樹脂被膜が剥離する可能性がある。しかしながら、樹脂被膜の密着性を高めることで、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返しても樹脂被膜の剥離を抑制できる可能性がある。その結果、油井用金属管の耐焼付き性が高まると予想される。そこで、接触表面の耐食性を高め、かつ、樹脂被膜の密着性を高めるために、油井用金属管ではこれまでに、化成処理被膜としてリン酸亜鉛被膜が用いられてきた。
しかしながら、本発明者らの詳細な検討の結果、めっき層が形成されない接触表面の上には、化成処理被膜として酸化ジルコニウム被膜を形成する方が、リン酸亜鉛被膜を形成するよりも、油井用金属管の耐焼付き性が高まる場合があることが明らかになった。この点について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、後述する実施例におけるねじ締め回数(回)と、耐焼付き性の指標であるショルダリングトルク(ft.lbs)との関係を示す図である。図1は、後述する実施例において、化成処理被膜及び樹脂被膜を形成したピン接触表面と、めっき層及び樹脂被膜を形成したボックス接触表面とを有する油井用金属管について、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返すことによって得られた。図1中の丸印(○)は、化成処理被膜として酸化ジルコニウム被膜を形成した試験番号1の結果を示す。図1の四角印(□)は、化成処理被膜としてリン酸亜鉛被膜を形成した試験番号2の結果を示す。また、化成処理被膜以外、試験番号1及び2で同一の構成を有する油井用金属管を用いた。
図1の横軸は、油井用金属管をねじ締め及びねじ戻しした回数(回)を示す。図1の縦軸は、油井用金属管をねじ締めしたときのショルダリングトルク(ft.lbs)を示す。なお、ショルダリングトルクとは、後述する実施例において用いた油井用金属管をねじ締めした際、ピン接触表面におけるピンショルダ面と、ボックス接触表面におけるボックスショルダ面とが接触したときのトルクを意味する。すなわち、ねじ締め及びねじ戻しを何度も繰り返した結果、ショルダリングトルクが低く維持されているほど、耐焼付き性は優れると判断できる。
図1を参照して、2回めのねじ締め時では、接触表面上に酸化ジルコニウム被膜を形成した試験番号1は、接触表面上にリン酸亜鉛被膜を形成した試験番号2よりも、ショルダリングトルクが高くなった。図1を参照してさらに、4回めのねじ締め時以後では、試験番号1は、試験番号2よりもショルダリングトルクが低く抑えられた。つまり、図1を参照して、ねじ締め及びねじ戻しを1回実施すると、試験番号1の方が試験番号2よりもショルダリングトルクが高くなる。しかしながら、試験番号1では、その後ねじ締め及びねじ戻しを繰り返しても、ショルダリングトルクがある程度の範囲に維持される。一方、試験番号2では、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返す回数を増すごとに、ショルダリングトルクが高まっていく。その結果、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返す回数が4回以上にまで多くなると、試験番号1の方が試験番号2よりもショルダリングトルクが低くなる様子が確認できる。このように、ねじ締め及びねじ戻しを何度も繰り返す場合、接触表面上に酸化ジルコニウム被膜を形成した方が、接触表面上にリン酸亜鉛被膜を形成するよりも、油井用金属管の耐焼付き性が高まることが明らかになった。この理由について、詳細は明らかになっていない。しかしながら、本発明者らは、次のように推察している。
上述のとおり、リン酸亜鉛被膜は、結晶粒が粗大になりやすく、その表面粗さが高くなりやすい。一方、酸化ジルコニウム被膜は、緻密で均一な薄い被膜が形成されやすい。すなわち、化成処理被膜の上に形成される樹脂被膜の密着性の観点において、リン酸亜鉛被膜上の樹脂被膜の方が、酸化ジルコニウム被膜上の樹脂被膜よりも、密着性が高いと考えられる。要するに、酸化ジルコニウム被膜上の樹脂被膜は、リン酸亜鉛被膜上の樹脂被膜と比較して、剥離しやすい。その結果、2回めのねじ締め時では、より多くの樹脂被膜が残存したリン酸亜鉛被膜を形成した試験番号2の方が、ショルダリングトルクが低くなった可能性がある。
その後、さらにねじ締め及びねじ戻しを繰り返すと、酸化ジルコニウム被膜上の樹脂被膜は、さらにその多くが剥離する可能性がある。一方、リン酸亜鉛被膜上の樹脂被膜は、残存しやすいために、かえってねじ締め及びねじ戻し時にめっき層上の樹脂被膜を傷つけている可能性が考えられる。その結果、めっき層上の樹脂被膜と、リン酸亜鉛被膜上の樹脂被膜との総量が、酸化ジルコニウム被膜を形成した場合よりも低下するのではないかと推測される。要するに、酸化ジルコニウム被膜上の樹脂被膜は、その剥離のしやすさによって、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返しても、めっき層上の樹脂被膜を傷つけにくいのではないか、と本発明者らは推察している。その結果、ねじ締め及びねじ戻しを何度も繰り返しても、めっき層上の樹脂被膜がより残存しやすい試験番号1の方が、ショルダリングトルクを低く維持できたのではないかと本発明者らは推察している。
なお、上述のメカニズム以外の他のメカニズムによって、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返しても、めっき層が形成されない接触表面の上に酸化ジルコニウム被膜を形成することにより、油井用金属管の耐焼付き性が高まっている可能性もあり得る。しかしながら、ピン及びボックスの一方の接触表面上に酸化ジルコニウム被膜を形成し、その酸化ジルコニウム被膜の上又は上方に樹脂被膜を形成し、ピン及びボックスの他方の接触表面上又は上方にめっき層を形成し、そのめっき層の上又は上方に樹脂被膜を形成することにより、油井用金属管の耐焼付き性が高まることは、後述する実施例によって証明されている。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による油井用金属管の要旨は、次のとおりである。
[1]
油井用金属管であって、
第1端部と第2端部とを含む管本体を備え、
前記管本体は、
前記第1端部に形成されているピンと、
前記第2端部に形成されているボックスとを含み、
前記ピンは、
雄ねじ部を含むピン接触表面を含み、
前記ボックスは、
雌ねじ部を含むボックス接触表面を含み、
前記油井用金属管はさらに、
前記ピン接触表面及び前記ボックス接触表面のうち、いずれか一方の上に形成される、酸化ジルコニウム被膜と、
前記酸化ジルコニウム被膜の上又は上方に形成される、第1樹脂被膜と、
前記ピン接触表面及び前記ボックス接触表面のうち、他方の上又は上方に形成される、めっき層と、
前記めっき層の上又は上方に形成される、第2樹脂被膜とを有する、
油井用金属管。
[2]
[1]に記載の油井用金属管であって、
前記酸化ジルコニウム被膜は、前記ピン接触表面の上に形成され、
前記めっき層は、前記ボックス接触表面の上又は上方に形成される、
油井用金属管。
[3]
[1]又は[2]に記載の油井用金属管であって、
前記めっき層は、Zn-Ni合金めっき層である、
油井用金属管。
以下、本実施形態による油井用金属管について詳述する。
[油井用金属管の構成]
初めに、本実施形態の油井用金属管の構成について説明する。油井用金属管は、周知の構成を有する。油井用金属管は、T&C型の油井用金属管と、インテグラル型の油井用金属管とがある。以下、各型の油井用金属管について詳述する。
[油井用金属管1がT&C型である場合]
図2は、本実施形態による油井用金属管1の側面図である。図2は、いわゆるT&C(Threaded and Coupled)型の油井用金属管1の側面図である。図2を参照して、油井用金属管1は、管本体10を備える。
管本体10は、管軸方向に延びている。管本体10の管軸方向に垂直な断面は円形状である。管本体10は、第1端部10Aと、第2端部10Bとを含む。第1端部10Aは、第2端部10Bの反対側の端部である。図2に示すT&C型の油井用金属管1では、管本体10は、ピン管体11と、カップリング12とを備える。カップリング12は、ピン管体11の一端に取り付けられている。より具体的には、カップリング12は、ピン管体11の一端にねじにより締結されている。
図3は、図2に示す油井用金属管1のカップリング12の管軸方向に平行な断面(縦断面)を示す一部断面図である。図2及び図3を参照して、管本体10は、ピン40と、ボックス50とを含む。ピン40は、管本体10の第1端部10Aに形成されている。ピン40は、締結時において、他の油井用金属管1(図示せず)のボックス50に挿入されて、他の油井用金属管1のボックス50とねじにより締結される。
ボックス50は、管本体10の第2端部10Bに形成されている。締結時において、ボックス50には、他の油井用金属管1のピン40が挿入されて、他の油井用金属管1のピン40とねじにより締結される。
[ピン40の構成について]
図4は、図3に示す油井用金属管1のうちのピン40近傍部分の、油井用金属管1の管軸方向に平行な断面図である。図4中の破線部分は、他の油井用金属管1と締結する場合の、他の油井用金属管1のボックス50の構成を示す。図4を参照して、ピン40は、管本体10の第1端部10Aの外周面に、ピン接触表面400を備える。ピン接触表面400は、他の油井用金属管1との締結時において、他の油井用金属管1のボックス50にねじ込まれ、ボックス50のボックス接触表面500(後述)と接触する。
ピン接触表面400は、第1端部10Aの外周面に形成された雄ねじ部41を少なくとも含む。ピン接触表面400はさらに、ピンシール面42と、ピンショルダ面43とを含んでもよい。図4では、ピンショルダ面43は第1端部10Aの先端面に配置され、ピンシール面42は、第1端部10Aの外周面のうち、雄ねじ部41よりも第1端部10Aの先端側に配置されている。つまり、ピンシール面42は、雄ねじ部41とピンショルダ面43との間に配置されている。ピンシール面42はテーパ状に設けられている。具体的には、ピンシール面42では、第1端部10Aの長手方向(管軸方向)において、雄ねじ部41からピンショルダ面43に向かうにしたがって、外径が徐々に小さくなっている。
他の油井用金属管1との締結時において、ピンシール面42は、他の油井用金属管1のボックス50のボックスシール面52(後述)と接触する。より具体的には、締結時において、ピン40が他の油井用金属管1のボックス50に挿入されることにより、ピンシール面42がボックスシール面52と接触する。そして、ピン40が他の油井用金属管1のボックス50にさらにねじ込まれることにより、ピンシール面42は、ボックスシール面52と密着する。これにより、締結時において、ピンシール面42は、ボックスシール面52と密着してメタル-メタル接触に基づくシールを形成する。そのため、互いに締結された油井用金属管1において、気密性を高めることができる。
図4では、ピンショルダ面43は、第1端部10Aの先端面に配置されている。つまり、図4に示すピン40では、管本体10の中央から第1端部10Aに向かって順に、雄ねじ部41、ピンシール面42、ピンショルダ面43の順に配置されている。他の油井用金属管1との締結時において、ピンショルダ面43は、他の油井用金属管1のボックス50のボックスショルダ面53(後述)と対向し、接触する。より具体的には、締結時において、ピン40が他の油井用金属管1のボックス50に挿入されることにより、ピンショルダ面43がボックスショルダ面53と接触する。これにより、締結時において、高いトルクを得ることができる。また、ピン40とボックス50との締結状態での位置関係を安定させることができる。
なお、ピン40のピン接触表面400は、少なくとも雄ねじ部41を含んでいる。つまり、ピン接触表面400は、雄ねじ部41を含み、ピンシール面42及びピンショルダ面43を含んでいなくてもよい。ピン接触表面400は、雄ねじ部41とピンショルダ面43とを含み、ピンシール面42を含んでいなくてもよい。ピン接触表面400は、雄ねじ部41とピンシール面42とを含み、ピンショルダ面43を含んでいなくてもよい。
[ボックス50の構成について]
図5は、図3に示す油井用金属管1のうちのボックス50近傍部分の、油井用金属管1の管軸方向に平行な断面図である。図5中の破線部分は、他の油井用金属管1と締結する場合の、他の油井用金属管1のピン40の構成を示す。図5を参照して、ボックス50は、管本体10の第2端部10Bの内周面に、ボックス接触表面500を備える。ボックス接触表面500は、他の油井用金属管1との締結時において、他の油井用金属管1のピン40がボックス50にねじ込まれ、ピン40のピン接触表面400と接触する。
ボックス接触表面500は、第2端部10Bの内周面に形成された雌ねじ部51を少なくとも含む。締結時において、雌ねじ部51は、他の油井用金属管1のピン40の雄ねじ部41と噛み合う。
ボックス接触表面500はさらに、ボックスシール面52と、ボックスショルダ面53とを含んでもよい。図5では、ボックスシール面52は、第2端部10Bの内周面のうち、雌ねじ部51よりも管本体10側に配置されている。つまり、ボックスシール面52は、雌ねじ部51とボックスショルダ面53との間に配置されている。ボックスシール面52はテーパ状に設けられている。具体的には、ボックスシール面52では、第2端部10Bの長手方向(管軸方向)において、雌ねじ部51からボックスショルダ面53に向かうにしたがって、内径が徐々に小さくなっている。
他の油井用金属管1との締結時において、ボックスシール面52は、他の油井用金属管1のピン40のピンシール面42と接触する。より具体的には、締結時において、ボックス50に他の油井用金属管1のピン40がねじ込まれることにより、ボックスシール面52がピンシール面42と接触し、さらにねじ込まれることにより、ボックスシール面52がピンシール面42と密着する。これにより、締結時において、ボックスシール面52は、ピンシール面42と密着してメタル-メタル接触に基づくシールを形成する。そのため、互いに締結された油井用金属管1において、気密性を高めることができる。
ボックスショルダ面53は、ボックスシール面52よりも管本体10側に配置されている。つまり、ボックス50では、管本体10の中央から第2端部10Bの先端に向かって順に、ボックスショルダ面53、ボックスシール面52、雌ねじ部51、の順に配置されている。他の油井用金属管1との締結時において、ボックスショルダ面53は、他の油井用金属管1のピン40のピンショルダ面43と対向し、接触する。より具体的には、締結時において、ボックス50に他の油井用金属管1のピン40が挿入されることにより、ボックスショルダ面53がピンショルダ面43と接触する。これにより、締結時において、高いトルクを得ることができる。また、ピン40とボックス50との締結状態での位置関係を安定させることができる。
ボックス接触表面500は、少なくとも雌ねじ部51を含む。締結時において、ボックス50のボックス接触表面500の雌ねじ部51は、ピン40のピン接触表面400の雄ねじ部41に対応し、雄ねじ部41と接触する。ボックスシール面52は、ピンシール面42と対応し、ピンシール面42と接触する。ボックスショルダ面53は、ピンショルダ面43と対応し、ピンショルダ面43と接触する。
ピン接触表面400が雄ねじ部41を含み、ピンシール面42及びピンショルダ面43を含まない場合、ボックス接触表面500は雌ねじ部51を含み、ボックスシール面52及びボックスショルダ面53を含まない。ピン接触表面400が雄ねじ部41とピンショルダ面43とを含み、ピンシール面42を含まない場合、ボックス接触表面500は、雌ねじ部51とボックスショルダ面53とを含み、ボックスシール面52を含まない。ピン接触表面400が雄ねじ部41とピンシール面42とを含み、ピンショルダ面43を含まない場合、ボックス接触表面500は、雌ねじ部51とボックスシール面52とを含み、ボックスショルダ面53を含まない。
ピン接触表面400は、複数の雄ねじ部41を含んでもよいし、複数のピンシール面42を含んでもよいし、複数のピンショルダ面43を含んでもよい。たとえば、ピン40のピン接触表面400において、第1端部10Aの先端から管本体10の中央に向かって、ピンショルダ面43、ピンシール面42、雄ねじ部41、ピンシール面42、ピンショルダ面43、ピンシール面42、雄ねじ部41の順で配置されてもよい。この場合、ボックス50のボックス接触表面500において、第2端部10Bの先端から管本体10の中央に向かって、雌ねじ部51、ボックスシール面52、ボックスショルダ面53、ボックスシール面52、雌ねじ部51、ボックスシール面52、ボックスショルダ面53の順に配置される。
図4及び図5では、ピン40が、雄ねじ部41、ピンシール面42、及び、ピンショルダ面43を含み、ボックス50が、雌ねじ部51、ボックスシール面52、及び、ボックスショルダ面53を含む、いわゆる、プレミアムジョイントを図示している。しかしながら、上述のとおり、ピン40は、雄ねじ部41を含み、ピンシール面42及びピンショルダ面43を含んでいなくてもよい。この場合、ボックス50は、雌ねじ部51を含み、ボックスシール面52及びボックスショルダ面53を含んでいない。図6は、図3と異なる他の構成の本実施形態の油井用金属管の縦断面を含む一部断面図である。
[油井用金属管1がインテグラル型である場合]
図2、図3及び図6に示す油井用金属管1は、管本体10が、ピン管体11とカップリング12とを含む、いわゆる、T&C型の油井用金属管1である。しかしながら、本実施形態の油井用金属管1は、T&C型ではなく、インテグラル型であってもよい。
図7は、本実施形態によるインテグラル型の油井用金属管1の縦断面を含む一部断面図である。図7を参照して、インテグラル型の油井用金属管1は、管本体10を備える。管本体10は、第1端部10Aと、第2端部10Bとを含む。第1端部10Aは、第2端部10Bと反対側に配置されている。上述のとおり、T&C型の油井用金属管1では、管本体10は、ピン管体11と、カップリング12とを備える。つまり、T&C型の油井用金属管1では、管本体10は、2つの別個の部材(ピン管体11及びカップリング12)を締結して構成されている。これに対して、インテグラル型の油井用金属管1では、管本体10は一体的に形成されている。
ピン40は、管本体10の第1端部10Aに形成されている。締結時において、ピン40は、他のインテグラル型の油井用金属管1のボックス50に挿入されてねじ込まれ、他のインテグラル型の油井用金属管1のボックス50と締結される。ボックス50は、管本体10の第2端部10Bに形成されている。締結時において、ボックス50には、他のインテグラル型の油井用金属管1のピン40が挿入されてねじ込まれ、他のインテグラル型の油井用金属管1のピン40と締結される。
インテグラル型の油井用金属管1のピン40の構成は、図4に示すT&C型の油井用金属管1のピン40の構成と同じである。同様に、インテグラル型の油井用金属管1のボックス50の構成は、図5に示すT&C型の油井用金属管1のボックス50の構成と同じである。なお、図4及び図5では、ピン40において、第1端部10Aの先端から管本体10の中央に向かって、ピンショルダ面43、ピンシール面42、雄ねじ部41の順で配置されている。そのため、ボックス50において、第2端部10Bの先端から管本体10の中央に向かって、雌ねじ部51、ボックスシール面52、ボックスショルダ面53の順に配置されている。しかしながら、T&C型の油井用金属管1のピン40のピン接触表面400と同様に、インテグラル型の油井用金属管1のピン40のピン接触表面400は、少なくとも雄ねじ部41を含んでいればよい。また、T&C型の油井用金属管1のボックス50のボックス接触表面500と同様に、インテグラル型の油井用金属管1のボックス50のボックス接触表面500は、少なくとも雌ねじ部51を含んでいればよい。
要するに、本実施形態の油井用金属管1は、T&C型であってもよいし、インテグラル型であってもよい。
[酸化ジルコニウム被膜]
本実施形態による油井用金属管1は、ピン接触表面400及びボックス接触表面500のいずれか一方の上に、酸化ジルコニウム被膜100を備える。図8は、本実施形態による油井用金属管1のピン接触表面400近傍の断面図である。図9は、図8に対応するボックス接触表面500近傍の断面図である。図10は、図8とは異なる構成の他のピン接触表面400近傍の断面図である。図11は、図10に対応するボックス接触表面500近傍の断面図である。
図8を参照して、酸化ジルコニウム被膜100は、ピン接触表面400の上に形成されてもよい。この場合、図9を参照して、対応するボックス接触表面500の上又は上方には、めっき層200が形成される。また、図11を参照して、酸化ジルコニウム被膜100は、ボックス接触表面500の上に形成されてもよい。この場合、図10を参照して、対応するピン接触表面400の上又は上方には、めっき層200が形成される。すなわち、酸化ジルコニウム被膜100が形成されるのは、ピン接触表面400の上であってもよく、ボックス接触表面500の上であってもよい。要するに、本実施形態による油井用金属管1は、ピン接触表面400及びボックス接触表面500のうち、いずれか一方の上に形成される酸化ジルコニウム被膜100を有する。
酸化ジルコニウム被膜100は、非晶質の酸化ジルコニウム(ZrO)、及び/又は、非晶質の水酸化ジルコニウム(Zr(OH))を主として含有する。すなわち、本実施形態による酸化ジルコニウム被膜100において、非晶質の酸化ジルコニウム(ZrO)の水和物、及び、非晶質の水酸化ジルコニウム(Zr(OH))の合計含有量は、たとえば、80質量%以上である。酸化ジルコニウム被膜100はさらに、有機化合物を含有していてもよい。酸化ジルコニウム被膜100は、緻密で薄く、均一な被膜である。そのため、酸化ジルコニウム被膜100の上又は上方に形成された樹脂被膜は、密着性が低く、剥離しやすい。そのため、めっき層200の上又は上方に形成された樹脂被膜が、ねじ締め及びねじ戻しを繰り返しても残存しやすく、結果として油井用金属管1の耐焼付き性を高めると考えられる。なお、樹脂被膜については後述する。
上述のとおり、酸化ジルコニウム被膜100は、薄い被膜である。そのため、酸化ジルコニウム被膜100の厚さを測定するのは困難である。しかしながら、酸化ジルコニウム被膜100は、次の方法で確認することができる。まず、酸化ジルコニウム被膜について、誘導結合高周波プラズマ発光分光分析(ICP-AES)によってZr含有量と、蛍光X線分析によって検出されるZr信号量との検量線を作成する。具体的に、厚さの異なる酸化ジルコニウム被膜を形成した複数の鋼板について、蛍光X線分析でZr信号量を測定する。厚さの異なる酸化ジルコニウム被膜を形成した複数の鋼板についてさらに、ふっ酸溶液等に浸漬し、酸化ジルコニウム被膜を溶解させる。酸化ジルコニウム被膜が溶解したふっ酸溶液について、ICP-AESによる元素分析を実施する。元素分析によって得られたZr含有量と、蛍光X線分析によって得られたZr信号量とを用いて、検量線を作成する。本実施形態によるピン接触表面400又はボックス接触表面500に対して、蛍光X線分析を実施して、Zr信号量を求める。求めたZr信号量から、作成した検量線を用いて、酸化ジルコニウム被膜中のZr含有量を定量することで、酸化ジルコニウム被膜の存在を確認することができる。
[めっき層]
本実施形態による油井用金属管1は、ピン接触表面400及びボックス接触表面500のいずれか一方の上に酸化ジルコニウム被膜100を備え、ピン接触表面400及びボックス接触表面500の他方の上又は上方にめっき層200を備える。上述のとおり、図8及び図9を参照して、ピン接触表面400上に酸化ジルコニウム被膜100が形成される場合、ボックス接触表面500の上又は上方にめっき層200が形成される。同様に、図10及び図11を参照して、ボックス接触表面500上に酸化ジルコニウム被膜100が形成される場合、ピン接触表面400の上又は上方にめっき層200が形成される。
ここで、ピン接触表面400又はボックス接触表面500の上又は上方にめっき層200が形成されるとは、ピン接触表面400の上にめっき層200が直接形成されてもよく、ボックス接触表面500の上にめっき層200が直接形成されてもよく、ピン接触表面400の上に、他の層が形成され、その上にめっき層200が形成されてもよく、ボックス接触表面500の上に、他の層が形成され、その上にめっき層200が形成されてもよいことを意味する。具体的に、図9を参照して、ボックス接触表面500の上に、他の層350が形成され、その上にめっき層200が形成されていてもよい。また、図10を参照して、ピン接触表面400の上に、直接めっき層200が形成されていてもよい。なお、他の層350については、後述する。
本実施形態において、めっき層200は特に限定されない。めっき層200は、周知のめっき層から適宜選択できる。めっき層200は、たとえば、Cuめっき層であってもよく、Crめっき層であってもよく、Znめっき層であってもよく、Niめっき層であってもよく、Cu-Sn合金めっき層であってもよく、Zn-Co合金めっき層であってもよく、Zn-Ni合金めっき層であってもよく、Ni-P合金めっき層であってもよく、Cu-Sn-Zn合金めっき層であってもよい。好ましくは、めっき層200はZn-Ni合金めっき層である。めっき層200がZn-Ni合金めっき層であれば、その優れた耐摩耗性により、本実施形態による油井用金属管1の耐焼付き性がさらに高まる。
本実施形態ではさらに、めっき層200は複数のめっき層を含む複層のめっき層であってもよい。また、本実施形態において、めっき層200の厚さは特に限定されない。めっき層200の厚さは、たとえば、1~50μmである。
[第1樹脂被膜]
本実施形態による油井用金属管1は、ピン接触表面400及びボックス接触表面500のいずれか一方の上に酸化ジルコニウム被膜100を備え、その酸化ジルコニウム被膜100の上又は上方に第1樹脂被膜310を備える。ここで、酸化ジルコニウム被膜100の上又は上方に第1樹脂被膜310を備えるとは、酸化ジルコニウム被膜100の上に第1樹脂被膜310が直接形成されてもよく、酸化ジルコニウム被膜100の上に、他の層が形成され、その上に第1樹脂被膜310が形成されてもよい。具体的に、図8を参照して、酸化ジルコニウム被膜100の上に、直接第1樹脂被膜310が形成されてもよい。また、図11を参照して、酸化ジルコニウム被膜100の上に、他の層350が形成され、その上に第1樹脂被膜310が形成されてもよい。
本実施形態において、第1樹脂被膜310は特に限定されない。第1樹脂被膜310は、周知の樹脂被膜から適宜選択できる。第1樹脂被膜310の基材は、樹脂である。樹脂の種類は特に限定されず、周知の樹脂を用いることができる。樹脂は、たとえば、熱硬化性樹脂であってもよく、紫外線硬化樹脂であってもよい。具体的に、樹脂は、たとえば、アクリル樹脂であってもよく、シリコン樹脂であってもよく、アクリルシリコン樹脂であってもよく、ウレタン樹脂であってもよく、エポキシ樹脂であってもよく、ふっ素樹脂であってもよく、フェノール樹脂であってもよく、ポリイミド樹脂であってもよく、ポリアミドイミド樹脂であってもよく、ポリアミド樹脂であってもよく、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であってもよい。好ましくは、第1樹脂被膜310は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上である。この場合、熱硬化により樹脂が硬くなり、本実施形態による油井用金属管1の耐焼付き性がさらに高まる。さらに好ましくは、第1樹脂被膜310は、エポキシ樹脂である。
本実施形態による第1樹脂被膜310はさらに、潤滑性材料を含有してもよい。潤滑性材料とは、第1樹脂被膜310の潤滑性を高める材料であれば足り、特に限定されない。潤滑性材料は、たとえば、黒鉛であってもよく、酸化亜鉛であってもよく、窒化ホウ素であってもよく、タルクであってもよく、二硫化モリブデンであってもよく、二硫化タングステンであってもよく、フッ化黒鉛であってもよく、硫化スズであってもよく、硫化ビスマスであってもよく、有機モリブデンであってもよく、チオ硫酸塩であってもよく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよく、メラミンシアヌレート(MCA)であってもよく、パーフルオロポリエーテル(PFPE)であってもよい。また、上述の潤滑性材料を複数種類組合せて含有してもよい。
本実施形態による第1樹脂被膜310は、その他の材料を含有してもよい。たとえば、顔料を含有してもよく、防錆添加剤を含有してもよく、防腐剤を含有してもよい。すなわち、本実施形態では、第1樹脂被膜310は特に限定されず、周知の構成を有していればよい。また、本実施形態において、第1樹脂被膜310の厚さは特に限定されない。第1樹脂被膜310の厚さは、たとえば、1~100μmである。
[第2樹脂被膜]
本実施形態による油井用金属管1は、ピン接触表面400及びボックス接触表面500のいずれか一方の上に酸化ジルコニウム被膜100を備え、ピン接触表面400及びボックス接触表面500の他方の上又は上方にめっき層200を備え、そのめっき層200の上又は上方に第2樹脂被膜320を備える。ここで、めっき層200の上又は上方に第2樹脂被膜320を備えるとは、めっき層200の上に第2樹脂被膜320が直接形成されてもよく、めっき層200の上に、他の層が形成され、その上に第2樹脂被膜320が形成されてもよい。具体的に、図9を参照して、めっき層200の上に、直接第2樹脂被膜320が形成されてもよい。また、図10を参照して、めっき層200の上に、他の層350が形成され、その上に第2樹脂被膜320が形成されてもよい。
本実施形態において、第2樹脂被膜320は特に限定されない。第2樹脂被膜320は、周知の樹脂被膜から適宜選択できる。第2樹脂被膜320の基材は、樹脂である。樹脂の種類は特に限定されず、周知の樹脂を用いることができる。樹脂は、たとえば、フェノール樹脂であってもよく、ウレタン樹脂であってもよく、エポキシ樹脂であってもよく、フラン樹脂であってもよく、ポリイミド樹脂であってもよく、ポリアミドイミド樹脂であってもよく、ポリアミド樹脂であってもよく、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であってもよい。好ましくは、第2樹脂被膜320は、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上である。この場合、熱硬化により樹脂が硬くなり、本実施形態による油井用金属管1の耐焼付き性がさらに高まる。さらに好ましくは、第2樹脂被膜320は、エポキシ樹脂である。
本実施形態による第2樹脂被膜320はさらに、潤滑性材料を含有してもよい。潤滑性材料とは、第2樹脂被膜320の潤滑性を高める材料であれば足り、特に限定されない。潤滑性材料は、たとえば、黒鉛であってもよく、酸化亜鉛であってもよく、窒化ホウ素であってもよく、タルクであってもよく、二硫化モリブデンであってもよく、二硫化タングステンであってもよく、フッ化黒鉛であってもよく、硫化スズであってもよく、硫化ビスマスであってもよく、有機モリブデンであってもよく、チオ硫酸塩であってもよく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよく、メラミンシアヌレート(MCA)であってもよく、パーフルオロポリエーテル(PFPE)であってもよい。また、上述の潤滑性材料を複数種類組合せて含有してもよい。
本実施形態による第2樹脂被膜320は、その他の材料を含有してもよい。たとえば、顔料を含有してもよく、防錆添加剤を含有してもよく、防腐剤を含有してもよい。すなわち、本実施形態では、第2樹脂被膜320は特に限定されず、周知の構成を有していればよい。また、本実施形態において、第2樹脂被膜320の厚さは特に限定されない。第2樹脂被膜320の厚さは、たとえば、1~100μmである。なお、第2樹脂被膜320は、第1樹脂被膜310と同じ構成を有していてもよく、異なる構成を有していてもよい。すなわち、第2樹脂被膜320は、第1樹脂被膜310と、同一の樹脂、同一の潤滑性材料、及び、同一の防腐剤を含有してもよい。第2樹脂被膜320はさらに、第1樹脂被膜310と、異なる樹脂、異なる潤滑性材料、及び、異なる顔料を含有してもよい。
[その他の層]
本実施形態による油井用金属管1は、ピン接触表面400及び/又はボックス接触表面500の上又は上方に、酸化ジルコニウム被膜100と、めっき層200と、第1樹脂被膜310と、第2樹脂被膜320と、以外の層350を備えてもよい。図9を参照して、めっき層200の下層(ボックス接触表面500とめっき層200との間)に、その他の層350を備えてもよい。この場合、たとえば、めっき層200の下層に、化成処理被膜として、リン酸亜鉛被膜を有していてもよい。図10を参照して、めっき層200の上層であって第2樹脂被膜320の下層(めっき層200と第2樹脂被膜320との間)に、その他の層350を備えてもよい。この場合、たとえば、めっき層200の上層に、化成処理被膜として、リン酸亜鉛被膜を有していてもよく、クロメート被膜を有していてもよい。図11を参照して、酸化ジルコニウム被膜100の上層であって第1樹脂被膜310の下層(酸化ジルコニウム被膜100と第1樹脂被膜310との間)に、その他の層350を備えてもよい。
[管本体の化学組成]
本実施形態による油井用金属管1の管本体10の化学組成は、特に限定されない。すなわち、本実施形態において、油井用金属管1の管本体10の鋼種は特に限定されない。管本体10は、たとえば、炭素鋼、ステンレス鋼及び合金等によって形成されていてもよい。つまり、油井用金属管1とは、Fe基合金からなる鋼管であってもよく、Ni基合金管に代表される合金管であってもよい。ここで、鋼管はたとえば、低合金鋼管、マルテンサイト系ステンレス鋼管、二相ステンレス鋼管等である。一方、合金鋼の中でも、Ni基合金及びCr、Ni及びMo等の合金元素を含んだ二相ステンレス鋼等の高合金鋼は、耐食性が高い。そのため、これらの高合金鋼を管本体10として使用すれば、硫化水素や二酸化炭素等を含有する腐食環境において、優れた耐食性が得られる。
[製造方法]
以下、本実施形態による油井用金属管1の製造方法を説明する。
本実施形態による油井用金属管1の製造方法は、準備工程と、ジルコニウム化成処理工程と、めっき工程と、樹脂被膜形成工程とを備える。
[準備工程]
準備工程では、雄ねじ部41を含むピン接触表面400を含むピン40と、雌ねじ部51を含むボックス接触表面500を含むボックス50とを含む管本体10を備える油井用金属管1を準備する。上述のとおり、本実施形態による油井用金属管1は、周知の構成を有する。すなわち、準備工程では、周知の構成を有する油井用金属管1を準備すればよい。
[ジルコニウム化成処理工程]
ジルコニウム化成処理工程では、準備された油井用金属管1に対して、ジルコニウム化成処理を実施して、酸化ジルコニウム被膜100を形成する。ジルコニウム化成処理は、周知の方法を実施することができる。ジルコニウム化成処理の方法は、たとえば、ピン接触表面400又はボックス接触表面500を処理液に浸漬させて実施してもよく、ピン接触表面400又はボックス接触表面500に処理液を散布して実施してもよい。また、ジルコニウム化成処理液は、市販のものを使用することができる。また、ジルコニウム化成処理工程における処理条件は、適宜設定することができる。たとえば、処理液の濃度を3~10g/Lとし、処理液の温度を20~45℃とし、処理時間を30~240秒として、ジルコニウム化成処理を実施することができる。
[めっき工程]
めっき工程では、準備された油井用金属管1のピン接触表面400及びボックス接触表面500のうち、酸化ジルコニウム被膜100が形成されていない方に対して、めっき処理を実施して、めっき層200を形成する。めっき処理は、周知の方法を実施することができる。めっき処理は、たとえば、電気めっきである。
めっき層としてZn-Ni合金めっき層を形成する場合、めっき浴は亜鉛イオン及びニッケルイオンを含有する。めっき浴の組成は、たとえば、Zn:1~100g/L、及び、Ni:1~50g/Lである。電気めっきの条件は、適宜設定することができる。たとえば、めっき浴のpHを1~10とし、めっき浴の温度を30~80℃とし、電流密度を1~100A/dmとし、処理時間を0.1~30分として、めっき処理を実施することができる。
[樹脂被膜形成工程]
樹脂被膜形成工程では、酸化ジルコニウム被膜100が形成された接触表面(400又は500)、及び、めっき層200が形成された接触表面(400又は500)に対して、第1樹脂被膜310及び第2樹脂被膜320を形成する。第1樹脂被膜310及び第2樹脂被膜320を形成する方法は、特に限定されない。すなわち、周知の方法により、第1樹脂被膜310及び第2樹脂被膜320を形成することができる。たとえば、第1樹脂被膜310の組成物を酸化ジルコニウム被膜100が形成された接触表面(400又は500)に塗布した後、乾燥させることで樹脂被膜を形成してもよい。同様に、たとえば、第2樹脂被膜320の組成物をめっき層200が形成された接触表面(400又は500)に塗布した後、乾燥させることで樹脂被膜を形成してもよい。この場合、組成物を塗布する方法は、特に限定されない。たとえば、スプレー塗布であってもよく、刷毛塗りであってもよく、浸漬であってもよい。乾燥させる方法も、特に限定されない。たとえば、60℃で20分加熱することで乾燥させてもよく、空気中に放置することで乾燥させてもよい。
[その他の工程]
本実施形態による油井用金属管1は、製造工程にその他の工程を含んでもよい。たとえば、サンドブラスト処理に代表される下地処理を実施してもよい。たとえばさらに、ジルコニウム化成処理以外の化成処理を実施してもよい。たとえばさらに、クロメート処理を実施してもよい。このように、周知の製造工程をさらに実施してもよい。
以上の工程により、本実施形態による油井用金属管1が製造される。しかしながら、上述する製造方法は、本実施形態による油井用金属管1の製造方法の一例であって、この製造方法に限定されるものではない。本実施形態による油井用金属管1は、他の方法によって製造されてもよい。
以下、実施例により本実施形態の油井用金属管の効果をさらに具体的に説明する。以下の実施例での条件は、本実施形態の油井用金属管の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。したがって、本実施形態の油井用金属管はこの一条件例に限定されない。
実施例1では、油井用金属管として、日本製鉄株式会社製のVAM21(登録商標)を用いた。VAM21(登録商標)は、外径:244.48mm(9インチ5分)、肉厚13.84mmの油井用金属管である。鋼種は、API 5CT規格に記載のP110に相当した。
[試験番号1]
試験番号1では、ピン接触表面に対して、ジルコニウム化成処理を実施して、酸化ジルコニウム被膜を形成した。ジルコニウム化成処理では、処理液として日本パーカライジング株式会社製、商品名パルシード1500を使用した。処理液の濃度は50g/Lとし、処理温度は45℃とし、処理時間を60秒とした。
酸化ジルコニウム被膜が形成された試験番号1のピン接触表面に対してさらに、第1樹脂被膜を形成した。具体的には、エポキシ樹脂を含有する組成物を塗布した。塗布の方法はスプレー塗装とした。塗布後、50℃で5分間加熱して、第1樹脂被膜を乾燥させた。
ボックス接触表面に対して、電気めっき処理を実施して、Zn-Ni合金めっき層を形成した。Zn-Ni合金めっき浴は、大和化成株式会社製の商品名ダインジンアロイN-PLを使用した。電気めっきの条件は、めっき浴のpHを6.5とし、めっき浴の温度を25℃とし、電流密度を2A/dmとし、処理時間を18分とした。なお、めっき浴にはZnが85%、Niが15%含有していた。
Zn-Ni合金めっき層が形成された試験番号1のボックス接触表面に対してさらに、第2樹脂被膜を形成した。具体的には、エポキシ樹脂を含有する組成物を塗布した。塗布の方法はスプレー塗装とした。塗布後、230℃で10分間加熱して、乾燥させた。
[試験番号2]
試験番号2では、ピン接触表面に対して、リン酸亜鉛化成処理を実施して、リン酸亜鉛被膜を形成した。リン酸亜鉛化成処理では、処理液として日本パーカライジング株式会社製、商品名PB-181Xを使用した。処理液の全酸度を45ptとし、処理温度を80℃とし、処理時間を400秒とした。試験番号2のその他の構成は、試験番号1と同様とした。すなわち、試験番号2のピン接触表面は、リン酸亜鉛被膜の上に試験番号1と同様のエポキシ樹脂を含む第1樹脂被膜を形成した。
[耐焼付き性評価試験]
試験番号1及び2に対して、繰り返し締結試験を実施して、耐焼付き性を評価した。試験番号1及び2のピン及びボックスを用いて、室温(20℃)でねじ締め及びねじ戻しを繰り返した。具体的には、締付け速度を10rpmとし、締付けトルクを42.8kN・mとして、ねじ締めを繰り返した。ねじ締めの際にトルクを測定した。試験番号1及び2における、各ねじ締め回数におけるショルダリングトルクを表1に示す。
[評価結果]
表1を参照して、試験番号1は、ピン接触表面の上に酸化ジルコニウム被膜が形成された。その結果、ピン接触表面の上にリン酸亜鉛被膜が形成された油井用金属管と比較して、ねじ締め回数が多くなるほど、ショルダリングトルクが低く抑えられた。すなわち、試験番号1の油井用金属管は、優れた耐焼付き性を示した。
実施例2では、板状試験片に化成処理被膜及び樹脂被膜と、めっき層及び樹脂被膜とを形成して、樹脂被膜の剥離強度を評価した。具体的に、試験片として、板厚0.8mm、サイズ70mm×150mmの冷延鋼板を用いた。試験片として用いた冷延鋼板の鋼種は、JIS G 3141(2017)に規定されるSPCCに相当した。
[試験番号3]
試験番号3の試験片には、実施例1の試験番号1のピン接触表面と同様に、ジルコニウム化成処理を実施して、酸化ジルコニウム被膜を形成した。さらに、実施例1の試験番号1のピン接触表面と同様に、第1樹脂被膜を形成した。ジルコニウム化成処理の方法、及び、第1樹脂被膜の形成方法は、実施例1の試験番号1と同様であった。
[試験番号4]
試験番号4の試験片には、実施例1の試験番号2のピン接触表面と同様に、リン酸亜鉛化成処理を実施して、リン酸亜鉛被膜を形成した。さらに、実施例1の試験番号2のピン接触表面と同様に、第1樹脂被膜を形成した。リン酸亜鉛化成処理の方法、及び、第1樹脂被膜の形成方法は、実施例1の試験番号2と同様であった。
[試験番号5]
試験番号5の試験片には、実施例1の試験番号1のボックス接触表面と同様に、電気めっき処理を実施して、Zn-Ni合金めっき層を形成した。さらに、実施例1の試験番号1のボックス接触表面と同様に、第2樹脂被膜を形成した。電気めっき処理の方法、及び、第2樹脂被膜の形成方法は、実施例1の試験番号1と同様であった。
[鉛筆硬度試験]
試験番号3~5の試験片に対して、JIS K 5600-5-4(1999)に規定される引っかき硬度試験(鉛筆法)を実施して、各試験番号の樹脂被膜の剥離強度を評価した。具体的に、試験番号3~5の試験片に対して、鉛筆の先端が樹脂被膜の上に載った後、直ちに0.5~1.0mm/秒の速度で離れるように7mm以上、鉛筆を押す。傷の有無を肉眼で確認。傷が確認されない場合、鉛筆の芯の硬さを1つ上げ、さらに試験を続行する。このようにして、鉛筆による引っかきによって傷が確認されない鉛筆の芯の硬さと、傷が最初に確認された鉛筆の芯の硬さと、樹脂被膜が剥離した鉛筆の芯の硬さとを得た。各試験番号による鉛筆硬度試験の結果を、表2に示す。
[評価結果]
表2を参照して、試験番号3に示される酸化ジルコニウム被膜の上に形成された樹脂被膜は、試験番号4及び5と比較して剥離しやすいことが確認された。一方、試験番号4に示されるリン酸亜鉛被膜の上に形成された樹脂被膜は、試験番号5に示されるZn-Ni合金めっき層の上に形成された樹脂被膜と、剥離のしやすさが同程度であることが確認された。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 油井用金属管
10 管本体
10A 第1端部
10B 第2端部
11 ピン管体
12 カップリング
40 ピン
41 雄ねじ部
42 ピンシール面
43 ピンショルダ面
50 ボックス
51 雌ねじ部
52 ボックスシール面
53 ボックスショルダ面
100 酸化ジルコニウム被膜
200 めっき層
310 第1樹脂被膜
320 第2樹脂被膜
400 ピン接触表面
500 ボックス接触表面

Claims (3)

  1. 油井用金属管であって、
    第1端部と第2端部とを含む管本体を備え、
    前記管本体は、
    前記第1端部に形成されているピンと、
    前記第2端部に形成されているボックスとを含み、
    前記ピンは、
    雄ねじ部を含むピン接触表面を含み、
    前記ボックスは、
    雌ねじ部を含むボックス接触表面を含み、
    前記油井用金属管はさらに、
    前記ピン接触表面及び前記ボックス接触表面のうち、いずれか一方の上に形成される、酸化ジルコニウム被膜と、
    前記酸化ジルコニウム被膜の上又は上方に形成される、第1樹脂被膜と、
    前記ピン接触表面及び前記ボックス接触表面のうち、他方の上又は上方に形成される、めっき層と、
    前記めっき層の上又は上方に形成される、第2樹脂被膜とを有する、
    油井用金属管。
  2. 請求項1に記載の油井用金属管であって、
    前記酸化ジルコニウム被膜は、前記ピン接触表面の上に形成され、
    前記めっき層は、前記ボックス接触表面の上又は上方に形成される、
    油井用金属管。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の油井用金属管であって、
    前記めっき層は、Zn-Ni合金めっき層である、
    油井用金属管。
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