JP7736077B2 - 銅合金、銅合金塑性加工材、電子・電気機器用部品、端子、バスバー、リードフレーム - Google Patents
銅合金、銅合金塑性加工材、電子・電気機器用部品、端子、バスバー、リードフレームInfo
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Description
本願は、2021年10月12日に、日本に出願された特願2021-167385号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
最近では、電子機器や電気機器等においては、自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用されることがあり、さらに、大電流が負荷される傾向にある。
また、端子、特にメス端子は、オス端子との接続を維持するためのばねを有するが、高温環境で使用した際には、クリープ現象によりへたりを生じ、接続信頼性を劣化させるおそれがあった。そのため、ばねには、へたり難さを表す耐応力緩和特性が求められる。
しかしながら、耐応力緩和特性は、強度とトレードオフの関係にあり、両立は困難であった。
そこで、特許文献1には、Mgを0.005mass%以上0.1mass%未満の範囲で含む銅圧延板が開示されている。
また、上述の電子・電気用部品は、従来にも増して厳しい高温環境下での使用されており、さらなる強度および耐応力緩和特性の向上が求められている。
添加元素であるMgを利用してコットレル雰囲気を形成し、転位の安定化を図ることにより、強度を維持しつつ、耐応力緩和特性を向上させることが可能である。さらに、転位を安定配置することで、応力集中を避け、伸びの改善につながる。
そして、Mgにより転位を安定化させた場合には、低速引張試験を行った際に、応力-ひずみ曲線の塑性域において、刃状曲線(セレーション)が生じる。
[1]Mgを0.10mass%以上2.6mass%以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物である組成を有し、ひずみ速度1.0×10-6/sの低速引張試験で得られる応力-ひずみ曲線の塑性変形域において、周期的な応力の変動のうち、1つの応力の極小点Aからその応力の極小点Aに隣接する別の応力の極小点Bまでの曲線を1つの刃状曲線(但し、極小点Bは含まない)として、刃状曲線のひずみの周期の平均値が0.01%以上1.0%以下であり、刃状曲線の応力の高低差の平均値が0.1MPa以上2MPa以下であり、かつひずみの周期が0.01%以上1.0%以下および応力の高低差が0.1MPa以上2MPa以下の刃状曲線を5個以上有することを特徴とする銅合金。
この場合、結晶粒径(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.95以下とされているので、加工によって十分に転位が導入されており、これらの転位がMgによって安定化されることで、強度を維持しつつ、さらに耐応力緩和特性を向上させることができるとともに、伸びを改善させ、さらに曲げ加工性を向上させることができる。
この場合、引張強度が350MPa以上とされているので、容易に変形することがなく、コネクタやプレスフィット等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品の銅合金として特に適している。
σ≦1.7680/(-0.0200×A2+0.5769×A+1.7)×100
この場合、導電率σが上述のように規定されているので、添加されたMgが銅母相中に十分に固溶しており、Mgを含む析出物の生成が抑制されている。よって、曲げ加工性をさらに向上させることができる。
この場合、Pの含有量が0.001mass%以上とされているので、鋳造性を向上させることが可能となる。また、Pの含有量が0.1mass%以下とされているので、Pを添加した場合であっても導電率が大きく低下することを抑制できる。
σ≦1.7680/(-0.0200×AX 2+0.5769×AX+1.7)×100
MgとPとが共添加されている場合には母相内にMg3P2が生成されるため、Mgの固溶度合を評価する際には、Mgの含有量ではなく、Mg当量AX=(A-1.5×B)で、導電率を規定する必要がある。
そして、導電率σが、Mg当量AXを用いて上述のように規定されているので、添加されたMgが銅母相中に十分に固溶しており、Mgを含む析出物の生成が抑制されている。よって、曲げ加工性をさらに向上させることができる。
この構成の銅合金塑性加工材によれば、上述の銅合金で構成されていることから、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性に優れており、大電流用途、高温環境下で使用される端子、バスバー、リードフレーム等の電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
この場合、厚さが0.1mm以上10mm以下の範囲内の圧延板であることから、この銅合金塑性加工材(圧延板)に対して打ち抜き加工や曲げ加工を施すことで、端子、バスバー、リードフレーム等の電子・電気機器用部品を成形することができる。
この場合、表面に金属めっき層を有しているので、端子、バスバー、リードフレーム等の電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
なお、金属めっき層としては、例えば、Snめっき、Agめっき、Niめっき、Auめっき、Pdめっき、Rhめっき等が挙げられる。また、本発明の一態様においては、「Snめっき」は純Snめっき又はSn合金めっき、「Agめっき」は純Agめっき又はAg合金めっき、「Niめっき」は純Niめっき又はNi合金めっき、「Auめっき」は純Auめっき又はAu合金めっき、「Pdめっき」は純Pdめっき又はPd合金めっき、「Rhめっき」は純Rhめっき又はRh合金めっき、を含む。
この場合、結晶粒径(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.95以下とされているので、圧延加工によって十分に転位が導入されており、これらの転位がMgによって安定化されることで、強度を維持しつつ、さらに耐応力緩和特性を向上させることができるとともに、伸びを改善させ、さらに曲げ加工性を向上させることができる。
この構成の電子・電気機器用部品は、上述の銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
この構成の端子は、上述の銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
この構成のバスバーは、上述の銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
この構成のリードフレームは、上述の銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
本実施形態である銅合金は、Mgを0.10mass%以上2.6mass%以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物である組成を有する。
なお、本実施形態である銅合金においては、さらにPを0.0005mass%以上0.1mass%以下の範囲内で含有していてもよい。
本実施形態である銅合金のひずみ速度1.0×10-6/sの低速引張試験で得られる応力-ひずみ曲線の一例を図1A、図1Bに示す。図1A、図1Bに示すように、塑性変形域において、ひずみが増加するにつれて応力が周期的に上下することで、刃状曲線(セレーション)が形成されている。
さらに、本実施形態である銅合金においては、引張強度が350MPa以上であることが好ましい。
σ≦1.7680/(-0.0200×A2+0.5769×A+1.7)×100
σ≦1.7680/(-0.0200×AX 2+0.5769×AX+1.7)×100
Mgは、銅の母相中に固溶することで、導電率を大きく低下させることなく、耐応力緩和特性を向上させる作用効果を有する元素である。また、Mgを利用してコットレル雰囲気を形成し、転位を安定化させることで、強度、耐応力緩和特性、および、伸びの向上を図ることが可能となる。
ここで、Mgの含有量が0.10mass%未満の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることができなくなるおそれがある。一方、Mgの含有量が2.6mass%を超える場合には、製造負荷の増大によるコストアップ、歩留の低下を招くため、工業製品として適さない。
以上のことから、本実施形態では、Mgの含有量を0.10mass%以上2.6mass%以下の範囲内に設定している。
また、製造コストの増加および歩留の低下をさらに抑制するためには、Mgの含有量の上限を2.5mass%未満とすることが好ましく、2.4mass%未満とすることがさらに好ましく、2.3mass%未満とすることがより好ましい。
本実施形態である銅合金において、Pを0.0005mass%以上含有する場合には、湯流れ性が向上し、鋳造性が向上することになる。一方、Pの含有量を0.1mass%以下に制限することで、導電率が大きく低下することを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態である銅合金において、鋳造性をさらに向上させるためには、Pの含有量の下限を0.0006mass%以上とすることがさらに好ましく、0.0007mass%以上とすることがより好ましい。また、導電率の低下をさらに抑制するためには、Pの含有量の上限を0.095mass%以下とすることがさらに好ましく、0.092mass%以下とすることがより好ましい。
なお、本実施形態である銅合金においては、Pを不純物として含有する場合には、Pを0.0005mass%未満で含有していてもよい。
上述した元素以外のその他の不可避的不純物としては、Ag,Al,B,Ba,Be,Ca,Cd,Cr,Sc,希土類元素,V,Nb,Ta,Mo,Ni,W,Mn,Re,Ru,Sr,Ti,Os,Co,Rh,Ir,Pb,Pd,Pt,Au,Zn,Zr,Hf,Hg,Ga,In,Ge,Y,Tl,N,Si,Sn,Li,S,Se,Te,SbBi,As等が挙げられる。これらの不可避不純物は、特性に影響を与えない範囲で含有されていてもよい。
また、これらの不可避不純物のそれぞれの含有量の上限は、10massppm以下とすることが好ましく、5massppm以下とすることがさらに好ましく、2massppm以下とすることがより好ましい。
本実施形態である銅合金においては、上述のように、Mgを利用してコットレル雰囲気を形成し、転位の安定化を図ることにより、強度を維持しつつ、耐応力緩和特性を向上させている。
ここで、ひずみ速度1.0×10-6/sの低速引張試験を行った際には、Mgにより安定化した転位を別の転位が乗り越える際に、応力変化が生じ、応力-ひずみ曲線に刃状曲線(セレーション)が発現することになる。
なお、本実施形態では、前記の低速引張試験で得られた応力-ひずみ曲線において、応力が0.2%耐力σ0.2以上の領域を塑性変形域とする。この塑性変形域において、以下の要件(1),(2)を満たす場合に、本実施形態で規定する刃状曲線(セレーション)がありと判断する。これにより、試験設備で発生するノイズや外的要因による突発的な変動と区別することができる。
(1)刃状曲線のひずみの周期の平均値が0.01%以上1.0%以下であり、刃状曲線の応力の高低差の平均値が0.1MPa以上2MPa以下である。
(2)ひずみの周期が0.01%以上1.0%以下であり、かつ応力の高低差が0.1MPa以上2MPa以下の刃状曲線を5個以上有する。
応力-ひずみ曲線において、周期的な応力の変動のうち、1つの応力の極小点Aからその応力の極小点Aに隣接する別の応力の極小点Bまでの曲線が1つの刃状曲線である(但し、極小点Bは含まない)。1つの刃状曲線には、1つの応力の極小点(谷部)と1つの応力の極大点(山部)が存在する。ひずみの周期は、2つの隣接する応力の極小点(谷部)のひずみの差である。応力の高低差は、1つの刃状曲線における応力の極大点(山部)と極小点(谷部)の応力の差である。
ひずみの周期の平均値は、塑性変形域における全ての刃状曲線のひずみの周期の平均値であり、応力の高低差の平均値は、塑性変形域における全ての刃状曲線の応力の高低差の平均値である。
ひずみの周期の平均値は、0.95%以下であることが好ましく、0.90%以下であることがより好ましい。またひずみの周期の平均値は、0.02%以上であることが好ましく、0.03%以上であることがより好ましい。応力の高低差の平均値は、1.90MPa以下であることが好ましく、1.80MPa以下であることがより好ましい。また応力の高低差の平均値は、0.10MPa以上であることが好ましい。
本実施形態である銅合金においては、上述のように、Mgによって転位の安定化を図ることにより、強度、耐応力緩和特性および伸びの向上を図っていることから、転位を十分に有することが好ましい。
ここで、結晶粒(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.95以下となる結晶粒を形成させる場合には、十分に転位が存在することになり、強度、耐応力緩和特性および伸びのさらなる向上を図ることが可能となる。アスペクト比b/aが0.95より大きくなると、十分な転位を有しておらず、Mgによる転位の安定化を得ることができない。
なお、本実施形態においては、結晶粒(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.93以下であることがさらに好ましく、0.90以下であることがより好ましい。またアスペクト比b/aは、0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。
本実施形態である銅合金において、引張強度が350MPa以上である場合には、強度が十分に確保されており、端子、バスバー、リードフレーム等の電子・電気機器用部品の素材として特に適するものとなる。なお、本実施形態における引張強度は、圧延方向に平行な方向における引張強度とされている。
ここで、本実施形態においては、上述の引張強度は、360MPa以上であることがさらに好ましく、370MPa以上であることがより好ましい。また、本実施形態においては、引張強度(圧延方向に平行な方向における引張強度)の上限は定めないが、コイル巻きされた条材を用いる際のコイルの巻き癖による生産性低下を回避するため、引張強度は2000MPa以下とすることが好ましい。より好ましくは1700MPa以下、さらに好ましくは1500MPa以下とする。
本実施形態の銅合金においては、Mgが十分に固溶している場合には、Mgの析出物の発生を抑制でき、曲げ加工性をさらに向上させることが可能となる。
ここで、Mgの含有量をA原子%としたときに、導電率σ(%IACS)が以下の関係式を満たすことにより、Mgが銅母相中に十分に固溶しており、曲げ加工性をさらに向上させることができる。
σ≦1.7680/(-0.0200×A2+0.5769×A+1.7)×100
そこで、Mgの含有量をA原子%、Pの含有量をB原子%とし、Mg当量AXを、AX=(A-1.5×B)としたときに、導電率σ(%IACS)が以下の関係式を満たすことにより、Mgが銅母相中に十分に固溶しており、曲げ加工性をさらに向上させることができる。
σ≦1.7680/(-0.0200×AX 2+0.5769×AX+1.7)×100
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、各種元素の添加には、元素単体や母合金等を用いることができる。また、上述の元素を含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。ここで、銅溶湯は、純度が99.99mass%以上とされたいわゆる4NCu、あるいは純度が99.999mass%以上とされたいわゆる5NCuとすることが好ましい。
溶解工程では、Mgの酸化を抑制するため、また水素濃度の低減のため、H2Oの蒸気圧が低い不活性ガス雰囲気(例えばArガス)による雰囲気溶解を行い、溶解時の保持時間は最小限に留めることが好ましい。
この際、溶湯の凝固時に、MgとPを含む晶出物が形成されるため、凝固速度を速くすることで晶出物サイズをより微細にすることが可能となる。そのため、溶湯の冷却速度は0.1℃/sec以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.5℃/sec以上であり、最も好ましくは1℃/sec以上である。
次に、得られた鋳塊の均質化および溶体化のために加熱処理を行う。鋳塊の内部には、凝固の過程においてMgが偏析して濃縮することにより発生したCuとMgを主成分とする金属間化合物等が存在することがある。そこで、これらの偏析および金属間化合物等を消失または低減させるために、鋳塊を300℃以上900℃以下にまで加熱する加熱処理を行うことで、鋳塊内において、Mgを均質に拡散させたり、Mgを母相中に固溶させたりする。なお、この均質化/溶体化工程S02は、非酸化性または還元性の雰囲気中で実施することが好ましい。
なお、後述する粗圧延の効率化と組織の均一化のために、前述の均質化/溶体化工程S02の後に熱間加工を実施してもよい。この場合、加工方法に特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。また、熱間加工温度は、300℃以上900℃以下の範囲内とすることが好ましい。
所定の形状に加工するために、粗加工を行う。なお、この粗加工工程S03における温度条件は特に限定はないが、再結晶を抑制するために、あるいは寸法精度の向上のため、冷間または温間での圧延となる-200℃から200℃の範囲内とすることが好ましく、特に常温が好ましい。加工率については、20%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。また、加工方法については、特に限定はなく、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。
粗加工工程S03後に、溶体化の徹底、再結晶組織化または加工性の向上のための軟化を目的として熱処理を実施する。熱処理の方法は特に限定はないが、好ましくは400℃以上900℃以下の保持温度、10秒以上10時間以下の保持時間で、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で熱処理を行う。また、加熱後の冷却方法は、特に限定しないが、水焼入など冷却速度が200℃/min以上となる方法を採用することが好ましい。
なお、粗加工工程S03および中間熱処理工程S04は、繰り返し実施してもよい。
中間熱処理工程S04後の銅素材を所定の形状に加工するため、上前加工を行う。なお、この上前加工工程S05における温度条件は特に限定はないが、加工時の再結晶を抑制するため、または軟化を抑制するために、冷間または温間での加工となる-200℃から200℃の範囲内とすることが好ましく、特に常温が好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、加工硬化によって強度を向上させるため5%以上とすることが好ましい。
また、加工方法については、特に限定はなく、例えば圧延、引抜、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。
上前加工工程S05によって得られた塑性加工材に対し、Mgによる転位固着および転位再配列による安定化を目的として上前熱処理を実施する。熱処理温度は、100℃以上800℃以下の範囲内となることが好ましい。なお、再結晶による強度の大幅な低下を避けるように、熱処理条件(温度、時間、冷却速度)を設定する必要がある。例えば300℃では1秒以上120秒以下保持することが好ましい。この熱処理は、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
熱処理の方法は特に限定はないが、製造コスト低減の効果から、連続焼鈍炉による短時間の熱処理が好ましい。さらに、上述の上前加工工程S05および上前熱処理工程S06を繰り返し実施してもよい。
上前熱処理工程S06を実施した塑性加工材に対し、さらなるMgによる転位固着・安定化によるセレーションの発現のため、軽加工率での塑性加工を施す。なお、この軽加工工程S07における温度条件は特に限定はないが、再結晶を抑制するために、あるいは寸法精度の向上のため、冷間または温間での圧延となる-200℃から200℃の範囲内とすることが好ましく、特に常温が好ましい。
また、軽加工工程S07では、高加工率にすると耐応力緩和特性の低下を招くため、総加工率を5%以上50%以下の範囲内とし、1パス毎の加工率を20%以下に制限することが好ましい。さらに、軽加工率の場合、均一に変形させることが困難になり板形状を悪化させる原因になるため、長手方向に張力を50MPa以上かけながら圧延を施すことが好ましい。
最後に、軽加工工程S07によって得られた塑性加工材に対し、さらなるMgによる転位固着および転位再配列による安定化を目的として仕上熱処理を実施する。熱処理温度は、100℃以上800℃以下の範囲内とすることが好ましい。なお、再結晶による強度の大幅な低下を避けるように、熱処理条件(温度、時間、冷却速度)を設定する必要がある。例えば300℃では1秒以上120秒以下保持することが好ましい。この熱処理は、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
熱処理の方法は特に限定はないが、製造コスト低減の効果から、連続焼鈍炉による短時間の熱処理が好ましい。さらに、上述の軽加工工程S07および仕上熱処理工程S08を、繰り返し実施してもよい。
このため、銅合金塑性加工材(銅合金圧延材)の板厚は0.1mm以上10.0mm以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、銅合金塑性加工材(銅合金圧延材)の板厚の下限は0.5mm以上とすることが好ましく、1.0mm以上とすることがより好ましい。一方、銅合金塑性加工材(銅合金圧延材)の板厚の上限は9.0mm未満とすることが好ましく、8.0mm未満とすることがより好ましい。
なお、本実施形態において、上述のアスペクト比b/aは0.93以下であることがさらに好ましく、0.90以下であることがより好ましい。
σ≦1.7680/(-0.0200×A2+0.5769×A+1.7)×100
σ≦1.7680/(-0.0200×AX 2+0.5769×AX+1.7)×100
得られた鋳塊に対して、Arガス雰囲気中において、715℃の温度条件で4時間の加熱を行う加熱工程を実施し、その後、水焼き入れを実施した。
得られた鋳塊から測定試料を採取し、Mg量は誘導結合プラズマ発光分光分析法で測定し、その他の元素の量はグロー放電質量分析装置(GD-MS)を用いて測定した。
なお、測定は、試料中央部と幅方向端部の2カ所から試料を採取して行い、含有量の多い方をそのサンプルの含有量とした。その結果、表1に示す成分組成であることを確認した。表1の項目“Mg当量”は、Mg当量AXであり、Mgの含有量をA原子%、Pの含有量をB原子%とすると、AX=(A-1.5×B)で算出される値である。
特性評価用条材からJIS Z 2201に規定される13B号試験片を採取し、ひずみ速度1.0×10-6/sの低速引張試験を実施した。この低速引張試験により、引張強度および伸びを測定した。
なお、試験片は、引張試験の引張方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
得られたデータで、JIS Z 2241のオフセット法により測定される0.2%耐力σ0.2以降の曲線(塑性変形域)において、刃状曲線(周期的な応力の変動)の有無を確認した。表4,5の項目“有無”では、ひずみの周期、応力の高低差が実施形態に記載の範囲外であっても刃状曲線が存在する場合には“有”と記載した。
そして、これらの刃状曲線が認められたものについては、塑性変形域における刃状曲線のひずみの周期の平均値、刃状曲線の応力の高低差の平均値、および、刃状曲線の個数を表4,5に記載した。
なお、塑性変形域における各刃状曲線のひずみの周期を測定し、それらの合計を刃状曲線の個数で割って平均値を算出し、その平均値を刃状曲線のひずみの周期の平均値とした。同様に、塑性変形域における各刃状曲線の応力の高低差を測定し、それらの合計を刃状曲線の個数で割って平均値を算出し、その平均値を刃状曲線の応力の高低差の平均値とした。
また、刃状曲線の個数は、塑性変形域において、ひずみの周期が0.01%以上1.0%以下であり、かつ応力の高低差が0.1MPa以上2MPa以下の刃状曲線の個数である。
特性評価用条材の圧延方向に対して垂直な面、すなわちRD(roll direction)面に対し、耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.5.3)によって、電子線の加速電圧20kV、測定間隔0.1μmステップで1000μm2以上の測定面積で、CI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒(双晶を含む)の方位差の解析を行った。隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を粒界として、各結晶粒の結晶粒径の長径をa、短径をbとしたとき、b/aであらわされるアスペクト比を測定した。また、アスペクト比の測定では、EBSD上のGrain Sizeとして、Grain Tolerance Angleを5°とし、Minimum Grain Sizeを2ピクセルとした。そして結晶粒のアスペクト比の平均値を算出し、その平均値を試料のアスペクト比とした。
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
耐応力緩和特性試験は、日本伸銅協会技術標準JCBA-T309:2004の片持はりねじ式に準じた方法によって応力を負荷し、150℃の温度で1000時間保持後の残留応力率を測定した。
試験方法としては、各特性評価用条材から圧延方向に対して平行な方向に試験片(幅10mm)を採取し、試験片の表面最大応力が耐力の80%となるよう、初期たわみ変位を2mmと設定し、スパン長さを調整した。上記表面最大応力は次式で定められる。
表面最大応力(MPa)=1.5Etδ0/Ls 2
ただし、E,t,δ0,Lsは以下の値を示す。
E:ヤング率(MPa)
t:試料の厚さ(mm)
δ0:初期たわみ変位(mm)
Ls:スパン長さ(mm)
残留応力率(%)=(1-δt/δ0)×100
ただし、δt,δ0は以下の値を示す。
δt:(150℃で1000時間保持後の永久たわみ変位(mm))-(常温で24時間保持後の永久たわみ変位(mm))
δ0:初期たわみ変位(mm)
日本伸銅協会技術標準のJBMA-T307:2007の4試験方法に準拠して曲げ加工を行った。圧延方向と試験片の長手方向が平行になるように、特性評価用条材から幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、曲げ角度が90度、曲げ半径が0.5mmのW型の治具を用い、W曲げ試験を行った。
そして、曲げ部の外周部を目視で確認し、破断した場合は“×”(poor)と判定し、一部のみ破断が起きた場合は“△”(fair)と判定した。破断が起きず微細な割れのみが生じた場合は“○”(good)と判定し、破断や微細な割れを確認できない場合を“◎”(excellent)と判定した。
以上のことから、本発明例によれば、高い強度と優れた耐応力緩和特性を有するとともに、曲げ加工性に優れた銅合金を提供可能であることが確認された。
Claims (13)
- Mgを0.10mass%以上2.6mass%以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物である組成を有し、
ひずみ速度1.0×10-6/sの低速引張試験で得られる応力-ひずみ曲線の塑性変形域において、周期的な応力の変動のうち、1つの応力の極小点Aからその応力の極小点Aに隣接する別の応力の極小点Bまでの曲線を1つの刃状曲線(但し、極小点Bは含まない)として、
刃状曲線のひずみの周期の平均値が0.01%以上1.0%以下であり、刃状曲線の応力の高低差の平均値が0.1MPa以上2MPa以下であり、かつひずみの周期が0.01%以上1.0%以下および応力の高低差が0.1MPa以上2MPa以下の刃状曲線を5個以上有することを特徴とする銅合金。 - EBSD法により、1000μm2以上の測定面積を測定間隔0.1μmステップで測定して、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析したとき、結晶粒径(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.95以下であることを特徴とする請求項1に記載の銅合金。
- 引張強度が350MPa以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅合金。
- Mgの含有量をA原子%としたときに、導電率σ(%IACS)が以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅合金。
σ≦1.7680/(-0.0200×A2+0.5769×A+1.7)×100 - さらにPを0.0005mass%以上0.1mass%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅合金。
- Mgの含有量をA原子%、Pの含有量をB原子%とし、Mg当量AXを、AX=(A-1.5×B)とした場合に、導電率σ(%IACS)が以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項5に記載の銅合金。
σ≦1.7680/(-0.0200×AX 2+0.5769×AX+1.7)×100 - 請求項1または請求項2に記載の銅合金からなることを特徴とする銅合金塑性加工材。
- 厚さが0.1mm以上10mm以下の範囲内の圧延板であることを特徴とする請求項7に記載の銅合金塑性加工材。
- 表面に金属めっき層を有することを特徴とする請求項7に記載の銅合金塑性加工材。
- 請求項7に記載された銅合金塑性加工材からなることを特徴とする電子・電気機器用部品。
- 請求項7に記載された銅合金塑性加工材からなることを特徴とする端子。
- 請求項7に記載された銅合金塑性加工材からなることを特徴とするバスバー。
- 請求項7に記載された銅合金塑性加工材からなることを特徴とするリードフレーム。
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