以下、本発明に係る液圧回転機の実施形態を、可変容量型の斜板式油圧モータに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図15を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示している。図1において、可変容量型の斜板式油圧モータ1(以下、油圧モータ1)は、油圧管路を介して油圧ポンプ(いずれも図示せず)に接続され、油圧ポンプから供給される作動油(圧油)によって回転軸4を回転させる。油圧モータ1は、後述のケーシング2、回転軸4、ロータ7、斜板12、弁板15等によって構成されている。
ケーシング2は、油圧モータ1の外殻を構成している。ケーシング2は、筒部2Aと底部2Bとによって有底筒状に形成され、筒部2Aの開口端側は、蓋体3によって閉塞されている。底部2Bには、軸挿通孔2Cが形成されている。ケーシング2の内部には、回転軸4、ロータ7、斜板12、弁板15等が収容されている。
回転軸4は、ケーシング2の筒部2A内に設けられ、ケーシング2に対し軸中心A-Aを中心として回転可能となっている。回転軸4の軸方向の一端側は、軸挿通孔2Cに取付けられた軸受5を介してケーシング2の底部2Bに支持され、回転軸4の軸方向の他端側は、軸受6を介して蓋体3に支持されている。
ロータ7は、ケーシング2の筒部2A内に回転可能に設けられている。ロータ7は円筒状をなし、ロータ7の中心部には、軸方向に貫通する中心孔7Aと孔スプライン7Bとが同心上に形成されている。ロータ7の中心孔7Aには回転軸4が挿通され、回転軸4の中間部位はロータ7の孔スプライン7Bにスプライン結合されている。これにより、ロータ7は、回転軸4と一体に回転する。ロータ7には、周方向に離間して軸方向に伸長する複数のシリンダ8と、これら複数のシリンダ8にそれぞれ連通し、後述する凹型曲面部7Cに開口する複数のシリンダポート9とが形成されている。
複数のピストン10(2本のみ図示)は、ロータ7に形成された複数のシリンダ8内に、それぞれ往復動可能に挿嵌されている。シリンダ8から突出したピストン10の先端(突出端)には、円板状のシュー11が揺動可能に取付けられている。シュー11は、ピストン10によって斜板12の摺動面12Aに押圧されることにより、ロータ7の回転に伴って摺動面12A上を環状の軌跡を描くように摺動する。
斜板12は、ケーシング2の底部2Bとロータ7との間に位置してケーシング2内に設けられている。斜板12は、回転軸4を取囲む円板状に形成されている。斜板12のうち底部2Bに対面する裏面側は、ケーシング2の底部2Bに突設された凸円弧面状の斜板支持部材13により傾転可能に支持されている。一方、斜板12のうちロータ7に対向する面は平坦な摺動面12Aとなり、この摺動面12Aは、ロータ7の回転時に、ピストン10の先端に取付けられたシュー11が環状の軌跡を描くように摺動する。
傾転アクチュエータ14は、ケーシング2の底部2Bと斜板12との間に設けられている。傾転アクチュエータ14は、底部2Bに形成された傾転シリンダ14Aと、傾転シリンダ14A内に挿嵌された傾転ピストン14Bとにより構成されている。傾転アクチュエータ14は、傾転シリンダ14Aに圧油(傾転制御圧)が供給されることにより、傾転ピストン14Bによって斜板12を押圧する。これにより、斜板12は、斜板支持部材13を支点として底部2Bに対して傾転し、その傾斜角度に応じてピストン10のストローク量を変化させることにより、油圧モータ1の回転数を可変に制御する。
弁板15は、蓋体3とロータ7との間に位置してケーシング2内に設けられている。弁板15は、ノックピン(図示せず)等を用いて蓋体3に取付けられている。弁板15は、ロータ7に形成された複数のシリンダ8と間欠的に連通する一対の給排ポート16を有し、これら一対の給排ポート16は、蓋体3に形成された一対の給排通路(図示せず)にそれぞれ連通している。弁板15のうちロータ7と対向する端面には、凸型曲面部15Aが形成されている。
次に、第1の実施形態によるロータ7の凹型曲面部7Cの形状、および弁板15の凸型曲面部15Aの形状について、図2ないし図5を参照して説明する。
凹型曲面部7Cは、ロータ7のうち弁板15と対面する端面に設けられている。この凹型曲面部7Cには、ロータ7に形成された複数のシリンダポート9が開口している。ロータ7の凹型曲面部7Cは、ロータ7の回転中心となる回転軸4の軸中心A-A上の点Bを中心(円弧中心)とした一様な円弧半径SRrを有する円弧状の断面形状を有している。即ち、ロータ7の凹型曲面部7Cは、軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成されている。
凸型曲面部15Aは、弁板15のうちロータ7と対面する端面に設けられている。凸型曲面部15Aは、例えば弁板15の表面に銅合金を溶着して形成され、ロータ7の凹型曲面部7Cが摺動可能に当接する。弁板15の凸型曲面部15Aは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bに対し、回転軸4の半径方向(軸中心A-Aと直交する方向)に長さσだけ移動させた点Cを円弧中心とした一様な円弧半径SRpを有する円弧状の断面形状を有している。即ち、ロータ7の凹型曲面部7C、および弁板15の凸型曲面部15Aのうち一方である凸型曲面部15Aは、回転軸4の半径方向に長さσだけずれた円弧中心をもつ円弧が回転軸4を中心に回転することで得られる曲面を有している。具体的には、凸型曲面部15Aは、軸中心A-A上の点Bから長さσだけ回転軸4の半径方向に移動させた点Cを中心とした円弧が、回転軸4を中心に回転することで得られた曲面を有する円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。この場合、凹型曲面部7Cの円弧半径SRrと凸型曲面部15Aの円弧半径SRpとは、下記数1の関係となっている。
このように、ロータ7の凹型曲面部7Cは、軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成され、弁板15の凸型曲面部15Aは、点Bから回転軸4の半径方向に長さσだけずれた点Cを円弧中心とした円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。
ここで、凸型曲面部15Aの円弧中心Cの、回転軸4の軸中心A-Aからの移動量σの算出方法について説明する。
図3は、ロータ7の凹型曲面部7Cと弁板15の凸型曲面部15Aの形状を概念的に示したもので、凹型曲面部7Cと凸型曲面部15Aとが、回転軸4の軸中心A-A上に間隔をもって配置された状態を示している。図3において、ロータ7の凹型曲面部7Cは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成されている。また、図3中に二点鎖線で示す仮想の弁板の凸型曲面部15A′は、点Bを円弧中心とした円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。凹型曲面部7Cの円弧半径SRrは、凸型曲面部15A′の円弧半径SRpよりも大きく設定されている(SRr>SRp)。
ここで、凹型曲面部7Cに開口したシリンダポート9の中心をDとし、点Bと点Dとを結ぶ直線をEとし、直線Eと凸型曲面部15A′との交点をFとする。図4に拡大して示すように、点Dと交点Fとの間には、半径方向においてSRr-SRpの間隔が形成されると共に、回転軸4の半径方向に長さσの間隔が形成されている。従って、直線Eと凸型曲面部15A′との交点Fを、回転軸4の半径方向に長さσだけ移動させることにより、凸型曲面部15A′を、シリンダポート9の中心Dの位置で凹型曲面部7Cに当接させることができる。この場合、直線Eと軸中心A-Aとがなす角度をθとすると、移動量σは、下記数2によって算出される。
このようにして、凸型曲面部15Aは、仮想の凸型曲面部15A′の円弧中心となる点Bを、回転軸4の半径方向に長さσだけずれた点Cを円弧中心とした円弧半径SRpの凸円弧面として形成され、凸型曲面部15Aと直線Eとの交点Fは、シリンダポート9の中心Dの位置で凹型曲面部7Cに当接する。このため、弁板15に形成される給排ポート16を、交点Fの位置に開口させることにより、凹型曲面部7Cが凸型曲面部15Aに当接した状態で、凹型曲面部7Cのうちシリンダポート9が開口する部位と、凸型曲面部15Aのうち給排ポート16が開口する部位とを接触させることができる。これにより、図5に示すように、ロータ7の凹型曲面部7C、および弁板15の凸型曲面部15Aは、凹型曲面部7Cのうち複数のシリンダポート9が開口する部位と凸型曲面部15Aのうち給排ポート16が開口する部位とにおいて、互いに接触した状態で相対回転する環状の摺動領域19を有している。これにより、ロータ7のシリンダポート9と弁板15の給排ポート16とを位置合わせすることができ、シリンダポート9と給排ポート16との間のシール性を確保することができる構成となっている。
第1の実施形態による油圧モータ1は、上述の如き構成を有するもので、油圧ポンプから吐出した圧油は、油圧管路から弁板15の給排ポート16、ロータ7のシリンダポート9を通じてシリンダ8内に供給される。これにより、シリンダ8内に挿嵌されたピストン10がロータ7から斜板12側に伸長し、ピストン10の先端に設けられたシュー11が、斜板12を押圧しつつ斜板12の摺動面12Aを環状の軌跡を描くように摺動する。これにより、ロータ7が回転し、ロータ7にスプライン結合された回転軸4が回転し、この回転軸4のトルクを減速機等によって増大させることにより、油圧ショベルの走行装置や旋回装置を駆動することができる。
ここで、本実施形態では、ロータ7に形成された凹型曲面部7Cの凹円弧面の円弧半径SRrが、弁板15に形成された凸型曲面部15Aの凸円弧面の円弧半径SRpよりも大きく設定されている(SRr>SRp)。さらに、図2に示すように、凸型曲面部15Aは、回転軸4の半径方向に長さσだけずれた円弧中心をもつ円弧が回転軸4を中心に回転することで得られる曲面、即ち、軸中心A-A上の点Bから長さσだけ回転軸4の半径方向にずれた点Cを中心とした円弧が、回転軸4を中心に回転することで得られた曲面(球面)を有する円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。これにより、図5に示すように、ロータ7の凹型曲面部7Cが、弁板15の凸型曲面部15Aに当接した状態で、弁板15の給排ポート16とロータ7のシリンダポート9とを正確に位置合わせすることができ、給排ポート16とシリンダポート9との間のシール性を確保することができる。この結果、ポンプから吐出した高圧な圧油が、給排ポート16、シリンダポート9を通じてロータ7のシリンダ8に供給されるときに、給排ポート16とシリンダポート9との間から圧油が漏れるのを抑えることができる。
一方、ロータ7の凹型曲面部7Cの円弧半径SRrは、弁板15の凸型曲面部15Aの円弧半径SRpよりも大きく設定されているので、ロータ7の凹型曲面部7Cの外周部と弁板15の凸型曲面部15Aの外周部との間に外側隙間17を確保することができる。また、ロータ7の凹型曲面部7Cの内周部と弁板15の凸型曲面部15Aの内周部との間には、内側隙間18を確保することができる(図5参照)。
即ち、ロータ7の凹型曲面部7C、および弁板15の凸型曲面部15Aは、凹型曲面部7Cのうち複数のシリンダポート9が開口する部位と、凸型曲面部15Aのうち給排ポート16が開口する部位とにおいて互いに接触し、その内側(内周側)において内側隙間18をおいた状態で互いに相対回転するような環状の摺動領域19を有している(図5参照)。従って、ロータ7が高速で回転する場合でも、ロータ7の凹型曲面部7Cと弁板15の凸型曲面部15Aとが外周側および内周側で接触するのを抑え、凹型曲面部7Cと凸型曲面部15Aとの焼き付きを防止することができる。
しかも、ロータ7の凹型曲面部7Cは、一様な円弧半径SRrの凹円弧面として形成され、弁板15の凸型曲面部15Aも、一様な円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。このため、例えばロータの外周側の円弧半径を大きく形成したり、ロータの外周側をテーパ面とする構造に比較して、凹型曲面部7Cを有するロータ7、および凸型曲面部15Aを有する弁板15の構造を簡素化することができる。この結果、ロータ7および弁板15の製造コストを低減することができる。
さらに、凹型曲面部7Cの円弧半径SRrと凸型曲面部15Aの円弧半径SRpとの寸法差と、回転軸4の軸中心A-A上の点Bに対する凸型曲面部15Aの円弧中心Cの移動量σとを調整することにより、凹型曲面部7Cと凸型曲面部15Aとの当接面や、凹型曲面部7Cと凸型曲面部15Aとの外周部に形成される外側隙間17、および凹型曲面部7Cと凸型曲面部15Aとの内周部に形成される内側隙間18を適宜に設定することができる。この結果、ロータ7の凹型曲面部7Cおよび弁板15の凸型曲面部15Aを設計するときの自由度を広げることができる。
次に、弁板15の凸型曲面部15Aの凸円弧面の円弧中心Cを、回転軸4の半径方向に長さσだけ移動させた理由について、図6ないし図8に示す比較例との比較に基づいて説明する。
図6は、第1の実施形態によるロータ7および弁板15の比較例であるロータ101および弁板102を示している。ロータ101の凹型曲面部101Aには、複数のシリンダポート101Bが開口し、弁板102の凸型曲面部102Aには、一対の給排ポート102Bが開口している。
図6において、ロータ101の凹型曲面部101Aは、軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成されている。一方、弁板102の凸型曲面部102Aは、軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。即ち、弁板102の凸型曲面部102Aは、図3および図4中に二点鎖線で示した凸型曲面部15A′に対応している。凹型曲面部101Aの円弧半径SRrは、凸型曲面部102Aの円弧半径SRpよりも大きく設定されている(SRr>SRp)。
図7は、凹型曲面部101Aと凸型曲面部102Aとを間隔をもって対面させた状態を示し、図8は、ロータ101の回転時に凹型曲面部101Aと凸型曲面部102Aとが当接した状態を示している。比較例では、凹型曲面部101Aの円弧半径SRrが、凸型曲面部102Aの円弧半径SRpよりも大きく設定され(SRr>SRp)、かつ、凹型曲面部101Aの円弧中心と凸型曲面部102Aの円弧中心とが、いずれも軸中心A-A上の点Bとなっている。
このため、図8に示すように、ロータ101の回転時には、凹型曲面部101Aと凸型曲面部102Aとが最内周部分で接触するようになり、外周側では非接触となって外側隙間103が形成される。このため、ロータ101の回転時に、周速が大きくなる外周部分で焼き付きが生じるのを抑えることができる。しかし、凹型曲面部101Aと凸型曲面部102Aとが最内周部分で接触した状態では、ロータ101のシリンダポート101Bと弁板102の給排ポート102Bとの間にも微小な隙間104が形成される。このため、給排ポート102Bとシリンダポート101Bとの間に高圧が作用した場合には、この圧油が漏れてしまう不具合がある。
これに対し、本実施形態では、弁板15の凸型曲面部15Aは、回転軸4の半径方向に長さσだけずれた円弧中心をもつ円弧が、回転軸4を中心に回転することで得られる曲面を有している。そして、ロータ7の凹型曲面部7C、および弁板15の凸型曲面部15Aは、凹型曲面部7Cのうち複数のシリンダポート9が開口する部位と凸型曲面部15Aのうち給排ポート16が開口する部位とにおいて、互いに接触した状態で相対回転する環状の摺動領域19を有している。これにより、ロータ7の凹型曲面部7Cが、弁板15の凸型曲面部15Aに当接した状態で、弁板15の給排ポート16とロータ7のシリンダポート9とを正確に位置合わせし、両者間に隙間が生じるのを抑えることができる。この結果、給排ポート16とシリンダポート9との間のシール性を確保することができ、油圧モータ1の作動時に給排ポート16とシリンダポート9との間から高圧の圧油が漏れるのを防止することができる。
かくして、第1の実施形態による油圧モータ1は、ケーシング2内に回転可能に設けられた回転軸4と、回転軸4と一体に回転するようにケーシング2内に設けられ複数のシリンダ8およびシリンダポート9が形成されたロータ7と、ロータ7の複数のシリンダ8に往復動可能に挿嵌された複数のピストン10と、ロータ7が摺動可能に当接しロータ7の回転により複数のシリンダポート9が間欠的に連通する給排ポート16が形成された弁板15とを備え、ロータ7は弁板15に摺動可能に当接する凹型曲面部7Cを有し、弁板15はロータ7の凹型曲面部7Cが摺動可能に当接する凸型曲面部15Aを有し、ロータ7の凹型曲面部7C、および弁板15の凸型曲面部15Aの少なくとも一方は、回転軸4の半径方向にずれた円弧中心Cをもつ円弧が回転軸4を中心に回転することで得られる曲面を有している。
この構成によれば、ロータ7の凹型曲面部7Cと弁板15の凸型曲面部15Aとの摺動面の良好な摺動性を確保することができる。しかも、例えばロータの外周側の円弧半径を大きく形成したり、ロータの外周側をテーパ面とする構造に比較して、凹型曲面部7Cを有するロータ7、および凸型曲面部15Aを有する弁板15の構造を簡素化することができる。この結果、ロータ7および弁板15の製造コストを低減することができる。
実施形態では、ロータ7の凹型曲面部7C、および弁板15の凸型曲面部15Aは、凹型曲面部7Cのうち複数のシリンダポート9が開口する部位と、凸型曲面部15Aのうち給排ポート16が開口する部位とにおいて互いに接触し、その内側において内側隙間18をおいた状態で互いに相対回転するような環状の摺動領域19を有している。この構成によれば、ロータ7の凹型曲面部7Cが、弁板15の凸型曲面部15Aに当接した状態で、弁板15の給排ポート16とロータ7のシリンダポート9とを正確に位置合わせすることができ、給排ポート16とシリンダポート9との間のシール性を確保することができる。
実施形態では、ロータ7の凹型曲面部7Cは、その断面において所定の円弧半径SRrをもつ凹円弧面を有し、弁板15の凸型曲面部15Aは、その断面において凹型曲面部7Cの凹円弧面の円弧半径SRpよりも小さな円弧半径SRpをもつ凸円弧面を有している。この構成によれば、弁板15の凸型曲面部15Aの円弧半径SRpを、ロータ7の凹型曲面部7Cの円弧半径SRrよりも小さくすることにより、凹型曲面部7Cの外周部と凸型曲面部15Aの外周部との間に外側隙間17を確保し、凹型曲面部7Cの内周部と凸型曲面部15Aの内周部との間に内側隙間18を確保することができる。この結果、ロータ7の回転時における凹型曲面部7Cと凸型曲面部15Aとの焼き付きを防止することができる。
次に、図9ないし図12は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、ロータに形成された凹型曲面部の円弧中心を、回転軸4の半径方向に長さσだけ移動させたことにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図9は、第2の実施形態によるロータ21と弁板22とを示している。弁板22の凸型曲面部22Aは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした一様な円弧半径SRpの円弧状の断面形状を有している。即ち、弁板22の凸型曲面部22Aは、軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。
一方、ロータ21の凹型曲面部21Aは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bに対し、回転軸4の半径方向(軸中心A-Aと直交する方向)に長さσだけずらした点Cを円弧中心とした一様な円弧半径SRrの円弧状の断面形状を有している。即ち、ロータ21の凹型曲面部21Aは、軸中心A-A上の点Bから長さσだけ回転軸4の半径方向にずれた点Cを中心とした円弧が、軸中心A-Aを中心に回転することで得られた曲面を有する円弧半径SRrの凹円弧面として形成されている。また、ロータ21の凹型曲面部21Aの円弧半径SRrは、弁板22の凸型曲面部22Aの円弧半径SRpよりも大きく設定されている(SRr>SRp)。
ここで、凹型曲面部21Aの円弧中心Cの、回転軸4の軸中心A-Aからの移動量σの算出方法について説明する。
図10は、ロータ21の凹型曲面部21Aと弁板22の凸型曲面部22Aの形状を概念的に示したもので、凹型曲面部21Aと凸型曲面部22Aとが、回転軸4の軸中心A-A上に間隔をもって配置された状態を示している。図10において、弁板22の凸型曲面部22Aは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。また、図10中に二点鎖線で示す仮想のロータの凹型曲面部21A′は、点Bを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成されている。
凸型曲面部22Aに開口した給排ポート16の中心をDとし、点Bと点Dとを結ぶ直線をEとし、直線Eと凹型曲面部21A′との交点をFとする。図11に拡大して示すように、点Dと交点Fとの間には、半径方向においてSRr-SRpの間隔が形成されると共に、回転軸4の半径方向に長さσの間隔が形成されている。従って、直線Eと凹型曲面部21A′との交点Fを、回転軸4の半径方向に長さσだけずらすことにより、凹型曲面部21A′を、給排ポート16の中心Dの位置で凸型曲面部22Aに当接させることができる。この場合、直線Eと軸中心A-Aとがなす角度をθとすると、長さσは、上記数2によって算出される。
このようにして、凹型曲面部21Aは、仮想の凹型曲面部21A′の円弧中心Bを、回転軸4の半径方向に長さσだけずらした点Cを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成され、凹型曲面部21Aは、給排ポート16の中心Dの位置で凸型曲面部22Aに当接する。このため、ロータ21に形成されるシリンダポート9を、交点Fの位置に開口させることにより、凹型曲面部21Aが凸型曲面部22Aに当接した状態で、凹型曲面部21Aのうちシリンダポート9が開口する部位と、凸型曲面部22Aのうち給排ポート16が開口する部位とを接触させることができる。これにより、図12に示すように、弁板22の給排ポート16とロータ21のシリンダポート9とを位置合わせすることができる構成となっている。
第2の実施形態による油圧モータは、上述の如きロータ21と弁板22とを有するもので、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、ロータ21の凹型曲面部21Aが一様な円弧半径SRrの凹円弧面として形成され、弁板22の凸型曲面部22Aも一様な円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。このため、例えばロータの外周側の円弧半径を大きく形成したり、ロータの外周側をテーパ面とする構造に比較して、凹型曲面部21Aを有するロータ21、および凸型曲面部22Aを有する弁板22の構造を簡素化し、ロータ21および弁板22の加工コストを低減することができる。また、弁板22の凸型曲面部22Aの凸円弧面の円弧半径SRpは、ロータ21の凹型曲面部21Aの凹円弧面の円弧半径SRrよりも小さく設定されている。これにより、図12に示すように、ロータ21の凹型曲面部21Aの外周部と弁板22の凸型曲面部22Aの外周部との間に外側隙間23を確保し、ロータ21の凹型曲面部21Aの内周部と弁板22の凸型曲面部22Aの内周部との間には、内側隙間24を確保することができる。
このように、ロータ21の凹型曲面部21A、および弁板22の凸型曲面部22Aは、凹型曲面部21Aのうち複数のシリンダポート9が開口する部位と、凸型曲面部22Aのうち給排ポート16が開口する部位とにおいて互いに接触し、その内側(内周側)において内側隙間24をおいた状態で互いに相対回転するような環状の摺動領域25を有している(図12参照)。従って、ロータ21が高速で回転する場合でも、ロータ21の凹型曲面部21Aと弁板22の凸型曲面部22Aとが外周側および内周側で接触するのを抑えることができ、凹型曲面部21Aと凸型曲面部22Aとの焼き付きを防止することができる。
さらに、第2の実施形態では、凸型曲面部22Aの凸円弧面の円弧中心Cを、回転軸4の半径方向に長さσだけずらしている。これにより、第1の実施形態と同様に、ロータ21の凹型曲面部21Aが、弁板22の凸型曲面部22Aに当接した状態で、弁板22の給排ポート16とロータ7のシリンダポート9とを正確に位置合わせすることができ、給排ポート16とシリンダポート9との間のシール性を確保することができる。
次に、図13ないし図15は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、ロータの凹型曲面部の円弧半径と弁板の凸型曲面部の円弧半径とを等しく設定し、かつ、ロータの凹型曲面部および弁板の凸型曲面部は、回転軸の中心領域において互いに接触し、外周領域において隙間をおいた状態で互いに相対回転するように構成したことにある。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
図13は、第3の実施形態によるロータ31と弁板32とを示している。ロータ31の凹型曲面部31Aは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした一様な円弧半径SRrの円弧状の断面形状を有している。即ち、ロータ31の凹型曲面部31Aは、軸中心A-A上の点Bを円弧中心とした円弧半径SRrの凹円弧面として形成されている。
一方、弁板32の凸型曲面部32Aは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bに対し、回転軸4の半径方向に長さσだけずれた点Cを円弧中心とした一様な円弧半径SRpの円弧状の断面形状を有している。即ち、弁板32の凸型曲面部32Aは、軸中心A-A上の点Bから回転軸4の半径方向に長さσだけずれた点Cを中心とした円弧が、回転軸4を中心に回転することで得られた曲面を有する円弧半径SRpの凸円弧面として形成されている。ここで、本実施形態では、ロータ31の凹型曲面部31Aの円弧半径SRrと、弁板32の凸型曲面部32Aの円弧半径SRpとは、下記数3の関係となっている。
ここで、弁板32の凸型曲面部32Aの円弧中心Cは、回転軸4の軸中心A-A上の点Bに対し回転軸4の半径方向に長さσだけずれている。この円弧中心Cの移動量σは、例えばロータ31の凹型曲面部31Aを弁板32の凸型曲面部32Aに当接させた状態で、凹型曲面部31Aの最外周部と凸型曲面部32Aの最外周部との間に生じる外側隙間33がどれくらい必要か(必要隙間量)に応じて、幾何学的に設定される。これにより、ロータ31の凹型曲面部31Aおよび弁板32の凸型曲面部32Aは、回転軸4の中心領域において互いに接触し、外周領域において外側隙間33をおいた状態で互いに相対回転するように構成されている。
第3の実施形態による油圧モータは、上述の如きロータ31と弁板32とを有するもので、ロータ31に形成された凹型曲面部31Aの凹円弧面の円弧半径SRrと、弁板32に形成された凸型曲面部32Aの凸円弧面の円弧半径SRpとが等しく設定されている(SRr=SRp)。さらに、凸型曲面部32Aの凸円弧面の円弧中心Cを、回転軸4の軸中心A-A上の点Bから回転軸4の半径方向に長さσだけずらす構成としている。これにより、図15に示すように、ロータ31の凹型曲面部31Aと弁板32の凸型曲面部32Aとは、回転軸4の中心領域となる最内周部で互いに接触した状態で、外周領域となる凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aの最外周部には、外側隙間33が形成される。
このように、第3の実施形態では、凹型曲面部31Aの円弧半径SRrと凸型曲面部32Aの円弧半径SRpとを等しく設定(SRr=SRp)した場合でも、凹型曲面部31Aの円弧半径SRrを凸型曲面部32Aの円弧半径SRpよりも大きく設定(SRr>SRp)した場合と同様に、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとの最外周部に外側隙間33を確保することができる。これにより、本実施形態においても、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとの焼き付きを防止することができる。
しかも、第3の実施形態では、ロータ31の凹型曲面部31Aの円弧半径SRrと弁板32の凸型曲面部32Aの円弧半径SRpとが等しいため、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとを研磨剤を介して直接的に接触させた状態でラッピング加工(共ラップ)を行うことができる。このため、ロータの凹型曲面部の円弧半径と弁板の凸型曲面部の円弧半径とが異なる場合に、凹型曲面部と凸型曲面部とに対して個別にラッピング加工を行う場合に比較して、加工に要する時間およびコストを低減することができる。さらに、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとに対するラッピング加工を行った後には、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとを接触させての長時間の慣らし運転を不要にすることができる。この結果、凹型曲面部31Aを含むロータ31、および凸型曲面部32Aを含む弁板32の製造コストを低減することができる。
かくして、第3の実施形態では、ロータ31の凹型曲面部31Aの断面の円弧半径SRrと、弁板32の凸型曲面部32Aの断面の円弧半径SRpとを互いに等しく設定し、凹型曲面部31Aおよび凸型曲面部32Aは、回転軸4の中心領域となる内周側において互いに接触し、外周領域において外側隙間33をおいた状態で互いに相対回転する。この構成によれば、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとの最外周部に外側隙間33が確保されるので、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとの焼き付きを防止することができる。しかも、凹型曲面部31Aと凸型曲面部32Aとを研磨剤を介して直接的に接触させた状態でラッピング加工(共ラップ)を行うことができ、凹型曲面部31Aおよび凸型曲面部32Aの加工に要する時間およびコストを低減することができる。
なお、第1の実施形態では、弁板15の凸型曲面部15Aの円弧中心Cを、回転軸4の半径方向に長さσだけ移動させた場合を例示し、第2の実施形態では、ロータ21の凹型曲面部21Aの円弧中心Cを、回転軸4の半径方向に長さσだけ移動させた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば弁板の凸型曲面部の円弧中心を、回転軸4の半径方向に長さσpだけ移動させると共に、ロータの凹型曲面部の円弧中心を、回転軸4の半径方向に長さσrだけ移動させ、これら凸型曲面部の円弧中心の移動量σpと凹型曲面部の円弧中心の移動量σrとの合計が移動量σ(σ=σp+σr)となるように構成してもよい。
また、実施形態では、液圧回転機として可変容量型の斜板式油圧モータ1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば可変容量型の斜板式油圧ポンプ、斜軸式油圧モータ、斜軸式油圧ポンプ等のロータと弁板を備えた各種の液圧回転機に広く適用することができる。