JP7737097B2 - グラフェン材料、その製造方法およびその用途 - Google Patents

グラフェン材料、その製造方法およびその用途

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Description

本発明は、グラフェン材料、その製造方法およびその用途に関する。
グラフェンは、炭素原子が六角平面構造を有する形態で配列された物質である。グラフェンの炭素原子はsp結合をなしており、単一原子の厚さの平面シート形状をなしている。
グラフェンは、導電性、熱伝導性、および機械的強度などに優れ、電池材料、エネルギー貯蔵材料、電子デバイスなどの領域をはじめ、自動車、航空宇宙、医薬などの多様な分野でこれを活用する研究が進められている。
グラフェンの製造方法としては、機械的剥離法、化学気相成長法(CVD法)、炭化シリコン(SiC)基板上に積層する方法、化学的酸化還元法などが挙げられる。
このうち、化学的酸化還元法は、天然グラファイトの酸化処理でグラフェン酸化物を得た後、還元反応によりグラフェンを作製する方法である(例えば、特許文献1)。化学的酸化還元法は、グラフェンの大量生産が可能であるため、産業的な製造方法として有望である。しかしながら、この方法では、グラフェン酸化物の脱酸素化反応のためにヒドラジン(hydrazine)などの還元剤を使用しなければならない。このような還元剤の多くは、高い腐食性、爆発性、人体に対する毒性、環境に対する有害性などの危険性を有しており、工業的な使用を制限する傾向が強い。また、生成されたグラフェンが不純物などを含むことがあり、導電性が低くなるなどの懸念が存在する。
したがって、危険性が低い工程を経ながらも、電気的特性などの物性に優れたグラフェンを製造できる方法に対する要請が存在する。
特開第2018-104269号公報
以上から、本発明の課題は、その製造工程において還元剤を使用しない、電気的特性などの物性に優れたグラフェンを製造する方法を提供することである。
また、本発明は、そのような製造方法によって製造されたグラフェン材料、および、当該グラフェン材料の用途を提供することも課題とする。
本発明によるグラフェン材料を製造する方法は、グラフェン酸化物を準備するステップと、前記グラフェン酸化物を300℃~700℃で熱処理するステップと、前記熱処理されたグラフェン酸化物を分散媒に分散し熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するステップと、前記熱還元グラフェン酸化物分散液を150℃~250℃で水熱処理するステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記熱処理するステップの時間は1分以内であり、前記水熱処理するステップの時間は10時間~36時間の範囲であってもよい。
前記熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するステップにおいて、前記分散媒は水またはエタノールであってもよい。
前記熱処理するステップは、前記グラフェン酸化物をマッフル炉中350℃~500℃で1分以内熱処理し、前記熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するステップにおいて、前記分散媒は水であり、前記水熱処理するステップは、前記熱還元グラフェン酸化物分散液をオートクレーブ中160℃~220℃で12時間~24時間水熱処理してもよい。
本発明によるグラフェン材料は、グラフェンシートの凝集が実質的に存在せず、XPS分析による酸素含有量が7.0%以下であり、これにより上記課題を解決する。
本発明のグラフェン材料は、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像から測定される前記グラフェンシートの層数が7以下であってもよい。
本発明によるグラフェン電極は、上述のグラフェン材料を含有し、これにより上記課題を解決する。
本発明のグラフェン電極は、導電材料およびバインダをさらに含有してもよい。
本発明のグラフェン電極は、電気二重層キャパシタ用であってもよい。
本発明のグラフェン材料を製造する方法は、グラフェン酸化物を所定の条件で熱処理するステップと、熱処理されたグラフェン酸化物を所定の分散媒に分散した熱還元グラフェン酸化物分散液を所定の条件で水熱処理するステップとを包含する。当該熱処理するステップと、当該水熱処理するステップとを、この順序で組み合わせることで、グラフェン酸化物を構成するグラフェンシート上の酸素含有官能基を段階的に除去し、構造的な破壊や欠陥を抑制しつつ、熱還元および水熱還元の効果を最大限に得ることができる。このため、本発明のグラフェン材料の製造方法によれば、還元剤を使用しない製造工程を経ながらも、電気的特性などの物性に優れたグラフェン材料を製造することができる。本発明のグラフェン材料の製造方法は、危険性が低い工程を経るだけでなく、熟練の技術や高価な装置を不要とし、経済的かつ効率的であり、また、環境への負荷が少ないため、大量生産に適している。
本発明のグラフェン材料は、上述の製造方法によって製造され、層数が少なく、グラフェン同士の相互作用による凝集が抑制された、酸素含有量の少ないグラフェン材料である。このため、本発明のグラフェン材料は、その製造工程において還元剤を使用しない、電気的特性などの物性に優れたグラフェン材料である。本発明のグラフェン材料を用いることにより、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池等の蓄電デバイス用のグラフェン電極を提供することができる。さらに、本発明のグラフェン材料は、従来の化学的酸化還元法によって製造されるグラフェンに匹敵する、もしくは、それを上回る特性を有するので、電極材料以外の各種の分野への応用が可能である。
本発明のグラフェン材料の製造工程を示すフローチャート 本発明の電気二重層キャパシタを示す模式図 (a)~(e)例1~例5のグラフェン材料のTEM像およびHRTEM像を示す図 例1のグラフェン材料のXPSスペクトルを示す図 例2のグラフェン材料のXPSスペクトルを示す図 例3のグラフェン材料のXPSスペクトルを示す図 例4のグラフェン材料のXPSスペクトルを示す図 例5のグラフェン材料のXPSスペクトルを示す図 例1~例5のグラフェン材料を電極材料に用いて作製したコインセルの、(a)定電流充放電曲線(GCD曲線)、(b)レート特性、(c)電気化学インピーダンススペクトル(EIS)、および、(d)サイクル特性を示す図 例4のグラフェン材料を電極材料に用いて作製したラミネート型セルの、(a)比容量-電圧曲線(CV曲線)、(b)定電流充放電曲線(GCD曲線)、(c)レート特性、および、(d)電気化学インピーダンススペクトル(EIS)を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明のグラフェン材料の製造方法について説明する。
図1は、本発明のグラフェン材料の製造工程を示すフローチャートである。
ステップS110:グラフェン酸化物を準備する。
グラフェン酸化物(graphene oxide:GO)は、一般に入手可能なものを用いてもよく、あるいは、ステップS110において、グラフェン酸化物を調製するステップをさらに含んでもよい。
グラフェン酸化物は、公知の製造方法によって製造されたものであってよい。例えば、改良Hummers法を用いて天然グラファイトから調製されたものを使用することができる。
ステップS120:グラフェン酸化物を300℃~700℃で熱処理する。
ステップS120では、グラフェン酸化物を所定の条件で熱処理し、グラフェン酸化物を熱還元する。グラフェン酸化物を熱処理する条件は、上述の温度条件を満たす限りにおいて特に制限されないが、より短い時間である方が、製造効率および環境への負荷を低減する観点から、好ましい。具体的には、例えば、所定量のグラフェン酸化物を水に分散したグラフェン酸化物水分散液を、凍結乾燥機で数日間(2日間程度)凍結乾燥させ、次いで、得られたグラフェン酸化物の固体をマッフル炉中300℃~700℃で1分以内熱処理し、素早く取り出すことで、目的の熱還元されたグラフェン酸化物(thermally-reduced graphene oxide:TRGO)を得ることができる。
より好ましくは、上述のグラフェン酸化物の固体をマッフル炉中350℃~500℃で1分以内熱処理する。これにより、より効率的に、目的の熱還元されたグラフェン酸化物を得ることができる。
ステップS130:熱処理されたグラフェン酸化物を分散媒に分散し熱還元グラフェン酸化物分散液を調製する。
熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するための分散媒としては特に制限されず、水、エタノール等が挙げられる。
熱還元グラフェン酸化物分散液の濃度としては特に制限されず、分散媒中に熱還元グラフェン酸化物が良好に分散し得る濃度を適宜選択すればよい。具体的には、例えば、熱還元グラフェン酸化物分散液の濃度は、0.1mg/mL~1.0mg/mLの範囲であってよい。
なお、分散媒中の熱還元グラフェン酸化物の分散状態を均一にする観点から、超音波ホモジナイザー等の混合・分散装置を用いてもよい。
ステップS140:熱還元グラフェン酸化物分散液を150℃~250℃で水熱処理する。
ステップS140では、熱還元グラフェン酸化物を所定の条件で水熱処理し、ステップS120による熱還元後にグラフェンシート上に残存する官能基(特に、酸素含有官能基)を除去することで、高度に還元され、かつ、グラフェンシートの凝集が抑制された、グラフェン材料を得る。熱還元グラフェン酸化物を水熱処理する条件は、上述の温度条件を満たす限りにおいて特に制限されないが、より短い時間である方が、製造効率および環境への負荷を低減する観点から、好ましい。具体的には、例えば、ステップS130で得られた熱還元グラフェン酸化物分散液をオートクレーブ中150℃~250℃で10時間~36時間水熱処理することで、目的のグラフェン材料を得ることができる。
より好ましくは、上述の熱還元グラフェン酸化物分散液をオートクレーブ中160℃~220℃で12時間~24時間水熱処理する。これにより、より効率的に、目的のグラフェン材料を得ることができる。
このように、本発明のグラフェン材料の製造方法では、グラフェン酸化物を出発原料として見た場合、熱処理するステップS120と水熱処理するステップS140とを組み合わせる、二段階の還元処理により、グラフェン酸化物を構成するグラフェンシート上の酸素含有官能基を除去し、構造的な破壊や欠陥を抑制しつつ、電気的特性などの物性に優れたグラフェンを製造することを特徴としている。また、これらのステップの順序は、先ず熱処理による還元を行い、次いで水熱処理による還元を行うことで、上述の官能基の除去効果が向上し、優れた物性を有するグラフェン材料を製造することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明のグラフェン材料について説明する。
本発明のグラフェン材料は、実施の形態1で説明した製造方法により、好適に製造される。
本発明のグラフェン材料は、グラフェンシートの凝集が実質的に存在せず、XPS分析による酸素含有量が7.0%以下である。
また、本発明のグラフェン材料は、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像から測定される前記グラフェンシートの層数が7以下であることが好ましい。
本明細書において、グラフェン材料が「グラフェンシートの凝集が実質的に存在しない」とは、当該材料の透過型電子顕微鏡(TEM)像において、グラフェンシートの凝集に起因する構造体が実質的に確認されないことを意図する。言い換えると、グラフェンシートの凝集が存在する場合、その透過型電子顕微鏡(TEM)像においては、シート状の構造体が寄り集まった様子や皺状の模様が、コントラストの濃い部分として確認されるが、本発明のグラフェン材料は、そのような凝集構造を実質的に有しないことを特徴としている。
本発明のグラフェン材料の酸素含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて得られるスペクトルから測定することができる。本発明のグラフェン材料は、当該XPS分析による酸素含有量が7.0%以下であり、好ましくは6.0%以下であり、より好ましくは5.5%以下である。これにより、本発明のグラフェン材料は、電気的特性などの物性に優れ、電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池等の蓄電デバイス用の電極材料として使用するのに好適である。さらに、本発明のグラフェン材料は、電極材料以外の各種の用途にも好適に使用できる。
本発明のグラフェン材料を構成するグラフェンシートの層数は、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像から測定することができる。本発明のグラフェン材料は、当該HRTEM像によるグラフェンシートの層数が7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。これにより、本発明のグラフェン材料は、電気的特性などの物性に優れ、上述の蓄電デバイス用の電極材料として、あるいは、電極材料以外の各種の用途に使用する材料として、より好適である。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態2で説明した本発明のグラフェン材料の用途について説明する。
本発明のグラフェン材料は、電極材料として好適に用いることができる。特に、本発明のグラフェン材料は、蓄電デバイス用の電極材料として使用するのに好適である。以下では、本発明のグラフェン材料を電極材料として用いた蓄電デバイスの例として、電気二重層キャパシタについて説明する。
図2は、本発明の電気二重層キャパシタを示す模式図である。
本発明の電気二重層キャパシタは、少なくとも、電極および電解質を備える。図2の電気二重層キャパシタ200は、電極として正極電極210および負極電極220が電解質230に浸漬している。これら正極電極210および負極電極220は、実施の形態2で説明したグラフェン材料を含有する電極からなる。電解質230は、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI-TFSI)、ホウフッ化1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI-BF)および1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(MPPp-TFSI)からなる群から選択されるイオン液体またはM’OH(M’はアルカリ金属)である。
正極電極210および負極電極220は、実施の形態2で説明したグラフェン材料に加えて、導電材料およびバインダをさらに含有してもよい。これにより、表面が平滑な膜状の電極となる。この場合、グラフェン材料と、導電材料と、バインダの含有率は特に制限されないが、例えば、グラフェン材料:導電材料:バインダ=80~95:0~10:1~10の重量比を満たすように混合すればよい。このような重量比で混合されることにより、キャパシタに適用される際に、より高いパワー密度およびエネルギー密度を達成し得る。なお、上述の比において、80~95とは、80以上95以下、0~10とは、0より大きく10以下、1~10とは、1以上10以下を意図し、グラフェン材料と導電材料とバインダとの合計が100重量部となるように調製される。
導電材料は、通常の電極において導電材料として使用されるものであれば特に制限はないが、グラフェン材料との分散性を考慮すれば、例示的には、カーボンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラックおよびケッチェンブラックからなる群から選択される炭素材料が好ましい。
バインダは、通常の電極においてバインダとして使用されるものであれば特に制限はないが、代表的には有機溶剤系バインダと水系バインダとがある。有機溶剤系バインダとしては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、その変性四フッ化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等がある。水系バインダとしては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等がある。特に、水系バインダにおいて、CMCとSBRとを組み合わせて用いるとよい。
電気二重層キャパシタ200は、さらに、正極電極210と負極電極220との間にセパレータ240を有し、これら正極電極210および負極電極220を隔離している。
セパレータ240の材料は、例えば、フッ素系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン系高分子およびこれらの誘導体、セルロース、紙、および、不織布から選ばれる材料である。
電気二重層キャパシタ200では、上述の正極電極210、負極電極220、電解質230およびセパレータ240がセル250に収容されている。また、正極電極210および負極電極220は、それぞれ、既存の集電体を有する。
このような電気二重層キャパシタ200は、チップ型、コイン型、モールド型、パウチ型、ラミネート型、円筒型、角型等のキャパシタであってもよく、さらに、これらを複数接続したモジュールで使用されてもよい。
次に、図2の電気二重層キャパシタ200の動作を説明する。
電気二重層キャパシタ200に電圧を印加すると、正極電極210には、電解質230の電解質イオン(アニオン)が、負極電極220には、電解質230の電解質イオン(カチオン)が、それぞれ、吸着する。その結果、正極電極210および負極電極220のそれぞれに電気二重層が形成され、充電される。ここで、正極電極210および負極電極220は、実施の形態2で説明したグラフェン材料から形成されるので、グラフェンによるカチオンおよびアニオンの吸着・拡散が容易となり、高いレート特性を達成できる。また、正極電極210および負極電極220は、実施の形態2で説明したグラフェン材料から形成されるので、グラフェンの表面のみならず内部にて多くの電解質イオンが吸着し、電気二重層が形成される。その結果、グラフェンと電解質イオンとの電子のやりとりが増大し、高いエネルギー密度を達成できる。
充電した電気二重層キャパシタ200を抵抗等の回路に接続すると、正極電極210および負極電極220にそれぞれ吸着していたアニオンおよびカチオンが脱着し、放電する。ここでもやはり、正極電極210および負極電極220は、実施の形態2で説明したグラフェン材料から形成されるので、電解質イオンの脱着・拡散が容易となり、高いレート特性およびエネルギー密度を達成できる。また、導電性に優れるので、脱着・拡散の容易性に伴い、パワー密度も向上し得る。
このように本発明の電気二重層キャパシタ200は、電極におけるグラフェンの特性を十分に発揮できるので、素早い充電を可能にし、高エネルギー密度および高パワー密度を達成できる。また、充放電には電気二重層の形成を利用しているので、繰り返し使用に優れている。本発明の電気二重層キャパシタ200は、風力発電、電気自動車等に利用され得る。
なお、ここでは電気二重層キャパシタを例に挙げて説明したが、本発明のグラフェン材料は、電気二重層キャパシタ以外にも、リチウムイオン電池などの蓄電デバイス用の電極材料として適用できることは言うまでもない。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[グラフェン材料の製造]
(例1~例5)
グラフェン酸化物(GO)は、改良Hummers法を用いて天然グラファイトから調製した(図1のステップS110)。
次に、以下の表1に示す製造工程に従って、グラフェン酸化物の還元処理を行った。
例1では、グラフェン酸化物を水に分散したグラフェン酸化物水分散液(0.5mg/mL)を、凍結乾燥機で2日間凍結乾燥させ、次いで、得られたスポンジ状の(sponge-like)グラフェン酸化物をマッフル炉中400℃で1分以内加熱し、素早く取り出した(図1のステップS120)。
例2では、上述のグラフェン酸化物水分散液をオートクレーブ中160℃で12時間水熱処理した(水熱還元)。
例3では、例2と同様の条件で水熱処理した後、水熱処理されたグラフェン酸化物をマッフル炉中400℃で1分以内加熱し、素早く取り出した(熱還元)。
例4では、例1と同様にして得たグラフェン酸化物をマッフル炉中400℃で1分以内加熱し、素早く取り出した(図1のステップS120)。
次いで、熱処理されたグラフェン酸化物を水に分散し熱還元グラフェン酸化物分散液(0.5mg/mL)を調製した(図1のステップS130)。
次いで、熱還元グラフェン酸化物分散液をオートクレーブ中160℃で12時間水熱処理した(図1のステップS140)。
例5では、例1と同様にして得たグラフェン酸化物をヒドラジンによって還元した(ヒドラジン還元)。
[物性の分析]
図3(a)~(e)は、それぞれ、例1~例5で得られたグラフェン材料を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製フィールド・エミッション電子顕微鏡:JEM-2100F)で観察した結果を示す図である。各図中のスケールバーは、500nmである。また、各図中の右上には、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像を示した。HRTEM像中のスケールバーは、10nmである。
図3(a)によれば、例1のグラフェン材料は、層数が少なく、薄いシート状であることがわかる。しかし、HRTEM像中に矢印で示したように結晶性の低いアモルファスの部分が存在し、結晶構造的な欠陥を有していた。
図3(b)および(c)によれば、例2および例3のグラフェン材料は、いずれも、層数が多く、コントラストが濃い部分においてグラフェンシートが凝集していることがわかる。
また、図3(e)によれば、例5のグラフェン材料は、層数が多く、図中に矢印で示したように部分的に皺が寄っており、グラフェンシートが凝集した部分(コントラストが濃い部分)が存在していることがわかる。
これに対して、図3(d)によれば、例4のグラフェン材料は、層数が少なく、グラフェンシートが折りたたまれていないエッジ領域の表面はほぼ透明であることがわかる。また、HRTEM像からは、単一のグラフェンシートをはっきりと確認することができる。ここで、HRTEM像から層数を評価したところ、このフレーム内のグラフェンシートの層数は約3~4であった。
これらの結果から、本発明のグラフェン材料の製造方法によれば、層数が少なく、薄いシート状であり、かつ、グラフェンシートの凝集が実質的に存在しないグラフェン材料が得られることがわかった。
例1~例5で得られたグラフェン材料の比表面積および酸素含有量を測定した。結果を表1に示す。
比表面積は、BET法により、窒素吸脱着等温線から評価した。
酸素含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS:アルバック・ファイ社製PHI Quantera SXM、X線源:Al Kα、分析器:半球型アナライザ)を用いて得られたスペクトルから評価した。
図4A~図4Eは、それぞれ、例1~例5のグラフェン材料のXPSスペクトルを示す図である。各図中には、解析処理をしていない生データ(Raw)、生データに対してフィッティング処理を行ったデータ(Fitting)、および、ピーク分離(波形分離)を行って得た4成分のデータ(C-C、C-O、COOH、π-π)を示した。
表1によれば、例4のグラフェン材料は、例5のグラフェン材料(すなわち、従来のヒドラジンによって還元されたグラフェン酸化物)よりも比表面積が大きく、かつ、酸素含有量が低いことがわかった。言い換えると、本発明のグラフェン材料の製造方法によれば、ヒドラジンのような危険有害性のある化学物質を用いることなく、還元剤を使用しない製造工程により、グラフェン酸化物を構成するグラフェンシート上の酸素含有官能基を効果的に除去し、化学的に還元されたグラフェン酸化物と同等もしくはそれを上回る物性を有するグラフェン材料を製造できることがわかった。
一方、例1のグラフェン材料は、例4のグラフェン材料と比べて比表面積は大きいが、酸素含有量が多く、グラフェン酸化物の還元が不十分であることがわかる。
例2および例3のグラフェン材料は、例4のグラフェン材料と比べて比表面積が小さく、また、酸素含有量が多い。
これらの結果から、本発明のグラフェン材料の製造方法において、熱処理するステップと水熱処理するステップを組み合わせる、二段階の還元処理により、グラフェン酸化物を構成するグラフェンシート上の酸素含有官能基が効果的に除去されること、また、これらのステップの順序は、先ず熱処理による還元を行い、次いで水熱処理による還元を行うことで、上述の官能基の除去効果が向上し、優れた物性を有するグラフェン材料を製造できることが示された。
[電気的特性の分析]
次に、グラフェン材料の電気的特性を評価するため、これらを電極に用いた電気二重層キャパシタ(CR2032型コインセル)を作製した。
具体的には、例1~例5のグラフェン材料をCMC(カルボメキシメチルセルロース)水分散液に分散させ、導電材料として導電性カーボンブラックと、バインダとしてSBR(スチレンブタジエンゴム)と混合し、スラリーを得た。このスラリーを、Al(アルミニウム)製集電体上に塗布し、真空中、120℃で24時間乾燥させ、電極膜を得た。次に、ステンレス製のセル内に、セパレータ(ガラス繊維)をこれら電極の間に配置し、電解質としてイオン液体(EMI-BF)を充填し、コインセルを作製した。なお、コインセルの組み立ては、Arガスで充填されたグローブボックス内で行った。
コインセルの電気化学測定を、マルチ-チャンネルポテンショスタットガルバノスタット(Bio-Logic製、VMP-300)を用いて行った。比容量-電圧測定(CV測定)、ガルバノスタット充放電測定を、室温において、0V~3.5Vの電位範囲で行った。また、電気化学インピーダンス測定を行った。
比容量Cs(F/g)を、式Cs=4I/(mdV/dt)にしたがって算出した。ここで、I(A)は定電流であり、m(g)は2つの電極の合計質量であり、dV/dt(V/s)は、Vmax(放電開始時の電圧)と1/2Vmaxとの間の放電曲線を直線フィッティングによって得られる傾きである。エネルギー密度Ecell(Wh/kg)を、式Ecell=CsV/8にしたがって算出した。パワー密度Pcell(W/kg)を、式Pcell=Ecell/t(ここで、tは放電時間である)にしたがって算出した。
図5(a)~(d)は、それぞれ、試作したコインセルの、定電流充放電曲線(GCD曲線)、レート特性、電気化学インピーダンススペクトル(EIS)、および、サイクル特性を示す図である。図5(b)~(d)において、例1~例5に対応するプロット図形は、それぞれ、丸形、四角形、下向き三角形、上向き三角形、菱形である。
ここで、図5(a)に示すGCD曲線は、0.2A/gの電流密度で測定した。
図5(b)に示すレート特性は、0.1A/g~5.0A/gの電流密度範囲において得られた結果である。
図5(c)に示すEISは、等価回路モデルを用いてフィッティングしたものである。
図5(d)に示すサイクル特性は、10000サイクルまでの静電容量保持率を示した。
また、以下の表2には、これらの測定結果から得られた例1~例5のグラフェン材料の電気的特性をまとめて示した。
表2に示すように、例4のグラフェン材料は、0.1A/gで154F/gの比容量を示し、より高い5.0A/gでも128F/gの比容量を保持し、80%以上のレート特性を示した。また、10000サイクル後も90%を超える静電容量保持率を示し、長寿命性にも優れていることがわかった。加えて、エネルギー密度およびパワー密度は、0.1A/gの電流密度でそれぞれ66Wh/kgおよび172kW/kgに達した。加えて、例4のグラフェン材料は、最も低い等価抵抗(3.3Ω)を示した(図5(c))。これらの結果は、いずれも例5のグラフェン材料(すなわち、従来のヒドラジン処理によって還元されたグラフェン酸化物)を上回っており、本発明の製造方法によって製造されたグラフェン材料が、蓄電デバイス用の電極材料として優れた性能を発揮し得ることが確認された。
一方、例1~3のグラフェン材料では、部分的に、例4のグラフェン材料と同等の性能が得られているものもあるが、グラフェンが本来有する電気的特性が十分に発揮されているとは言えない。
ここで、例4のグラフェン材料を電極に用いたラミネートタイプの電気二重層キャパシタを作製し、電気的特性をさらに評価した。
なお、この電気二重層キャパシタの構成は、図2に示したものと同様であった。具体的には、電極2枚をそれぞれ3x3cmになるように切り取り、正極、負極とした。この正極、負極それぞれに正極端子と負極端子とを超音波融着して、厚み25μmのセルロース製セパレータを挟んで対向させ、ポリプロピレンとアルミニウムとナイロンとを積層したラミネートフィルムからなる外装体に収納し、外装体内に電解質としてイオン液体(EMI-BF)を注入し、正極端子と負極端子の端部を外装体外に引き出した状態で外装体をヒートシールすることにより封入し、ラミネートセルを組み立てた。
図6(a)~(d)は、それぞれ、試作したラミネート型セルの、比容量-電圧曲線(CV曲線)、定電流充放電曲線(GCD曲線)、レート特性、および、電気化学インピーダンススペクトル(EIS)を示す図である。
ここで、図6(a)に示すCV曲線は、0V~3.7Vの電位範囲において、10mV/sの掃引速度で測定した。
図6(b)に示すGCD曲線は、0.2A/gの電流密度で測定した。
図6(c)に示すレート特性は、0.1A/g~5.0A/gの電流密度範囲において得られた結果である。
図6(d)に示すEISは、等価回路モデルを用いてフィッティングしたものである。
図6(a)によれば、例4のグラフェン材料は、理想的な電気二重層キャパシタを表す矩形のCV曲線を示した。また、図6(b)および(c)によれば、0.1A/gで150F/gの比容量を示し、より高い5.0A/gでも132F/gの比容量を保持し、80%以上のレート特性を示した。加えて、例4のグラフェン材料は、上述のコインセルの場合と同様に低い等価抵抗(0.8Ω)を示した(図6(d))。
[異なる水熱処理条件で製造したグラフェン材料の電気的特性の分析]
次に、例4のグラフェン材料の製造工程のうち、水熱処理条件(図1のステップS140の条件)を様々に変化させてグラフェン材料を製造し、それらの電気的特性を評価した。
(例6~例10)
例6~例10では、以下の表3に示すように温度条件を120℃~220℃に変化させてグラフェン材料を製造した。
得られたグラフェン材料を電極に用い、上述したのと同様の電気二重層キャパシタ(CR2032型コインセル)を作製し、電気化学測定を行った。比容量-電圧測定(CV測定)、ガルバノスタット充放電測定を、室温において、0V~3.5Vの電位範囲で行った。
表3には、0.1A/g~5.0A/gの電流密度範囲において得られた比容量およびレート特性の結果を示した。
表3によれば、水熱処理の温度が140℃の場合、レート特性は80%以上である一方で、0.1A/gでの比容量は126F/gであった(例7)。これに対して、水熱処理の温度が160℃の場合、0.1A/gで155F/gの比容量を示し、レート特性は81%であった(例8)。また、水熱処理の温度が180℃、220℃の場合、0.1A/gで154F/g、157F/gの比容量を示し、レート特性は83%であった(例9、例10)。これより、水熱処理の温度が140℃を上回ると、0.1A/gで150F/g以上の比容量を示し、かつ、80%以上のレート特性を示し得ることが示唆された。これらの結果から、水熱処理の温度条件としては150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましいことがわかった。
(例11~例15)
例11~例15では、以下の表4に示すように時間条件を2時間~24時間に変化させてグラフェン材料を製造した。
得られたグラフェン材料を電極に用い、上述したのと同様の電気二重層キャパシタ(CR2032型コインセル)を作製し、電気化学測定を行った。比容量-電圧測定(CV測定)、ガルバノスタット充放電測定を、室温において、0V~3.5Vの電位範囲で行った。
表4には、0.1A/g~5.0A/gの電流密度範囲において得られた比容量およびレート特性の結果を示した。
表4によれば、水熱処理の時間が8時間の場合、0.1A/gで150F/gの比容量を示した一方で、レート特性は77%であった(例14)。これに対して、水熱処理の時間が12時間の場合、0.1A/gで155F/gの比容量を示し、レート特性は81%であった(例8)。また、水熱処理の時間が24時間の場合、0.1A/gで158F/gの比容量を示し、レート特性は83%であった(例15)。これより、水熱処理の時間が8時間を上回ると、0.1A/gで150F/g以上の比容量を示し、かつ、80%以上のレート特性を示し得ることが示唆された。これらの結果から、水熱処理の時間条件としては10時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましいことがわかった。
(例16、例17)
例16および例17では、以下の表5に示すように、熱還元グラフェン酸化物分散液の分散媒を、それぞれ、エタノール、および、エタノール:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF):水=90:9:1(体積比)の混合溶媒として、グラフェン材料を製造した。
得られたグラフェン材料を電極に用い、上述したのと同様の電気二重層キャパシタ(CR2032型コインセル)を作製し、電気化学測定を行った。比容量-電圧測定(CV測定)、ガルバノスタット充放電測定を、室温において、0V~3.5Vの電位範囲で行った。
表5には、0.1A/g~1.0A/gの電流密度範囲において得られた比容量およびレート特性の結果を示した。
表5によれば、分散媒が水、または、エタノールの場合、0.1A/gで155F/g以上の比容量を示し、レート特性は85%以上であった(例8、例16)。これに対して、分散媒が上述の混合溶媒である場合、0.1A/gでの比容量は130F/gであり、レート特性は61%であった(例17)。これらの結果から、水熱処理に供する熱還元グラフェン酸化物分散液の分散媒(図1のステップS130で用いる分散媒)としては水またはエタノールが好ましいことがわかった。さらに、表3および表4の結果を考慮すると、分散媒としては水がより好ましいと考えられる。
本発明のグラフェン材料を製造する方法は、還元剤を使用しない製造工程を経ながらも、電気的特性などの物性に優れたグラフェン材料を製造することができる。すなわち、危険性が低い工程を経て、経済的かつ効率的に、グラフェン材料を製造できる方法であり、大量生産のためのスケールアップが容易である。このような製造方法によって製造される、本発明のグラフェン材料は、グラフェンが本来有する電気的特性を効果的に発揮することができ、蓄電デバイス用の(特に、電気二重層キャパシタ用の)電極材料をはじめ、各種の分野への応用が期待される。
200 電気二重層キャパシタ
210 正極電極
220 負極電極
230 電解質
240 セパレータ
250 セル

Claims (9)

  1. グラフェン材料を製造する方法であって、
    グラフェン酸化物を準備するステップと、
    前記グラフェン酸化物を300℃~700℃で熱処理するステップと、
    前記熱処理されたグラフェン酸化物を分散媒に分散し熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するステップと、
    前記熱還元グラフェン酸化物分散液を150℃~250℃で水熱処理するステップと
    を包含することを特徴とする、方法。
  2. 前記熱処理するステップの時間は1分以内であり、前記水熱処理するステップの時間は10時間~36時間の範囲である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するステップにおいて、前記分散媒は水またはエタノールである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記熱処理するステップは、前記グラフェン酸化物をマッフル炉中350℃~500℃で1分以内熱処理し、
    前記熱還元グラフェン酸化物分散液を調製するステップにおいて、前記分散媒は水であり、
    前記水熱処理するステップは、前記熱還元グラフェン酸化物分散液をオートクレーブ中160℃~220℃で12時間~24時間水熱処理する、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. グラフェンシートの凝集が実質的に存在せず、XPS分析による酸素含有量が7.0%以下である、グラフェン材料。
  6. 高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像から測定される前記グラフェンシートの層数が7以下である、請求項5に記載のグラフェン材料。
  7. 請求項5または6に記載のグラフェン材料を含有するグラフェン電極。
  8. 導電材料およびバインダをさらに含有する、請求項7に記載のグラフェン電極。
  9. 電気二重層キャパシタ用である、請求項7または8に記載のグラフェン電極。
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