以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
実施形態に係る固定具は、吊部材10等の長尺部材に被支持物を固定するための固定具であって、被支持物を支持する支持部と、支持部が一側に取り付けられた基部、及び、基部の他側に設けられると共に、開口から係合孔内に導入された長尺部材に当接端部が当接して係合する係合部を有した取付本体と、係合孔内において一端部側から当接端部側に長尺部材を付勢する付勢部材と、を備え、付勢部材には、長尺部材の側面部に係止して長尺部材が係合孔から外れることを規制する係止構造を形成したものである。
なお、以下の各実施形態において、各部の材質は金属製、樹脂製、積層体製等種々に選択できるが、少なくとも付勢部材は吊部材(長尺部材)に確実な装着が可能な弾性力を有する金属製素材を選択することが好ましい。
〔第1実施形態〕
図1~図8は、本発明の第1実施形態の説明図である。
図1は固定具単体を示し、図2は固定具を吊部材に装着した状態、図3は固定具に長尺物を設置した状態の説明図である。図5~図8は固定具の作用の各説明図である。
図1~図3に示すように、垂下された吊部材(「長尺部材」に相当)10に単数、複数の配管等の被支持物12(図3に示す)を支持する支持バンドからなる支持部14を取り付けて支持するための固定具に関するものである。第1実施形態では、吊部材10は図示しない建築物の天井スラブ等の構造体に上部が固定され他の部分が下方に向けて垂下されたものであり、以下の説明において、固定具の上、下は吊部材10に設置した状態の上、下をいうものである。
第1実施形態の固定具は、被支持物12を支持する支持バンドからなる支持部14と、支持部14が一側に固定された板状の基部16、及び、基部16の他側に設けられると共に、開口18a、18aから係合孔18、18内に導入された吊部材10に当接端部18b、18bが当接して係合する係合部20、20を有した取付本体22と、係合孔18、18内において一端部18c、18c側から当接端部18b、18b側に吊部材(長尺部材)10を弾性的に付勢する付勢部材24と、を備える。
第1実施形態では、付勢部材24には、吊部材の側面部に係止して吊部材が係合孔18、18から外れることを規制する凹所からなる係止構造26を形成したものである。
取付本体22は、基部16の上、下(吊部材10の長さ方向に沿う方向)に離隔した位置から支持部14の取り付け側の反対側に突出すると共に基部16の幅方向の一側の開口18a、18aから吊部材10を導入し、その吊部材10に係合する係合孔18、18が形成された上、下の係合部20、20を有している。
付勢部材24は、係合孔18、18内において(位置する)吊部材10を基部16から離れる方向に付勢するものである。また、付勢部材24には、係合孔18、18内に位置した状態において吊部材10の側面部を嵌入させ、吊部材10の開口18a、18a方向への移動を阻止して係合孔18、18から外れることを規制する凹所からなる係止構造26を形成したものである。
吊部材10は、建築構造体に吊り下げて固定された全ネジの長尺ボルト(吊りボルト等)である。
支持部14は、上方から被支持物12を導入する導入口14a1が開口した全体が側方視で概略U字形状に折り曲げ形成された本体部14aと、本体部14aの上方の導入口14a1を開閉可能な蓋部材14bとを備える。本体部14a及び蓋部材14bは、幅端部が折り曲げられて補強される。蓋部材14bは、基部16の反対側端が本体部14aにヒンジ14hによって回動可能に連結され、基部16側端を切り欠きに引っかけて留める等各種の係止構造14cによって係止・開放可能に設けられる。
取付本体22において、基部16は、取付け状態で吊部材10に沿う上、下方向に沿った略帯形状の金属製のものである。基部16の支持部14を固定する取り付け側の反対側に基部16の上、下端部から上、下の係合部20、20が突出するように、基部16及び上、下の係合部20、20は側方から見て略コ字状に折り曲げ等で一体に形成されたものである。なお、上、下の係合部20、20は、基部16に溶接等で固定して取付本体22を形成してもよい。
また、基部16の一側に支持部14が位置し、他側に付勢部材24が位置して、基部16に支持部14と付勢部材24とがリベット留めや、ボルト・ナットによる締結など種々の固定部材30で固定されている。
実施形態において、係合部20は、開口18a付近で一端部18c側に突出し、開口18aの間隔を一端部18c及び当接端部18bの間隔よりも小さくする係止部18dが形成されている。付勢部材24で付勢された状態で、係合孔18内の吊部材(長尺部材)10が外力によって開口側に移動した際に、係止部18dが吊部材10の移動を規制する構造となっている。
詳しくは、上、下の係合部20、20は、それぞれ係合孔18、18が切りかかれて形成された概略C字形状に形成されている。上、下の係合部20、20においては、係合孔18、18の開口18a、18a付近よりも内部であって支持部14側の一端部18c、18cが基部16の幅方向に平行に形成され、支持部14の反対側の部分が抉れた(えぐれた)ようにやや広く形成され、その抉れた部分に吊部材10にネジ山に係合するよう先端がテーパー状に形成された当接端部18b、18b(係止爪)が形成される。また、抉れた部分よりも開口18a、18a付近側が支持部14側にL字形状に突出した係止部18d、18dが形成される。
付勢部材24は、開口18a、18aから係合孔18,18内に吊部材10を導入する際に吊部材10によって付勢部材24を押圧するための導入端部28が凹所からなる係止構造26に連続して形成されている。
具体的には、付勢部材24は、導入端部28から凹所からなる係止構造26が連続して一体に形成されたものであって、上、下の係合部20、20の間に位置し、全体に金属等の弾性材から形成されている。導入端部28は、凹所からなる係止構造26に近づくにつれて基部16から離れる斜面に形成され、導入端部28の終端部28eよりも係止構造26が基部16に近い位置に形成されたものである。
付勢部材24において、係止構造26の上下方向の両端部に、吊部材10のネジ山に係止する係止爪26a、26aが突出形成される。
また、付勢部材24は、幅中央部が切りかかれた(切り欠き箇所24c)金属製板材が上下方向視でV字形状に折り曲げられて形成されたものである。折り曲げ箇所24aを境にして基部16(支持部14)側に基部16に固定部材30によって固定される平坦部分24bと操作部32aが形成され、一方、基部16の反対側に導入端部28、係止構造26及び操作部32bが形成されたものである。
操作部32aは、平坦部分24bから段部を経由して基部16から数ミリメートル離隔するように形成されたものである。両操作部32a、32bを作業者が摘まんで近づけるように加圧することにより、導入端部28が平坦部分24bに近づくように曲がり、吊部材10を係合孔18に導入することができ、作業者にとって取り扱いがしやすい。
付勢部材24は折り曲げ箇所24aを中心にV字形状を呈しているため、折り曲げ箇所24aから弾性的に曲げ変形が可能である。一方、凹所からなる係止構造26が直線的な導入端部28によって折り曲げ箇所24aまで支持されるため、係止構造26が開口18a、18aに近づく方向へは変形し難い構造になっていることから、係止構造26に嵌り込んだ吊部材10が移動するのを強固に規制することができる。なお、係止構造26及び導入端部28が吊部材10の移動を規制できれば、曲げ成形されている等種々の形状に成形できる。
導入端部28は、切り欠き箇所24cによって、折り曲げ箇所24aから係止構造26側に向かって概略U字形状を呈しており、切り欠き箇所24cを通して固定部材30に工具を装着して固定部材30の固定(具体的には、ボルト・ナットによる締め付け固定やリベット留め)を行うができる。
また、導入端部28は、係止構造26に近づくにつれて基部16から離れる斜面が2つ形成されているので、吊部材10が長さ方向に2カ所で支えて導入することができ、位置がずれにくい。
導入端部28の終端部28eよりも係止構造26の凹所が基部16に近い位置に形成されたものである。具体的には、導入端部28が基部16から離れて行き、終端部28eで一端、基部16方向に曲がって凹所からなる係止構造26に連続し、係止構造26から基部16から離れるように延びて平坦な操作部32bに連続する。切り欠き箇所24cは、導入端部28、係止構造26を幅方向で2つに分けていて操作部32bの途中まで続き、操作部32bで一体かつ平坦に形成されている。
付勢部材24の係合孔内の吊部材(長尺部材)10が、外力によって付勢部材24を変形させて一端部18c側に移動した場合に、吊部材10が一端部18cに当接して位置規制され(図6(b)参照)、それと共に、付勢部材24が変形操作された場合に、付勢部材24は一端部18cよりも当接端部18bから離れる奥側位置に変形可能な構造(図5参照)になっている。
具体的には、付勢部材24は、折り曲げ箇所24aが弾性変形によって折り曲げ変形する際に可動域については、図5によって説明するように、当接端部18bから離れて基部16側に移動すると、一端部18cを超えて基部16に近づくように導入端部28が折れ曲るように移動する範囲となっている。また、外力によって付勢部材24を変形させて一端部18c側に移動した場合に、吊部材10が一端部18cに当接して位置規制される。
〔第1実施形態の作用効果〕
図5は、吊部材10に固定具を取付け・取り外しする際の操作状態を示す。
図5に示すように、付勢部材24が変形操作された場合に、付勢部材24は一端部18cよりも当接端部18bから離れる奥側位置に変形可能な構造になっている。
固定具を吊部材10に取付け・取り外しする時には、図5に示すように、作業者が操作部32a、32bを手指で摘み、力を加えることにより、付勢部材24の弾性力に抗して操作部32a、32b同士が近づけるように深く曲げ変形させる。
付勢部材24の曲げ変形させることによって、図5に示すように、係合孔18、18内において、支持部14側の一端部18c、18cの位置よりも、付勢部材24の導入端部28から係止構造26が支持部14側に隣接し、又は、入り込み、吊部材10が開口18a、18aから係合孔18、18内に容易に導入できる。これにより、吊部材10を係合孔18内に開口18a、18aから着脱できる。
別の固定具の装着方法として、操作部32a、32bを摘ままずに押し込みによって固定具を吊部材10に装着することができる。
つまり、開口18a、18aに吊部材10を嵌めて係合孔18、18内に吊部材10を押し込むように固定具に力を加えることによって、吊部材10が開口18a、18aの係止部18d、18d側端(支持部14の側)と導入端部28間に入り込む。その後、吊部材10が導入端部28の斜面を滑って付勢部材24を押し開き、吊部材10が終端部28eを越えて図2、図6(a)に示すように、凹所からなる係止構造26に嵌り込み固定具の取り付けが完了する。この際、吊部材10は付勢部材24によって支持部14の反対側に向けて付勢・押圧されるため、吊部材10のネジ山に当接端部18b、18bが噛み込み、係合孔18に対して、固定具は、吊部材10の上下方向の位置が固定されるためずれが防止できる。
吊部材10に固定した固定具に被支持物12を設置する際には、図3に示すように、支持部14の蓋部材14bを開いて被支持物12を本体部14aに導入し、蓋部材14bを閉じて設置を完了する。
付勢部材24の係合孔18内の吊部材(長尺部材)10が、外力によって付勢部材24を変形させて一端部18c側に移動した場合に、図6(b)に示すように、吊部材10が一端部18cに当接して位置規制される構造となっているので、吊部材10が係合孔18から外れるのを防止できる。
地震時等大きな外力が加えられた場合、被支持物12の重量によって支持部14が振動して、支持部14の移動によって吊部材10が付勢部材24を支持部14側に押圧した場合、図6(b)に示すように、付勢部材24は押圧力によって支持部14側に曲がる。吊部材10が係合孔18、18の支持部14側の一端部18c、18cの端面に当たってこれ以上移動しなくなる。
さらに、支持部14の移動によって吊部材10が係合孔18、18の開口18a、18aに移動して付勢部材24を押圧した場合、図7、図8に示すように、吊部材10は、係合孔18、18内において凹所からなる係止構造26に嵌り込んでいて、導入端部28が折り曲げ箇所24aに向けて弾性変形し難いため、吊部材10は、係止構造26に連続する付勢部材24によって開口18a、18a方向への移動が規制され、吊部材10が係合孔18、18から外れるのを防止できる。
ここで、第1実施形態では、図8に示すように、付勢部材24において、係止構造26の凹所に隣接して導入端部28の終端部28eが当接端部18b側に突出した凸部になっている。この構成によって、係合孔18内の吊部材10(長尺部材)が地震等の外力によって前記付勢部材を変形させて前記一端部側に移動した場合に、前記開口の終端部28eの凸部で狭められた間隔δが、吊部材10(長尺部材)の外径Dよりも小さいものである。この場合、吊部材10(長尺部材)が一端部18cに当接した際に、係合孔18、18の係止部18d、18dと導入端部28の終端部28eとの間隔δが吊部材10(長尺部材)の外径Dよりの狭い構造とすることにより、吊部材10が係止部18d、18dと終端部28e、28eに当たるので、それ以上、吊部材10が間隔δを通ることがなく、確実に規制できる。
したがって、地震時等の強い外力が吊部材10(長尺部材)及び被支持物12に加わっても係合孔18,18から外れるのを確実に防止できる。
〔第2実施形態〕
図9は、第2実施形態に係る固定具の説明図である。
第2実施形態に係る固定具は、第1実施形態の支持部14、基部16及び上、下の係合部20等は同様構造であり、同様部分に同一符号を付する。
図9に示すように、第2実施形態は、付勢部材24Aは、開口18a、18aから係合孔18、18内に吊部材10(長尺部材に相当、第1実施形態の吊部材10と同様のため図示省略)に導入する際に吊部材10によって付勢部材24Aを押圧するための導入端部28Aが凹所からなる係止構造26Aに連続して形成されたもの固定具であって、導入端部28Aは、基部16と略平行に形成され、導入端部28Aの終端部28Aeよりも係止構造26Aが基部16に近い位置に形成されたものである。
取付け部24Aaは、基部16に密着し固定部材30によって固定される平坦なものである。取付け部24Aaの幅は、基部16の幅内に収まる寸法に形成されている。
基部16の幅方向であって開口18a、18a側を一側(符号「W1」で示す)、その逆側を他側(符号「W2」で示す)とする。
連続部24Abは、取付け部24Aaの他側W2の端部で支持部14から離れる方向(符号「D1」で示す)に90度の角度で連続する。
付勢部材24Aは、基部16に接して固定部材30で固定される平坦な取付け部24Aaと、後述の基部16の他側W2で取付け部24Aaが折れ曲り支持部14から離れる方向D1に垂直に立ち上がる連続部24Abと、連続部24Abの延在する端部で基部の一側W1側に折り曲がり基部16側に凹んで形成された係止構造26Aと、係止構造26Aの一側W1方向に連続する導入端部28Aが上下方向視(吊部材10の軸方向視)で概略コ字形状の断面を呈して構成されたものである。
実施形態では、付勢部材24Aは、同一厚の金属板材がプレス成形等によって折り曲げ形成されて各部が構成されたものである。この構成は一例であり、各部又は一部を別に成形して溶接等によって固定する構成にすることも可能である。
係止構造26Aは、連続部24Abの先端に連続し、係止構造26Aから導入端部28Aが一側W1に延びて形成され、導入端部28Aの先端は基部16の一側端より先方に延びている。
導入端部28Aにおいて吊部材10を導入時に摺動させる摺動面28Asよりも凹所からなる係止構造26Aの底部26Abが基部16側に凹んでいる。
第2実施形態に係る固定具の吊部材10への取り付け時には、作業者が導入端部28Aを基部16側に折り曲げて、摺動面28Asに吊部材10を押し当てる。その吊部材10を開口18a、18aから係合孔18、18内に押し入れていき、係合孔18、18内において吊部材10は係止構造26Aに嵌り込んで保持される。
吊部材10は、係合孔18、18内において係止構造26Aに嵌り込んでいて、係合孔18,18内において、係止構造26Aに比較して導入端部28Aの終端部28Aeが突出する凸部になり脱落を防止する。係止構造26Aの凹部は吊部材10に面でフィットして、安定した付勢力を与え、脱落防止力も安定する。
したがって、吊部材10は、係止構造26に連続する付勢部材24によって開口18a、18a方向への移動が規制され、吊部材10が係合孔18、18から外れるのを確実に防止できる。仮に係止構造26Aから導入端部28Aにずれようとしても開口側の係止部18d、18dに吊部材10が当接して外れることを防止できる。
〔第3実施形態〕
図10は、第3実施形態に係る固定具の説明図である。第3実施形態に係る固定具は、第1実施形態の支持部14、基部16及び上、下の係合部20等は同様構造であり、同様部分に同一符号を付する。
図10に示すように、第3実施形態に係る固定具は、第1実施形態と同様構造の支持部14が固定された基部16と、吊部材10(中心軸を二点鎖線で示す)に係合する係合孔18、18が形成された上、下の係合部20、20を有した取付本体22とを備えている。
そして、第3実施形態に係る固定具は、上、下の係合部20、20との間に、一端部18c側から当接端部18b側に、具体的には、基部16から離れる方向に係合孔18、18内の吊部材10を付勢する付勢部材24Bと、付勢部材24Bとは別に、係合孔18、18内における吊部材10の側面部を嵌入させて凹所からなる係止構造26Bが形成され、吊部材10を基部16から離れる方向に付勢して吊部材10が係合孔18、18から外れることを規制する脱落防止部材34と、を備えた固定具である。
付勢部材24Bは、幅中央部が切りかかれた(切り欠き箇所24Bc)金属製板材が上下方向視でV字形状に折り曲げられて形成されたものである。付勢部材24Bは、折り曲げ箇所24Baを境にして支持部14側から基部16に当接して固定部材30によって固定される平坦部分24Bbと操作部32Baが形成され、一方、基部16の反対側に斜面の導入端部28Bから操作部32Bbまで平坦に一体に形成されたものである。導入端部28Bの上下端に吊部材10のネジ山に係止する係止爪28Ba、28Baが形成される
脱落防止部材34は、長さ方向の途中に係止構造26Bが形成され、弾性的に変形可能な概略帯状部材であって、長さ方向が基部16の幅方向に対して斜めに延在している。係止構造26Bの前・後に斜面34b・34bを有している。
付勢部材24Bと脱落防止部材34は、金属板材を一体にプレス成形したものである。
第3実施形態に係る固定具の吊部材10への取り付け時には、作業者が操作部32Ba、32Bbを摘まんで導入端部28Bを基部16側に折り曲げて、摺動面28Bsに吊部材10を押し当て、吊部材10を開口18a、18aから係合孔18、18内に押し入れていく。同時に、吊部材10は、係合孔18、18内において係止構造26Bに嵌り込む。係合孔18、18内において、脱落防止部材34の係止構造26Bに嵌り込んで位置決めされるため、吊部材10は、脱落防止部材34によって開口18a、18a方向への移動が規制され、吊部材10が係合孔18、18から外れるのを確実に防止できる。
第3実施形態に係る固定具では、付勢部材24Bと脱落防止部材34が別に形成されるため、吊部材10に固定具を取り付けた後に、付勢部材24Bを緩めることによって取り付けた高さを調整することができる。
このときには、作業者が操作部32Ba、32Bbを摘まんでその付勢力を弱め、吊部材10と当接端部18bや係止爪28Ba、28Baとの係合を解除して、吊部材10に対する高さ調整を行う。付勢部材24Bの付勢力を弱めるだけで、脱落防止部材34を変形させないので、吊部材10は係止構造26Bから外れないので、上、下の係合部20、20の係合孔18内において開口18a、18a方向に移動せずに上下方向のみに移動する。したがって、固定具が吊部材10から脱落しない。
また、付勢部材24Bの弾性力と脱落防止部材34の弾性力を別途に設定できるので、適切な装着圧力にすることができる。
〔第4実施形態〕
図11は、第4実施形態に係る固定具の説明図である。第4実施形態に係る固定具は、第1実施形態の支持部14、基部16等は同様構造であり、同様部分に同一符号を付する。
図11に示すように、第4実施形態に係る固定具は、支持部14が固定される基部16と、吊部材10(中心軸を二点鎖線で示す)に係合する上、下の係合部36U、36Dを有した取付本体38とを備えている。
上の係合部36Uは、基部16の幅方向他側(「W2」で示す)に開口が向く係合孔36Uaが形成される。下の係合部36Dは、基部16の幅方向一側(「W1」で示す)に開口が向く係合孔36Daが形成される。各係合部36U、36Dの係合孔36Ua、36Daは概略U字形状を呈し、それぞれの開口は、W2、W1方向という逆方向を向いている。
固定具は、各係合部36U、36D間に、吊部材10に付勢力を与える付勢部材40と脱落を防止する脱落防止部材42とが一体に形成された付勢体44が固定部材30によって基部16に固定されたものである。付勢体44は弾性金属板材をプレス成形して構成されるが、各部又は一部を別に形成して溶接によって一体に構成することができる。
具体的には、付勢体44は、基部16側に固定する平坦部分44aと、平坦部分44aの上端・下端に連続して基部16から離れる方向に斜めに曲げ成形された舌状部44b(付勢部材40及び脱落防止部材42の形成部分の弾性板材)とを備えたものである。
舌状部44bには、先端部から矩形状に切り欠かれた凹所(「係止構造」に相当)40aが形成され、凹所40aから平坦部分44aに近い側に付勢部材40が形成される。この場合、凹所40aの幅両端部から平坦部分44aに向けて切り込み40b、40bが形成される。この切り込み40b、40bに挟まれた部分が切り込み40b、40bによって他から部分的に切り離されて弾性変形可能な付勢部材40となり、凹所40a内の装着された吊部材10を弾性的に押圧する機能を発揮する。
また、脱落防止部材42は、舌状部44bにおいて、切り欠かれた凹所40aに隣接する壁状部であって、係合孔36Ua、36Daの開口側に位置する部分として形成されたものである。脱落防止部材42は、係合孔36Ua、36Da内における吊部材10が基部16の幅方向(W2、W1方向)に移動しようとした場合に、吊部材10に当接してそれ以上の移動を規制して、凹所40aからの脱落を防止する機能を発揮する。
舌状部44bにおいては、付勢部材40と脱落防止部材42が切り込み40b、40bによって分かれ、付勢部材40と脱落防止部材42の端縁が凹所40aを取り囲んでいる。
したがって、脱落防止部材42は、凹所40aに隣接する壁状部として形成される。また、壁状部には係合孔36Ua、36Daの開口側方向に突出して膨出部40cを面一に延設している。この膨出部40cは、作業者がその膨出部40cを指で押して脱落防止部材42を支持部14側に折り曲げることによって、吊部材10を凹所40a内に装着可能な構成とされている。
第4実施形態の固定具では、弾性体からなる付勢体44において、凹所40a内に吊部材10が装着された状態では、凹所40a端縁を形成する脱落防止部材42によって吊部材10の移動を確実に規制して脱落防止機能を発揮し、それと共に、付勢部材40が吊部材10をD1方向に押圧して係合部36U、36Dの係合孔36Ua、36Da内周面に押し当てる。係合孔36Ua、36Daの内周面の端縁にネジ山に当接、係合するテーパー部を設けることによって、その端縁が係止爪の作用を奏し、位置決め機能を発揮する。
〔第5実施形態〕
図12は、第5実施形態に係る固定具の説明図である。
図12に示すように、第5実施形態に係る固定具は、第4実施形態と同様構造の支持部14が固定された基部16と、吊部材10(中心軸を二点鎖線で示す)に係合する係合孔36Ua、36Daが形成された上、下の係合部36U、36Dを有した取付本体38とを備えおり、同様部分に同一符号を付する。
固定具は、各係合部36U、36D間に、吊部材10に付勢力を与える付勢部材50と吊部材10の脱落を防止する脱落防止部材52とが一体に形成された付勢体54が固定部材30によって基部16に固定されたものである。付勢体54は弾性金属板材をプレス成形して構成されるが、各部又は一部を別に形成して溶接によって一体に構成することができる。保持部50bは一体成形しても、別部材を溶接などによって固定して一体化してもよい。
具体的には、付勢体54は、基部16側に固定する平坦部分54aと、平坦部分54aの上端・下端に連続して基部16から離れる方向に斜めに曲げ成形された付勢部材50(脱落防止部材52が形成されている)とを備えものである。
付勢部材50は、基部16から離れる方向に斜めに突出する弾性板材からなるものである。付勢部材50の先端側(基部16から離れる側)には、吊部材10の側面部を嵌入させ吊部材10が上・下の係合孔36Ua・36Daから外れることを規制する凹所50aを付勢部材50の基部16側に凹ませて形成される。凹所50aには、吊部材10の側面を保持する筒側面部状の保持部50bが吊部材10の長さ方向に沿うように設けられたものである。
付勢部材50の凹所50aの幅方向両側には、吊部材10を支える壁状部が脱落防止部材52として形成されている。
吊部材10は、係合孔36Ua、36Da内において凹所50aに嵌り込んでいて、保持部50bによって凹所50a内の吊部材10に面でフィットして、付勢部材50から安定した付勢力を与えて保持するので、吊部材10が軸方向に移動するのを防止することができる。それと共に、吊部材10を脱落防止部材52によって幅方向両側から支えるので地震等の振動が加わっても吊部材10が係合孔36Ua、36Daから脱落するのを確実に防止できる。
〔第6実施形態〕
図13は、本発明の第6実施形態に係る固定具の立体的な斜視説明図である。
第6実施形態に係る固定具は、交差する全ネジボルト同士を固定する交差金具に関するものであり、図13に示すように、全ネジボルトからなる長尺部材10と全ネジボルトからなる被支持物112を交差部で固定するための交差金具としての固定具であって、例えば、天井吊り型の機器を吊りボルトで吊下げる際に、この吊りボルトに連結して機器の振れを止める斜材用の全ネジボルト(第6実施形態では、長尺部材10、被支持物112に相当)同士を固定するための交差金具として利用可能なものである。
第6実施形態に係る固定具は、主に、被支持物112を支持する支持部114と、支持部114が一側に取り付けられた基部16等を備える、その他の基部16、係合部20、取付本体22、付勢部材24などは第1実施形態の固定具と同様構造であるため、同一部分に同一符号を付している。
第6実施形態の固定具は、第1実施形態の支持部14からなる支持部に代えて、基部116、係合部120、取付本体122,付勢部材124等を備えた支持部114を設けものである。
この支持部114は、第1実施形態の固定具と同様構造であり、同一部分に、係合部120、取付本体122,付勢部材24等のように、100を加えた符号を付している。
また、取付本体22の基部16と、支持部114の取付本体122の基部116とは背中合わせにし、かつ、各長さ方向が任意の角度に回転した位置にして、固定部材30によって互い回転可能に固定した構造である。
詳しくは、固定具の支持部114は、基部116、及び、基部116の一側(長尺部材10の反対側)に突出して設けられると共に、開口118a、118aから係合孔118、118内に導入された長ネジボルトからなる被支持物112に当接端部118b、118bが当接して係合する係合部120、120を有した取付本体122と、係合孔118、118内において一端部118c、118c側から当接端部118b、118b側に被支持物112を付勢する付勢部材124と、を備え、付勢部材124には、被支持物112の側面部に係止して被支持物112が係合孔118、118から外れることを規制する凹所からなる係止構造126を形成したものである。
第6実施形態の固定具は、全体として、第1実施形態の固定具と同様の作用効果を奏する他、支持部114も固定具と同様の作用効果を奏し、被支持物12の長尺ボルトの取り付け取り外しが容易であり、抜け留め機能を有する。その他、固定部材30を中心に基部16と支持部114が回転可能である。固定部材30はある程度回転可能な構造にすることによって、長尺部材10と被支持物112の交差角度に合わせて各係合部120、120の位置を合わせ、その後に固定部材30を固定するなどの施工ができ、斜材の交差角度に容易に合わせて長尺部材10と被支持物112同士を容易に固定することができる。
〔第7実施形態〕
図14は、第7実施形態に係る固定具の立体的な斜視説明図である。
図14に示すように、第7実施形態に係る固定具は、フック形状の支持部214がロープや布状の被支持物(図示省略)を引っかけて固定できるものであり、その他の基部16、係合部20、取付本体22、付勢部材24等の構成は、第1実施形態と同様であり同様部分に同一符号を付している。
支持部214は直線状に延びる本体214aと、本体214aの下端(一端の例)に支持端214bが弧を描いて曲がったフック形状の支持端とを一体に備えたものである。
第7実施形態に係る固定具によれば、被支持物として例えばハトメの施されたフレキシブルダクトのハトメ穴に支持端214bを掛け留めして、フレキシブルダクトを簡易に吊部材(長尺部材)に吊下げることができるため、固定具を適宜の吊部材に固定して被支持物を固定可能である。
〔第8実施形態〕
図15~図18は、第8実施形態に係る固定具の説明図である。図15は吊部材(長尺部材)を装着した施工完了時、図16は脱着時、図17は地震時の各斜視説明図である。図18は(a)に施工完了時、(b)に脱着時、(c)に地震時の各平面図を示す。
第8実施形態に係る固定具は、吊部材10等の長尺部材に配管等の被支持物を固定するための固定具であって、上下の係合部320のそれぞれにおいて係合孔318の開口318aの開いている方向が、第1実施形態と異なり、取付本体322の基部316に対して垂直方向外側、言い換えれば、開口318aが支持部14の取り付け側と反対側に開口しているものである。なお、第1実施形態と固定具と支持部14等の同様部分には、同一符号を付している。
第8実施形態に係る固定具は、配管等の被支持物(図示省略)を支持する支持部14と、支持部14が一側に取り付けられた基部316、及び、基部316の他側に設けられると共に、他側に向いた開口318aから係合孔318内に導入された吊部材10に当接端部318bが当接して係合する係合部320を上下に離隔して対で有した取付本体322と、係合孔318内において一端部318c側から当接端部318b側に吊部材10を付勢する付勢部材324と、を備え、付勢部材324には、吊部材10の側面部に係止して吊部材10が係合孔318から外れることを規制する係止構造326を形成したものである。
付勢部材324は係止構造326に凸部326aを設けている。図18に示すように、凸部326aは付勢部材324の本体324aに対してほぼ45~90度の範囲で立ち上がるように折り曲げ等によって形成されている。係止構造326は、凸部326aの基部216側が吊部材10に当接することによって、吊部材10が開口方向に移動することを規制する機能を奏する。
固定具の作用を説明する。
固定具の吊部材10への脱着時には、図16、図18(b)に示すように、作業者が付勢部材324の操作部332を器具等で把持し、付勢部材324の凸部326aを一端部318cを超える位置まで曲げて、吊部材10を係合孔318に装着する。
装着時には、図15、図18(a)に示すように、付勢部材324がその弾性力で吊部材10を押え、当接端部318dに押し付けて当接端部318dが吊部材10に噛み込んで固定具は確実に固定状態となる。
地震時等の外力が加わった際には、図17、図18(c)に示すように、係合孔318内の吊部材10(長尺部材)が外力によって付勢部材324を変形させて一端部318c側に移動しても、開口318aの凸部326aで狭められた間隔δが、長尺部材の外径Dよりも小さい構造となっている。
吊部材10は、外力によって移動して一端部318cに突き当たった場合、一端部318cで位置が規制されそれ以上付勢部材324を押し広げることがない。また、開口318a方向に移動しても凸部326aに突き当たり、それ以上開口方向に移動することを防止し、外れないようにできる。
なお、第1実施形態の開口18aの向きと、第8実施形態の開口318aの向きが異なるが、本発明において、付勢部材の形状を工夫すれば、基部は、当接端部側、一端部側、開口の反対側のいずれの箇所にも設置できる。この場合、開口、当接端部、一端部、付勢力の方向の位置関係を不動とする。
〔第9実施形態〕
図19、図20は、第9実施形態に係る固定具の説明図である。
第9実施形態に係る固定具は、第1実施形態の支持部14、基部16及び上、下の係合部20等は同様構造であり、同様部分に同一符号を付する。
第9実施形態の固定具は、図19、図20に示すように、被支持物12を支持する支持バンド(支持部)14と、支持部14が一側に固定された板状の基部16、及び、基部16の他側に設けられると共に、基部16の幅方向に沿った方向に開口18a、18aから係合孔18、18内に導入された吊部材10に当接端部18b、18bが当接して係合する係合部20、20を有した取付本体22と、係合孔18、18内において一端部18c、18c側から当接端部18b、18b側に吊部材(長尺部材)10を弾性的に付勢する付勢部材424と、を備える。
第9実施形態では、付勢部材424には、吊部材10の側面部に係止して吊部材が係合孔18、18から外れることを規制する凸部426aを有する係止構造426を形成したものである。
詳しくは、付勢部材424は、幅中央部が切りかかれた(切り欠き箇所424d)金属製板材が上下方向視でV字形状に折り曲げられて形成されたものである。折り曲げ箇所424aを境にして基部16に固定部材30によって固定された平坦部分424bと操作部432aとが段差424b1を経由して連続形成される。
一方、付勢部材424では、基部16の反対側において、折り曲げ箇所424aから平坦な本体424cが続き、本体424cの途中部で係止構造426の凸部426aが、基部16の反対側で、当接端部18b側に突出して折り曲げ状態に形成される。凸部426a先端から基部16側に曲がって本体424cに戻って操作部432bに連続する構造となっている。つまり、凸部426aは、本体424cと操作部432bに対して基部16から離れる方向に突出して形成されている。
ここで、付勢部材424は係止構造426として凸部426aを設けている。凸部426aは付勢部材424の本体424cの操作部432b側では、本体424cに対してほぼ45~90度の角度範囲で立ち上がるように折り曲げ等によって形成されている。
凸部426aのこの立ち上がり角度によって、地震等の外力が加わった際に吊部材10(長尺部材)が凸部426aに付き当たることによって係止構造426が係止機能を発揮するので、吊部材10が係合孔18から外れることを有効に防止できる。
また、凸部426aの折り曲げ箇所424a側は、本体424cに対して、操作部432b側よりも立ち上がり角度が緩やかになっており、吊部材10の開口18aからの導入の際に、吊部材10が容易に凸部426aを乗り越えやすくしている。
図20に示すように、吊部材10は、外力によって移動して一端部18cに突き当たった場合、一端部18cで位置が規制されそれ以上付勢部材424を押し広げることがない。また、開口18a方向に移動しても凸部426aに突き当たり、それ以上開口方向に移動することを防止し、外れないようにできる。
〔第10実施形態〕
図21は、第10実施形態に係る固定具の説明図である。図21(a)は脱着時、(b)は地震時等の外力が作用した場合の説明図である。
図21に示すように、第10実施形態に係る固定具は、第1実施形態の支持部14、基部16及び上、下の係合部20、付勢部材24等は同様構造であり、同様部分に同一符号を付する。
第10実施形態では、係合孔8内への導入時や外力が加わった際に吊部材(長尺部材)が一端部500aに当接する支持台部500を基部16に設けたものである。対比する第1実施形態では、一端部18cが係合部20の係合孔18内に設けられていたが(図5等参照)、第10実施形態では、図21に示すように、一端部500aが上下の係合部20、20の間に基部16に固定された支持台部500に位置したものである。
一端部500aは、係合孔18内の基部側端18c’よりも反基部16側に突出して位置する。
吊部材(長尺部材)10を脱着する際には、図21(a)に示すように、付勢部材24を操作部32a、32bを摘まんで押し曲げる変形操作をし、係合孔18内に導入可能にする。
付勢部材24の係合孔18内の吊部材(長尺部材)10が、外力によって付勢部材24を変形させて一端部18c側に移動した場合に、図21(b)に示すように、吊部材10が一端部500aに当接して位置規制され、脱落を防止できる。
そして、図21(a)に示すように、付勢部材24が吊部材10の脱着時等に変形操作された場合に、付勢部材24は一端部500aよりも当接端部18bから離れる奥側位置に変形可能な構造になっており、吊部材10の脱着を容易に可能にする。
一端部500aの機能部材は第1実施形態の一端部18c以外に種々に構成・設置できる例である。
その他の構成作用効果は第1実施形態と同様である。
以上述べた各実施形態は本発明の好適なものであるが、本発明の範囲内で変形実施できる。例えば、各実施形態では、支持バンドや取付本体や付勢部材を別部材で形成して固定部材を用いて固定していたが、各部を他の方法例えば溶接で固定したり、一体形成したりする等、本発明の範囲内で種々に変形実施できる。
また、支持バンドは、本発明の支持部の一例である。係合部は上下対の他、単数複数に変形実施できる。