JP7738325B2 - 光硬化性水系スラリー - Google Patents
光硬化性水系スラリーInfo
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Description
1.(1)無機物粒子と、(2)ポリアルキレンイミン、または、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコール鎖を持つ化合物が付加した構造の変性ポリエチレンイミンと、(3)水溶性アクリレートと、(4)光重合開始剤と、を含む光硬化性水系スラリー。
2.前記水溶性アクリレートの含有量は、前記無機物粒子に対して1.5質量%~10.0質量%である前記1に記載の光硬化性水系スラリー。
3.前記ポリアルキレンイミン及び前記変性ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、それぞれ300~50000である前記1または2に記載の光硬化性水系スラリー。
4.前記無機物粒子の含有量は、10体積%~65体積%である前記1~3のいずれかに記載の光硬化性水系スラリー。
5.(5)アニオン性高分子である分散剤をさらに含んだ前記1~4のいずれかに記載の光硬化性水系スラリー。
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーは、無機物粒子と、ポリアルキレンイミン、または、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコール鎖を持つ化合物が付加した構造の変性ポリエチレンイミン(以下、単に「変性ポリエチレンイミン」とも言う。)と、水溶性アクリレートと、光重合開始剤と、を含む。
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーにおいて、無機物粒子は、水系溶媒中で、表面の少なくとも一部にポリエチレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンが付着することができるものであれば特に限定されない。当該無機物粒子としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、水酸化アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の無機化合物の粒子、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)等の粒子が挙げられる。
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーにおいて、水溶性アクリレートは、水溶性多官能アクリレート、または、水素結合性部位(ヒドロキシル基、アミド基、ポリエチレングリコール鎖など)を有する水溶性単官能アクリレートのいずれか一種以上を少なくとも含むことが好ましい。
水溶性多官能アクリレートとしては、変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’-{[(2-アクリルアミド-2-[(3-アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン-1,3-ジイル)}ジアクリルアミド、N,N’,N’’-トリアクリロイジエチレントリアミン、N,N’-ジアクリロイ-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラアミン等が挙げられる。
水素結合性部位を有する水溶性単官能アクリレートとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
水素結合性部位を有する水溶性単官能アクリレートである4-HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート)の構造式を下記式(1)に示す。水溶性多官能アクリレートであるPEGDA(ポリエチレングリコールジアクリレート)の構造式を下記式(2)に示す。
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーにおいて、光重合開始剤としては、光硬化性水系スラリーに光を照射することにより、水溶性アクリレートのラジカル重合を開始するためのラジカルを発生させ、且つ、水溶性であれば特に限定されない。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,2’-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン等が挙げられる。
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーは水系溶媒を含んでいる。本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーは、上述の無機物粒子、ポリアルキレンイミン、または、変性ポリエチレンイミン、水溶性アクリレート、及び、光重合開始剤の溶媒として、水系溶媒を用いることで、作業環境安全性が良好となる。
本発明の実施形態に係るポリアルキレンイミンとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブタジエンイミン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンイミンは、無機物粒子との親和性が高く、スラリー中における無機物粒子の分散安定性及び光硬化性水系スラリーの長期安定性が向上するためより好ましい。
本発明の実施形態に係る変性ポリエチレンイミン(PEI-mPEG)は、下記式(3)に例示するように、ポリエチレンイミン(PEI)にポリエチレングリコール鎖を持つ化合物が付加した構造を有する。なお、変性ポリエチレンイミンの構造は下記式(3)のものに限定されない。
PEG付加率(モル%)=100×MPEG/MEI …(A)
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーは、アニオン性高分子である分散剤をさらに含んでもよい。このような構成によれば、水溶液中で正に帯電するポリアルキレンイミンや変性ポリエチレンイミンが十分固定化できない正に帯電した無機物粒子に対しても、負に帯電するアニオン性高分子を介して、無機物粒子上にポリアルキレンイミンや変性ポリエチレンイミンを吸着させることができる。
次に、本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーの反応機構(硬化の機構)について説明する。
まず、水溶性の多官能アクリレートを用いた光硬化性水系スラリーの反応機構(硬化の機構)について説明する。
本実施形態の光硬化性水系スラリーに光を照射すると、まず、光重合開始剤がラジカルを発生する。すると、水溶性アクリレートがラジカル重合を開始して、水溶性アクリレートの重合体が生成する。また、ラジカル重合は発熱反応であるため、ラジカル重合の開始に伴って熱が発生する。このラジカル重合に起因する熱(反応熱)により、水溶性アクリレート及びその重合体を構成する二重結合に対して、無機物粒子の表面に付着したポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンのアミノ基を付加するマイケル付加反応が生じる。すなわち、本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーは、光を照射することによって、まず水溶性アクリレートのラジカル重合を開始して、そのラジカル重合に起因する熱により、水溶性アクリレート及びその重合体を構成する二重結合とポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンのアミノ基との間でマイケル付加反応が生じる。よって、本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーは、マイケル付加反応を生じさせるために、外部から熱を加える必要がなく、光を照射するだけで、ラジカル重合反応とマイケル付加反応を生じることができる。その結果、本実施形態の光硬化性水系スラリーは、簡便な操作により、無機物成形体を成形することができる。
本実施形態の光硬化性水系スラリーに光を照射すると、まず、光重合開始剤がラジカルを発生する。すると、水溶性アクリレートがラジカル重合を開始して、水溶性アクリレートの重合体が生成する。このとき、水溶性アクリレートの重合体に含まれる水素結合性基が、無機物粒子の表面に付着したポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンと水素結合を形成する。
また、無機物粒子の表面に付着した、ポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンと水系溶媒との親和性が高いためスラリーの粘度が低く、流動性が高くなり、鋳型に容易に注型したり、高精細な光造形が実現できる。また、微量のモノマーで光硬化が可能なため、光硬化性水系スラリーを硬化してなる無機物成形体を製造する際、高速焼成しても無機物成形体が割れ難くなる。さらに、溶媒として水系溶媒を用いており、有機溶剤を使用するものでないため、作業環境安全性が良好となる。
本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーの製造方法は、まず、水系溶媒中にて、ポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンを添加して撹拌することで、ポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンを含む水系溶液を調製する。
無機物成形体は、本発明の実施形態に係る光硬化性水系スラリーを硬化してなる無機物成形体である。
水溶性アクリレートとして多官能アクリレートを用いた場合、水溶性アクリレートおよびその重合体を構成する二重結合に対して、ポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンのアミノ基がマイケル付加反応することによって形成された結合を有する。
より詳細には、無機物成形体は、無機物粒子の表面にポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンが付着し、ポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンのアミノ基が、水溶性アクリレートおよびその重合体を構成する二重結合に対してマイケル付加反応することによって形成された結合を有するものである。
無機物成形体は、水溶性アクリレートおよびその重合体を構成する二重結合に対して、無機物粒子の表面に付着したポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンのアミノ基がマイケル付加しているため、無機物粒子間が強固に架橋している。
したがって、当該無機物成形体によれば、複雑形状部材(成形体)の成形を可能とすることができる。また、無機物成形体を焼結することにより、無機物成形体の複雑形状が維持された焼結体を得ることができる。
無機物成形体の製造方法は、本実施形態の光硬化性水系スラリーに光を照射して、光硬化性水系スラリーを硬化させ、光硬化性水系スラリーからなる無機物成形体を形成する。光硬化性水系スラリーに光を照射することにより、上述のように、水溶性アクリレートがラジカル重合を開始する。
水溶性アクリレートとして多官能アクリレートを用いた場合、このラジカル重合に起因する熱により、水溶性アクリレート及びその重合体を構成する二重結合に対して、無機物粒子の表面に付着したポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンのアミノ基を付加するマイケル付加反応が生じる。
また、水溶性アクリレートとして水素結合性部位を有する水溶性単官能アクリレートを用いた場合、このラジカル重合によって水溶性アクリレートの重合体が生成する。このとき、水溶性アクリレートの重合体に含まれる水素結合性基が、無機物粒子の表面に付着したポリアルキレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンと水素結合を形成する。
これらの結果として、光硬化性水系スラリーが固化または凝集し、無機物成形体が得られる。
-PEI添加光硬化性水系スラリーの作製-
蒸留水に、ポリエチレンイミン(PEI、重量平均分子量(Mw)=1800)を添加し、さらに無機物粒子としてSiO2を分散させて、遊星混合(5分間)及びボールミルを用いた撹拌(24時間)により、無機物粒子の分散液を調製した。
ポリエチレンイミンは、作製する光硬化性水系スラリーにおける含有量がSiO2に対して0.4mg/m2となるように添加した。
SiO2は、平均粒径が約220nmであり、作製する光硬化性水系スラリーにおける含有量が46体積%となるように添加した。
次に、得られた分散液に、水溶性アクリレート及び光重合開始剤を添加し、遊星混合(500rpm、1分間)、超音波撹拌(1分間)及び脱泡(200rpm、1分間)をこの順で行い、光硬化性水系スラリーを作製した。
水溶性アクリレートとしては、上記式(1)で示す4-HBAまたは上記式(2)で示すPEGDAを用いた。4-HBA及びPEGDAの光硬化性水系スラリーにおける含有量は、それぞれ、SiO2に対して5.0質量%、7.5質量%または10質量%とした。
光重合開始剤は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(紫外光用重合開始剤:紫外光365nm硬化型)、または、2,2’-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](青色光用重合開始剤:青色光405nm硬化型)を用いた。当該紫外光用重合開始剤は、水溶性アクリレートに対して2質量%となるように添加した。また、当該青色光用重合開始剤は、水溶性アクリレートに対して2質量%となるように添加した。
-せん断速度、スラリーの粘度の評価-
実験例1で作製した各光硬化性水系スラリーについて、粘度曲線を以下のように測定した。
・粘度曲線の測定方法:
コーン・プレート型治具を取り付けたレオメータを用いて、せん断速度を0~80s-1に上昇させる過程と、80~0s-1に降下させる過程のみかけ粘度を連続的に計測することで粘度曲線を測定した。
水溶性アクリレートとして4-HBAを用い、重合開始剤として上記紫外光用重合開始剤を用いて作製した光硬化性水系スラリーに係る評価結果を示すグラフを図1に示す。
水溶性アクリレートとして4-HBAを用い、重合開始剤として上記青色光用重合開始剤を用いて作製した光硬化性水系スラリーに係る評価結果を示すグラフを図2に示す。
水溶性アクリレートとしてPEGDAを用い、重合開始剤として上記紫外光用重合開始剤を用いて作製した光硬化性水系スラリーに係る評価結果を示すグラフを図3に示す。
-光硬化時間、貯蔵弾性率の評価-
実験例1で作製した各光硬化性水系スラリーについて、紫外光または青色光を照射してその前後における貯蔵弾性率を以下のように測定した。
・貯蔵弾性率の測定:
コーン・プレート型治具を取り付けたレオメータを用いて、動的粘弾性測定(周波数1.0Hz、ひずみ0.1%)により貯蔵弾性率を測定した。動的粘弾性測定の開始後30秒後に、30秒間紫外光または青色光を照射し、スラリーの貯蔵弾性率の経時変化を測定した。
水溶性アクリレートとして4-HBAを用い、重合開始剤として上記紫外光用重合開始剤を用いて作製した光硬化性水系スラリーに係る評価結果を示すグラフを図4に示す。
水溶性アクリレートとして4-HBAを用い、重合開始剤として上記青色光用重合開始剤を用いて作製した光硬化性水系スラリーに係る評価結果を示すグラフを図5に示す。
水溶性アクリレートとしてPEGDAを用い、重合開始剤として上記紫外光用重合開始剤を用いて作製した光硬化性水系スラリーに係る評価結果を示すグラフを図6に示す。
Claims (4)
- (1)無機物粒子と、(2)ポリアルキレンイミン、または、ポリエチレンイミンにポリエチレングリコール鎖を持つ化合物が付加した構造の変性ポリエチレンイミンと、(3)水溶性アクリレートと、(4)光重合開始剤と、を含み、
前記水溶性アクリレートの含有量は、前記無機物粒子に対して1.5質量%~10.0質量%である光硬化性水系スラリー。 - 前記ポリアルキレンイミン及び前記変性ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、それぞれ300~50000である請求項1に記載の光硬化性水系スラリー。
- 前記無機物粒子の含有量は、10体積%~65体積%である請求項1に記載の光硬化性水系スラリー。
- (5)アニオン性高分子である分散剤をさらに含んだ請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性水系スラリー。
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