JP7741381B2 - 金属材料の破断評価方法 - Google Patents

金属材料の破断評価方法

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Description

本開示は、金属材料の破断評価方法に関する。より詳細には、本開示は、圧縮変形を経た後に最終的に引張変形を経る金属材料の破断評価方法に関する。
自動車部品の多くは、鋼板をプレスすることによって成形される。プレス成形のとき、鋼板は、曲げられたり、絞られたりする。このため、鋼板は、引張変形したり、圧縮変形したりする。従来、プレス成形時の鋼板の特性を把握するため、鋼板材料から採取した試験片で引張圧縮試験が行われている(例えば、特許第6246074号公報(特許文献1)、及び特開2016-3951号公報(特許文献2))。引張圧縮試験では、試験片に長手方向に沿って、圧縮荷重の負荷と引張荷重の負荷が繰り返される。
特許第6246074号公報 特開2016-3951号公報
例えば、カップ状部品(例:トランスミッションギヤ)のような自動車部品を成形する過程において、鋼板を鍛造して部分的に増肉する場合がある。この場合、相当塑性ひずみで0.5に達するような大きな圧縮塑性ひずみが、鋼板に導入される。この鋼板は、後工程でさらにプレスされる。このため、鋼板内の部位によっては、大きな圧縮塑性ひずみが導入された後、最終的に引張変形を受ける。本明細書では、このように大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を経た後、最終的に引張変形を経るという一連の変形過程を複合変形過程とも言う。
従来、複合変形過程を経る鋼板材料内の各部位について、FEMによって成形可否を判断するために、延性破壊パラメータが用いられる。延性破壊パラメータとして、Cockroft-Lathmanの下記式(1)で表されるダメージ値Dfが汎用される。
したがって、ダメージ値Dfには、変形に伴って鋼板材料内のFEM解析要素に生じる最大垂直応力とひずみのみが関与する。このため、ダメージ値Dfは、圧縮変形では変化しない。一方、実現象として、圧縮変形後の残延性の低下により、その後の引張変形で割れが発生することがある。また、特許文献1及び2に記載の技術では、試験片に導入される圧縮塑性ひずみは、大きくても0.10程度にすぎない。したがって、従来の技術では、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程を経る成形の場合、鋼板材料内の要素の成形可否を高精度で判断することは困難である。
本開示の目的は、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程を経る成形の場合、評価対象の金属材料の成形可否を高精度で判断することができる、金属材料の破断評価方法を提供することである。
本開示に係る金属材料の破断評価方法は、圧縮変形を経た後に最終的に引張変形を経る金属材料の破断評価方法であって、予備試験工程と、保管工程と、評価工程と、を備える。予備試験工程は、相互に異なる複数の複合変形過程ごとに試験を実施し、複合変形過程それぞれに対応する極限変形能を算出する。保管工程は、上記の極限変形能それぞれを、対応する複合変形過程に関連付けて保管する。評価工程は、保管された複合変形過程のうち、評価対象の金属材料に作用する変形過程と一致するものを抽出し、抽出した複合変形過程に関連付けられた極限変形能に基づいて、金属材料で破断が生じるか否かを評価する。
ここで、予備試験工程は、切り出し工程と、圧縮工程と、採取工程と、引張試験工程と、算出工程と、を備える。切り出し工程は、金属材料から矩形板状のサンプルを切り出す。圧縮工程は、金型によって、サンプルに複合変形過程の条件で圧縮荷重を負荷し、0.20以上の相当塑性ひずみをサンプルに導入する。採取工程は、圧縮工程後に、サンプルから丸棒状の引張試験片を採取する。引張試験工程は、引張試験片に軸方向に引張荷重を負荷して、引張試験片を破断する。算出工程は、引張試験工程の結果より、上記の複合変形過程での相当塑性ひずみに対応する極限変形能を算出する。
本開示に係る金属材料の破断評価方法によれば、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程を経る成形の場合、評価対象の金属材料の成形可否を高精度で判断することができる。
図1は、本実施形態の破断評価方法の一例を示すフロー図である。 図2は、切り出し工程で切り出したサンプルの一例を示す斜視図である。 図3は、圧縮工程の条件の一例を示す平面図である。 図4は、圧縮工程の条件の一例を示す平面図である。 図5は、圧縮工程の条件の一例を示す平面図である。 図6は、圧縮工程の条件の一例を示す平面図である。 図7は、採取工程で採取した引張試験片の一例を示す平面図である。 図8は、採取工程で採取した引張試験片の他の一例を示す平面図である。 図9は、算出工程で算出した機械的特性の一例を条件ごとにまとめた図である。 図10は、評価工程の一例を示すフロー図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本開示はそれらの例示に限定されない。
本開示の実施形態に係る金属材料の破断評価方法は、圧縮変形を経た後に最終的に引張変形を経る金属材料の破断評価方法であって、予備試験工程と、保管工程と、評価工程と、を備える。予備試験工程は、相互に異なる複数の複合変形過程ごとに試験を実施し、複合変形過程それぞれに対応する極限変形能を算出する。保管工程は、上記の極限変形能それぞれを、対応する複合変形過程に関連付けて保管する。評価工程は、保管された複合変形過程のうち、評価対象の金属材料に作用する変形過程と一致するものを抽出し、抽出した複合変形過程に関連付けられた極限変形能に基づいて、金属材料で破断が生じるか否かを評価する。
ここで、予備試験工程は、切り出し工程と、圧縮工程と、採取工程と、引張試験工程と、算出工程と、を備える。切り出し工程は、金属材料から矩形板状のサンプルを切り出す。圧縮工程は、金型によって、サンプルに複合変形過程の条件で圧縮荷重を負荷し、0.20以上の相当塑性ひずみをサンプルに導入する。採取工程は、圧縮工程後に、サンプルから丸棒状の引張試験片を採取する。引張試験工程は、引張試験片に軸方向に引張荷重を負荷して、引張試験片を破断する。算出工程は、引張試験工程の結果より、上記の複合変形過程での相当塑性ひずみに対応する極限変形能を算出する(第1の構成)。
第1の構成の破断評価方法によれば、評価対象として、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程を経る成形の場合、先ず、切り出し工程、圧縮工程、採取工程、引張試験工程、及び算出工程を備える予備試験工程で以下に示す試験が実施される。金属材料を出発材料とし、圧縮工程において、その複合変形過程の条件のうちの圧縮変形を想定してサンプルに圧縮荷重を負荷し、相当塑性ひずみで0.20以上の大きな圧縮塑性ひずみをサンプルに導入する。採取工程において、圧縮塑性ひずみが導入されたサンプルから引張試験片を採取する。さらに、引張試験工程において、その複合変形過程のうちの引張変形を想定して引張試験片に引張荷重を負荷し、引張試験片を破断する。要するに、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程の各変形を想定して、金属材料に荷重を負荷する。そして、算出工程において、引張試験工程の結果より、その複合変形過程での相当塑性ひずみに対応する極限変形能を算出する。したがって、予備試験工程において、複合変形過程を経る金属材料の極限変形能を適切に取得することができる。
このように、予備試験工程において、相互に異なる複数の複合変形過程ごとに試験を実施することにより、複合変形過程それぞれに対応する極限変形能を算出することができる。第1の構成の破断評価方法によれば、保管工程において、予備試験工程で算出した極限変形能それぞれを、対応する複合変形過程に関連付けて保管する。極限変形能は、延性破壊パラメータである。そして、評価工程において、保管工程で保管された複合変形過程から、評価対象の金属材料に作用する変形過程と一致するものを抽出する。抽出した複合変形過程に関連付けられた極限変形能に基づいて、金属材料で破断が生じるか否かを評価する。したがって、第1の構成の破断評価方法によれば、極限変形能に基づき、複合変形過程を経る評価対象の金属材料の成形可否を高精度で判断することができる。
上記の破断評価方法は、下記の構成を備えてもよい。保管工程において、以下の場合を考える。保管された2つの複合変形過程として、第1の複合変形過程及び第2の複合変形過程が含まれる。第1の複合変形過程の相当塑性ひずみを第1の相当塑性ひずみと称し、第2の複合変形過程の相当塑性ひずみを第2の相当塑性ひずみと称する。第1の複合変形過程と第2の複合変形過程が、第1の相当塑性ひずみの値と第2の相当塑性ひずみの値のみで相違する。第1の相当塑性ひずみに対応する極限変形能を第1の極限変形能と称し、第2の相当塑性ひずみに対応する極限変形能が第2の極限変形能と称する。
この場合、第1の相当塑性ひずみと第2の相当塑性ひずみとの間に設定される第3の相当塑性ひずみについて、線形補完によって、第1の極限変形能と第2の極限変形能との間に設定される第3の極限変形能を算出する。算出した第3の極限変形能を、対応する第3の相当塑性ひずみに依存する第3の複合変形過程に関連付けて保管する(第2の構成)。
第2の構成によれば、予備試験工程で得られた極限変形能の値、すなわち第1の極限変形能及び第2の極限変形能それぞれの値を利用して、第3の極限変形能を算出することができる。つまり、予備試験工程で実際に試験を実施することなく、第3の複合変形過程での第3の相当塑性ひずみに対応する第3の極限変形能を推測することができる。したがって、金属材料で破断が生じるか否かの評価を効率よく行うことができる。
以下に、図面を参照しながら、本実施形態の金属材料の破断評価方法についてその具体例を説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
[破断評価方法]
図1は、本実施形態の破断評価方法の一例を示すフロー図である。本実施形態の破断評価方法によって評価する対象は、圧縮変形を経た後に最終的に引張変形を経る金属材料である。評価対象の金属材料には、圧縮変形によって相当塑性ひずみで0.20以上の大きな圧縮塑性ひずみが導入される。つまり、本実施形態では、評価対象として、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程を経る成形が想定されている。図1を参照して、本実施形態の破断評価方法は、予備試験工程(#100)、保管工程(#200)、及び評価工程(#300)を含む。予備試験工程(#100)は、金属材料の試験方法と言うこともできる。
予備試験工程(#100)は、切り出し工程(#105)、圧縮工程(#110)、採取工程(#115)、引張試験工程(#120)、及び算出工程(#125)を含む。予備試験工程(#100)は、これらの各工程を経ることにより、相互に異なる複数の複合変形過程ごとに試験を実施する。そして、複合変形過程それぞれに対応する極限変形能を算出する。保管工程(#200)は、予備試験工程(#100)で算出した極限変形能それぞれを、対応する複合変形過程に関連付けて保管する。評価工程(#300)は、保管工程(#200)で保管された複合変形過程のうち、評価対象の金属材料に作用する変形過程と一致するものを抽出する。そして、抽出した複合変形過程に関連付けられた極限変形能に基づいて、金属材料で破断が生じるか否かを評価する。以下、各工程について、出発材料の金属材料として圧延鋼帯を例にとり具体的に説明する。
[予備試験工程(#100)]
上記の通り、予備試験工程(#100)は、切り出し工程(#105)、圧縮工程(#110)、採取工程(#115)、引張試験工程(#120)、及び算出工程(#125)を含む。
[切り出し工程(#105)]
切り出し工程(#105)は、圧延鋼帯から矩形板状のサンプルを切り出す。圧延鋼帯は、例えば熱間圧延鋼帯である。
図2は、切り出し工程(#105)で切り出したサンプル10の一例を示す斜視図である。図2を参照して、サンプル10は、板厚14mmの自動車構造用熱間圧延鋼板(SAPH490)から切り出されたものであり、平面視で縦方向Dと横方向Wが等しい正方形を有する。サンプル10において、縦方向Dの長さLDは15mmであり、横方向Wの長さLWは15mmであり、板厚方向tの長さLtは8mmである。本明細書において、縦方向Dは、圧延鋼帯の圧延方向C(図2中の二点鎖線参照)と一致する方向であり、圧延鋼帯を基準とすれば長手方向と言うこともできる。横方向Wは、圧延方向Cに垂直な方向であり、圧延鋼帯を基準とすれば幅方向と言うこともできる。
[圧縮工程(#110)]
図1に戻って説明を続ける。圧縮工程(#110)は、金型によって、サンプル10に所定の条件で圧縮荷重を負荷し、相当塑性ひずみで0.20以上の圧縮塑性ひずみをサンプル10に導入する。つまり、プレス装置(例:サーボプレス装置)を用い、所定の形状を有する下ダイにサンプル10を収納し、上パンチの下降によりサンプル10を圧下する。所定の条件は、複合変形過程に対応する条件である。
図3~図6は、圧縮工程(#110)の条件の一例を示す平面図である。図3には、単軸圧縮の場合の様子が示される。図4及び図5には、平面ひずみ圧縮の場合の様子が示される。図6には、平面ひずみ圧縮の場合であって板厚方向を含む平面の場合の様子が示される。これらの図には、圧縮工程前に下ダイに収納されたサンプル10を上方から見たときの様子が示される。これらの図中、点線は下ダイの内壁を示す。サンプル10の面のうち、下ダイの内壁から離れている面は、金型に対してフリーであり、サンプル10は、その面に垂直な方向の変形を開放されていることを意味する。一方、サンプル10の面のうち、下ダイの内壁と接触している面は、金型に対してフリーでなく、サンプル10は、その面に垂直な方向の変形を拘束されていることを意味する。これらの図において、サンプル10には、図の紙面に垂直な方向に圧縮荷重が負荷される。
図4と図6に示される条件は、平面ひずみ圧縮であって圧延方向に対する金型による拘束条件も等しい。しかし、図4に示される条件の圧縮方向は、板厚方向tであり、図6に示される条件の圧縮方向は、図4に示される条件とは異なる横方向Wである。一般的に熱間圧延鋼帯は、面内および板厚方向に異なる材料特性、すなわち異方性を有する。したがって、破断判定に用いる極限変形能に、上記の異方性を考慮することで、より精緻に金属材料の成形可否を判断できる。
図3に示す条件の場合、サンプル10の縦方向D及び横方向Wの変形を開放した状態で、サンプル10の板厚方向tに圧縮荷重を負荷する。この場合、サンプル10は、板厚方向tに圧縮変形し、縦方向D及び横方向Wの両方に広がる。以下、この条件を条件(A)と言う場合がある。
なお、この条件(A)は、概念的に言えば下記条件(a)に相当する。
(a)サンプルの縦方向及び横方向の変形を開放し、サンプルに圧縮荷重を負荷する。
図4に示す条件の場合、サンプル10の横方向Wの変形を拘束し、縦方向Dの変形を開放した状態で、サンプル10の板厚方向tに圧縮荷重を負荷する。この場合、サンプル10は、板厚方向tに圧縮変形し、横方向Wの変形を抑えられつつ、縦方向Dに広がる。以下、この条件を条件(B)と言う場合がある。
図5に示す条件の場合、サンプル10の縦方向Dの変形を拘束し、横方向Wの変形を開放した状態で、サンプル10の板厚方向tに圧縮荷重を負荷する。この場合、サンプル10は、板厚方向tに圧縮変形し、縦方向Dの変形を抑えられつつ、横方向Wに広がる。以下、この条件を条件(C)と言う場合がある。
なお、これらの条件(B)及び(C)は、概念的に言えば下記条件(b)に相当する。
(b)サンプルの縦方向及び横方向のいずれか一方向の変形を拘束し、いずれか他方向の変形を開放し、サンプルに圧縮荷重を負荷する。
図6に示す条件の場合、サンプル10の板厚方向tの変形を拘束し、縦方向Dの変形を開放した状態で、サンプル10の横方向Wに圧縮荷重を負荷する。この場合、サンプル10は、横方向Wに圧縮変形し、板厚方向tの変形を抑えられつつ、縦方向Dに広がる。以下、この条件を条件(D)と言う場合がある。条件(D)の場合、サンプル10の板厚方向tの変形を拘束し、横方向Wの変形を開放した状態で、サンプル10の縦方向Dに圧縮荷重を負荷してもよい。
なお、この条件(D)は、概念的に言えば上記した条件(b)に相当する。
これらの条件(A)~(D)ごとに、圧縮荷重の負荷によってサンプル10に導入される相当塑性ひずみの値を設定する。例えば、相当塑性ひずみの値として、0.25、及び0.50という2つの値を設定する。このような値の組は、条件(A)~(D)で同じである。ただし、設定する値の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。相当塑性ひずみの値に応じて、条件(A)~(D)での圧縮荷重による圧下量が定まる。各条件に応じて、圧縮荷重を負荷する方向は適宜設定することができる。
条件(A)~(D)ごとに、圧縮工程(#110)を実施する。これにより、条件(A)~(D)ごとに、0.25の相当塑性ひずみが導入されたサンプル10、及び0.50の相当塑性ひずみが導入されたサンプル10が得られる。なお、金型とサンプル10との間の摩擦を抑えるため、金型には潤滑剤が塗布される。
[採取工程(#115)]
図1に戻って説明を続ける。採取工程(#115)は、圧縮工程(#110)後に、各条件で得られたサンプル10から丸棒状の引張試験片を採取する。
図7は、採取工程(#115)で採取した引張試験片11の一例を示す平面図である。図7を参照して、引張試験片11は、圧縮工程(#110)後のサンプル10のうちの圧延方向C(図3~図6参照)に沿って採取される。この場合、引張試験片11の軸方向が、サンプル10における圧延方向Cと一致する。以下、この条件を条件(i)と言う場合がある。
ただし、引張試験片11は、圧延方向Cに垂直な方向に沿って採取されてもよい。この場合、引張試験片11の軸方向が、サンプル10における圧延方向Cに垂直な方向と一致する。以下、この条件を条件(ii)と言う場合がある。もっとも、引張試験片11は、圧延方向Cから傾斜した方向に沿って採取されても構わない。
図7を参照して、引張試験片11において、平行部11aの直径φaは1.0mmである。平行部11aの軸方向長さは2.0mmである。
ただし、引張試験片11の形状は、図7に示す形状に限定されない。図8は、引張試験片11の他の一例を示す平面図である。図8を参照して、引張試験片11において、平行部11aにくびれ部11bが設けられていてもよい。この場合、くびれ部11bの直径φbは0.80mmである。くびれ部11bの縦断面の曲率半径Rbは、例えば、2.0mm、1.0mm、又は0.50mmである。
採取工程(#115)により、条件(A)~(D)ごとに、0.25の相当塑性ひずみが導入された引張試験片11、及び0.50の相当塑性ひずみが導入された引張試験片11が得られる。
[引張試験工程(#120)]
図1に戻って説明を続ける。引張試験工程(#120)は、引張試験片11に軸方向に引張荷重を負荷して、引張試験片11を破断する。引張試験工程(#120)では、引張荷重と引張試験片11の伸びを測定する。また、引張試験工程(#120)では、引張試験片11の破断位置を把握し、その破断位置における試験前断面積S0と試験後断面積S1を計測する。図7に示す引張試験片11の場合、破断位置は平行部11aに現れる。図8に示す引張試験片11の場合、破断位置はくびれ部11bに現れる。
試験後断面積S1は、破断面の面積を意味する。このため、試験後断面積S1は、破断面の直径より算出できる。破断面は、厳密な円形に限らず、楕円形になる場合もある。このため、互いに垂直な2方向から破断面の直径を測定することにより、試験後断面積S1を算出できる。破断面をカメラで撮影し、その画像データから試験後断面積S1を算出してもよい。一方、試験前断面積S0は、試験前の引張試験片11の寸法より算出できる。図7に示す引張試験片11の場合、平行部11aの直径φaより試験前断面積S0を算出できる。図8に示す引張試験片11の場合、くびれ部11bの直径φbより試験前断面積S0を算出できる。
要するに、上記した圧縮工程(#110)及び引張試験工程(#120)では、大きな圧縮塑性ひずみが導入される圧縮変形を含む複合変形過程の各変形を想定して、鋼板材料に荷重を負荷する。つまり、条件(A)~(D)ごとに、0.25の相当塑性ひずみが導入された引張試験片11、及び0.50の相当塑性ひずみが導入された引張試験片11を用いて、引張試験工程(#120)を実施する。
また、参考のため、圧縮工程(#110)を実施していない引張試験片11を用いて、引張試験工程(#120)を実施する。この場合、引張試験片11は、圧延鋼帯から直接採取してもよい。このため、引張試験片11には相当塑性ひずみは導入されていない。以下、圧縮工程(#110)を実施していない条件を条件(N)と言う場合がある。条件(N)は、複合変形過程を経ない条件である。
[算出工程(#125)]
図1に戻って説明を続ける。算出工程(#125)は、引張試験工程(#120)の結果より、条件(A)~(D)それぞれでの相当塑性ひずみ(0.25及び0.50)に対応する機械的特性を算出する。また、条件(N)に対応する機械的特性を算出する。算出工程(#125)では、機械的特性として、極限変形能Dcrを算出する。極限変形能Dcrは下記の式(2)で定義される。
Dcr=ln(S0/S1) (2)
式(2)中、S0は、引張試験片11の破断位置における試験前断面積を示し、S1は、引張試験片11の破断位置における試験後断面積を示す。
ただし、算出工程(#125)で算出する機械的特性は、極限変形能Dcrに限らず、応力-ひずみ曲線であってもよい。
図9は、算出工程(#125)で算出した機械的特性の一例を条件ごとにまとめた図である。図9には、機械的特性として、極限変形能Dcrが示される。図9に示す結果から以下のことが明らかになる。
条件(N)と他の各条件との比較より、複合変形過程を経れば、極限変形能が低下する。複合変形過程における圧縮変形の条件間で、相当塑性ひずみに応じた極限変形能の低下度合いが異なる。例えば、平面ひずみ圧縮の条件(B)((B0.25)及び(B0.50))における極限変形能の低下度合いは、単軸圧縮の条件(A)((A0.25)及び(A0.50))のそれよりも大きい。また、条件(B)((B0.25)及び(B0.50))、及び条件(C)((C0.25)及び(C0.50))は、共に平面ひずみ圧縮の条件であり、本鋼種においては両者に有意差は認められない。
このように、予備試験工程(#100)の各工程を経ることにより、複合変形過程を経る鋼板材料の機械的特性を適切に取得することができる。この機械的特性は、複合変形過程を経る鋼板材料内のFEM解析各要素の成形可否を高精度で判断するのに適する。
また、上記の実施形態では、採取工程(#115)において、条件(i)を採用して、サンプル10のうちの圧延方向Cに沿って、引張試験片11を採取している。さらに、条件(ii)も採用して、サンプル10のうちの圧延方向Cに垂直な方向に沿って、引張試験片11を採取すれば、異方性の観点から、鋼板材料の特性を評価することができる。
[保管工程(#200)]
図1に戻って説明を続ける。保管工程(#200)では、予備試験工程(#100)で算出した極限変形能それぞれを、対応する複合変形過程の条件及び相当塑性ひずみの値に関連付けて保管する。より具体的には、予備試験工程(#100)で算出した極限変形能それぞれを、対応する条件(N)、(A0.25)、(A0.50)、(B0.25)、(B0.50)、(C0.25)、(C0.50)、(D0.25)及び(D0.50)に関連付けて保管する。これらのデータは、コンピュータのメモリに保管される。これにより、FEMによる成形可否の判断に使用できる。
ここで、保管した条件と異なる新たな条件があれば、当該新たな条件で新たに予備試験工程(#100)を実施すればよい。つまり、新たな条件で極限変形能を算出し、この極限変形能を、当該新たな条件に関連付けて保管すればよい。
ただし、保管した条件と異なる新たな条件があった場合、予備試験工程(#100)を実施することなく、計算によって設定してもよい。例えば、線形補完を利用することができる。以下、具体例を示す。
条件(A)で新たに相当塑性ひずみ0.10の条件があった場合、この相当塑性ひずみの値は、0と0.25との間にある。この場合の条件は、条件(A0.10)で表すことができる。この場合、条件(A0.10)の極限変形能は、条件(N)の極限変形能と条件(A0.25)の極限変形能との間にある。そうすると、条件(N)、条件(A0.10)及び条件(A0.25)それぞれの相当塑性ひずみの値より、条件(N)及び条件(A0.25)それぞれの極限変形能を線形補完すれば、条件(A0.10)の極限変形能を算出することができる。この極限変形能を条件(A0.10)に対応付けて保管する。
また、条件(A)で新たに相当塑性ひずみ0.40の条件があった場合、この相当塑性ひずみの値は、0.25と0.50との間にある。この場合の条件は、条件(A0.40)で表すことができる。この場合、条件(A0.40)の極限変形能は、条件(A0.25)の極限変形能と条件(A0.50)の極限変形能との間にある。そうすると、条件(A0.25)、条件(A0.40)及び条件(A0.50)それぞれの相当塑性ひずみの値より、条件(A0.25)及び条件(A0.50)それぞれの極限変形能を線形補完すれば、条件(A0.40)の極限変形能を算出することができる。この極限変形能を条件(A0.40)に対応付けて保管する。
これらの具体例を概念的に言えば、次のようになる。保管された2つの複合変形過程として、第1の複合変形過程及び第2の複合変形過程が含まれる。つまり、例えば、第1の複合変形過程は、条件(A0.25)であり、第2の複合変形過程は、条件(A0.50)である。第1の複合変形過程の相当塑性ひずみを第1の相当塑性ひずみと称し、第2の複合変形過程の相当塑性ひずみを第2の相当塑性ひずみと称する。つまり、第1の相当塑性ひずみは0.25であり、第2の相当塑性ひずみは0.50である。第1の複合変形過程と第2の複合変形過程が、第1の相当塑性ひずみの値と第2の相当塑性ひずみの値のみで相違する。換言すれば、例えば、第1の複合変形過程と第2の複合変形過程が、条件(A)で共通する。第1の相当塑性ひずみに対応する極限変形能を第1の極限変形能と称し、第2の相当塑性ひずみに対応する極限変形能を第2の極限変形能と称する。
この場合、第1の相当塑性ひずみと第2の相当塑性ひずみとの間に設定される第3の相当塑性ひずみ(条件(A0.40)の塑性ひずみ)について、線形補完によって、第1の極限変形能と第2の極限変形能との間に設定される第3の極限変形能(条件(A0.40)の極限変形能)を算出できる。算出した第3の極限変形能を、対応する第3の相当塑性ひずみに依存する第3の複合変形過程(条件(A0.40))に関連付けて保管する。
このように、予備試験工程(#100)で得られた極限変形能の値、すなわち第1の極限変形能及び第2の極限変形能それぞれの値を利用して、第3の極限変形能を算出することができる。つまり、予備試験工程(#100)で実際に試験を実施することなく、第3の複合変形過程での第3の相当塑性ひずみに対応する第3の極限変形能を推測することができる。これは、効率的である。したがって、最終的に、鋼板材料内各要素で破断が生じるか否かの評価を効率よく行うことができる。
[評価工程(#300)]
評価工程(#300)では、保管工程(#200)で保管された複合変形過程から、評価対象の鋼板材料内各要素に作用する変形過程と一致するものを抽出する。抽出した複合変形過程に関連付けられた極限変形能に基づいて、鋼板材料内各要素で破断が生じるか否かを評価する。この評価は、例えば、コンピュータによって実行される。
図10は、評価工程(#300)の一例を示すフロー図である。評価工程(#300)は、コンピュータを用いたFEMによって実施される。まず、評価対象の鋼板材料の解析モデルが作成され、FEMによる成形解析が始まる(ステップ#305)。図10を参照して、ステップ#310にて、第i段目の成形ステップを実行する。最初は、第1段目の成形ステップとなる。
次にステップ#315にて、その時点の解析モデルの要素ごとに応力状態を算出する。次にステップ#320にて、その時点の解析モデルの各要素について、当該要素の応力状態における延性破壊パラメータを抽出する。ここでは、メモリに保管されているデータのうち、当該要素に予定されている複合変形過程と一致する複合変形過程を抽出し、抽出した複合変形過程に関連付けられた極限変形能を抽出する。抽出した極限変形能はストレージに保管される。
次にステップ#325にて、その時点の解析モデルの各要素について、第(i-1)段目の成形ステップまでの合計の延性破壊パラメータに、第i段目の成形ステップにおける延性破壊パラメータを加算する。ここでは、ストレージに保管されている第(i-1)段目の成形ステップまでの合計の極限変形能に、第i段目の成形ステップにおける極限変形能を加算する。加算した合計の極限変形能がストレージに保管される。
そして、ステップ#330にて、予定の成形ステップに達しているか否かを判断する。予定の成形ステップに達していない場合、ステップ#310に戻り、次の成形ステップを実行する。予定の成形ステップに達するまで、ステップ#310~#330を繰り返す。
予定の成形ステップに達した場合、ステップ#335にて、成形解析を終了し、ステップ#340にて、破断判定を開始する。そして、ステップ#345にて、解析モデルの各要素について、延性破壊パラメータから破断を判定する。ここでは、ストレージに保管されている合計の極限変形能より、破断が生じるか否かを評価する。評価後、ステップ#350にて、破断判定を終了する。
したがって、複合変形過程を経る評価対象の鋼板材料内の要素の成形可否を高精度で判断することができる。
[変形例]
上記の実施形態では、複合変形過程のうちの圧縮変形の条件が一つである場合について説明した。この場合、複合変形過程は、条件(A)、条件(B)、条件(C)及び条件(D)のうちの一つの圧縮変形と、引張変形と、の組合せとなる。
しかしながら、複合変形過程のうちの圧縮変形の条件が二つであってもよい。この場合、複合変形過程は、条件(A)、条件(B)、条件(C)及び条件(D)のうちの二つの圧縮変形と、引張変形と、の組合せとなる。より具体的には、複合変形過程は、例えば、条件(A)の単軸圧縮と、条件(B)の平面ひずみ圧縮と、引張変形と、の組合せとなる。もっとも、複合変形過程のうちの圧縮変形の条件が二つ以上であってもよい。
複合変形過程が、条件(A)の単軸圧縮と、条件(B)の平面ひずみ圧縮と、引張変形と、の組合せである場合、下記の方法1及び方法2を採用することができる。
方法1では、特別に予備試験工程(#100)を実施する。具体的には、予備試験工程(#100)において、先ず、条件(A)で圧縮工程(#110)を実施する。続いて、条件(A)によって圧縮塑性ひずみが導入されたサンプル10に、条件(B)で圧縮工程(#110)を実施する。その後に、採取工程(#115)、引張試験工程(#120)、及び算出工程(#125)を順に実施する。この場合、複合変形過程における各変形の順序を忠実に考慮して、機械的特性を取得できる。
方法2では、特別に予備試験工程(#100)を実施しない。具体的には、条件(A)のみで実施した予備試験工程(#100)によって得られた機械的特性と、条件(B)のみで実施した予備試験工程(#100)によって得られた機械的特性と、を加算する。この場合、複合変形過程における各変形の順序を考慮していないが、簡便に機械的特性を取得できる。
また、複合変形過程のうちの引張変形の条件が二つであってもよい。この場合、複合変形過程は、条件(A)、条件(B)、条件(C)及び条件(D)のうちの一つの圧縮変形と、二つの引張変形と、の組合せとなる。より具体的には、複合変形過程は、例えば、引張変形と、条件(A)の単軸圧縮と、引張変形と、の組合せとなる。もっとも、複合変形過程のうちの引張変形の条件が二つ以上であってもよい。
複合変形過程が、引張変形と、条件(A)の単軸圧縮と、引張変形と、の組合せである場合、下記の方法を採用することができる。予備試験工程(#100)の前に、引張工程を付加する。この引張工程は、圧延鋼帯からサンプル10よりも一回り大きいサイズの中間サンプルを切り出す。次に、中間サンプルが、例えば圧延方向に沿って均一に伸びるように、中間サンプルに引張荷重を負荷する。これにより、中間サンプルには、例えば、10%、20%などの均一伸びが導入される。そして、引張工程の後に、予備試験工程(#100)を実施する。この場合、切り出し工程(#105)では、中間サンプルからサンプル10を切り出す。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
10:サンプル
11:引張試験片

Claims (2)

  1. 圧縮変形を経た後に最終的に引張変形を経る金属材料の破断評価方法であって、
    相互に異なる複数の複合変形過程ごとに試験を実施し、前記複合変形過程それぞれに対応する極限変形能を算出する予備試験工程と、
    前記極限変形能それぞれを、対応する前記複合変形過程に関連付けて保管する保管工程と、
    保管された前記複合変形過程のうち、評価対象の前記金属材料に作用する変形過程と一致するものを抽出し、抽出した前記複合変形過程に関連付けられた前記極限変形能に基づいて、前記金属材料で破断が生じるか否かを評価する評価工程と、を含み、
    前記予備試験工程は、
    金属材料から矩形板状のサンプルを切り出す切り出し工程と、
    金型によって、前記サンプルに前記複合変形過程の条件で圧縮荷重を負荷し、0.20以上の相当塑性ひずみを前記サンプルに導入する圧縮工程と、
    前記圧縮工程後に、前記サンプルから丸棒状の引張試験片を採取する採取工程と、
    前記引張試験片に軸方向に引張荷重を負荷して、前記引張試験片を破断する引張試験工程と、
    前記引張試験工程の結果より、前記複合変形過程での前記相当塑性ひずみに対応する前記極限変形能を算出する算出工程と、を備える、金属材料の破断評価方法。
  2. 請求項1に記載の金属材料の破断評価方法であって、
    前記保管工程において、保管された2つの前記複合変形過程として、第1の複合変形過程及び第2の複合変形過程が含まれ、前記第1の複合変形過程の前記相当塑性ひずみを第1の相当塑性ひずみと称し、前記第2の複合変形過程の前記相当塑性ひずみを第2の相当塑性ひずみと称し、前記第1の複合変形過程と前記第2の複合変形過程が、前記第1の相当塑性ひずみの値と前記第2の相当塑性ひずみの値のみで相違し、前記第1の相当塑性ひずみに対応する前記極限変形能を第1の極限変形能と称し、前記第2の相当塑性ひずみに対応する前記極限変形能を第2の極限変形能と称する場合、
    前記第1の相当塑性ひずみと前記第2の相当塑性ひずみとの間に設定される第3の相当塑性ひずみについて、線形補完によって、前記第1の極限変形能と前記第2の極限変形能との間に設定される第3の極限変形能を算出し、前記第3の極限変形能を、対応する前記第3の相当塑性ひずみに依存する第3の複合変形過程に関連付けて保管する、金属材料の破断評価方法。
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