JP7741396B2 - 鋼材 - Google Patents
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Description
C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15-Co/6+α≧0.50 (1)
(3C+Mo+3Co)/(3Mn+Cr)≧1.0 (2)
有効B=B-11(N-Ti/3.4)/14 (3)
ここで、式(1)のαは、式(3)で定義される有効B(質量%)が0.0003%以上の場合は0.250であり、有効Bが0.0003%未満の場合は0である。式(1)~式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Cu+Ni)/15-Co/6+α≧0.70 (1)
(3C+Mo+3Co)/(3Mn+Cr)≧1.0 (2)
有効B=B-11(N-Ti/3.4)/14 (3)
ここで、式(1)のαは、式(3)で定義される有効B(質量%)が0.0003%以上の場合は0.250であり、有効Bが0.0003%未満の場合は0である。式(1)~式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
C:0.20~0.45%、
Si:0.60~1.30%、
Mn:0.02~1.00%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.010~0.100%、
N:0.0100%以下、
Cr:0.10~3.00%、
Mo:0.35~3.00%、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
Zr:0.0010~0.1000%、
O:0.0050%以下、
Sb:0~0.50%、
Co:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ti:0~0.030%、
Nb:0~0.150%、
V:0~0.500%、
B:0~0.0030%、
Ca:0~0.0040%、
Mg:0~0.0040%、及び、
希土類元素:0~0.0040%、を含有し、
残部がFe及び不純物からなる、
鋼材。
表1に示す化学組成の鋼材を準備した。
化学組成が、質量%で、
C:0.20~0.45%、
Si:0.60~1.30%、
Mn:0.02~1.00%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.010~0.100%、
N:0.0100%以下、
Cr:0.10~3.00%、
Mo:0.35~3.00%、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
Zr:0.0010~0.1000%、
O:0.0050%以下、
Sb:0~0.50%、
Co:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ti:0~0.030%、
Nb:0~0.150%、
V:0~0.500%、
B:0~0.0030%、
Ca:0~0.0040%、
Mg:0~0.0040%、及び、
希土類元素:0~0.0040%、を含有し、
残部がFe及び不純物からなる、
鋼材。
[1]に記載の鋼材であってさらに、
次の式(1)で定義されるFn1が4.00以上である、
鋼材。
Fn1=(2.0×Si+0.3×Cu+0.9×Ni+Cr+1.2×Mo+8.0×Zr+5.0×Sb+5.0×Co)-(2.0×C+2.0×Mn) (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の質量%での含有量が代入される。
[1]又は[2]に記載の鋼材であって、
前記化学組成は、
Sb:0.01~0.50%、
Co:0.01~0.50%、
W:0.01~0.50%、
Ti:0.003~0.030%、
Nb:0.003~0.150%、
V:0.005~0.500%、
B:0.0003~0.0030%、
Ca:0.0003~0.0040%、
Mg:0.0003~0.0040%及び、
希土類元素:0.0003~0.0040%、
からなる群から選択される1種以上を含有する、
鋼材。
[4]
[1]に記載の鋼材であって、
前記鋼材は、油井用鋼管である、
鋼材。
本実施形態の鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Cはさらに、炭化物又は炭窒化物(炭窒化物等)を形成し、鋼材の強度を高める。C含有量が0.20%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、C含有量が0.45%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靱性が低下する。また、Cは水素侵入促進元素である。そのため、C含有量が0.45%を超えればさらに、過剰な炭窒化物等が生成しやすくなる。腐食サワー環境下において、炭窒化物等が鋼材の表層に存在すれば、炭窒化物等が存在する領域の電気抵抗は、炭窒化物等が存在しない領域よりも低くなる。そのため、鋼材表面が電気化学的に活性となり、鋼材表面に水素が発生しやすくなる。その結果、水素の鋼材への侵入が促進される。
したがって、C含有量は0.20~0.45%である。
C含有量の好ましい下限は0.21%であり、さらに好ましくは0.22%であり、さらに好ましくは0.23%であり、さらに好ましくは0.24%であり、さらに好ましくは0.25%である。
C含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.38%であり、さらに好ましくは0.36%であり、さらに好ましくは0.34%である。
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Siはさらに、水素侵入抑制元素であり、鋼材の耐水素脆性を高める。Si含有量が0.60%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Si含有量が1.30%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の延性が低下する。
したがって、Si含有量は0.60~1.30%である。
Si含有量の好ましい下限は0.65%であり、さらに好ましくは0.68%であり、さらに好ましくは0.72%であり、さらに好ましくは0.76%である。
Si含有量の好ましい上限は1.28%であり、さらに好ましくは1.26%であり、さらに好ましくは1.24%であり、さらに好ましくは1.20%であり、さらに好ましくは1.18%であり、さらに好ましくは1.16%である。
マンガン(Mn)は鋼を脱酸する。Mnはさらに、焼入れ性を高めて鋼材の強度を高める。Mn含有量が0.02%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Mnは水素侵入促進元素である。Mn含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Mn硫化物が過剰に生成してしまう。Mn硫化物は孔食の起点となる。そのため、Mn硫化物が過剰に生成すれば、腐食速度が速まる。その結果、水素の鋼材への侵入が促進される。
したがって、Mn含有量は0.02~1.00%である。
Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Mn含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、好ましくは、0.70%であり、さらに好ましくは0.60%である。
燐(P)は、不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。
Pは、Sと同様に、結晶粒界に偏析する。P含有量が0.050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Pが結晶粒界に偏析して鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、P含有量は0.050%以下である。
P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量を過剰に低減すれば、製造コストが高くなる。したがって、工業生産を考慮すれば、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。
P含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.035%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.025%であり、さらに好ましくは0.020%である。
硫黄(S)は、不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。
SはPと同様に、結晶粒界に偏析する。S含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Sが結晶粒界に偏析して鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、S含有量は0.0050%以下である。
S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量を過剰に低減すれば、製造コストが高くなる。したがって、工業生産を考慮すれば、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。
S含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が0.010%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、この効果が得られない。
一方、Al含有量が0.100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物が生成する。その結果、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Al含有量は0.010~0.100%である。
Al含有量の好ましい下限は0.015%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.025%である。
Al含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%であり、さらに好ましくは0.065%であり、さらに好ましくは0.040%である。
本明細書でいうAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
窒素(N)は、不可避に含有される。つまり、N含有量は0%超である。N含有量が0.0100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、窒化物が粗大になり、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、N含有量は0.0100%以下である。
N含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、N含有量を過剰に低減すれば、製造コストが高くなる。したがって、工業生産を考慮すれば、N含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
N含有量の好ましい上限は0.0080%であり、さらに好ましくは0.0070%であり、さらに好ましくは0.0065%であり、さらに好ましくは0.0060%である。
クロム(Cr)は、鋼材の焼入れ性を高める。Crはさらに、水素侵入抑制元素である。具体的には、Crは腐食生成物皮膜を安定化して、水素の侵入を抑制する。その結果、鋼材の耐水素脆性を高める。Cr含有量が0.10%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Cr含有量が3.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の硬さが過剰に高くなり、鋼材の耐水素脆性が低下する。また、鋼材の溶接性も低下する。
したがって、Cr含有量は0.10~3.00%である。
Cr含有量の好ましい下限は0.30%であり、さらに好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.90%である。
Cr含有量の好ましい上限は2.50%であり、さらに好ましくは2.00%であり、さらに好ましくは1.90%であり、さらに好ましくは1.80%であり、さらに好ましくは1.70%であり、さらに好ましくは1.50%である。
モリブデン(Mo)は、高腐食サワー環境において、鋼材表面に形成される腐食生成物皮膜を安定化して、水素が鋼材に侵入するのを抑制する。Moはさらに、微細な析出物を生成して、鋼の焼戻し軟化抵抗を高め、鋼の強度を高める。Mo含有量が0.35%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Mo含有量が3.00%を超えれば、上記効果が飽和する。
したがって、Mo含有量は0.35~3.00%である。
Mo含有量の好ましい下限は0.37%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.42%である。
Mo含有量の好ましい上限は2.50%であり、さらに好ましくは2.00%であり、さらに好ましくは1.50%である。
銅(Cu)は高腐食サワー環境下において、腐食生成物皮膜と母材との界面に濃化して、母材の表面活性を抑制し、水素が鋼材に侵入するのを抑制する。Cuはさらに、鋼材に固溶して鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Cu含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Cu含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Cuが鋼材中に析出する。析出したCuは水素をトラップしやすい。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Cu含有量は0.01~0.50%である。
Cu含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Cu含有量の好ましい上限は0.49%であり、さらに好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%である。
ニッケル(Ni)は、高腐食サワー環境下において、腐食生成物皮膜と母材との界面に濃化して、母材の表面活性を抑制し、水素が鋼材に侵入するのを抑制する。Niはさらに、鋼材に固溶して鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Ni含有量が0.01%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Ni含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、局部腐食が進行しやすくなり、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Ni含有量は0.01~0.50%である。
Ni含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Ni含有量の好ましい上限は0.49%であり、さらに好ましくは0.48%であり、さらに好ましくは0.45%である。
ジルコニウム(Zr)は、水素の鋼材への侵入を抑制し、鋼材の耐水素脆性を高める。Zrは特に、非定常状態の鋼材への水素の侵入を抑制する。Zr含有量が0.0010%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。
一方、Zr含有量が0.1000%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐水素脆性が飽和する。さらに、製造コストが高くなる。
したがって、Zr含有量は0.0010~0.1000%である。
Zr含有量の好ましい下限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0080%であり、さらに好ましくは0.0100%である。
Zr含有量の好ましい上限は0.0800%であり、さらに好ましくは0.0700%であり、さらに好ましくは0.0600%であり、さらに好ましくは0.0550%である。
酸素(O)は不純物である。すなわち、O含有量の下限は0%超である。O含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物が形成し、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、O含有量は0.0050%以下である。
O含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、O含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、O含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
O含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
本実施形態の鋼材の化学組成はさらに、
Feの一部に代えて、
Sb:0~0.50%、
Co:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ti:0~0.030%、
Nb:0~0.150%、
V:0~0.500%、
B:0~0.0030%、
Ca:0~0.0040%、
Mg:0~0.0040%、及び、
希土類元素:0~0.0040%、
からなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。
以下、これらの任意元素について説明する。
本実施形態による鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Sb、Co及びWからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素である。これらの元素はいずれも、鋼材に水素が侵入するのを抑制する。以下、Sb、Co及びWについて説明する。
アンチモン(Sb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Sb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Sbは、水素侵入抑制元素として機能する。具体的には、Sbは、高腐食サワー環境下において水素の鋼材への侵入を抑制し、耐水素脆性を高める。Sbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Sb含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。
したがって、Sb含有量は0~0.50%である。
Sb含有量の好ましい下限は、0.01%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Sb含有量の好ましい上限は、0.48%であり、さらに好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.43%であり、さらに好ましくは0.40%である。
コバルト(Co)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Co含有量は0%であってもよい。含有される場合、Coは、水素侵入抑制元素として機能する。具体的には、Coは、高腐食サワー環境下において、腐食生成物皮膜と母材との界面に濃化して、母材の表面活性を抑制し、水素が鋼材に侵入するのを抑制する。Coはさらに、鋼材に固溶して鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Coが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Co含有量が0.50%を超えれば、その効果は飽和する。
したがって、Co含有量は0~0.50%である。
Co含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.08%である。
Co含有量の好ましい上限は0.48%であり、さらに好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.43%である。
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、W含有量は
0%であってもよい。含有される場合、Wは、水素侵入抑制元素として機能する。具体的には、Wは、鋼材の表面の腐食被膜を形成する。これにより、鋼材の水素の侵入が抑制される。そのため、鋼材の耐水素脆性が高まる。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、W含有量が0.50%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な炭化物が生成する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、W含有量は0~0.50%である。
W含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.08%である。
W含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
本実施形態による鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、Nb、Vからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素である。これらの元素はいずれも、析出物を生成して、鋼の強度を高める。以下、Ti、Nb及びVについて説明する。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは、C及び/又はNと結合して炭窒化物等を形成する。これらの炭窒化物等は、ピンニング効果により結晶粒を微細化して、鋼材の強度を高める。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Ti含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Ti窒化物等が粗大化する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Ti含有量は0~0.030%である。
Ti含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。
Ti含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.010%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは、C及び/又はNと結合して炭窒化物等を形成する。これらの炭窒化物等は、ピンニング効果により結晶粒を微細化して、鋼材の強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Nb含有量が0.150%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Nb炭窒化物等が粗大化する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Nb含有量は0~0.150%である。
Nb含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.007%である。
Nb含有量の好ましい上限は0.120%であり、さらに好ましくは0.090%であり、さらに好ましくは0.060%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.020%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。含有される場合、Vは、C及び/又はNと結合して炭窒化物等を形成する。これらの炭窒化物は、ピンニング効果により結晶粒を微細化して、鋼材の強度を高める。Vが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、V含有量が0.500%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靭性が低下する。
したがって、V含有量は0~0.500%である。
V含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。
V含有量の好ましい上限は0.400%であり、さらに好ましくは0.300%であり、さらに好ましくは0.200%であり、さらに好ましくは0.150%であり、さらに好ましくは0.120%である。
本実施形態による鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Bを含有してもよい。
B:0~0.0030%
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、Bは鋼材に固溶して鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、B含有量が0.0030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大なB窒化物が生成する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、B含有量は0~0.0030%である。
B含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0008%である。
B含有量の好ましい上限は0.0028%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0023%である。
本実施形態による鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg、希土類元素(REM)からなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素である。これらの元素はいずれも、Mn硫化物を微細化して鋼材の耐水素脆性を高める。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは、鋼中のSと結合してMn硫化物を微細化する。これにより、鋼材の耐水素脆性が高まる。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Ca含有量が0.0040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Ca含有量は0~0.0040%である。
Ca含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
Ca含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mg含有量は0%であってもよい。含有される場合、Mgは、鋼材中のMn硫化物を微細化して、鋼材の耐水素脆性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、Mg含有量が0.0040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、Mg含有量は0~0.0040%である。
Mg含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
Mg含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、REM含有量は0%であってもよい。含有される場合、REMは、鋼材中のMn硫化物を微細化して、鋼材の耐水素脆性を高める。REMが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。
しかしながら、REM含有量が0.0040%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化する。そのため、鋼材の耐水素脆性が低下する。
したがって、REM含有量は0~0.0040%である。
REM含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。
REM含有量の好ましい上限は0.0032%であり、さらに好ましくは0.0028%であり、さらに好ましくは0.0026%であり、さらに好ましくは0.0024%である。
本実施形態の鋼材では、高腐食サワー環境下で非定常状態であっても、水素の鋼材への侵入を抑制できる。ここで、「高腐食サワー環境下で非定常状態であっても、水素の鋼材への侵入を抑制できる」とは、1barのH2Sガスを飽和した5.0質量%のNaClと0.5質量%のCH3COOHとの混合水溶液であってpHを2.7とした試験液を用いた水素透過試験で得られた、水素透過係数の最大値Permaxが8.25μA/cm以下であり、さらに、差分ΔPerが2.70μA/cm以下であることを意味する。
高腐食サワー環境下での水素の鋼材への侵入量の指標である、水素透過係数Per90及び、差分ΔPerは、次の方法で測定できる。
水素透過係数Per90の測定には、図5に示すダブルセル型の陰極チャージ水素透過試験装置10を用いる。
好ましくは、本実施形態の鋼材の化学組成ではさらに、次の式(1)で定義されるFn1が4.00以上である。
Fn1=(2.0×Si+0.3×Cu+0.9×Ni+Cr+1.2×Mo+8.0×Zr+5.0×Sb+5.0×Co)-(2.0×C+2.0×Mn) (1)
本実施形態の鋼材のミクロ組織は、特に限定されない。本実施形態の鋼材の化学組成の各元素含有量が上述の範囲内であれば、電気化学的作用に基づいて、水素の鋼材への侵入を抑制することができる。
ミクロ組織中のマルテンサイト及びベイナイトの総面積率は、周知のミクロ組織観察により求めることができる。
鋼材の厚さ中央部から、試験片を採取する。厚さ中央部とは、鋼材が鋼管である場合、肉厚中央部であり、鋼材が鋼板である場合、板厚中央部であり、鋼材が丸鋼(棒鋼)である場合、圧延方向に垂直な断面における中心部である。試験片の観察面は例えば、10mm×10mmとする。観察面は鋼材の圧延方向に垂直な断面とする。
本実施形態の鋼材の降伏強度は特に限定されない。
好ましい降伏強度は655MPa以上(95ksi以上)である。降伏強度の好ましい下限は758MPa(110ksi)である。降伏強度の上限は特に限定されないが、上述の化学組成の場合、降伏強度の上限は例えば、862MPa未満である。
降伏強度は、次の方法で測定する。具体的には、ASTM E8/E8M(2021)に準拠して、引張試験を行う。具体的には、鋼材から、引張試験片を採取する。引張試験片のサイズは特に限定されない。引張試験片は例えば、平行部径が6.0mm、標点距離が30.0mmの丸棒引張試験片とする。
鋼材が鋼管である場合、肉厚中央部から引張試験片を採取する。この場合、引張試験片の長手方向は、鋼管の管軸方向と平行とする。鋼材が鋼板である場合、板厚中央部から引張試験片を採取する。この場合、引張試験片の長手方向は、鋼板の圧延方向と平行とする。鋼材が丸鋼である場合、R/2部から引張試験片を採取する。本明細書において、丸鋼とは、軸方向に垂直な断面が円形状の棒鋼を意味する。R/2部とは、丸鋼の圧延方向に垂直な断面における半径Rの中心部を意味する。引張試験片の長手方向は、丸鋼の軸方向と平行である。
採取した引張試験片を用いて、常温(24±3℃)、大気中で引張試験を実施する。得られた0.2%オフセット耐力(MPa)を、降伏強度(MPa)と定義する。
本実施形態の鋼材の形状は特に限定されない。本実施形態の鋼材は、鋼管であってもよいし、鋼板であってもよいし、丸鋼であってもよい。
本実施形態の鋼材の製造方法の一例を説明する。なお、以下に説明する製造方法は一例であって、本実施形態の鋼材の製造方法はこれに限定されない。つまり、上述の構成を有する本実施形態の鋼材が製造できれば、以下に説明する製造方法に限定されない。ただし、以下に説明する製造方法は、本実施形態の鋼材を製造する好適な製造方法である。
素材準備工程では、始めに、上記化学組成を有する溶鋼を、周知の精錬方法により製造する。製造された溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造する。ここで、鋳片とは、スラブ、ブルーム、又はビレットである。鋳片に代えて、上記溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを熱間圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の製造工程により、素材(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。
熱間加工工程では、準備された素材を熱間加工する。最終製品が鋼管である場合、初めに、素材を加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、例えば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出された素材に対して熱間加工を実施して、素管(継目無鋼管)を製造する。例えば、熱間加工としてマンネスマン法を実施し、素管を製造する。この場合、穿孔機によりビレットを穿孔圧延する。穿孔圧延する場合、穿孔比は特に限定されないが、例えば、1.0~4.0である。穿孔圧延後のビレットに対して、マンドレルミルを用いた延伸圧延を実施する。さらに、必要に応じて、延伸圧延後のビレットに対して、レデューサ又はサイジングミルを用いた定径圧延を実施する。以上の工程により、素管を製造する。熱間加工工程での累積の減面率は特に限定されないが、例えば、20~70%である。
熱処理工程は実施してもよいし、実施しなくてもよい。つまり、本実施形態の鋼材は、圧延まま(As-Rolled)材であってもよい。熱処理工程を実施する場合、熱処理工程は、焼入れ工程及び焼戻し工程を含む。
熱処理工程でははじめに、熱間加工工程で製造された鋼材に対して、焼入れ工程を実施する。焼入れは周知の方法で実施する。具体的には、熱間加工後の鋼材を熱処理炉に装入し、焼入れ温度で保持する。焼入れ温度はAC3変態点以上であり、例えば、900~1000℃である。鋼材を焼入れ温度で保持した後、急冷(焼入れ)する。焼入れ温度での保持時間は特に限定されないが、例えば、10~60分である。焼入れ方法は例えば、水冷である。焼入れ方法は特に制限されない。鋼材が鋼管である場合、水槽又は油槽に浸漬して素管を急冷してもよいし、シャワー冷却又はミスト冷却により、鋼管の外面及び/又は内面に対して冷却水を注いだり、噴射したりして、鋼管を急冷してもよい。
焼入れ後の鋼材に対してさらに、焼戻し工程を実施する。焼戻し工程では、鋼材の降伏強度を調整する。本実施形態の鋼材においては、焼戻し温度を例えば、500℃~AC1変態点とする。焼戻し温度での保持時間は特に限定されないが、例えば、10~180分である。化学組成に応じて焼戻し温度を適宜調整することにより、式(1)を満たす上述の化学組成の鋼材の降伏強度を調整する。好ましくは、鋼材の降伏強度を655MPa以上に調整する。
製造された鋼材に対して、次の評価試験を実施した。
各試験番号の鋼材の板厚中央部から試験片を採取した。試験片は、厚さが1mm(0.1cm)であって、直径が25mmの円板状とした。
試験結果を表3に示す。なお、表3には各試験番号のFn1を「Fn1」欄に示す。
Claims (4)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.20~0.45%、
Si:0.60~1.30%、
Mn:0.02~1.00%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.010~0.100%、
N:0.0100%以下、
Cr:0.10~3.00%、
Mo:0.35~3.00%、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
Zr:0.0010~0.1000%、
O:0.0050%以下、
Sb:0~0.50%、
Co:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ti:0~0.030%、
Nb:0~0.150%、
V:0~0.500%、
B:0~0.0030%、
Ca:0~0.0040%、
Mg:0~0.0040%、及び、
希土類元素:0~0.0040%、を含有し、
残部がFe及び不純物からなる、
鋼材。 - 請求項1に記載の鋼材であってさらに、
次の式(1)で定義されるFn1が4.00以上である、
鋼材。
Fn1=(2.0×Si+0.3×Cu+0.9×Ni+Cr+1.2×Mo+8.0×Zr+5.0×Sb+5.0×Co)-(2.0×C+2.0×Mn) (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の質量%での含有量が代入される。 - 請求項1又は請求項2に記載の鋼材であって、
前記化学組成は、
Sb:0.01~0.50%、
Co:0.01~0.50%、
W:0.01~0.50%、
Ti:0.003~0.030%、
Nb:0.003~0.150%、
V:0.005~0.500%、
B:0.0003~0.0030%、
Ca:0.0003~0.0040%、
Mg:0.0003~0.0040%及び、
希土類元素:0.0003~0.0040%、
からなる群から選択される1種以上を含有する、
鋼材。 - 請求項1に記載の鋼材であって、
前記鋼材は、油井用鋼管である、
鋼材。
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