図1は、本発明の一の実施の形態に係る分離膜複合体1の断面図である。図2は、分離膜複合体1の一部を拡大して示す断面図である。分離膜複合体1は、支持体11と、分離膜12とを備える。図1では、分離膜12を太線にて描いている。図2では、分離膜12に平行斜線を付し、分離膜12の厚さを実際よりも厚く描いている。
支持体11はガスおよび液体を透過可能な多孔質部材である。図1に示す例では、支持体11は、一体成形された一繋がりの略柱状の部材である。支持体11には、長手方向にそれぞれ延びる複数の貫通孔111が設けられる。すなわち、支持体11は、いわゆるモノリス型の部材である。支持体11の外形は、例えば略円柱状である。各貫通孔111(すなわち、セル)の長手方向に垂直な断面は、例えば略円形である。図1では、貫通孔111の径を実際よりも大きく、貫通孔111の数を実際よりも少なく描いている。
支持体11の長さ(すなわち、図1中の左右方向の長さ)は、例えば10cm~200cmである。支持体11の外径は、例えば0.5cm~30cmである。隣接する貫通孔111の中心軸間の距離は、例えば0.3mm~10mmである。支持体11の表面粗さ(Ra)は、例えば0.1μm~5.0μmであり、好ましくは0.2μm~2.0μmである。なお、支持体11の形状は、例えば、ハニカム状、平板状、管状、円筒状、円柱状または多角柱状等であってもよい。支持体11の形状が管状または円筒状である場合、支持体11の厚さは、例えば0.1mm~10mmである。
支持体11の材料は、表面に分離膜12を形成する工程において化学的安定性を有するものであれば、様々な物質(例えば、セラミックまたは金属)が採用可能である。本実施の形態では、支持体11はセラミック焼結体により形成される。支持体11の材料として選択されるセラミック焼結体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。本実施の形態では、支持体11は、アルミナ、シリカおよびムライトのうち、少なくとも1種類を含む。
支持体11は、無機結合材を含んでいてもよい。無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも1つを用いることができる。
支持体11の平均細孔径は、例えば0.01μm~70μmであり、好ましくは0.05μm~25μmである。分離膜12が形成される表面近傍における支持体11の平均細孔径は0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。平均細孔径は、例えば、水銀ポロシメータ、パームポロメータまたはナノパームポロメータにより測定することができる。支持体11の表面および内部を含めた全体における細孔径の分布について、D5は例えば0.01μm~50μmであり、D50は例えば0.05μm~70μmであり、D95は例えば0.1μm~2000μmである。分離膜12が形成される表面近傍における支持体11の気孔率は、例えば20%~60%である。
支持体11は、例えば、平均細孔径が異なる複数の層が厚さ方向に積層された多層構造を有する。分離膜12が形成される表面を含む表面層における平均細孔径および焼結粒径は、表面層以外の層における平均細孔径および焼結粒径よりも小さい。支持体11の表面層の平均細孔径は、例えば0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。支持体11が多層構造を有する場合、各層の材料は上記のものを用いることができる。多層構造を形成する複数の層の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
分離膜12は、支持体11の貫通孔111の内側面上において、当該内側面の略全面に亘って設けられる略円筒状の薄膜である。分離膜12は、微細孔を有する緻密な多孔膜である。分離膜12は、複数種類のガスが混合した混合ガスから、分子篩作用を利用して特定のガスを分離可能である。
分離膜12は、例えば無機膜であり、本実施の形態ではゼオライト膜である。ゼオライト膜とは、少なくとも、支持体11の表面にゼオライトが膜状に形成されたものであって、有機膜中にゼオライト粒子を分散させただけのものは含まない。ゼオライト膜は、上述のように、混合物質から特定の物質を分離する分離膜として利用可能である。ゼオライト膜では、当該特定の物質に比べて他の物質が透過しにくい。換言すれば、ゼオライト膜の当該他の物質の透過量は、上記特定の物質の透過量に比べて小さい。なお、ゼオライト膜は、構造や組成が異なる2種類以上のゼオライトを含んでいてもよい。
分離膜12の厚さは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは0.1μm~20μmであり、さらに好ましくは0.5μm~10μmである。分離膜12を厚くすると分離性能が向上する。分離膜12を薄くすると透過速度が増大する。分離膜12の表面粗さ(Ra)は、例えば5μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。
分離膜12に含まれるゼオライト結晶の細孔径(以下、単に「分離膜12の細孔径」とも呼ぶ。)は、0.2nm以上かつ0.8nm以下であり、より好ましくは、0.3nm以上かつ0.7nm以下であり、さらに好ましくは、0.3nm以上かつ0.45nm以下である。分離膜12の細孔径が0.2nm未満の場合、分離膜12を透過するガスの量が少なくなる場合があり、分離膜12の細孔径が0.8nmよりも大きい場合、分離膜12によるガスの選択性が不十分となる場合がある。分離膜12の細孔径とは、分離膜12を構成するゼオライト結晶の細孔の最大直径(すなわち、酸素原子間距離の最大値である長径)と略垂直な方向における細孔の直径(すなわち、短径)である。分離膜12の細孔径は、分離膜12が配設される支持体11の表面における平均細孔径よりも小さい。
分離膜12を構成するゼオライトの最大員環数がnの場合、n員環細孔の短径を分離膜12の細孔径とする。また、ゼオライトが、nが等しい複数種のn員環細孔を有する場合には、最も大きい短径を有するn員環細孔の短径を分離膜12の細孔径とする。なお、n員環とは、細孔を形成する骨格を構成する酸素原子の数がn個であって、各酸素原子が後述のT原子と結合して環状構造をなす部分のことである。また、n員環とは、貫通孔(チャンネル)を形成しているものをいい、貫通孔を形成していないものは含まない。n員環細孔とは、n員環により形成される細孔である。選択性能向上の観点から、上述の分離膜12に含まれるゼオライトの最大員環数は、8以下(例えば、6または8)であることが好ましい。
ゼオライト膜である分離膜12の細孔径は当該ゼオライトの骨格構造によって一義的に決定され、国際ゼオライト学会の“Database of Zeolite Structures”[online]、インターネット<URL:http://www.iza-structure.org/databases/>に開示されている値から求めることができる。
分離膜12を構成するゼオライトの種類は、特に限定されないが、例えば、AEI型、AEN型、AFN型、AFV型、AFX型、BEA型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、FAU型(X型、Y型)、GIS型、IHW型、LEV型、LTA型、LTJ型、MEL型、MFI型、MOR型、PAU型、RHO型、SOD型、SAT型等のゼオライトである。当該ゼオライトが8員環ゼオライトである場合、例えば、AEI型、AFN型、AFV型、AFX型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、GIS型、IHW型、LEV型、LTA型、LTJ型、RHO型、SAT型等のゼオライトである。
分離膜12を構成するゼオライトは、T原子(すなわち、ゼオライトを構成する酸素四面体(TO4)の中心に位置する原子)として、例えばアルミニウム(Al)を含む。分離膜12を構成するゼオライトとしては、T原子がケイ素(Si)のみ、もしくは、SiとAlとからなるゼオライト、T原子がAlとリン(P)とからなるAlPO型のゼオライト、T原子がSiとAlとPとからなるSAPO型のゼオライト、T原子がマグネシウム(Mg)とSiとAlとPとからなるMAPSO型のゼオライト、T原子が亜鉛(Zn)とSiとAlとPとからなるZnAPSO型のゼオライト等を用いることができる。T原子の一部は、他の元素に置換されていてもよい。
分離膜12は、例えば、Siを含む。分離膜12は、例えば、Si、AlおよびPのうちいずれか2つ以上を含んでいてもよい。分離膜12は、アルカリ金属を含んでいてもよい。当該アルカリ金属は、例えば、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)である。分離膜12がSi原子およびAl原子を含む場合、分離膜12におけるSi/Al比は、例えば1以上かつ10万以下である。Si/Al比は、分離膜12に含有されるAl元素に対するSi元素のモル比率である。当該Si/Al比は、好ましくは5以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは100以上であり、高ければ高いほど好ましい。後述する原料溶液中のSi源とAl源との配合割合等を調整することにより、分離膜12におけるSi/Al比を調整することができる。
なお、分離膜複合体1では、分離膜12は、ゼオライト膜に加えて、ゼオライト膜以外の膜を備えていてもよい。あるいは、分離膜12は、ゼオライト膜以外の無機膜であってもよく、無機膜以外の膜(例えば、有機膜)であってもよい。
次に、図3および図4を参照しつつ、分離膜複合体1を利用した混合物質の分離について説明する。図3は、分離装置2を示す図である。図4は、分離装置2による混合物質の分離の流れを示す図である。
分離装置2では、複数種類の流体(すなわち、ガスまたは液体)を含む混合物質を分離膜複合体1に供給し、混合物質中の透過性が高い物質を、分離膜複合体1を透過させることにより混合物質から分離させる。分離装置2における分離は、例えば、透過性が高い物質(以下、「高透過性物質」とも呼ぶ。)を混合物質から抽出する目的で行われてもよく、透過性が低い物質(以下、「低透過性物質」とも呼ぶ。)を濃縮する目的で行われてもよい。
当該混合物質(すなわち、混合流体)は、複数種類のガスを含む混合ガスであってもよく、複数種類の液体を含む混合液であってもよく、ガスおよび液体の双方を含む気液二相流体であってもよい。
混合物質は、例えば、水素(H2)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、酸素(O2)、水(H2O)、水蒸気(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物、アンモニア(NH3)、硫黄酸化物、硫化水素(H2S)、フッ化硫黄、水銀(Hg)、アルシン(AsH3)、シアン化水素(HCN)、硫化カルボニル(COS)、C1~C8の炭化水素、有機酸、アルコール、メルカプタン類、エステル、エーテル、ケトンおよびアルデヒドのうち、1種類以上の物質を含む。上述の高透過性物質は、例えば、H2、N2、O2、H2O、CO2およびH2Sのうち1種類以上の物質である。
窒素酸化物とは、窒素と酸素の化合物である。上述の窒素酸化物は、例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素ともいう。)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)等のNOX(ノックス)と呼ばれるガスである。
硫黄酸化物とは、硫黄と酸素の化合物である。上述の硫黄酸化物は、例えば、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)等のSOX(ソックス)と呼ばれるガスである。
フッ化硫黄とは、フッ素と硫黄の化合物である。上述のフッ化硫黄は、例えば、二フッ化二硫黄(F-S-S-F,S=SF2)、二フッ化硫黄(SF2)、四フッ化硫黄(SF4)、六フッ化硫黄(SF6)または十フッ化二硫黄(S2F10)等である。
C1~C8の炭化水素とは、炭素が1個以上かつ8個以下の炭化水素である。C3~C8の炭化水素は、直鎖化合物、側鎖化合物および環式化合物のうちいずれであってもよい。また、C2~C8の炭化水素は、飽和炭化水素(すなわち、2重結合および3重結合が分子中に存在しないもの)、不飽和炭化水素(すなわち、2重結合および/または3重結合が分子中に存在するもの)のどちらであってもよい。C1~C4の炭化水素は、例えば、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、ノルマルブタン(CH3(CH2)2CH3)、イソブタン(CH(CH3)3)、1-ブテン(CH2=CHCH2CH3)、2-ブテン(CH3CH=CHCH3)またはイソブテン(CH2=C(CH3)2)である。
上述の有機酸は、カルボン酸またはスルホン酸等である。カルボン酸は、例えば、ギ酸(CH2O2)、酢酸(C2H4O2)、シュウ酸(C2H2O4)、アクリル酸(C3H4O2)または安息香酸(C6H5COOH)等である。スルホン酸は、例えばエタンスルホン酸(C2H6O3S)等である。当該有機酸は、鎖式化合物であってもよく、環式化合物であってもよい。
上述のアルコールは、例えば、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、イソプロパノール(2-プロパノール)(CH3CH(OH)CH3)、エチレングリコール(CH2(OH)CH2(OH))またはブタノール(C4H9OH)等である。
メルカプタン類とは、水素化された硫黄(SH)を末端に持つ有機化合物であり、チオール、または、チオアルコールとも呼ばれる物質である。上述のメルカプタン類は、例えば、メチルメルカプタン(CH3SH)、エチルメルカプタン(C2H5SH)または1-プロパンチオール(C3H7SH)等である。
上述のエステルは、例えば、ギ酸エステルまたは酢酸エステル等である。
上述のエーテルは、例えば、ジメチルエーテル((CH3)2O)、メチルエチルエーテル(C2H5OCH3)またはジエチルエーテル((C2H5)2O)等である。
上述のケトンは、例えば、アセトン((CH3)2CO)、メチルエチルケトン(C2H5COCH3)またはジエチルケトン((C2H5)2CO)等である。
上述のアルデヒドは、例えば、アセトアルデヒド(CH3CHO)、プロピオンアルデヒド(C2H5CHO)またはブタナール(ブチルアルデヒド)(C3H7CHO)等である。
以下の説明では、分離装置2により分離される混合物質は、複数種類のガスを含む混合ガスであるものとして説明する。
分離装置2は、分離膜複合体1と、封止部21と、外筒22と、2つのシール部材23と、供給部26と、第1回収部27と、第2回収部28とを備える。分離膜複合体1、封止部21およびシール部材23は、外筒22内に収容される。供給部26、第1回収部27および第2回収部28は、外筒22の外部に配置されて外筒22に接続される。
封止部21は、支持体11の長手方向(すなわち、図3中の左右方向)の両端部に取り付けられ、支持体11の長手方向両端面、および、当該両端面近傍の外側面を被覆して封止する部材である。封止部21は、支持体11の当該両端面からのガスおよび液体の流入および流出を防止する。封止部21は、例えば、ガラスまたは樹脂により形成された板状または膜状の部材である。封止部21の材料および形状は、適宜変更されてよい。なお、封止部21には、支持体11の複数の貫通孔111と長手方向にて重なる複数の開口が設けられているため、支持体11の各貫通孔111の長手方向両端は、封止部21により被覆されていない。したがって、当該両端から貫通孔111へのガスおよび液体の流入および流出は可能である。
外筒22の形状は特に限定されないが、例えば、略円筒状の筒状部材である。外筒22は、例えばステンレス鋼または炭素鋼により形成される。外筒22の長手方向は、分離膜複合体1の長手方向に略平行である。外筒22の長手方向の一方の端部(すなわち、図3中の左側の端部)には供給ポート221が設けられ、他方の端部には第1排出ポート222が設けられる。外筒22の側面には、第2排出ポート223が設けられる。供給ポート221には、供給部26が接続される。第1排出ポート222には、第1回収部27が接続される。第2排出ポート223には、第2回収部28が接続される。外筒22の内部空間は、外筒22の周囲の空間から隔離された密閉空間である。
2つのシール部材23は、分離膜複合体1の長手方向両端部近傍において、分離膜複合体1の外側面と外筒22の内側面との間に、全周に亘って配置される。各シール部材23は、ガスおよび液体が透過不能な材料により形成された略円環状の部材である。シール部材23は、例えば、可撓性を有する樹脂により形成されたOリングである。シール部材23は、分離膜複合体1の外側面および外筒22の内側面に全周に亘って密着する。図3に示す例では、シール部材23は、封止部21の外側面に密着し、封止部21を介して分離膜複合体1の外側面に間接的に密着する。シール部材23と分離膜複合体1の外側面との間、および、シール部材23と外筒22の内側面との間は、シールされており、ガスおよび液体の通過はほとんど、または、全く不能である。
供給部26は、混合ガスを、供給ポート221を介して外筒22の内部空間に供給する。供給部26は、例えば、外筒22に向けて混合ガスを圧送するブロワまたはポンプ等の圧送機構を備える。当該圧送機構は、例えば、外筒22に供給する混合ガスの温度および圧力をそれぞれ調節する温度調節部および圧力調節部を備える。第1回収部27および第2回収部28は、例えば、外筒22から導出されたガスを貯留する貯留容器、または、当該ガスを移送するブロワまたはポンプを備える。
混合ガスの分離が行われる際には、まず、分離膜複合体1が準備される(図4:ステップS11)。具体的には、分離膜複合体1が外筒22の内部に取り付けられる。続いて、供給部26により、分離膜12に対する透過性が異なる複数種類のガスを含む混合ガスが、矢印251にて示すように、外筒22の内部に供給される。例えば、混合ガスの主成分は、CO2およびCH4である。混合ガスには、CO2およびCH4以外のガスが含まれていてもよい。供給部26から外筒22の内部に供給される混合ガスの圧力(すなわち、分離膜12の一次側のガス圧力である供給側圧力)は、例えば、0.1MPaG~20.0MPaGである。供給部26から供給される混合ガスの温度は、例えば10℃~250℃である。
供給部26から外筒22に供給された混合ガスは、分離膜複合体1の図中の左端から、支持体11の各貫通孔111内(すなわち、略円筒状の分離膜12の内側)に導入される。混合ガス中の透過性が高いガスである高透過性ガスは、各貫通孔111の内側面上に設けられた分離膜12、および、支持体11を透過して支持体11の外側面から導出される。これにより、高透過性ガス(例えば、CO2)が、混合ガス中の透過性が低いガスである低透過性ガス(例えば、CH4)から分離される(ステップS12)。
支持体11の外側面から導出されたガス(以下、「透過ガス」と呼ぶ。)は、矢印253にて示すように、第2排出ポート223を介して第2回収部28へと導かれ、第2回収部28により回収される。第2回収部28により回収されるガスの圧力(すなわち、分離膜12の二次側のガス圧力である透過側圧力)は、例えば、0.0MPaGである。換言すれば、供給側圧力と透過側圧力との差は、例えば、0.1MPa~20.0MPaである。透過ガスには、上述の高透過性ガス以外に、分離膜12を透過した低透過性ガスが含まれていてもよい。
また、混合ガスのうち、分離膜12および支持体11を透過したガスを除くガス(以下、「非透過ガス」と呼ぶ。)は、支持体11の各貫通孔111を図中の左側から右側へと通過し、矢印252にて示すように、第1排出ポート222を介して第1回収部27により回収される。第1回収部27により回収されるガスの圧力は、例えば、供給側圧力と略同じ圧力である。非透過ガスには、上述の低透過性ガス以外に、分離膜12を透過しなかった高透過性ガスが含まれていてもよい。第1回収部27により回収された非透過ガスは、例えば、供給部26に循環されて、外筒22内へと再度供給されてもよい。
上述の分離膜複合体1では、大気中にて保管されている間に、大気中に含まれる物質が分離膜12の細孔内に吸着することがある。分離膜12の細孔内に吸着する物質(すなわち、吸着質)は、例えば、大気中に含まれるH2Oおよび/または揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)である。揮発性有機化合物の吸着質は、例えば、炭素(C)の数が3以上の炭化水素である。揮発性有機化合物の吸着質は、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、n -ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、m-キシレン、p-キシレン、o-キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、デカン、n-ブタン、イソブタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、cis-2-ブテン、ウンデカン等である。また、分離膜複合体1では、分離装置2において混合ガスの分離に使用されている間に、混合ガスに含まれる物質が分離膜12の細孔内に吸着することもある。
このように、分離膜12の細孔内に吸着質が吸着すると、細孔が閉塞されて分離膜12の透過性能が低下する可能性がある。そこで、分離膜12の細孔内から吸着質を除去して(すなわち、脱離させて)分離膜12の透過性能を回復させる膜加熱処理が行われる。
図5は、細孔内に吸着質が吸着した分離膜12を加熱する膜加熱処理方法の流れを示す図である。図6は、当該膜加熱処理方法における分離膜12の温度変化(すなわち、温度プロファイル)を示す図である。図6では、図5に示すステップS21~S25に対応する領域に、符号S21~S25を付す。
当該膜加熱処理方法では、まず、分離膜複合体1を加熱装置にセットする。例えば、分離装置2の外筒22から分離膜複合体1を取り外し、乾燥器等の加熱装置に収容する。加熱装置は、分離膜複合体1を後述する所望の温度まで加熱することができるものであれば、乾燥器以外の様々な装置が利用可能である。
分離膜複合体1が加熱装置にセットされると、加熱装置の内部の雰囲気が所望の雰囲気(以下、「加熱処理雰囲気」とも呼ぶ。)とされる。当該加熱処理雰囲気は、例えば、大気よりも酸素濃度が低い低酸素雰囲気である。加熱処理雰囲気中の酸素濃度は、例えば10体積%以下であり、好ましくは5体積%以下である。これにより、後述する分離膜複合体1の加熱の際に、吸着質の急激な燃焼反応を抑制し、分離膜12における局所的かつ急激な昇温による損傷を防止することができる。
加熱装置では、例えば、窒素(N2)等の不活性ガスが内部に供給されることにより、加熱装置内が低酸素雰囲気とされる。あるいは、二酸化炭素(CO2)が加熱装置の内部に供給されてもよい。加熱装置の内部に供給されるガスは、分離膜12を透過しやすい上述の高透過性物質であることが好ましい。これにより、加熱処理雰囲気に含まれる物質により、分離膜12の細孔が閉塞されることを防止または抑制することができる。また、後述する分離膜複合体1の加熱の際に、加熱された雰囲気が分離膜12の細孔を透過しやすいため、分離膜12を均等に加熱することができる。さらに、加熱装置に供給するガスとしてN2またはCO2を利用することにより、当該膜加熱処理方法に要するコストを低減することができる。なお、加熱処理雰囲気として加熱装置に供給されるガスは、1種類の物質のみであってもよく、複数種類の物質を含む混合ガスであってもよい。
加熱装置では、分離膜複合体1が収容された内部空間に、上記加熱処理雰囲気が充填された状態で密閉された後、以下の分離膜12の膜加熱処理が行われてもよく、当該内部空間に加熱処理雰囲気をフローさせつつ(すなわち、加熱処理雰囲気を継続的に供給しつつ)膜加熱処理が行われてもよい。加熱装置の内部空間における加熱処理雰囲気のフロー状態によっては、分離膜12を挟んだ両側の空間において圧力差が生じ、加熱処理雰囲気の一部が分離膜12を継続的に透過している状態で膜加熱処理が行われてもよい。加熱装置内は、膜加熱処理が終了するまで、当該加熱処理雰囲気にて維持されることが好ましい。
加熱処理の内部空間が上述の加熱処理雰囲気とされると、当該加熱装置により分離膜複合体1が加熱され、分離膜複合体1(すなわち、支持体11および分離膜12)が、室温(例えば、20℃)から所定の中間加熱温度まで昇温される(ステップS21:前昇温工程)。中間加熱温度は、例えば、60℃以上かつ180℃以下であり、好ましくは、70℃以上かつ160℃以下であり、さらに好ましくは、80℃以上かつ150℃以下である。中間加熱温度は、吸着質および分離膜12の種類に基づいて適宜設定される。分離膜12を構成するゼオライトが、吸着質の炭化反応等を促進する触媒として機能する場合、中間加熱温度は、例えば、当該ゼオライトの触媒反応温度未満の温度である。
ステップS21における昇温速度(以下、「前昇温速度」とも呼ぶ。)は、例えば5℃/h以上であり、好ましくは10℃/h以上である。これにより、ステップS21の昇温時間が長くなることを抑制することができる。ステップS21における昇温速度の上限は特に限定されないが、分離膜複合体1における熱応力の発生を抑制するという観点から、当該昇温速度は、例えば200℃/h以下であり、好ましくは100℃/h以下である。
分離膜複合体1が中間加熱温度まで昇温されると、上記加熱装置により、分離膜12の温度が中間加熱温度に維持された状態で、分離膜12が所定時間加熱される(ステップS22:中間加熱工程)。以下の説明では、ステップS22における中間加熱温度での加熱時間を、「中間加熱時間」とも呼ぶ。中間加熱時間は、例えば、1時間~48時間である。ステップS22における分離膜12の加熱により、分離膜12の細孔内に吸着している吸着質の一部が熱により細孔表面から脱離することで細孔内から除去される。これにより、分離膜12の透過性能が、後述する所定の程度以上に回復する。
上述の中間加熱温度および中間加熱時間は、吸着質の種類、分離膜12に対する吸着質の吸着力、および、分離膜12の透過性能の低下の程度等に基づいて、適宜設定されてよい。例えば、吸着質と分離膜12との反応性が高く、吸着質が炭化しやすい場合、中間加熱温度を低く設定し、中間加熱時間を長く設定することにより、吸着質の炭化反応を抑制することができる。また、例えば、吸着質の分離膜12に対する吸着力が比較的小さく、分離膜12の透過性能の低下の程度も比較的小さい場合、中間加熱時間を短く設定することにより、分離膜12の膜加熱処理に要する時間を短くすることができる。
なお、中間加熱温度が過剰に低いと、ステップS22の終了時における分離膜12の透過性能の回復の程度が不足したり、当該透過性能を所定の程度以上に回復するために長時間を要する可能性がある。したがって、中間加熱温度は、例えば60℃以上であり、好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。一方、中間加熱温度が過剰に高いと、ステップS22において吸着質が炭化して分離膜12の細孔内に固着し、コーキングが生じる可能性がある。したがって、中間加熱温度は、例えば180℃以下であり、好ましくは160℃以下であり、より好ましくは150℃以下である。
また、中間加熱時間が過剰に長いと、実用的な膜加熱処理に適さず、また、熱履歴による分離膜12の変質の可能性もある。したがって、中間加熱時間は、例えば48時間以下であり、好ましくは24時間以下であり、さらに好ましくは16時間以下である。一方、中間加熱時間が過剰に短いと、ステップS22の終了時における分離膜12の透過性能の回復の程度が不足する可能性がある。したがって、中間加熱時間は、例えば1時間以上であり、好ましくは2時間以上である。
ステップS22では、分離膜12の温度は、中間加熱温度にて厳密に一定に維持されることが好ましいが、中間加熱温度近傍にて多少変動(例えば、小さく振動)してもよい。あるいは、ステップS22では、分離膜12の温度変動により、中間加熱工程終了時の温度が中間加熱工程開始時の温度よりも少し高く、または、少し低くなっていてもよい。これらいずれの場合も、分離膜12の温度が中間加熱温度に維持されている状態に含まれる。
なお、ステップS22において、中間加熱工程終了時の温度が中間加熱工程開始時の温度と異なっている場合、中間加熱工程終了時の温度と中間加熱工程開始時の温度との差の絶対値を中間加熱時間で除算した値は、ステップS21における昇温速度(すなわち、前昇温速度)未満であり、好ましくは、前昇温速度の50%以下である。また、この場合、中間加熱工程終了時の温度と中間加熱工程開始時の温度との差の絶対値を中間加熱時間で除算した値は、後述するステップS23における昇温速度(以下、「後昇温速度」とも呼ぶ。)未満であり、好ましくは、後昇温速度の50%以下である。
中間加熱時間が経過してステップS22(中間加熱工程)が終了すると、上記加熱装置により、分離膜12の温度が、中間加熱温度から所定の本加熱温度まで昇温される(ステップS23:後昇温工程)。本加熱温度は、中間加熱温度よりも高く、例えば、150℃以上かつ450℃以下であり、好ましくは、160℃以上かつ400℃以下であり、より好ましくは、160℃以上かつ380℃以下である。本加熱温度は、吸着質および分離膜12の種類に基づいて適宜設定される。
ステップS23における昇温速度(以下、「後昇温速度」とも呼ぶ。)は、例えば5℃/h以上であり、好ましくは10℃/h以上である。これにより、ステップS23の昇温時間が長くなることを抑制することができる。ステップS23における昇温速度の上限は特に限定されないが、分離膜複合体1における熱応力の発生を抑制するという観点から、当該昇温速度は、例えば200℃/h以下であり、好ましくは100℃/h以下である。
分離膜複合体1が本加熱温度まで昇温されると、分離膜12の昇温が停止される。そして、上記加熱装置により、分離膜12の温度が本加熱温度に維持された状態で、分離膜12が所定時間加熱される(ステップS24:本加熱工程)。以下の説明では、ステップS24における本加熱温度での加熱時間を、「本加熱時間」とも呼ぶ。本加熱時間は、例えば、1時間~48時間である。ステップS24における分離膜12の加熱により、分離膜12の細孔内にて除去されずに残っている吸着質が細孔内から除去される。吸着質が例えば有機化合物である場合、吸着質は酸化されることにより除去される場合もある。これにより、分離膜12の透過性能が回復する。
上述の本加熱温度および本加熱時間は、吸着質の種類、分離膜12に対する吸着質の吸着力、および、分離膜12の透過性能の低下の程度等に基づいて、適宜設定されてよい。例えば、吸着質と分離膜12との反応性が高く、吸着質が炭化しやすい場合、本加熱温度を低く設定し、本加熱時間を長く設定することにより、吸着質の炭化反応を抑制することができる。また、例えば、吸着質の分離膜12に対する吸着力が比較的小さく、分離膜12の透過性能の低下の程度も比較的小さい場合、本加熱時間を短く設定することにより、分離膜12の膜加熱処理に要する時間を短くすることができる。
なお、本加熱温度が過剰に低いと、分離膜12の細孔内に吸着質が多く残存したり、吸着質を除去するために長時間を要する可能性がある。したがって、本加熱温度は、例えば150℃以上であり、好ましくは160℃以上である。一方、本加熱温度が過剰に高いと、分離膜12が熱応力等により損傷する可能性がある。したがって、本加熱温度は、例えば450℃以下であり、好ましくは400℃以下であり、より好ましくは380℃以下である。
また、本加熱時間が過剰に長いと、実用的な膜加熱処理に適さず、また、熱履歴による分離膜12の変質の可能性もある。したがって、本加熱時間は、例えば48時間以下であり、好ましくは24時間以下であり、さらに好ましくは16時間以下である。一方、本加熱時間が過剰に短いと、分離膜12の透過性能の回復不足が生じる可能性がある。したがって、本加熱時間は、例えば1時間以上であり、好ましくは2時間以上である。
ステップS24では、分離膜12の温度は、本加熱温度にて厳密に一定に維持されることが好ましいが、本加熱温度近傍にて多少変動(例えば、小さく振動)してもよい。あるいは、ステップS24では、分離膜12の温度変動により、本加熱工程終了時の温度が本加熱工程開始時の温度よりも少し高く、または、少し低くなっていてもよい。これらいずれの場合も、分離膜12の温度が本加熱温度に維持されている状態に含まれる。
なお、ステップS24において、本加熱工程終了時の温度が本加熱工程開始時の温度と異なっている場合、本加熱工程終了時の温度と本加熱工程開始時の温度との差の絶対値を本加熱時間で除算した値は、前昇温速度未満であり、好ましくは、前昇温速度の50%以下である。また、この場合、本加熱工程終了時の温度と本加熱工程開始時の温度との差の絶対値を本加熱時間で除算した値は、後昇温速度未満であり、好ましくは、後昇温速度の50%以下である。
本加熱時間が経過してステップS24(本加熱工程)が終了すると、分離膜12の温度が、本加熱温度から降温される(ステップS25:降温工程)。ステップS25における分離膜12の降温は、例えば、上記加熱装置により降温速度を制御しつつ行われる。あるいは、分離膜複合体1が加熱装置から取り出されて大気中等に放置されることにより、分離膜12が自然冷却されてもよい。
ステップS25における降温速度は、例えば-5℃/h以下であり、好ましくは-10℃/h以下である。これにより、ステップS25の降温時間が長くなることを抑制することができる。ステップS25における降温速度の下限は特に限定されないが、分離膜複合体1における熱応力の発生を抑制するという観点から、当該降温速度は、例えば-200℃/h以上であり、好ましくは-100℃/h以上である。
降温されて膜加熱処理が終了した分離膜複合体1は、分離装置2の外筒22内に再び取り付けられる。なお、当該膜加熱処理では、ステップS24における本加熱温度が、処理中の最高温度である。
図7は、上述の膜加熱処理方法による分離膜12の透過性能の回復の様子を模式的に示すグラフである。図7中の横軸は時間の経過を示し、縦軸は分離膜12の透過性能を示す。なお、横軸の長さは、実際の経過時間の長さと比例していない。また、後述する各領域での透過性能を直線で示しているが、実際には曲線であってよい。後述する図8においても同様である。
本実施の形態では、分離装置2において所定の供給条件にて分離膜複合体1にN2を含むガスを供給した場合のN2の透過速度を透過性能として示す。当該透過速度は、例えば、実質的にN2単体であるガスを、供給温度20℃~30℃、供給側圧力0.1MPaG~0.5MPaG、および、透過側圧力0MPaG~0.1MPaGにて分離装置2に供給して測定される。当該透過速度は、分離装置2の第2回収部28にて回収される透過ガスを、マスフローメータ(MFM)等の流量測定装置で測定して求める。これら供給温度、供給側圧力、透過側圧力等の測定条件は任意に設定して構わないが、後述する各領域における透過速度の測定条件は同じとされる。また、上述の膜加熱処理を複数回行う場合、透過速度の測定条件は、毎回同じとされる。なお、分離膜12の透過性能の評価は、N2以外のガス(好ましくは、上述の高透過性物質であり、例えばCO2)を分離膜複合体1に供給して当該ガスの透過速度に基づいて行われてもよい。
図7の横軸中の領域81は、分離膜12の透過性能が略一定に維持されている期間を示す。領域82は、分離膜複合体1の保管時や使用時において、分離膜12の細孔内に吸着する吸着質が漸次増大し、分離膜12の透過性能が漸次低下している期間を示す。領域83および領域84は、上述の膜加熱処理が行われている期間を示す。領域83は、上述のステップS21(前昇温工程)およびステップS22(中間加熱工程)に対応する。領域84は、上述のステップS23(後昇温工程)およびステップS24(本加熱工程)に対応する。
領域82と領域83との間の領域820は、領域82と領域83との境界を分かり易くするために設けた便宜上の領域である。領域820に実際に対応する期間は存在せず、領域820は、膜加熱処理のステップS21(前昇温工程)が開始される直前の状態に対応する。領域83と領域84との間の領域830は、領域83と領域84との境界を分かり易くするために設けた便宜上の領域である。上述の膜加熱処理において領域830に実際に対応する工程は存在せず、領域830は、ステップS22(中間加熱工程)が終了した直後の状態に対応する。領域84の後の領域840は、領域84の終点を分かり易くするために設けた便宜上の領域である。上述の膜加熱処理において領域840に実際に対応する工程は存在せず、領域840は、ステップS24(本加熱工程)が終了した直後の状態に対応する。領域820,830,840では、分離膜12の透過性能を一定に描いている。
なお、領域81~82に対応する実際の期間は、通常、領域83~84に対応する実際の期間よりも長い場合もある。また、領域82における透過性能を示すグラフは略直線状に描いているが、実際には、吸着質および分離膜12の種類により様々に変化する。領域83および領域84においても同様である。さらに、図7では、領域83における透過性能を示すグラフの傾きと、領域84における透過性能を示すグラフの傾きとを略同じに描いているが、異なっていてもよい。
以下の説明では、図7中の領域830における分離膜12の透過性能から領域820における分離膜12の透過性能を減算した値を「第1回復量」と呼び、図7中において符号R1を付す。また、領域840における分離膜12の透過性能から領域820における分離膜12の透過性能を減算した値を「第2回復量」と呼び、図7中において符号R2を付す。すなわち、第1回復量R1は、分離膜12の透過性能について、ステップS22(中間加熱工程)後とステップS21(前昇温工程)前との差である。また、第2回復量R2は、分離膜12の透過性能について、ステップS24(本加熱工程)後とステップS21(前昇温工程)前との差である。
上述の膜加熱処理では、第1回復量R1は、第2回復量R2の50%以上かつ95%以下とされる。換言すれば、R1/R2(以下、「中間加熱後回復率」とも呼ぶ。)は、50%以上かつ95%以下である。当該膜加熱処理では、主にステップS22において、分離膜12の細孔内の吸着質のうち比較的多くの吸着質を、吸着質の炭化反応が実質的に生じない程度の比較的低温である中間加熱温度にて除去して、第1回復量R1を第2回復量R2の50%以上としている。したがって、ステップS24において細孔内から除去すべき残りの吸着質が比較的少なくなる。このため、比較的高温の本加熱温度にて吸着質を除去する際に、吸着質の炭化反応等によるコーキングを抑制しつつ、残りの吸着質をほぼ完全に、または、その大部分を迅速に除去することができる。当該膜加熱処理では、例えば、コーキングの原因となる有機化合物の吸着質の大部分が中間加熱温度にて除去され、残りの有機化合物の吸着質、および、コーキングの原因とはならないH2O等の吸着質が、本加熱温度にて除去される。
このように、当該膜加熱処理では、ステップS24(本加熱工程)において、細孔内の酸素濃度を高くすることなくコーキングを抑制することができるため、吸着質の酸化時に過剰な熱が発生することを防止することができる。したがって、分離膜12の損傷を防止することができる。また、第1回復量R1を第2回復量R2の95%以下とすることにより、ステップS22の中間加熱時間が長くなることを抑制することができ、膜加熱処理に要する時間を短くすることができる。なお、上述のようにコーキングを抑制するとともに分離膜12の損傷を防止しつつ吸着質を効率良く除去するという観点からは、第1回復量R1は、第2回復量R2の70%以上かつ95%以下であることがより好ましい。
図8は、細孔内への吸着質の吸着による分離膜12の透過性能の低下、および、上述の膜加熱処理が複数回繰り返された場合における分離膜12の透過性能の回復の様子を模式的に示すグラフである。図8では、n回目の膜加熱処理に係る上記領域81~84,820,830,840に、添字「n」を付す。n+1回目以降の膜加熱処理についても同様である。図8中では、左側の膜加熱処理がn回目の膜加熱処理であり、右側の膜加熱処理がn+1回目の膜加熱処理である。なお、nは、1以上かつ2000以下の整数である。
以下の説明では、図8中の領域840nにおける分離膜12の透過性能を「基準透過性能」と呼び、図8中において符号Pnを付す。すなわち、基準透過性能Pnは、吸着質の吸着による分離膜12の透過性能低下および上述の膜加熱処理(ステップS21~S25)がn回繰り返された後の分離膜12の透過性能である。また、図8中では、領域840n+1における分離膜12の透過性能に符号Pn+1を付す。透過性能Pn+1は、基準透過性能Pnの測定の後に、分離膜12の透過性能が再び低下して膜加熱処理を1回行った後の透過性能である。換言すれば、透過性能Pn+1は、当該透過性能低下および膜加熱処理がn+1回繰り返された後の分離膜12の透過性能である。
当該膜加熱処理では、透過性能Pn+1は基準透過性能Pnの95%以上である。すなわち、Pn+1/Pnは95%以上である。当該膜加熱処理では、上述のように、コーキングを抑制しつつ吸着質を効率良く除去することができるため、膜加熱処理が複数回繰り返される場合であっても、分離膜12の透過性能を好適に回復させて高い水準にて維持することができる。なお、上述のPn+1/Pnは、基準透過性能Pnの測定後、膜加熱処理を1回行った後に透過性能がどの程度維持されているかを示す値(すなわち、性能維持率)である。
次に、表1および表2を参照しつつ、上述の膜加熱処理方法における中間加熱後回復率R1/R2と性能維持率との関係について説明する。
表1中の「膜種」は、分離膜12を構成するゼオライトの種類を示す。実施例1~7および比較例1~2の分離膜複合体1では、分離膜12はDDR型ゼオライトにより構成される。
実施例1~7および比較例1~2の分離膜複合体1は、以下の方法により製造した。まず、直径30mm、長さ160mmのモノリス型でアルミナ製の支持体11を用意した。続いて、フッ素樹脂製のボトルに7.329gのエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後、1.153gの1-アダマンタンアミン(アルドリッチ社製)を加え、1-アダマンタンアミンの沈殿が残らないように溶解させた。また、別のボトルに115.97gの水を入れ、97.55gの30質量%シリカゾル(スノーテックスS:日産化学社製)を加えて軽く撹拌した後、これに上述のエチレンジアミンに1-アダマンタンアミンが溶解した溶液を加えて、完全に溶解するまで約1時間攪拌混合し、原料溶液とした。
そして、フッ素樹脂製内筒付きのステンレス製耐圧容器に原料溶液を入れ、この原料溶液に、DDR型ゼオライト種結晶を付着させた支持体11を浸漬させて水熱合成を行った。水熱合成は、120℃で84時間行った。これにより、支持体11の貫通孔111(図1参照)の内側面上に、DDR型ゼオライトの分離膜12が形成された。さらに、分離膜12が形成された支持体11を水洗し、乾燥した。その後、分離膜12が形成された支持体11を、大気中、電気炉で0.1℃/minの速度で500℃まで昇温させて50時間保持し、0.5℃/minの速度で室温まで降温させることにより、分離膜複合体1を得た。
表1中の「性能低下条件」は、分離膜12の細孔に吸着質を吸着させて透過性能を低下させた際の条件を示す。実施例1~6および比較例1~2では、分離膜複合体1を室内にて大気中に2週間放置することにより、分離膜12の透過性能を低下させた。実施例7では、分離膜複合体1を屋外にて大気中に2週間放置することにより、分離膜12の透過性能を低下させた。いずれの場合も、大気中の物質(例えば、有機化合物やH2O等)が吸着質として分離膜12の細孔内に吸着することにより、分離膜12の透過性能が低下する。なお、この場合、吸着質に硫黄(S)元素は実質的に含まれていない。実施例1~7では、透過性能を低下させた分離膜12に対して、加熱条件(すなわち、加熱温度および加熱時間)を変更して上述の膜加熱処理(ステップS21~S25)を行った。比較例1~2についても同様である。
「中間加熱条件」は、ステップS22(中間加熱工程)における中間加熱温度および中間加熱時間を示す。「中間加熱後回復率R1/R2」は、上述の第2回復量R2に対する第1回復量R1の割合を示す(図7参照)。
表2中の「本加熱条件」は、ステップS24(本加熱工程)における本加熱温度および本加熱時間を示す。「加熱処理2回目の性能維持率P2/P1」は、分離膜複合体1に対して、性能低下処理および膜加熱処理という一連の処理を2回繰り返した後の分離膜12の透過性能P2を、基準透過性能P1で除算した値である。基準透過性能P1は、性能低下処理および膜加熱処理という一連の処理を1回行った後の透過性能である。当該透過性能は、図7に係る説明に記載の測定方法と同様の方法により測定した。
「加熱処理11回目の性能維持率P11/P1」は、性能低下処理および膜加熱処理という一連の処理を11回繰り返した後の分離膜12の透過性能P11を、基準透過性能P1で除算した値である。「P11/P1の評価」では、「◎」はP11/P1が90%以上であることを示し、「○」はP11/P1が80%以上かつ90%未満であることを示し、「×」はP11/P1が80%未満以上であることを示す。
実施例1では、中間加熱温度および中間加熱時間は、120℃および8時間である。中間加熱後回復率R1/R2は80%であった。本加熱温度および本加熱時間は、180℃および10時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、99%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、96%(判定:◎)と高かった。
実施例2では、実施例1から中間加熱条件および本加熱条件を変更した。実施例2では、中間加熱温度および中間加熱時間は、180℃および4時間である。中間加熱後回復率R1/R2は93%であった。本加熱温度および本加熱時間は、450℃および4時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、100%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、99%(判定:◎)と高かった。
実施例3では、実施例1から中間加熱条件および本加熱条件を変更した。実施例3では、中間加熱温度および中間加熱時間は、60℃および12時間である。中間加熱後回復率R1/R2は50%であった。本加熱温度および本加熱時間は、150℃および12時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、95%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、88%(判定:○)と比較的高かった。
実施例4では、実施例1から中間加熱条件および本加熱条件を変更した。実施例4では、中間加熱温度および中間加熱時間は、100℃および6時間である。中間加熱後回復率R1/R2は75%であった。本加熱温度および本加熱時間は、380℃および5時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、98%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、90%(判定:◎)と高かった。
比較例1では、実施例1から中間加熱条件を変更した。比較例1では、中間加熱温度および中間加熱時間は、55℃および12時間である。中間加熱後回復率R1/R2は45%(すなわち、50%未満)と低かった。本加熱温度および本加熱時間は、実施例1と同じく、180℃および10時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、92%であったが、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、75%(判定:×)と低かった。
実施例5では、実施例1から本加熱条件を変更した。実施例5では、実施例1と同じく、中間加熱温度および中間加熱時間は、120℃および8時間である。中間加熱後回復率R1/R2は80%であった。本加熱温度および本加熱時間は、140℃および12時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、90%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、83%(判定:○)と比較的高かった。
実施例6では、実施例4から中間加熱条件を変更した。実施例6では、中間加熱温度および中間加熱時間は、200℃および4時間である。中間加熱後回復率R1/R2は95%であった。本加熱温度および本加熱時間は、実施例4と同じく、380℃および5時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、98%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、85%(判定:○)と比較的高かった。
比較例2では、ステップS22(中間加熱工程)を行わなかった。したがって、中間加熱後回復率R1/R2は0%(すなわち、50%未満)である。本加熱温度および本加熱時間は、200℃および12時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、95%であったが、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、70%(判定:×)と低かった。
実施例7は、性能低下条件を室内から屋外に変更した点、並びに、中間加熱時間および本加熱時間を少し長くした点を除き、実施例1と同様である。実施例7では、中間加熱温度および中間加熱時間は、120℃および10時間である。中間加熱後回復率R1/R2は77%であった。本加熱温度および本加熱時間は、180℃および12時間である。加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、99%であった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、94%(判定:◎)と高かった。
実施例1~7では、中間加熱後回復率R1/R2が50%以上かつ95%以下とされることにより、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は90%以上(具体的には、90%~100%)と高くなり、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1も80%以上(具体的には、83%~99%)と高くなった。一方、比較例1では、中間加熱後回復率R1/R2が45%(すなわち、50%未満)であったため、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は75%(すなわち、80%未満)と低くなった。また、比較例2では、中間加熱工程は行われず、中間加熱後回復率R1/R2が0%(すなわち、50%未満)であったため、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は70%(すなわち、80%未満)と低くなった。
実施例1~4と実施例5とを比較すると、実施例1~4では、本加熱温度が150℃以上かつ450℃以下とされることにより、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は95%以上(具体的には、95%~100%)と高くなり、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1も86%以上(具体的には、88%~99%)と高くなった。一方、実施例5では、本加熱温度が140℃(すなわち、150℃未満)とされることにより、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は90%(すなわち、95%未満)となり、実施例1~4よりも低くなった。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1も83%(すなわち、86%未満)となり、実施例1~4よりも低くなった。実施例5では、本加熱温度が150℃未満であったため、ステップS24(本加熱工程)における吸着質の除去率が、実施例1~4に比べて低くなったと考えられる。したがって、本加熱温度は150℃以上かつ450℃以下であることが好ましい。
実施例1~4と実施例6とを比較すると、実施例1~4では、中間加熱温度が60℃以上180℃以下とされることにより、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は95%以上(具体的には、95%~100%)と高くなり、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1も86%以上(具体的には、88%~99%)と高くなった。一方、実施例6では、中間加熱温度が200℃(すなわち、180℃よりも高温)とされることにより、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は98%と高いものの、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は85%(すなわち、86%未満)となり、実施例1~4よりも低くなった。実施例6では、中間加熱温度が180℃よりも高温であったため、ステップS22(中間加熱工程)における吸着質の炭化抑制が、実施例1~4に比べて不足し、その結果、ステップS24(本加熱工程)においてコーキングが生じて性能維持率が実施例1~4よりも低下したと考えられる。したがって、中間加熱温度は60℃以上かつ180℃以下であることが好ましい。
実施例1~4を比較すると、中間加熱後回復率R1/R2について、実施例1~2は80%~93%(すなわち、80%以上)であり、実施例4は75%(すなわち、70%以上かつ80%未満)であり、実施例3は50%(すなわち、50%以上かつ70%未満)であった。また、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1について、実施例1~2は99%~100%であり、実施例4は98%であり、実施例3は95%であった。加熱処理11回目の性能維持率P11/P1について、実施例1~2は96%~99%であり、実施例4は90%であり、実施例3は88%であった。したがって、中間加熱後回復率R1/R2は、50%以上かつ95%以下の範囲において、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
実施例1~4を比較すると、本加熱温度について、実施例1~2,4は180℃~450℃(すなわち、160℃以上)であり、実施例3は150℃(すなわち、160℃未満)であった。また、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1について、実施例1~2,4は98%~100%であり、実施例3は95%であった。加熱処理11回目の性能維持率P11/P1について、実施例1~2,4は90%~99%であり、実施例3は88%であった。したがって、本加熱温度は、150℃以上かつ450℃以下の範囲において、160℃以上であることがより好ましい。一方、ゼオライト膜12の耐熱性等を考慮すると、本加熱温度は400℃以下であることがより好ましく、380℃以下であることがさらに好ましい。
実施例1(性能低下条件:室内)と実施例7(性能低下条件:屋外)とを比較すると、中間加熱後回復率R1/R2、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1、および、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1について、実施例1は80%,99%および96%(判定:◎)であり、実施例7は77%,99%および94%(判定:◎)であった。実施例7では、実施例1に比べて性能低下の程度が少し大きいと考えられたため、中間加熱時間および本加熱時間を実施例1よりも少し長くした結果、中間加熱後回復率R1/R2、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1、および、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1に大きな差は見られなかった。したがって、性能低下条件の差異は、上記膜加熱処理による性能維持率に大きな影響は与えないと考えられる。
表1および表2では、吸着質の吸着による分離膜12の透過性能低下および上述の膜加熱処理(ステップS21~S25)が1回行われた後の分離膜12の透過性能P1を基準透過性能としているが、当該透過性能低下および膜加熱処理がn回(nは、1以上かつ2000以下の整数)繰り返された後の分離膜12の透過性能Pnを基準透過性能としてもよい。この場合、加熱処理2回目の性能維持率P2/P1は、基準透過性能Pnの取得後、分離膜12の透過性能低下および膜加熱処理が1回行われた後の透過性能Pn+1を、Pnを基準として表した性能維持率Pn+1/Pnに相当する。また、加熱処理11回目の性能維持率P11/P1は、基準透過性能Pnの取得後、分離膜12の透過性能低下および膜加熱処理が10回繰り返された後の透過性能Pn+10を、Pnを基準として表した性能維持率Pn+10/Pnに相当する。
分離膜複合体1では、nが1~2000の間で変更された場合であっても、中間加熱後回復率R1/R2が50%以上かつ95%以下とされることにより、加熱処理n+1回目の性能維持率Pn+1/Pnは90%以上と高くなり、加熱処理n+10回目の性能維持率Pn+10/Pnも80%以上と高くなる。また、加熱処理n+1回目の性能維持率Pn+1/Pnは、実施例1~4と実施例5との比較から、95%以上であることが好ましい。
上述の膜加熱処理は、支持体11上に設けられた分離膜12以外の膜の加熱処理に適用されてもよい。当該膜加熱処理の対象となる膜は、高透過性物質を透過する透過膜であればよく、例えば、支持体11から独立して存在する分離膜12単体、あるいは、一般的に分離膜と呼ばれない種類の膜であってもよい。
以上に説明したように、上述の膜加熱処理方法は、細孔内に吸着質が吸着した膜(上記例では、分離膜12)を加熱する方法である。当該膜加熱処理方法は、膜を中間加熱温度まで昇温する工程(ステップS21)と、膜を中間加熱温度に維持して所定時間加熱する工程(ステップS22)と、当該膜を中間加熱温度よりも高い本加熱温度まで昇温する工程(ステップS23)と、当該膜を本加熱温度に維持して所定時間加熱する工程(ステップS24)と、を備える。当該膜の透過性能について、ステップS22後とステップS21前との差である第1回復量R1は、ステップS24後とステップS21前との差である第2回復量R2の50%以上かつ95%以下である。これにより、膜の細孔内における吸着質の炭化反応等によるコーキングを抑制することができる。また、ステップS24(本加熱工程)において、吸着質の酸化熱が過剰となることを抑制することができるため、膜の局所的高温による損傷を防止することができる。すなわち、上記膜加熱処理方法によれば、膜のコーキングを抑制するとともに膜の損傷を防止しつつ吸着質を除去することができる。また、中間加熱時間が過剰に長くなることを防止することができるため、膜加熱処理に要する時間の増大を抑制し、吸着質を効率良く除去することができる。さらに、膜の透過性能の低下および膜加熱処理が繰り返し行われた場合であっても、膜の透過性能を好適に回復させて維持することができる。
上述のように、上記膜の透過性能の低下およびステップS21~S24がn+1回繰り返された後の当該膜の透過性能(Pn+1)は、膜の透過性能の低下およびステップS21~S24がn回繰り返された後の当該膜の透過性能(Pn)の95%以上であることが好ましい。なお、nは、1以上かつ2000以下の整数である。当該膜加熱処理方法によれば、膜の透過性能低下と膜加熱処理とが繰り返し行われる場合であっても、膜の透過性能を好適に回復させて高い水準にて維持することができる。
上述のように、中間加熱温度は、60℃以上かつ180℃以下であることが好ましい。これにより、ステップS22(中間加熱工程)において、膜の細孔内における吸着質の炭化反応等を好適に抑制することができる。その結果、膜の細孔内におけるコーキングを抑制することができ、膜の透過性能低下と膜加熱処理とが繰り返し行われる場合であっても、膜の透過性能を好適に回復させて高い水準にて維持することができる。
上述のように、本加熱温度は、150℃以上かつ450℃以下であることが好ましい。これにより、ステップS24(本加熱工程)において、膜の細孔から吸着質を好適に除去することができる。その結果、膜の透過性能低下と膜加熱処理とが繰り返し行われる場合であっても、膜の透過性能を好適に回復させて高い水準にて維持することができる。
上述のように、当該膜はゼオライト膜であることが好ましい。分子径が均一であるゼオライト結晶により膜を構成することにより、当該膜にて混合物質の分離を行う際に、透過対象物質の選択的透過を好適に実現することができ、当該透過対象物質を混合物質から効率良く分離することができる。
より好ましくは、当該膜を構成するゼオライトの最大員環数は8以下である。これにより、分子径が比較的小さいCO2等の透過対象物質の選択的透過を好適に実現し、当該透過対象物質を混合物質から効率良く分離することができる。
上述の膜加熱処理方法や分離装置2では、様々な変更が可能である。
例えば、ステップS22における中間加熱温度は、60℃未満であってもよく、180℃よりも高くてもよい。また、ステップS24における本加熱温度は、150℃未満であってもよく、450℃よりも高くてもよい。
上述のステップS22(中間加熱工程)は、1つの中間加熱温度にて分離膜12を維持することには限定されず、図9に示すように、2段階の中間加熱温度tm1,tm2のそれぞれにおいて分離膜12が所定時間維持されてもよい。中間加熱温度tm2は、中間加熱温度tm1よりも高い温度である。中間加熱温度tm1,tm2は、上述のように、例えば、60℃以上かつ180℃以下であり、好ましくは、70℃以上かつ160℃以下であり、さらに好ましくは、80℃以上かつ150℃以下である。あるいは、ステップS22では、分離膜12は、3段階以上の中間加熱温度のそれぞれにおいて所定時間維持されてもよい。これらの場合、複数段階以上の中間加熱温度における処理後の分離膜12の透過性能(すなわち、ステップS22後の透過性能)と、ステップS21前の透過性能との差が、上述の第1回復量R1である。
また、ステップS24(本加熱工程)においても同様に、分離膜12は、2段階以上の本加熱温度のそれぞれにおいて所定時間維持されてもよい。2段階以上の本加熱温度はそれぞれ、例えば、150℃以上かつ450℃以下であり、好ましくは、160℃以上かつ400℃以下であり、より好ましくは、160℃以上かつ380℃以下である。
ステップS21~S24における分離膜12の加熱は、必ずしも、分離膜複合体1を分離装置2から取り外して行う必要はなく、分離装置2の外筒22内に分離膜複合体1が取り付けられたままの状態で行われてもよい。例えば、外筒22の外周面に接する略筒状の電熱ヒータが分離装置2に設けられ、当該電熱ヒータにより外筒22が加熱されることにより、分離膜12が加熱されてもよい。あるいは、供給部26から外筒22の内部に加熱されたガスが供給され、当該ガスが分離膜複合体1の貫通孔111を通過し、また、分離膜12および支持体11を透過することにより、分離膜12が加熱されてもよい。
上述の透過性能Pn+1は、基準透過性能Pnの95%未満であってもよい。
分離膜複合体1は、支持体11および分離膜12に加えて、分離膜12上に積層された機能膜や保護膜をさらに備えていてもよい。このような機能膜や保護膜は、ゼオライト膜、シリカ膜または炭素膜等の無機膜であってもよく、ポリイミド膜またはシリコーン膜等の有機膜であってもよい。
上述のように、分離膜12は、ゼオライト膜以外の無機膜であってもよく、無機膜以外の膜(例えば、有機膜)であってもよい。また、分離膜12がゼオライト膜である場合、分離膜12を構成するゼオライトの最大員環数は、8よりも大きくてもよい。
上述の分離装置2では、上記説明にて例示した物質以外の物質が、混合ガスから分離されてもよい。また、分離装置2の構造も、上記例には限定されず、様々に変更されてよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。