JP7746674B2 - 酸化セルロース及びナノセルロースの製造方法、並びに、酸化剤 - Google Patents

酸化セルロース及びナノセルロースの製造方法、並びに、酸化剤

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Description

本発明は、酸化セルロース及びナノセルロースの製造方法、並びに、酸化剤に関する。
各種セルロース系原料を酸化剤で酸化し、得られた酸化セルロースを微細化することにより、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)等のナノセルロース材料を製造する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
特許文献1には、酸化剤として次亜塩素酸又はその塩を用い、反応系内の有効塩素濃度が14~43質量%の高濃度条件においてセルロース系原料を酸化して酸化セルロース繊維を得ることが開示されている。特許文献2には、酸化剤として次亜塩素酸又はその塩を用い、反応系内の有効塩素濃度を6~14質量%として、pHを5.0~14.0に調整しながらセルロース系原料を酸化して酸化セルロースを得ることが開示されている。
また、非特許文献1には、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶の高濃度の水溶液、具体的には、次亜塩素酸ナトリウム濃度22%の水溶液を用いてパルプを酸化し、続く機械解繊によって、ナノセルロースを製造できることが開示されている。
これらの技術では、触媒として2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(TEMPO)等のN-オキシル化合物を用いずに酸化処理を行うため、N-オキシル化合物がセルロース繊維中に残存しておらず、よって、環境等に及ぼす影響の低減を図りながらナノセルロース材料を製造することが可能である。
国際公開第2018/230354号 国際公開第2020/027307号
Sustainable Chem. Eng. 2020, 8, 48, 17800-17806
特許文献1、特許文献2、及び非特許文献1には、酸化セルロースを微細化処理してナノセルロース材料を製造する具体例として、超音波ホモジナイザーを用いた機械的処理による解繊工程を経てナノセルロース材料を得た例が開示されている。しかしながら、上記の処理は、解繊に必要なエネルギーの点で更なる改善の余地がある。ナノセルロース材料の製造においては、生産コストの観点から、温和な処理条件でも解繊が可能な易解繊性を有する酸化セルロースが求められている。また、微細化されたセルロース繊維を安定して製造するため、あるいは分散媒中での光散乱等が少なく透明性の高いナノセルロース材料を得るためには、ナノセルロース材料を解繊する前の状態である酸化セルロースの解繊性が良好であることが求められる。
特許文献1及び特許文献2には、セルロース系原料を用い、反応系内の有効塩素濃度が6~43質量%である次亜塩素酸又はその塩を作用させて酸化セルロース及びナノセルロース材料を得られることが具体的に記載されている。非特許文献1には、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に由来する次亜塩素酸ナトリウム濃度22%の水溶液を用いて、ナノセルロースを製造できることが開示されている。
このような方法、特に、有効塩素濃度を高めた次亜塩素酸ナトリウムによって解繊性に優れた酸化セルロースを効率的に得られる傾向にあるが、酸化セルロースの解繊性をさらに高めることが求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、解繊性に優れた酸化セルロースを提供することを主たる目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、次亜塩素酸又はその塩に含まれる次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)を所定の範囲とすることにより、解繊性に優れた酸化セルロースが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、具体的には以下のとおりである。
[1]
次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物を含み、且つ、N-オキシル化合物を実質的に含まない酸化セルロースの製造方法であって、
次亜塩素酸又はその塩を含む酸化剤を用い、セルロース系原料を酸化することにより酸化セルロースを得る工程を含み、
前記酸化剤中の次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、0.05以上である、製造方法。
[2]
前記次亜塩素酸又はその塩以外の成分が、無機塩、金属類、及び有機物から選択される少なくとも一種を含む、
[1]に記載の製造方法。
[3]
[1]又は[2]に記載の製造方法により得られた酸化セルロースを解繊し、ナノセルロースを得る工程を含む、
ナノセルロースの製造方法。
[4]
次亜塩素酸又はその塩を含む、酸化セルロース製造用酸化剤であり、
前記酸化セルロースが、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物を含み、且つ、N-オキシル化合物を実質的に含まない酸化セルロースであり、
前記酸化剤に含まれる次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、0.05以上である、
酸化セルロース製造用酸化剤。
[5]
前記次亜塩素酸又はその塩以外の成分が、無機塩、金属類、及び有機物から選択される少なくとも一種を含む、
[4]に記載の酸化セルロース製造用酸化剤。
本発明の製造方法によれば、解繊性に優れた酸化セルロースを得ることができる。特に、本発明の製造方法により得られる酸化セルロースは、温和な条件で解繊処理を行った場合にも均一に微細化させることができ、解繊性に優れている。
<酸化セルロースの製造方法>
本発明の製造方法は、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物を含み、且つ、N-オキシル化合物を実質的に含まない、酸化セルロースの製造方法である。本発明の製造方法は、次亜塩素酸又はその塩を含む酸化剤を用い、セルロース系原料を酸化することにより酸化セルロースを得る工程を含む。また、本発明の製造方法において用いられる酸化剤中の次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)は、0.05以上である。
次亜塩素酸又はその塩は、セルロース系原料に作用してこれを酸化する活性種である。無機塩、金属及びその化合物、並びに有機物等(本明細書において、これら成分を、次亜塩素酸又はその塩以外の成分、あるいは、その他の成分という)は、次亜塩素酸又はその塩(活性種)の自己分解を促進することが知られている。また、これらの次亜塩素酸又はその塩以外の成分は、例えば、次亜塩素酸又はその塩の原料に由来したり、次亜塩素酸又はその塩の製造過程においてや、あるいは、UV照射、温度、pH条件による次亜塩素酸又はその塩の自己分解によって含まれたりする。
本発明者らは、上記次亜塩素酸又はその塩以外の成分を除くことにより、活性種である次亜塩素酸又はその塩の分解を抑えられ、セルロース系原料の酸化を促進し、解繊性の向上につながると考えていた。しかしながら、本発明者らが検討した結果、上記次亜塩素酸又はその塩以外の成分をある程度含むことにより、上記成分を低減させた場合に比べて解繊性に優れた酸化セルロースを得られることを見出した。これは、自己分解時に発生する酸素の活性が高く、この酸素によってもセルロース系原料の酸化が進行するためであると考えられる。ただし、本発明の製造方法により解繊性に優れる酸化セルロースを得られる理由は、これに限定されない。
次亜塩素酸又はその塩以外の成分としては、具体的には、塩化ナトリウム(NaCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、塩素酸ナトリウム(NaClO3)、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、臭素酸ナトリウム(NaBrO3)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、及び、シリカ、カーボンといった水不溶物等の無機塩;Fe、Cr、Ni、Cu、Co、Mn等やそれらの金属化合物の金属類;塩素系溶剤、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレンプロピレンジエンゴム、及びフッ素ゴム、並びにこれらの次亜塩素酸又はその塩による酸化物等の有機物;等が挙げられる。これらは1種単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
上記金属は、遷移金属であることが好ましい。なお、本明細書における金属類は、金属そのものであってもよく、金属の酸化物や塩化物のような金属化合物であってもよい。本発明における金属類には、金属化合物の態様を包含する。また、上記有機物は、水への不溶分であることが好ましく、ガラスフィルター等のフィルター上に残留する物であることがより好ましい。その残留物である有機物の大きさは5μm以上であることが好ましい。
次亜塩素酸又はその塩以外の成分に係る好ましい態様としては、無機塩及び金属類を含む態様であり、より好ましい態様としては、NaCl及び金属類を少なくとも含む態様である。
上記比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)の下限は、0.05以上である。0.05以上であることにより、得られる酸化セルロースの解繊性が優れる傾向にある。上記比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)の下限は、好ましくは0.08以上であり、より好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.12以上である。
上記比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)の上限は、特に限定されないが、通常5.0以下であればよい。5.0以下であることにより、反応中のその他の成分が析出することなく、反応が円滑に進行する傾向にある。また、5.0以下であることにより、活性種の割合が高まり、解繊性の良い酸化セルロースが得られる傾向にある。上記比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)の上限は、4.0以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.2以下であってもよく、1.0以下であってもよく、0.8以下であってもよい。
上記上限と下限とは適宜組み合わせることができる。
本発明における酸化剤とは、セルロース系原料を酸化するために用いられる剤であり、次亜塩素酸又はその塩、及び、上述したその他の成分を含む。酸化剤中の次亜塩素酸又はその塩は主成分であることが好ましい。上記酸化剤は溶液であってもよく、酸化剤の溶媒は水であることが好ましい。ここで「主成分である」とは、酸化剤(溶媒は除く)に占める次亜塩素酸又はその塩の割合が、50質量%以上であることを指す。上記割合は、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、97質量%であってもよい。
本発明に係る酸化剤は、市販品であってもよく、自ら製造したものであってもよい。また、本発明に係る酸化剤には、酸化反応の際、次亜塩素酸又はその塩に溶媒やその他の成分を添加又は除去することにより濃度調整した態様も含まれる。
次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度は、次亜塩素酸又はその塩とその他の成分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下の範囲であり、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲である。
次亜塩素酸又はその塩以外の成分としては、無機塩、好ましくはNaClが主成分であることが好ましい。ここで「主成分である」とは、その他の成分の総量に対する無機塩、好ましくはNaClの割合が、50質量%以上であることを指す。上記割合は、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。
無機塩以外のその他の成分は、次亜塩素酸又はその塩全量(すなわち、活性種である次亜塩素酸又はその塩とその他の成分の総量)に対して、0.001~1000ppmの範囲であることが好ましく、0.01~100ppmの範囲であることがより好ましく、0.5~50ppmの範囲であることがさらに好ましい。
上記比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)は、次亜塩素酸又はその塩以外の成分量、及び/又は、次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度を制御することにより調整することができる。また、次亜塩素酸又はその塩以外の成分量は、適宜上述した無機塩、金属類、及び有機物を添加するか、あるいは、除去することにより調整すればよい。さらに、次亜塩素酸又はその塩以外の成分量はすでに調整された市販品を用いることで制御することもでき、また、次亜塩素酸又はその塩の製造工程で制御することもできる。その他の成分量が調整された次亜塩素酸又はその塩は、ソーダ技術ハンドブック2009(日本ソーダ工業会)を参照して製造することができる。
上記比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)は、次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度を、次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度で除して求められる。
次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度の中で無機塩の濃度は、例えば、滴定法、イオンクロマトグラフ法、イオンクロマトグラフ-ポストカラム吸光光度法又は液体クロマトグラフ質量分析法により測定することができる。次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度の中で金属類の濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置、原子吸光光度計、又は吸光光度計を用いて測定することができる。次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度の中で有機物の濃度は、ガラスフィルター等で不溶分を捕捉し定量することにより測定することができる。
次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度は、具体的には、実施例に記載の方法により求められる。
次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度は、後述のとおり定義される。
本発明に用いられるセルロース系原料は、セルロースを主体とする材料であれば特に限定されず、例えば、パルプ、天然セルロース、再生セルロース、及びセルロースを機械的処理することにより解重合した微細セルロース等が挙げられる。セルロース系原料としては、パルプを原料とする結晶セルロース等の市販品をそのまま使用することができる。その他、おからや大豆皮等、セルロース成分を多量に含む未利用バイオマスを原料としてもよい。また、使用する酸化剤を原料パルプの中に浸透しやすくする目的で、予めセルロース系原料を適度な濃度のアルカリで処理してもよい。
本発明の製造方法においては、セルロース系原料として、セルロースを機械的処理や化学的処理に得られる微細セルロースを用いてもよい。微細セルロースとしては、粉末パルプを好適に挙げることができる。粉末パルプを使用することにより、微細化がより進行し、ナノセルロースを効率的に得られる傾向にある。また、粉末パルプの粒子径は、通常1~1000μmの範囲であり、好ましくは1~500μmの範囲であり、より好ましくは1~100μmの範囲である。ここでいう粒子径とは、平均粒子径であって、測定原理としてレーザー散乱法を用い、粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布が50%となるときの値を意味する。
セルロース系原料の酸化に使用される次亜塩素酸又はその塩としては、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、及び次亜塩素酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさの点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
セルロース系原料の酸化により酸化セルロースを製造する方法としては、セルロース系原料と、次亜塩素酸又はその塩を含む反応液とを混合する方法が挙げられる。反応液に含まれる溶媒は、取り扱いやすい点や副反応が生じにくい点で、水が好ましい。
酸化においては、次亜塩素酸又はその塩の使用量は特に制限されないが、有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いることが好ましい。有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いることにより、酸化セルロース中のカルボキシ基量を十分に多くでき、十分に微細化が進行し、酸化反応の後の機械解繊処理を省略できる。
また、反応液(反応系)における次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度も、6~43質量%の範囲であることが好ましい。
酸化セルロースの微細化をより円滑に進行させる観点から、有効塩素濃度の下限値は、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、よりさらに好ましくは8.5質量%以上、さらにより好ましくは9質量%以上、一層好ましくは14質量%以上である。また、セルロースが過度に分解することを抑制する観点から、反応液の有効塩素濃度は、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは38質量%以下である。反応液の有効塩素濃度の範囲は、既述の下限及び上限を適宜組み合わせることができる。
なお、次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度は、以下のように定義される。次亜塩素酸は水溶液として存在する弱酸であり、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸の水素が他の陽イオンに置換された化合物である。例えば、次亜塩素酸塩である次亜塩素酸ナトリウムは溶媒中(好ましくは水溶液中)に存在するため、次亜塩素酸ナトリウムの濃度ではなく、溶液中の有効塩素量として濃度が測定される。ここで、次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素について、次亜塩素酸ナトリウムの分解により生成する2価の酸素原子の酸化力が1価の塩素の2原子当量に相当するため、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の結合塩素原子は、非結合塩素(Cl2)の2原子と同じ酸化力を持ち、有効塩素=2×(NaClO中の塩素)となる。測定の具体的な手順としては、まず試料を精秤し、水、ヨウ化カリウム及び酢酸を加えて放置し、遊離したヨウ素についてデンプン水溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し有効塩素濃度を測定する。
本発明の製造方法の反応における、pHの調整の有無や、pHの範囲は任意であるが、pHを5.0以上の範囲に調整しながら行うとよい。この範囲であると、セルロース系原料の酸化反応を十分に進行させることができ、酸化セルロース中のカルボキシ基量が十分に多くなり、撹拌による微細化が進行しやすい傾向にある。反応系のpHは、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上である。反応系のpHの上限については、特に制限されず、好ましくは14.5以下であり、より好ましくは14.0以下、さらに好ましくは13.0以下である。また、反応系のpHの範囲は、より好ましくは7.0~14.0、さらに好ましくは8.0~13.5である。
有効塩素濃度を抑えながら、原料セルロースの表面での次亜塩素酸又はその塩の酸化作用を高める観点から、反応系のpHは、好ましくは11以下、より好ましくは10.7以下、さらに好ましくは10.5以下である。このとき、反応系のpHの下限は特に制限されないが、通常5.0以上、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは8.0以上、さらにより好ましくは9.0以上であり、よりさらに好ましくは9.0超過である。反応系のpHの範囲は、上記上限値と下限値を適宜組み合わせればよい。反応系のpHは、好ましくは5.0以上11以下、より好ましくは6.0以上11以下、さらに好ましくは7.0以上11以下、さらにより好ましくは8.0以上10.7以下、よりさらに好ましくは9.0以上10.5以下であり、一層好ましくは9.0超過10.5以下である。
反応中は、酸化反応によりセルロース系原料にカルボキシ基が生成することに伴い反応系のpHが低下する。このため、酸化反応を効率良く進行させる観点から、アルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム等)又は酸(例えば、塩酸等)を反応系中に添加し、反応系のpHを調整しながら酸化反応を行うことが好ましい。
以下、次亜塩素酸又はその塩として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合を例にして、酸化セルロースを製造する方法についてさらに説明する。
次亜塩素酸ナトリウムを用いてセルロース系原料の酸化を行う場合、反応液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度を目的とする濃度(例えば、目的濃度:6質量%~43質量%の範囲)に調整する方法としては、目的濃度よりも有効塩素濃度の低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を濃縮する方法、目標濃度よりも有効塩素濃度の高い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する方法、及び次亜塩素酸ナトリウムの結晶(例えば、次亜塩素酸ナトリウム5水和物)を溶媒に溶解する方法等が挙げられる。これらの中でも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する方法、又は次亜塩素酸ナトリウムの結晶を溶媒に溶解する方法により酸化剤としての有効塩素濃度に調整することが、自己分解が少なく(すなわち、有効塩素濃度の低下が少なく)、有効塩素濃度の調整が簡便であるため好ましい。
セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを混合する方法は特に限定されないが、操作の容易性の観点から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にセルロース系原料を加えて混合することが好ましい。
セルロース系原料の酸化反応を効率良く進行させるために、酸化反応中は、セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液との混合液を撹拌しながら行うことが好ましい。撹拌の方法としては、例えば、撹拌翼付き撹拌機、ホモミキサー、ディスパー型ミキサー、ホモジナイザー、外部循環撹拌等が挙げられる。これらのうち、セルロース系原料の酸化反応が円滑に進行し、酸化セルロースの重合度を所定値以下に調整しやすい点で、ホモミキサー及びホモジナイザー等のせん断式撹拌機、撹拌翼付き撹拌機、並びにディスパー型ミキサーのうち1種又は2種以上を用いる方法が好ましく、攪拌翼付き撹拌機を用いる方法が特に好ましい。撹拌翼付き撹拌機を用いる場合、撹拌機としては、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、後退翼、アンカー翼、ゲート翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、ヘリカルリボン翼、スクリュー翼(ドラフトチューブ付き等)等の公知の撹拌翼を備える装置を使用することができる。また、撹拌翼付き撹拌機を用いる場合、回転速度50~1000rpmにて撹拌を行うことが好ましい。また、一軸混錬機、二軸混錬機等の多軸混錬機も使用することができる。
酸化反応における反応温度は、通常15℃~100℃の範囲であればよい。酸化反応の進行をより高める観点から、反応温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは30℃超過、さらに好ましくは31℃以上であり、よりさらに好ましくは35℃以上である。反応温度を高くするほど粘度は高くなり、反応系の均一性が低下する傾向にある。反応系の均一性を高め、生産性を向上する観点から、反応温度は、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
酸化反応の反応時間は、酸化の進行の程度にしたがって設定することができるが、通常15分~50時間程度である。酸化反応の進行をより高める観点から、反応時間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは2時間超過、さらに好ましくは3時間以上である。
セルロース系原料の濃度は、作業性向上の観点から、酸化反応時の反応混合物全量(すなわち、反応系全量)に対して、好ましくは35質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
セルロース系原料の濃度の下限は、通常0.1質量%以上であればよく、生産性向上の観点から、好ましくは6.5質量%超過、より好ましくは6.6質量%以上、さらに好ましくは6.8質量%以上であり、よりさらに好ましくは7質量%以上である。
セルロース系原料の濃度は、好ましくは6.5質量%超過35質量%以下の範囲であり、より好ましくは6.5質量%超過20質量%以下の範囲であり、さらに好ましくは6.5質量%超過15質量%以下の範囲である。
ここでいう酸化反応の際のセルロース系原料の濃度は、仕込み時のセルロース系原料の濃度である。
反応を行う際の圧力は、特に制限されないが、通常、常圧以上1.0MPaG以下(ゲージ圧、以下同様。)の範囲である。ここで常圧とは、大気圧に等しい圧量である。
加圧下で酸化を行うことにより、次亜塩素酸又はその塩の使用量を抑えられ、より効率的に酸化セルロースを製造できる傾向にある。効率性の観点から、圧力は、好ましくは0.1MPaG以上1.0MPaG以下である。このとき、次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度は、0質量%超過43質量%以下であればよく、効率性を高める観点から、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10質量%以下である。
酸化セルロースの製造では、セルロース系原料を酸化した後、当該酸化反応を停止するための処理を行ってもよい。酸化反応を停止する処理としては、特に制限されないが、例えば、酸や金属触媒を添加する方法が挙げられる。また、次亜塩素酸又はその塩を還元する方法が好適に挙げられる。酸化反応を停止する処理としては、具体的には、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加する方法が挙げられる。還元剤の添加量は、次亜塩素酸又はその塩の量(有効塩素濃度)に応じて適宜調整すればよい。
上記反応により得られた酸化セルロースを含む溶液を用いて、遠心分離やろ過等の公知の単離処理を行い、さらに必要に応じて精製することにより、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物として酸化セルロースを得ることができる。また、単離処理においては、酸化セルロースを含む溶液のpHを4以下に調整する等して酸化セルロース中のカルボキシ基の一部又は全部をH型(-COOH)にしてもよい。また、上記反応により得られた酸化セルロースを含む溶液をそのまま用いてもよく、例えば、次の解繊工程に供してもよい。
[酸化セルロース]
本発明の製造方法では、次亜塩素酸又はその塩を用いセルロース系原料を酸化し、これにより酸化セルロースを得ることができる。酸化セルロースは、スラリーの形態であることが好ましい。ここでいうスラリーとは、酸化セルロースを含む懸濁液である。上記スラリーは、酸化の際に用いた溶媒を含んでいてもよい。また、分散媒を適宜添加してスラリーの形態としてもよい。酸化セルロースがスラリーであることにより、取り扱いがしやすく、また、微細化が進行しやすい傾向にある。
本発明における酸化セルロースがスラリーである場合、スラリーの全量を100質量%としたとき、酸化セルロースの量は、通常0.1質量%以上95質量%以下の範囲であり、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。
本発明における酸化セルロースは、セルロース系原料を次亜塩素酸又はその塩を用いて酸化して得られる繊維状セルロースを含む。本発明における酸化セルロースは、酸化セルロース繊維ともいう。すなわち、本発明における酸化セルロースは、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物を含む。なお、植物の主成分はセルロースであり、セルロース分子が束になったものがセルロースミクロフィブリルと称される。セルロース系原料中のセルロースもまた、セルロースミクロフィブリルの形態で含まれている。
(重合度)
本発明における酸化セルロースの重合度は、600以下であることが好ましい。酸化セルロースの重合度が600を超えると、解繊に大きなエネルギーを要する傾向にあり、十分な易解繊性を発現することができない傾向がある。酸化セルロースの重合度が600以下であることにより、温和な条件によって微細化され、通常の撹拌や混練りによってナノ化でき、効率的にナノセルロースを得られる傾向にある。易解繊性の観点からは、上記酸化セルロースの重合度の下限は特に設定されない。ただし、上記酸化セルロースの重合度が30未満であると、繊維状というより粒子状のセルロースの割合が多くなり、酸化セルロースを含むスラリーの品質が不均一になり粘度が不安定になる。上記の観点から、酸化セルロースの重合度は、30~600であることが好ましい。
重合度は、より好ましくは580以下であり、さらに好ましくは560以下であり、よりさらに好ましくは550以下であり、一層好ましくは500以下であり、より一層好ましくは450以下である。重合度の下限については、スラリーの粘度安定性をより良好にする観点から、より好ましくは50以上であり、さらに好ましくは60以上であり、よりさらに好ましくは80以上であり、一層好ましくは90以上であり、より一層好ましくは100以上であり、特に好ましくは110以上である。重合度の好ましい範囲は、既述の上限及び下限を適宜組み合わせることにより定めることができる。酸化セルロースの重合度は、より好ましくは50~600であり、さらに好ましくは60~600であり、よりさらに好ましくは80~600であり、一層好ましくは80~550であり、より一層好ましくは80~500である。
酸化セルロースの重合度は、例えば、酸化反応の際の反応時間、反応温度、pH、及び次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度等を変更することにより調整することができる。具体的には、酸化度を高めると重合度が低下する傾向があることから、重合度を小さくするには、例えば酸化の反応時間及び/又は反応温度を大きくする方法が挙げられる。
さらに、酸化セルロースの重合度は、酸化反応時の反応系の撹拌条件によって調整することができる。例えば、撹拌翼等を用いて反応系を十分に均一化した条件下であれば、酸化反応が円滑に進行し、重合度が低下する傾向がある。一方、スターラーによる撹拌等のように反応系の撹拌が不十分となりやすい条件下では、反応が不均一になりやすく、酸化セルロースの重合度を十分に低減することが難しい。また、酸化セルロースの重合度は、原料セルロースの選択によっても変動する傾向がある。このため、セルロース系原料の選択によって酸化セルロースの重合度を調整することもできる。なお、本明細書において、酸化セルロースの重合度は、粘度法により測定された平均重合度(粘度平均重合度)である。酸化セルロースの重合度は、具体的には以下の測定方法により測定することができる。
〔酸化セルロースの粘度平均重合度の測定〕
pH10に調整した水素化ホウ素ナトリウム水溶液に酸化セルロースを加え、25℃で5時間、還元処理を行う。水素化ホウ素ナトリウム量は、酸化セルロース1gに対して0.1gとした。還元処理後、吸引ろ過にて固液分離、水洗を行い、得られた酸化セルロースを凍結乾燥させる。純水10mlに乾燥させた酸化セルロース0.04gを加えて2分間撹拌した後、1M銅エチレンジアミン溶液10mlを加えて溶解させる。その後、キャピラリー型粘度計にて25℃でブランク溶液の流下時間とセルロース溶液の流下時間測定する。ブランク溶液の流下時間(t0)とセルロース溶液の流下時間(t)、酸化セルロース繊維の濃度(c[g/ml])から次式のように相対粘度(ηr)、比粘度(ηsp)、固有粘度([η])を順次求め、粘度測の式から酸化セルロース繊維の重合度(DP)を計算する。
ηr=η/η0=t/t0
ηsp=ηr-1
[η]=ηsp/(100×c(1+0.28ηsp))
DP=175×[η]
(カルボキシ基量)
酸化セルロースのカルボキシ基量は、0.30~2.0mmol/gであることが好ましい。当該カルボキシ基量が0.30mmol/g以上であると、酸化セルロースに十分な易解繊性を付与することができる。これにより、温和な条件によって微細化でき、通常の撹拌や混練りによってナノ化できる傾向にある。一方、カルボキシ基量が2.0mmol/g以下であると、酸化セルロースが他の成分と配合した際に過度に分解することを抑制でき、粒子状のセルロースの比率が少なく品質が均一なナノセルロースを得ることができる。こうした観点から、酸化セルロースのカルボキシ基量は、より好ましくは0.35mmol/g以上であり、さらに好ましくは0.40mmol/g以上であり、よりさらに好ましくは0.42mmol/g以上である。カルボキシ基量の上限については、より好ましくは1.5mmol/g以下であり、さらに好ましくは1.2mmol/gであり、よりさらに好ましくは1.0mmol/g以下である。
なお、酸化セルロース中のカルボキシ基量(mmol/g)は、酸化セルロースを水と混合した水溶液に0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11.0になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から下記式を用いて算出した値である。酸化セルロースのカルボキシ基量は、酸化反応の反応時間、反応温度、反応液のpH等を変更することにより調整することができる。
カルボキシ基量=a(ml)×0.05/酸化セルロース質量(g)
カルボキシ基量は、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明における酸化セルロースは、次亜塩素酸又はその塩を用いた酸化により得られるが、こうして得られた酸化セルロースは、好適には、セルロースを構成するグルコピラノース環の水酸基のうち少なくとも2個が酸化された構造を有し、より具体的には、グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有する。なお、酸化セルロースが有するグルコピラノース環におけるカルボキシ基の位置は、固体13C-NMRスペクトルにより解析することができる。
本発明における酸化セルロースは、TEMPO等のN-オキシル化合物を用いる必要なく調製される。N-オキシル化合物は環境や人体への影響が懸念されている。このため、本発明における酸化セルロース及びナノセルロースは、N-オキシル化合物を実質的に含まない。ここで、本明細書において、酸化又はナノセルロースが「N-オキシル化合物を実質的に含んでいない」とは、酸化の際にN-オキシル化合物を用いていない(すなわち、N-オキシル化合物を全く含まない)、あるいは、酸化又はナノセルロース中におけるN-オキシル化合物に由来する窒素の含有量が、2.0ppm以下であることを意味する。酸化又はナノセルロース中のN-オキシル化合物の量は、セルロース系原料からの増加分として好ましくは1.0ppm以下である。
[ナノセルロース]
本発明における酸化セルロースは、微細化してナノセルロースとしてもよい。本発明の一つは、本発明の製造方法により得られた酸化セルロースを解繊することによりナノセルロースを得る工程を含む、ナノセルロースの製造方法である。すなわち、本発明のナノセルロースの製造方法は、次亜塩素酸又はその塩を用い、セルロース系原料を酸化することにより酸化セルロースを得る工程、及び、前記酸化セルロースを解繊することによりナノセルロースを得る工程を含む。
また、本発明における酸化セルロースは、そのものを他の成分と配合する等して用いてもよい。すなわち、微細化せずとも他の成分と配合して、適宜撹拌等による酸化セルロースの撹拌をすることにより、ナノセルロースと少なくとも1種の他の成分とを含むナノセルロース含有組成物を得ることができる。さらに、本発明における酸化セルロースは、当該酸化セルロースの使用者が、使用時に自ら微細化してナノセルロースとすることもできる。
本発明におけるナノセルロースとは、本発明の製造方法により得られた酸化セルロースに由来し、当該酸化セルロースが解繊され、微細化されたものを指す。ナノセルロースは、微細なセルロース繊維を含む。ここで、ナノセルロースは、セルロースをナノ化したものの総称を表し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等を含む。セルロースナノファイバーは、CNFとも記載する。
本発明におけるナノセルロースの平均繊維長は、好ましくは50nm以上800nm以下である。平均繊維長が50nm以上であることにより、ナノセルロースとしての品質が均一になりやすい傾向にある。品質をより均一にする観点から、平均繊維長の下限は、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上である。平均繊維長が800nm以下であることにより、粗大なセルロース繊維の割合を抑え、ナノセルロースの沈殿の発生を抑制する傾向にある。沈殿の発生をより抑制する観点から、平均繊維長の上限は、より好ましくは700nm以下、さらに好ましくは600nm以下である。
ナノセルロースの品質をより高める観点から、平均繊維長は、より好ましくは50nm以700nm以下、さらに好ましくは100nm以上700nm以下、よりさらに好ましくは100nm以上600nm以下である。
本発明におけるナノセルロースの平均繊維幅は、好ましくは1nm以上100nm以下である。平均繊維幅が1nm以上であることにより、ナノセルロースとしての品質が均一になりやすい傾向にある。品質をより均一にする観点から、平均繊維幅の下限は、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上である。平均繊維幅が100nm以下であることにより、粗大なナノセルロースの割合を抑え、ナノセルロースの沈殿の発生を抑制する傾向にある。沈殿の発生をより抑制する観点から、平均繊維幅は、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下、よりさらに好ましくは10nm以下、さらにより好ましくは5nm以下である。
ナノセルロースの品質をより高める観点から、平均繊維幅は、より好ましくは1nm以上50nm以下、さらに好ましくは1nm以上30nm以下、よりさらに好ましくは1nm以上10nm以下である。
本発明におけるナノセルロースにおいて、平均繊維幅と平均繊維長との比で表されるアスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)は、20以上200以下であることが好ましい。
アスペクト比が200以下であることにより、ナノセルロースが均一に分散し品質を高められる傾向にある。こうした観点から、アスペクト比は、より好ましくは190以下であり、さらに好ましくは180以下である。
その一方で、アスペクト比が低すぎる、すなわち、ナノセルロースの形状が細長い繊維状というよりも太い棒状である場合、偏在により凝集が起こり、ナノセルロースの品質が低下する傾向にある。そのため、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上であり、さらに好ましくは40以上である。
なお、平均繊維幅及び平均繊維長は、ナノセルロースの濃度が概ね1~10ppmとなるようにナノセルロースと水とを混合し、十分に希釈したセルロース水分散体をマイカ基材上で自然乾燥させ、走査型プローブ顕微鏡を用いてナノセルロースの形状観察を行い、得られた像より任意の本数の繊維を無作為に選択し、形状像の断面高さ=繊維幅とし、周囲長÷2=繊維長とすることにより算出した値である。このような平均繊維幅及び平均繊維長の算出には、画像処理のソフトウェアを用いることができる。このとき画像処理の条件は任意であるが、条件によって同一画像であっても算出される値に差が生じる場合がある。条件による値の差の範囲は、平均繊維長については±100nmの範囲内であることが好ましい。条件による値の差の範囲は、平均繊維幅については±10nmの範囲内であることが好ましい。より詳細な測定方法は、後述の実施例に記載の方法にしたがう。
本発明におけるナノセルロースは、1本単位の繊維の集合体である。本発明におけるナノセルロースにカルボキシ基が導入されている場合、少なくとも1本のカルボキシル化されたナノセルロース(カルボキシル化CNFとも記載する)を含んでいればよく、カルボキシル化されたナノセルロースが主成分であることが好ましい。ここでカルボキシル化CNFが主成分であるとは、微細セルロース全量に占めるカルボキシル化CNFの割合が50質量%超過であること、好ましくは70質量%超過であること、より好ましくは80質量%超過であることを指す。上記割合の上限は100質量%であるが、98質量%であってもよく、95質量%であってもよい。
酸化セルロースを解繊する方法としては、ナノセルロースを分散させることができる操作であれば特に制限されない。
解繊は、例えば、任意の強度の速度場と速度変動;介在物や障害物への衝突;超音波;圧力負荷;等を利用することができる。このような分散させる操作には、液中分散機を好適に用いることができる。
液中分散機としては、特に限定されず、例えば、ホモミキサー、マグネチックスターラー、撹拌棒、撹拌翼付き撹拌機、ディスパー型ミキサー、ホモジナイザー、外部循環撹拌、自転公転撹拌機、振動型撹拌機、超音波分散機等を用いる方法が挙げられる。また、液中分散機としては、上述した装置の他、回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、圧力式ホモジナイザー、容器駆動型ミル、媒体撹拌ミル等も挙げることができる。さらに、液中分散機としては、ニーダーを用いることができる。
回転せん断型撹拌機とは、回転翼と外筒との間隙へ撹拌対象物を通すことにより分散する装置であり、間隙でのせん断流れと前後の強度な速度変動により分散する。
コロイドミルは、回転ディスクと固定ディスクとの間の間隙でのせん断流れにより分散する装置である。ロールミルは、複数の回転するロール間の間隙を利用したせん断力と圧縮力により分散する。
圧力式ホモジナイザーとは、細孔から高圧でスラリー等を吐出する分散機として用いられ、圧力噴射式分散器とも呼ばれる。上記圧力式ホモジナイザーとしては、高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーとは、例えば10MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力でスラリーを吐出できる能力を有するホモジナイザーをいう。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、マイクロフルイダイザー、湿式ジェットミル等の対向衝突型高圧ホモジナイザーが挙げられる。
容器駆動型ミルは、容器内中のボール等の媒体の衝突、摩擦により分散する装置であり、具体的には、回転ミル、振動ミル、及び遊星ミル等がある。媒体撹拌ミルは、ボールやビーズ等の媒体を用い、媒体の衝撃力とせん断力により分散する装置であり、具体的には、アトライター及びビーズミル(サンドミル)等がある。
ニーダーとは、粉体等を液体でぬらす操作(ニーディングあるいは捏和ともいう)を行う装置であり、具体的には、双腕型捏和機(2つの半円柱形の容器内で二軸の混合翼によって分散する装置である);バンバリーミキサー(密閉系、加圧下で分散する装置である);スクリュー押し出し機、コニーダー、エクストルーダー等の押出型捏和機;等がある。
解繊の方法としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、二重円筒型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、水流対抗衝突型分散機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー、一軸又は多軸混錬機、自転公転撹拌機、振動型撹拌機等の各種混合や撹拌装置による方法が挙げられる。
解繊に用いる装置は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる
酸化セルロースの解繊は、解繊がより進んだナノセルロースを製造できる点で、例えば、超高圧ホモジナイザーによる方法を用いてもよい。超高圧ホモジナイザーにより解繊を行う場合、解繊処理時の圧力は、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは120MPa以上であり、さらに好ましくは150MPa以上である。解繊処理回数は特に限定されないが、解繊を十分に進行させる観点から、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上である。
酸化セルロースは易解繊性に優れるため、解繊方法として、例えば自転公転撹拌機及び振動型撹拌機等による温和な撹拌を適用した場合にも十分に解繊でき、均一化されたナノセルロースを得ることができる。
自転公転撹拌機は、材料を投入する容器を自転及び公転させることにより容器内の材料を混合する装置である。自転公転撹拌機によれば、撹拌翼を用いずに撹拌が行われるため、より温和な撹拌を実現できる。自転公転撹拌機による撹拌時の公転速度及び自転速度は適宜設定し得るが、例えば、公転速度を400~3000rpmとし、自転速度を200~1500rpmとすることができる。自転公転撹拌機による場合、温和な撹拌を実現しつつ、品質の均一性を担保する観点から、公転速度1200~2500rpm、自転速度600~1000rpmで3~15分間撹拌する条件により解繊処理を行うことが好ましい。公転速度は、より好ましくは1500~2300rpmであり、自転速度は、より好ましくは700~950rpmである。自転公転撹拌機により本酸化セルロース繊維の解繊を行う場合、材料とする酸化セルロース水分散体の濃度は、例えば0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.1~0.5質量%である。
振動型撹拌機としては、例えば、ボルテックスミキサー(タッチミキサー)が挙げられる。ボルテックスミキサーでは、容器内の液体材料に渦を形成することによって撹拌が行われる。ボルテックスミキサー等の振動型撹拌機によれば、撹拌翼を用いずに撹拌が行われるため、より温和な撹拌を実現できる。また、ボルテックスミキサー等の振動型撹拌機によれば、簡易な設備によって温和な撹拌を実現できるため、生産設備及び生産コストの観点において優れている。ボルテックスミキサーの回転数は、例えば600~3000rpmであり、3~15分間撹拌する条件により解繊処理を行うことが好ましい。ボルテックスミキサーにより本酸化セルロース繊維の解繊を行う場合、材料とする酸化セルロース水分散体の濃度は、例えば0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.1~0.5質量%である。
解繊処理は、好ましくは酸化セルロースを分散媒と混合した状態で行われる。当該分散媒としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。分散媒の具体例としては、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキサイド等が挙げられる。溶媒としては、これらのうちの1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記分散媒のうち、アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
解繊処理の際に分散媒として有機溶剤を使用することにより、酸化セルロース及びこれを解繊して得られるナノセルロースの単離が容易となる。また、有機溶剤中に分散したナノセルロースが得られるため、有機溶剤に溶解する樹脂やその樹脂原料モノマー等との混合が容易となる。解繊して得られたナノセルロースを、水及び/又は有機溶剤の分散媒に分散させたナノセルロース分散液は、樹脂やゴム、固体粒子等の各種成分と混合するために使用することができる。
<次亜塩素酸又はその塩の水溶液>
本発明の一つは、次亜塩素酸又はその塩を含む、酸化セルロース製造用酸化剤である。上記酸化セルロースは、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料の酸化物を含み、且つ、N-オキシル化合物を実質的に含まない酸化セルロースである。前記酸化剤に含まれる次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、0.05以上である。
本発明の酸化剤により、解繊性に優れる酸化セルロースを製造することができる。本発明の酸化剤は溶液であってもよく、酸化剤の溶媒は水であることが好ましい。
本発明の酸化剤における、酸化セルロース、次亜塩素酸又はその塩、セルロース系原料等の態様は、<酸化セルロースの製造方法>に述べたとおりである。
本発明の製造方法により得られる酸化セルロース及びナノセルロースは、種々の用途に適用することができる。具体的には、例えば、各種材料(例えば、樹脂、繊維、ゴム等)として使用されてもよいし、各種用途(例えば、食品、化粧品、医療品、塗料、インク等)において使用されてもよい。また、ナノセルロース含有組成物を成膜し、各種シート又はフィルムとして使用することもできる。ナノセルロース含有組成物を適用する分野も特に限定されず、例えば自動車用部材、機械部品、電化製品、電子機器、化粧品、医療品、建築材、日用品、文具等といった各種分野の製品の製造において使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
各種物性の測定は以下のとおり行った。
〔平均繊維幅及び平均繊維長の測定〕
ナノセルロースの水分散体に純水を加え、酸化CNF水分散体中の酸化CNFの濃度が5ppmになるように調整した。濃度調整後のCNF水分散体をマイカ基材上で自然乾燥させ、オックスフォード・アサイラム社製 走査型プローブ顕微鏡「MFP-3D infinity」を用いて、ACモードで酸化CNFの形状観察を行った。
平均繊維長については、得られた画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」を用いて二値化し解析を行った。繊維100本以上について、繊維長=「周囲長」÷2として平均繊維長を求めた。
平均繊維幅については、「MFP-3D infinity」に付属されているソフトウェアを用いて、繊維50本以上について、形状像の断面高さ=繊維幅として数平均繊維幅[nm]を求めた。
〔カルボキシ基量の測定〕
酸化セルロースの濃度を0.5質量%に調整した酸化セルロース水分散体60mlに、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11.0になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、上記式を用いてカルボキシ基量(mmol/g)を算出する。
〔光透過率の測定〕
解繊により得られたナノセルロース水分散体を10mm厚の石英セルに入れて、分光光度計(JASCO V-550)により波長660nmの光透過率を測定した。
〔次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度の測定〕
次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度は、日本水道協会規格「水道用次亜塩素酸ナトリウム」JWWA K120-2008の試験方法、日本水道協会規格「水道用薬品」JWWA Z 109-2001の別紙5「誘導結合プラズマ発光分光分析装置による一斉分析法」の試験方法、日本水道協会規格「水道用次亜塩素酸ナトリウム」JWWA K120-1981の4・4不溶分の試験方法に準じて測定した。上記試験方法はそれぞれ、無機塩の濃度、金属類の濃度、並びに有機物の濃度を測定する。
[実施例1]
有効塩素濃度が33質量%である次亜塩素酸ナトリウム水溶液に純水を加えて撹拌し、有効塩素濃度21質量%液700gを調整した。次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と、有効塩素濃度は表1に記載のとおりであり、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と有効塩素濃度との比は、0.18であった。実施例1にて用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ソーダ技術ハンドブック2009(日本ソーダ工業会)に準じて製造されたものを使用した。具体的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、低食塩次亜塩素酸ソーダの製造によって得られる高有効塩素濃度の次亜塩素酸液(析出塩化ナトリウムを分離後)を希釈したものである。なお、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分において、塩化ナトリウムの占める割合は、50質量%以上であった。金属類の総量は、次亜塩素酸ナトリウム中0.05ppm以上10ppm以下の範囲であった。
なお、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は以下の方法により測定した。
(次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度の測定)
次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を純水に加えた水溶液0.582gを精密に量り、純水50mlを加え、ヨウ化カリウム2g及び酢酸10mlを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置した。15分間の放置後、遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果(指示薬 デンプン試液)、滴定量は34.55mlであった。別に空試験を行い補正し、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1mlが3.545mgClに相当するので、次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の有効塩素濃度は21質量%である。
そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH11の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、日本製紙社の粉末パルプ(KCフロックW-100GK)を50g加えた。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを11に調整して、2時間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。
反応終了後、遠心分離(1000G、10分間)及びデカンテーションを6回繰り返すことで酸化セルロースを回収した。
酸化セルロースのカルボキシ基量は0.63mmol/gであった。その酸化セルロースに純水を加えて1質量%に調整した後、ホモミキサーで解繊(10,000rpm、10分間)した結果、平均繊維長200nm、平均繊維幅3nmのナノセルロースが得られていることを確認した。解繊により得られたナノセルロース水分散体を固形分濃度0.1質量%に調整した後、その光透過率(660nm)を測定した結果、83%であり良好な解繊ができた。
[実施例2]
次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と、有効塩素濃度は表1に記載のとおりであり、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と有効塩素濃度との比は、0.15であった。実施例2にて用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、ソーダ技術ハンドブック2009(日本ソーダ工業会)に準じて製造されたものを使用した。具体的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、低食塩次亜塩素酸ソーダを希釈したものである。なお、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分において、塩化ナトリウムの占める割合は、50質量%以上であった。金属類の総量は、次亜塩素酸ナトリウム中0.05ppm以上10ppm以下の範囲であった。
そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH10の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を新東科学社製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、セルロース系原料として、日本製紙社の粉末パルプ(KCフロックW-100GK)を50g加えた。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で40℃に保温しながら、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを10に調整して、4時間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。
反応終了後、遠心分離(1000G、10分間)及びデカンテーションを6回繰り返すことで酸化セルロースを回収した。
酸化セルロースのカルボキシ基量は0.64mmol/gであった。その酸化セルロースに純水を加えて1質量%に調整した後、ホモミキサーで解繊(10,000rpm、10分間)した結果、平均繊維長210nm、平均繊維幅4nmのセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。解繊により得られたナノセルロース水分散体を固形分濃度0.1質量%に調整した後、その光透過率(660nm)を測定した結果、77%であり良好な解繊ができた。
[実施例3]
次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と有効塩素濃度との比を0.22としたこと以外は、実施例1と同様にして行った。なお、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分において、塩化ナトリウムの占める割合は、50質量%以上であった。金属類の総量は、次亜塩素酸ナトリウム中0.05ppm以上10ppm以下の範囲であった。また、上記の比は、実施例1にて用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩化ナトリウムを添加し、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分量を大きくすることにより調整した。
酸化セルロースのカルボキシ基量は0.71mmol/gであった。
ナノセルロースの光透過率は89%であり、良好な解繊ができた。
[実施例4]
次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と有効塩素濃度との比を0.51としたこと以外は、実施例1と同様にして行った。なお、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分において、塩化ナトリウムの占める割合は、50質量%以上であった。金属類の総量は、次亜塩素酸ナトリウム中0.05ppm以上10ppm以下の範囲であった。また、上記の比は、実施例1にて用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩化ナトリウムを添加し、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分量を大きくすることにより調整した。
酸化セルロースのカルボキシ基量は0.75mmol/gであった。
ナノセルロースの光透過率は97%であり、良好な解繊ができた。
[実施例5]
次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と有効塩素濃度との比を0.82としたこと以外は、実施例2と同様にして行った。なお、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分において、塩化ナトリウムの占める割合は、50質量%以上であった。金属類の総量は、次亜塩素酸ナトリウム中0.05ppm以上10ppm以下の範囲であった。また、上記の比は、実施例2にて用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩化ナトリウムを添加し、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分量を大きくすることにより調整した。
酸化セルロースのカルボキシ基量は0.74mmol/gであった。
ナノセルロースの光透過率は85%であり、良好な解繊ができた。
[比較例1]
有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を使用したこと以外は実施例1と同じとした。上記次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶は、特開2000-290003号に準じて製造したものであった。すなわち、有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶に純水を加えて撹拌し、有効塩素濃度21質量%液700gを調整したこと以外は実施例1と同じとした。次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と、有効塩素濃度は表1に記載のとおりであり、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分濃度と有効塩素濃度との比は、0.03であった。なお、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分において、塩化ナトリウムの占める割合は、50質量%未満であった。金属類の総量は、次亜塩素酸ナトリウム中0.05ppm未満であった。
酸化セルロースのカルボキシ基量は0.51mmol/gであった。その酸化セルロースに純水を加えて1質量%に調整した後、ホモミキサーで解繊(10,000rpm、10分間)した結果、平均繊維長260nm、平均繊維幅6nmのセルロースナノファイバーが得られていることを確認した。解繊により得られたCNF水分散体を固形分濃度0.1質量%に調整した後、その光透過率(660nm)を測定した結果、44%であり、粗大な酸化セルロースが残存したと考えられる。
本発明の製造方法は、各種材料(例えば、樹脂、繊維、ゴム等)、及び各種用途(例えば、食品、化粧品、医療品、塗料、インク等)に使用されるナノセルロースを提供することができ、自動車用部材、機械部品、電化製品、電子機器、化粧品、医療品、建築材、日用品、文具等といった各種分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (5)

  1. 次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料(ただし、レーヨンパルプシートは除く)の酸化物を含み、且つ、N-オキシル化合物を実質的に含まない酸化セルロースの製造方法であって
    化剤を用い、セルロース系原料(ただし、レーヨンパルプシートは除く)を酸化することにより酸化セルロースを得る工程を含み、
    前記酸化剤が、次亜塩素酸又はその塩の水溶液であり、
    前記水溶液中の次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、0.05以上であ
    前記次亜塩素酸又はその塩以外の成分が、塩化ナトリウムを含み、
    前記次亜塩素酸又はその塩以外の成分の総量に対する塩化ナトリウムの割合が、50質量%以上である、
    製造方法。
  2. 前記水溶液中の次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、5.0以下である、
    請求項1に記載のナノセルロースの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法により得られた酸化セルロースを解繊し、ナノセルロースを得る工程を含む、
    ナノセルロースの製造方法。
  4. 化セルロース製造用酸化剤であり、
    前記酸化剤が、次亜塩素酸又はその塩の水溶液であり、
    前記酸化セルロースが、次亜塩素酸又はその塩によるセルロース系原料(ただし、レーヨンパルプシートは除く)の酸化物を含み、且つ、N-オキシル化合物を実質的に含まない酸化セルロースであり、
    前記水溶液に含まれる次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、0.05以上であ
    前記次亜塩素酸又はその塩以外の成分が、塩化ナトリウムを含み、
    前記次亜塩素酸又はその塩以外の成分の総量に対する塩化ナトリウムの割合が、50質量%以上である、
    酸化セルロース製造用酸化剤。
  5. 前記水溶液中の次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度と、前記次亜塩素酸又はその塩の有効塩素濃度との比(次亜塩素酸又はその塩以外の成分濃度/有効塩素濃度)が、5.0以下である、
    請求項4に記載の酸化セルロース製造用酸化剤。
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