JP7748875B2 - セルロース繊維強化樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents
セルロース繊維強化樹脂成形体及びその製造方法Info
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Description
しかし、セルロース繊維強化樹脂の実用化にあたっては、親水性の高いセルロース繊維と、ポリオレフィン樹脂のような疎水性の高い樹脂との一体性を十分に高める必要があり、セルロース繊維による樹脂の強化(補強)作用の向上には制約がある。
例えば、特許文献1では、ポリオレフィン樹脂、植物繊維に加えて、カルボキシル基又はカルボキシル誘導体基含有不飽和化合物で変性されたポリオレフィンを使用して繊維強化樹脂を得ることが提案されている。
また、特許文献3では、ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維に加えて、不飽和カルボン酸またはその無水物もしくは誘導体がグラフト化された変性ポリプロピレン樹脂を使用して繊維強化樹脂を得ることが提案されている。
また、特許文献4では、ポリオレフィン樹脂、及びセルロース繊維に加えて、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂を使用して繊維強化樹脂を得ることが提案されている。
特許文献5では、セルロース系材料、シラン含有ポリマー、及び熱可塑性樹脂の混合物又は反応組成物を使用して繊維強化樹脂を得ることが提案されており、シラン含有ポリマーとしてα-オレフィンとエチレン性不飽和シランの共重合体を用いることが提案されている。
また、特許文献6では、アルコキシシランモノマーをグラフト重合させた合成高分子と天然植物繊維との結合物と、合成高分子とを混練りして繊維強化樹脂を得ることが提案されている。
〔1〕
ポリプロピレン樹脂、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維を含むセルロース繊維強化樹脂複合体を成形してなるセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔2〕
前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂が、エチレン性不飽和基を含有する基とアルコキシシリル基とを有するシランカップリング剤によるポリプロピレン樹脂のグラフト変性物である、〔1〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔3〕
前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシランである、〔2〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔4〕
前記シランカップリング剤が、(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキルである、〔2〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔5〕
前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂が、前記シランカップリング剤及びビニル基を有する反応助剤によるポリプロピレン樹脂のグラフト変性物である、〔4〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔6〕
前記ビニル基を有する反応助剤のQ値が0.010~5.00である、〔5〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔7〕
前記ビニル基を有する反応助剤のQ値が0.54~5.00である、請求項5に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔8〕
前記ビニル基を有する反応助剤が、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物の少なくとも1種である、〔5〕~〔7〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔9〕
前記ビニル基を有する反応助剤が、スチレン化合物である、〔5〕~〔8〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔10〕
前記セルロース繊維強化樹脂成形体中、前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量が0.1~20質量%である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
〔11〕
下記工程(a)及び(b)を有する〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法。
(a)ポリプロピレン樹脂及びシランカップリング剤を、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上で混合し、前記ポリプロピレン樹脂に対して前記シランカップリング剤をグラフト化反応させてアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂を調製する工程
(b)前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維とポリプロピレン樹脂とを、前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂と前記セルロース繊維と前記ポリプロピレン樹脂の総量中に占める前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の割合を0.1~20質量%として溶融混合する工程
〔12〕
前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の調製を、ビニル基を有する反応助剤の存在下で行う、〔11〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法。
〔13〕
前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の調製を、スチレン化合物の存在下で行う、〔12〕に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法。
本発明のセルロース繊維強化樹脂成形体(以下、「本発明の樹脂成形体」とも称す。)は、ポリプロピレン樹脂と、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂と、セルロース繊維とを含むセルロース繊維強化樹脂複合体を成形してなる樹脂成形体である。樹脂成形体の形状は、その用途に応じて設定することができる。
本発明の樹脂成形体を構成するセルロース繊維強化樹脂複合体は、少なくとも一部の、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維との縮合物を含有している。より具体的には、本発明の樹脂成形体を構成するセルロース繊維強化樹脂組成物は、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂が有するアルコキシシリル基とセルロース繊維の水酸基との脱アルコール縮合反応による縮合物、及び/又は、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂が有するアルコキシシリル基の加水分解により生じるシラノール基とセルロース繊維の水酸基等との脱水縮合による縮合物を含有する。このため、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維との界面の密着性を十分に高めることができ、結果、樹脂成形体中においてセルロース繊維の分散性が高まりセルロース繊維の強化作用を効果的に引き出すことができる。さらに、本発明の樹脂成形体を構成するセルロース繊維強化樹脂複合体はアルコキシシリル基/シラノール基同士の脱アルコール/脱水縮合反応による縮合物を含有していてもよい。この場合は、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維との反応点を介したネットワークを形成することができる。本発明の樹脂成形体を構成するセルロース繊維強化樹脂複合体は、脱アルコール/脱水縮合反応を生じていないアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂や、脱アルコール/脱水縮合反応を生じていないセルロース繊維を含有していてもよい。さらに、上記アルコキシシリル基/シラノール基とセルロース繊維とは、脱アルコール/脱水縮合反応に加え、水素結合等で結合していてもよい。
以下、本発明の樹脂成形体を構成するセルロース繊維強化樹脂複合体の構成成分、及び当該樹脂成形体の調製時に使用する材料について説明する。
本発明の樹脂成形体を構成するセルロース繊維強化樹脂複合体中のポリプロピレン樹脂(以下、ポリプロピレン樹脂Aとも称す。)は、従来、自動車用部品、構造材等に使用されているポリプロピレン樹脂を特に制限なく使用することができる。本発明においては、ポリプロピレン樹脂Aをベース樹脂ということがある。
アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は、ベース樹脂とセルロース繊維との相溶化剤として作用する。
アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は、アルコキシシリル基をその主鎖中又はその末端に有するポリプロピレン樹脂であれば特に限定されない。アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂を、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤(アルコキシシラン化合物)で変性することで調製されたものであってもよい。すなわち、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が、ポリプロピレン樹脂にグラフト化反応したものとできる。アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は、後述する、エチレン性不飽和基を含有する基とアルコキシシリル基とを有するシランカップリング剤によるポリプロピレン樹脂のグラフト変性物であることが好ましい。アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は、常法により合成でき、市販品を使用してもよい。
上記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の調製に用いるポリプロピレン樹脂原料としては、上述のポリプロピレン樹脂Aを用いることができる。
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン等のビニルシラン化合物、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メチルジエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(メトキシジメチルシリル)プロピル等の(メタ)アクリルシラン化合物等が挙げられる。
中でも、ビニルトリメトキシシラン又は(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキルが特に好ましく、(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキル及びビニルトリメトキシシランの少なくとも1種を用いることができる。(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキルのアルキル基は、炭素原子数1~10が好ましく、1~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、プロピルが特に好ましい。引張強度を高める観点からは、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルを用いることが好ましい。
有機過酸化物としては、ラジカル重合反応に通常用いられるものを広く用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3が好ましい。有機過酸化物は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
有機過酸化物の分解温度は、80~195℃が好ましく、125~180℃が特に好ましい。本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、1分間のうちある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解して濃度(質量)が半分となる温度(1分間半減期温度)を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により求めることができる。
グラフト化率は、有機過酸化物の種類又は含有量、原料とするポリプロピレン樹脂やシランカップリング剤の種類や使用量等によって、所定の範囲に設定できる。
グラフト化率は、熱キシレン中で加熱溶解させたアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂を、アセトン中に滴下し再沈殿することで未反応のモノマー成分を除去し、このようにして再沈殿精製したアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂に対してFT-IRを測定すると、ポリプロピレン由来のピークとグラフト構造由来のピークの強度比により、ポリプロピレン100質量%にグラフトしたグラフト構造を質量%換算で算出することができる。FT-IRにおいてアルコキシシリル基由来のピークとしては、1100cm-1付近にSi-O非対称伸縮振動由来のピーク、803cm-1付近にSi-O変角振動由来のピーク、1193cm-1にSi-C伸縮振動由来のピークを検出することができる。
ビニル基を有する反応助剤としては、ビニル基を有し、かつラジカルの共鳴安定化効果がある置換基を有する化合物(上記シランカップリング剤に相当するものを除く)であれば特に限定されない。ここで化合物とは、その構造中に繰り返し単位を有する主鎖を有する形態を含まない意味である。
ビニル基を有する反応助剤のQ値は特に限定されず、0.010以上とでき、0.49~5.00であることが好ましく、0.54~5.00であることがより好ましく、0.54~4.38であることがより好ましく、0.8~4.38であることがより好ましく、0.96~4.38であることがより好ましい。ここでQ値とは、2種類のモノマーによるラジカル共重合反応における、モノマーの共鳴効果に関するパラメータをいう。本発明において、各反応助剤の具体的なQ値は、「プラスチック素材辞典」Q-e値(https://www.plastics-material.com/q-e%e5%80%a4/)等の文献の記載に基づくものである。Q値の、ラジカル重合反応における意義については、大津隆行、モノマーの構造と反応性 経験的パラメータとラジカル重合反応性、有機合成化学、第28巻第12号、p.1183-1196、1970を参照することができる。この文献には、Q値が大きい共役モノマーはモノマーとして高反応性であるがそのラジカルは低反応性であること、Q値の小さい非共役モノマーはモノマーとして低反応性であるがそのラジカルは高反応性であることが記載されている。また、Q値はスチレンを基準1.0としてスチレンとのラジカル共重合反応における生長反応の反応速度定数から計算できることなどが記載されている。この文献に記載の方法を参照して、上記「プラスチック素材辞典」等の文献にQ値の記載のない化合物のQ値を求めることができる。
以下に、ビニル基を有する反応助剤の具体例を、そのQ値と共に記載する。一部の反応助剤についてはQ値を記載していない。
ビニル基を有する反応助剤としては、具体的には、スチレン化合物、ビニルピリジン化合物、アクリロニトリル(Q値:0.48)、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、脂肪酸ビニルエステル等を使用することができる。
スチレン化合物としては、スチレン(Q値:1.00)、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン(Q値:1.57)、4-メチルスチレン(Q値:1.10)、α-メチルスチレン(Q値:0.97)等が挙げられる。
ビニルピリジン化合物としては、4-ビニルピリジン(Q値:2.47)等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸グリシジル(Q値:0.96)、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(Q値:4.38)等が挙げられる。
脂肪酸ビニルエステルとしては、ラウリン酸ビニル(Q値:0.011)等が挙げられる。
機械強度を高める観点からは、ビニル基を有する反応助剤は、Q値が0.54~5.00である反応助剤であることが好ましい。
機械強度を高める観点からは、ビニル基を有する反応助剤は、スチレン化合物、又は(メタ)アクリル酸エステル化合物であることが好ましい。
本発明で使用するセルロース繊維の由来は特に限定されず、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物(例えば、麦や稲などの藁、とうもろこし、綿花などの茎、サトウキビ)、布、再生パルプ、古紙などを原料として得られるセルロース繊維が挙げられる。パルプは、紙の原料ともなるもので、植物から抽出される仮道管を主成分とする。化学的に見ると、主成分は多糖類であり、その主成分はセルロースである。本発明に用いるセルロース繊維としては、木材由来のセルロース繊維が特に好ましい。
また、上記セルロース繊維としては、特に制限なく、任意の製造方法により得られたセルロース繊維を使用することができる。例えば、物理的な力で粉砕処理を行う機械処理や、クラフトパルプ法、サルファイドパルプ法、アルカリパルプ法等の化学処理、これらの処理の併用により得られるセルロース繊維が挙げられる。上記化学処理では、木材等の植物原料から、苛性ソーダなどの薬品を用いることによって、リグニン及びヘミセルロース等を除去し、純粋に近いセルロース繊維を取り出すことができる。このようにして得られるセルロース繊維を、パルプ繊維とも称す。
本発明の樹脂成形体中のポリプロピレン樹脂Aの含有量は、30~99質量%であることが好ましく、50~99質量%であることがより好ましく、60~99質量%であることがより好ましく、70~95質量%であることがさらに好ましい。
樹脂成形体中のアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがより好ましく、1~20質量%であることがさらに好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。なお、樹脂成形体中のアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量とは、セルロース繊維と脱水縮合物を形成している形態のアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂と、セルロース繊維と脱水縮合物を形成していないアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂との合計量である。他の成分の含有量にもよるが、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量を高めると初期の機械強度は高くなる傾向であり、一方で高温高湿下での耐久性は低下する傾向である。
本発明の樹脂成形体中のセルロース繊維の含有量は、0.9~50質量%であることが好ましく、1~50質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。他の成分の含有量にもよるが、セルロース繊維の含有量を高めると初期の機械強度は高くなる傾向であり、一方で高温高湿下での耐久性は低下する傾向である。
初期の引張強度を高める観点からは、本発明の樹脂成形体中の各成分の含有量は、以下のようにすることも好ましい。
すなわち、ポリプロピレン樹脂Aの含有量を、25~95質量%とすることも好ましく、30~90質量%とすることも好ましく、30~87質量%とすることも好ましい。アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量については2~25質量%とすることも好ましく、3~20質量%とすることも好ましい。また、セルロース繊維の含有量は、1~60質量%とすることも好ましく、3~50質量%とすることも好ましく、5~50質量%とすることも好ましく、7~50質量%とすることも好ましく、8~50質量%とすることも好ましい。また、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量に対するセルロース繊維の含有量の比の値(質量比)は、[セルロース繊維の含有量]/[アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂]=0.1~20が好ましく、[セルロース繊維の含有量]/[アルコキシシラン変性ポリオレフィン樹脂]=1~10がより好ましく、[セルロース繊維の含有量]/[アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂]=2~8がさらに好ましい。
本発明の樹脂成形体は、上述したポリプロピレン樹脂A、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維からなる構成でもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲で下記成分等を含んでもよい。
例えば、エチレン-αオレフィン共重合体等のエラストマーを追加配合して、樹脂成形体の物性を改質してもよい。
また、本発明の樹脂成形体は、酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料)、充填剤、滑剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、発泡剤、パラフィンワックス等の潤滑剤、表面処理剤、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等を、上記目的を損なわない範囲で適宜含有することができる。
また、後述する、本発明の樹脂成形体の好ましい製造方法により作製された場合等においては、本発明の樹脂成形体は、水、無水マレイン酸等の親水性化合物を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
本発明の樹脂成形体中のセルロース繊維の含有の有無は、以下のようにして確認することができる。
セルロース繊維のセルロースはI型やII型といった種々の結晶構造を採ることが知られている。天然のセルロースは、Iα型(三斜晶)及びIβ型(単斜晶)の結晶構造を有し、植物由来のセルロースは一般的にIβ型結晶を多く含む。
本発明の樹脂成形体は、広角X線回折測定において、散乱ベクトルsが3.86±0.1nm-1の位置に回折ピークを有する。この回折ピークは、セルロースのIβ型結晶の(004)面に由来する。すなわち、本発明の樹脂成形体において、セルロース繊維のセルロースの少なくとも一部が結晶構造を有し、その内の少なくとも一部がIβ型結晶である。セルロースの結晶構造中に占めるIβ型結晶以外の結晶構造については特に限定されない。以下、セルロース繊維を「散乱ベクトルsが3.86±0.1nm-1の位置に回折ピークを有する成分」ということがある。
セルロース繊維を含有していることは種々の方法から確認することができる。例えば、X線を用いてセルロース繊維中のセルロース結晶由来の回折ピークを観測することで確認することができる。用いるX線の波長により回折ピーク位置が異なるため注意が必要であるが、CuKα線(λ=0.15418nm)を用いた場合には、散乱ベクトルsが3.86nm-1(2θ=34.6°)付近にセルロースのIβ型結晶の(004)面由来の回折ピークが観測できる。(004)面の回折をとらえるためには、サンプルをθ分回転させてX線を入射する必要がある。つまり、CuKα線を用いる場合にはサンプルステージをθ=17.3°回転させることになる。セルロース結晶由来の回折ピークとしては(004)面よりも内側にそのほかの回折ピークを観測することができるが、ポリプロピレン由来の回折ピークと回折位置がかぶってしまい、明確な回折ピークと判断できないことがある。このため、本明細書においては、セルロース繊維の有無はセルロースのIβ型結晶の(004)面の回折ピークを用いて判断する。
本発明の樹脂成形体は、少なくとも、ポリプロピレン樹脂A、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維を溶融混合し、得られた溶融混合物(セルロース繊維強化樹脂複合体)を成形することにより得ることができる。すなわち、本発明の樹脂成形体の製造方法は、ポリプロピレン樹脂A、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維を溶融混合し、成形する工程を含む。溶融混合することにより、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂が有するアルコキシシリル基がセルロース繊維の水酸基と脱アルコール縮合反応する、及び/又は、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂のアルコキシシリル基の加水分解により生じるシラノール基とセルロース繊維の水酸基等が脱水縮合する。これらの縮合反応により、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維との密着性(一体性)が高まり、ポリプロピレン樹脂A中へのセルロース繊維の分散性とセルロース繊維の強化作用とを効果的に高めることができる。
また、上記セルロース繊維の強化作用を効率的に高めるために、上記縮合を促進する触媒を使用しても良い。
上記溶融混合の温度は、樹脂の融点以上の温度であれば特に限定されない。例えば、160~230℃とすることができ、170~210℃がより好ましい。
上記溶融混合温度は、セルロース繊維の熱分解を低減する観点から、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
上記溶融混合工程を高温で行う際には、例えば、熱劣化や酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤等を添加して溶融混合してもよい。
上記溶融混合時間は特に制限されず、適宜設定することができる。
上記溶融混合に用いられる装置としては、樹脂成分の融点以上で溶融混合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ブレンダー、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、一軸もしくは二軸の押出機などが挙げられ、二軸押出機が好ましい。
続く成形工程における取扱性の観点から、得られた溶融混合物は、ペレット状に加工(以降、得られたペレットを、単に「ペレット」とも称す。)することが好ましい。ペレット加工の条件は特に制限されず、常法により行うことができる。例えば、溶融混合物を水冷後、スランドカッター等を用いてペレット状に加工する方法が挙げられる。
なお、溶融混合に先立って、各成分を、ドライブレンド(予め混合)してもよい。ドライブレンドは、特に制限されず、常法に従い行うことができる。
成形は、溶融混合と同時に又は連続して行うことができる。すなわち、溶融成形の際、例えば射出成形の際に、又はその直前に、各成分を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、これらの成分を成形装置内で溶融混合し、次いで、射出して、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
上記射出温度は、セルロース繊維の熱分解を低減する観点から、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
上記射出成形における射出速度、金型温度、保圧、保圧時間等の条件は、目的に応じて適宜調整することができる。
上記溶融圧縮温度は、セルロース繊維の熱分解を低減する観点から、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
上記溶融圧縮成形における予熱時間、加圧時間、圧力等の条件は、目的に応じて適宜調整することができる。
上記溶融圧縮成形に用いられる装置としては、特に制限されず、例えば、プレス機があげられる。ほかにもシート成形用の押出機を用いたシーティングなどを用いてもよい。
上記シートの形状は特に制限されないが、例えば、ダンベル状に加工することもできる。また、前述の延伸が行いやすい、幅、長さ、厚さ等に適宜調節することができる。例えば、上記シートの厚さは2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
この調製に用いる原料(ポリプロピレン樹脂、シランカップリング剤、及び有機過酸化物)については上述したとおりである。
上記各成分を溶融混合する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは[有機過酸化物の分解温度+25℃]~[有機過酸化物の分解温度+110℃]の温度である。上記混合温度であれば、上記成分が溶融し、有機過酸化物が分解してラジカルを生じ、必要なグラフト化反応が十分に進行する。使用する原料にもよるが、溶融混合温度は、160~300℃とすることができ、170~250℃とすることもでき、180~210℃とすることもできる。その他の条件、例えば混合時間は、効率、目的を考慮して適宜設定することができる。
混合に用いる混練装置としては、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。
アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の調製において、原料とするポリプロピレン樹脂100質量部に対するシランカップリング剤の混合量は、0.1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、2~8質量部がより好ましく、2~6質量部がさらに好ましい。
アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の調製において、原料とするポリプロピレン樹脂100質量部に対する有機過酸化物の添加量は、0.001~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましく、0.05~5質量部がさらに好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましく、0.1~2質量部とすることも好ましい。
本発明の製造方法の好ましい形態は、以下のとおりである。
ポリプロピレン樹脂、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維を含むセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法であって、下記工程(a)及び(b)を有するセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法。
(a)ポリプロピレン樹脂及びシランカップリング剤を、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上で混合し、前記ポリプロピレン樹脂に対して前記シランカップリング剤をグラフト化反応させてアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂を調製する工程
(b)前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維とポリプロピレン樹脂とを、前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂と前記セルロース繊維と前記ポリプロピレン樹脂の総量中に占める前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の割合を0.1~20質量%として溶融混合する工程。
上記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の調製は、シランカップリング剤として(メタ)アクリルシラン化合物を使用する場合(第二態様)は、上述の通り、ビニル基を有する反応助剤の存在下で行うことがより好ましく、スチレン化合物の存在下で行うことがさらに好ましい。
本発明の樹脂成形体は、機械強度及び長期耐久性が求められる、以下の製品、部品及び/又は部材等として用いることができる。例えば、輸送機器(自動車、二輪車、列車、及び航空機など)、ロボットアームの構造部材、アミューズメント用ロボット部品、義肢部材、家電材料、OA機器筐体、情報処理機器、携帯端末、建材、ハウス用フィルム、排水設備、トイレタリー製品材料、各種タンク、コンテナー、シート、包装材、玩具、文具、食品容器、ボビン、チューブ、家具材料(壁材、手すりなど)、靴、及びスポーツ用品などが挙げられる。
下記実施例及び比較例において、「部」は特に断らない限り、「質量部」を意味する。
以下に、使用した材料を示す。
<セルロース繊維>
ARBOCEL B400(商品名)、RETTENMAIER社製
<ポリプロピレン樹脂>
J106MG(商品名)、株式会社プライムポリマー社製
<樹脂変性用モノマー>
メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、東京化成工業株式会社製
ビニルトリメトキシシラン、東京化成工業株式会社製
メタクリル酸グリシジル、東京化成工業株式会社製
<ビニル基を有する反応助剤>
スチレン、純正化学株式会社製
ラウリン酸ビニル、東京化成工業株式会社製
アクリロニトリル、東京化成工業株式会社製
メタクリル酸グリシジル、東京化成工業株式会社製
α-メチルスチレン、東京化成工業株式会社製
メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、東京化成工業株式会社製
<有機過酸化物>
ジクミルパーオキサイド:パークミルD(商品名)、日本油脂株式会社製、1分間半減期温度175.2℃
<無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂>
無水マレイン酸変性PP(MAH-PP):リケエイドMG250P(商品名)、理研ビタミン株式会社製
-変性樹脂の調製-
ベース樹脂としてポリプロピレン樹脂(PP)を、シランカップリング剤としてメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルを、反応助剤としてスチレンをそれぞれ用いて、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂(変性樹脂)を下記のようにして調製した。
スクリュー径15mm、L/D=45の同方向二軸スクリュー押出機(商品名:KZW15TW-45MG-NH、株式会社テクノベル製)にポリプロピレン樹脂を投入し、バレル途中に設けられている液添用ベント部より、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(SiMA)、スチレン及びジクミルパーオキサイドの混合溶液を、比率が一定になるようにシリンジで滴下しながら混合し、ストランドダイ190℃の設定にてストランド状に押出した。上記混合は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(SiMA)5質量部、スチレン3.75質量部及びジクミルパーオキサイド0.2質量部が混合されるように調整して行った。冷却およびカッティングを経て、ペレット状の、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルで変性したポリプロピレン樹脂(SiMA-PP)を得た。
ポリプロピレン樹脂79質量部に対して、SiMA-PP1質量部、セルロース繊維20質量部を添加し、ドライブレンドののち15mm二軸押出機(商品名:KZW15TW-45MG-NH、株式会社テクノベル社製)に供した。二軸押出機内170℃で溶融混合し、190℃に設定した押出ダイス(ストランドダイ)から吐出された溶融混合物を、水冷後にストランドカッターを用いてペレット状に加工した。このペレットを十分に乾燥し、次いで射出成形機(商品名:ROBOSHOT α―S30iA、ファナック株式会社製)に供しJIS-5号ダンベル試験片(樹脂成形体)を得た。
実施例1において、SiMA-PPの添加量を3質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を77質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPの添加量を5質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPの添加量を5質量部に変更し、セルロース繊維を1質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を94質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPの添加量を5質量部に変更し、セルロース繊維を5質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を90質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPの添加量を5質量部に変更し、セルロース繊維を10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を85質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPの添加量を7質量部に変更し、セルロース繊維を30質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を63質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPを15質量部に変更し、セルロース繊維を40質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を45質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、SiMA-PPを20質量部に変更し、セルロース繊維を50質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で用いたシランカップリング剤をビニルトリメトキシシラン(VTMS)に変更し、さらにスチレンを添加せずに、ビニルトリメトキシシランで変性したポリプロピレン樹脂(VTMS-PP)を得、変性樹脂としてVTMS-PPを5質量部用い、ポリプロピレン樹脂を75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例3において、「変性樹脂の調製」で、スチレンを添加せずに変性したSiMA-PPを使用した以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「溶融混合及び成形」で用いたSiMA-PPを無水マレイン酸変性ポリプロピレンPP(MAH-PP)に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で用いたシランカップリング剤をメタクリル酸グリシジル(GMA)に変更し、さらにスチレンを添加せずにメタクリル酸グリシジルで変性したポリプロピレン樹脂(GMA-PP)を得、変性樹脂としてGMA-PPを5質量部使用し、ポリプロピレン樹脂を75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「溶融混合及び成形」において変性樹脂を添加せず、ポリプロピレン樹脂を80質量部、セルロース繊維を20質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
セルロース繊維20質量%、SiMA1質量%の水分散液を作製し、2時間室温で撹拌処理した。処理後の水分散液をろ過し、ろ物として残ったセルロース繊維を水で2回ろ過することで未反応シランカップリング剤を洗い流した。洗浄後に回収したセルロース繊維は、恒温槽内にて120℃で終夜乾燥させた。このようにしてシランカップリング剤で表面処理したセルロース繊維を得た。
実施例1において、「溶融混合及び成形」において変性樹脂を添加せず、ポリプロピレン樹脂を80質量部に変更し、セルロース繊維20質量部を、上記のシランカップリング剤で表面処理したセルロース繊維20質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で用いたベース樹脂を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)に変更し、シランカップリング剤をビニルトリメトキシシラン(VTMS)に変更し、スチレンを添加せずにビニルトリメトキシシランで変性した高密度ポリエチレン樹脂(VTMS-HDPE)を得、変性樹脂としてVTMS-HDPEを5質量部用い、ポリプロピレン樹脂79質量部をHDPE75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で用いたベース樹脂を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)に変更し、シランカップリング剤をビニルトリメトキシシラン(VTMS)に変更し、スチレンとジクミルパーオキサイド(過酸化物)を添加せずに、ビニルトリメトキシシランと高密度ポリエチレン樹脂との溶融混合物(VTMS/HDPE)を得、変性樹脂に代えてこの溶融混合物を5質量部用い、ポリプロピレン樹脂79質量部をHDPE75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。上記溶融混合物では、VTMSのエチレン性不飽和基を介したHDPEへのグラフト重合反応は生じず、したがって、アルコキシシラン変性ポリエチレン樹脂は生じていない。VTMSは、その官能基を介してセルロース繊維やポリエチレン樹脂と相互作用しているものである。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で用いたシランカップリング剤をビニルトリメトキシシラン(VTMS)に変更し、さらにスチレンとジクミルパーオキサイド(過酸化物)を添加せずに、ビニルトリメトキシシランとポリプロピレン樹脂との溶融混合物(VTMS/PP)を得、変性樹脂に代えてこの溶融混合物を5質量部用い、ポリプロピレン樹脂を75質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。上記溶融混合物では、VTMSのエチレン性不飽和基を介したポリプロピレン樹脂へのグラフト重合反応は生じず、したがって、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂は生じていない。VTMSは、その官能基を介してセルロース繊維やポリプロピレン樹脂と相互作用しているものである。
比較例5において、変性樹脂を添加せず、高密度ポリエチレン樹脂を80質量部、セルロース繊維を20質量部に変更した以外は、比較例5と同様にして樹脂成形体を得た。
機械強度の指標として、引張強度を評価した。
上記で得られたダンベル試験片に対して、JIS規格K7161に基づきオートグラフ精密万能試験機(株式会社島津製作所製)を用いて引張試験を行い、引張強度(MPa)を測定した。試験条件は、室温(25℃)で、標線間距離60mm、引張速度50mm/分とした。
高温高湿下での耐久性の指標として、湿熱処理前後の引張強度の変化を評価した。
この試験は、JIS規格D0203に記載の自動車部品の耐湿及び耐水試験方法に基づくものである。
上記で得られたダンベル試験片を恒温恒湿槽(商品名:PSL-2J、ESPEC株式会社製)に入れ、温度85℃、相対湿度95%環境下に1000時間静置した。恒温恒湿槽から取り出したダンベル試験片を100℃で24時間乾燥させた後、温度25℃、相対湿度50%環境下に7日間静置した。このようにして、ダンベル試験片の湿熱処理品を得た。
湿熱処理後のダンベル試験片について、上記引張強度試験に沿って引張試験を行った。温度85℃、相対湿度95%環境下に晒す前(湿熱処理前)における引張強度をσ0h、湿熱処理品の引張強度をσ1000hとし、湿熱処理前のダンベル試験片の引張強度に対する、ダンベル試験片の湿熱処理品の引張強度の比の値(σ1000h/σ0h、引張強度比)を算出した。
湿熱処理前後の引張強度比σ1000h/σ0hが1であることは、湿熱処理後にも湿熱処理前(初期)の引張強度をそのまま維持していることを意味する。さらに、引張強度比が0.1低下することは、湿熱処理後に、引張高度が10%低下することを意味する。ここで、上記湿熱処理1000時間の加速劣化試験による劣化は、10℃半減則に則り実環境においては7年相当の使用期間での劣化に相当する。自動車部品のように設計寿命が長い(例えば、10年以上)長期耐久部材においては、設計した力学強度が、使用期間中に10%を超えて低下することは、長期信頼性に劣ると判断されることがある。このため、長期耐久部材に適用する観点からは、引張強度比は0.9以上であることが好ましい。
上記で得られたダンベル試験片(湿熱処理前)の全体の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:平面視において最大径3mm以上の斑点が観察されなかった。
B:平面視において最大径3mm以上の斑点が1~3個認められた。
C:平面視において最大径3mm以上の斑点が4個以上生じ、及び/又は、表面に溶出物によるべたつきが発生した。
「最大径」とは、平面視において、斑点の外周上のある一点から別の一点までの、斑点の内部を通る直線上の距離が最大となる当該距離を意味する。
上記湿熱処理後のダンベル試験片の全体の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:平面視において最大径3mm以上の斑点が観察されなかった。
B:平面視において最大径3mm以上の斑点が1~3個認められた。
C:平面視において最大径3mm以上の斑点が4個以上生じ、及び/又は、表面に溶出物によるべたつきが発生した。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で、スチレンを添加せずに変性したSiMA-PPを使用し、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で、スチレンをラウリン酸ビニル8.15質量部に変更して変性したSiMA-PPを使用し、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。なお、ラウリン酸ビニルのQ値は0.011であり、添加量は、実施例1のスチレンと等モル量とした。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で、スチレンをアクリロニトリル1.91質量部に変更して変性したSiMA-PPを使用し、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。なお、アクリロニトリルのQ値は0.48であり、添加量は、実施例1のスチレンと等モル量とした。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で、スチレンをメタクリル酸グリシジル5.13質量部に変更して変性したSiMA-PPを使用し、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。なお、メタクリル酸グリシジルのQ値は0.96であり、添加量は、実施例1のスチレンと等モル量とした。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で、スチレンをα-メチルスチレン4.25質量部に変更して変性したSiMA-PPを使用し、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。なお、α-メチルスチレンのQ値は0.97であり、添加量は、実施例1のスチレンと等モル量とした。
実施例1において、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。なお、スチレンのQ値は1.00である。
実施例1において、「変性樹脂の調製」で、スチレンをメタクリル酸2-ヒドロキシプロピル5.19質量部に変更して変性したSiMA-PPを使用し、SiMA-PPを10質量部に変更し、ポリプロピレン樹脂を70質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。なお、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピルのQ値は4.38であり、添加量は、実施例1のスチレンと等モル量とした。
実施例13、実施例14の樹脂成形体は、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の作製時にビニル基を有する反応助剤を用いているが、その初期の引張強度は、ビニル基を有する反応助剤を用いていない実施例12の樹脂成形体と、同程度である。実施例13及び14において用いた反応助剤はそのQ値がプロピレンのQ値0.009とメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルのQ値1.08の中央値である0.54未満であるが、反応助剤のQ値が0.54未満の場合は、反応助剤がラジカル化しにくく、SiMAモノマーが反応助剤を介さずにポリプロピレン樹脂にグラフトしやすいと考えられる。それゆえSiMAモノマーのグラフト化率が反応助剤を用いない場合と比べて向上せず、セルロース繊維による補強作用の向上は限定的であったものと考えられる。
一方、実施例15~18の樹脂成形体は、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の作製時にビニル基を有する反応助剤を用いている。これらの場合、初期の引張強度は、ビニル基を有する反応助剤を用いていない実施例12の樹脂成形体と比べ向上している。実施例15~18において用いた反応助剤は、そのQ値が0.54~5.00以下であり、反応助剤がポリプロピレン樹脂にグラフトしやすいものと考えられる。それゆえポリプロピレン樹脂にグラフトした反応助剤がSiMAモノマーと重合し、SiMAモノマーのグラフト化率が高まるなどして、セルロース繊維による補強作用をより効果的に引き出すことができたと考えられる。
Claims (8)
- ポリプロピレン樹脂、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂、及びセルロース繊維を含むセルロース繊維強化樹脂複合体を成形してなるセルロース繊維強化樹脂成形体であって、
前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂が、アルキル基の炭素原子数が1~10である(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキル及びビニル基を有する反応助剤(ただし、該反応助剤はアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤ではない)によるポリプロピレン樹脂のグラフト変性物である、セルロース繊維強化樹脂成形体。 - 前記ビニル基を有する反応助剤のQ値が0.010~5.00である、請求項1に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
- 前記ビニル基を有する反応助剤のQ値が0.54~5.00である、請求項1に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
- 前記ビニル基を有する反応助剤が、スチレン化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物の少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
- 前記ビニル基を有する反応助剤が、スチレン化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
- 前記セルロース繊維強化樹脂成形体中、前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の含有量が0.1~20質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体。
- 下記工程(a)及び(b)を有する請求項1~5のいずれか1項に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法。
(a)ポリプロピレン樹脂及びアルキル基の炭素原子数が1~10である(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキルを、有機過酸化物及びビニル基を有する反応助剤(ただし、該反応助剤はアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤ではない)の存在下で有機過酸化物の分解温度以上で混合し、前記ポリプロピレン樹脂に対して前記(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)アルキル及び前記ビニル基を有する反応助剤をグラフト化反応させてアルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂を調製する工程
(b)前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂とセルロース繊維とポリプロピレン樹脂とを、前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂と前記セルロース繊維と前記ポリプロピレン樹脂の総量中に占める前記アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂の割合を0.1~20質量%として溶融混合する工程 - 前記ビニル基を有する反応助剤がスチレン化合物を含む、請求項7に記載のセルロース繊維強化樹脂成形体の製造方法。
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