JP7749308B2 - 乳児用栄養組成物 - Google Patents

乳児用栄養組成物

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Description

本発明は、乳児用栄養組成物に関する。
ヒトの乳児にとって人乳(母乳)は理想の栄養である。しかし、何らかの理由で母乳を与えられない場合には、母乳の代替品として乳児に与える栄養として、調製粉乳や調製液状乳といった栄養組成物が一般的に用いられている。そのような栄養組成物は、牛乳を主原料とし、組成を母乳に近づけるために栄養成分が調整されており、特に乳児用調製乳については法令上の一定の基準が定められている(非特許文献1)。
乳児用栄養組成物には、通常、乳児にとって必須の栄養素であるたんぱく質が含まれている。
一般に乳児用栄養組成物を製造する際に、牛乳由来のカゼインや乳清(ホエイ)たんぱく質がたんぱく質源として配合される。乳児用調製乳等の栄養組成物においては、乳児の健康と発達をより向上させるため、その組成をより母乳に近づけるという要請がある。牛乳におけるカゼインと乳清たんぱく質の比率は8:2(重量比)であるが、母乳における同比率は4:6(重量比)とされる。そのため、乳児用栄養組成物の製造においては、カゼインと乳清たんぱく質の比率を母乳に近づけるよう設計されている。
たんぱく質の栄養価は、それを構成するアミノ酸によって異なる。また、ヒトが合成できない必須アミノ酸は食事から摂取する必要があるが、必須アミノ酸ごとに乳児が必要とする量は異なる。従来、牛乳由来のカゼインや乳清たんぱく質を用いて製造されてきた乳児用栄養組成物においては、乳児にとって必要なアミノ酸が、その種類によっては母乳に比して不足している場合があることが指摘されてきた。これは、母乳と牛乳においては、同じカゼインや乳清たんぱく質と呼ばれる画分であったとしても、各々の画分を構成しているたんぱく質の組成が異なっており、各々の画分のアミノ酸組成も母乳と牛乳とで異なるためである。そのため、結晶アミノ酸の添加や、牛乳中の乳清たんぱく質画分から一部のたんぱく質を取り除く等によりアミノ酸組成を調整することが提案されている(特許文献1~3)。
特開平8-214775号公報 特表2011-504365号公報 特表2014-520549号公報
消食表第296号(令和元年9月9日) 別添1 特別用途食品の表示許可基準
牛乳由来のたんぱく質と、母乳たんぱく質とでは、上記のアミノ酸組成の違いに加え、生体内での利用性が異なると考えられているため、牛乳由来のたんぱく質を用いて乳児用栄養組成物を製造する際には、母乳よりも多量のたんぱく質が配合されてきた。一方で、乳児期のたんぱく質、もしくは特定のアミノ酸の過剰摂取は、乳児にとって消化・代謝の負担になるなど、悪影響が指摘されている。
しかしながら、単に乳児用栄養組成物中のたんぱく質含有量を低減するだけでは母乳の組成から乖離し、乳児にとって必要なアミノ酸栄養が不足する懸念がある。
かかる状況において、本発明は、たんぱく質を過剰に摂取することなく、十分にアミノ酸栄養を確保することができる、より母乳に近いアミノ酸組成の乳児用栄養組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、従来の乳児用栄養組成物に含まれる必須アミノ酸においては、フェニルアラニンとチロシンが母乳の組成に比して最も不足する傾向にあることを見出した。表1に示すよう、2007年WHOの委員会は、年齢別の必須アミノ酸必要量を定める中で、母乳のアミノ酸組成を提示しており(WHO/FAO/UNU (2007), WHO technical report series no. 935)、ここで示される母乳のアミノ酸組成においては、フェニルアラニンとチロシンの合計の総アミノ酸に対する含有率は9.7重量%であるのに対し、従来の調製粉乳では7.2~7.5重量%と低値であった。
かかる分析に基づき、本発明者らは、乳児用栄養組成物のアミノ酸組成においてフェニルアラニンとチロシンの含有量を高めることに想到した。そして、乳由来のたんぱく質であるカゼインと乳清たんぱく質において、それぞれ含有するアミノ酸の構成比率が異なること、及びカゼインの高い生体利用性に着目し、組成物への配合比率を調整することにより、過剰なアミノ酸を低減しつつ、フェニルアラニンとチロシンの含有量を高め、十分にアミノ酸栄養を確保し、より母乳に近いアミノ酸組成を実現できることに想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、たんぱく質を含有する乳児用栄養組成物であって、総アミノ酸当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有率が7.6重量%以上であり、総たんぱく質の90重量%以上が乳由来である、乳児用栄養組成物である。
本発明の好ましい態様において、総たんぱく質の33~70重量%がカゼインである。
本発明の好ましい態様において、総アミノ酸当たりのチロシンの含有率が3.6重量%以上である。
本発明の好ましい態様において、総アミノ酸当たりのフェニルアラニンの含有量が3.8重量%以上である。
本発明の好ましい態様において、総たんぱく質含有量が組成物100kcal当たり2.15g未満である。
本発明の好ましい態様において、フェニルアラニン及びチロシンの合計含有量に対するトリプトファンの含有量の割合が21重量%以下である。
本発明の好ましい態様において、栄養組成物は、調製乳である。
なお、本明細書において数値範囲を「~」で記載する場合は、その両端の数値も範囲に含まれるものとする。例えば、33~70重量%は、33重量%以上70重量%以下を表す。
本発明によれば、十分にアミノ酸栄養を確保することができる、より母乳に近いアミノ酸組成の乳児用栄養組成物が提供される。より具体的には、従来の乳児用組成物において
、母乳に比して不足しがちだったフェニルアラニン及びチロシンが、十分量確保される。また、従来の乳児用組成物において、母乳に比して過剰に配合されがちだったスレオニンの含有量が、適量になる。
本発明により、組成物に含まれる総たんぱく質量を低減することもできるため、より乳児の健康と発達に有用な栄養組成物を実現できる。
調製粉乳1~3中のカゼイン含有量を示す電気泳動画像。
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
本発明の乳児用栄養組成物は、たんぱく質を含有する。
該乳児用栄養組成物の総たんぱく質の90重量%以上は乳由来であり、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上が乳由来のたんぱく質である。
ここで、総たんぱく質は、栄養組成物に含まれる窒素含有量に対して、窒素たんぱく質換算係数である6.25を乗じて求められる、たんぱく質の総量を指す。窒素含有量は、例えば「食品表示基準について(平成27年3月30日消食第139号)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」(以下、食品表示基準における分析方法)に基づいて、すなわちケルダール法、もしくは改良デュマ法を含む燃焼法を用いて定量することができる。
本発明の組成物は、通常は、乳由来のたんぱく質として、乳清たんぱく質を含有する。乳清たんぱく質は、精製された高純度の乳清たんぱく質を用いてもよいし、低純度であって乳清たんぱく質以外の成分を含んでいるものを用いてもよい。
乳清たんぱく質原料を製造するために用いられる乳原料をそのまま乳清たんぱく質の代替として使用することもできる。この場合の乳原料とは乳清たんぱく質原料ということができる。乳清たんぱく質原料としては、生乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳清たんぱく質を含有する通常の乳製品を用いることができる。
乳清たんぱく質の精製法としては、牛乳または脱脂粉乳にレンネットや無機酸、もしくは有機酸等を加えてカゼインと乳脂肪を取り除く方法や、前記工程の乳清からさらに、もしくは牛乳や脱脂乳からゲル濾過法、限外濾過法、イオン交換法等により処理する方法があり、これらの方法で得られる乳清たんぱく濃縮物、乳清たんぱく分離物等を使用することができる。なお、市販の乳清たんぱく質濃縮物(WPC)、乳清たんぱく質分離物(WPI)等の乳清たんぱく質原料を使用することもできる。
一般的に、乳清たんぱく質には、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、血清アルブミン、免疫グロブリン、ラクトフェリン、プロテオースペプトン等を含んでいるが、本明細書における乳清たんぱく質も、これらの成分を含有していてもよい。
また、乳清たんぱく質として使用される乳清たんぱく質原料は1種類のみを使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の組成物は、通常は、乳由来のたんぱく質として、前記乳清たんぱく質以外のたんぱく質を含有する。かかるたんぱく質としては、経口摂取組成物に通常使用されるものであればよく、脱脂粉乳、全脂粉乳、カゼインの他、大豆たんぱく質等を用いることができる。カゼインはさらにα-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼイン等に分類されるが、本発明でカゼインは、これらカゼインの総和を意味する。また、本発明に用いるカゼインは、β-カゼインの含有率は牛乳と同等(およそ38%)であって構わない。
本発明におけるたんぱく質は、上記の乳由来のたんぱく質、及びそれ以外のたんぱく質を加水分解処理したペプチド・アミノ酸画分を含むものであってもよい。また、遊離アミノ酸を栄養組成物のたんぱく質源として用いてもよい。
本発明の組成物において、総たんぱく質のうちのカゼインたんぱく質の含有量は、通常は33重量%以上、好ましくは41重量%以上、より好ましくは44重量%以上である。また、総たんぱく質のうちのカゼインたんぱく質の含有量の上限は、通常は70重量%以下であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは59重量%以下である。すなわち、総たんぱく質のうちのカゼインたんぱく質の含有量は、33~70重量%、33~60重量%、33~59重量%、41~70重量%、41~60重量%、41~59重量%、44~70重量%、44~60重量%、又は44~59重量%とすることができる。
前述のように、本発明の組成物に通常含まれる乳たんぱく質の大部分はカゼインと乳清たんぱく質で構成されるところ、カゼインたんぱく質の割合をこのようにすることで、後述する乳児用栄養組成物中のフェニルアラニン及びチロシンの含有量を所定の範囲とすることを実現しやすくなる。これは、カゼインにはフェニルアラニン及びチロシンが多く含まれており、且つカゼインの生体利用性が高いことによる。
栄養組成物のカゼイン含量は、例えばSDS-PAGEで定量することができる。すなわち、栄養組成物と、複数の濃度のカゼイン標準品を、当容量、同一のポリアクリルアミドゲルにアプライし、電気泳動した後、ゲルをクマシーブルー染色して得られたバンドの強度(濃さ)を、解析ソフトで比較することで求めることができる。
本発明の組成物において、総アミノ酸当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有率は、7.6重量%以上であり、好ましくは7.7重量%以上であり、より好ましくは7.8重量%以上である。また、総アミノ酸当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有率の上限は、通常は12重量%以下であり、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは9.8重量%以下である。例えば、総アミノ酸当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有率は、7.6~12重量%、7.6~10重量%、7.6~9.8重量%、7.7~12重量%、7.7~10重量%、7.7~9.8重量%、7.8~12重量%、7.8~10重量%、又は7.8~9.8重量%とすることができる。かかる含有量とすることで、栄養組成物のアミノ酸組成がより母乳に近づくものとなる。
また、本発明の組成物において、組成物100kcal当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有量は、通常は0.15g以上であり、好ましくは0.16g以上である。上限は、通常は0.22g以下であり、好ましくは0.19g以下である。例えば、組成物100kcal当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有量は、0.15~0.22g、0.15~0.19g、0.16~0.22g、又は0.16~0.19gとすることができる。
ここで、総アミノ酸は、通常は栄養組成物に含まれるたんぱく質を構成するアミノ酸、すなわち、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン(トレオニン)、バリン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アラニン、アルギニン、プロリン、メチオニン、システイン(シスチン)、トリプトファンの総量を指すが、たんぱく質以外の形態、例えば遊離のアミノ酸やペプチド等の形態で添加されたものが含まれる場合は、それらを構成するアミノ酸も含めた量とする。
これらアミノ酸の含有量は、例えば、酸や塩基で加水分解した栄養組成物を、高速アミノ酸分析計や高速液体クロマトグラフィーに供することで定量することができる。なお、グルタミンとアスパラギンは加水分解中にそれぞれグルタミン酸、アスパラギン酸に変換されるため、グルタミン酸はグルタミンとグルタミン酸の合計として、アスパラギン酸は
アスパラギンとアスパラギン酸の合計として定量される。
また、総アミノ酸当たりの所定のアミノ酸の含有率は、上法によって定量された所定のアミノの含有量を、総アミノ酸の含有量で除することで求められる割合のことを指す。
本発明の組成物において、総アミノ酸当たりのチロシンの含有率は、通常は3.6重量%以上であり、好ましくは3.7重量%以上であり、より好ましくは3.8重量%以上である。また、総アミノ酸当たりのチロシンの含有率の上限は、通常は10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下であり、より好ましくは6重量%以下である。例えば、総アミノ酸当たりのチロシンの含有率は、3.6~10重量%、3.6~8重量%、3.6~6重量%、3.7~10重量%、3.7~8重量%、3.7~6重量%、3.8~10重量%、3.8~8重量%、又は3.8~6重量%とすることができる。
また、本発明の組成物において、組成物100kcal当たりのチロシンの含有量は、通常は0.05g以上であり、好ましくは0.07g以上である。上限は、通常は0.18g以下であり、好ましくは0.15g以下であり、より好ましくは0.095g以下である。例えば、組成物100kcal当たりのチロシンの含有量は、0.05~0.18g、0.05~0.15g、0.05~0.095g、0.07~0.18g、0.07~0.15g、又は0.07~0.095gとすることができる。
本発明の組成物において、総アミノ酸当たりのフェニルアラニンの含有率は、通常は3.8重量%以上であり、好ましくは3.9重量%以上であり、より好ましくは4重量%以上である。また、総アミノ酸当たりのフェニルアラニンの含有率の上限は、通常は6重量%以下であり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは4.4重量%以下である。例えば、総アミノ酸当たりのフェニルアラニンの含有率は、3.8~6重量%、3.8~5重量%、3.8~4.4重量%、3.9~6重量%、3.9~5重量%、3.9~4.4重量%、4~6重量%、4~5重量%、又は4~4.4重量%とすることができる。
また、本発明の組成物において、組成物100kcal当たりのフェニルアラニンの含有量は、通常は0.05g以上であり、好ましくは0.07g以上である。上限は、通常は0.15g以下であり、好ましくは0.12g以下である。例えば、組成物100kcal当たりのチロシンの含有量は、0.05~0.15g、0.05~0.12g、0.07~0.15g、又は0.07~0.12gとすることができる。
本発明の組成物において、フェニルアラニン及びチロシンの合計含有量に対するトリプトファンの含有量の割合は、22重量%以下であり、好ましくは21重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。また、フェニルアラニン及びチロシンの合計含有量に対するトリプトファンの含有量の割合の下限は、通常は14重量%以上であり、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17重量%以上である。例えば、フェニルアラニン及びチロシンの合計含有量に対するトリプトファンの含有量の割合は、14~22重量%、14~21重量%、14~20重量%、15~22重量%、15~21重量%、15~20重量%、17~22重量%、17~21重量%、又は17~20重量%とすることができる。
本発明の組成物において、総アミノ酸当たりのヒスチジンの含有率は、通常は2.8重量%以下であり、好ましくは2.6重量%以下であり、より好ましくは2.4重量%以下である。また、総アミノ酸当たりのヒスチジンの含有率の下限は、通常は1.5%以上であり、好ましくは1.8重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上である。例えば、総アミノ酸当たりのヒスチジンの含有率は、1.5~2.8重量%、1.5~2.6重量%、1.5~2.4重量%、1.8~2.8重量%、1.8~2.6重量%、1.8~2.4重量%、2~2.8重量%、2~2.6重量%、又は2~2.4重量%とすることができる。
本発明の組成物において、総アミノ酸当たりのシステインの含有率は、通常は2.2%
以下であり、好ましくは2.0重量%以下であり、より好ましくは1.7重量%以下である。また、総アミノ酸当たりのシステインの含有率の下限は、通常は1.0%以上であり、好ましくは1.2重量%以上であり、より好ましくは1.4重量%以上である。例えば、総アミノ酸当たりのシステインの含有率は、1~2.2重量%、1~2重量%、1~1.7重量%、1.2~2.2重量%、1.2~2重量%、1.2~1.7重量%、1.4~2.2重量%、1.4~2重量%、又は1.4~1.7重量%とすることができる。
このような組成の本発明の栄養組成物は、母乳のアミノ酸組成に近く、かつ摂取した乳児において十分に消化吸収され体内で利用されるため、組成物に含有される総たんぱく質含有量を、従来のものよりも低減させたとしても、アミノ酸栄養が十分に確保される。
すなわち、本発明の組成物における総たんぱく質含有量は、組成物100kcal当たり2.15g未満であってもよく、より好ましくは2.05g以下であってもよく、さらに好ましくは1.95g以下であってもよい。また、総たんぱく質含有量の下限は、組成物100kcal当たり、通常は1.5g以上であり、好ましくは1.6g以上であり、より好ましくは1.8g以上である。例えば、本発明の組成物における総たんぱく質含有量は、組成物100kcal当たり1.5g以上2.15g未満、1.5~2.05g、1.5~1.95g、1.6g以上2.15g未満、1.6~2.05g、1.6~1.95g、1.8g以上2.15g未満、1.8~2.05g又は1.8~1.95gとすることができる。
あるいは、本発明の組成物における総たんぱく質含有量は、組成物の乾燥重量全体の11重量%未満としてもよく、より好ましくは10.5重量%以下としてもよく、さらに好ましくは10重量%以下としてもよい。また、総たんぱく質含有量の下限は、通常は乾燥重量全体の7.7重量%以上としてもよく、好ましくは8.2重量%以上としてもよく、より好ましくは9.2重量%以上としてもよい。例えば、本発明の組成物における総たんぱく質含有量は、組成物の乾燥重量全体の7.7重量%以上11重量%未満、7.7~10.5重量%、7.7~10重量%、8.2重量%以上11重量%未満、8.2~10.5重量%、8.2~10重量%、9.2重量%以上11重量%未満、9.2~10.5重量%、又は9.2~10重量%とすることができる。
従来は、ヒト母乳に含まれるアミノ酸組成と含有量を確保するために、乳児用栄養組成物における総たんぱく質量は過剰に配合される傾向にあったが、前述のように総たんぱく質量を低減することにより、乳児の消化・代謝に負担をかけることがなくなり、過不足が緩和された栄養摂取が実現される。
本発明において、「乳児用栄養組成物」は、経口摂取される飲食品を指し特に限定されないが、好ましくは調製乳、流動食等であり、より好ましくは調製乳である。摂取対象は、乳児、幼児、小児、成人を問わないが、好ましくは乳児である。
調製粉乳は、乳および乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)において、「生乳、牛乳、特別牛乳、またはこれらを原料として製造した食品を加工し、または主要原料とし、乳幼児に必要な栄養分を加え粉末状にしたもの」として定義される。
調製液状乳は、前記省令において、「生乳、牛乳、特別牛乳、またはこれらを原料として製造した食品を加工し、または主要原料とし、乳幼児に必要な栄養分を加え液状にしたもの」として定義される。
また、調製乳は、各種のたんぱく質、油脂、炭水化物、ミネラル類、ビタミン類等の栄養成分が配合されたものであって、粉末状又は液状に加工されたものも含まれる。
また、調製乳にはさらに、健康増進法で規定される特別用途食品における「乳児用調製粉乳」、「乳児用調製液状乳」、「妊産婦、授乳婦用粉乳」が含まれ、幼児向け調製粉乳、成人用栄養粉末、高齢者用栄養粉末等の態様も含まれる。本発明において、「乳児用栄養組成物」は、より好ましくは乳児用調製粉乳、及び乳児用調製液状乳である。
本発明の組成物は、通常は、前述のたんぱく質の他に、油脂類を含有する。
油脂類としては、牛、水牛、ヤギ、ロバ等の哺乳類の乳から得られる乳脂肪、魚油、卵黄油等の動物性油脂、大豆油、コーン油、ゴマ油、エゴマ油、ナタネ油、パーム油、ヒマワリ油等の植物性油脂の他、微生物を培養して得られる油脂のいずれをも含むことができる。
特に、通常母乳に含まれる不飽和脂肪酸を含んでよく、不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、リノール酸、γ-リノレン酸(GLA)、α-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸(DHGLA)、ステアリドン酸等が挙げられる。
本発明の組成物は、通常は、炭水化物を含有する。
炭水化物としては、乳糖、デキストリン、澱粉、ラフィノース、ラクチュロース等の糖質の他、難消化性デキストリンやイヌリン等の食物繊維を含むことができる。
本発明の組成物は、通常は、ビタミン類を含有する。
ビタミン類としては、ビタミンB群やビタミンC等の水溶性ビタミン、ビタミンA、ビタミンD及びビタミンE等の脂溶性ビタミンを含むことができる。
本発明の組成物は、通常は、ミネラル類を含有する。
本発明のミネラル類は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅の塩類を使用することができ、好適には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸第二鉄、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸銅等の形で配合することができる。
本発明の乳児用栄養組成物は、常法により製造できる。
以下に、組成物が調製乳である場合を例として、本発明の組成物の製造方法を説明する。
所定量の、乳清たんぱく質、カゼイン、ペプチド、遊離アミノ酸、油脂類、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類等を含む調製乳原料を、水、生乳、脱脂乳、乳清等に添加し、適宜加温して混合・溶解し、加熱殺菌して液状の調製乳を調製する。
原料の一部である油脂類は、予め加熱溶融され、前記で調製した調製乳の原料溶液に添加される。油脂類を添加した調製乳の原料溶液は、均質機によって均質化されることが好ましい。油脂類は、調製乳の原料の一部を溶解した溶液と混合し、一旦均質化した後、残りの調製乳の原料を追加して調製乳の原料溶液を完成させることが可能である。
上述のように混合され、調製された液状の調製乳は、75~150℃で加熱殺菌される。加熱殺菌法としては、プレート式殺菌、インジェクション殺菌、及びインフュージョン殺菌等を利用することができる。加熱殺菌工程に続いて、液中の脂肪球を均一な大きさに整え、良好な乳化状態にするための均質化工程を追加することもできる。
加熱殺菌され、製造された液状の調製乳は、後述の粉末状の調製乳を製造するために使用することができる中間製品であると同時に、これ自体を最終製品とすることもできる。すなわち、加熱殺菌され、製造された液状の調製乳は、衛生的に充填機に移送され、そのまま、紙、プラスチック、アルミ等の容器に充填し、製品とすることができる。また、調製乳の原料溶液(調製乳原料)は、鉄結合乳清たんぱく質溶液との混合の前に、加熱殺菌をすることもできる。
上述のように加熱殺菌された液状の調製乳を、さらに乾燥して、粉末状の調製乳を製造することができる。また、乾燥前に、減圧乾燥法等の常法により、液状調製乳を濃縮することもできる。加熱殺菌と乾燥とを、一工程で行ってもよい。乾燥させる工程では、熱風
による噴霧乾燥や凍結乾燥を実施することができる。熱風による噴霧乾燥は、加熱を伴うために、一定の殺菌作用が発揮される点で好ましい。得られた粉末は、新たに成分を加えることなく、充填し、製品とすることができるし、衛生的に管理された成分、例えば殺菌時に変性する恐れのあるラクトフェリン等を混合した後に充填し、製品とすることもできる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)調製粉乳の調製
表2に示す配合に従い、脱塩牛乳乳清たんぱく質粉末(総たんぱく質60重量%、ミライ社製)、牛乳カゼインナトリウム粉末(総たんぱく質90重量%、フォンテラ社製)、乳糖(ミライ社製)、ミネラル混合物(富田製薬社製)、及びビタミン混合物(田辺製薬社製)、ラクチュロース(森永乳業社製)、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)、ガラクトオリゴ糖液糖(ヤクルト薬品工業社製)を温水300kgに溶解し、さらに90℃で10分間加熱溶解し、調整脂肪(太陽油脂社製)を添加して均質化した。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、調製粉乳1~3をそれぞれ約95kg調製した。
(2)アミノ酸含有量の定量
以下の方法に従って調製粉乳1~3のアミノ酸含有量を定量した。
表3に調製粉乳1~3のアミノ酸の含有量を、母乳と併せて示す。
(i)ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、バリン、アスパラギン酸+アスパラギン、セリン、グルタミン酸+グルタミン、グリシン、アラニン、アルギニン及びプロリンの定量方法
調製粉乳サンプル30mgをガラス容器に量り取り、3mLの6M塩酸(0.1容量%フェノール含有)(国産化学社製)を添加した後、ガラス容器を吸引脱気・密閉した。110℃で24時間加熱することでサンプル中のたんぱく質を全てアミノ酸まで加水分解した後、綿栓ろ過したろ液をエバポレーターに供して塩酸を除去し、5mLの0.02M塩酸でサンプルを再溶解した。再溶解したサンプルと、アミノ酸標準品(富士フィルム和光純薬社製)を高速アミノ酸分析計「L-8900形」(日立ハイテクノロジー社製)に供
し、サンプル中の各アミノ酸含有量を定量した。
(ii)メチオニン及びシステインの定量方法
30%過酸化水素(国産化学社製)と99%ギ酸(富士フィルム和光純薬社製)を1:9(容量比)の割合になるよう混合し、過ギ酸溶液を調製した。調製粉乳サンプル30mgをガラス容器に量り取り、3mLの過ギ酸を加え、パラフィルムで密閉した後、4℃で18時間静置し、サンプル中のシステイン(シスチン)をシステイン酸に、メチオニンをメチオニンスルホンに変換した。ガラス容器をヒートブロックで65℃に加温し、窒素吹き付けにより過ギ酸を除去した後、3mLの6M塩酸(0.1容量%フェノール含有)を添加し、ガラス容器を吸引脱気・密閉した。110℃で18時間加水分解した後、綿栓ろ過したろ液をエバポレーターに供して塩酸を除去し、5mLの0.02M塩酸でサンプルを再溶解した。再溶解したサンプル、メチオニンスルホン標準品(富士フィルム和光純薬社製)、及びシステイン酸標準品(富士フィルム和光純薬社製)を高速アミノ酸分析計「L-8900形」(日立ハイテクノロジー社製)に供し、サンプル中のメチオニンとシステイン含有量を定量した。
(iii)トリプトファンの定量方法
チオジエチレングリコール(富士フィルム和光純薬社製)と超純水を6:4(容量比)の割合になるよう混合し、60%チオジエチレングリコール溶液を得た。調製粉乳サンプル20mgをガラス容器に量り取り、1.56gの水酸化バリウム5水和物(富士フィルム和光純薬社製)、0.9 mlの超純水、及び0.1mLの60%チオジエチレングリコールを添加した後、ガラス容器を吸引脱気・密閉した。110℃で12時間加水分解した後、6M塩酸(国産化学社製)を用いてpH7~9となるよう中和希釈し、超純水により50mLにメスアップした。メスアップしたサンプルとトリプトファン標準品(富士フィルム和光純薬社製)を、蛍光検出器(Ex.285nm、Em.348nm)を備えた高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製)に供し、サンプル中のトリプトファン含有量を定量した。
(3)カゼイン含有量の定量
カゼイン標準品(シグマ アルドリッチ社製、カタログ番号:C7078)を総たんぱく質濃度として0.27, 0.67, 1.07 mgたんぱく質/mLとなるよう、また、調製粉乳1~3を総たんぱく質濃度として1.33 mgたんぱく質/mLとなるよう8M尿素水溶液に溶解したものに、
2-メルカプトエタノール(バイオ・ラッド社製)を10%容量添加した4 x Laemmliサンプルバッファー(バイオ・ラッド社製、カタログ番号:1610747)を1/4当量加え、95℃で5分間熱変性させた後、泳動バッファー(バイオ・ラッド社製、カタログ番号:1610377)中のSDS-PAGEゲル(バイオ・ラッド社製、カタログ番号:456-9036)のウェルに10μLずつ供した。供した総たんぱく質量としては、カゼイン標準品は2、5、及び8μg、調製粉乳1~3は10μgとなった。
150V、45分間電気泳動したゲルをクマシーブルー染色液(バイオ・ラッド社製、カタログ番号456-9034)で染色し、ChemiDoc XRS+ イメージングシステム(バイオ・ラッド社製)を用いて電気泳動画像に変換した。Image Labソフトウェア(バイオ・ラッド社製)のVolume Tools機能を用いて画像中の各レーンのカゼインに相当するバンドを選択し、バンドの強度を算出した(図1)。カゼイン標準品の3種の総たんぱく質量と、そのたんぱく質量に対応するバンド強度から作成した検量線を基に、調製粉乳1~3の総たんぱく質10μg当たりのカゼイン含有量を算出した。選択するバンドは画像中央付近、20
~37kDaの範囲に位置するα-カゼイン、β-カゼイン、γ-カゼインを全て含むものとし、各レーンのバンドの選択面積は同一とした。この結果、調製粉乳1~3の総アミノ酸10μg当たりのカゼイン含有量はそれぞれ順に3.2、4.4、及び5.9μgとなった。これは調製粉乳1~3の総たんぱく質当たりのカゼイン含有率がそれぞれ32重量%、44重量%、59重量%であることを示す。
(4)ラットへの投与試験
6週齢のSD雄ラットを日本チャールズ・リバーより購入した。12日間通常食で馴化飼育した後、体重に偏りが生じないよう3群に分けた(n=5)。その後、各群の食餌を調製粉乳1~3いずれかに切替えて1週間飼育を継続し、最終日に採血して血漿サンプルを調製した。ラットの摂餌量と体重は毎日記録し、共に各群で差が無いことを確認した。血漿サンプルに等量の10%トリクロロ酢酸溶液を添加し、21,500g、15分間で遠心分離することで上清を取得した後、上清サンプルとアミノ酸標準品(富士フィルム和光純薬社製)を高速アミノ酸分析計「L-8900形」(日立ハイテクノロジー社製)に供し、血漿中の遊離アミノ酸濃度を定量した。
表4に調製粉乳1~3を摂取したラットにおける血漿中遊離アミノ酸濃度を示す。
生体内において、特定の必須アミノ酸が不足した場合、該アミノ酸の血漿中遊離アミノ酸濃度が低下すること、また、特定の必須アミノ酸を過剰に摂取した場合は、該アミノ酸の血漿中遊離アミノ酸濃度が高まることは広く知られている(Physiological reviews 50
P428 (1970))。すなわち、必須アミノ酸の血漿中遊離アミノ酸濃度は、生体内のアミノ酸栄養の過不足を反映する指標であるといえる。
本発明に当たる調製粉乳2と調製粉乳3の総たんぱく質含有量は、調製粉乳1よりも低減されていたが、表3に示されるよう、調製粉乳2群と調製粉乳3群における、必須アミノ酸の血漿中遊離アミノ酸濃度は、スレオニン以外において、調製粉乳1群の血漿中遊離アミノ酸濃度と同等以上であった。
調製粉乳2群の血漿中遊離スレオニン濃度は、調製粉乳1群の血漿中遊離スレオニン濃度よりも有意に低値であったが、先述の通り、従来の調製粉乳においては、スレオニンの含有量が母乳に対して過剰であることが指摘されていたため(表1)、調製粉乳2は、ヒトの乳児にとって、より望ましいアミノ酸栄養を供給するものと考えられる。
また、調製粉乳3群の血漿中遊離チロシン濃度は、調製粉乳1群の血漿中遊離チロシン濃度よりも有意に高値であったが、先述の通り、従来の調製粉乳においては、チロシン、及びフェニルアラニンの合計含有量が、母乳に対して不足していることが指摘されていたため(表1)、調製粉乳3は、ヒトの乳児にとって、より望ましいアミノ酸栄養を供給するものと考えられる。
すなわち、本発明は、総たんぱく質含有量を低減することにより、たんぱく質を過剰に摂取することなく、十分にアミノ酸栄養を確保できる、より母乳に近いアミノ酸組成の乳児用栄養組成物を提供する。

Claims (4)

  1. たんぱく質を含有する乳児用栄養組成物であって、
    総アミノ酸当たりのフェニルアラニン及びチロシンの合計含有率が7.6重量%以上であり、
    総たんぱく質含有量が組成物100kcal当たり2.15g未満であり、かつ、
    総たんぱく質の90重量%以上が乳由来であり、
    総たんぱく質の41~70重量%がカゼインであり、
    フェニルアラニン及びチロシンの合計含有量に対するトリプトファンの含有量の割合が21重量%以下である、乳児用栄養組成物(但し、母乳を除く)。
  2. 総アミノ酸当たりのチロシンの含有率が3.6重量%以上である、請求項1に記載の組成物。
  3. 総アミノ酸当たりのフェニルアラニンの含有率が3.8重量%以上である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 調製乳である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
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