JP7751176B2 - オーステナイト系ステンレス熱延鋼材及び耐食性部材 - Google Patents
オーステナイト系ステンレス熱延鋼材及び耐食性部材Info
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Description
ステンレス鋼材は、形状によって、鋼板、条鋼、鋼帯、棒鋼、鋼管などに分類される。一般的なステンレス鋼材であるステンレス鋼板は、次のような工程によって製造される。ステンレス鋼の原料を溶解した溶銑を連続鋳造してスラブとし、スラブを熱間圧延することによって熱延鋼板(厚板材)が得られる。また、必要に応じて、熱延鋼板を冷間圧延することによって冷延鋼板(薄板材)が得られる。このようなステンレス鋼材の製造において、ステンレス鋼材の表面には酸化スケールが形成されるため、酸洗によって酸化スケールを除去することが行われる。以下、ステンレス鋼材の表面に形成された酸化スケールを除去することを「デスケール」と称する。
そこで、一般的なデスケール工程では、スケールブレーカーやショットブラストなどによる機械的な前処理を施して酸化スケールにクラックを入れた後に、酸洗することによって酸化スケールを除去し易くする方法が行われている(例えば、特許文献1及び2)。
一方、ステンレス鋼材の意匠性を確保するために上記のデスケール工程の後に表面を研磨することも考えられるが、表面を平滑になるまで研磨すると、研削量が多くなって歩留まりが低下するとともに、研磨目に研削油(冷却油)や研磨屑が残存して耐食性が低下する場合がある。
表面の算術平均粗さRaが0.10~3.00μm及び60度鏡面光沢Gs(60°)が10~100%であり、
塩乾湿繰り返し試験において、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った後の発銹面積率が1%以下である、オーステナイト系ステンレス熱延鋼材である。
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
ここで、本明細書において「ステンレス鋼材」とは、ステンレス鋼から形成された材料のことを意味し、その材形は特に限定されない。材形の例としては、板状(帯状を含む)、棒状、管状などが挙げられる。また、断面形状がT形、I形などの各種形鋼であってもよい。また、「不純物」とは、ステンレス鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップなどの原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。例えば、ステンレス鋼材は、不純物としてОを0.02%以下含有してもよい。また、REM(希土類元素)を合計で0.1%以下含有してもよい。
さらに、本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Ca:0.0001~0.0100%、B:0.0001~0.0080%、Sn:0.001~0.500%から選択される1種以上を更に含むことができる。
以下、各成分について詳細に説明する。
Cの含有量は多すぎると、硬質になって加工性が下がることに加え、溶接などの熱影響を受けた際に鋭敏化が生じ、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Cの含有量の上限値は、0.100%、好ましくは0.060%、より好ましくは0.040%、更に好ましくは0.020%に制御される。一方、Cの含有量は少なすぎると、オーステナイト相の安定度が下がることによる加工性の劣化や精練コストの上昇につながる。そのため、Cの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.002%、より好ましくは0.005%、更に好ましくは0.010%に制御される。
Siの含有量は多すぎると、硬質化してオーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Siの含有量の上限値は、1.00%、好ましくは0.80%、より好ましくは0.70%、更に好ましくは0.60%に制御される。一方、Siの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
Mnは、オーステナイト相(γ相)生成元素である。Mnの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Mnの含有量の上限値は、2.50%、好ましくは2.00%、より好ましくは1.50%、更に好ましくは1.00%に制御される。一方、Mnの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
Pの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性や加工性が低下してしまう。そのため、Pの含有量の上限値は、0.050%、好ましくは0.035%、より好ましくは0.030%、更に好ましくは0.020%に制御される。一方、Pの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.001%、より好ましくは0.005%、更に好ましくは0.010%である。
Sの含有量は多すぎると、熱間加工性が下がってオーステナイト系ステンレス鋼材の製造性が低下してしまうとともに、耐食性にも悪影響を及ぼす。そのため、Sの含有量の上限値は、0.0300%、好ましくは0.0100%、より好ましくは0.0050%、更に好ましくは0.0010%に制御される。一方、Sの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.0001%、より好ましくは0.0002%、更に好ましくは0.0003%である。
Niは、Mnと同様にオーステナイト相(γ相)生成元素である。Niは高価であるため、含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Niの含有量の上限値は、26.00%、好ましくは25.50%に制御される。一方、Niの含有量は少なすぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下する。そのため、Niの含有量の下限値は、6.00%、好ましくは10.00%、より好ましくは12.00%、更に好ましくは18.00%に制御される。
Crの含有量は多すぎると、精錬コストの上昇を招く上に、固溶強化によって硬質化し、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Crの含有量の上限値は、26.00%、好ましくは24.00%、より好ましくは22.00%、更に好ましくは20.50%に制御される。一方、Crの含有量は少なすぎると、耐食性が十分に得られない。そのため、Crの含有量の下限値は、15.00%、好ましくは16.00%、より好ましくは17.00%、更に好ましくは18.00%に制御される。
Moは、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性を改善する元素である。Moは高価であるため、Moの含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Moの含有量の上限値は、8.00%、好ましくは7.50%、より好ましくは7.00%、更に好ましくは6.50%に制御される。一方、Moの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.20%、より好ましくは2.00%、更に好ましくは6.00%である。
Cuは、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性を改善する元素である。Cuの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまうとともに、鋳造時に低融点相を形成して熱間加工性の低下を招く。そのため、Cuの含有量の上限値は、4.00%、好ましくは3.50%、より好ましくは2.00%、更に好ましくは1.00%に制御される。一方、Cuの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.20%、より好ましくは0.40%である。
Nは耐食性を改善する元素である。Nの含有量は多すぎると、硬質化してオーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Nの含有量の上限値は、0.350%、好ましくは0.300%、より好ましくは0.250%、更に好ましくは0.230%に制御される。一方、Nの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.010%、好ましくは0.020%である。
Alは、精錬工程において脱酸のために必要に応じて添加され、耐食性及び耐熱性を改善する元素である。Alの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Alの含有量の上限値は、0.400%、好ましくは0.100%、より好ましくは0.050%に制御される。一方、Alの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.001%、より好ましくは0.005%である。
本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Si及びAlの含有量が少ないものを対象とする。具体的には、Si+2Al(各元素記号は、各元素の含有量を表す)は、1.20%未満、好ましくは1.10%以下、より好ましくは1.00%以下、更に好ましくは0.90%以下である。なお、Si+2Alの下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
Tiは、CやNと結合して耐食性及び耐粒界腐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Tiによる効果を得る観点から、Tiの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%に制御される。一方、Tiの含有量は多すぎると、表面疵の原因となって品質低下を招くとともに、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Tiの含有量の上限値は、0.500%、好ましくは0.300%、より好ましくは0.100%に制御される。
Nbは、Tiと同様に、CやNと結合して耐食性及び耐粒界腐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Nbによる効果を得る観点から、Nbの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.004%、より好ましくは0.010%に制御される。一方、Nbの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Nbの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.600%、より好ましくは0.0600%に制御される。
Vは、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Vによる効果を得る観点から、Vの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.010%に制御される。一方、Vの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Vの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.200%に制御される。
Wは、高温強度及び耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Wによる効果を得る観点から、Wの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.010%に制御される。一方、Wの含有量は多すぎると、硬質化して加工性が低下するとともに、表面疵が増加してオーステナイト系ステンレス鋼材の表面品質が低下してしまう。そのため、Wの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.300%に制御される。
Zrは、CやNと結合して耐酸化性及び耐粒界腐食性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Zrによる効果を得る観点から、Zrの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.010%に制御される。一方、Zrの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Zrの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.200%、より好ましくは0.050%に制御される。
Coは耐熱性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Coによる効果を得る観点から、Coの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.010%に制御される。一方、Coは高価であるため、Coの含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Coの含有量の上限値は、1.200%、好ましくは0.400%に制御される。
Caは、硫化物を形成してSの悪影響を低減する元素であり、必要に応じて添加される。Caによる効果を得る観点から、Caの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0003%に制御される。一方、Caの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Caの含有量の上限値は、0.0100%、好ましくは0.0050%に制御される。
Bは、熱間加工性を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Bによる効果を得る観点から、Bの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0003%、より好ましくは0.0005%に制御される。一方、Bの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Bの含有量の上限値は、0.0080%、好ましくは0.0040%、より好ましくは0.0025%に制御される。
Snは、耐食性及び高温強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加される。Snによる効果を得る観点から、Snの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.002%に制御される。一方、Snの含有量は多すぎると、低融点相を形成してオーステナイト系ステンレス鋼材の熱間加工性が低下してしまう。そのため、Snの含有量の上限値は、0.500%、好ましくは0.100%、より好ましくは0.050%に制御される。
ここで、本明細書において「算術平均粗さRa」とは、JIS B0601:2013に準拠して測定される算術平均粗さRaを意味する。
ここで、本明細書において「60度鏡面光沢Gs(60°)」とは、JIS Z8741:1997に準拠して測定される60度鏡面光沢Gs(60°)を意味する。
(1)二乗平均平方根傾斜RΔqが35°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下である。このような範囲に表面の二乗平均平方根傾斜RΔqを制御することにより、オーステナイト系ステンレス鋼材の光沢を向上させることができる。なお、二乗平均平方根傾斜RΔqの下限値は、例えば3°である。
ここで、本明細書において「二乗平均平方根傾斜RΔq」とは、JIS B0601:2013に準拠して測定される二乗平均平方根傾斜RΔqを意味する。
ここで、本明細書において「クロマネティクス指数b*」とは、JIS Z8781-6:2017に準拠して測定されるCIEDE2000色差式に用いるCIE-L*a*b*色空間におけるクロマネティクス指数b*を意味する。
(3)テクスチャのアスペクト比Strが0.50以上、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.70以上である。このような範囲にテクスチャのアスペクト比Strを制御することにより、筋目模様がない良好な外観を有するオーステナイト系ステンレス鋼材を得ることができる。なお、テクスチャのアスペクト比Strの上限値は、その定義から1となるが、例えば0.95程度である。
ここで、本明細書において「テクスチャのアスペクト比Str」とは、JIS B0681-2:2018に準拠して測定されるテクスチャのアスペクト比Strを意味する。
レーザデスケール工程の各種条件は、使用する装置に応じて、以下の事項を考慮して調整すればよい。
連続波レーザだと入熱が大きすぎて母材(オーステナイト系ステンレス鋼材)の溶解が起こり易いため、パルスレーザが好ましい。
(波長)
一般に物質の光に対する反射率は波長依存性を有し、反射率が低い波長を選択すると入熱が大きくなり、蒸散が生じ易くなる。そのため、母材の反射率が高く、酸化物の反射率が低い波長を選択することで酸化スケールを選択的に蒸散除去することができる。
(パルス幅)
パルス幅が短いとレーザによる入熱が周囲に伝達される前にアブレーションが生じるため、アブレーション閾値が小さくなる。ただし、パルス幅は主に発振器の性能で決定され、短いパルス幅で発振可能な装置は高額であるため、レーザデスケール設備の仕様範囲内で、短いパルス幅を選択することが好ましい。
(発振周波数)
パルス幅が短いほど発振周波数が高くなり、発振周波数が高いほどスキャンした際のパルス間の空隙を小さくできるため、レーザデスケール設備の仕様範囲内で、高い発振周波数を選択することが好ましい。
スキャン周波数が高いほどラインの処理速度が速くなるが、高くしすぎるとパルス間の空隙が生じてデスケール率が低下する。そのため、デスケール率を維持できる範囲でスキャン周波数を高くすることが好ましい。
(レーザのビーム径)
大きいほど照射範囲、すなわち一回のパルスでデスケールできる範囲が広くなり、デスケール効率がよくなるが、パルス一回のエネルギー密度(フルエンス)が低くなる。スケールを蒸散除去できるフルエンスを維持した範囲でビーム径を大きくすることが好ましい。
(フルエンス)
スケールを構成する酸化物のアブレーション閾値を超えるフルエンスを有するレーザ光を照射することで、酸化スケールを蒸散除去できるが、フルエンスを高くしすぎるとスケールだけでなく母材も蒸散除去されるため、母材損傷が大きくなってしまう。従って、デスケール率と母材損傷とを考慮してフルエンスを調整すればよい。
図1は、上記(1)の表面の(a)100倍及び(b)1000倍のSEM写真である。図1に示されるように、このステンレス鋼板は、パルスレーザによるパルス痕が表面にみられるものの、平滑部が多い表面構造を有している。そのため、表面粗さパラメータ(算術平均粗さRaなど)や60度鏡面光沢Gs(60°)などを上記の範囲に制御することが可能になる。
図3は、上記(3)の表面のレーザ顕微鏡写真(50倍)である。図3に示されるように、このステンレス鋼板は、ベルト研磨による筋目模様を有する表面構造を有している。そのため、テクスチャのアスペクト比Strが小さくなる傾向にある。
鋼種Aの組成を有する熱延鋼板に対して、レーザデスケール工程及び酸洗デスケール工程を順次実施した。
レーザデスケール工程は、市販の装置(株式会社IHI検査計測製LaserClear50A)を用いて行った。この装置の可動ステージに熱延鋼板を設置し、圧延方向に沿って0.2m/分で移動させつつ、熱延鋼板の上方から板幅方向に一定速度でスキャンしてパルスレーザを1回照射した。1回あたりのスキャン幅は25mmとした。パルスレーザの照射条件は以下の通りとした。
波長:1085nm
パルス幅:100ns
発振周波数:120kHz
スキャン周波数:100Hz
レーザのビーム径:90μm
フルエンス:6J/cm2
酸洗デスケールは、フッ酸30g/L及び硝酸60g/Lを含むフッ硝酸水溶液を恒温槽で60℃に保持し、熱延鋼板を90秒浸漬させた後、直ぐに流水で水洗して自然乾燥させることによって行った。
表2に示す鋼種の組成を有する熱延鋼板を用いたこと、及びレーザデスケール工程におけるパルスレーザのフルエンスを7J/cm2としたこと以外は実施例1と同様にした。
鋼種Aの組成を有する熱延鋼板に対して、スケールブレーカーによる曲げ半径が50mmの曲げ及び曲げ戻し処理、並びにスチールショット(SB-5)を用いたショットブラスト処理による前処理を行った後、酸洗デスケール工程を実施した。
酸洗デスケール工程は、次のようにして実施した。まず、フッ酸50g/L及び硝酸150g/Lを含むフッ硝酸水溶液を恒温槽で50℃に保持し、熱延鋼板を240秒浸漬させた後、直ぐに流水で水洗して自然乾燥させた。次に、フッ酸30g/L及び硝酸60g/Lを含むフッ硝酸水溶液を恒温槽で60℃に保持し、熱延鋼板を90秒浸漬させた後、直ぐに流水で水洗して自然乾燥させた。
比較例1で得られた酸洗デスケール工程後の熱延鋼板に対して、SiC研磨紙(番手#400)及び水溶性研削油を用いたベルト研磨を行った。研削深さは、表面から20μmの深さとした。
デスケール工程を実施した上記の熱延鋼板の表面について、JIS B0601:2013に準拠し、接触式の表面粗さ計(株式会社東京精密製サーフコム2800)を用いて算術平均粗さRa及び二乗平均平方根傾斜RΔqを測定した。算術平均粗さRaの測定では、基準長さを4mmとした。
同様に、デスケール工程を実施した上記の熱延鋼板の表面について、JIS B0681-2:2018に準拠し、3D測定レーザ顕微鏡(オリンパス株式会社製LEXT OLS4100)を用いてテクスチャのアスペクト比Strを測定した。測定時の観察倍率は50倍とし、測定範囲は3mm×3mmとした。
算術平均粗さRa、二乗平均平方根傾斜RΔq及びテクスチャのアスペクト比Strは、端部から5mmまでの範囲を除く5箇所で測定を行い、その平均値を評価結果とした。なお、各測定位置の間は5mm以上離した。
デスケール工程を実施した上記の熱延鋼板の表面について、JIS Z8741:1997に準拠し、光沢度計(日本電色工業株式会社製PG-1M)を用いて60度鏡面光沢Gs(60°)を測定した。60度鏡面光沢Gs(60°)は、端部から5mmまでの範囲を除く5箇所で測定を行い、その平均値を評価結果とした。なお、各測定位置の間は5mm以上離した。
デスケール工程を実施した上記の熱延鋼板の表面について、JIS Z 8722:2009に準拠し、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製CM-700d)を用いてクロマネティクス指数b*を測定した。測定の幾何条件はc(di:8°)、測定径は8mmφ、視野は10°とし、照明光源としてD65イルミナントを用いた。端部から5mmまでの範囲を除く5箇所で測定を行い、その平均値を評価結果として用いた。
耐食性試験は、塩水噴霧、乾燥及び湿潤を繰り返す塩乾湿繰り返し試験によって行った。塩乾湿繰り返し試験は、デスケール工程を実施した上記熱延鋼板に対して、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)、及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った。その後、熱延鋼板を水洗して乾燥させ、熱延鋼板の発銹面積率を算出した。
発銹面積率の算出は、次のような手順で行った。塩乾湿繰り返し試験後の熱延鋼板の表面を写真撮影し、端面を除いた中央の25mm×25mmの範囲における発銹部分の面積の割合を求めた。発銹部分の面積は、熱延鋼板の表面の写真を画像解析により2値化し、1ピクセルあたりの面積を算出した後、発銹部分のピクセル数をカウントして求めた。発銹面積率は、以下の式によって算出した。
発銹面積率(%)=発銹部分の面積(mm2)/観察部全体の面積(625mm2)×100
この評価において、発銹面積率が1%以下のものを「○」(耐食性が良好)、1%を超えるものを「×」(耐食性が不良)とした。
上記の各評価結果を表2に示す。
これに対して比較例1の熱延鋼板は、表面の算術平均粗さRa及び60度鏡面光沢Gs(60°)が上記の範囲外であり、粗くて光沢のない表面を有していた。また、比較例2の熱延鋼板は、酸洗デスケール工程の後に研磨を行ったため、耐食性が十分でなかった。
Claims (5)
- 質量基準で、C:0.001~0.100%、Si:1.00%以下、Mn:2.50%以下、P:0.050%以下、S:0.0300%以下、Ni:6.00~26.00%、Cr:15.00~26.00%、Mo:8.00%以下、Cu:4.00%以下、N:0.350%以下、Al:0.400%以下を含み、Si+2Alが1.20%未満であり、残部がFe及び不純物からなる組成を有し、
表面の算術平均粗さRaが0.10~3.00μm及び60度鏡面光沢Gs(60°)が10~100%であり、
塩乾湿繰り返し試験において、5%のNaCl水溶液の噴霧(35℃で15分)、乾燥(相対湿度30%、温度60℃で1時間)及び湿潤(相対湿度95%、温度50℃で3時間)を1サイクルとして10サイクル行った後の発銹面積率が1%以下である、オーステナイト系ステンレス熱延鋼材。 - 前記オーステナイト系ステンレス熱延鋼材の表面が、以下の(1)及び(2)を満たす、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼材。
(1)二乗平均平方根傾斜RΔqが35°以下である。
(2)クロマネティクス指数b*が7.00以下である。 - 質量基準で、Ti:0.001~0.500%、Nb:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、W:0.001~1.000%、Zr:0.001~1.000%、Co:0.001~1.200%から選択される1種以上を更に含む、請求項1又は2に記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼材。
- 質量基準で、Ca:0.0001~0.0100%、B:0.0001~0.0080%、Sn:0.001~0.500%から選択される1種以上を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼材。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス熱延鋼材を含む耐食性部材。
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