本出願人は、ファスナーストリンガーのファスナーテープが、ファスナー被着部材のストリンガー取付縁部に縫着されて製造されるスライドファスナー付き製品について、縫製部の交絡部に特徴を有するPCT出願(PCT/JP2022/032020)を行った。このPCT出願に記載されている技術を用いることにより、縫製部をファスナーエレメントに接触させて、ファスナーテープがファスナーエレメントとファスナー被着部材(生地)との間で露呈することを防止又は抑制することが可能である。
これに対し、以下の各実施例に示すスライドファスナー付き製品では、縫製部をファスナーエレメントに接触させなくても、ファスナーテープがファスナーエレメントとファスナー被着部材(生地)との間で露呈することを防止又は抑制することができる。なお、上記PCT出願で形成される縫製部は、ミシンの上糸及び下糸を含む縫製糸により形成されるが、この場合、縫製部を形成する縫製糸は、撥水性を備えていてもよい。それにより、スライドファスナー付き製品の耐水性をより向上させることができる。
図1は、本実施例1に係るスライドファスナー付き製品を模式的に示す平面図である。図2、図3、及び図4は、スライドファスナー付き製品の一部を拡大して模式的に示す斜視図、底面図、及び断面図である。
以下のスライドファスナー及びスライドファスナー付き製品に関する説明において、前後方向とは、ファスナーテープのテープ長さ方向に沿った方向を言い、スライダーが摺動する摺動方向と同じ方向である(図1及び図2を参照)。特に、スライドファスナーを閉じるときにスライダーを摺動させる方向を前方とし、スライドファスナーを開くときにスライダーを摺動させる方向を後方とする。
左右方向は、ファスナーテープのテープ幅方向に沿った方向を言い、具体的には、前後方向に直交し、且つ、ファスナーテープのテープ表面及びテープ裏面に平行な方向である。また、左右方向は、一対のファスナーストリンガーのエレメント列を互いに噛合及び分離させる方向に沿った方向と言うこともできる。この場合、一対のエレメント列が互いに近付くように移動する向きを左右方向の内側の向きとし、一対のエレメント列が互いに離れるように移動する向きを左右方向の外側の向きとする(図3を参照)。
上下方向は、ファスナーテープのテープ表面及びテープ裏面に直交する方向(テープ表裏方向)に沿った方向を言い、前後方向と左右方向とに直交する方向である(図4を参照)。上下方向は、テープ厚さ方向と言うこともある。この場合、スライドファスナーが使用されるときに外部に露呈する方向(例えば、ファスナーテープに対してスライダーの引手が配される方向)を上方とし、その反対側の方向を下方とする。
本実施例1のスライドファスナー付き製品1は、例えば衣服(衣料品)であり、この衣服の前身頃の前開き部、及び、前身頃の胸部及び腹部に設けられるポケット部の開閉部(開口周縁部)等にスライドファスナー20が取り付けられている。このスライドファスナー付き衣服1は、左右一対のファスナーストリンガー21を有するスライドファスナー20と、左右の各ファスナーストリンガー21が取り付けられる左右のストリンガー取付縁部11を備えるファスナー被着部材10とを有する。
本実施例1において、スライドファスナー20が取り付けられるファスナー被着部材10は、衣服の生地10(ガーメント生地とも言う)である。また、衣服の前身頃を形成する左右の生地10は、相手側の生地10に対向して配される対向側縁部11をそれぞれ有する。左右の生地10の対向側縁部11は、スライドファスナー20のファスナーストリンガー21が取り付けられるストリンガー取付縁部11となる。
本実施例1において、ストリンガー取付縁部11を備える左右の生地10は、少なくとも耐水性を備えている。ここで、耐水性は、生地10に対して水の通過または浸透を抑制する性質を意味する。なお本実施例1において、生地10に耐水性を付与する方法及び手段は特に限定されない。また、生地10は、耐水性を備えずに形成されていてもよい。
左右の各生地10は、生地本体部(不図示)と、生地本体部の端縁部に設けられるストリンガー取付縁部11とをそれぞれ有する。各生地10のストリンガー取付縁部11には、縫製糸(ミシン糸)により形成される縫製部12によって、ファスナーストリンガー21が取り付けられている。
各生地10のストリンガー取付縁部11は、図4に示すように、衣服の生地10が上下方向に重ねられて形成される二重部14を有する。このストリンガー取付縁部11の二重部14は、衣服の生地10が前後方向に沿った折り曲げ部16で折り返されることにより、前後方向に直交する断面視においてU字状の形状に形成されている。この場合、二重部14は、後述するファスナーエレメント23のヒレ部23b(第2ヒレ部25b)に接触した状態で形成されている。
二重部14は、前後方向に直交する断面視において、生地本体部(不図示)から幅方向の内側に向けて延びる第1ストリップ部15と、第1ストリップ部15から延びながら折り曲げられている折り曲げ部16と、折り曲げ部16から延びて第1ストリップ部15に上下方向で重なる第2ストリップ部17とを有する。
この二重部14において、第1ストリップ部15は、第2ストリップ部17の上に、ファスナーストリンガー21の後述するファスナーテープ22から離間して配されている。第2ストリップ部17は、ファスナーテープ22に接触して配されている。第2ストリップ部17は、上下方向において、ファスナーテープ22と第1ストリップ部15との間に配されている。折り曲げ部16は、左右方向に関して、縫製部12の形成位置から、スライドファスナー20の内側に離れた位置に、且つ、縫製部12の形成位置よりも後述するファスナーエレメント23に近い位置に配されている。
二重部14は、生地10同士が向き合う内面と、内面の反対側に配される外面とを有する。この場合、二重部14の内面は、第1ストリップ部15の下面と、折り曲げ部16の内周面と、第2ストリップ部17の上面とを有する。二重部14の外面は、第1ストリップ部15の上面と、折り曲げ部16の外周面と、第2ストリップ部17の下面とを有する。第2ストリップ部17の下面は、ファスナーテープ22に対向するテープ対向面と言うこともできる。
生地10のストリンガー取付縁部11とファスナーストリンガー21とを縫い合わせる縫製部12は、ミシン(不図示)を用いて本縫いを行う縫製加工により、ファスナーテープ22の前後方向に沿って直線的に設けられている(図3を参照)。この縫製部12は、ミシンの上糸(針糸)と下糸(ボビン糸)とを含む縫製糸により形成されている。また、縫製部12を形成する縫製糸は、撥水性を備えていてもよい。
直線状の縫製部12は、二重部14の第2ストリップ部17とファスナーテープ22とを縫い合わせており、それによって、ファスナーストリンガー21を生地10のストリンガー取付縁部11に固定している。なお本発明において、ストリンガー取付縁部とファスナーストリンガーとを縫い合わせる縫製部は、左右方向の内側に又は外側に向けて小さく屈曲又は湾曲する部分を有して形成されていてもよい。
本実施例1の縫製部12は、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から左右方向の外側に(ファスナーテープ22のテープ内側に)離れた位置に配されており、また、ストリンガー取付縁部11の折り曲げ部16からも左右方向の外側に離れた位置に配されている。このとき、ストリンガー取付縁部11の折り曲げ部16はファスナーエレメント23に接触して配され、左右方向において、二重部14の縫製部12の位置から折り曲げ部16の位置までの間がフラップとしてファスナーテープ22上に形成される。これにより、縫製部12とファスナーエレメント23の間には耐水領域が形成されている。
この場合、縫製部12とファスナーエレメント23の後述するヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離は、1mm以上10.0mm以下であることが好ましい。離間距離が1mm以上であることにより、後述する第1接着層31をファスナーテープ22とストリンガー取付縁部11との間に安定して設けることができる。離間距離が10.0mm以下であることにより、ファスナーテープ22の幅寸法(左右方向の寸法)と、第2ストリップ部17の幅寸法とが大きくなり過ぎることを防止できる。その結果、スライドファスナー付き衣服1の製造コストの削減を図ることができる。離間距離が10.0mmよりも大きい場合には、折り曲げ部16がファスナーエレメント23に接触するように位置決めして折り曲げることが困難になる場合もある。
本実施例1の縫製部12の一部は、第1ストリップ部15と第2ストリップ部17との間に挟まれて配されている。言い換えると、縫製部12の一部は、二重部14の内側に包まれて保持されている。この場合、縫製部12の第1ストリップ部15と第2ストリップ部17との間に挟まれる部分は、縫製部12における第2ストリップ部17の上面の上に配される部分である。
本実施例1のスライドファスナー付き製品1において、ファスナーテープ22のテープ表面(上面)と第2ストリップ部17の下面との間には、ファスナーテープ22と二重部14とを接着する第1接着層31が設けられている。この第1接着層31は、ファスナーテープ22と第2ストリップ部17の間において、左右方向のファスナーエレメント23に近い位置に少なくとも設けられていることが好ましい。例えば本実施例1の場合、第1接着層31は、左右方向に関して、二重部14における折り曲げ部16及び第2ストリップ部17間の境界部の位置(又はその近傍)から、縫製部12の位置までの範囲に連続して設けられている。
このような第1接着層31を設けることにより、ストリンガー取付縁部11の二重部14(特に、第2ストリップ部17)をファスナーテープ22に安定して固定できるため、二重部14がファスナーテープ22から離れて、めくり上げられることを防止できる。その結果、二重部14の下に隠されていたファスナーテープ22が、二重部14のめくれに起因してスライドファスナー付き製品1(衣服)の外面に露呈することを防止できる。なお本発明において、第1接着層は、左右方向に関して、ファスナーテープと第2ストリップ部とに挟まれる領域の少なくとも一部に設けられていればよい。
本実施例1において、二重部14の第1ストリップ部15の下面と第2ストリップ部17の上面との間には、第1ストリップ部15と第2ストリップ部17とを接着する第2接着層32が設けられている。この第2接着層32を設けることにより、二重部14のU字状の形状を安定して保持できる。
なお本発明において、第1接着層31及び第2接着層32の材質及び厚さは特に限定されない。また本発明では、第1ストリップ部と第2ストリップ部との間に第2接着層を設けずに、スライドファスナー付き製品が形成されていてもよい。
本実施例1のスライドファスナー20は、ファスナーテープ22のテープ側縁部にエレメント列26が形成されている左右一対のファスナーストリンガー21と、左右のエレメント列26に摺動可能に取り付けられるスライダー40とを有する。本実施例1において、左右のファスナーストリンガー21は、上述した縫製部12により、左右の生地10のストリンガー取付縁部11に取り付けられている(図1及び図2を参照)。
本実施例1において、スライダー40は、前述した国際公開第2011/064893号(特許文献1)又は国際公開第2017/094145号に記載されているスライダーと実質的に同様に形成されている。ここで、本実施例1のスライダー40について簡単に説明すると、スライダー40は、スライダー胴体41と、スライダー胴体41に取り付けられる引手45とを有する。スライダー胴体41は、上翼板42と、上翼板42と平行に配される下翼板(不図示)と、上翼板42及び下翼板の前端部間を連結する連結柱(不図示)と、上翼板42の左右側縁部から下翼板に向けて延びる左右の上フランジ部(不図示)と、下翼板の左右側縁部から上翼板42に向けて延びる左右の下フランジ部(不図示)と、引手45を取り付けるため上翼板42の上面に一体的に形成される引手取付部43とを有する。
スライダー胴体41の前端部には、左右の肩口が連結柱を挟んで設けられている。スライダー胴体41の後端部には、後口が設けられている。スライダー胴体41の上翼板42及び下翼板間には、左右の肩口と後口とに連通する略Y字状のエレメント案内路が設けられている。スライダー胴体41における上フランジ部と下フランジ部との間には、ファスナーエレメント23の後述する第1ヒレ部24b及び第2ヒレ部25bを挿通させる挿通間隙が設けられている。この挿通間隙は、エレメント案内路に連通している。
左右の各ファスナーストリンガー21は、長尺で細幅状のファスナーテープ22と、ファスナーテープ22のテープ側縁部に設けられる複数の合成樹脂製の複数のファスナーエレメント23とを有する。この場合、ファスナーエレメント23は、ファスナーテープ22における噛合相手方のファスナーストリンガー21に対向するテープ側縁部に設けられている。
各ファスナーテープ22は、テープ表面及びテープ裏面を備えるテープ本体部22aと、テープ本体部22aの内側の側端縁に設けられる芯紐部22bとを有する。芯紐部22bは、テープ長さ方向に沿ってテープ本体部22aの側端縁に一体的に設けられている。芯紐部22bは、テープ本体部22aに対して上下方向に膨らんで形成されている。
本実施例1のファスナーテープ22は、水の侵入を防止又は抑制する防水層が設けられてなく、耐水性を備えずに形成されている。なお本発明において、ファスナーテープの構造及び性質、並びに、ファスナーテープ22の形成方法は特に限定されるものではなく、ファスナーテープ22は、少なくとも一部に耐水性を備えていてもよい。
ファスナーテープ22のテープ側縁部には、複数の合成樹脂製ファスナーエレメント23が前後方向に沿って一定の間隔で設けられていることにより、エレメント列26が形成されている。各ファスナーエレメント23は、合成樹脂をファスナーテープ22に射出成形することにより形成されている。各ファスナーエレメント23は、前後方向に隣接する他のファスナーエレメント23と連結されておらず、他のファスナーエレメント23から分離して独立した形状を有する。
各ファスナーエレメント23は、厚さ寸法が一定である部分を備えるエレメント基部23aと、エレメント基部23aから左右方向の外側(言い換えると、ファスナーテープ22のテープ内側)に向けて延びるヒレ部23bとを少なくとも有する。ヒレ部23bは、エレメント基部23aよりも厚さ寸法を小さくして形成されている。ここで、厚さ寸法は、上下方向における寸法を意味しており、エレメント基部23aの厚さ寸法は、エレメント基部23aの上面から下面までの上下方向における寸法である。ヒレ部23bは、下面側の後述する第1ヒレ部24bと、上面側の後述する第2ヒレ部25bとを有する。
各ファスナーエレメント23にヒレ部23bが設けられていることにより、スライダー40をエレメント列26に沿って摺動させるときに、スライダー40の上フランジ部及び下フランジ部を、エレメント基部23a及びヒレ部23b間の段差部よりも左右方向の外側に形成される間隙に収容して挿通させることができる。これにより、スライダー40を摺動させるときに、スライダー40を生地10のストリンガー取付縁部11に引っ掛かり難くすることができるため、スライダー40の摺動操作を円滑に行うことができる。
ファスナーエレメント23の形状について更に詳しく説明すると、各ファスナーエレメント23は、ファスナーテープ22のテープ裏面側に配される第1エレメント部24と、ファスナーテープ22のテープ表面側に配されるとともに、第1エレメント部24とは異なる形状を備える第2エレメント部25とを有する。この場合、ファスナーエレメント23の第1エレメント部24は、スライドファスナー付き衣服1において、衣服の裏側に隠れる部分である。第2エレメント部25は、衣服の外側に露呈する部分である。
第1エレメント部24は、具体的な図示を省略するが、ファスナーテープ22に直接固定される第1胴部と、第1胴部から左右方向の外側に向けて延びる第1ヒレ部24bと、第1胴部から左右方向の内側に向けて延びる首部と、首部から左右方向の内側に向けて更に延びるとともにファスナーエレメント23の底面視で略長円形状を呈する噛合頭部24aとを有する。
第1胴部は、ファスナーエレメント23の底面視(図3)において、略等脚台形の形状を呈する。首部は、噛合相手となる2つのファスナーエレメント23の噛合頭部24aと係合可能なように括れた形状を有する。第1ヒレ部24bは、第1胴部から左右方向の外側に向けて延出しており、また、第1胴部に対して第1段差部24cを介して厚さ寸法を小さくして形成されている。ここで、第1胴部及び第1ヒレ部24bのそれぞれの厚さ寸法は、ファスナーテープ22のテープ裏面から第1胴部の下面又は第1ヒレ部24bの下面までの上下方向における寸法を意味する。
第2エレメント部25は、図2に示すように、ファスナーテープ22に直接固定される第2胴部25aと、第2胴部25aから左右方向の外側に向けて延びる第2ヒレ部25bと、第2胴部25aから左右方向の内側に向けて延びるエレメント頭部25cとを有する。エレメント頭部25cは、テープ長さ方向の寸法がエレメント頭部25cの先端部に向けて2段階で漸減する形状を有する。
第2ヒレ部25bは、第2胴部25aから左右方向の外側に向けて延出しており、また、第2胴部25aに対し、第2段差部25dを介してファスナーテープ22からの高さ寸法を小さくして形成されている。
第2ヒレ部25bにおける幅方向の外側に向く側端面と、生地10のストリンガー取付縁部11とは、互いに接触している。また、ファスナーエレメント23の第2ヒレ部25bと生地10のストリンガー取付縁部11とが接触した状態は、ファスナーテープ22及び第2ストリップ部17間に形成される第1接着層31によって保持されている。
このように生地10のストリンガー取付縁部11(二重部14)が、ファスナーエレメント23の第2ヒレ部25bに接触した状態が第1接着層31によって保持されていることにより、ファスナーテープ22の一部(具体的には、ファスナーテープ22の前後に隣接するファスナーエレメント23間に配されるテープ部分)を除いた部分を、生地10のストリンガー取付縁部11で安定して覆い隠すことができる。このため、ファスナーテープ22が、左右方向におけるファスナーエレメント23とファスナー被着部材10との間の範囲で露呈することを防止できる。
本実施例1のファスナーエレメント23において、第1ヒレ部24bと第2ヒレ部25bとは、ファスナーテープ22を基準にして互いに上下方向に対称的な形状を有する。また、第1ヒレ部24b及び第2ヒレ部25bを有するヒレ部23bは、スライダー40のテープ挿通間隙に挿入可能な厚さで形成されている。ファスナーエレメント23の第1段差部24c及び第2段差部25dは、スライダー40の上フランジ部及び下フランジ部にそれぞれ摺接可能に形成されている。
このような第1ヒレ部24b及び第2ヒレ部25bがファスナーエレメント23に設けられていることにより、生地10のストリンガー取付縁部11が上述したようにファスナーエレメント23の第2ヒレ部25bに接触した状態で保持されていても、スライダー40が左右のエレメント列26に沿って摺動するときに、スライダー40の上フランジ部及び下フランジ部が左右の生地10に接触することを防止又は抑制できる。これにより、スライダー40を、生地10の厚さに関わらず、円滑に摺動操作することができる。
なお本発明では、第1ヒレ部及び第2ヒレ部を設けずにファスナーエレメントが形成されていてもよい。この場合、ファスナーエレメントには、スライダーの上フランジ部及び/又は下フランジ部を挿通させるための凹状の挿通溝部が設けられていることが好ましい。このような挿通溝部がファスナーエレメントに設けられていることによっても、スライダーを円滑に摺動操作することが可能となる。
更に、各ファスナーエレメント23が、上述のような第1エレメント部24及び第2エレメント部25を有することにより、左右のエレメント列26を噛合させた状態において、水を、左右のエレメント列26の上面側から下面側に浸入させ難くすることができる。またこの場合、例えば各ファスナーエレメント23が撥水性を備えることにより、水の浸入をより生じさせ難くすることが可能である。なお本発明において、ファスナーエレメントの形状は特に限定されるものではなく、ファスナーエレメントは、左右のエレメント列を噛合可能な形状を有していればよい。
次に、スライドファスナー20のファスナーストリンガー21を、生地10のストリンガー取付縁部11に取り付けることによって、スライドファスナー付き衣服1を製造する方法について説明する。
なお、以下のミシン及び縫製方法に関する説明において、前後方向は、ミシンの搬送方向であり、縫製対象物であるファスナーストリンガー21及び生地10を送る方向に沿った方向である。この場合、縫製対象物を送る向きを前方とし、その反対側の向きを後方とする。上下方向は、ミシンのミシン針が往復運動する方向に沿った方向である。この場合、ミシン針を縫製対象物に刺し通す向きを下方とし、ミシン針を縫製対象物から引き抜く向きを上方とする。左右方向は、縫製対象物の送り方向に直交するとともにミシン針が往復運動する方向に直交する方向である。
先ず、ミシンを用いて、図5に示すように、ファスナーストリンガー21のファスナーテープ22と、生地10のストリンガー取付縁部11とを縫い合わせる縫製工程(縫製加工)を行う。なお、図5及び図6において、ファスナーストリンガー21及びストリンガー取付縁部11は、上下の向きを反対にして示されている。
本実施例1の縫製工程で用いられるミシンとして、ファスナーストリンガー21とストリンガー取付縁部11とを本縫いにより縫い合わせるミシンが用いられる。なお本発明において、縫製工程で使用するミシンは、特に限定されるものではない。
この縫製工程では、先ず、ミシンの針板部(不図示)に、ファスナーストリンガー21と生地10のストリンガー取付縁部11とを所定の位置関係で載置し、更に、ミシンフット(不図示)を下降させることにより、ファスナーストリンガー21及びストリンガー取付縁部11が、ミシンフットと針板部との間に挟み込まれて保持される。このとき、生地10のストリンガー取付縁部11は、平らな状態に保持されており、また、ストリンガー取付縁部11には、U字状の二重部14がまだ形成されていない。なお縫製工程において、ファスナーストリンガー21とストリンガー取付縁部11の上下方向における位置関係は、特に限定されない。
ファスナーストリンガー21とストリンガー取付縁部11とを所定の位置関係で保持した後、ミシンの搬送機構を用いて、ファスナーストリンガー21及び生地10のストリンガー取付縁部11を間欠的に搬送するとともに、その搬送のタイミング等に対応させてミシン針を上下方向に往復運動させる。これにより、ミシン針がファスナーテープ22とストリンガー取付縁部11とを刺通して本縫いが行われる。この本縫いによって、ミシン糸(上糸及び下糸)で前後方向に沿った直線状の縫製部12が形成されるとともに、その縫製部12でファスナーテープ22とストリンガー取付縁部11とが縫い合わせられる。
このとき、ミシン糸からなる直線状の縫製部12を、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から離れたところに形成する。このため、例えば縫製部をファスナーエレメントに接触させる位置で形成する場合に比べて、ファスナーエレメントを送るための専用の搬送機構を用いる必要がなくなるため、ミシンによる縫製加工を容易に行うことができる。また、縫製工程に要する費用の削減を図ることができる。更に、この縫製加工で形成される縫製部12は、後の工程でストリンガー取付縁部11を折り曲げて二重部14を形成したときに、二重部14の折り曲げ部16から左右方向に離間した位置に配される。
上述した縫製工程を行った後、生地10のストリンガー取付縁部11を折り曲げて二重部14を形成する折り曲げ工程を行う。
この折り曲げ工程では、生地10のストリンガー取付縁部11を、ストリンガー取付縁部11の上述した第1ストリップ部15と第2ストリップ部17とが上下に重なり合うように折り曲げる。このとき、ストリンガー取付縁部11は、二重部14に形成される折り曲げ部16がファスナーエレメント23(特に、ヒレ部23b)に接触するように折り曲げられる。これにより、ファスナーストリンガー21が縫着されており、且つ、図6に示したような二重部14が形成されたストリンガー取付縁部11を備える生地10が作製される。
また、この折り曲げ工程が行われることにより、縫製部12の一部は、二重部14における第1ストリップ部15と第2ストリップ部17との間に挟まれるため、二重部14に包まれた状態で保持される。また、縫製部12の上側には、二重部14の第2ストリップ部17が縫製部12を覆うように配される。このため、縫製部12は、第2ストリップ部17によって隠されて、ストリンガー取付縁部11の上面(外面)側から見えなくなる。
次に、折り曲げ工程によって二重部14が形成されたファスナーストリンガー21付きの生地10に対し、接着剤31a,32aを塗布して第1接着層31及び第2接着層32を形成する接着工程を行う。
この接着工程では、図6に示したように、ファスナーテープ22の上面及び/又は第2ストリップ部17の下面に接着剤31aを塗布することにより、上述した第1接着層31を形成する。この第1接着層31によって、ファスナーテープ22と第2ストリップ部17とが固定される。なお、接着剤31a,32aとしては、ホットメルト型接着剤や反応硬化型接着剤等が使用される。
また、二重部14における第2ストリップ部17の上面及び/又は第1ストリップ部15の下面に接着剤32aを塗布することにより、上述した第2接着層32を形成する。この第2接着層32によって、第2ストリップ部17と第1ストリップ部15とが固定される。この場合、第1接着層31と第2接着層32を形成する順番は特に限定されない。また、本発明において、第2接着層32の形成は省略されてもよい。
上述した縫製工程、折り曲げ工程、及び接着工程を行うことにより、図2~図4に示したようなファスナーストリンガー21がストリンガー取付縁部11に縫着された生地10が作製される。このとき、ファスナーストリンガー21とストリンガー取付縁部11を縫い合わせる縫製部12は、ストリンガー取付縁部11の第1ストリップ部15によって覆い隠されているため、縫製部12を、生地10の外面側から見えなくすることができる。
なお本実施例1では、縫製工程、折り曲げ工程、及び接着工程が上述したように順番に行われる。しかし本発明において、縫製工程、折り曲げ工程、及び接着工程を行う順番は特に限定されるものではなく、例えば折り曲げ工程及び接着工程は、縫製工程の前に行われてもよい。
その後、ファスナーストリンガー21が縫着された生地10を2つ一組で組み合わせるとともに、その一組のファスナーストリンガー21のエレメント列26にスライダー40を取り付けることによって、スライドファスナー付きの生地10が作製される。このスライドファスナー付きの生地10を用いて衣服を形成することにより、スライドファスナー付き衣服1が製造される。
なお、本実施例1では、例えばファスナーストリンガー21が縫着された2つの生地10を用いて衣服を形成した後、その衣服に設けられている2つのエレメント列26にスライダー40を取り付けることによって、スライドファスナー付きの衣服が製造されてもよい。
以上のように製造された本実施例1のスライドファスナー付きの衣服では、ファスナーストリンガー21とストリンガー取付縁部11を縫い合わせる縫製部12が、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から離れて設けられており、且つ、ファスナーテープ22と二重部14(特に、第2ストリップ部17)とが第1接着層31によって相互に接着されている。
このため、本実施例1のスライドファスナー付き衣服1によれば、二重部14がファスナーストリンガー21に対してめくれ上がることを第1接着層31で防止でき、二重部14がファスナーエレメント23に接触している状態(又は接近している状態)を安定して維持できる。その結果、ファスナーテープ22が、ファスナーエレメント23とファスナー被着部材10との間から外部に露呈することを防止できる。
以上のように、本実施例1のスライドファスナー付き衣服1では、ファスナーテープ22の略全体が、生地10のストリンガー取付縁部11によって外面側(上側)から覆われて隠されているため、ファスナーテープ22が露出する部分を小さくできる。これによって、衣服のデザイン性及び外観品質等が、ファスナーテープ22の露出によって損なわれることを防止又は抑制できるため、優れたデザイン性又は高い外観品質を備えた衣服を製造し易くすることができる。
また本実施例1では、上述したように、ファスナーテープ22が露呈する部分を小さくできる。また、ファスナーエレメント23と縫製部12との間に、二重部14の一部(フラップ)による耐水領域が設けられている。このため、例えばファスナーテープ22自体が耐水性を備えていない場合でも、衣服の生地10が少なくとも耐水性を備えていれば、水等の液体を、例えば衣服に設けたスライドファスナー20の部分を介して、衣服の表面側から裏面側へ浸入させ難くすることができる。またこの場合、ファスナーテープ22に耐水性が付与されないため、製造コストの削減、及び、製造工程の簡略化といったメリットを得ることも可能となる。
図7は、本実施例2に係るスライドファスナー付き製品の一部における前後方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
本実施例2のスライドファスナー付き製品2は、前述の実施例1と同様に、衣服である。本実施例2のスライドファスナー付き衣服2は、左右一対のファスナーストリンガー21を有するスライドファスナー20と、左右の各ファスナーストリンガー21が取り付けられる左右のストリンガー取付縁部51を備えるファスナー被着部材(生地)50とを有する。
本実施例2のスライドファスナー付き衣服2は、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と比較した場合、以下の2つの点で相違している。1つ目の相違点としては、本実施例2のスライドファスナー付き衣服2には、前述の実施例1で説明した第1接着層31及び第2接着層32が設けられていないことである。2つ目の相違点としては、本実施例2のスライドファスナー付き衣服2では、生地50の二重部54(特に、折り曲げ部56)が、熱処理(例えば、熱セット処理)によって折り曲げられた形状を保持可能な性質を備えていることである。
なお、本実施例2のスライドファスナー付き衣服2は、上述した2つの相違点以外については、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と実質的に同様に形成されている。例えば、本実施例2で使用されるファスナーストリンガー21は、前述の実施例1で説明したファスナーストリンガー21と実質的に同様に形成されている。
このため、本実施例2に関する説明、また、以下の実施例3及び4に関する説明において、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と実質的に同様に形成されている部分及び部材等については、前述の実施例1の場合と同じ符号を用いて表すことにより、その詳しい説明の記載を省略するものとする。
本実施例2の衣服2に用いられる左右の生地50は、少なくとも耐水性を備えている。左右の各生地50は、生地本体部(不図示)と、生地本体部の端縁部に設けられるストリンガー取付縁部51とを有する。各生地50のストリンガー取付縁部51は、衣服の生地50が上下方向に重ねられてU字状の形状に形成される二重部54を有する。
本実施例2の二重部54は、前後方向に直交する断面視において、生地本体部(不図示)から幅方向の内側に向けて延びる第1ストリップ部55と、第1ストリップ部55から延びながら折り曲げられている折り曲げ部56と、折り曲げ部56から延びて第1ストリップ部55に重なる第2ストリップ部57とを有する。二重部54の第2ストリップ部57には、縫製部12によって、ファスナーストリンガー21が縫い付けられている。二重部54は、ファスナーエレメント23のヒレ部23b(第2ヒレ部25b)に接触した状態で形成されている。
本実施例2の二重部54は、例えばU字状に折り曲げられた形状又はそれに近い形状を有する状態で、熱セット処理等の熱処理が施されることによって、折り曲げ部56の折り曲げられた形状を保持可能な性質を備えている。言い換えると、本実施例2の二重部54は、例えば二重部54に外力が加えられることによってU字状の二重部54が、第1ストリップ部55と第2ストリップ部57とを引き離す方向に開くように変形した後に、その外力が取り除かれたとき、変形する前の形状に復帰可能な性質を備えている。なお本実施例2において、復帰させる「変形する前の形状」には、変形する前と同一の形状と、前記同一の形状に近い形状(略同一の形状)とが含まれる。また、熱処理は、処理対象物を加熱することを含む処理を意味する。
本実施例2の二重部54が上述した性質を備えることにより、二重部54に外力が加えられなければ、二重部54がU字状の形状を保持し易くすることができるため、ファスナーテープ22を、ファスナーエレメント23とファスナー被着部材10との間から外部に露呈させ難くすることができる。また、二重部54に外力が加えられることによって、第2ストリップ部57の一部がファスナーテープ22から一時的に離れたとしても、また、二重部54がファスナーテープ22から離れてめくり上げられたとしても、外力が除去されて二重部54の形状が元のU字状に戻ることができるため、二重部54でファスナーテープ22を再び覆い隠して、ファスナーテープ22を外部に露呈させ難くすることができる。
更に本実施例2では、二重部54の折り曲げ部56に、例えばアイロン加工等のように加熱と押圧とを加えることによって、折り目が形成されていてもよい。このような折り目が折り曲げ部56に形成されることによって、二重部54の折り曲げられた形状(言い換えると、二重部54のU字状の形状)をより安定化させることができる。更に本実施例2では、二重部54の内側に、二重部54の形状を保持し易くするためのフィルム等の部材が取り付けられていてもよい。これによっても、二重部54の折り曲げられた形状をより安定化させることが可能である。
本実施例2において、ストリンガー取付縁部51とファスナーストリンガー21とを縫い合わせる縫製部12は、ミシンを用いた本縫いの縫製加工により、ファスナーテープ22の前後方向に沿って直線的に設けられている。この縫製部12により、ファスナーストリンガー21が、生地50のストリンガー取付縁部51に固定されている。また、縫製部12の一部は、二重部54の第1ストリップ部55と第2ストリップ部57との間に挟まれて配されている。
本実施例2の縫製部12は、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から左右方向の外側(テープ内側)に離れた位置に配されており、また、ストリンガー取付縁部51の折り曲げ部56からも左右方向の外側に離れた位置に配されている。この場合、縫製部12とファスナーエレメント23のヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離D1は、1.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい。このとき、ストリンガー取付縁部51の折り曲げ部56はファスナーエレメント23に接触して配され、左右方向において、二重部54の縫製部12の位置から折り曲げ部56の位置までの間がフラップとしてファスナーテープ22上に形成される。これにより、縫製部12とファスナーエレメント23の間には耐水領域が形成されている。
次に、本実施例2のスライドファスナー付き製品2を製造する方法について簡単に説明する。
先ず、ミシンを用いて、ファスナーストリンガー21のファスナーテープ22と、生地50のストリンガー取付縁部51とを縫い合わせる縫製工程を行う。この縫製工程が終了した後、生地50のストリンガー取付縁部51を折り曲げて二重部54を形成する折り曲げ工程を行う。なお、本実施例2の縫製工程及び折り曲げ工程は、前述の実施例1で説明した縫製工程及び折り曲げ工程と実質的に同様に行われる。
続いて、折り曲げ工程によって二重部54が形成されたストリンガー取付縁部51とファスナーストリンガー21とに対して、ストリンガー取付縁部51の形状を安定化させるための熱処理を施す熱処理工程を行う。
本実施例2の熱処理工程では、ストリンガー取付縁部51の二重部54を、U字状に折り曲げられた状態で加熱する熱処理(熱セット処理)を行う。これによって、二重部54の折り曲げられた形状を安定化させることができるため、例えば二重部54が外力によって変形した後にその外力が取り除かれた場合、二重部54を、変形する前の元の形状に復帰させることが可能となる。
更に本実施例2の熱処理工程では、熱処理として、例えばアイロンを用いて、ストリンガー取付縁部51のU字状に折り曲げられた二重部54を押圧しながら、当該二重部54を加熱するアイロン加工が行われてもよい。このようなアイロン加工を行うことによって、二重部54の折り曲げ部56に、上述した折り目を容易に形成できる。
すなわち、本実施例2では、上述した熱セット処理又はアイロン加工等を含む熱処理工程を行うことにより、生地50のストリンガー取付縁部51に、折り曲げ部56の折り曲げられた形状を保持可能な性質を有する二重部54を安定して形成できる。なお本発明において、折り曲げられた形状を保持可能にするための熱処理工程は、上述した熱セット処理及びアイロン加工に限定されるものではなく、熱処理工程には、加熱を伴うその他の処理及び加工が含まれていてもよい。
上述した縫製工程、折り曲げ工程、及び熱処理工程を行うことにより、図7に示したように、ファスナーストリンガー21がストリンガー取付縁部51に縫着された生地50が作製される。このとき、ファスナーストリンガー21とストリンガー取付縁部51を縫い合わせる縫製部12は、ストリンガー取付縁部51(特に、第1ストリップ部55)によって覆い隠されている。
なお本実施例2では、縫製工程、折り曲げ工程、及び熱処理工程が上述したように順番に行われている。しかし本発明において、縫製工程、折り曲げ工程、及び熱処理工程を行う順番は特に限定されるものではなく、例えば折り曲げ工程及び熱処理工程は、縫製工程の前に行われてもよい。
その後、本実施例2のファスナーストリンガー21が縫着された生地50を用いることによって、前述の実施例1の場合と同様に、スライドファスナー付き衣服2を製造できる。
このように製造された本実施例2のスライドファスナー付き衣服2では、縫製部12が、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から離れて設けられているものの、ストリンガー取付縁部51の二重部54が、熱処理(熱処理工程)を施してその形状を安定化させたことにより、折り曲げ部56の折り曲げられた形状を保持可能に形成されている。
このため、本実施例2のスライドファスナー付きの衣服によれば、ファスナーストリンガー21に対してストリンガー取付縁部51の二重部54をめくれ上がり難くして、二重部54がファスナーエレメント23に接触している状態(又は接近している状態)を維持し易くすることができる。
従って、本実施例2では、ファスナーテープ22がファスナーエレメント23とファスナー被着部材50との間から外部に露呈することを防止又は抑制して、ファスナーテープ22の略全体を、ストリンガー取付縁部51で覆い隠し易くすることができる。このため、衣服のデザイン性及び外観品質等が、ファスナーテープ22の露出によって損なわれることを防止又は抑制できる。
また本実施例2のスライドファスナー付きの衣服では、前述の実施例1の場合と同様に、ファスナーテープ22自体が耐水性を備えていない場合でも、衣服の生地50が少なくとも耐水性を備えていれば、スライドファスナー20を介しての液体の浸入を生じさせ難くすることができる。
図8は、本実施例3に係るスライドファスナー付き製品の一部における前後方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
本実施例3のスライドファスナー付き製品3は、前述の実施例1と同様に、衣服である。本実施例3のスライドファスナー付き衣服3は、左右一対のファスナーストリンガー21を有するスライドファスナー20と、左右の各ファスナーストリンガー21が取り付けられる左右のストリンガー取付縁部71を備えるファスナー被着部材(生地)70とを有する。
本実施例3のスライドファスナー付き衣服3は、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と比較した場合、以下の3つの点で相違している。1つ目の相違点としては、本実施例3のスライドファスナー付き衣服3には、前述の実施例1で説明した第1接着層31及び第2接着層32が設けられていないことである。2つ目の相違点としては、本実施例3のスライドファスナー付き衣服3では、縫製部12とファスナーエレメント23のヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離の設定範囲が、前述の実施例1の場合と異なることである。3つ目の相違点としては、本実施例3のスライドファスナー付き衣服3では、二重部74の厚さ寸法Tが所定の範囲内の大きさに設定されていることである。なお、本実施例3のスライドファスナー付き衣服3は、上述した3つの点以外については、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と実質的に同様に形成されている。
本実施例3で用いられる衣服における左右の生地70は、少なくとも耐水性を備えている。左右の各生地70は、生地本体部(不図示)と、生地本体部の端縁部に設けられるストリンガー取付縁部71とを有する。各生地70のストリンガー取付縁部71は、衣服の生地70が上下方向に重ねられてU字状の形状に形成される二重部74を有する。
本実施例3の二重部74は、前後方向に直交する断面視において、生地本体部(不図示)から幅方向の内側に向けて延びる第1ストリップ部75と、第1ストリップ部75から延びながら折り曲げられている折り曲げ部76と、折り曲げ部76から延びて第1ストリップ部75に重なる第2ストリップ部77とを有する。二重部74の第2ストリップ部77には、縫製部12によって、ファスナーストリンガー21が取り付けられている。また、二重部74は、ファスナーエレメント23のヒレ部23b(第2ヒレ部25b)に接触した状態で形成されている。
本実施例3において、ストリンガー取付縁部71における二重部74の厚さ寸法Tは、0.25mm以上5.0mm以下に設定されている。この場合、二重部74の厚さ寸法Tは、第1ストリップ部75の上面(外面)の位置から、第2ストリップ部77の下面(外面)の位置までの上下方向における寸法である。
二重部74の厚さ寸法Tが0.25mm以上、好ましくは0.55mm以上であることにより、二重部74をよりファスナーエレメント23に近付けて形成し易くすることができるため、二重部74とファスナーエレメント23(特に、ヒレ部23b)との接触状態を維持し易くすることができる。これにより、ファスナーテープ22が、二重部74とファスナーエレメント23との間から露出することを防止又は抑制できる。また、二重部74が外力を受けること等によって、二重部74がファスナーエレメント23から少し離れる場合であっても、二重部74が上述のように上下方向に厚く形成されることにより、ファスナーエレメント23と二重部74との間が二重部74の陰に隠れ易くなるため、ファスナーエレメント23と二重部74との間の隙間からファスナーテープ22を見え難くすることができる。
また、二重部74の厚さ寸法Tが5.0mm以下、好ましくは3.0mm以下であることにより、ストリンガー取付縁部71とファスナーエレメント23との間の段差を小さくし、水滴が付着した際にこの段差に留まることによる止水性能の低下を防止することができる。
また、二重部74の厚さ寸法Tを、ファスナーエレメント23のヒレ部23bと同等の厚みとすることも考えられる。図8において、ヒレ部23bはファスナーエレメント23から左右方向の外側(テープ内側)に向けて厚みが漸減するようなテーパー状に形成されているが、ヒレ部23bと二重部74との間に段差を形成しないために、又は、前記段差を小さくするために、ヒレ部23bのテーパーを無くしてもよく、又はヒレ部23bのテーパー領域を小さく形成しても良い。
本実施例3において、ストリンガー取付縁部71とファスナーストリンガー21とを縫い合わせる縫製部12は、ミシンを用いた本縫いの縫製加工により、ファスナーテープ22の前後方向に沿って直線的に設けられている。この縫製部12により、ファスナーストリンガー21が生地70のストリンガー取付縁部71(第2ストリップ部77)に固定されている。また、縫製部12の一部は、二重部74の第1ストリップ部75と第2ストリップ部77との間に挟まれて配されている。
本実施例3の縫製部12は、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から左右方向の外側(テープ内側)に離れた位置に配されており、また、ストリンガー取付縁部71の折り曲げ部76からも左右方向の外側に離れた位置に配されている。この場合、縫製部12とファスナーエレメント23のヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離D2は、0.5mm以上10.0mm以下であることが好ましい。このとき、ストリンガー取付縁部71の折り曲げ部76はファスナーエレメント23に接触して配され、左右方向において、二重部74の縫製部12の位置から折り曲げ部76の位置までの間がフラップとしてファスナーテープ22上に形成される。これにより、縫製部12とファスナーエレメント23の間には耐水領域が形成されている。
上述した離間距離D2が0.5mm以上、好ましくは0.8mm以上であることにより、ミシンを用いて縫製部12を形成するときに、ミシン針をファスナーエレメント23に接触させ難くして、ファスナーテープ22を生地70のストリンガー取付縁部71に縫い合わせる縫製加工を円滑に安定して行うことができる。
また、上述した離間距離D2が10.0mm以下、好ましくは5.0mm以下であることにより、二重部74がめくり上がることを発生させ難くすることができる。このため、ファスナーエレメント23と二重部74との間からファスナーテープ22を見え難くすることができる。更に、上述した離間距離D2が10.0mm以下であることにより、ファスナーテープ22の幅寸法と、第2ストリップ部77の幅寸法とが大きくなり過ぎることを防ぎ、製造コストの削減を図り易くすることができる。離間距離が10.0mmよりも大きい場合には、折り曲げ部76がファスナーエレメント23に接触するように位置決めして折り曲げることが困難になる場合がある。
以上のような本実施例3のスライドファスナー付き衣服3では、縫製部12が、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から離れて設けられているものの、二重部74の厚さ寸法Tが0.25mm以上であること、及び、縫製部12とファスナーエレメント23との間の離間距離D2を10.0mm以下と狭幅にすることにより、ファスナーストリンガー21に対してストリンガー取付縁部71の二重部74をめくれ上がり難くして、ファスナーエレメント23と二重部74との間からファスナーテープ22を見え難くすることができる。従って、衣服のデザイン性及び外観品質等が、ファスナーテープ22の露出によって損なわれることを防止又は抑制できる。
また本実施例3のスライドファスナー付き衣服3では、前述の実施例1の場合と同様に、ファスナーテープ22自体が耐水性を備えていない場合でも、衣服の生地70が少なくとも耐水性を備えていれば、スライドファスナー20を介しての液体の浸入を生じさせ難くすることができる。
なお、本実施例3のスライドファスナー付きの衣服では、二重部74の厚さ寸法Tが0.25mm以上であるという条件と、縫製部12とファスナーエレメント23のヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離D2が10.0mm以下であるという条件の何れか一方の条件を満足するように形成されていてもよい。このように一方の条件を満足するスライドファスナー付きの衣服であっても、スライドファスナー付きの衣服の外側からファスナーテープを見え難くすることができる。
図9は、本実施例4に係るスライドファスナー付き製品の一部における前後方向に直交する断面を模式的に示す断面図である。
本実施例4のスライドファスナー付き製品4は、前述の実施例1と同様に、衣服である。本実施例4のスライドファスナー付き衣服4は、左右一対のファスナーストリンガー21を有するスライドファスナー20と、左右の各ファスナーストリンガー21が取り付けられる左右のストリンガー取付縁部91を備えるファスナー被着部材(生地)90とを有する。
本実施例4のスライドファスナー付き衣服4は、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と比較した場合、以下の3つの点で相違している。1つ目の相違点としては、本実施例4のスライドファスナー付き衣服4には、前述の実施例1で説明した第1接着層31及び第2接着層32が設けられていないことである。2つ目の相違点としては、折り曲げ部96が左右方向に関して縫製部12の形成位置に近接するとともに、ファスナーエレメント23に近接して配されていることである。3つ目の相違点としては、本実施例4のスライドファスナー付き衣服4では、縫製部12とファスナーエレメント23のヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離の設定範囲が、前述の実施例1の場合と異なることである。なお、本実施例4のスライドファスナー付き衣服4は、上述した3つの点以外については、前述の実施例1で説明したスライドファスナー付き衣服1と実質的に同様に形成されている。
本実施例4で用いられる衣服における左右の生地90は、少なくとも耐水性を備えている。左右の各生地90は、生地本体部(不図示)と、生地本体部の端縁部に設けられるストリンガー取付縁部91とを有する。各生地90のストリンガー取付縁部91は、衣服の生地90が上下方向に重ねられてU字状の形状に形成される二重部94を有する。
本実施例4の二重部94は、前後方向に直交する断面視において、生地本体部(不図示)から幅方向の内側に向けて延びる第1ストリップ部95と、第1ストリップ部95から延びながら折り曲げられている折り曲げ部96と、折り曲げ部96から延びて第1ストリップ部95に重なる第2ストリップ部97とを有する。二重部94の第2ストリップ部97には、縫製部12によって、ファスナーストリンガー21が取り付けられている。また、二重部94は、ファスナーエレメント23のヒレ部23b(第2ヒレ部25b)に近接した状態で形成されている。
本実施例4において、ストリンガー取付縁部91とファスナーストリンガー21とを縫い合わせる縫製部12は、ミシンを用いた本縫いの縫製加工により、ファスナーテープ22の前後方向に沿って直線的に設けられている。この縫製部12により、ファスナーストリンガー21が生地90のストリンガー取付縁部91(第2ストリップ部97)に固定されている。また、縫製部12の一部は、二重部94の第1ストリップ部95と第2ストリップ部97との間に挟まれて配されている。
本実施例4の縫製部12は、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から左右方向の外側(テープ内側)に離れた位置に配されている。また、ストリンガー取付縁部91を、縫製部12を起点にして第1ストリップ部95と第2ストリップ部97とが上下に重なり合うように折り曲げて二重部94を形成することにより、折り曲げ部96は縫製部12に近接した位置に形成される。
この場合、縫製部12とファスナーエレメント23のヒレ部23bとの間の左右方向における離間距離D3は、3.0mm以下であることが好ましい。より好ましくは、離間距離D3は2.0mm以下、1.0mm以下である。また、離間距離D3は0.5mm以上であることが好ましい。言い換えれば、離間距離D3は、ファスナーエレメント23の左右方向の幅(ここでは第1ヒレ部及び第2ヒレ部の幅を除いた幅を指す)の60%以下であることが好ましい。より好ましくは、離間距離D3は、ヒレ部を除くファスナーエレメント23の左右方向の幅の40%以下、20%以下である。また、離間距離D3は、ヒレ部を除くファスナーエレメント23の左右方向の幅の10%以上であることが好ましい。実施例4は、実施例1~3とは異なり、縫製部12の位置から折り曲げ部96の位置までの間にフラップが形成されないものの、離間距離D3を狭幅とする(小さくする)ことにより、縫製部12とファスナーエレメント23の間には耐水領域が形成されている。
上述した離間距離D3が0.5mm以上、またはヒレ部を除くファスナーエレメント23の左右方向の幅の10%以上であることにより、ミシンを用いて縫製部12を形成するときに、ミシン針をファスナーエレメント23に接触させ難くして、ファスナーテープ22を生地70のストリンガー取付縁部71に縫い合わせる縫製加工を円滑に安定して行うことができる。
また、上述した離間距離D3が3.0mm以下、またはヒレ部を除くファスナーエレメント23の左右方向の幅の60%以下であることにより、ファスナーエレメント23と二重部94との間からファスナーテープ22を見え難くすることができる。
以上のような本実施例4のスライドファスナー付き衣服4では、縫製部12が、左右方向に関して、ファスナーエレメント23から離れて設けられているものの、縫製部12とファスナーエレメント23との間の離間距離D3を3.0mm以下と狭幅に設定することにより、ファスナーエレメント23と二重部94との間からファスナーテープ22を見え難くすることができる。従って、衣服のデザイン性及び外観品質等が、ファスナーテープ22の露出によって損なわれることを防止又は抑制できる。
また本実施例4のスライドファスナー付き衣服4では、前述の実施例1の場合と同様に、ファスナーテープ22自体が耐水性を備えていない場合でも、衣服の生地90が少なくとも耐水性を備えていれば、上述した耐水領域により、スライドファスナー20を介しての液体の浸入を生じさせ難くすることができる。
なお、実施例1~実施例4の各実施例について、次に説明するレインテストによって、縫製部12とのファスナーエレメント23の間に耐水領域が形成されていることを確認した。レインテストは、AATCC35準用のレイン条件(24in、2min)にて実施した。なお、ファスナーエレメント23の隙間からの漏水の影響を除外するため、ファスナーエレメント23の前面に漏水防止のテープを張り付けて試験を行った。レインテストの結果、実施例1~実施例4の各耐水領域における透水量が0.1g未満であることを確認した。
なお、本発明は、以上に説明した実施例1~実施例4に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば実施例1~実施例4では、ファスナーエレメント23が、前述したように、合成樹脂の射出成形によって、それぞれが独立した形状でファスナーテープ22に設けられることによってスライドファスナー20及びファスナーストリンガー21が形成されている。しかし、本発明では、合成樹脂製のファスナーエレメント23の代わりに、それぞれが独立した形状で形成される複数の金属製のファスナーエレメントをファスナーテープに設けることによって、スライドファスナー及びファスナーストリンガーを形成することも可能である。
また、実施例1~実施例4では、スライドファスナー付き衣服が少なくとも耐水性を有する場合について説明しているが、本発明では、スライドファスナー付き衣服が耐水性を備えていなくてもよい。更に本実施例では、スライドファスナーが取り付けられる製品の代表例として衣服を説明しているが、本発明において、スライドファスナー付き製品は、衣服に限定されない。本発明のスライドファスナー付き製品には、衣服以外の衣料品、靴類や鞄類などの日用雑貨製品、産業用資材などの製品、自動車、列車、航空機等に用いられる各種シート製品などの様々な製品が含まれる。