JP7765498B2 - ゲル状添加剤を添加したフィルター、該フィルターを備える香味吸引物品、及び香味吸引物品パッケージ - Google Patents

ゲル状添加剤を添加したフィルター、該フィルターを備える香味吸引物品、及び香味吸引物品パッケージ

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Description

本発明は、ゲル状添加剤を添加したフィルター、該フィルターを備える香味吸引物品、及び香味吸引物品パッケージに関する。
フィルター付シガレット等の喫煙物品には、従来フィルター濾材としてアセテート繊維が多く用いられてきた。近年、環境負荷を低減する観点から、各種製品において分解性を有する素材を濾材として使用することが推進されており、喫煙物品においてもペーパーフィルター等の生分解性の素材を濾材に用いることが検討されている。しかしながら、ペーパーフィルターはアセテート繊維を用いたフィルターに比べてフェノール類等の刺激成分の濾過性能が低く、味が辛くなりやすい。そこで、ペーパーフィルターにフェノール等の刺激成分を濾過する機能を付与し、香味を改善することが試みられている。
例えば、特許文献1には、フェノールを低減させるためにトリアセチンを添加したフィルターが開示されている。一方、液体を添加したフィルターは、蔵置時に液体が漏出しやすいため、特許文献1ではセルロースアセテートを添加することで漏出を低減することが行われている。
特許文献2には、粉糖、結晶セルロース等の顆粒基材の中に油脂を包含した粉状物を、ポリオールを介して凝集した顆粒状の吸着剤を用いることで、喫煙物品用フィルター濾材への油染みを低減できることが報告されている。
特許文献3には、フェノール等の半揮発性化合物を除去するために、ポリエチレングリコール、高分子メトキシポリエチレングリコール等の室温で固体の添加剤をフィルターに添加する技術が開示されている。
特許文献4には、フィルターに滴点50℃以上のフェノール捕捉剤をフィルターに添加することで、香味を改善したり、フィルターからの液体の漏出を低減したりする技術が報告されている。
国際公開第2019/149742号 国際公開第2018/008608号 特表2013-526272号公報 国際公開第2021/001961号
しかしながら、特許文献1の技術では、蔵置中の液体の漏出を十分に防ぐことができず、液体がフィルターから巻紙やチップペーパーに漏出する場合がある。
また、特許文献2では、顆粒状の添加剤を使用することにより、液体の漏出を抑制できるものの、香味吸引物品に使用した際にユーザに与える香味に関しては、改善の余地がある。
特許文献3では、固体の添加剤をフィルター材に添加後に加熱溶融させるため、均一な添加が難しく、また、巻き上げ後に加熱するため操作性に劣る。
特許文献4では、半固体の添加剤を使用しているものの、フィルターへの添加は、加熱により当該添加剤を融解した状態又は流動性を持たせた状態で行われる。そのため、フィルターに添加されてから固化するまでの間に添加剤が巻取紙に染み出す場合があり、この問題を解消することが望ましい。また、香味は、実用化に耐えうるものの、改善の余地がある。
したがって、液体漏出の抑制効果及び香味改善効果の両立及びさらなる改善が求められている。
本発明の課題は、フェノールを十分濾過して香味を改善することができ、かつ、蔵置中に液体の漏出が生じにくい香味吸引物品用フィルターを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、フェノール濾過能を有する添加剤としてゲル状の添加剤を用いることにより、フェノールを十分濾過して香味を改善することができ、また、蔵置後においても添加剤に起因する液体の漏出を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
〔1〕
香味吸引物品用のフィルターであって、
生分解性を有する素材を含む濾材と、前記濾材を巻装する巻取紙とを有し、
前記濾材が、フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含有する、フィルター。
〔2〕
前記フェノール濾過能を有するゲル状添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ジグリセリン、カプリリルグリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、リン脂質、ヒドロキシ脂肪酸、及びハイエルシン菜種極度硬化油からなる群より選択される2種以上の化合物を含有し、
前記2種以上の化合物うち1種以上が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ジグリセリン、カプリリルグリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、及びリン脂質からなる群より選択されるフェノール濾過能を有する成分である、〔1〕に記載のフィルター。
〔3〕
前記ポリプロピレングリコールの重量平均分子量が2,000以上4,000以下であり、前記ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの重量平均分子量が3,000以上4,000以下である、〔2〕に記載のフィルター。
〔4〕
前記フェノール濾過能を有する成分が、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸、及び脂肪酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上である、〔2〕に記載のフィルター。
〔5〕
前記巻取紙は、前記濾材と接する領域に撥液層を備える、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のフィルター。
〔6〕
前記フェノール濾過能を有する成分の前記撥液層に対する広がり面積が、35mm以下である、〔5〕に記載のフィルター。
〔7〕
前記巻取紙は、さらに基材を備え、
前記撥液層が、前記基材の表面上に配置されている、〔5〕又は〔6〕に記載のフィルター。
〔8〕
前記撥液層が、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィン、シリコーン、セルロースナノファイバー、エチルセルロース、アラビアガム、及びニトロセルロースからなる群より選択される1種以上を含有する、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載のフィルター。
〔9〕
前記撥液層が、エチルセルロース、アクリル樹脂、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、及びシリコーンからなる群より選択される1種以上を含む、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載のフィルター。
〔10〕
前記撥液層が、撥液紙である、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載のフィルター。
〔11〕
下記式(i)で表されるフェノール濾過能が、0.83以下である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のフィルター。
フェノール濾過能=DPR1/DPR0 (i)
DPR1:前記フィルターを用いて喫煙試験を行った場合の、該フィルターを通過するたばこ煙中のフェノール量を、該フィルターを通過するたばこ煙中粒状物質の量で除した値。
DPR0:前記フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含まない以外は前記フィルターと同構成の基準フィルターを用いて喫煙試験を行った場合の、該基準フィルターを通過するたばこ煙中のフェノール量を、該基準フィルターを通過するたばこ煙中粒状物質の量で除した値。
〔12〕
巻紙で巻装されたたばこロッドと、
〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のフィルターと、
前記たばこロッドと前記フィルターとを接続するチップペーパーと、
を備える香味吸引物品。
〔13〕
前記巻紙及び前記チップペーパーの少なくとも一方は、着色部を有する、〔12〕に記載の香味吸引物品。
〔14〕
香味吸引物品が内包紙により内包された香味吸引物品パッケージであって、
前記香味吸引物品が、〔12〕又は〔13〕に記載の香味吸引物品であり、
前記香味吸引物品が、前記内包紙により直接包装されており、
少なくとも前記内包紙の前記フィルターと接する領域に、撥液層が設けられている、香味吸引物品パッケージ。
〔15〕
前記内包紙に設けられた前記撥液層が、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィン、シリコーン、セルロースナノファイバー、エチルセルロース、アラビアガム、及びニトロセルロースからなる群より選択される1種以上を含有する、〔14〕に記載の香味吸引物品パッケージ。
〔16〕
前記内包紙に設けられた前記撥液層が、エチルセルロース、アクリル樹脂、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、及びシリコーンからなる群より選択される1種以上を含む、〔14〕に記載の香味吸引物品パッケージ。
〔17〕
前記内包紙に設けられた前記撥液層が、撥液紙である、〔14〕に記載の香味吸引物品パッケージ。
本発明によれば、フェノールを十分濾過して香味を改善することができ、かつ、蔵置中に液体の漏出が生じにくい香味吸引物品用フィルターを提供することができる。
本発明の第2の実施形態に係る香味吸引物品の第1の構成例を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態に係る香味吸引物品の第2の構成例を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態に係る香味吸引物品の第3の構成例を示す概略図である。 各試験素材に対するポリプロピレングリコールグリセリルエーテル(PPG-GE)の広がり面積を示すグラフである。 各試験素材に対するジグリセリンの広がり面積を示すグラフである。 実施例で作製したシガレットサンプルにおけるフェノール濾過能を示すグラフである。 実施例で作製したシガレットサンプルのフェノール濾過能と香味の官能評価のスコアとの関係を示すグラフである。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、数値範囲の下限値及び上限値を分けて記載する場合、当該数値範囲は、それらのうち任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせたものとすることができる。
1.フィルター
本発明の第1の実施形態は、香味吸引物品用のフィルターであって、生分解性を有する素材を含む濾材と前記濾材を巻装する巻取紙とを有し、前記濾材がフェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含有する。
1-1.フィルターの形態及び形状
フィルターの形態は、特に限定されず、単一のフィルターセグメントを含むプレーンフィルターや、デュアルフィルター又はトリプルフィルター等の複数のフィルターセグメントを含むマルチセグメントフィルター等とすることができる。本実施形態に係るフィルターがマルチセグメントフィルターである場合は、少なくとも1つのフィルターセグメントが、ゲル状添加剤が添加された濾材を有していればよい。
本実施形態に係るフィルターによれば、単一のフィルターセグメントからなるフィルターであっても、十分に香味を改善し、液体の漏出を抑制することが可能である。
フィルターの形状は、特に限定されず、公知の形状を採用することができ、通常は円柱状の形状とすることができ、以下の態様とすることができる。
また、フィルターは、周方向の断面が中空(空洞)となるキャビティやリセス等のセクションを設けていてもよい。
フィルターの長軸に直交する方向の断面形状は実質的に円形であり、その円の直径は、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常4.0mm以上、好ましくは4.5mm以上、より好ましくは5.0mm以上、また、通常9.0mm以下、好ましくは8.5mm以下、より好ましくは8.0mm以下である。なお、断面が円形でない場合、上記の直径は、その断面の面積と同じ面積を有する円で仮定し、その円における直径が適用される。
フィルターの長軸に直交する方向の断面の周の長さは、使用する製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、通常14.0mm以上、好ましくは15.0mm以上、より好ましくは16.0mm以上、また、通常27.0mm以下、好ましくは26.0mm以下、より好ましくは25.0mm以下である。
フィルターの長軸方向の長さは、製品のサイズに合わせて適宜変更し得るが、5mm以上、10mm以上、15mm以上、17.5mm以上、又は20.0mm以上であってよく、また、40mm以下、35mm以下、32.5mm以下、又は30.0mm以下であってよい。
フィルターの軸方向の120mmあたりの通気抵抗は、特に限定されないが、通常100mmHO以上、好ましくは150mmHO以上、より好ましくは200mmHO以上、また、通常800mmHO以下、好ましくは700mmHO以下、より好ましくは600mmHO以下である。
フィルターの通気抵抗は、ISO標準法(ISO6565)に従って、例えばセルリアン社製フィルター通気抵抗測定器を使用して測定される。フィルター通気抵抗は、フィルターの側面における空気の透過が行なわれない状態で一方の端面(第1端面)から他方の端面(第2端面)に所定の空気流量(17.5mL/s)の空気を流した際の、第1端面と第2端面との気圧差を指す。単位は、一般的にはmmHOで表す。なお、フィルター通気抵抗とフィルター長さとの関係は、通常実施する長さ範囲(長さ5mm~200mm)においては比例関係であることが知られており、長さが倍になれば、フィルターの通気抵抗は倍になる。
1-2.濾材
本実施形態に係るフィルターは、生分解性を有する素材を含む濾材を有する。生分解性を有する素材は、微生物により分解されるため、環境負荷が少ない。生分解性を有する素材としては、セルロース、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ乳酸/ポリカプロラクトン共重合体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリエーテル共重合体、ブタンジオール/長鎖ジカルボン酸共重合体、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリビニルアルコール等が挙げられ、特にセルロースが好ましい。セルロースを含む濾材を用いたフィルターはペーパーフィルターとも称される。
セルロースを含む濾材は、典型的には木材パルプから構成される紙である。木材パルプの種類は、特に限定されず、針葉樹や広葉樹等の木材のパルプを用いることができる。また、フィルターに用いられる紙の種類は、特に限定されず、ギャザー紙、プリーツ紙、クリンプ紙、クレープ紙、不織布、さらに細断紙等を用いることができる。また、紙の製法は、湿式、乾式のどちらでもよく、任意に選択して使用することができる。
なお、ペーパーフィルターは、セルロースアセテートトウ等の合成繊維のトウよりも容易に生分解するという特徴を有する。
濾材の形態は、特に限定されず、繊維状の濾材を集結させた形態やシート状の濾材を集結させた形態が挙げられるが、特にペーパーフィルターにおいては、例えば、複数の谷と陵を有する波形状の構造を有する紙を集結させた形態が挙げられる。波形状の構造を有する紙を用いる場合、谷(又は陵)の長さ方向の向きをフィルターロッドの長軸方向と並行となるように配置させる。
ペーパーフィルターを構成する濾材の紙として、上記の波形状の構造を有する紙を用いる場合、上記のペーパーフィルターの波形の谷から谷まで、又は陵から陵までの平均距離は、特に限定されないが、通常0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、また、通常5.0mm以下、好ましくは4.0mm以下である。
また、上記のペーパーフィルターの波形の谷の平均深さは、特に限定されないが、通常0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、また、通常1.2mm以下、好ましくは1.0mm以下である。
波形状の構造を有する紙は、波形を有しない平坦な原料シートに山部と谷部とを形成するクレープ処理を施すことにより作製することができる。
原料シートの厚さは、特に限定されないが、通常20μm以上、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常140μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは120μm以下である。
原料シートの坪量は、特に限定されないが、通常20gsm以上、好ましくは25gsm以上、また、通常120gsm以下、好ましくは80gsm以下、より好ましくは45gsm以下である。
なお、坪量は、前記のパルプの含有量と填料の含有量を調整したり、前記湿式抄紙機の処理条件を調整したりすることで調整可能である。
原料シートの幅は、特に限定されないが、通常50mm以上、好ましくは100mm以上、より好ましくは170mm以上であり、また、300mm以下、好ましくは250mm以下、より好ましくは230mm以下である。なお、原料シートの幅とは、波形状の構造を有する紙において山部と谷部とが連続的に配列する長軸方向に対して垂直な方向の長さであり、換言すると、波形状の構造を有する紙を加工して得られるフィルター濾材の長軸方向に相当する方向に対して垂直な方向の長さである。
1-3.フェノール濾過能を有するゲル状添加剤
本実施形態における濾材は、フェノール濾過能を有するゲル状添加剤(以下、単に「ゲル状添加剤」と称することがある。)を含有する。ゲル状添加剤を濾材に添加することにより、フェノール濾過能を有する添加剤が液状である場合よりも良好に液体の漏出を抑制することができる。また、濾材がこのゲル状添加剤を含有することにより、フィルターを通過する煙、エアロゾル等からフェノールが除去され、香味を改善できる。
本明細書において、「ゲル状」とは、三次元網目構造の形成によって高い粘性を持ち、流動性を失うことで、系全体としては固体状の性質を示す状態をいう。成分間に分子間相互作用が働くため、各成分が流動性を失った状態を保持することができる。
ゲル状添加剤は、フェノール濾過能を有し、ゲル状のものであれば特に限定されないが、下記(I)及び(II)を満たすものであることが好ましい。
(I):ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ジグリセリン、カプリリルグリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、リン脂質、ヒドロキシ脂肪酸、及びハイエルシン菜種極度硬化油からなる群より選択される2種以上の化合物(以下、「成分(A)」ともいう。)を含有する。
(II):成分(A)のうち1種以上が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ジグリセリン、カプリリルグリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、及びリン脂質からなる群より選択されるフェノール濾過能を有する成分である。
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば500以上であってよく、100,000以下であってよい。ポリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの重量平均分子量は、後述するインク落ちを抑制できる点で、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることがさらに好ましく、また、10,000以下であることが好ましく、7,000以下であることがより好ましく、4,000以下であることがさらに好ましい。
ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸部分としては、例えば後述する脂肪酸と同様のものが挙げられ、飽和脂肪酸であることが好ましい。飽和脂肪酸エステルは、ビタミンE等の酸化防止剤を添加しなくても経時的な分解による異臭が発生しにくく、品質及び香味に悪影響を及ぼすリスクが不飽和脂肪酸エステルよりも低いためである。このような飽和脂肪酸エステルとしては、トリアセチン、グリセリンベヘン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステルが好ましく例示される。
なお、1分子あたりの脂肪酸エステル結合の数は、特に限定されず、1分子中水酸基を2つ以上残すような数であってよく、水酸基を1つ残すような数であってよく、水酸基全てが脂肪酸エステル化するような数であってもよい。
脂肪酸は、直鎖脂肪酸及び分岐脂肪酸のいずれであってもよく、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。脂肪酸の炭素数は、特に限定されず、通常2以上、好ましくは8以上、より好ましくは12以上であり、また、通常30以下、好ましくは26以下、より好ましくは22以下である。
具体的な脂肪酸としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデセン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられる。
脂肪酸アルキルエステルの脂肪酸部分としては、例えば前述の脂肪酸と同様のものが挙げられ、上述した理由から、飽和脂肪酸であることが好ましい。脂肪酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上であり、また、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
ヒドロキシ脂肪酸は、上述の脂肪酸の脂肪族炭化水素基の炭素にヒドロキシ基に置換したものが挙げられる。ヒドロキシ基の置換位置及び数は特に限定されるものではない。好適なヒドロキシ脂肪酸としては、ステアリン酸の12位の炭素にヒドロキシ基が置換した12-ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
リン脂質は、高いフェノール濾過能が得られる点で、1分子中にエステル結合及び/又はエーテル結合を1つ以上有するものであることが好ましく、2つ以上有するものであることがより好ましい。リン脂質における当該結合の数の上限は、特に限定されないが、通常10以下であり、8以下、6以下、又は4以下であってもよい。
具体的なリン脂質としては、レシチン、特に大豆レシチン、卵レシチン等が挙げられる。
フェノール濾過能を有する成分は、上記の中でも高いフェノール濾過能を示すことから、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸、及び脂肪酸アルキルエステルからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
また、本実施形態の好適な一態様において、フェノール濾過能を有する成分それ自体は、大気圧及び25℃の条件下で液体である(以下、大気圧及び25℃の条件下において液体であるフェノール濾過能を有する成分を「フェノール濾過能を有する液体」と称することがある。)。
2種以上の成分(A)のうち、少なくとも1種はフェノール濾過能を有する成分であり、全成分がフェノール濾過能を有する成分であってもよい。
本実施形態においては、2種以上の成分(A)のうち、1種以上がゲル化剤として作用し、他の成分(A)をゲル化する化合物であることが好ましい。すなわち、2種以上の成分(A)は、親和性が高く、水素結合、ファンデルワールス力、静電相互作用、π-π相互作用等の分子間相互作用を生じるものであることが好ましい。かかる分子間相互作用に起因して分子が会合して三次元網目構造が形成され、ゲル化が生じることで、液体の漏出を抑制することが可能となる。このような成分(A)の組み合わせとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルのようなオキシアルキレン系ポリマーと、ステアリン酸、ミリスチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ハイエルシン菜種極度硬化油などといった加熱により融解する成分(例えば、融点50℃~100℃程度のもの)の組み合わせが挙げられる。また、グリセリンベヘン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンオクタステアリン酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルといった増粘剤又はゲル化剤として使用される成分を、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸エステル等のオイルと組み合わせて用いることも好ましい。
上に例示したフェノール濾過能を有する成分は、フェノール濾過能が高いだけでなく、香味を阻害したり悪化させたりする特定の成分、例えばo-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のフェノール以外のフェノール類;ピリジン類;ピラジン類;キノリン;スチレン等を除去することもできる。したがって、香味をさらに改善し得る点でも好適である。
本実施形態においては、フェノールを除去するための添加剤として、フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を用いることにより、濾材からの液体の漏出を低減することが可能となるが、蔵置中にゲル状添加剤の三次元網目構造から液体がわずかに漏出する場合がある。この場合でも、ゲル状添加剤から漏出する液体は少量であるため、フェノール濾過能を有する添加剤が液状である場合と比べて濾材から液体が漏出するリスクは低い。しかしながら、「1-5.巻取紙」で詳述するように、濾材を巻装する巻取紙の濾材と接する領域に撥液層を設けることにより、蔵置中にゲル状添加剤が漏出した場合であっても、濾材からの液体の漏出をより効果的に防止することが可能となる。このとき、ゲル状添加剤から漏出する液体は主にフェノール濾過能を有する成分のうち液体のもの(フェノール濾過能を有する液体)であるため、フェノール濾過能を有する成分が液体である場合、フェノール濾過能を有する成分と撥液層との組み合わせは、フェノール濾過能を有する成分の撥液層に対する広がり面積(以下、単に「広がり面積」と称することがある。)が、35mm以下となるものであることが好ましい。また、広がり面積の下限は特に限定されず、通常5mm以上であり、10mm以上であってもよい。広がり面積が上記範囲内であると、フェノール濾過能を有する成分が液体であっても、当該液体が巻取紙の表面を伝って拡散して巻取紙の端から漏出することを抑制することができる。
フェノール濾過能を有する成分の撥液層に対する広がり面積は、以下の方法で測定される。まず、フェノール濾過能を有する成分10mgをマイクロシリンジで撥液層に滴下し、温度22℃、湿度60%RHの室内で30分間静置する。その後、例えばキーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX-100」を用い、撥液層上に広がったフェノール濾過能を有する成分の顕微鏡観察を行う。顕微鏡観察により得られた画像からフェノール濾過能を有する成分の外周をマニュアルで識別し、識別された外周に囲まれた領域の面積を広がり面積として算出する。
成分(A)中のフェノール濾過能を有する成分の総含有率は、特に限定されないが、通常2重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは65重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは85重量%以上であり、また、通常100重量%以下、より好ましくは98重量%以下、さらに好ましくは95重量%以下である。
濾材及び巻取紙を含むフィルター全体に対するゲル状添加剤の総含有量は、好ましくは1mg以上、より好ましくは5mg以上、さらに好ましくは10mg以上であり、また、好ましくは250mg以下、より好ましくは50mg以下、さらに好ましくは30mg以下である。ゲル状添加剤の含有量を上記範囲内とすることで、煙、エアロゾル等に含まれる特定成分を十分除去し、香味を改善することができる。また、ゲル状添加剤の含有量が上記範囲内であれば、フィルターの通気抵抗が著しく変化する、フィルターの製造適性が著しく低下する、フィルターに圧力がかかった場合にフィルター外に液体が漏出する等の問題を回避することができる。
ゲル状添加剤は、増粘剤、香料、着色料等の公知の添加剤を含有していてもよい。また、ゲル状添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、水等の不純物を含んでいてもよい。公知の添加剤の中でも、増粘剤は、ゲル状添加剤に起因する液体の漏出を防止し、外観を良好に保つ効果を高めることができる点で好ましい。
増粘剤としては、ゲル状添加剤中に保持し得るものであれば特に限定されず、例えばキサンタンガム、ゲランガム、サイリウムシードガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、アガロース、プルラン、アルギン酸、ポリアクリル酸、ウレタン化合物、及びこれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。増粘剤は、これらのうち、カルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
濾材中の増粘剤の含有量は、その種類によっても異なるが、例えば0.5mg/filter以上200mg/filter以下である。また、例えば増粘剤がカルボキシメチルセルロースである場合には、フィルター1本あたりの量として、10mg/filter以上150mg/filter以下の態様が挙げられる。
1-4.その他の添加剤
濾材は、生分解性を有する素材及びゲル状添加剤に加え、活性炭、ゼラチン等の破砕可能な外殻を含む破砕可能な添加剤放出容器(当該技術分野では「カプセル」とも呼ばれる。)を含んでいてもよい。カプセルは、香味吸引物品のユーザにより使用前、使用中、又は使用後に破壊されると、カプセルに含まれる添加剤を放出し、次に、該添加剤は、香味吸引物品を使用する間は香味吸引物品を通過する気流に一部又は全部が移行され、使用後においては濾材へ移行される。
カプセルの形態は、特に限定されず、例えば、易破壊性のカプセルであってよく、その形状は球であることが好ましい。カプセルに含まれる添加剤は特に限定されないが、香料や活性炭を含むことが好ましい。添加剤の形態は、特に限定されず、通常液体又は固体であるが、上記ゲル状添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤を含むカプセルの使用は、当技術分野において周知である。易破壊性のカプセル及びその製造方法は、本技術分野において周知である。また、香料や活性炭は公知の物を用いることができる。
1-5.巻取紙
本実施形態のフィルターは、濾材を巻装する巻取紙を有する。フィルターがマルチセグメントフィルターである場合、巻取紙は、これらの2以上のセグメントを併せて巻装することが好ましい。一方、2以上のセグメントを個別に巻取紙で巻装する場合は、成形紙によって複数のフィルターセグメントを固定してもよい。成形紙の材料、厚さ、秤量等は、特に限定されず、巻取紙と同様の紙を採用することができる。
巻取紙の態様は、特に限定されず、一列以上の接着剤を含む継ぎ目を含んでいてよい。該接着剤は、ホットメルト接着剤を含んでいてよい。また、該接着剤は、ポリビニルアルコールを含み得る。
巻取紙の材料は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、巻取紙は、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。
巻取紙の厚さは、特に限定されず、通常20μm以上、好ましくは30μm以上、また、通常140μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは120μm以下である。
巻取紙の坪量は、特に限定されず、通常20gsm以上、好ましくは22gsm以上、より好ましくは23gsm以上、また、通常100gsm以下、好ましくは95gsm以下、より好ましくは90gsm以下である。
本実施形態における巻取紙は、濾材と接する領域に撥液層を備えることが好ましい。撥液層は、ゲル状添加剤由来の液体、特にはフェノール濾過能を有する成分のうち液体のもの(フェノール濾過能を有する液体)に対して撥液性を有する層である。このように、巻取紙の特定の位置に撥液層を設けることにより、蔵置中にゲル状添加剤から漏出した液体が巻取紙の表面を伝って拡散することを抑制できるため、巻取紙の端からの液体の漏出を抑制することができる。
巻取紙は、撥液層のみからなるものであってもよく、基材及び基材の表面上に配置された撥液層を有するものであってもよい。巻取紙が基材及び基材の表面上に配置された撥液層を有する場合、巻取紙は、後述するように、撥液層を形成する材料を含むコート剤を、塗布、蒸着等の手段により基材表面に積層したものであってもよい。基材としては、特に限定されず、巻取紙に用いられる公知の紙、ポリマー繊維等により構成される不織布、後述する撥液紙等が挙げられる。
撥液層を形成する材料としては、ポリマー、金属、無機酸化物等から適宜選択して用いることができる。
撥液層を形成する材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ポリマーとしては、デンプン、セルロース、アセチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、アラビアガム等の多糖類;パラフィン;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニル;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;天然ゴム;ポリブタジエン等の合成ゴム;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン;天然樹脂;アルキド樹脂;ウレタン化合物;これらのコポリマー;等が挙げられる。多糖類のうち、セルロース、アセチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース類は、高い撥液性を発揮する点で、ナノファイバーの形態で用いることが好ましい。
フッ素樹脂としては、例えば上述したポリマーのうち、ポリスチレン、ポリビニル、アクリル樹脂、シリコーン等の主鎖又は側鎖であるアルケニル基又はアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したもの;パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基を有するもの;等が挙げられる。これらのうち、フッ素樹脂は、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基を有するものであることが好ましく、パーフルオロアルキレン基を有するものであることがより好ましく、ポリテトラフルオロエチレンであることがさらに好ましい。
撥液層を形成する材料は、上述したもののうち、エチルセルロース、アクリル樹脂、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、及びシリコーンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
金属としては、アルミニウム等を挙げることができる。
無機酸化物としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
撥液層を形成する材料は、ゲル状添加剤の種類に応じて、上記の材料のうち、当該ゲル状添加剤から漏出する液体、特にはフェノール濾過能を有する液体に対して適度な撥液性を示す材料を適宜選択して用いることができる。
例えば、撥液層を形成する材料としてデンプン及び/又はアルミニウムを用いる場合、ゲル状添加剤に含まれるフェノール濾過能を有する液体は、ジグリセリン、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のうち、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルよりも表面張力の大きい化合物であることが好ましい。表面張力が大きいフェノール濾過能を有する液体は、巻取紙の表面上で濡れ広がりにくい傾向があり、濾材から液体が漏出することを抑制できるためである。
撥液層に対するフェノール濾過能を有する液体の表面張力は、ペンダントドロップ法(ds/de法)により測定される。具体的には、鉛直下向きの細管の先端からフェノール濾過能を有する液体を押し出し、そのフェノール濾過能を有する液体が形成する液滴(懸滴)の形状から表面張力を算出する。算出には、懸滴の最大径(赤道面直径)de、及び懸滴最下面からdeだけ上昇した位置における懸滴径dsを用いる。
また、撥液層を形成する材料としてデンプン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィン、シリコーン、セルロースナノファイバー、エチルセルロース、アラビアガム、及びニトロセルロースからなる群より選択される1種以上を用いる場合、ゲル状添加剤に含まれるフェノール濾過能を有する液体は、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリブチレングリコール、ジグリセリン、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、カプリリルグリコール等のうち、撥液層に対する広がり面積が35mm以下である化合物であることが好ましい。
或いは、本実施形態においては、撥液層が撥液紙である態様も好ましい。撥液紙とは、原料の叩解度を上げたり、カレンダ処理を行ったりすることで表面平滑性や緻密性を制御して耐液性を向上させた紙を意味する。撥液紙としては、グラシン紙等が挙げられる。
撥液層は、製造適性の観点から、全域にわたって厚さが均一な層であることが好ましいが、厚さの異なる2以上の領域を含む層であってもよい。撥液層の平均厚さは、特に限定されず、基材の種類、撥液層の種類等によって適宜設定することができる。
撥液層の平均厚さとしては、5μm以上30μm以下を挙げることができる。また、基材の表面上に撥液層を設ける場合は、基材の厚さに対する撥液層の厚さの比が、0.01以上1.0以下程度であるものを用いることができる。
また、撥液層を形成する材料を含むコート剤の塗布、蒸着等により撥液層を形成する場合は、撥液層が上記厚さとなるようコート剤の塗布量を適宜調整すればよい。撥液性や製造適性に問題がない限りは、製造費用の観点からより少量の塗布が好ましい。ただし、未塗布の領域が存在すると、そこから液体が漏出する虞があるため、基材の表面全域にわたって撥液層を形成することが好ましい。
また、複数のフィルターセグメントを成形紙で固定する場合、成形紙の材料、厚さ、秤量等は、特に限定されず、上記の巻取紙と同様のものを挙げることができる。成形紙の少なくとも一部に、上記撥液層が設けられていてもよい。
1-6.フェノール濾過能
本実施形態のフィルターは、フェノールを十分除去することができる。そのフェノール除去性能は、下記式(i)で表されるフェノール濾過能により評価することができる。
フェノール濾過能=DPR1/DPR0 (i)
DPR1:前記フィルターを用いて喫煙試験を行った場合の、該フィルターを通過するたばこ煙中のフェノール量を、該フィルターを通過するたばこ煙中粒状物質の量で除した値。
DPR0:前記フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含まない以外は前記フィルターと同構成の基準フィルターを用いて喫煙試験を行った場合の、該基準フィルターを通過するたばこ煙中のフェノール量を、該基準フィルターを通過するたばこ煙中粒状物質の量で除した値。
本実施形態のフィルターのフェノール濾過能は、値が小さい程が香味吸引物品に使用した際に香味を良好にすることができるため、好ましくは0.83以下であり、より好ましくは0.70以下であり、さらに好ましくは0.60以下であり、特に好ましくは0.50以下である。本実施形態のフィルターのフェノール濾過能の下限は、特に限定されず、通常0以上であり、0.10以上、0.20以上、0.30以上、又は0.40以上であってもよい。
なお、式(i)で表されるフェノール濾過能は、下記ステップ(1)~(8)により算出される。
(1)本実施形態に係るフィルター(評価対象フィルター)とたばこロッドとをチップペーパーにより連結し、シガレットサンプルを準備する。
(2)自動喫煙機(例えば、Cerulean社製SM410)によりシガレットサンプルの自動喫煙を行い、たばこ煙中粒状物質(TPM)をガラス繊維フィルター(例えば、ケンブリッジフィルタ「Borgwaldt 44mmφ」)で捕集する。なお、自動喫煙の条件としては、例えば吸煙容量17.5mL/秒、吸煙時間2秒/パフ、吸煙頻度1パフ/分、吸殻長35mmの条件を採用する。
(3)喫煙前後のガラス繊維フィルターの質量差を捕集したTPM量として求める。
(4)捕集後のガラス繊維フィルターからフェノールをtert-ブチルメチルエーテルのような抽出溶媒で抽出する。抽出液をガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSD)により分析することで、たばこ煙中のフェノールの量を求める。GC-MSDには、GCとして例えばAgilent Technologies Inc.製Agilent G7890Aを、MSDとして例えばAgilent Technologies Inc.製Agilent_5795Cを用いることができる。
(5)たばこ煙中のフェノール量をTPM量で除することで、1回の測定におけるフェノール濾過能を得る。
(6)(1)~(5)を3回行い、(5)で得られたフェノール濾過能の平均を、DPR1とする。
(7)本実施形態に係るフィルターに変えて、フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含まない以外は本実施形態に係るフィルターと同構成の基準フィルターを用いる以外は、上記(1)~(6)と同様にして得られたフェノール濾過能の平均を、DPR0とする。
(8)上記(6)で得られたDPR1を上記(7)で得られたDPR0で除することにより、フェノール濾過能を算出する。
ただし、上記ステップでは、1つのガラス繊維フィルターに捕集されるたばこ煙中粒状物質は、シガレットサンプル1本分であってもよく、同種のシガレットサンプル複数本分であってもよく、例えば、2本分である。
1-7.フィルターの製造方法
フィルターの製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造することができる。例えば、フィルターがペーパーフィルターである場合、木材パルプを抄紙して得られる紙を用いてフィルターロッドに成形する方法により製造することができる。具体的には、例えば、抄紙して得られた紙にクレープ処理等を施すことにより紙に波形状のしわを付ける工程、得られた波形構造を有する紙を集結させて濾材を作製する工程、得られた濾材を巻取紙で巻装してロッド状の長尺フィルターを作製する工程、及びこのロッド状の長尺フィルターを所望の長さに切断する工程により、ペーパーフィルターを製造することができる。
ゲル状添加剤は、任意の段階で濾材に添加することができる。例えば、紙に波形状のしわを付ける工程後、ロッド状の長尺フィルターを作製する工程前であってよく、ロッド状の長尺フィルターを作製する工程後であってもよい。
抄紙機としては、従来公知のもの、例えば、円網抄紙機、傾斜短網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機等を用いることができ、適宜要求特性に応じて抄紙機を組み合わせることができる。また、レジンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等の乾式製法も適宜使用することができる。
ペーパーフィルター以外のフィルターは、素材をシート状に成形した後、上記ペーパーフィルターの製造方法に準じてフィルターを製造することができる。また、繊維状の素材を集結させ、巻取紙で巻装してロッド状に成形し、所望の長さに切断することでフィルターを製造することもできる。
濾材へのゲル状添加剤の添加は、まず、ゲル状添加剤を調製し、得られたゲル状添加剤を濾材及び/又は濾材に成形される前の紙(以下、フィルターの製造方法の説明において、これらを単に「濾材」と称することがある。)に塗布等により付着させることで行われる。
ゲル状添加剤は、2種以上の成分(A)及び必要に応じて増粘剤、香料、着色料等の添加剤を混合することにより調製することができる。混合方法は、特に限定されず、例えば撹拌子若しくは撹拌翼を備える反応器又は振とう器を用い、全成分を同時に混合してもよく、各成分を任意の順で混合してもよい。また、混合条件は、特に限定されず、50℃以上120℃以下で5分以上1時間以下の時間混合すればよい。
或いは、完全にゲル化する前に2種以上の成分(A)を含む混合物を濾材に添加し、その後、降温して1分以上1時間以下の時間保持することで、ゲル化を完了させてもよい。
ゲル状添加剤を濾材に添加する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、加圧ポンプによる送液や噴霧;塗布ローラー、ブラシ等を用いた塗布;等が挙げられる。ロッド状の長尺フィルターを作製する工程後にゲル状添加剤形成用溶液を濾材に添加する場合は、マイクロシリンジを用いて、ロッド状の長尺フィルターの濾材にゲル状添加剤形成用溶液を添加させてもよい。また、フィルターを構成する濾材が複数の素材からなる場合、一部の素材にゲル状添加剤形成用溶液を添加しもよく、全ての素材に添加してもよい。また、濾材の一部に添加してもよく、全体に渡って略均一に添加してもよい。
或いは、ゲル状添加剤を添加前に加熱し、ゲル状添加剤に流動性を持たせた後に濾材に添加してもよい。
ゲル状添加剤形成用溶液の添加量は、特に限定されないが、例えばゲル化により形成されるゲル状添加剤がフィルター10mmあたり1mg以上250mg以下となる量である。なお、「フィルター10mmあたり」の「10mm」とは、フィルターの長手方向の10mmを意味する。
2.香味吸引物品
本発明の第2の実施形態は、巻紙で巻装されたたばこロッドと、本発明の第1の実施形態に係るフィルターと、前記たばこロッドと前記フィルターとを接続するチップペーパーとを備える香味吸引物品である。
本明細書において、「香味吸引物品」とは、ユーザがたばこ香味等の香味を味わう吸引物品を総称したものである。より具体的には、香味吸引物品としては、香味源を燃焼させることにより香味をユーザに提供する燃焼式香味吸引物品;香味源を燃焼させることなく加熱することにより香味をユーザに提供する非燃焼加熱式香味吸引物品;及び香味源を加熱も燃焼もしないで、香味源から生じた香味をユーザに提供する非燃焼非加熱式香味吸引物品;が挙げられる。
2-1.たばこロッド
たばこロッドは、公知の態様であれば特に限定されないが、通常、たばこ充填物を巻紙で巻装してなる態様である。たばこ充填物としては、特に限定されず、たばこ刻、再構成たばこシート等公知のものを用いることができる。なお、本明細書において、巻紙とは、たばこ充填物を巻装する紙を指し、濾材を巻装する紙である巻取紙とは区別される。
たばこロッドが有するたばこ刻等の通常のたばこ充填剤の水分含有量としては、10重量%以上15重量%以下を挙げることができ、11重量%以上13重量%以下であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、香味吸引物品製造時の巻上適性を良好にする。
また、香味吸引物品が非燃焼加熱式香味吸引物品である場合、たばこ充填剤はエアロゾル基材を含んでもよい。エアロゾル基材は、加熱されることによりエアロゾルを生成する基材であり、グリセリン、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が例示される。
たばこ充填剤を巻装する巻紙の材料は、特に限定されず、公知のものを用いることができ、また、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。
また、巻紙の少なくとも一部に、本発明の第1の実施形態に係るフィルターの巻取紙が有していてもよい撥液層と同様の撥液層が設けられていてもよい。
2-2.チップペーパー
前記たばこロッドと前記フィルターとを接続するチップペーパーの材料も、特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、チップペーパーは、炭酸カルシウム等の充填剤等を含んでいてよい。
また、チップペーパーの少なくとも一部に、本発明の第1の実施形態に係るフィルターの巻取紙が有していてもよい撥液層と同様の撥液層が設けられていてもよい。
巻紙及びチップペーパーの少なくとも一方が着色部を有する場合、蔵置中にゲル状添加剤由来の液体が濾材から滲出又は漏出すると、着色部に用いられるインク等が滲んだり、滲んだインクがさらに脱落したりすること(以下、「インク落ち」とも称する)によって香味吸引物品の外観が大きく損なわれる。一方、本実施形態に係る香味吸引物品は、ゲル状添加剤由来の液体の漏出が抑制されているため、インク落ちの発生を防止することができ、優れた外観を維持できる。したがって、本実施形態に係る香味吸引物品は、巻紙及びチップペーパーの少なくとも一方が着色部を有する態様にも好適に適用することができる。
以下、図を用いて本実施形態に係る香味吸引物品の一例を説明するが、以下の態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲で適宜変更して実施することができる。
図1~3は、フィルターがプレーンフィルター又はマルチセグメントフィルターである、燃焼式香味吸引物品(シガレット)の概略図である。図1において、フィルター濾材2からなる各フィルターセグメントは、巻取紙4によって巻装されることで、フィルター7を構成している。また、図2及び3のようなマルチセグメントフィルターの場合は、巻取紙4によって巻装された各フィルターセグメントの全てが成形紙5によって巻装されることで、フィルター7を構成している。さらにフィルター7は、チップペーパー6によってたばこロッド1と連結されている。
本発明の第1の実施形態に係るフィルターは、図1のような単一のフィルターセグメントからなるものである場合であっても、香味の改善及び液体漏出の抑制が可能である。すなわち、本発明の第1の実施形態に係るフィルターとたばこロッドとが隣接していても構わない。一方、フィルターがマルチセグメントフィルターである場合、2つ以上のフィルターセグメントのうち、たばこロッドに接しないフィルターセグメントにのみゲル状添加剤を添加することにより、たばこロッドを構成するたばこ刻や巻紙へのゲル状添加剤に由来する液の滲出又は漏出を、より効果的に防ぐことができると考えられる。
具体的には、「*」の付された一つのフィルターセグメントにゲル状添加剤が添加されている態様が好ましく、吸口側の端部を構成するフィルターセグメントにゲル状添加剤が添加されている態様も好ましい(図2)。また、フィルターセグメントが3つ以上ある場合は、たばこロッドに接するものではなく、吸口側の端部を構成するものでもないフィルターセグメント、つまり軸方向の中程を構成するフィルターセグメントのみにゲル状添加剤が添加されている態様(図3)も挙げられる。
本実施形態では、図1~3で示されるように、フィルターセグメントは軸方向に連続して存在しているものだけではなく、フィルターの吸口端に接するセグメント以外のフィルターセグメントが存在しない態様、つまりフィルターセグメント間に間隙(キャビティとも称する)が存在する態様も挙げることができる。当該キャビティは、上記成形紙、チップペーパーを円筒形に成形することによって形成することができるが、この場合、キャビティを形成する成形紙等が撥液層を有することを必ずしも要しない。
本実施形態におけるチップペーパーには、喫煙時に吸入するたばこ主流煙と空気の存在割合を調整するためのベンチレーション孔を設けることができる(図1~3の6で示されるチップペーパーに点線で図示したもの)。ベンチレーション孔の配置は、特に限定されず、シガレットの周方向に一列あるいは2列になるように配置された態様を挙げることができる。また、ベンチレーション孔のピッチや孔の大きさ、開孔方法については、特に限定されない。
ベンチレーション孔の位置については、ゲル状添加剤を含有するフィルターのたばこロッド側の端から、たばこロッド側に向かって少なくとも2mm離れた場所に配置されることが好ましい。そうすることによって、香味の向上が見込める。また、液体の漏出を防ぐ観点から、チップペーパーのうち、ゲル状添加剤を含有するフィルターを巻装している領域、及び2つのフィルターセグメントの間に位置する領域にベンチレーション孔が存在しないことが好ましい。
3.香味吸引物品パッケージ
香味吸引物品を使用者へ提供する際は、香味吸引物品をパッケージに充填して香味吸引物品パッケージとすることが通常である。しかるに、本発明の第3の実施形態は、本発明の第2の実施形態に係る香味吸引物品が内包紙により内包された香味吸引物品パッケージであって、前記香味吸引物品が、前記内包紙により直接包装されており、少なくとも前記内包紙の前記香味吸引物品のフィルターと接する領域に撥液層が設けられている。特に、前記内包紙は、フィルターの吸口側の端面と接する部分に撥液層が設けられていることが好ましい。
本実施形態において、香味吸引物品のフィルターの濾材に添加されている添加剤は、ゲル状であるため、濾材から液体が漏出しにくい。したがって、香味吸引物品パッケージ内での液体の拡散もしにくいと期待できる。また、内包紙のうち、香味吸引物品のフィルターと接する領域に撥液層が設けられていることによっても、濾材から漏出した液体が内包紙表面上で濡れ広がることを防止できるため、パッケージ内に液体が拡散することを防止できる。
本実施形態の香味吸引物品を充填するためのパッケージについては、その形状、体積ともに限定されることはなく、従来から存在するものを利用することができる。
パッケージの好ましい体積の範囲については、特に限定されず、例えば30cm以上150cm以下である。
パッケージに充填される香味吸引物品の本数については、通常20本であるが、パッケージの形状や大きさにより、適宜変更してもよい。
内包紙は、撥液層のみからなるものであってもよく、基材及び基材の表面上に配置された撥液層を有するものであってもよい。
巻取紙が基材及び基材の表面上に配置された撥液層を有する場合、巻取紙は、撥液層を形成する材料を含むコート剤を、塗布、蒸着等の手段により基材表面に積層したものであってもよい。基材としては、特に限定されず、巻取紙に用いられる公知の紙、ポリマー繊維等により構成される不織布、撥液紙等が挙げられる。
内包紙に設けられている撥液層を形成する材料としては、本発明の第1の実施形態に係るフィルターの巻取紙が有していてもよい撥液層を形成する材料が挙げられ、その好ましい態様も同様である。また、撥液層が撥液紙である態様も好ましい。なお、フィルターの巻取紙が撥液層を備える場合、当該撥液層と内包紙が備える撥液層とは、同じ材料により形成された層であってもよく、互いに異なる材料により形成された層であってもよい。
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<液体広がり試験>
温度22℃、湿度60%RHの室内で、マイクロシリンジを用いてフェノール濾過能を有する液体10mgを試験素材に滴下し、30分後の液滴の広がり面積を測定した。試験には、フェノール濾過能を有する液体としてポリプロピレングリコールグリセリルエーテル(PPG-GE、重量平均分子量4,000)及びジグリセリンを用いた。また、試験素材としては、巻取紙用普通紙、市販で入手可能なデンプンコート紙、フッ素樹脂(パーフルオロアルキル基を含有するフッ素樹脂)コート紙、グラシン紙(よし与工房製)、アルミホイル(三菱アルミニウム製)、ポリプロピレンフィルム(生産日本社製)、ポリエチレンコート紙(福助工業製)、パラフィンコート紙(コジマ正直堂本舗製)、シリコーンコート紙(日本製紙クレシア製)、セルロースナノファイバーフィルム(中越パルプ工業製)、ニトロセルロースコート紙、エチルセルロースコート紙、アクリル樹脂コート紙、ポリビニルアルコールコート紙、及びアラビアガムコート紙を用いた。なお、滴下直後から液滴は試験素材を広がったが、普通紙を除いていずれの条件においても30分後には液滴の広がりは安定していた。
試験素材上で液滴が広がった面積を画像処理にて算出した。液滴の広がりの測定には、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX-100」を用いた。デジタルマイクロスコープの倍率を5倍に設定し、標準スケールが明確に判別できるレベルで焦点を調整した。装置のキャリブレーションは、標準スケールの10mm範囲を付属のソフトウェアで長さを指定して実施した。添加剤10mgを約3cm角の試験素材に滴下し、広がりが安定した30分後、デジタルマイクロスコープにて試験素材を上方向から撮像した。その際、滴下した添加剤液滴の外周が明確に視認できるように照射光のレベルを調整した。画像に対して、付属のソフトウェアの計測-マニュアル-多角形モードにて添加剤液滴の外周を精密に指定し、広がり面積として算出した。
3回測定を行った際の広がり面積の平均値及び95%信頼区間(95%C.I.)を表1に示す。また、PPG-GEを用いた結果を図4に、ジグリセリンを用いた結果を図5に示す。なお、図4、5中の破線は広がり面積が36.3mm(デンプンコート紙について行ったPPG-GEの広がり試験3回のうち、最も広がり面積の小さかった回の結果である。)の位置を示す。
表1、図4、5から、撥液性を有する層を有する試験素材は液体の広がりが大きく抑制されることがわかる。
<インク影響試験>
コルク地風の印刷がされたチップペーパーの印刷面に、後述するフェノール濾過能を有する液体及び公知のフェノール捕捉材であるトリアセチンを、それぞれ10mgずつマイクロシリンジを用いて滴下し、1分経過後に日本製紙クレシア株式会社製紙ワイパー「キムワイプS-200」を用いて液体をふき取った後のインク落ちの程度を、以下に示すA~Dの4段階で評価した。結果を以下の表2に示す。
A:視認できるインク落ちがほとんどなく、外観は損なわれていない
B:わずかにインク落ちがあるが、外観はほとんど損なわれていない
C:インク落ちがあり、外観が損なわれている
D:大きなインク落ちがあり、外観が著しく損なわれている
使用したフェノール濾過能を有する液体は、ポリエチレングリコール(重量平均分子量600)、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量700、1,000、2,000、3,000)、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル(重量平均分子量500、1,000、3,000、4,000)、ポリブチレングリコール(重量平均分子量500、700)、ジグリセリン、及びカプリリルグルコールである。
表2に示されるように、フェノール濾過能を有する液体によりインク落ちへの影響が異なった。また、ポリマーにおいては、重合度の大きい(重量平均分子量の大きい)液体の方が、インク落ちへの影響が小さいことがわかった。また、ゲル状添加剤からフェノール濾過能を有する液体が漏出しても、フィルターの濾材から滲出又は漏出することを十分に抑えることができることもわかった。さらに、仮に製造中にゲル状添加剤に用いられるフェノール濾過能を有する液体が、着色部を有する巻紙やチップペーパーに微小量付着しても、フェノール濾過能を有する液体が重量平均分子量1,000以上のポリプロピレングリコール、重量平均分子量1,000以上のポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、重量平均分子量500以上のポリブチレングリコール、ジグリセリン、及びカプリリルグリコールから選択されるものであれば、インク落ちにより香味吸引物品の外観が損なわれることを抑制できることが確認された。
<フェノール濾過能の試験>
(シガレットサンプルの作製)
長さ27mm、直径7.7mmのペーパーフィルターを用意した。具体的には、まず、波形状のしわを付けた紙(坪量40g/m)を、一端から他端まで各々が延びた複数の空気流路を形成するように畳み、巻取紙用普通紙で巻装後、長さ120mmで切断して、フィルターロッドを作製した。なお、フィルターロッドの通気抵抗を400mmHO、フィルター直径を7.7mmφに調整した。このフィルターロッドを長さ27mmにカットしたものを、ゲル状添加剤無添加の比較例1のペーパーフィルターとした。
比較例1のペーパーフィルターの中に、表3に示す成分の混合物を90℃にて加熱した状態で、マイクロシリンジを用いて添加した後、2日以上室温で蔵置することによりフィルター内の添加剤分布を安定化させたものを、ゲル状添加剤を含有する実施例1~8のペーパーフィルターとした。
その後、市販のシガレット「ウィンストン」のたばこロッドと、上記ペーパーフィルターとを接合して、実施例1~8及び比較例1のシガレットサンプルを作製した。
(喫煙試験)
実施例1~8及び比較例1の各シガレットサンプルに対し、以下の条件で喫煙試験及び分析を行った。
自動喫煙機(Cerulean社製SM410)を用いて、吸煙容量17.5mL/秒、吸煙時間2秒/パフ、吸煙頻度1パフ/分、吸殻長35mmの条件でシガレットサンプルの自動喫煙を行い、たばこ煙中粒状物質(TPM)をケンブリッジフィルタ(Borgwaldt 44mmφ)で捕集した。TPM量は、喫煙前後のケンブリッジフィルタの質量差により測定した。その後、スクリュー管瓶に入れた下記表4に示すフェノール抽出溶媒10mLにケンブリッジフィルタを浸けて振盪し、分析試料を得た。得られた分析試料1μLをマイクロシリンジで採取し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSD:Gas Chromatography-Mass Selective Detector)にて分析した。GCとしてAgilent Technologies Inc.製Agilent G7890Aを用い、MSDとしてAgilent Technologies Inc.製Agilent_5795Cを用いた。
以上の方法により、各シガレットサンプルについて、シガレットサンプル1本当たりのTPM量と、シガレットサンプル1本から発生するたばこ煙中のフェノール量とを測定した。シガレットサンプル1本から発生するたばこ煙中のフェノール量をシガレットサンプル1本当たりのTPM量で除して得た値を、比較例1のシガレットサンプルにおける値を1として相対値化することで、実施例1~8のペーパーフィルターのフェノール濾過能を評価した。3回の評価結果の平均値を表5に、該平均値及び標準偏差を図6に示す。
表5及び図6より、ゲル状添加剤を含有するフィルターは、フェノールに対し濾過能を有することがわかる(実施例1~8)。また、フェノール濾過能を有する成分であるポリプロピレングリコールグリセリルエーテル(重量平均分子量4,000)にステアリン酸若しくはミリスチン酸のようなトリアセチン又はハイエルシン菜種極度硬化油を組み合わせたり、フェノール濾過能を有する成分としてトリアセチンを用いたりすることで、特に高いフェノール濾過能を示すフィルターが得られることがわかる(実施例1~3、6)。
<香味の官能評価>
ゲル状添加剤を添加したシガレットの香味を官能評価により評価した。
具体的には、香味評価の訓練を受けたパネラー3人が、上記<フェノール濾過能の試験>において作製した比較例1及び実施例1、2、4~7のシガレットサンプルを喫煙し、各実施例のシガレットサンプルの香味(刺激)を下記採点基準に基づいて評価した。3人のパネラーの点数を平均し、小数点以下一桁を四捨五入して各シガレットサンプルの官能評価のスコアとした。評価結果を表6に示す。また、フェノール濾過能と香味の官能評価のスコアとの関係を図7に示す。
(採点基準)
1:刺激を感じなかった。
2:比較例1のシガレットサンプルと比較して刺激がかなり低減していた
3:比較例1のシガレットサンプルと比較して刺激が低減していた
4:比較例1のシガレットサンプルと比較して刺激がやや低減していた
5:比較例1のシガレットサンプルと同等の刺激を感じた
図7から、ゲル状添加剤が添加されたシガレットサンプルのフェノール濾過能が0.83以下の場合は刺激が低減され、0.70以下の場合はさらに刺激が低減されることが分かる。
1 たばこロッド
2 フィルター濾材
4 巻取紙
5 成型紙
6 チップペーパー
7 フィルター

Claims (17)

  1. 香味吸引物品用のフィルターであって、
    生分解性を有する素材を含む濾材と、前記濾材を巻装する巻取紙とを有し、
    前記濾材が、フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含有し、
    前記ゲル状添加剤が下記化合物群(1)と(2)からそれぞれ1種類以上の化合物を選択した組み合わせ、または下記化合物群(3)と(4)からそれぞれ1種類以上の化合物を選択した組み合わせの、いずれか一方の混合物を含む
    フィルター。
    化合物群(1):プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、オキシアルキレン系ポリマー
    化合物群(2):ステアリン酸、ミリスチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ハイエルシン菜種極度硬化油
    化合物群(3):グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル
    化合物群(4):脂肪酸、脂肪酸エステル
  2. 前記ゲル状添加剤が含む化合物のうち1種以上が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、脂肪酸及び脂肪酸アルキルエステルからなる群より選択されるフェノール濾過能を有する成分である、請求項1に記載のフィルター。
  3. 前記ポリプロピレングリコールの重量平均分子量が2,000以上4,000以下であり、前記ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの重量平均分子量が3,000以上4,000以下である、請求項2に記載のフィルター。
  4. 前記フェノール濾過能を有する成分が、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸、及び脂肪酸アル
    キルエステルからなる群より選択される1種以上である、請求項2に記載のフィルター。
  5. 前記巻取紙は、前記濾材と接する領域に撥液層を備える、請求項1に記載のフィルター。
  6. 前記フェノール濾過能を有するゲル状添加剤に含まれるフェノール濾過能を有する成分の前記撥液層に対する広がり面積が、35mm以下である、請求項5に記載のフィルター。
  7. 前記巻取紙は、さらに基材を備え、
    前記撥液層が、前記基材の表面上に配置されている、請求項5に記載のフィルター。
  8. 前記撥液層が、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィン、シリコーン、セルロースナノファイバー、エチルセルロース、アラビアガム、及びニトロセルロースからなる群より選択される1種以上を含有する、請求項5に記載のフィルター。
  9. 前記撥液層が、エチルセルロース、アクリル樹脂、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、及びシリコーンからなる群より選択される1種以上を含む、請求項5に記載のフィルター。
  10. 前記撥液層が、撥液紙である、請求項5に記載のフィルター。
  11. 下記式(i)で表されるフェノール濾過能が、0.83以下である、請求項1に記載のフィルター。
    フェノール濾過能=DPR1/DPR0 (i)
    DPR1:前記フィルターを用いて喫煙試験を行った場合の、該フィルターを通過するたばこ煙中のフェノール量を、該フィルターを通過するたばこ煙中粒状物質の量で除した値。
    DPR0:前記フェノール濾過能を有するゲル状添加剤を含まない以外は前記フィルターと同構成の基準フィルターを用いて喫煙試験を行った場合の、該基準フィルターを通過するたばこ煙中のフェノール量を、該基準フィルターを通過するたばこ煙中粒状物質の量で除した値。
  12. 巻紙で巻装されたたばこロッドと、
    請求項1~11のいずれか1項に記載のフィルターと、
    前記たばこロッドと前記フィルターとを接続するチップペーパーと、
    を備える香味吸引物品。
  13. 前記巻紙及び前記チップペーパーの少なくとも一方は、着色部を有する、請求項12に記載の香味吸引物品。
  14. 香味吸引物品が内包紙により内包された香味吸引物品パッケージであって、
    前記香味吸引物品が、請求項12に記載の香味吸引物品であり、
    前記香味吸引物品が、前記内包紙により直接包装されており、
    少なくとも前記内包紙の前記フィルターと接する領域に、撥液層が設けられている、香味吸引物品パッケージ。
  15. 前記内包紙に設けられた前記撥液層が、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィン、シリコー
    ン、セルロースナノファイバー、エチルセルロース、アラビアガム、及びニトロセルロースからなる群より選択される1種以上を含有する、請求項14に記載の香味吸引物品パッケージ。
  16. 前記内包紙に設けられた前記撥液層が、エチルセルロース、アクリル樹脂、パラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、及びシリコーンからなる群より選択される1種以上を含む、請求項14に記載の香味吸引物品パッケージ。
  17. 前記内包紙に設けられた前記撥液層が、撥液紙である、請求項14に記載の香味吸引物品パッケージ。
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