JP7765730B2 - シート状はんだ - Google Patents

シート状はんだ

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Description

本発明はシート状はんだ、はんだ接合部、並びにこれを備える半導体装置に関する。本発明は、特には、半導体装置に適用し、大電流を流した場合であってもエレクトロマイグレーションを生じにくいシート状はんだ、はんだ接合部、並びにこれを備える信頼性の高い半導体装置に関する。
パワー半導体モジュールは、効率的な電力変換が求められる分野に広く適用されている。例えば、産業機器、電気自動車、家電製品などのパワーエレクトロニクス分野に適用領域が拡大している。これらのパワー半導体モジュールには、スイッチング素子とダイオードが内蔵されており、素子にはSi(シリコン)半導体素子やSiC(シリコンカーバイド)半導体素子が用いられている。
近年、半導体素子に流れる電流密度は、増加している。中でも、電流密度が800A/cm程度の大電流になると、はんだ接合部でエレクトロマイグレーション(EM)が生じ、局所的に通電不良を生じる場合があった。
従来、半導体素子の接合には、融点、強度などの点から、SnSb系はんだやSnSbAg系はんだなどが用いられてきた。これらのはんだ材はスズ(Sn)を主成分とし、Sn結晶がランダムに配向した構造であった。はんだ材を構成するSnには、配向性に対する電流の向きにより、EMの生じ易さがあることが知られている(例えば、特許文献1を参照)。EMは、Sn結晶がランダムに配向した構造でも起こるが、Sn結晶格子のc軸方向に電流が流れるとEMが起きやすく、c軸に垂直方向に電流が流れるとEMは起きづらい。特許文献1では、半導体装置の製造において、素子を接合する際に、溶融中のはんだに電場や磁場をかけることではんだのc軸を、電流の流れる方向に垂直にする技術を開示している。
特開2016-51844号公報
特許文献1に開示された技術によれば、Sn結晶格子のc軸を所定の向きに揃えることは理論的には可能である。しかし、そのプロセスは複雑であり、高コストな装置が必要になるため、実用化に耐えるものではない。
電流密度が800A/cm程度の大電流を流した場合であっても、エレクトロマイグレーションが生じにくい半導体装置を実現するための、はんだが求められる。
本発明者らは鋭意検討の結果、Sn結晶がランダムに配向したはんだを所定の方向に圧縮することにより、塑性変形を生じさせ、Sn結晶格子のc軸を、圧縮方向に平行に配向させることができることに想到し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一実施形態によれば、Snを主成分とし、添加元素と、不可避不純物とを含むはんだ合金を含有する、プレス加工されたシート状はんだであって、プレス加工された面が主面に垂直な面であり、Snの結晶のc軸が前記シートの厚さ方向に垂直な方向に配向されたシート状はんだに関する。
前記シート状はんだにおいて、前記プレス加工された表面における、Snの結晶のc軸配向性の指標であるc軸配向比率が、0.3以上であることが好ましい。
前記シート状はんだにおいて、前記c軸配向比率が、0.95以下であることが好ましい。
前記シート状はんだにおいて、前記添加元素が、Sb、Cu、Ag、Ni、Ge、またはこれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
本発明は、別の実施形態によれば、半導体素子と、導電性接続部材との間に、前述のいずれかに記載のシート状はんだが溶融されたはんだ接合層を備えるはんだ接合部に関する。
前記はんだ接合部において、前記導電性接続部材がリードフレームであることが好ましい。
本発明は、また別の実施形態によれば、前述のはんだ接合部を備える半導体装置に関する。
本発明は、さらにまた別の実施形態によれば、半導体装置の製造方法であって、Snを主成分とし、添加元素と、不可避不純物とを含むはんだ合金をプレス加工し、プレス加工された面が主面に垂直な面であり、Snの結晶のc軸が前記シートの厚さ方向に垂直に配向されたシート状はんだを製造する工程と、半導体素子と、前記シート状はんだと、導電性接続部材とを積層する工程と、前記シート状はんだを溶融させる工程とを備える、半導体装置の製造方法に関する。
前記半導体装置の製造方法において、前記プレス加工する工程が、Snの結晶のc軸配向性の指標であるc軸配向比率が0.3以上となるまで加圧する工程であることが好ましい。
本発明に係るシート状はんだは、Sn結晶格子のc軸が厚さ方向に垂直な方向に配向されている。このため、当該シート状はんだを用いて、半導体素子を接合することにより、エレクトロマイグレーションを防止し、信頼性の高い半導体装置を製造することが可能になる。
図1は、本発明の第1実施形態に係るシート状はんだを示す概念的な説明図であり、(a)は概念的な平面図、(b)は概念的な断面図である。 図2は、シート状はんだのc軸の配向性を特定するための、後方散乱電子回折(Electron BackScatter Diffraction:EBSD)測定の概要を示す図であり、(a)は投影球表示を説明する図であり、(b)は特定の配向を備える結晶を抽出した結晶配向マップの一例を示す図である。 図3は、本発明の第1実施形態に係るシート状はんだの製造工程で使用可能なプレス加工型の一例を示す概念的な斜視図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係るはんだ接合部の断面構造を示す概念図である。 図5は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す概念図である。 図6は、従来技術に係るはんだ接合部の断面構造を示す概念図である。
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
[第1実施形態:シート状はんだ]
本発明は第1実施形態によれば、シート状はんだに関する。本実施形態によるシート状はんだは、Snを主成分とし、添加元素と、不可避不純物とを含むはんだ合金を含有し、プレス加工され、Snの結晶のc軸が前記シートの厚さ方向に垂直に配向されたシート状はんだである。
本明細書において、シート状はんだとは、所定の長さ、幅及び厚さを備えるシート状に加工されており、長さ及び幅に対して、厚さが小さいはんだをいう。より具体的には、厚さtが、500μm以下程度であって、5μm以上程度であってよく、300μm以下程度であって、10μm以上程度であることが好ましい。シート状はんだの厚さtは、典型的には、後述する製造方法において、プレス加工したはんだブロックから切り出される際の、厚さに相当する。シート状はんだ長さ及び幅は特には限定されず、シート状であれば、板体であっても巻回体であってもよい。接合する製品に適合する形状に切り抜かれたものであってもよい。シート状はんだの長さおよび幅は、適用する製品によって異なり、特には限定されないが、少なくとも500μmより大きく、一般的には、2000μm以上であってよい。シート状はんだの長さ及び幅は、典型的には、後述する製造方法において用いる型の寸法や形状により決めることもできる。
シート状はんだは、はんだ合金を含有し、好ましくははんだ合金からなる。はんだ合金の組成は、Snを主成分とし、添加元素と、不可避不純物とを含むものであってよい。はんだ合金の組成は、好ましくは、Pbを不可避不純物として以外は含まない鉛フリーはんだ合金である。Snを主成分とするとは、はんだ合金の全質量を100%とした場合に、80質量%以上がSnから構成されることをいうものとする。80質量%以上がSnから構成されるはんだ合金では、実質的にSnのみからなるはんだと同様に、プレス加工等による塑性変形により、Sn結晶格子のc軸を配向させることができる。具体的には、前記Snはんだ合金をプレス加工により圧縮すると、塑性変形してプレス面に平行な方向にc軸が配向する。なお、プレス加工とは、加工物を金型に圧着させ、所定の一方向(プレス方向)から加圧し変形させる加工である。
添加元素は、Sn以外の元素であって、はんだ合金として通常使用されるものであれば特には限定されない。例えば、Sb、Cu、Ag、Ni、Ge、P、Bi、In、Si、V、Au、Pt、Mo、Zn、Co、Fe、Mn、Cr、Tiが挙げられるが、これらには限定されない。添加元素は、1種であっても2種以上であってもよいが、添加元素の総質量が、はんだ合金の総質量の20質量%を超えない量で含まれ得る。不可避不純物は、主として、Cu、Ni、Zn、Fe、Al、As、Cd、Au、In、P、Pbなどをいうが、これらには限定されない。不可避不純物の含有量は、国際標準化機構または各国の工業基準等により、合金系ごとに定められた値の範囲内とすることができる。また、RoHS指令により、Hgは含まないことが好ましく、六価Crははんだ合金の総質量の0.1質量%未満、Cdは0.01質量%未満とすることが好ましい。
より具体的なはんだ合金の組成としては、Sn-Ag-Cu系、Sn-Sb系、Sn-Sb-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Sb-Ag-Cu系、Sn-Cu-Ni系、Sn-Ag系などの合金系であって、いずれの組成においてもSnが80質量%以上含まれる組成をもつはんだ合金を用いることができるが、これらには限定されない。さらに具体的には、Sn-Ag-Cu系の場合は、Agを、0.5~5.0質量%で、Cuを、0.1以上であって3.0質量%以下の範囲で含有することが好ましい。Sn-Sb系の場合は、Sbを、2.0質量%~20質量%の範囲で含有することが好ましい。Sn-Sb-Ag系の場合は、Sbを6.0~8.0質量%、Agを2.0~4.0質量%の範囲で含有することが好ましい。Sn-Cu系の場合は、Cuを、0.1以上であって10.0質量%以下の範囲で含有することが好ましい。Sn-Sb-Ag-Cu系の場合は、Sbを5.0~10質量%と、Agを2.0~4.0質量%と、Cuを、0.1以上であって1.2質量%以下の範囲で含有することが好ましい。Sn-Cu-Ni系の場合は、Cuを、0.1以上であって6.0質量%以下とNiを、0.1以上であって0.5質量%以下の範囲で含有することが好ましい。Sn-Ag系の場合は、Agを、1.0~6.0質量%含有することが好ましい。
シート状はんだは、ある実施態様においてはシート全体にわたって実質的に均一な組成のはんだ合金から構成されるものであってよい。別の実施態様においては、上記において特定した組成の合金中に、高融点金属粒子を含有するシート状はんだであってもよい。高融点金属粒子は、例えば、Ni、Ag、Cu、Fe、ステンレス鋼またはこれらの合金を含む粒子であってよく、高融金属粒子の平均粒子径は約1~50μm程度であってよい。シート状はんだ中における高融点金属粒子の含有量は、1~40質量%程度であってよい。さらに別の実施形態においては、上記において特定した組成の合金中に、高融点金属線材を含有するシート状はんだであってもよい。高融点金属線材は、高融点金属粒子と同様の組成から選択することができ、直径が1~50μm程度であってよい。シート状はんだ中における高融点金属線材の含有量は、1~40質量%程度であってよい。
図1は、本実施形態によるシート状はんだの一例を示す概念的な平面図(a)及び断面図(b)である。図1中のX、Y、Zは、それぞれ、シート状はんだの長さ方向、幅方向、厚さ方向を表す。シート状はんだは、一方向にプレス加工され、プレス加工された方向に平行な面で切断されたはんだであり、長さ方向と幅方向で規定される主面mとこれに対向する面fを有する。図1(b)は、シート状はんだの主面mに垂直に切断した断面を表す概念図である。図1(b)を参照すると、シート状はんだは、厚さtのはんだ合金から構成され、Sn結晶のc軸が、はんだの厚さ方向Zに垂直に配向されている。そして、はんだ合金を構成するSn結晶のc軸がシート状はんだの主面mに平行に配向されている。シート状はんだの主面mに垂直な側面のうち対向する1組の面は、製造時にプレス加工された面Pである。本明細書において、プレス加工された面Pは、プレス加工面とも指称する。図1(b)において、実線で囲まれた領域は、Snの結晶粒を表し、領域中の矢印はSnの結晶のc軸の配向方向を表す。Snの結晶格子を表す実線は説明のための記載であって、実際の縮尺とは大きく異なっている。なお、実線で囲まれた領域を単結晶領域と解することもできる。単結晶領域とは、配向方向が同一で双晶などを含まない概念とする。
本実施形態によるシート状はんだにおいて、Snの結晶のc軸が所定の方向に配向されていることは、EBSD法により確認することができる。EBSD法は、真空中で試料表面に加速した電子を照射し、そこで発生する電子後方散乱によって得られるキクチパターンを解析することで結晶配向を求める表面分析法として一般に知られている。電子線を試料表面(測定面)に照射するとその場所における結晶配向が得られるので、電子線を所定の範囲内を走査させると、走査領域における結晶粒の結晶配向マップの取得が可能になる。電子線の1測定点の範囲は10nmφ程度である。シート状はんだにおいて、図1に示すプレス加工面Pまたは主面mに対し、角度約20°で電子線を入射することで、シート状はんだにおけるSnのc軸配向性を評価することができる。
Snの結晶は、約13℃~200℃において、a=b=5.832Å、c=3.181Åの格子定数を持つ正方晶(β-Sn構造)であり、単位格子内部に四つのSn原子を持つ。c軸とは、前述の3.181Åの長さの軸を示す。このc軸の配向性の評価方法について説明する。結晶の配向は、基準面に対する結晶面の法線の傾きによって表され、それぞれの結晶の配向面は、各結晶内のある1点から放射状に出る法線と基準面の傾きとして記述できる。その法線と、結晶内のある1点を中心とする仮想の球(投影球)との交点によって、その測定箇所での結晶配向面を表すことが可能である。図2(a)は、EBSD法における仮想の投影球表示を説明する図である。図2(a)中、Sが投影球を表し、Bが基準面を表す。
測定対象が、Snの一つの結晶粒子(単結晶粒子)である場合について説明する。Sn結晶粒子のc軸が基準面に対して垂直に配向している場合は、投影球の真上に配向点が記載される。ここで、投影球の真上とは、投影球の中心を通る基準面の垂線が、基準面よりも上側、すなわち基準面に対して電子線の照射が行われる側で投影球と交わる点である。Sn結晶粒子のc軸が基準面に対して傾いていると、傾きに応じて、投影球上の真上から傾いた箇所において配向点が記載される。そのようにして結晶配向を表示した図は「極点図」と呼ばれる。EBSD法によれば、測定試料表面を基準面とし、測定試料表面の電子線を照射した位置における試料の結晶配向を測定し、投影球上に配向点の位置を決定することができる。例えば、基準面に対して垂直にc軸が配向したSn結晶表面のある領域をEBSD法で測定すれば、測定領域全体が(001)配向を示す結晶配向マップが示される。その際、結晶配向は、投影球においては、(001)面が測定面を向いたc軸配向を表す1点Kで表示される。一方、単一でない結晶配向を有する多結晶の領域をEBSD法で測定すれば、投影球の基準面より上の略全面に多数の配向点がばらばらに表示される。この場合の配向点の例を×で示す。投影球のある特定領域に点が密集している場合は、Snのc軸が投影球の中心から点に向かう方向に配向しているといえる。例えば、c軸配向性を持つ結晶が多い試料を測定した場合の配向点を▲で示す。
次に、c軸配向性の指標であるc軸配向比率Aについて説明する。例えば、Sn多結晶に対してEBSD測定を行うと、前述のように測定領域での結晶配向マップ測定ができる。EBSD法では、測定領域内の結晶粒子の中から、投影球内に破線で示すように、投影球の中心を通る基準面の垂線から特定の角度θ以内の傾きのc軸を有する結晶粒子のみを抽出してマップ化することができる。図2(b)は特定の配向を備える結晶を抽出した結晶配向マップの一例を示す図である。図2(b)において、c軸が特定の配向を有する結晶a1を、ドットで示す。c軸が特定の配向を有さない結晶a2は白で示す。結晶配向マップに基づき、c軸が特定の配向を有する部分の面積を求め、測定領域の面積(電子線の走査領域全体)に対する割合を求めることで、ある特定の配向性をもつ結晶の面積比率を抽出することができ、当該面積比率をc軸が特定の配向をするc軸配向比率Aとすることができる。すなわち、Aは下記式(1)にて定義される。
c軸配向比率A=EBSD測定による結晶配向マップ上で、c軸が特定の方向に配向している面積/測定領域面積 (1)
図1(b)に示すシート状はんだ1の側面であるプレス加工面Pを測定面とする場合、プレス加工面(測定面)に垂直な方向にSnのc軸が配向している比率Avは下記式(1a)にて定義される。
Av=測定面をプレス加工面としたEBSD測定による結晶配向マップ上で、c軸が測定面に垂直方向に配向している面積/測定領域面積 (1a)
プレス加工面はプレス器具が接する面に限らず、プレスする方向に垂直な面を含む。
本発明においては、図1(a)(b)におけるシート状はんだ1のプレス加工面Pを、図2(a)の投影球における基準面BとしてEBSD測定を行う。そして、図2(a)中、矢印cで示すc軸から、傾きθが26°以内にあるc軸を備える結晶を、c軸がシート状はんだのシート厚さ方向に垂直な方向に配向されている結晶ということができ、c軸配向性を持つ結晶と定義する。本発明に係るシート状はんだにおいて、はんだの主成分であるSn結晶のプレス加工面におけるc軸の傾きθが26°以内であれば、c軸がプレス面に対してほぼ垂直方向となっていると判断でき、また、シート状はんだの主面mが半導体素子の上面に平行になるように半導体モジュールに組みこんだ際に(図)、エレクトロマイグレーションを防止できるためである。
c軸配向比率Aの測定条件は、一例としては、測定面をはんだ材のプレス加工面Pとし、測定領域は、例えば、400μm×400μmとすることができる。電子線の入射角度は測定面に対して約20°とし、2.5μmステップで電子線を走査する。なお、シート状はんだで、測定面がプレス加工面(側面)の場合で、測定領域が400μm×400μmを取れない場合は、同じ面積、例えば長方形の測定領域とすることができる。なお、測定領域にSn-Agなどの合金相を含む場合や、高融点金属粒子、高融点金属線材を含む場合は、これらは除外してc軸配向比率Aを算出することができる。合金相やCuなどは、Snと結晶構造が異なるため、電子線回折パターン(キクチパターン)も異なり、それらの存在を判別することができる。Snが80wt%以上であれば、Sn結晶が多数を占めるため、Snの結晶粒の配向性を制御することができる。また、Snが80wt%以上であれば、Snと同様に延性を示し、後に詳述するようにプレスによりSn結晶を配向させることができる。
例えば、プレス加工面Pを測定面とした場合のc軸配向比率Avが、0.05から0.2の範囲では、Snの結晶はランダム配向と定義される。ランダム配向とは、c軸が特定の配向性をもたないことをいう。Avが0.2より大きい場合に、Snの結晶のc軸は、厚さ方向に垂直に配向されているということができる。Avは0.3以上であることが好ましく、0.95以下であることが好ましい。なお、厚さ方向とは、図1(b)においては、Z方向である。この範囲のc軸配向比率Aをもつシート状はんだを、主面mが半導体装置の裏面電極、あるいは積層基板に平行になるように配置して半導体素子の接合に用いると、EMを防止し、パワーサイクル耐量が大きくなるためである。
本実施形態に係るシート状はんだが好ましいc軸配向比率を備えることは、主面mを測定面としてEBSD測定を行うことによっても確認することが可能である。具体的には、主面mに平行な方向にc軸が配向している割合を評価することによっても、Snの結晶のc軸がシート状はんだの厚さ方向に垂直な方向に配向されていること、好ましくはSnの結晶のc軸配向性の指標であるc軸配向比率Avが、0.3以上であることが確認できる。この場合、主面mを測定面とし、測定面に平行で、側面(プレス加工面P)に垂直な方向にc軸が配向している比率をApとすると、Apは下記式(1b)にて定義される。
Ap=測定面を主面としたEBSD測定による結晶配向マップ上で、c軸が測定面に平行で、側面(プレス加工面)に垂直な方向に配向している面積/測定領域面積 (1b)
図1(a)(b)に示す本発実施形態に係るシート状はんだ、及び後述する図4に示す第2実施形態に係るはんだ接合部において、Snのc軸は、主面mに平行であり、かつ、プレス加工面に垂直な方向に配向している。この場合、Apは、測定面が側面(プレス加工面)で、プレス加工面に垂直な方向にc軸が配向している比率Avと実質的には同じである。EBSDは、結晶方位をただ一つに確定できる手法である。したがって、Avのようにプレス加工面Pで測定して、プレス加工面Pから見た測定座標系でのSn結晶の配向比率を導出することもでき、Apのように主面mで測定を行っても、プレス加工面Pから見た測定座標系でのSn結晶の配向比率を得ることもできる。したがって、本実施形態に係るシート状はんだのc軸配向性は、プレス加工面Pまたは主面mを測定面としてEBSD法による上記式(1a)または(1b)により得ることができる。
なお、Snの結晶のc軸は、厚さ方向に垂直に配向されていればよく、図1(a)に示すXY平面内においては、c軸の配向方向はランダムであってよい。
次に、本実施形態に係るシート状はんだの製造方法について説明する。シート状はんだの製造方法は、以下の工程を含む。
(1)はんだブロックを準備する工程
(2)準備したはんだブロックをプレス加工する工程
(3)プレス加工されたはんだブロックを切断する工程
(1)の工程では、材料となるはんだブロックを準備する。はんだブロックは、市販されているものを用いることができる。あるいは、はんだブロックは、通常の方法に従って、Sn及び添加元素から選択される各原料、あるいは各原料を含む母合金を電気炉中で溶解することにより調製することもできる。購入し、あるいは調製した所定の組成をもつはんだブロックは、好ましくは、液相線温度以上の温度で溶融した後、急冷する。溶融温度は、液相線温度以上であって、液相線温度プラス100℃以下の温度範囲とすることが好ましい。また、急冷とは、100℃まで5℃/min以上で冷却することをいう。これにより、初期状態として、Sn結晶格子のc軸がランダム配向したはんだブロックを得ることができる。(1)の工程では、得られた初期状態のはんだブロックにおけるSn結晶格子のc軸配向性を、EBSD法により測定し、確認することが好ましい。このときの、EBSD測定は、次工程にてプレスする面に対して行うことができる。また、(1)の工程では、はんだブロックを次工程の型に適合する形状、寸法に切り出す工程を含んでいてもよい。なお、上記急冷したブロックは、TEM(透過型電子顕微鏡)の電子線回折等で分析した結果、特定の配向性を持たずランダムに配向していることが確認されている。
(2)の工程では、初期状態のはんだブロックを型に入れて、プレス加工を行う。型は、プレス加工に用いられる一般的な型であれば特には限定されないが、一例として、金型を用いることができる。0.1~40MPa程度、好ましくは0.3~25MPaの加圧を行うことができる型を使用することが好ましい。また、はんだブロックに接触する型の面を、固相線温度(K)×0.7~固相線温度(K)×0.95程度、好ましくは固相線温度(K)×0.8~固相線温度(K)×0.9程度の温度であって、βSn相を保持しうる温度に加熱可能なヒータ等を備えていることが好ましい。型の温度を前述の範囲とすると、シート状はんだ材にクラックが入らず良好に成形できる。型は、プレス後に、略角柱状のはんだブロックを得ることができる形状とすることが好ましい。したがって、金型のプレス加工面Pは、上面視によれば四角形が好ましい。後工程で切り出すことを考慮すると、辺の長さが、実際に使用するシート形状の寸法とすることが好ましい。
図3は、(2)の工程で使用可能なプレス加工型及びプレス加工されたはんだブロックの一例を示す概念的な斜視図である。図中、Lは鉛直方向、Mは型の短手方向、Nは型の長手方向を示す。本工程において、下部金型(下)3の溝内に初期状態のはんだブロックを載置し、図示しないヒータにより、所定の温度まで金型を昇温する。次いで、上部金型をはんだブロックに接触するように載置し、図中のLの方向に加圧する。加圧時の圧力及び圧縮率は、上記の加圧範囲内であって、所望の組成のはんだ合金について事前実験を行い、所望のc軸配向比率Aの値を達成可能な圧力及び圧縮率とすることができる。ある実施形態において、工程(1)において、初期状態のはんだブロックがランダム配向となっていることが確認されている場合には、加圧後のはんだブロックの板厚は、最初の板厚に対して、5%~95%の範囲とすることができる。なお、c軸配向比率Aの測定時にEBSD測定面とするプレス加工面Pは、プレス加工時の圧力の向きに垂直な面である。プレス加工時の圧力の向きに垂直な面のうち、プレス加工時に上部金型に接する面、下部金型に接する面の両方を、プレス加工面Pと指称することができる。図3に示す実施形態においては、MN平面に平行な、はんだブロック2の上面及び下面がプレス加工面Pである。プレス加工されたはんだブロック2が、角柱状となるように型を設計し、かつ、型に入れる前のはんだブロックの形状を調整することができる。
(2)の工程により、所定の方向Lに圧力を印加することで、Snを主成分とするはんだ合金を塑性変形させ、加圧方向Lと平行な方向に、c軸を配向させることができる。プレス加工後の圧縮されたはんだブロック2におけるSn結晶格子のc軸の方向を図3中、矢印cで表す。(2)の工程の最後には、c軸配向比率Aを、EBSD法により測定し、確認する工程をさらに含むことが好ましい。このときの、電子線入射面は、プレス加工面Pとすることができる。
(3)の工程では、プレス加工された、棒状のはんだブロック2を加圧の方向と平行な方向、すなわちc軸に平行な方向に切断する。図3に示す実施形態においては、典型的には、LM平面またはLN平面に平行に切断することができる。切断手段は特には限定されないが、ワイヤソーや放電加工機などを用いることができる。図3に、圧縮されたはんだブロック2をLM平面に平行な面で切断する場合の切断箇所5の例を、二点鎖線で示す。二点鎖線で示す位置にて、LM平面に平行な面で切断することにより、1つのはんだブロック2から、切断された結果として生じる面(切り口)を主面とし、切断幅tが厚さに相当するシート状はんだを、複数枚切り出すことができる。そして、切り出された直方体形状のシート状はんだにおいて、主面以外の向かい合う2組の面のうち、1組がプレス加工面となっている。本工程により、Snの結晶のc軸がシートの厚さ方向に垂直に配向された、図1に示すシート状はんだを得ることができる。
このようにして得られたシート状はんだは、電子機器の接合に用いることができ、特には、半導体素子と、導電性接続部材との接合に用いることができる。このとき、図1に示すXY平面に平行な面が、シート状はんだの主面mであり、主面m及びこれに対向する面fがそれぞれ、半導体素子の電極面またはリードフレーム等の導電性接続部材に接するように配置することができる。これにより、接合前の段階で既にc軸を、シート状はんだの厚さ方向に垂直な方向に配向させることができる。本実施形態によるシート状はんだは、特に、電流密度が500A/cm以上、または1000A/cm以上といった大電流を流すためのはんだ接合部の製造に好ましく用いることができる。
[第2実施形態:はんだ接合部]
本発明は第2実施形態によれば、はんだ接合部に関する。本実施形態によるはんだ接合部は、半導体素子と、導電性接続部材との間に第1実施形態によるシート状はんだが溶融されたはんだ接合層を備える。
図4は、本実施形態によるはんだ接合部の一例を示す概念的な断面図である。図4を参照すると、半導体素子11、溶融されたシート状はんだ1、導電性接続部材の一例であるリードフレーム18が積層されている。なお、溶融されたシート状はんだとは、はんだ材が加熱溶融され、被接合材と接合された固体の状態を示す。
本実施形態によるはんだ接合部は、半導体素子11のおもて面電極と、リードフレーム18とが、溶融されたシート状はんだ1により接合されてなる。シート状はんだ1は、第1実施形態において説明したとおり、図1に示す主面mまたはこれに対向する面fが、それぞれ、半導体素子11の電極または導電性接続部材(リードフレーム18等)に接するように配置され、溶融されている。そして、接合時の加熱の溶融により、はんだ合金を構成するSn結晶のc軸配向性が実質的に変化することはなく、はんだ接合部においても、Snの結晶のc軸がシートの厚さ方向Zに垂直に配向されている。図4中、c軸の配向方向を、矢印cで示す。図示するはんだ接合部においては、半導体素子11からリードフレーム18に、矢印Iで示す向き、またはその逆方向に電流が流れる。すなわち、配向方向cが、電流の向きIに垂直になっているため、エレクトロマイグレーションを生じにくいはんだ接合部となっている。なお、はんだ接合部は半導体素子11と積層基板の第2導電性板123aとをシート状はんだ1により接合されて形成された部分であってもよい。
図6は、従来のはんだ材を用いたはんだ接合部の一例を示す概念的な断面図である。はんだ接合部は、半導体素子111のおもて面電極と、リードフレーム118とが、溶融されたはんだ101により接合されてなる。従来のはんだ材を溶融したはんだ接合層では、Sn結晶格子のc軸がシートの厚さ方向Zに対し、一定の配向性を持たず、ランダムに配向している。すなわち、矢印Iで示す電流の向きと、矢印cで示すSn結晶格子のc軸とは、垂直になっていない。これにより、例えば、電流密度が500A/cm以上の大電流を流すと、エレクトロマイグレーションにより原子が移動して欠損部を生じ、断線などにつながる場合があった。本発明によれば、従来と比較して、はんだ接合部におけるSn結晶格子のc軸を配向させることで、断線などの欠陥が生じにくく、電流密度が500A/cm以上、または1000A/cm以上といった大電流を流す場合において特に信頼性の高いはんだ接合部を得ることができる。
なお、導電性部材は、リードフレーム18には限定されず、アルミワイヤや、ピンなど、半導体装置に用いられる任意の導電性部材であってよい。
次に、はんだ接合部の製造方法について説明する。はんだ接合部の製造方法は、シート状はんだと、被接合部材である半導体素子、リードフレームの接触面を上記の通りにすればよく、また、シート状はんだと、被接合部材である半導体素子、積層基板の第2導電性板の接触面を上記の通りにすればよい。他の条件は、通常の接合方法と同様に実施することができる。すなわち、シート状はんだを、酸等を用いてエッチングし、酸化膜を除去する前処理工程と、還元雰囲気中で加熱して、はんだ接合を行う工程とを含む。還元雰囲気は、水素などによる雰囲気であってよい。はんだ接合の温度は、はんだ合金の組成により適宜決定することができる。
理論に拘束される意図はないが、はんだの溶融時には、Snの結晶格子の配向の局所的なランダム化が生じることが知られている。しかしながら、はんだの固化時には数100μmレベルの大きな結晶になるため、溶融前のはんだの平均配向方向が溶融後の配向を決めると考えられる。はんだ合金を溶融して接合した後に生成するはんだ接合層のc軸配向性は、はんだ接合層を切り出して、EBSD測定を行うことにより確認することができる。より具体的には、製造後の半導体装置から、はんだ接合層を切り出して、加工時のプレス加工面に平行な面が測定面となる試料を調製し、当該試料のEBSD測定を行って、c軸配向比率Aを得ることができる。
[第3実施形態:半導体装置]
本発明は第3実施形態によれば、半導体装置に関する。本実施形態による半導体装置は、第2実施形態によるはんだ接合部を備える。
図5は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の一例である、パワー半導体モジュールの概念的な断面図を示す。図示するパワー半導体モジュールは、放熱板13上に半導体素子11および積層基板12を接合層17にて接合した積層構造を有し、半導体素子11とリードフレーム18との間に第1実施形態によるシート状はんだが溶融されたはんだ接合層1を備えている。放熱板13には、外部端子15を内蔵したケース16が接着されている。半導体素子11と積層基板12の電極は、導電性接続部材であるリードフレーム18で接続され、半導体素子11と外部端子15はアルミワイヤ14にて接続されている。半導体素子11と積層基板12、リードフレーム18、導電性接続部材であるアルミワイヤ14等の被封止部材上に接触して封止材20が充填されている。
半導体素子11は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)あるいはダイオードチップ等のパワーチップである。半導体素子としては、Siデバイスであってもよく、SiCデバイス、GaNデバイス、ダイヤモンドデバイス、ZnOデバイスなどのワイドギャップ半導体デバイスであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。例えば、Si-IGBTとSiC-SBDを用いたハイブリッドモジュールなどを用いることができる。半導体素子11の搭載数は、1つであってもよく、複数搭載することもできる。
積層基板12は、絶縁基板122とその一方の主面に形成される所定の形状(パターン)の第1導電性板121と、他方の主面に形成される第2導電性板123a、bとから構成することができる。絶縁基板122としては、電気絶縁性、熱伝導性に優れた材料を用いることができる。絶縁基板122の材料としては、例えば、Al、AlN、SiNなどが挙げられる。特に高耐圧用途では、電気絶縁性と熱伝導性を両立した材料が好ましく、AlN、SiNを用いることができるが、これらには限定されない。第1導電性板121、第2導電性板123a、bとしては、加工性に優れるCu、Alなどの金属材料を用いることができる。また、導電性板は、防錆などの目的で、Niめっきなどの処理を行ったCu、Alであってもよい。絶縁基板122上に導電性板121、123a、bを配設する方法としては、直接接合法(Direct Copper Bonding法)もしくは、ろう材接合法(Active Metal Brazing法)が挙げられる。図示する実施形態においては、絶縁基板122上に、非連続的に2つの第2導電性板123a、bが設けられ、一方123aが、半導体素子11と接合される電極、他方123bがリードフレーム18と接続される電極として機能する。
リードフレーム18は、半導体素子11と第2導電性板123b等とを接続する導電性接続部材である。具体的には、半導体素子11の電極(表電極)に、第1実施形態によるシート状はんだを溶融した接合層1で接合される。また、第2導電性板123b等の配線部とも、一般的なはんだ材などの接合層17で接合することができるが、第1実施形態によるシート状はんだ1を用いて接合してもよい。リードフレーム18は、銅、または銅を含む合金などの金属であってよい。リードフレーム18の表面にはめっき法などにより、NiまたはNi合金層、あるいはCrまたはCr合金層を形成してもよい。この場合、NiまたはNi合金層、あるいはCrまたはCr合金層の膜厚は20μm以下程度とすることができる。なお、半導体素子11と第2導電性板123b等とを接続する導電性接続部材としては、リードフレームの他に、ピン形状の取出し端子や、ワイヤボンディングに用いられるアルミニウムや銅などのワイヤなどが可能である。
放熱板13としては、熱伝導性に優れた銅やアルミニウムなどの金属が用いられる。また、腐食防止のために、放熱板13にNiまたはNi合金を被覆することもできる。放熱板は、水冷や空冷などの機能を有する冷却器であってもよい。
接合層17は、一般的な鉛フリーはんだを用いて形成することができる。例えば、Sn-Ag-Cu系、Sn-Sb系、Sn-Sb-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Sb-Ag-Cu系、Sn-Cu-Ni系、Sn-Ag系などを用いることができるが、これらには限定されない。あるいは、ナノ銀粒子の焼結体などの微小金属粒子を含む接続材を用いて接合層を形成することもできる。一般的な鉛フリーはんだに代えて、第1実施形態によるシート状はんだを溶融した接合層を用いることもできる。
ケース16は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂であってよい。
本実施形態において、半導体素子11、積層基板12、並びにリードフレーム18およびアルミワイヤ14などの導電性接続部材を含む部材を、被封止部材とも指称する。被封止部材上には、封止材20が充填される。封止材20は、半導体素子11、積層基板12、および導電性接続部材に接触して、これらの被封止部材の周囲を被覆する。
封止材20は、熱硬化性樹脂主剤と、硬化剤と、無機充填材とを含み、任意選択的に、硬化促進剤、添加剤を含んでもよい熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
熱硬化性樹脂主剤としては、特に限定されず、例えば、耐熱性、高絶縁性を有するエポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂等を挙げることができる。中でも、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が、寸法安定性や耐水性・耐薬品性および電気絶縁性が高いことから、特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などの脂肪族エポキシ樹脂、単官能型エポキシ樹脂、2官能型エポキシ樹脂、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂などの脂環式エポキシ樹脂、またはこれらの任意の混合比による混合物を用いることが好ましい。
無機充填材は、熱伝導率が高く、線膨張係数が小さい金属酸化物もしくは金属窒化物であってよく、例えば、溶融シリカ、シリカ(酸化ケイ素)、アルミナ、水酸化アルミニウム、チタニア、ジルコニア、窒化アルミニウム、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維等が挙げられるが、これらには限定されない。無機充填材は、平均粒径が、0.2~20μm程度の無機充填材を用いることが好ましい。封止材20における無機充填材の添加量は、マトリックス樹脂の質量を100質量部としたとき、100~600質量部であることが好ましく、200~400質量部であることがさらに好ましい。無機充填材の配合量が100質量部未満であると封止材20の熱膨張係数が高くなって剥離やクラックが生じ易くなる場合がある。配合量が600質量部よりも多いと組成物の粘度が増加して押出し成形性が悪くなる場合がある。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂主剤、好ましくはエポキシ樹脂主剤と反応し、硬化しうるものであれば特に限定されないが、酸無水物系硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂主剤100質量部に対し、50質量部以上であって170質量部以下程度とすることが好ましく、80質量部以上であって150質量部以下程度とすることがより好ましい。硬化剤の配合量が50質量部未満であると架橋不足からガラス転移温度が低下する場合があり、170質量部より多くなると耐湿性、高熱変形温度、耐熱安定性の低下を伴う場合がある。
封止材20を構成する熱硬化性樹脂組成物には、さらに、任意選択的な成分として、硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤の添加量は、熱硬化性樹脂主剤100質量部に対して、0.01質量部以上であって50質量部以下とすることが好ましく、0.1質量部以上であって20質量部以下とすることがより好ましい。
封止材20を構成する熱硬化性樹脂組成物はまた、その特性を阻害しない範囲で、任意選択的な添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、樹脂を着色するための顔料、耐クラック性を向上するための可塑剤やシリコンエラストマーが挙げられるが、これらには限定されない。これらの任意成分、およびその添加量は、半導体装置および/または封止材20に要求される仕様に応じて、当業者が適宜決定することができる。
次に、図示するパワー半導体モジュールの製造方法について説明する。放熱板13、積層基板12、および半導体素子11を接合し、放熱板13にケース16を取り付ける。その後、第1実施形態によるシート状はんだを半導体素子11のおもて面電極に載置し、リードフレーム18を接合する。詳細な接合条件は、第2実施形態において説明したとおりである。また、アルミワイヤ14にてワイヤボンディングを行う。次いで、ケース16内に、封止材20を構成する熱硬化性樹脂組成物を注入し、加熱硬化する。加熱硬化の工程は、例えば、二段階硬化とすることができ、熱硬化性樹脂主剤としてエポキシ樹脂を用いる場合には、90~120℃で1~2時間加熱して半硬化状態(仮硬化)とする。その後、さらに、175~185℃で1~2時間にわたり加熱を実施することができる(本硬化)。仮硬化から連続的に温度を上昇させて本硬化を行うことができる。しかし、特定の温度、時間には限定されず、二段階硬化とする必要がない場合もある。
図示するパワー半導体モジュールの変形形態として、さらにプライマー層を備えていてもよい。プライマー層は、積層基板、半導体素子、および前記導電性接続部材を含む被封止部材と、封止材20との界面に形成することができる。プライマー層は、封止材20と被封止部材との界面において、応力緩和作用を有し、密着性を確保する観点から好ましく用いられる場合がある。プライマー層は、ポリアミド、ポリイミド、またはポリアミドイミドを含む樹脂からなる層であってよい。
封止材20が、さらに1種または2種以上の異なる組成の熱硬化性樹脂層から形成されていてもよく、熱硬化性樹脂封止層以外の樹脂封止層を備えていてもよい。例えば、封止材20の、大気に接触する表面を覆う熱可塑性樹脂層を備えてもよい。この場合にも、プライマー層を備えていてもよく、備えていなくてもよい。
プライマー層を備えるパワー半導体モジュールの製造方法は、被封止部材を組み立てた後、封止材20を構成する熱硬化性樹脂組成物を注入する前に、プライマー層を形成する。プライマー層は、図5に示す半導体素子11、リードフレーム18、積層基板12、アルミワイヤ14、ケース16を含む被封止部材の全面に、例えばスプレー塗布、浸漬方式やディスペンサーによる塗布等により設けることができる。プライマー層の形成後は、窒素ガスを導入したイナートオーブン中で、段階的に70~100℃で、60分~80分程度加熱し、さらに200~220℃で、60~80分加熱することが好ましい。この加熱操作により、リードフレーム18を構成するCuを加熱し、溶媒を気化させプライマーを固体化することができる。プライマー層の形成後は、図5に示すパワー半導体モジュールの製造方法と同様に、封止材20による絶縁封止を行うことができる。任意選択的に追加の樹脂封止層を設ける場合は、通常の方法にて追加の樹脂封止層を形成することができる。
図示したパワー半導体モジュールの構成は、一例であって、本発明は当該構成に限定されるものではない。例えば、任意の導電性接続部材を用いてもよく、インプラントピンを用いることもできる。また、導電性接続部材が、リードフレームのみ、あるいはワイヤのみの構成もありうる。導電性接続部材がインプラントピンを備えるモジュールにおいてプライマー層を設ける場合、インプラントピン表面にもプライマー層を形成することができる。導電性接続部材がワイヤのみの構成のモジュールにおいてプライマー層を設ける場合、ワイヤ表面にもプライマー層を形成することができる。
また、ケースを備えないケースレスのパワー半導体モジュールであってもよい。ケースレスのパワー半導体モジュールの構造としては、図示はしないが、例えば図5のリードフレームおよびアルミワイヤに替えて、インプラントピンと、インプラントピンに接合されたプリント基板を含み、これらを含む部材が熱硬化性樹脂封止層により封止された構造が挙げられる。プリント基板としては、ポリイミドフィルム基板やエポキシフィルム基板にCu、Alなどの導電層が形成されているものを用いることができる。インプラントピンとしては、銅を用いた銅ピンを用いることができる。プリント基板の導電層も、インプラントピンも、CuやAlに、防錆などの目的でNiメッキなどの処理を施したものであってもよい。このプリント基板とインプラントピンは、半導体素子どうし、もしくは、半導体素子と積層基板の間を電気的に接続する。インプラントピンと積層基板もしくは半導体素子とは、はんだ接合層により接合することができる。また、積層基板上からインプラントピンを熱硬化性樹脂封止層の外部にまで引き出すことにより、インプラントピンを外部接続端子とすることができる。かかる態様のパワー半導体モジュールの製造は、積層基板、半導体素子、インプラントピン、並びにプリント基板を含む被封止部材を組み立て、任意選択的に積層基板、半導体素子、インプラントピン、並びにプリント基板表面にスプレー塗布等の方法によりプライマー層を形成した後、被封止部材を適切な金型に載置し、熱硬化性樹脂封止層を構成する熱硬化性樹脂組成物を金型に充填して硬化する。このような封止体の成形法としては、真空注型、トランスファー成形、液状トランスファー成形、ポッティングなどが挙げられるが、所定の成形法には限定されない。
本実施形態によれば、第1実施形態によるシート状はんだを用いて、半導体素子と導電性接続部材とを接続したはんだ接合部を備えることで、エレクトロマイグレーションを防止し、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。本実施形態による半導体装置は、特に、電流密度が500A/cm以上、または1000A/cm以上といった大電流を流す用途において、高い信頼性が期待できる。
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
1.シート状はんだの製造
実施例1~6、比較例1、2では、Agを3.5質量%含み、残部がSn並びに不可避不純物からなるSn3.5Agはんだ合金からなるはんだブロックを用いて、シート状はんだを製造した。はじめに、はんだブロックを300℃に加熱して溶融し、100℃まで5℃/min以上で冷却して、Sn結晶のc軸がランダム配向されたはんだブロックを製造した。このはんだブロックにおけるSn結晶のc軸配向性をEBSD法により測定し、c軸配向比率Aの値を得た。Aの値は0.1であり、ランダム配向されていることが確認できた。c軸がランダム配向されたはんだブロックを、圧縮することなく、長さ5000μm×幅5000μm×厚さ100μmに切り出したはんだ材を、比較例1とした。
このはんだブロックを、図3に例示する型に入れて、プレス加工し、加工率の異なる6種のはんだブロックを得た。加工率は、以下で定義される。厚さは、はんだブロックの厚さである。
加工率=(初期厚さ-加工後厚さ)/初期厚さ
プレス加工されたはんだブロックを、プレス加工の方向と平行な方向に切断した。より具体的には、図3に示す切断箇所5に沿ってLM平面に平行に切断して、切断面が主面となる、長さ5000μm×幅5000μm×厚さ100μmのシート状はんだを得た。これらを実施例1~6とした。
加工率75%でプレス加工したはんだブロックを、レス加工の方向と平行な方向が厚さとなるように加工した。より具体的には、図3に示すMN平面が主面となり、L方向が厚さ方向となるように切り抜き、長さ5000μm×幅5000μm×厚さ100μmのサイズのシート状はんだを得た。これを比較例2とした。
はんだ合金の組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7~14のシート状はんだを得た。なお、実施例8は、実施例1と同じサンプルである。表中の組成表記、SnX[元素A]Y[元素B]は、元素AをX質量%、元素BをY質量%含み、残部がSn並びに不可避不純物からなる組成を表す。
2.半導体装置の製造
製造したシート状はんだを、第3実施形態によるパワー半導体モジュール内の半導体素子とリードフレームを接合するはんだ接合部に適用して、その信頼性を評価した。半導体素子はSi製のIGBTを用い、銅からなるリードフレームを用いた。接合条件は、10体積%の水素を含む水素還元雰囲気(NとHの体積比が、9:1)で、310±5℃にて、5分間加熱接合した。
3.連続通電試験
製造した半導体装置に、電流密度800A/cmで500時間の連続通電試験を行った。その後、電流電圧特性を評価し、正常であれば〇、異常値であれば×とした。正常とは、初期(試験前)の電流電圧特性(定格のON電流を流した時の電圧、および素子に定格の耐圧電圧を印加した時の漏れ電流)からの増減幅が20%以内のものを、異常値とは、増減幅がそれより大きいものをいうものとする。
4.信頼性評価
信頼性は、Tパワーサイクル耐量(TP/C耐量)により評価した。パワーサイクル試験は、40~175℃(ΔT135℃)で、通電運転1秒、休止4秒の条件を1サイクルとして、電気特性が異常値になるまでのサイクル数を調べた。電流密度は300A/cmとした。
実施例1~6及び比較例1、2のはんだ合金の加工率、シート状はんだのc軸配向比率Ap(Av)、連続通電試験の結果並びに、TP/C耐量を表1に示す。なお、比較例2の加工方向は、実施例1~6、比較例1の加工方向と90°異なる方向とし、加工率75%にプレス加工した面を、素子およびリードフレームの接合面に平行に配置した。表1から、c軸配向比率Apは、0.25~0.98、より好ましくは0.32~0.94で、EMを抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができた。はんだブロックの加工率は、5~99%で効果があり、より好ましくは25~90%であることが示された。なお、比較例1のc軸配向比率Apの値0.1は、c軸がランダム配向していることを示し、比較例2のc軸配向比率Apの値0.01は、c軸がシート状はんだの厚さ方向に平行に配向していることを示す。比較例1、2については、1kサイクル経過後の連続通電試験後の電流電圧特性評価で異常値を示していた。すなわちP/C耐量は1kサイクル未満であった。
これらの結果より、Sn結晶のc軸を接合面に平行に配向させ、c軸配向比率Aを1に近い値とするとEMは抑制された。しかし、c軸が接合面に平行に配向しすぎると、パワーサイクル寿命が若干低下する結果となった(実施例6)。理論に拘束される意図はないが、c軸が接合面に平行に配向しすぎるとせん断応力に弱くなると推測される。
実施例7~14のはんだ合金の組成、各組成におけるSnの含有質量%、加工率、シート状はんだのc軸配向比率Ap、半導体装置の連続通電試験の結果並びに、TP/C耐量を表に示す。表2から、Snを主成分とする各種はんだ材についても、Snが80%以上であればほぼ同様に塑性変形し、c軸を所定の方向に配向させることができることが示された。Snが82%の実施例14は若干P/C耐量が他より悪かった。言い換えると、c軸配向比率Apが0.2以上が好ましく、0.23以上がより好ましいことがわかる。表1の結果と合わせると、c軸配向比率Apは、0.2~0.98が好ましく、0.32~0.94がより好ましい。粒界に金属間化合物を形成する実施例12のSn6Sb4Ag.2Ni0.001Ge等についても、塑性変形し、EMは生じなかった。
本実施例によれば、エレクトロマイグレーションを防止するシート状はんだを提供し、信頼性の高いはんだ接合部ならびに半導体装置を提供することができた。
1 シート状はんだ、m 主面、f 主面に対向する面、p プレス加工面
2 はんだブロック、3 下部金型(下)、4 上部金型
11 半導体素子、12 積層基板、121 導電性板、122 絶縁基板
123a、b 導電性板、13 放熱板、14 アルミワイヤ、15 外部端子
16 ケース、17 接合層、18 リードフレーム、 20 封止材

Claims (9)

  1. Snを主成分とし、添加元素と、不可避不純物とを含むはんだ合金を含有する、プレス加工されたシート状はんだであって、
    プレス加工された面が主面に垂直な面であり、Snの結晶のc軸が前記シートの厚さ方向に垂直な方向に配向されたシート状はんだ。
  2. 前記プレス加工された表面における、Snの結晶のc軸配向性の指標であるc軸配向比率が、0.3以上である、請求項1に記載のシート状はんだ。
  3. 前記c軸配向比率が、0.95以下である、請求項2に記載のシート状はんだ。
  4. 前記添加元素が、Sb、Cu、Ag、Ni、Ge、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のシート状はんだ。
  5. 半導体素子と、導電性接続部材との間に、請求項1~4のいずれか1項に記載のシート状はんだが溶融されたはんだ接合層を備えるはんだ接合部。
  6. 前記導電性接続部材がリードフレームである、請求項5に記載のはんだ接合部。
  7. 請求項5または6に記載のはんだ接合部を備える半導体装置。
  8. Snを主成分とし、添加元素と、不可避不純物とを含むはんだ合金をプレス加工し、プレス加工された面が主面に垂直な面であり、Snの結晶のc軸が前記シートの厚さ方向に垂直に配向されたシート状はんだを製造する工程と、
    半導体素子と、前記シート状はんだと、導電性接続部材とを積層する工程と、
    前記シート状はんだを溶融させる工程と
    を備える、半導体装置の製造方法。
  9. 前記プレス加工する工程が、Snの結晶のc軸配向性の指標であるc軸配向比率が0.3以上となるまで加圧する工程である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
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