JP7768012B2 - 積層圧電シート - Google Patents

積層圧電シート

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Description

本発明は、積層圧電シートに関する。
エレクトレットとは、電気を通しにくい高分子材料や無機質材料等を熱的又は電気的に処理することで、その材料の一部を半永久的に分極させたものである。
例えば、多孔性樹脂フィルムを用いた多孔エレクトレットは、優れた圧電効果を示すことが知られており、振動発電、センサーデバイス等に広く用いられている。
エレクトレットフィルムに保持された電荷を利用して発生させた電荷を外部に取り出すためには、エレクトレットフィルムの両面に電極層を形成する必要がある。しかし、エレクトレットフィルムの両面に電極を形成すると、エレクトレットフィルムの表面に保持された電荷が消失してしまい、圧電特性が大きく減退してしまう問題点があった。
このような課題に対し、多孔エレクトレットフィルムと電極とを接着剤を介さずに封止することで、高い圧電特性を達成できることが報告されている(特許文献1)。
また、エレクトレット化フィルムの一面の一部分のみに粘接着層を形成し、その粘接着層上に電極層を形成することで密着性を改善する方法も報告されている(特許文献2)。
特開2021-097107号公報 国際公開第2019/208580号
しかし、特許文献1に記載の積層圧電シートは、多孔エレクトレットフィルムと電極との密着性が十分でないため、大判のセンサーデバイスでは位置によって信号強度が大きくばらつく場合があった。また、特許文献2に記載のエレクトレット化積層体は、エレクトレット化フィルムの一部分は粘接着層により失活しているため、十分な圧電特性が得られない場合があった。
また、エレクトレットフィルムを量産化するためには、連続的にエレクトレットフィルムを製造することが求められる。しかし、上述の通り、フィルムを帯電処理してから電極を両面に形成すると、エレクトレットフィルムの表面に保持された電荷が消失してしまい、圧電特性が大きく減退してしまう。一方で、フィルムの両面に電極を形成してから帯電処理を行うと、ロールtoロール等の連続的な方法では巻き出し装置から巻き取り装置まで感電してしまうほか、電極に遮蔽されてエレクトレットフィルムが十分に電荷を保持できない場合があった。
そこで、本発明が解決しようとする第一の課題は、エレクトレットフィルムの圧電特性を損なうことなく、出力電圧のばらつきが小さい積層圧電シートを提供することである。
また、本発明が解決しようとする第二の課題は、エレクトレットフィルムの圧電特性を良好にしつつ、連続的に製造可能な圧電シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、エレクトレットフィルムの一方の面にのみ電極が積層され、一定以上の電極との密着強度を持つ積層圧電シートによって、上記課題を解決することができることを見出し本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]エレクトレットフィルムの一方の面にのみ電極が積層されており、エレクトレットフィルムと電極との密着強度が1N/cm以上である積層圧電シート。
[2]以下の方法により測定される出力電圧のばらつきが0.36V未満である、上記[1]に記載の積層圧電シート。
<出力電圧のばらつき>
前記積層圧電シートを電極が下となるように置き、その上にアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルムを、蒸着面が下となるように置き、両者を厚さ100μmのポリエステルフィルム製のクリアファイルで挟み、前記積層圧電シートと、蒸着面のそれぞれをオシロスコープに接続し、これら積層体に対して、高さ40mmから、直径40mm、重さ2.7gのピンポン玉を落下せしめることで、発生するパルスの最大電圧をオシロスコープにて測定する。この作業を5回行い、測定値の標準偏差を「出力電圧のばらつき」とする。
[3]前記エレクトレットフィルムが多孔エレクトレットフィルムである、上記[1]又は[2]に記載の積層圧電シート。
[4]前記多孔エレクトレットフィルムがポリオレフィン系樹脂を主成分としてなる上記[3]に記載の積層圧電シート。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂が80%以上のβ晶生成能を有するポリプロピレン系樹脂である上記[4]に記載の積層圧電シート。
[6]前記多孔エレクトレットフィルムの空隙率が5%以上60%以下である上記[3]~[5]のいずれかに記載の積層圧電シート。
[7]前記エレクトレットフィルムの厚さが10μm以上200μm以下である上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層圧電シート。
[8]エレクトレットフィルムの一方の面にのみ電極が積層され、エレクトレットフィルムと電極との密着強度が1N/cm以上である捲回体。
[9]第1の電極、第1のエレクトレットフィルム、第2のエレクトレットフィルム、第2の電極がこの順に積層され、エレクトレットフィルムと電極との密着強度が1N/cm以上である圧電シート。
[10](A)エレクトレットフィルムの一方の面に電極が積層された積層圧電シートを2枚得る工程、(B)一方の積層圧電シートのエレクトレットフィルム側の表面の極性を正に帯電させて第一の積層圧電シートを得、他方の積層圧電シートのエレクトレットフィルム側の表面の極性を負に帯電させて第二の積層圧電シートを得る工程、(C)前記第一の積層圧電シートと、前記第二の積層圧電シートを、エレクトレットフィルム側の表面同士が接するように積層する工程、を有する圧電シートの製造方法。
[11]前記(A)工程において、エレクトレットフィルムと電極が接着剤を介して積層される上記[10]に記載の圧電シートの製造方法。
[12]前記(C)工程において、積層圧電シートのエレクトレットフィルム側の表面同士が接着剤を介して積層される上記[10]又は[11]に記載の圧電シートの製造方法。
本発明が提案する積層圧電シートは、良好な圧電特性を有し、エレクトレットフィルムと電極との密着性が良好であるため、出力電圧のばらつきも小さい。
また、本発明が提案する積層圧電シートは、エレクトレットフィルムの一方の面にのみ電極が形成されているので、ロールtoロール等の連続的な方法で帯電処理を行うことができる。
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の内容は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
[積層圧電シート]
本発明の積層圧電シートは、エレクトレットフィルムと、電極との少なくとも2種を積層してなる圧電シートであり、エレクトレットフィルムと電極の間の密着強度が1N/cm以上であることを特徴とする。エレクトレットフィルムと電極の間の密着強度が1N/cm以上であることで、例えば大判のセンサーデバイスであっても、位置によって信号強度がばらつくことがない。以上の観点から、エレクトレットフィルムと電極の間の密着強度は6N/cmよりも高いことがより好ましく、8N/cm以上であることがさらに好ましい。一方、上限については特に制限はないが、デバイスの分解、分別、およびリサイクルの観点から80N/cm以下であることが好ましい。
以下、本積層圧電シートの特性について説明する。
(1)出力電圧
本発明の積層圧電シートの出力電圧は1V以上100V以下が好ましく、2V以上50V以下がより好ましく、3V以上10V以下がさらに好ましい。出力電圧が上記下限値以上であることで、センサーとして使用した場合に十分な感度を得ることができる。一方で、出力電圧が上記上限値以下であることで、センサーやアクチュエーターとして組み込んだ際の火花放電のリスクを低減することができる。
なお、本発明の積層圧電シートの出力電圧は以下の方法で測定される。
<出力電圧の測定方法>
積層圧電シートを電極が下となるように置き、その上にアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルムを、蒸着面が下となるように置き、両者を厚さ100μmのポリエステルフィルム製のクリアファイルで挟み、積層圧電シートと、蒸着面のそれぞれをオシロスコープに接続し、これら積層体に対して、高さ40mmから、直径40mm、重さ2.7gのピンポン玉を落下せしめることで、発生するパルスの最大電圧をオシロスコープにて測定する。この作業を5回行い、平均値を算出する。
(2)出力電圧のばらつき
本発明の積層圧電シートは、出力電圧のばらつきが0.36V未満であるのが好ましく、0V以上0.34V以下であるのがより好ましい。
なお、出力電圧のばらつきは、上記<出力電圧の測定方法>において得られた5回の測定値の標準偏差である。
(3)厚さ
本発明の積層圧電シートの厚さは50μm以上500μm以下であることが好ましい。下限については、70μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。一方で上限としては、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。厚さが50μm以上であれば、応答性の積層圧電シートを得ることができる。また、厚さが500μm以下であれば、ロールtoロールで搬送・捲回することができ、後の加工が容易である。
なお、厚さの測定は、1/1000mmのダイアルゲージにより測定することができる。
以下、本発明の積層圧電シートの構成について説明する。
1.エレクトレットフィルム
本発明の積層圧電シートは、少なくとも1枚のエレクトレットフィルムを含んでなる。エレクトレットフィルムの種類は、圧電特性を有するものであれば特に限定されないが、圧電特性をより高める点から、多孔エレクトレットフィルムであることが好ましい。また、エレクトレットフィルムは、多孔フィルムを帯電させたものを使用することがより好ましい。
多孔エレクトレットフィルムを用いる場合、フィルムの多孔化方法は特に限定されないが、例えば、化学的又は物理的な発泡、延伸による多孔化が挙げられる。中でも、緻密な多孔構造が得られ、孔の形状も制御しやすい点から、延伸による多孔化が好ましい。
エレクトレットフィルムの材料としては、ポリオレフィン系樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられるが、環境負荷が小さく、帯電処理を行いやすいという点でポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
本発明の積層圧電シートに用いるエレクトレットフィルムは、それ自身単層構成でも良いが、多孔構造や材質の異なる層を2層以上積層していてもかまわない。この場合、フィルム同士を接着剤等で貼り合わせて作成することもできるが、多層口金を用いた場合、一括で積層構造を得ることができ、生産性の面で好ましい。
(1)ポリオレフィン系樹脂
本発明の積層圧電シートを構成するエレクトレットフィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましく、中でもポリプロピレン系樹脂を主成分とすることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネンもしくは1-デセンなどのα-オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂は、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80~99%であることが好ましく、より好ましくは83~98%、さらに好ましくは85~97%である。アイソタクチックペンタッド分率が80%以上であれば、機械的強度が良好である。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルでさらに規則性の高い樹脂が開発された場合においてはこの限りではない。アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素-炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.(Macromol.8,687(1975))に準拠する。
また、ポリプロピレン系樹脂は、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが1.5~10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0~8.0、さらに好ましくは2.0~6.0である。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnを1.5以上とすることで、十分な押出成形性が得られ、工業的に大量生産が可能である。一方、Mw/Mnを10.0以下とすることで、十分な機械的強度を確保することができる。Mw/MnはGPC(ゲルパーエミッションクロマトグラフィー)法によって測定される。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.5~15g/10分であることが好ましく、1.0~10g/10分であることがより好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることで、成形加工時において十分な溶融粘度を有し、高い生産性を確保することができる。一方、MFRを15g/10分以下とすることで、十分な強度を確保することができる。なお、MFRはJIS K7210-1(2014年)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
なお、ポリプロピレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
本発明に好適に用いることのできるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」「WINTEC」「WAYMAX」(日本ポリプロ社製)、「バーシファイ」「ノティオ」「タフマーXR」(三井化学社製)、「ゼラス」「サーモラン」(三菱ケミカル社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」(住友化学社製)、「プライムポリプロ」「プライムTPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」「Adsyl」「HMS-PP(PF814)」(サンアロマー社製)、「インスパイア」(ダウケミカル社製)など市販されている商品を使用できる。
本発明の積層圧電シートに用いる多孔エレクトレットフィルムは、結晶形態の一つであるβ晶を多く含むポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなることが好ましい。β晶を多く含むポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる無孔膜状物はそのものでも帯電処理後に優れた圧電性を示すが、延伸し多孔構造とすることで、より優れた圧電性が得られる。β晶を利用した多孔構造形成は、延伸過程においてポリプロピレン系樹脂中のβ晶が、α晶に転移する過程で多孔化が生じるため、多孔構造は緻密であり、従来公知である無機フィラーや非相溶性有機物の添加による多孔化と比較し、粒径や分散径に依存しないことから、多孔構造の調製に有利である。
本発明の積層圧電シートに用いる多孔エレクトレットフィルムのβ晶活性は、延伸前の無孔膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の無孔膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細かつ均一な孔が多く形成されるため、機械特性に優れ、微細かつ均一な孔形成により優れた耐電圧性を得ることができる。
本発明の積層圧電シートに用いる多孔エレクトレットフィルムのβ晶活性の有無は、示差走査型熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂の示差熱分析を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出されるか否かで判断される。具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、さらに25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断される。
前記β晶活性の有無は、特定の熱処理を施した多孔エレクトレットフィルムのX線回折測定により得られる回折プロファイルでも判断することができる。詳細には、ポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピーク温度を超える温度である170~190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた多孔エレクトレットフィルムについてX線回折測定を行い、プロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°~16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性があると判断される。ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造とX線回折測定に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643-652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361-404(1991)、Macromol.Symp.89,499-511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。
前述したポリプロピレン系樹脂のβ晶活性を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレン系樹脂を添加する方法、及びβ晶核剤を添加する方法などが挙げられるが、本発明においては、β晶核剤を添加してβ晶活性を得ることが特に好ましい。β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進させることができ、β晶活性を有する多孔エレクトレットフィルムを得ることができる。
前記β晶活性の程度については、β晶生成能を測定することで定量化ができる。β晶生成能は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。80%以上であることで、積層圧電シートとした際に好適な圧電性を発揮することができる。上限については特に制限はないが100%以下であることが好ましい。
なお、β晶生成能は以下のようにして測定できる。
β晶生成能は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、多孔エレクトレットフィルムを示差熱分析し、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶生成能(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばポリプロピレン系樹脂が、エチレンが1~4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
本発明の積層圧電シートに用いる多孔エレクトレットフィルムはポリプロピレン系樹脂を主成分とし、具体的にその含有量は50質量%以上、好ましくは70~99.9999質量%、より好ましくは80~99.999質量%、さらに好ましくは90~99.99質量%である。
(2)β晶核剤
本発明の積層圧電シートに用いる多孔エレクトレットフィルムは優れた圧電性を得るために、β晶核剤が含まれていることが好ましい。β晶核剤が含まれていることによって、β晶活性を有することができる。本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられる。また必要に応じて、2種類以上のβ晶核剤を混合して用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2-ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
これらのβ晶核剤の中でも、得られる積層圧電シートの圧電性の面でアミド化合物が好ましい。アミド化合物としては、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキシアミド、N,N’-ジシクロヘキシルテレフタルアミド、N,N’-ジフェニルヘキサンジアミド等が挙げられ、中でもN,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキシアミドが好ましい。アミド化合物は極性が高いアミド基を有するため、結晶構造中に電荷を局在化させることができ、高い圧電特性を有すると考えられる。
一方で、アミド化合物のように極性が高い化合物は、極性が低いポリプロピレン系樹脂とは静電的な相互作用により分散性が悪く、凝集しやすいという問題がある。しかしながら、一般的なβ晶核剤は、一定の温度域ではポリプロピレン系樹脂に溶解するという特性を有している。この特性により、ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤が均一に分散され、β晶核剤由来の結晶が均一に析出されやすくなる。よって、極性が低いポリプロピレン系樹脂中に極性の高いアミド化合物の結晶が均一に分散され、高い圧電特性を有することができると考えられる。
市販されているβ晶核剤の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU-100」、β晶核剤の添加されたプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B-022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)-PP BE60-7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP-LN」などが挙げられる。
本発明の積層圧電シートに用いる多孔エレクトレットフィルム中のβ晶核剤の含有量は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することができるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し0.0001~5.0質量部が好ましく、0.001~3.0質量部がより好ましく、0.01~1.0質量部がさらに好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成成長させ、十分なβ晶活性が確保できる。そのため、多孔フィルムとした際にも十分なβ晶活性が確保でき、帯電処理することで所望の圧電性を有する多孔エレクトレットフィルムが得られる。一方、5.0質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
(厚さ)
本発明の積層圧電シートに用いるエレクトレットフィルムの厚さは、好ましくは10μm以上200μm以下である。厚さを上記範囲内とすることで、積層圧電シートを必要以上に厚くすることなく、圧電特性を良好にできる。このような観点から、エレクトレットフィルムの厚さは、より好ましくは15μm以上150μm以下、さらに好ましくは20μm以上120μm以下である。
(空隙率)
本発明の積層圧電シートが多孔エレクトレットフィルムを有する場合、当該多孔エレクトレットフィルムの空隙率は、好ましくは5%以上60%以下である。空隙率を上記範囲内とすることで、外圧による塑性変形による圧電特性の劣化を抑制できるという効果がある。好ましくは7%以上55%以下、さらに好ましくは9%以上50%以下である。
空隙率の測定方法は以下のとおりである。
測定試料の実質量W1を測定し、多孔エレクトレットフィルムの原料である樹脂組成物の密度に基づいて空隙率が0%の場合の質量W0を計算し、これらの値から下記式に基づいて空隙率を算出する。
空隙率(%)={(W0-W1)/W0}×100
(添加剤)
本発明の積層圧電シートに用いるエレクトレットフィルムには、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤、導電剤、エラストマーなどの各種添加剤が適宜含まれていてもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂組成物が含まれていても良い。
2.電極
本発明の積層圧電シートは、エレクトレットフィルムの一方の面にのみ、電極となる層を有していることが特徴である。電極となる層は導電性を有していれば良く、アルミニウム箔、銅箔、銀箔、金箔、ニッケル箔、スズ箔などの金属箔、カーボンシート、導電性塗料、導電ゴムシートなどの樹脂との複合体、アルミニウム、金、ITOなどの無機蒸着膜が好適に用いられる。
電極の厚さとしては1nm以上100μm以下が好ましく、2nm以上50μm以下がより好ましく、5nm以上30μm以下がさら好ましい。1nm以上であることで、電極として導電安定性を発現できる。一方で100μm以下であることで、積層圧電シートとした際のフレキシブル性を担保することができる。
3.接着層
本発明の積層圧電シートにおいて、エレクトレットフィルムと電極の間に接着層を有していてもよい。積層圧電シートの製造時などにおける電極の位置ずれを防止できる点で好ましい。
これに対し、例えば、特許文献1に開示される積層圧電シートでは、多孔エレクトレットフィルムと電極の間に接着層を介在させない。接着層によって、多層圧電シートの起電力が低下し、圧電特性が損なわれることを防ぐためである。これは接着層を構成する接着剤が多孔エレクトレットフィルムの孔に侵入することに起因すると考えられる。
しかしながら、本発明では、接着層を形成してから帯電処理を行うことで、接着層により、多層圧電シートの起電力が低下したり、圧電特性が損なわれたりすることがなく、好ましい。
エレクトレットフィルムと電極を介在させる接着層は、導電性を有してもよいし、導電性を有さなくてもよい。導電性を有することで電極タブとの導通が安定する効果がある。
接着層は、感圧接着性を有する粘着層であってもよいし、感圧接着性を有さなくてもよいが、感圧接着性を有する粘着層とすることが好ましい。粘着層とすることで、電極及び保護フィルムを、粘着層を介在させて積層し加圧するだけで電極と保護フィルムを接着させることができる。
接着層は、接着剤で構成される限り特に限定されないが、接着層が粘着層である場合、粘着剤により構成されるとよい。粘着剤としては、特に制限はないが、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられ、これらのなかではアクリル系粘着剤が好ましい。
粘着剤は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、合成ゴム、天然ゴム、シリコーン系樹脂などの主ポリマーを含有し、主ポリマーに、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、金属不活性剤、酸化防止剤、顔料、染料などから選択される少なくとも1つの添加剤が配合されてもよい。
また、粘着層が、導電性を有する導電性粘着層である場合、粘着剤としては導電性粘着剤を使用すればよい。導電性粘着剤は、導電性を有する限り特に限定されないが、導電性粒子が配合されることが好ましい。
導電性粒子としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属粉粒子、カーボン、グラファイト等の導電性カーボン粒子、樹脂、中実ガラスビーズ、中空ガラスビーズなどのコア材の表面に金属被覆を有するものなどが挙げられる。これらのなかでもニッケル粉粒子、銅粉粒子、銀粉粒子などの金属粉粒子が導電性、接着性、生産性に優れるため好ましい。
また、導電性粒子の形状は、特に限定されず、球状、表面針状形状などでもよいし、導電性粒子間で結合等を形成し、複数の導電性粒子が連なった形状を有するものなどであってもよい。
導電性粒子は、1種単独で使用してもよいし2種類以上混合して使用してもよい。
導電性粘着剤における導電性粒子の含有量は、所望の導電性を付与できるように適宜調整されればよいが、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、8質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
また、接着層が感圧接着性を有さない場合、接着層を構成する接着剤としては、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、ホットメルト接着剤、湿気硬化性接着剤などを使用すればよい。これらは、導電性を有してもよいし、導電性を有さなくてもよいが、導電性を有する場合、導電性粒子を配合した導電性接着剤とすればよい。導電性粒子の詳細、含有量などは上記のとおりである。
接着層の厚みは、特に限定されないが、積層圧電シートを必要以上に厚くせずに、エレクトレットフィルムと電極の間の接着性を確保する観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上50μm以下がより好ましく、さらに好ましくは4μm以上35μm以下である。
また、電極の一方の面に予め接着層が積層された接着テープを使用してもよく、例えば、銅箔、アルミニウム箔などの金属箔の片面に粘着層が積層された粘着テープなどを使用してもよい。このような粘着テープは、市販品を使用してもよく、例えばDIC社製の「E-2300ND」、「E20CU」、「E30CU」、「E40CU」、「E50CU」、「E65CU」、「52050AD」などを使用できる。
4.その他
本発明の積層圧電シートは、デバイスにする際のハンドリング性や電気特性を向上する目的で、これらに挙げた構成部材以外に、保護層やタブ電極やシールド層、緩衝層などの機能を付与してもよい。
また、本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般的に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層圧電シートの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などの添加剤が挙げられる。
5.積層圧電シートの製造方法
本発明の積層圧電シートの製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の積層圧電シートを製造する方法の一例であり、本発明の積層圧電シートはかかる製造方法により製造される積層圧電シートに限定されるものではない。
本発明の積層圧電シートの製造方法は下記工程を備えていればよく、他の工程や処理をさらに備えていてもよい。
以下、製膜工程、延伸工程、電極形成工程、帯電処理について順次説明する。なお、延伸工程は必須ではなく、適宜省略されてもよい。
(1)製膜工程
製膜工程では、エレクトレットフィルムを構成する材料よりなるフィルムが製膜される。製膜工程においては、エレクトレットフィルムを構成する材料を、公知の方法で製膜する限り特に限定されないが、例えばエレクトレットフィルムを構成する樹脂(材料樹脂)を加熱溶融してフィルム状に製膜すればよく、具体的には、Tダイ法、インフレーション法などにより製膜すればよく、中でもTダイ法を採用するのが好ましい。
また、実用的には、Tダイから材料樹脂を溶融押出してキャストロール(チルロール、キャストドラムなど)によりキャスト成形するのが好ましい。また、材料樹脂は、適宜添加剤が配合され、また2種以上の樹脂成分が混合され、2以上の成分を含む樹脂組成物として製膜されてもよい。
エレクトレットフィルムを構成する材料は、混練装置において混練された後に製膜されてもよい。混練を行う際、用いる混練装置を特に限定するものではない。例えば単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機など、公知の押出機を用いることができる。また、押出機には、設備構造及び必要性に応じて、ベント口に減圧機を接続し、エレクトレットフィルムを構成する材料より水分や低分子量物質を除去してもよい。
上記のとおりキャストロールを使用する場合、Tダイから押出されたシート状の溶融樹脂(樹脂組成物)をキャストロール上に押し出し、回転するキャストロール上に密着させながら引き取りフィルム状物に成形するとよい。また、キャストロールにフィルム状物を密着させるために、タッチロール、エアナイフ、電気密着装置などをキャストロールに付けてもよい。
また、溶融樹脂(樹脂組成物)を冷却しながらフィルムに成形する際、キャストロールの温度は100℃以上が好ましい。より好ましくは110℃以上で、更に好ましくは120℃以上である。本発明ではポリプロピレン系樹脂の結晶部分と非晶部分での延伸工程時による開孔によっても、空隙率の増加が可能であるため、キャストロールの温度を100℃以上とし、高い結晶化度のフィルムを得ることが好ましい。また、キャストロールの温度は140℃以下が好ましく、より好ましくは135℃以下で、更に好ましくは130℃以下である。キャストロールの温度を140℃以下とすることで、フィルム製膜時にキャストロールからの剥離が容易である。
得られるフィルムにおいて、両端部を除いた有効部分の厚さは30μm以上500μm以下であるのが好ましく、中でも40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましく、また、300μm以下がより好ましく、その中でも200μm以下であることがさらに好ましい。フィルムの厚さが30μm以上であれば、延伸時に破断を防ぐことができ、フィルムの厚さが500μm以下であれば、フィルムの延伸を行いやすくすることができる。
エレクトレットフィルムのフィルムでの層構成に関しては、上記の単層構成のみだけでなく、他の層を組み合わせた構成であってもよい。
(2)延伸工程
上記製膜工程で得られたフィルムは、延伸処理が行われてもよい。フィルムに対して延伸処理を行うことで、フィルムを容易に多孔フィルムにすることができる。延伸処理では、フィルムに対して一軸延伸あるいは二軸延伸を行なうとよい。一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。これらのうち逐次二軸延伸を採用すると、多孔構造の制御が比較的容易であり、機械強度や収縮率など他の諸物性とのバランスがとりやすい。逐次二軸延伸は、特に限定されないが、例えば縦延伸した後に、横延伸するとよい。なお、フィルムの流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
延伸温度は、用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、縦延伸温度は、好ましくは60℃以上140℃以下であり、より好ましくは80℃以上120℃以下である。縦延伸温度を140℃以下とすることで、主成分であるポリプロピレン系樹脂の融点以下で破断なく延伸が可能となるため好ましい。一方で、60℃以上とすることで、延伸時の破断が抑制できるため好ましい。
横延伸温度は、好ましくは90℃以上160℃以下であり、より好ましくは100℃以上150℃以下である。前記横延伸温度が規定された範囲内であることによって、空孔が十分に形成され、空隙率を高めることができ、十分な圧電特性を有することができる。また、逐次二軸延伸の場合には、例えば縦延伸時に生じた空孔が拡大されて多孔層の空隙率を増加することができる。
なお、以上説明した温度は、一軸延伸又は逐次二軸延伸の場合の温度であるが、同時二軸延伸の場合の延伸温度は、上記観点から、好ましくは90℃以上140℃以下、より好ましくは100℃以上120℃以下の範囲内で調整すればよい。
延伸倍率は、所望する空隙率に合わせて任意に選択すればよいが、一軸延伸あたりの延伸倍率は1.1倍以上20倍以下が好ましく、より好ましくは1.5倍以上18倍以下であり、さらに好ましくは2倍以上16倍以下である。一軸延伸あたりの延伸倍率を1.1倍以上とすることで白化が進行して、微小なクレーズが伸長することにより、延伸による多孔化が十分に生じる。また、20倍以下とすることで、製造時のフィルムの破断トラブルを抑制することができる。また、逐次二軸延伸の場合には、各軸当たり上記で規定した延伸倍率で延伸することによって、先の延伸時に生じた空孔が後の延伸時に変形することもない。
(3)電極形成工程
続いて、フィルムの一方の面に電極の材質に応じた手法により電極を形成することができる。電極が金属箔であれば、接着剤を用いて貼り合わせることが好ましい。電極が導電性塗料などの樹脂との複合体であれば、溶剤に溶解して塗布、乾燥を行なうこと、あるいは、熱を用いてラミネートすることにより得ることができる。電極が蒸着膜であれば、フィルムを蒸着釜に投入しフィルム表面に蒸着することで得ることができる。これらの方法の中でも生産性が高いことから、接着剤を用いて金属箔を貼り合わせる方法、および溶剤を用いて導電性塗料を塗布、乾燥する方法が好ましい。
(4)帯電処理
ついで、電極を形成した多孔フィルムに帯電処理を行なうことで本発明の積層圧電シートを得ることができる。本発明の積層圧電シートは、一方の面にのみ電極を有するので、アースをとりながら、帯電処理を行うことができる。帯電処理は連続式であってもよいし、バッチ式であってもよい。特に、連続的にロールtoロールで積層圧電シートが製造できるため、高い生産効率を得ることができる。帯電処理を行なう際の電極は、フィルムの表裏に針状電極、ワイヤー電極、ロール状電極、板状電極などの電極間にフィルムを通し、電極間に電界を印加する方式が生産性の面で好ましい。
印加する電界としては好ましくは0.1MV/m以上10MV/m以下、より好ましくは0.2MV/m以上8MV/m以下、さらに好ましくは0.3MV/m以上6MV/m以下である。0.1MV/m以上であることで、多孔エレクトレットフィルムが優れた圧電特性を有することができる。10MV/m以下であることで、帯電処理時の絶縁破壊を生じさせないという効果がある。
(5)その他
ついで、上記で得られた積層圧電シートに、絶縁性や信頼性の向上を目的に保護層やシールド層を形成しても良い。形成する方法としては、接着剤を用いた貼り合わせや、熱ラミネートなどが好適に用いられる。
<捲回体>
本発明の捲回体は、エレクトレットフィルムの一方の面に電極が積層され、エレクトレットフィルムと電極との密着強度が1N/cm以上であることを特徴とする。エレクトレットフィルムの一方の面に電極が積層される態様では、アースをとりながら、帯電処理を施すことができ、ロールtoロールで搬送し、捲回することで捲回体を容易に製造することができる。また、エレクトレットフィルムと電極を貼合した後に帯電処理を行うことができるため、接着剤による圧電効果の低減を抑制することができる。すなわち、エレクトレットフィルムと電極の貼合に、接着剤を用いることができるために、エレクトレットフィルムと電極の高い密着強度を得ることができる。そして、捲回体とすることによって、後の加工が容易であるという利点がある。
<圧電シートおよび圧電シートの製造方法>
本発明の圧電シートは、第1の電極、第1のエレクトレットフィルム、第2のエレクトレットフィルム、第2の電極がこの順に積層され、エレクトレットフィルムと電極との密着強度が1N/cm以上である。本発明の圧電シートは、センサーデバイスとして好適に用いられる。
圧電シートの製造方法としては、前述の積層圧電シートを2枚組み合わせて製造され、より具体的には、以下の(A)~(C)工程によって、製造することができる。
(A)多孔エレクトレットフィルムの一方の面に電極が積層された積層圧電シートを2枚得る工程
(B)一方の積層圧電シートのエレクトレットフィルム側表面の極性を正に帯電させて第一の積層圧電シートを得、他方の積層圧電シートのエレクトレットフィルム側表面の極性を負に帯電させて第二の積層圧電シートを得る工程
(C)前記第一の積層圧電シートと、前記第二の積層圧電シートを、エレクトレットフィルム側表面同士が接するように積層する工程
当該圧電シートにおいては、前記(A)工程において、多孔エレクトレットフィルムと電極が接着剤を介して積層されていてもよい。接着剤を用いても、接着剤によって貼合した後に(B)工程で帯電処理が行われるため、接着剤による多孔エレクトレットフィルムと電極との密着強度の低下が生じない。
また、本圧電シートにおいては、第一の積層圧電シートと第二の圧電シートの電荷が異なるために、静電気的密着により十分な密着力が得られる。さらに、前記(C)工程において、積層圧電シートの表面同士が接着剤を介して積層されてもよい。なお、積層圧電シートは、電極が設けられる付近が帯電されていればよく、多孔エレクトレットフィルム同士の密着に関しては、接着剤の影響は通常はないと考えられる。
<センサーデバイス>
本発明の積層圧電シートは、1つの電極を有するので、極性の異なる積層圧電シートを2組組み合わせることでセンサーデバイスとすることができる。すなわち、上述の圧電シートによりセンサーデバイスを構成することができる。さらにリード線や回路実装を施すことで、高度なデバイスとすることができる。
本発明の圧電シートは、上述のように、エレクトレットフィルムと電極が接着剤を介して貼合されており、密着強度が1N/cm以上であって、強固に密着している。また、エレクトレットフィルム同士も静電的密着に加えて、好適にはさらに接着剤を介して強固に接着しているため、エレクトレットと電極が完全に接着されたセンサーデバイスとすることができる。
本発明の圧電シートは、センサーデバイスとして有用であり、マットセンサー、ロボットハンドなどのセンサー等に好適に用いることができる。また、センサー以外にも、振動発電、水位計、音響検出器として用いることもできる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の積層圧電シートについてさらに詳しく説明するが、本発明は何ら制限を受けるものではない。
以下に、本発明で用いた材料を記載する。
(ポリプロピレン系樹脂)
・A-1;ホモポリプロピレン(ノバテックPP FY6HA、MFR:2.4g/10分[230℃、2.16kg荷重]、Mw/Mn=3.2、日本ポリプロ社製)
(β晶核剤)
・B-1:N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化社製、NU-100)
(酸化防止剤)
・C-1;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトとテトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールとの1:1混合物(IRGANOX-B225、BASF社製)
製造例1(多孔フィルムの製造)
ポリプロピレン系樹脂(A-1)100質量部、β晶核剤(B-1)0.2質量部、酸化防止剤(C-1)0.1質量部を混合して、二軸押出機にて280℃で溶融押出することで樹脂組成物を得た。リップ開度1mmのTダイに繋がれた押出機に前記樹脂組成物を投入して成形を行ない、キャストロールに導かれて厚さが300μmの無孔膜状物を得た。
その後、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、延伸温度100℃で横方向に7倍延伸し、多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムはβ晶活性を有し、含有されるポリプロピレン系樹脂のβ晶生成能は92%、空隙率は20%であった。
(積層圧電シートの製造)
(実施例1)
製造例1で得られた多孔フィルムを10cm角に切り出し、電極として、片面に接着層を有する導電性銅箔粘着テープ「E20CU」(DIC社製)を9cm角に切り出し、多孔フィルムが銅箔両端から0.5cmずつはみ出すように1枚に貼り合わせ、銅箔側がアースロールに接触するようにアース板の上に置き、電極間20mmとした針状電極から-15kVの電荷を60秒間常温で印加することで帯電処理を行った。
(実施例2)
印加電圧を-15kVから+15kVに変更したこと以外は実施例1と同様にして積層圧電シートを得た。
(比較例1)
製造例1で得られた多孔フィルムを10cm角に切り出し、電極として、片面に接着層を有する導電性銅箔粘着テープ「E20CU」(DIC社製)を9cm角に切り出したものを2枚両面に向かい合うように貼り合わせ、アース板の上に置き、電極間20mmとした針状電極から-15kVの電荷を60秒間常温で印加することで帯電処理を行った。
(比較例2)
製造例1で得られた多孔フィルムを10cm角に切り出し、電極として、片面にアルミ箔(三菱アルミニウム社製、FOIL、厚さ11μm)を9cm角に切り出したものを1枚重ね合わせ、アース板の上に置き、電極間20mmとした針状電極から-15kVの電荷を60秒間常温で印加することで帯電処理を行なった。本例の接着方法は表中では静電密着と記載する。
(比較例3)
印加電圧を-15kVから+15kVに変更したこと以外は比較例2と同様にして積層圧電シートを得た。
(センサーデバイスの製造)
(実施例3)
実施例1と2で得た積層圧電シートを、電極が外側となるようにそれぞれ重ね合わせ、電極タブをとりつけ、11cm角のラミネートフィルムで4辺を封止することで、センサーデバイスを得た。
(比較例4)
比較例1で得た積層圧電シートに電極タブをとりつけ、11cm角のラミネートフィルムで4辺を封止することで、センサーデバイスを得た。
実施例および比較例で得られた積層圧電シートおよびセンサーデバイスに関して、出力電圧、出力ばらつき、電極の密着強度、信号強度について以下の方法で測定した。
(1)出力電圧
積層圧電シートを電極が下となるように置き、その上にアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルムを、蒸着面が下となるように置き、両者を厚さ100μmのポリエステルフィルム製のクリアファイルで挟み、積層圧電シートと、蒸着面のそれぞれをオシロスコープに接続し、これら積層体に対して、高さ40mmから、直径40mm、重さ2.7gのピンポン玉を落下せしめることで、発生するパルスの最大電圧をオシロスコープにて測定した。この作業を5回行い、平均値を出力電圧とした。
○:出力電圧が1V以上
×:出力電圧が1V未満
(2)出力ばらつき
前述の出力電圧の5回の測定の標準偏差を信号ばらつきとした。
○:標準偏差が0.36V未満
×:標準偏差が0.36V以上
(3)電極の密着強度
JIS Z0237に準拠して、積層圧電シートについて多孔エレクトレットフィルムと電極との剥離強度を測定した。まず、サンプルとして、積層圧電シートを横10mm×縦100mmに切り出し、電極と多孔エレクトレットフィルムを25mm剥がした。次いで、引張試験機(インテスコ社製、インテスコIM-20ST)の下部チャックに剥がした部分のサンプルの片端を固定し、上部チャックにサンプルのもう一端を固定し、試験速度300mm/分にて引き剥がし強度を測定した。測定後、最初の25mmの長さの測定値は無視し、試験片から引き剥がされた50mmの長さの引き剥がし強度測定値を平均し、剥離強度とした。なお、電極が多孔エレクトレットフィルムから剥がれない場合は、電極上にテープを貼り、テープの剥離強度を測定し、本積層圧電シートの剥離強度はテープのみの剥離強度以上であると見做す。
(4)信号強度
本発明のセンサーデバイスを、オシロスコープにつなぎ、面状の任意の場所に高さ40mmから、直径40mm、重さ2.7gのピンポン玉を落下せしめ、発生するパルスの最大電圧をオシロスコープにて測定した。この作業を5回行い、平均値を算出した。
○:信号強度が4V以上
×:信号強度が4V未満
表1および表2に実施例、比較例に関する評価結果を示した。
製造例2(ロールtoロールでの積層圧電シートの製造)
ポリプロピレン系樹脂(A-1)100質量部、β晶核剤(B-1)0.2質量部、酸化防止剤(C-1)0.1質量部を混合して、二軸押出機にて280℃で溶融押出することで樹脂組成物1を得た。リップ開度1mmのTダイに繋がれた押出機に樹脂組成物1を投入して成形を行い、温度127℃のキャストロールに導かれて厚さ(両端部を除いた有効部分の厚み)が100μmの無孔膜状物1を得た。
その後、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、延伸温度100℃で横方向に7倍延伸することで厚さが20μmの多孔質フィルム1を得た。多孔質フィルム1は、ラミネーターを介して多孔質フィルム側が流れ方向端部からそれぞれ5mmずつはみ出すようにして導電性銅箔粘着テープ「E20CU」(DIC社製)と貼り合わせ、コアに捲回することでロール状に巻き取ることで、積層多孔フィルム1とした。
得られた積層多孔フィルム1を、銅箔がアース側に対向するように巻き出し、搬送速度2m/分に設定したロールtoロール式フィルム搬送装置で搬送した。その際、搬送工程中に千鳥配列式針状電極(200mm×1000mmサイズ)を備える高電圧印加装置を使用して-15kVの電圧をかけ帯電処理を行った。このとき、針状電極とアースロールのギャップは20mmであった。搬送速度と針状電極の数及び電極の搬送方向長さとの関係から多孔質フィルムへの電圧印加時間を算出したところ、電圧印加時間はおよそ6秒であった。その後、フィルムを巻き取る前に交流式イオナイザーを設置してフィルムの除電を実施して、エレクトレットフィルムを得た。得られたエレクトレットフィルムは、長さ50mであり、コアに捲回することでロール状に巻き取った。実施環境温度は21℃、湿度51%であり、アースロールの表面温度は19℃であった。
実施例1及び2より、本発明の規定する構成を有する積層圧電シートは、良好な圧電特性を示し、出力電圧のばらつきも少ないことが確認された。これらの積層圧電シートから作製された実施例3のセンサーデバイスは、信号強度も良好であった。
一方、比較例1の積層圧電シートは、エレクトレットフィルムの両面に電極が積層されているため、エレクトレットフィルムに印加される電界が不均一となり、出力電圧のばらつきが大きかった。この積層圧電シートから作製された比較例4のセンサーデバイスは、電極の遮蔽効果によりエレクトレットフィルムに十分な電荷を保持できなかったため、信号強度が小さかった。
また、比較例2及び3の積層圧電シートは、エレクトレットフィルムと電極とが接着されていないため、密着強度が不十分であり、出力電圧のばらつきが大きかった。
また、製造例2より、本発明の構成を有する積層圧電シートは、ロールtoロール方式による連続的な製造が可能であることが確認された。

Claims (11)

  1. エレクトレットフィルムの一方の面にのみ電極が積層されており、エレクトレットフィルムと電極との密着強度が1N/cm以上であり、以下の方法により測定される出力電圧のばらつきが0.36V未満である積層圧電シート。
    <出力電圧のばらつき>
    前記積層圧電シートを電極が下となるように置き、その上にアルミニウムを蒸着した100μm厚のポリエステルフィルムを、蒸着面が下となるように置き、両者を厚さ100μmのポリエステルフィルム製のクリアファイルで挟み、前記積層圧電シートと、蒸着面のそれぞれをオシロスコープに接続し、これら積層体に対して、高さ40mmから、直径40mm、重さ2.7gのピンポン玉を落下せしめることで、発生するパルスの最大電圧をオシロスコープにて測定する。この作業を5回行い、測定値の標準偏差を「出力電圧のばらつき」とする。
  2. 前記エレクトレットフィルムが多孔エレクトレットフィルムである、請求項1に記載の積層圧電シート。
  3. 前記多孔エレクトレットフィルムがポリオレフィン系樹脂を主成分としてなる請求項に記載の積層圧電シート。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂が80%以上のβ晶生成能を有するポリプロピレン系樹脂である請求項に記載の積層圧電シート。
  5. 前記多孔エレクトレットフィルムの空隙率が5%以上60%以下である請求項のいずれか1項に記載の積層圧電シート。
  6. 前記エレクトレットフィルムの厚さが10μm以上200μm以下である請求項1~のいずれか1項に記載の積層圧電シート。
  7. 前記エレクトレットフィルムの一方の面にのみ電極が積層され、前記エレクトレットフィルムと前記電極との密着強度が1N/cm以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の積層圧電シートを捲回した捲回体。
  8. 第1の電極、第1のエレクトレットフィルム、第2のエレクトレットフィルム、第2の電極がこの順に積層され、前記第1のエレクトレットフィルムと前記第1の電極との密着強度および前記第2のエレクトレットフィルムと前記第2の電極との密着強度が1N/cm以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の積層圧電シート。
  9. (A)エレクトレットフィルムの一方の面に電極が積層された積層圧電シートを2枚得る工程、(B)一方の積層圧電シートのエレクトレットフィルム側の表面の極性を正に帯電させて第一の積層圧電シートを得、他方の積層圧電シートのエレクトレットフィルム側の表面の極性を負に帯電させて第二の積層圧電シートを得る工程、(C)前記第一の積層圧電シートと、前記第二の積層圧電シートを、エレクトレットフィルム側の表面同士が接するように積層する工程、を有する圧電シートの製造方法。
  10. 前記(A)工程において、第1の電極、第1のエレクトレットフィルム、第2のエレクトレットフィルム、第2の電極がこの順に積層され、前記第1のエレクトレットフィルムと前記第1の電極および前記第2のエレクトレットフィルムと前記第2の電極が接着剤を介して積層される請求項に記載の圧電シートの製造方法。
  11. 前記(C)工程において、積層圧電シートのエレクトレットフィルム側の表面同士が接着剤を介して積層される請求項又は10に記載の圧電シートの製造方法。
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