JP7777406B2 - スチレン系樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
スチレン系樹脂組成物及びその成形品Info
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Description
一般的には、樹脂の流動性を上げるために可塑剤として多量の流動パラフィンが使用されているが、成形時に低沸点成分が揮発し、金型や成形品に汚れが生じる問題点がある。例えば、特許文献2には面衝撃と剛性、流動性のバランスに優れたゴム変性スチレン系樹脂の製造方法が開示されている。また、成形時の金型汚れを防ぎながらも樹脂の流動性を高めるため、樹脂の分子量、分子量分布を調節する手法も考えられている。例えば、特許文献3では流動パラフィンを添加せずに分子量、分子量分布を調節して高流動かつ金型付着物が少ないスチレン系樹脂の製造方法が開示されている。
そのため、上記特許文献1~3の技術では、機械的強度を高い水準で維持しつつ、成形時の金型汚れの低減と成形サイクルの効率化については検討していない。そこで、本発明はバイオマス原料を使用することにより環境負荷を低減し、射出成形時の金型汚れが少なく、かつ高い機械的強度を備え、成形サイクルに優れたスチレン系樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
本発明は、スチレン系重合体(A-1)を含むポリマーマトリックス相及び当該ポリマーマトリックス相に分散されるゴム状重合体粒子(A-2)を含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)85.0~99.9質量%と、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上のバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量%と、を含有する、200℃、49N荷重の条件で測定したメルトマスフローレートが10~80であるスチレン系樹脂組成物である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系重合体(A-1)を含むポリマーマトリックス相及び当該ポリマーマトリックス相に分散されるゴム状重合体粒子(A-2)を含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)85~99.9質量%と、バイオマス炭素比率(pMC比)が10%以上のバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量%と、を含有する。
換言すると、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、当該スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、ゴム変性スチレン系樹脂(A)85~99.9質量%及びバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量%を含有し、前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)はスチレン系重合体(A-1)を含むポリマーマトリックス相及びゴム状重合体粒子(A-2)を含有する。
これにより、環境負荷の低減、高い機械的強度と優れた成形サイクルとのバランスに優れ、かつ射出成形時に金型汚れが少ないスチレン系樹脂組成物を提供できる。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物はゴム変性スチレン系樹脂(A)を含有する。そして、本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の含有量は、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、85.0~99.9質量%であり、好ましくは90.0~99.0質量%である。
-ポリマーマトリックス相-
本実施形態において、スチレン系重合体(A-1)を構成する単量体としては、スチレン系単量体(a)またはスチレン系化合物と共重合可能なビニル系単量体(b)であることが好ましい。
スチレン系重合体(A-1)を構成する単量体のうち、スチレン系単量体(a)の含有量は50~100質量%が好ましく、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%、さらにより好ましくは80~100質量%、よりさらに好ましくは90~100質量%である。含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
スチレン系単量体(a)としては、スチレンの他に、例えばα―メチルスチレン、α―メチルp-メチルスチレン、о―メチルスチレン、m-メチルスチレン、p―メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特にスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(A)に含まれるゴム状重合体粒子(A-2)は、例えば、内側にスチレン系重合体(A-1)を内包してもよく、及び/又は外側にスチレン系重合体(A-1)がグラフトされてもよい。また、本実施形態のゴム状重合体粒子(A-2)は、コアとしてのスチレン系重合体(A-1)と、当該コアを包摂するシェルとしてのゴム状重合体とから構成される、コアシェル構造体だけでなく、複数のコアとしてのスチレン系重合体(A-1)と、当該複数のコアとしてのスチレン系重合体(A-1)を包摂するシェルとしてのゴム状重合体とから構成される、サラミ構造体を含む。
このようなゴム変性スチレン系樹脂(A)の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体)、AES(アクリロニトリルーエチレンプロピレンゴムースチレン共重合体)等が挙げられる。
なお、本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体の含有量は、実施例の欄に記載の方法を用いて算出される値である。
なお、本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体粒子(A-2)の含有量は、実施例の欄に記載の方法を用いて算出される値である。
なお、本開示でスチレン系重合体(A-1)の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値である。
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状―懸濁重合、又はゴム状重合体ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体とスチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
当該スチレン系重合体(A-1)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
スチレン系重合体(A-1)の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。単量体の合計量に対して0.005~0.08質量%添加することが好ましい。
スチレン系重合体(A-1)の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えばα-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、1-フェニルー2-フルオレン、ジベンテン、クロロホルムなどのメルカプタン類、テルペン類、ハロゲン化合物、テレピノーレン等のテレピン類等を挙げることができる。この連鎖移動剤の使用量は、特に制限はないが、一般的には単量体に対して、0.005~0.3重量%程度添加することが好ましい。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、バイオマス可塑剤(B)を含有する。そして、当該バイオマス可塑剤(B)は、バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上である。バイオマス炭素比率(pMC%)が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができるため、環境負荷を低減しうるスチレン系樹脂組成物を提供できる。
本実施形態において、バイオマス炭素比率(pMC%)の下限は、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは75%以上である。
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、バイオマス可塑剤(B)の含有量は、0.1~15質量%である。バイオマス可塑剤(B)の含有量の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。バイオマス可塑剤(B)の含有量の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下、さらにより好ましくは7質量%以下である。
バイオマス可塑剤(B)の含有量が多すぎると揮発成分が増え、金型汚れが増える。また、バイオマス可塑剤(B)の含有量が15%を超えるとブリードアウトする傾向を示す。一方、バイオマス可塑剤(B)の含有量が少なすぎると流動性が低下するため、成形温度が上昇し、結果として冷却時間が長くなり生産性が落ちる傾向を示す。
バイオマス可塑剤(B)はスチレン系樹脂組成物中に均一に分散していることが好ましい。より詳細には、例えば、スチレン系樹脂組成物の表面にバイオマス可塑剤(B)の単層を形成する、外部滑剤(例えば、重合体溶融物に不溶な滑剤)でないことが好ましい。バイオマス可塑剤(B)をスチレン系樹脂組成物中に均一に分散させる方法としては、例えば、ゴム変性スチレン系樹脂(A)とバイオマス可塑剤(B)を押出機で混練する方法や、重合原料を重合させる際に、重合原料組成物中に、バイオマス可塑剤(B)を含有させる方法などが挙げられる。
したがって、本実施形態の可塑剤中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、後述の実施例の欄で記載する方法を用いて、以下の式(1)により、バイオマス炭素比率(pMC%)を算出する。
式(1):
バイオマス炭素比率(pMC%)=(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)×100
また、標準物質はシュウ酸(SRM4990)を使用し、AMS法により(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)を算出した。
なお、本明細書における植物油は、植物由来の油脂の総称であり、天然植物油及び変性植物油を含む。
本実施形態における変性植物油の変性基(エポキシ基、アミノ基又はエステル結合の官能基)は、スチレン系樹脂組成物中、他の成分(スチレン系樹脂(A)も含む)又は変性植物油同士と実質的に重合しないことが好ましい。また、本実施形態において、前記変性植物油1gあたりの前記変性植物油の変性率が、1mmol%~50mmol%であることが好ましい。
上記変性植物油の変性率は、後述の実施例に記載の通り1H-NMR測定法により算出する。
本実施形態において変性植物油は、上記例示した天然植物油を水素化した油(例えば、水素化ヒマシ油);上記例示した天然植物油をエポキシ化した油(例えば、変性エポキシ化油);上記例示した天然植物油をアミノ化した油(例えば、変性アミノ化油)が挙げられる。当該変性エポキシ化油には、水酸化変性大豆油等に代表されるエポキシ官能基が開環した油、及び予め直接的に水酸化された油、カシュー油ベースのポリオールを含む。
また、本実施形態におけるスチレン系重合体(A-1)のSP値は、7~11((cal/cm3)1/2)であることが好ましく、より好ましくは7.5~10((cal/cm3)1/2)、さらに好ましくは8.0~9.5((cal/cm3)1/2)、よりさらに好ましくは8.0~9.0((cal/cm3)1/2)である。
本実施形態において規定する溶解度パラメータ(SP値)は、下式に示す凝集エネルギー密度の関数を用いて算出している。
SP値((cal/cm3)1/2)=(△E/V)1/2 式(1)
(△Eは、分子間凝集エネルギー(蒸発熱)を示し、Vは、混合液の全体積を示し、△E/Vは、凝集エネルギー密度を示す。)
また、混合による熱量変化△Hmは、SP値を用いて次の式で示される。
△Hm=V(δ1-δ2)・Φ1・Φ2 ・・・式(2)
(δ1は、溶媒のSP値を示し、δ2は、溶質のSP値を示し、Φ1は、溶媒の体積分率を示し、Φ2は、溶質の体積分率を示す。)
上記の式(1)及び(2)より、δ1及びδ2の値が近いほど、△Hmは小さくなり、ギムスの自由エネルギーが小さくなるため、SP値の差が小さいもの同士は親和性が高くなる。
本明細書におけるSP値を求める方法としては、SP値が既知の各種溶剤との樹脂の溶解性を比較することで、最も良く相溶する溶剤のSP値から未知の樹脂のSP値を算出しており、具体的には濁度滴定法を用いて算出した。本実施形態では、主にモノマー組成から計算により求めた値を用いる。
本実施形態において、バイオマス可塑剤(B)として植物油と鉱油とを混合して使用する場合、バイオマス可塑剤(B)全体のバイオマス炭素比率(pMC比)が10%以上であれば特に制限されることはないが、例えば、植物油100質量部に対して、10~100質量部混合することが好ましく、10~50質量部混合することがより好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記(A)及び(B)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤、加工助剤等の任意添加成分を添加することができる。これら任意添加成分としては、離型剤、難燃剤、分散剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、充填剤、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009-120717号公報に記載のシリコーンオイル、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価~3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目やに防止剤)等を添加してもよい。
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物は公知の難燃剤(リン系難燃剤、ブロム系などのハロゲン系難燃剤)を含有してもよい。しかし、スチレン系樹脂組成物中に含有されるバイオマス可塑剤(B)との反応により臭化水素などのガスの生成が危惧される観点から、ハロゲン系難燃剤の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、3質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。
本実施形態において、分散剤としては、脂肪酸エステル系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、テルペン系化合物、ロジン系化合物、脂肪酸アミド、脂肪酸系化合物、又は脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
上記離型剤としては、脂肪酸系化合物、又は脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
上記任意添加成分の合計含有量は、スチレン系樹脂組成物全体に対して、0.05~5質量%としてよい。
「実質的に(A)成分、(B)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、95~100質量%(好ましくは98~100質量%)が(A)成分及び(B)成分であるか、又は(A)成分、(B)成分及び任意添加成分であることを意味する。
なお、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分、(B)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
<メルトマスフローレート(MFR)>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレート(200℃、49N荷重の条件で測定)は、10~80(g/10分)であり、好ましくは13~60(g/10分)であり、より好ましくは、15~50(g/10分)であり、さらに好ましく、15~35(g/10分)である。スチレン系樹脂組成物のMFRが10より低いと流動性が落ち、適切な成形温度が高くなるため冷却時間が長くなる傾向を示す。スチレン系樹脂組成物のMFRを80より高くするには可塑剤量が多く必要になるので耐熱性が低くなる。耐熱性が低くなると固化する温度が低くなるので冷却時間は長くなる傾向を示す。なお、成形温度を低下できると、冷却時間が短くなり成形サイクルが向上する。
なお本開示で、メルトマスフローレートはISO 1133に準拠して測定した。本実施形態のスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレートが、上記範囲であると、組成物全体の流動性を高い水準で維持することにより、成形時の金型汚れを低減することができる。
<ビカット軟化温度>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、50℃~105℃であることが好ましく、より好ましくは65℃~95℃、さらに好ましくは75℃~90℃である。スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が105℃より高いと流動性が落ち、適切な成形温度が高くなるため冷却時間が長くなる傾向を示す。また、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が低くなると固化する温度が低くなるので冷却時間は長くなる傾向を示す。
なお、本開示で、ビカット軟化温度(℃)はISO 306に準拠して荷重49Nで測定した。
本発明のスチレン系樹脂組成物の膨潤指数は、衝撃強度の観点から8.5~14であることが好ましく、より好ましくは9.0~13である。膨潤指数はゴム粒子の架橋度を表す指標である。膨潤指数を上記範囲とすることで、本発明のスチレン系樹脂組成物は衝撃特性に優れるものとなる。なお、本開示で、スチレン系樹脂組成物の膨潤指数は実施例の欄に記載の方法を用いて算出される値である。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を原料として用いた射出成型品の製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。成型機の温度は好ましくは150℃~300℃、より好ましくは160℃~260℃、さらに好ましくは180℃~240℃である。
成形機の温度が300℃より高いとスチレン系樹脂組成物が熱分解を起こすため好ましくない。一方、150℃より低いと高粘度のため成形することができないので好ましくない。
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物及び射出成形体の物性測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
スチレン系重合体(A-1)及びバイオマス可塑剤(B)の重量平均分子量を、下記の条件や手順で測定した。
・試料調製:測定試料5mgを10mLのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
・測定条件
機器:TOSOH HLC-8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :SHODEX GPC KF―606Mを直列に2本接続
ガードカラム :SHODEX GPC KF―G 4A
温度 :40℃
キャリア :THF 0.50mL/min
検出器 :RI、UV:254nm
検量線 :検量線の作成には東ソー社製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。3次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
実施例及び比較例で使用したゴム変性スチレン系樹脂中のスチレン系重合体(A-1)のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
本実施例及び比較例で使用したゴム変性スチレン系樹脂及びスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)を、ISO 306に準拠して、荷重49Nで測定した。
ゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A-2)の含有量(質量%)、膨潤指数を以下のように測定した。沈澱管にゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物1.00gを精秤し(この質量をW1とする)、トルエン20ミリリットルを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所社製、SS-2050A ローター:6B-N6L)にて温度4℃、回転数20000rpm、遠心加速度45100×Gで60分間遠心分離した。沈澱管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(この質量をW2とする)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤した(この質量をW3とする)。
下記式により、ゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A-2)の含有量及び膨潤指数、即ち、ゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A-2)の含有量及び膨潤指数を求めた。
ゴム状重合体粒子(A-2)の含有量=W3/W1×100
ゴム状重合体粒子(A-2)の膨潤指数=W2/W3
なお、後述の実施例6では溶媒としてトルエンを用いた場合、デカンテーション時にゲル成分も流れ出てしまい、正確な値が測定できなかった。そのため、後述の実施例6に限ってはメチルエチルケトン/メタノール=9/1溶液を用いて、同様の処理をしてゴム状重合体粒子(A-2)含有量、ゴム状重合体粒子(A-2)の膨潤指数を求めた。
実施例及び比較例で使用したゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A-2)の平均粒径(μm)の測定は、以下の方法で測定した。
30μm径のアパーチャーチューブを装着したベックマンコールター株式会社製COULTER MULTISIZER III (商品名)にて、ゴム変性スチレン系樹脂ペレット又はスチレン系樹脂組成物ペレット0.05gをジメチルホルムアミド約5ml中に入れ約2~5分間放置した。次にジメチルホルムアミド溶解分を適度の粒子濃度として測定し、体積基準のメジアン径を求めた。
後述の実施例6については、COULTER MULTISIZER IIIを使った場合、ゴム状重合体粒子(A-2)の平均粒径が測定範囲下限を下回るため、適切な測定ができなかった。そのため、実施例6に限り、同様の処理をした後、ベックマンコールター株式会社社製 レーザー解析粒度分布測定装置により体積基準のメジアン径を求めた。
実施例及び比較例で使用したゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物0.25gをクロロホルム50mLに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合を反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定した(一塩化ヨウ素法)。この方法により、ゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中に含まれるゴムの質量(この質量をW4とする)を測定し、この値とゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物の質量(この質量をW1とする)とから、ゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量(質量%)を、次式により求めた。
ゴム変性スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量(質量%)=W4/W1×100
バイオマス可塑剤(B)のバイオマス炭素比率(pMC%)は、ASTM-D6866に準拠した放射性炭素(14C)測定方法によって以下の式(1)を用いてAMS法により(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)を算出した。
式(1):
バイオマス炭素比率(pMC%)=(14C可塑剤/12C可塑剤)/(14C標準物質/12C標準物質)×100
また、標準物質はシュウ酸(SRM4990)を使用した。
変性前の植物油と変性後の変性植物油を用いて、1H-NMRにより変性率を算出した。
スチレン系樹脂組成物を220℃でJIS K 7152に従って射出成形片を作成し、JIS K 7111-1に従ってシャルピー衝撃強さを測定した。
実施例及び比較例の成形時の冷却時間の評価方法では、2mmのプレートを10個射出成形した際、成形後に成形品が変形することなく固化するのに十分な冷却時間測定している。本実施例及び比較例では射出成形機東芝機械株式会社製、EC60Nを用いて金型温度45℃で成形した。また、射出圧、射出時間、保圧は一定にし、シリンダー温度は実施例ごとに、プレートがショートショットせずに成形可能となる温度に設定した。
スチレン系樹脂組成物を220℃でJIS K 7152に従って射出成形片を作製した際、連続成形後に金型に付着物が確認されるまでのショット数を指標として金型汚れの評価を行った。金型付着物が確認されるまでのショット数が100未満であると金型の清掃頻度が上がり、生産性が落ちるため100以上を合格とした。
実施例・比較例において使用した各材料のSP値は、「J.Appl.Polym.Sci.,12,2359(1968)」を参照して濁度滴定法により算出した。
(変性植物油)
[バイオマス可塑剤(B)]
エポキシ化大豆油(製品名「ニューサイザー510R」(日油株式会社製)、重量平均分子量(Mw=1500)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:5℃、SP値:9.0((cal/cm3)1/2)
(天然植物油)
パーム油(製品名「マルチエース20(S)」(日清オイリオグループ株式会社)、重量平均分子量(Mw=1000)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:22℃、SP値:8.2((cal/cm3)1/2))
(流動パラフィン)
流動パラフィン、製品名「PS350S」(三光化学工業株式会社製)、重量平均分子量(Mw=250)、バイオマス炭素比率(pMC%)0%、流動点:-12.5℃
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸、製品名「LX175」(Total Corbinion PLA製)、バイオマス炭素比率(pMC%)100%、融点:155℃、SP値:10.3(cal/cm3)1/2
[実施例1]
(スチレン系樹脂組成物(PS-1)の製造方法)
スチレン83.4質量%、ポリブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ社製ジエン35) 1.8質量%、エチルベンゼン10質量%、ニューサイザー510R(日油株式会社製) 4.8質量%、1.1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.016質量%、α-メチルスチレンダイマー0.10質量%、酸化防止剤(イルガノックス1076(BASFジャパン社製))0.1質量%を混合溶解した重合液を、撹拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-1に0.78リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を110℃/118℃/124℃に調整した。撹拌機の回転数は毎分200回転とした。反応器出口の反応率は31%であった。
続いて層流型反応器-1と直列に接続された撹拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。撹拌機の撹拌数は毎分40回転とし、温度は129℃/137℃/147℃に設定した。また、α-メチルスチレンダイマー0.04質量%を層流型反応器-2の上段より追添した。続いて撹拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。撹拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は152℃/156℃/160℃に設定した。
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベント付き押し出し機で、0.8kPaの減圧下、脱揮後ペレタイズして、スチレン系樹脂組成物(PS-1)を製造した。なお、押し出し機の温度は230℃に設定した。また、スチレン系樹脂組成物(PS-1)のポリマーマトリックス相は、ポリスチレンを含有しており、当該ポリスチレンのSP値は、8.6(cal/cm3)1/2であった。得られたスチレン系樹脂組成物(PS-1)について、上記(1)~(11)の評価を行い、その結果を下記表3に示す。
<スチレン系樹脂組成物(PS-2)~(PS-16)の製造>
重合条件を表1及び2の通り変更した以外はスチレン系樹脂組成物(PS-1)と同様にしてスチレン系樹脂組成物(PS-2)~(PS-16)及び(PS-18)、(PS-19)を製造した。上記(1)~(11)の評価を行い、その結果を下記表3及び4に示す。
<スチレン系樹脂組成物(PS-17)の製造>
重合条件を表1及び2の通り変更した以外はスチレン系樹脂組成物(PS-1)と同様にして、ゴム変性スチレン系樹脂(A-17)を製造した。そして、以下の表4に示す配合比(ゴム変性スチレン系樹脂(A-17)100質量%に対してエポキシ化大豆油(製品名 ニューサイザー510R 日油株式会社製)を6質量%配合)でゴム変性スチレン系樹脂((A)成分)とバイオマス可塑剤(B)((B)成分)とをドライブレンドした後、二軸混錬押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SS-12)を用いて樹脂温度220℃の条件で押出しスチレン系樹脂組成物(PS-17)を製造した。上記(1)~(11)の評価を行い、その結果を下記表4に示す。
<樹脂組成物(PS-20)~(PS-21)の調製>
重合条件を表2の通り変更した以外はスチレン系樹脂組成物(PS-1)と同様にしてスチレン系樹脂組成物(PS-20)~(PS-21)を製造した。上記(1)~(11)の評価を行い、その結果を下記表4に示す。
<樹脂組成物(PS-22)の調製>
樹脂組成物(PS-22)は、層流型反応器により製造した上記ゴム変性スチレン系樹脂(A-17)100質量%に対して、ポリ乳酸(製品名:LX175、Total Corbinion PLA製)を6質量%ドライブレンドした後、二軸混錬押出機(東芝機械株式会社製 TEM-26SS-12)を用いて樹脂温度220℃の条件で押出し、樹脂組成物(PS-22)を製造した。上記(1)~(11)の評価を行い、その結果を下記表4に示す。
Claims (4)
- スチレン系重合体(A-1)を含むポリマーマトリックス相及び当該ポリマーマトリックス相に分散されるゴム状重合体粒子(A-2)を含有するゴム変性スチレン系樹脂(A)85.0~99.9質量%と
バイオマス炭素比率(pMC%)が10%以上のバイオマス可塑剤(B)0.1~15質量%と、を含有し、
前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれる前記ゴム状重合体粒子(A-2)の含有量は、前記ゴム変性スチレン系樹脂(A)100質量%に対して、4~30質量%であり、かつ以下の式で示される前記ゴム状重合体粒子(A-2)の膨潤指数は、8.5~14であり、
膨潤指数=W2/W3
(上記式中、W2は、スチレン系樹脂組成物に対してトルエンを加えた際に生じるトルエンを含んだトルエン不溶分の質量を表し、W3は、前記トルエン不溶分を160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥した後の質量を表す。)
200℃、49N荷重の条件で測定したメルトマスフローレートが15~80であることを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。 - 前記バイオマス可塑剤(B)は、植物油、又は植物油と流動パラフィンとの混合物である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記ゴム状重合体粒子(A-2)の平均粒子径は0.3μm~5.0μmである、請求項1又は2のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品。
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