JP7777882B2 - 溶接品の製造方法 - Google Patents

溶接品の製造方法

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本発明は、溶接品の製造方法に関する。
以下の特許文献1に示すように、銅又は銅合金を、200℃以上かつ再結晶温度以下で予熱して、ヘリウムガスをシールドガスとして用いてTIG溶接を行う方法が知られている。アルゴンガスをシールドガスとして用いる従来のTIG溶接では十分な溶け込みを作るために800~900℃の高温に予熱していたが、引用文献1の方法では銅又は銅合金の再結晶温度以下の予熱で溶接可能になるとされている。
以下の特許文献2又は3には、溶接を行う際に、シールドガスとして、アルゴンとヘリウムとの混合ガスに水素、窒素等のガスを添加した混合ガスを用いることができるとされている。
特開昭62-238077号公報 特開2021-13955号公報 特開2023-96588号公報
コンテナ輸送費の高騰、物流網の世界的な混乱、ヘリウムガスそのものの需要の増大等の事情により、ヘリウムガスの価格が高騰している。
上記の特許文献2又は3には、シールドガスとして、上記の混合ガスを使用してもよいとされている。しかし、引用文献2又は3には、銅を含有するワークピースを使用することは記載されていない。また、引用文献2又は3には、シールドガスの具体的な組成も記載されていない。
本発明は、窒素ガスと、アルゴンガスと、ヘリウムガスとを含む特定組成の混合ガスをシールドガスとして用いて、ヘリウムガスの使用量を低減し、銅を含有するワークピースを溶接することにより、ワークピースの溶け込みが良好であり、溶接後のワークピースに含まれる溶接欠陥が少なく、ワークピースに穿孔が生じにくく、アークの集中が良好であり、かつ溶接中の溶接部の視認性において優れる溶接方法によって溶接品を製造することを目的とする。
銅を含有するワークピースに対して、不活性ガスを吹き付けながらTIG溶接又はMIG溶接によって、前記ワークピースを溶接して溶接品を製造する方法であり、前記不活性ガスは、窒素ガス10~60容量%、アルゴンガス4~40容量%、及びヘリウムガス20~60容量%を含有する溶接品の製造方法により、上記の課題を解決する。
前記溶接品の製造方法において、前記ワークピースを溶接する前に、前記ワークピースの温度が420~620℃の範囲となるように予熱する工程を実施することが好ましい。
前記溶接品の製造方法において、溶接個所に適用される溶加材は、銅を主成分として含有することが好ましい。
前記溶接品の製造方法において、前記ワークピースの厚みは、5~40mmであることが好ましい。
本発明によれば、窒素ガスと、アルゴンガスと、ヘリウムガスとを含む特定組成の混合ガスをシールドガスとして用いて、ヘリウムガスの使用量を低減し、銅を含有するワークピースを溶接することにより、ワークピースの溶け込みが良好であり、溶接後のワークピースに含まれる溶接欠陥が少なく、ワークピースに穿孔が生じにくく、アークの集中が良好であり、かつ溶接部の視認性において優れる溶接方法によって溶接品を製造することができる。
凹部を有するワークピースの一例を示す図である。 段差部を有するワークピースの一例を示す図である。 角部を有するワークピースの一例を示す図である。 TIG溶接の一例を示す説明図である。 MIG溶接の一例を示す説明図である。
以下、本発明の溶接品の製造方法の一実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
本発明は、銅を含有するワークピースに対して、不活性ガスを吹き付けながらTIG溶接又はMIG溶接によって、前記ワークピースを溶接して溶接品を製造する方法であり、前記不活性ガスは、窒素ガス10~60容量%、アルゴンガス4~40容量%、及びヘリウムガス20~60容量%を含有する溶接品の製造方法である。
本明細書において、ワークピースとは、溶接を行う対象物をいう。溶接品とは、溶接を施された物品のことをいう。溶接品は、最終製品であってもよいし、半製品であってもよい。また、本明細書において、溶接によって接合される材を被接合材と呼ぶ。
ワークピースの形状は、一方の被接合材と他方の被接合材とを接合させるものであれば、特に限定されない。例えば、図1ないし図3に示すように、一方の被接合材11aと他方の被接合剤12aとの間に凹部14aを有する銅材、一方の被接合材11bと他方の被接合剤12bとの間に段差部14bを有する銅材、一方の被接合材11cと他方の被接合剤12cとの間に角部14cを有する銅材が挙げられる。これらの例では、凹部14a、段差部14b、又は角部14cの部分を溶接する。なお、図1の例では、第3の被接合材13の上に一方の被接合材11aと他方の被接合材12aとを載せた形状である。溶接によって、一方の被接合材11aと他方の接合材12aと第3の被接合材13とが接合される。図4及び図5の例のように、一方の被接合材と他方の被接合材とのそれぞれの端部を付き合わせた形状にしてもよい。
ワークピースの形状は、例えば、板状、パイプ状、ブロック状などの形状が挙げられる。ワークピースの厚みは、特に限定されないが、5~40mmの範囲が好適である。なお、パイプ状のワークピースについては、ワークピースの厚みとは、パイプを形成する板材の厚みのことをいう。複数の材を重ねる場合においては、ワークピースの厚みは積層した材の合計の厚みをいう。
前記凹部の形状は、限定されず、例えば、スリット状の凹溝、V字状の凹部、円弧状の窪みなどの適宜の形状にすることができる。
ワークピースは、被接合材が銅を90質量%以上含有するものであることが好ましく、銅を98質量%以上含有するものであることがより好ましい。上限値は、不可避不純物を除いて、銅の含有量が100質量%以下とすることが好ましい。
溶接方法は、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接又はMIG(Metal Inert Gas)溶接による。
TIG溶接では、図4に示したように、ワークピース21aと電極23aとに電気的に接続された溶接電源27aにより、電極23aとワークピース21aとの間にアーク24aを発生させる。電極23aは、タングステン製のものを使用する。ノズル22aの先端からは、アーク24aを包むように不活性ガス25aがワークピース21aに向けて噴射される。溶加材26(溶接棒)をアークに近づけて溶融させて、ワークピース21aの凹穴等の溶接個所に溶滴を適用する。溶滴は溶接個所である凹穴の中で溶融池28aとなり、温度が低下すると固体化する。
MIG溶接では、図5に示したように、ワークピース21bと電極23bとに電気的に接続された溶接電源27bにより、電極23bとワークピース21bとの間にアーク24bを発生させる。電極23bは上記溶加材16と同様の化学組成を有しており、電極が溶融することで溶加材として作用する。ノズル22bの先端からは、アーク24bを包むように不活性ガス25bがワークピース21bに向けて噴射される。電極23bの先端が溶融し、ワークピース21bの凹穴に溶滴を適用する。溶滴は溶接個所である凹穴の中で溶融池28bとなり、温度が低下すると固体化する。図5において矢印で示したように、電極23bは、図示を省略したローラーなどの駆動手段によって、順次ノズル22bの先端部に供給される。
溶接個所に適用される溶加材は、銅を主成分として含有するものを使用することが好ましい。溶加材は銅を90質量%以上含有するものであることが好ましく、銅を98質量%以上含有するものであることがより好ましい。上限値は、不可避不純物を除いて、銅の含有量が100質量%以下とすることが好ましい。溶加材は、Snを0.1~0.5質量%含有するものであってもよい。また、溶加材は、Mnを0.1~0.5質量%含有するものであってもよい。
前記不活性ガスは、窒素ガス10~60容量%、アルゴンガス4~40容量%、及びヘリウムガス20~60容量%の割合で、窒素ガスとアルゴンガスとヘリウムガスとを含有する。窒素ガスは30~55容量%、アルゴンガスは18~38容量%、かつヘリウムガスは20~40質量としてもよい。
アルゴンガスは、不可避不純物を除いて、アルゴンのみからなる気体を用いることが好ましい。純度の下がるものであれば、例えば、アルゴン分子(原子)を95容量%以上含むものを使用する。この場合、上限値は、不可避不純物を除いて、アルゴン原子の含有量が100容量%以下である。
窒素ガスは、不可避不純物を除いて、窒素のみからなる気体を用いることが好ましい。純度の下がるものであれば、例えば、窒素分子を95容量%以上含むものを使用することが好ましい。この場合、上限値は、不可避不純物を除いて、窒素分子の含有量が100容量%以下である。
ヘリウムガスは、不可避不純物を除いて、ヘリウムのみからなる気体を用いることが好ましい。純度の下がるものであれば、例えば、ヘリウム原子を95容量%以上含むものを使用することが好ましい。この場合、上限値は、不可避不純物を除いて、窒素分子の含有量が100容量%以下である。
溶接に先立って予熱を実施することが好ましい。予熱の際には、ワークピースの温度が420~620℃の範囲となるようにすることが好ましい。加熱の方法は特に限定されないが、ガスバーナーなどの外部からの加熱手段を用いるのが簡便である。予熱時の温度の測定は、放射温度計で測定することができる。
溶接時の電流値は、特に限定されないが、例えば、400~500Aにすることができる。
以下、本発明の溶接方法について、実施例を挙げて説明する。以下に示す実施例は、本発明の実施形態の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施例に限定されるものではない。
・実験1
[実施例1]
厚み10mmの第1銅材の端部と厚み10mmの第2銅材の端部との突合せ部分に、図4のように、深さ9mmのV字状の溝を切削加工により形成した。当該溝の長さは200mmである。このテストピースに形成した前記溝に沿ってTIG溶接で溶接した。溶接の際には、JIS YCu規格に準拠する溶接棒を溶加材として使用した。当該溶接棒の化学的組成は、Sn:0.3質量%、Mn:0.3質量%を含有し、残りがCuである。溶接の条件は以下の通りである。テストピースは、C-1020(同純度99.96%以上の無酸素銅)を使用した。
溶接の条件
予熱温度:なし
使用不活性ガス:表1に記載
溶接機の出力:400~500A
溶接機:パナソニックYC-500WX4T00
上記のテストピースを母材とし、テストピースと溶接電源とを通電ケーブルで接続し、電極と溶接電源とを通電ケーブで電気的に接続した。上記の出力で溶接機を運転し、ノズルの先端に発生させたアークに手動で溶接棒を近づけて溶接を行った。
アルゴンガス、窒素ガス、及びヘリウムガスは、不可避不純物以外には、その他の成分を含有しない高純度のものを使用した。
表1に記載した各項目の溶接時の作業性について、以下の基準で評価した。
・ワークピースの溶け込み
〇:溶融させた金属が溶接用の溝に隙間なく溶け込んでいる。
×:溶融させた金属と溶接用の溝との間に隙間があり、金属が溶け込んでいない部分がある。
・ワークピース中のブロー
〇:溶接した部分にブローホールが0~1個観察される。
△:溶接した部分にブローホールが2~3個観察される。
×:溶接した部分にブローホールが4個以上観察される。
・アーク集中
直径4.8mmのタングステン電極を使用し、アークの直径を6~9mmに調整した。
〇:アークを6~9mmの範囲に容易に調整することができる。
△:時間がかかるもののアークを6~9mmの範囲に調整することができる。
×:アークを6~9mmの範囲に容易に調整することができない。
・視認性
〇:ヒューム(煙)の発生がほとんどなく、ノズルの先端及びアークが母材に当たる部分を視認することができる。
△:ヒューム(煙)の発生があるが、ノズルの先端及びアークが母材に当たる部分を視認することができる。
×:ヒューム(煙)の発生により、ヒュームが拡散するのを待たなければ、ノズルの先端及びアークが母材に当たる部分を視認することができない。
・穿孔
〇:母材の過熱による貫通孔の形成が認められない。
×:母材の過熱による貫通孔が形成されている。
・溶接速度
一端から他端まで溝を溶接するのにかかった時間に基づいて以下のように評価した。
〇:5分未満
△:5分秒以上、かつ8分未満
×:8分以上
[比較例1ないし6]
以下の表1に記載用の不活性ガスの組成を変更した点以外は、実施例1と同様の方法により、テストピースを溶接した。
不活性ガスの組成、及び上記の基準で評価した溶接時の作業性を表1にまとめる。
実施例1に係る方法では、表1に示したすべての評価項目について、良好な結果が得られた。比較例2ないし6の方法では、表1に示した項目のうち少なくとも一つ以上の項目で、実施例1の方法に比して、結果が劣るものであった。比較例3ないし6の比較から窒素の含有量が大きくなると、過熱傾向となり、ヒュームによる煙が発生し、穿孔が発生し、またアークが拡散することがわかる。比較例1及び2から、窒素の含有量が小さくなると、加熱が不足する傾向となり、ワークピースの溶け込みが不足することがわかる。実施例1の方法では、ヘリウムガスの使用量を低減し、かつ溶接時において良好な作業性を得ることができることができる。
・実験2
[実施例2]
厚み10mmの銅板の上に、厚み10mmの第1銅板と第2銅板を載せて、第1銅板と第2銅板とを15mmの間隔を空けて配置して、15mm幅の溶接用の溝を構成した。当該溝の長さは200mmである。このテストピースに形成した前記溝にそってMIG溶接によって溶接した。溶接の際には、JIS YCu規格に準拠する溶加材を電極として使用した。当該溶加材の化学的組成は、Sn:0.3質量%、Mn:0.3質量%を含有し、残りがCuである。溶接の条件は以下の通りである。テストピースは、C-1020(同純度99.96%以上の無酸素銅)を使用した。
溶接の条件
予熱温度:520℃
不活性ガス:窒素ガス14容量%、アルゴンガス28容量%、ヘリウムガス58容量%
溶接機の出力:400~500A
溶接機:株式会社ダイヘン(P-500L)
上記の予熱は、ガスバーナーの火炎を溶接個所に接触させることにより加熱した。予熱温度は、放射温度計で測定した。
テストピースを母材とし、テストピースと溶接電源とを通電ケーブルで接続し、溶接用ノズルと溶接電源とを通電ケーブで接続した。ノズルには、供給装置から前記溶加材を電極として順次供給した。また、ノズルには上記の不活性ガスを供給した。
アルゴンガス、窒素ガス、及びヘリウムガスは、不可避不純物以外には、その他の成分を含有しない高純度のものを使用した。
[実施例3]
予熱の工程を実施しなかったほかは、実施例2と同様にして、銅製のワークピースを溶接した。
[実施例4]
溶接機を上記実施例1で使用したTIG用の溶接機に変更した点以外は、実施例2と同様にして、銅製のワークピースを溶接した。TIG用の溶接機の電極は、タングステンである。溶接棒は、JIS YCu規格に準拠する溶接棒を使用した。当該溶接棒の化学的組成は、Sn:0.3質量%、Mn:0.3質量%を含有し、残りがCuである。
[実施例5]
予熱工程を実施しなかったほかは、実施例4と同様にして、銅製のワークピースを溶接した。
・外観評価の基準
実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5の方法で溶接したワークピースの外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:溶接跡の表面は比較的になめらかである。
△:溶接跡に微小な凹凸が多数形成された外観である。
・溶接速度の基準
実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5の方法で溶接したワークピースの溶接速度を、一端から他端まで溝を溶接するのにかかった時間に基づいて以下のように評価した。
〇:2分30秒未満
△:2分30秒以上、かつ3分未満
×:3分以上
なお、実施例2の方法において、使用するガスをヘリウムガスのみに変更した場合の溶接速度は以下の通りであった。
Tig溶接(予熱あり):3分10秒
Tig溶接(予熱無し):7分20秒
Mig溶接(予熱あり):1分55秒
Mig溶接(予熱無し):2分8秒
・溶接欠陥(PT検査)
以下に示す前処理、浸漬処理、除去処理、及び現像処理の順に、実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5の方法で溶接したそれぞれのワークピースを処理し、溶接部の深層欠陥を評価した。結果を表2にまとめる。
〇:長さ1mm以上の染色された部分の数が0~1個である。
△:長さ1mm以上の染色された部分の数が2~3個である。
×:長さ1mm以上の染色された部分の数が4個以上である。
(前処理)
洗浄液(マークテック株式会社UR-ST)を用いて溶接した部分の側面部及び傷内部の汚れを除去する。
(浸漬処理)
浸透液(マークテック株式会社UP-ST(J))を溶接した部分の側面部に塗布し、5から60分静置し、傷に染み込ませる。
(除去処理)
余剰の浸透液をウェスで除去する。
(現像処理)
現像液(マークテック株式会社UD-ST)を溶接した部分の側面部に薄く均一に塗布し、10から30分静置する。
(観察)
目視で観察する。
表2の結果から、溶接後の外観、及び溶接速度の何れの点においても、実施例2及び実施例3の方が、実施例4及び実施例5に比して、すぐれた結果を示すことがわかる。
表2の結果について、実施例3及び実施例5のように予熱を行わなかった場合、実施例2及び実施例4のように予熱を行った場合に比較して、PT検査で染色された部分の大きさが大きくなる傾向が確認された。また、実施例4及び実施例5のTIG溶接の場合、実施例2及び実施例3のMIG溶接に比較して、PT検査で染色された部分の大きさが大きくなる傾向が確認された。これらの結果より、MIG溶接では、TIG溶接に比較してより、溶接欠陥が低減され、予熱を行わなった場合に比較して、予熱を行った場合は、溶接欠陥が低減されることが確認できた。

Claims (4)

  1. 銅を90質量%以上含有するワークピースに対して、不活性ガスを吹き付けながらTIG溶接又はMIG溶接によって、前記ワークピースを溶接して溶接品を製造する方法であり、
    前記不活性ガスは、窒素ガス10~60容量%、アルゴンガス4~40容量%、及びヘリウムガス20~60容量%を含有する溶接品の製造方法。
  2. 前記ワークピースを溶接する前に、前記ワークピースの温度が420~620℃の範囲となるように予熱する工程を実施する請求項1に記載の溶接品の製造方法。
  3. 溶接個所に適用される溶加材は、銅を主成分として含有する請求項1又は2に記載の溶接品の製造方法。
  4. 前記ワークピースの厚みは、5~40mmである請求項1又は2に記載の溶接品の製造方法。
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