JP7785366B2 - マグネシウム合金時効処理材とその製造方法 - Google Patents
マグネシウム合金時効処理材とその製造方法Info
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Description
しかしながら、マグネシウム合金展伸材はアルミニウム合金に比べて室温での加工性に劣る。このため、展伸材を最終形状に加工する際は200℃以上の温間で加工せねばならず、加工コストが高くなる。こうした経緯から、マグネシウム合金は現在輸送機器材料としての用途がほとんどない。この点を克服し、マグネシウム合金の用途を拡大するには、優れた常温加工性を有する新しい展伸材を開発せねばならない。
以上の説明から、従来の非特許文献2のマグネシウム合金の報告では、溶体化処理後すぐに時効処理を行っており、溶体化処理後に成形加工を施し、その後低温の短時間の時効処理(焼付塗装処理)によって強化できるか否かについては触れられていない。特に、後述する比較例7のように、市販の合金Mg-3Al-1Zn(AZ31)合金では、成形加工後に時効処理を行うと強度が低下する。
好ましくは、15MPa以上の焼付硬化量を有している。焼付硬化量として25MPa以上、0.2%耐力が190MPa以上であることが好ましい。
好ましくは、Mg、Ca及びAlよりなる析出物は、G.P.ゾーン又は該G.P.ゾーンの前駆体となる原子クラスターであり、G.P.ゾーンの数密度は3×1022/m3以上であり、サイズは3~10nm、原子クラスターの数密度は3×1024/m3以上、サイズは1~5nmである。
さらに、好ましくは、溶質元素のCa、Zn及びAlの何れかが転位線に固着する組織を有している。
Mg、Ca及び少なくともZn、Alから選ばれる1種以上の合金元素を溶解して鋳造固体を得る工程1と、
鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程2と、
均質化固体を熱間または温間で加工して有形固体を得る工程3と、
有形固体を溶体化処理して冷却固体を得る工程4と、
冷却固体にひずみを導入する工程5と、
ひずみを導入した冷却固体を時効処理してマグネシウム合金時効処理材を得る工程6と
、を含むことを、特徴としている。
工程5において、好ましくは、ひずみを1~10%とする。
本発明のマグネシウム合金時効処理材は、0.3質量%以上1質量%以下のCa(カルシウム)と、少なくとも0.5質量%以上3.2質量%未満のZn(亜鉛)、0.1質量%以上3質量%未満のAl(アルミニウム)から選ばれる1種以上の合金元素と、を含有し、残部がMg(マグネシウム)及び不可避不純物からなり、焼付硬化性を有し、かつ、マグネシウム合金時効処理材の0.2%耐力が、150MPa以上である。
さらに、Caの含有量は、好ましくは0.3質量%以上0.7質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.55質量%以下である。
図1は、本発明のマグネシウム合金時効処理材において、溶体化処理材と、焼付硬化を模擬して、この溶体化処理材に後述する例えば2%の予ひずみを導入したあとに所定の温度と時間の条件で時効処理を行った時効処理材の引張応力-ひずみ曲線を模式的に示す図である。
図1に示すように、時効処理後の試験片に対して引張試験を行い、ひずみ導入時の最大応力の値と時効処理材の0.2%耐力の値の差を強化量として評価することができる。強化量は、焼付硬化量とも呼ぶ。
Mnの添加は、結晶粒微細化に効果がある。Mnの添加量は0.1質量%以上で、1質量%程度である。Mnの添加量が少ないと、結晶粒析出物の粗大化を抑制する役割を果たすAl-Mn化合物が十分な量形成されないので好ましくない。逆に、Mnの添加量が1質量%よりも多い場合には、Al-Mn化合物の形成に大量のAlが使われてしまうことから時効硬化を示さなくなるので好ましくない。
Zrの添加は、結晶粒微細化に効果がある。Zrの添加量は0.2質量%以上で、0.8質量%以下の添加が好ましい。Zrの添加量が0.2質量%より少ない場合には、結晶粒析出物の粗大化を抑制する役割を果たすZn-Zr化合物が十分な量形成されないので好ましくない。逆にZrの添加量が0.8質量%よりも多い場合には、Zn-Zr化合物の形成に多量のZnが消費され、時効硬化を示さなくなるので好ましくない。
析出物が分散しているとは、微細なナノオーダーの析出物が多数析出している状態であればよい。マグネシウム合金の時効処理材で観察されるMg、Ca、Znよりなる析出物であるG.P.ゾーンは、板状析出物であってもよいが、特に限定されない。
時効後の析出物は、G.P.ゾーンの他に、G.P.ゾーンの前駆体となる原子クラスターが観察され、合金の強度を向上することができる。G.P.ゾーンの数密度は3×1022/m3以上であり、サイズは3~10nmであり、前記原子クラスターの数密度は3×1024/m3以上、サイズは1~5nmであることが好適である。
さらに、本発明のマグネシウム合金における時効後の組織においては、溶質元素のCa、Zn及びAlの何れかが転位線に固着又は偏析している。また、本発明のマグネシウム合金における時効後の組織においては、溶質元素のCa、Zn及びAlの全てが転位線に偏析していてもよい。この組織も合金の強度向上に寄与している。
(1)G.P.ゾーンや原子クラスターによって強化される時効硬化型合金で、時効開始後直ちに、例えば0.1時間以内に硬化が始まる合金であること。
(2)溶体化処理を350℃よりも高い温度、550℃未満で行い、ひずみ導入と時効処理前に合金元素が母相に過飽和に固溶させること。
(3)Caに加えて、少なくともZn、Alから1種以上の合金元素を含み、Caの添加量は0.3質量%以上1質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以上0.7質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上0.55質量%以下である。Caの添加量が0.3質量%より少ない場合には、後述する有用な析出物(G.P.ゾーン)を得にくいので好ましくない。逆に、Caの添加量が1質量%よりも多い場合には、MgとCaよりなる析出物が形成し、成形性や延性の低下を招くので好ましくない。
Znの添加量が0.5質量%より少ない場合には、時効硬化能が低下して大きな焼付硬化性が得られないので好ましくない。逆にZnの添加量が3質量%よりも多い場合には、析出相がG.P.ゾーンからMgZn2相に変化し、時効硬化のキネティクス(速度)が大幅に遅くなるので好ましくない。
Alの添加量が0.1質量%より少ない場合には、時効硬化能が低下して大きな焼付硬化性が得られないので好ましくない。逆にAlの添加量が3質量%よりも多い場合には、AlとMnがAl-Mn粒子を形成して、時効硬化に寄与するAl量が低下するので好ましくない。
(5)焼付硬化をする材料は、G.P.ゾーンなどの析出物を構成する合金元素としてMgの原子半径よりも小さな原子半径を有する元素であるAlやZnと、Mgの原子半径よりも大きな原子半径を有する元素であるCaの両者を含まなければならない。
本発明のマグネシウム合金時効処理材は、以下の工程で製造することができる。
図2は、本発明のマグネシウム合金時効処理材の製造方法を示すフロー図である。図2に示すように、本発明のマグネシウム合金時効処理材は、
Mg、Ca及び少なくともZn、Alから選ばれる1種以上の合金元素を溶解して鋳造固体を得る工程1、
鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程2、
均質化固体を熱間または温間で加工して有形固体を得る工程3、
有形固体を溶体化処理して冷却固体を得る工程4、
冷却固体にひずみを導入する工程5、
ひずみを導入した冷却固体を時効処理してマグネシウム合金時効処理材を得る工程6、
を含む工程により製造することができる。
(工程1:溶解、鋳造)
鋳造固体を得る工程で、Mgと少なくとも合金元素のAl及び/又はZnと、Caを鉄坩堝中で溶解して溶湯とし、鋳型等に流し込んで冷却することで鋳造して、鋳造固体を得る。
具体的には、例えば高周波誘導溶解炉を用いて上記組成の合金を溶解し、鉄鋳型を用いて鋳造することができる。なお、後述する実施例24~26においては、急冷凝固鋳造により試料を作製した。
ここで、溶解の際に用いる溶解炉は、高周波誘導溶解炉に限定されず、所望の組成の合
金が作製できれば他の装置でもよい。鋳造固体を、急冷凝固鋳造、重力鋳造及び真空鋳造
の何れかの方法で得てもよい。
鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程である。均質化処理では、鋳造固体中に存在する各成分の金属の分布を均質化し、溶湯の冷却中に形成する析出物をマトリックス中に固溶させる。均質化処理は、工程1で溶湯の冷却中に形成された析出物をマグネシウム母相に固溶させるとともに、凝固偏析をなくすための熱処理である。
特にZnが高濃度に偏析している領域は、450℃での熱処理から開始すると合金が融解する。このため、例えば、先ず300℃で24時間の熱処理を行って鋳造時に形成されるMg-Zn相の初期溶融を抑制し、その後450℃における熱処理を行ってZnの分布を均質化した。
ここで、均質化処理の条件は、上記の条件(350℃で24時間+450℃で4時間)には、限定されない。所定の温度、時間条件における熱処理によって合金元素がマグネシウム母相に固溶する条件で熱処理を行えば良い。
均質化固体を圧延又は押出などで熱間加工して有形固体を得る工程である。
圧延の際の条件として試料温度、ロール温度、圧下率、ロール周速、中間熱処理の有無などの条件が存在する。
なお、焼付硬化性と圧延条件に大きな関連性はないので、板材に加工できれば構わない。熱間加工として、圧延加工、押出加工、または鍛造加工を用いることができる。よってこの効果を発現させるためには、加工方法やその条件は問わない。また、極端に言えば、鋳塊を板状に切削加工するだけでもよい。
有形固体を溶体化処理して冷却固体を得る工程であり、熱間加工中に形成する析出物をマトリックス中に固溶させ、かつ再結晶した組織を形成させるために実施する熱処理工程である。
ここで、溶体化処理は、所定の温度、所定の時間の熱処理によって、工程3の圧延加工中に形成する析出物をマトリックス中に固溶し、かつ再結晶した組織を形成するように行えばよい。溶体化処理においては、十分な量の溶質元素を過飽和に固溶させねばならない。したがって、400℃以上での溶体化処理を行う必要がある。溶体化処理は、450℃で1時間程度行えばよいが、熱処理時間が長くなると製造コストの高騰につながるため、溶体化処理時間は必要最小限の時間でよい。
板材に一定量の変形を導入するためのプロセスで、板材から引張試験片を作製し、引張試験によって種々の量の引張ひずみを導入した。予ひずみの範囲は、1~15%とするのが好適である。予ひずみの範囲が1%よりも小さいと材料中に導入される転位の密度が低いため、溶質元素の偏析による転位線の固着による強化を得ることができないので好ましくない。逆に予ひずみの範囲が15%よりも大きい場合は、導入された転位の数密度が非常に高く、時効処理中に回復現象が起こり、材料そのものが軟化するので好ましくない。なお、ひずみ導入の効果を発現させるためのひずみ導入プロセスは引張試験には限定されない。ひずみ導入は、例えば圧縮、曲げなどの公知の方法により変形を加えることにより導入してもよい。
溶体化処理材に析出物を分散させ、強度を付与する熱処理プロセスである。
圧延に供する鋳塊の作製手法は焼付硬化性には影響しない。例えば、高周波溶解炉を用いて溶解、鋳造によって作製した鋳塊でも、急冷凝固鋳造を用いて作製した鋳塊でも合金元素や組織に対する要請が満足されていれば焼付硬化性を発現する。実施例21~23とその他の実施例の比較から、鋳塊の作製手法を変えても焼付硬化することは後述する。
板状試料を得る際の試料作製手法は圧延には限定されず、押出、鍛造などの方法によって板状試料を作製したとしても、所望の組織さえ得ることができれば本発明で示した効果を発揮することは可能である。極端にいえば、鋳造試料のままであっても、図2に示す(ア)、(エ)~(カ)に示す熱処理によって焼付硬化を示す合金が作製できる。
溶体化処理は、十分な量の溶質元素を過飽和に固溶させねばならない。したがって、400℃以上での溶体化処理を行う必要がある。
後述する比較例1のように、合金組成として焼付硬化を示す合金であっても、溶体化処理温度が低ければ焼付硬化量が低下するので、好ましくない。
焼付硬化した材料の組織は、下記の通り記述できる。
G.P.ゾーン、またはその前駆体である原子クラスターが析出している。
予ひずみ導入時に導入された転位に合金元素が偏析している。
次に、本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1~5)
実施例1~5は、Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-xZn合金において許容されるZn添加量を検討した実施例である。
(実施例1)
実施例1のマグネシウム合金時効処理材として、以下の組成のマグネシウム合金を作製した。マグネシウム合金の添加物であるAl、Ca、Mnの前に記載した数字は、質量%を示している。
なお、均質化処理の条件は、後述する実施例23、5~8、比較例1~9においても実施例1と同じである。
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行う。再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行う。
溶体化処理:300℃で4時間熱処理を行った後に、450℃まで昇温速度7.5℃/h(時間)で昇温し、6時間保持した。その後水冷した。
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理を行った。
図3に示すように、溶体化処理材のビッカース硬さは49.4±0.9HVで、4時間の時効によってピーク硬さの60.1±0.8HVまで増加し、時効硬化量は10.7HVである。
図4に示すように、溶体化処理材の0.2%耐力は147MPaで、2%ひずみ導入時の強度は167MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は197MPaまで増加し、30MPaの焼付硬化量、241MPaの引張強度、27%の伸びを示す。0.2%耐力は、降伏強度とも呼ばれている。
図4の応力-ひずみ曲線から得た0.2%耐力、引張強さ、伸び及び焼付硬化性を表2に示す。
ここで、表2に示す試験方向がRD方向とは、圧延方向に引張試験を行ったことを示している。
表2に示すように、実施例1で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン試験(試験器:エリクセン社製、111型)により評価した成形性(index Ericsen value)であるエリクセン値が6.1mmであった。以下の実施例及び比較例においても、エリクセン値は、実施例1と同様に測定した。
実施例2~実施例5は、表1に示すとおり、実施例1と合金組成のうちZnの添加量が異なり、均質化処理以外の圧延条件や熱処理条件は全て実施例1と同じである。これにより、Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn合金へのZn添加量の影響について調べた。
実施例2~実施例5の合金組成を以下に示す。
実施例2:Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-0.3Zn(質量%)
実施例3:Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-0.8Zn(質量%)
実施例4:Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn(質量%)
実施例5:Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-3.2Zn(質量%)
実施例4及び5の均質化処理は、以下の工程で行った。
溶体化処理:300℃で4時間熱処理を行った後に、450℃まで昇温速度7.5℃/h(時間)で昇温し、6時間保持した。その後試料温度が300℃になるまで空冷した後水冷した。
図5及び表2に示すように、実施例2~実施例5のマグネシウム合金の最大硬度到達時間は、それぞれ2時間であった。実施例2~実施例5のマグネシウム合金の時効硬化量は、それぞれ、9.4HV、9.9HV、8.4HV、7.9HVであった。
実施例3で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が7.7mmであった。実施例3のマグネシウム合金の溶体化処理材の0.2%耐力は142MPaで、2%ひずみ導入時の強度は179MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は218MPaまで増加し、39MPaの焼付硬化量、260MPaの引張強度、24%の伸びを示した。
実施例4で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が8.1mmであった。実施例4のマグネシウム合金の溶体化処理材の0.2%耐力は145MPaで、2%ひずみ導入時の強度は185MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は220MPaまで増加し、35MPaの焼付硬化量、266MPaの引張強度、25%の伸びを示した。
実施例5で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が5.2mmであった。実施例5のマグネシウム合金の溶体化処理材の0.2%耐力は137MPaで、2%ひずみ導入時の強度は183MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は204MPaまで増加し、21MPaの焼付硬化量、255MPaの引張強度、24%の伸びを示した。
実施例6~8は、実施例4と同様に合金組成が、Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn合金であり、圧延条件を変更した実施例である。
(実施例6)
合金組成:Mg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn合金展伸加工:板材の温度は300℃、ロール温度は300℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行う。
溶体化処理:450℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
実施例6で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が6.2mmであった。図7及び表2に示すように、実施例6の溶体化処理材の0.2%耐力は133MPaで、2%ひずみ導入時の強度は170MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は210MPaまで増加し、40MPaの焼付硬化量、260MPaの引張強度、28%の伸びを示した。
実施例8で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が5.8mmであった。図7及び表2に示すように、実施例8の溶体化処理材の0.2%耐力は145MPaで、2%ひずみ導入時の強度は176MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は217MPaまで増加し、41MPaの焼付硬化量、262MPaの引張強度、26%の伸びを示した。
実施例9~12は、実施例4と同様の組成において、Alの添加量を変更した実施例である。
実施例9~実施例12は、表1に示すとおり、実施例4と合金組成のうちAlの添加量が異なり、均質化処理以外の圧延条件や熱処理条件は全て実施例4と同じである。これにより、Mg-xAl-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn合金へのAl添加量の影響について調べた。
実施例9~実施例12の合金組成を以下に示す。
実施例9:Mg-0.8Al-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn(質量%)
実施例10:Mg-0.3Al-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn(質量%)
実施例11:Mg-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn(質量%)
実施例12:Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn(質量%)
溶体化処理:450℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
なお、実施例12は、実施例11の試料に結晶粒微細化材として添加されるMnをZrで置換したもので、その他の実験条件は全て、実施例4と同じである。
実施例9で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が7.5mmであった。図9及び表2に示すように、実施例9の溶体化処理材の0.2%耐力は171MPaで、2%ひずみ導入時の強度は194MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は236MPaまで増加し、42MPaの焼付硬化量、276MPaの引張強度、28%の伸びを示した。
実施例11で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が5.6mmであった。図10及び表2に示すように、実施例11の溶体化処理材の0.2%耐力は124MPaで、2%ひずみ導入時の強度は159MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は184MPaまで増加し、25MPaの焼付硬化量、237MPaの引張強度、14%の伸びを示した。
図10及び表2に示すように、実施例12の溶体化処理材の0.2%耐力は163MPaで、2%ひずみ導入時の強度は193MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は217MPaまで増加し、44MPaの焼付硬化量、265MPaの引張強度、25%の伸びを示した。
マグネシウム合金の組成を、Mg-0.5Ca-0.4Zr-xZn合金とし、Zn添加量を変更した実施例である。
実施例13~実施例15の合金組成を以下に示す。
実施例13:Mg-0.5Ca-0.4Zr-0.8Zn(質量%)
実施例14:Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn(質量%)
実施例15:Mg-0.5Ca-0.4Zr-2.1Zn(質量%)
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行う。
溶体化処理:400℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図11に示すように、溶体化処理材のビッカース硬さは48.3±1.0HVで、4時間の時効によってピーク硬さの59.3±0.9HVまで増加し、時効硬化量は11HVである。
実施例13で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が7.7mmであった。図12及び表2に示すように、実施例13の溶体化処理材の0.2%耐力は146MPaで、2%ひずみ導入時の強度は164MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は197MPaまで増加し、33MPaの焼付硬化量、237MPaの引張強度、28%の伸びを示した。
実施例15で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が7.8mmであった。図13及び表2に示すように、実施例15の溶体化処理材の0.2%耐力は169MPaで、2%ひずみ導入時の強度は182MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は213MPaまで増加し、31MPaの焼付硬化量、262MPaの引張強度、26%の伸びを示した。
実施例16及び後述する実施例17は、実施例14のMg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金で時効条件を変更した実施例である。
合金組成:Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行った。
溶体化処理:400℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で5分時効処理
実施例16で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が8.2mmであった。図15及び表2に示すように、実施例16の溶体化処理材の0.2%耐力は163MPaで、2%ひずみ導入時の強度は177MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は205MPaまで増加し、28MPaの焼付硬化量、253MPaの引張強度、31%の伸びを示した。
合金組成:Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金
展伸加工及び溶体化処理は、実施例16と同じであるが、時効条件が下記のように実施例16とは異なっている。
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で5分時効処理
実施例17で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が8.2mmであった。図16及び表2に示すように、実施例17の溶体化処理材の0.2%耐力は163MPaで、2%ひずみ導入時の強度は177MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は215MPaまで増加し、38MPaの焼付硬化量、257MPaの引張強度、27%の伸びを示した。
実施例18は、実施例13と同様に、Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金であり、溶体化処理条件を変更した実施例である。
合金組成:Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行う。
溶体化処理:500℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
つまり、実施例18では、実施例13の溶体化処理が500℃で1時間であった条件を、500℃で1時間に変更した。
図17に示すように、実施例13の溶体化処理材のビッカース硬さは48.3±1.0HVで、4時間の時効によってピーク硬さの59.3±0.9HVまで増加した。
一方、実施例18の溶体化処理材のビッカース硬さは47.7±1.0HVで、4時間の時効によってピーク硬さの65.7±1.7HVまで増加する。
実施例18は、実施例13と溶体化処理条件が異なるだけなので、上記の結果からは、溶体化処理を500℃、1時間で行った実施例18においては、実施例13に比較して溶体化処理材のビッカース硬さは、ほぼ同じであるが、時効処理材のビッカース硬さは約6HV増大することが分かる。
実施例18で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が7.0mmであった。図18及び表2から、実施例13の溶体化処理材の0.2%耐力は146MPaで、2%ひずみ導入時の強度は164MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は197MPaまで増加し、33MPaの焼付硬化量、237MPaの引張強度、28%の伸びを示した。
一方、実施例18の溶体化処理材の0.2%耐力は129MPaで、2%ひずみ導入時の強度は158MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は213MPaまで増加し、55MPaの焼付硬化量、259MPaの引張強度、18%の伸びを示した。
実施例18は、実施例13と溶体化処理条件が異なるだけなので、上記の結果からは、溶体化処理を500℃、1時間で行った実施例18においては、実施例13に比較して溶体化処理材の0.2%耐力及び2%ひずみ導入時の強度は、実施例13よりも小さいことが分かる。さらに、実施例18の時効処理材の0.2%耐力、焼付硬化量、引張強度は実施例13の場合よりも増大する。
実施例19及び実施例20は、Mg-0.8Ca-xZr-0.8Zn合金でZr添加量を変更した実施例である。
実施例19及び実施例20の合金組成を以下に示す。
実施例19:Mg-0.8Ca-0.4Zr-0.8Zn(質量%)
実施例20:Mg-0.8Ca-0.2Zr-0.8Zn(質量%)
展伸加工:板材、ロール温度ともに300℃で圧延を行う。
溶体化処理:450℃で1時間
ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
実施例21~実施例23は、Mg-1.3Al-0.5Ca-0.7Mn-0.8Zn合金において、ひずみ導入量を、それぞれ、2%、5%、10%とした実施例である。
ひずみ量を変化させた以外の合金組成、圧延条件、熱処理条件などのその他の条件は全て同じである。
合金組成:Mg-1.3Al-0.5Ca-0.7Mn-0.8Zn合金
展伸加工:厚さ4mmの急冷凝固鋳造材を作製したのち、圧延加工に供する。その際、板材の温度は100℃、ロール温度は100℃で圧延を行う。なお、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行った。
溶体化処理:450℃で1時間
ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図21に示すように、実施例21の溶体化処理材のビッカース硬さは54.9±0.5HVで、1時間の時効によってピーク硬さの62.4±1.1HVまで増加する。
図23及び表2から、実施例23の溶体化処理材の0.2%耐力は175MPaで、10%ひずみ導入時の強度は251MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は277MPaまで増加し、26MPaの焼付硬化量、277MPaの引張強度、18%の伸びを示した。
実施例24及び実施例25は、Mg-xZn-0.3Zr-0.3Ca合金でZnの添加量を変更した実施例である。
実施例24及び実施例25の合金組成を以下に示す。
実施例24:Mg-1.0Zn-0.3Zr-0.3Ca(質量%)
実施例25:Mg-2.0Zn-0.3Zr-0.3Ca(質量%)
展伸加工:温度は300℃、ロール温度は300℃で圧延を行う。
溶体化処理:450℃で1時間
ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図24に示すように、実施例24の溶体化処理材のビッカース硬さは45.0±1.0HVで、20分の時効によってピーク硬さの58.0±0.8HVまで増加する。
実施例24で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が6.0mmであった。図25に示すように、実施例24の溶体化処理材の0.2%耐力は172MPaで、2%ひずみ導入時の強度は191MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は214MPaまで増加し、30MPaの焼付硬化量、258MPaの引張強度、20%の伸びを示した。
図26に示すように、実施例25の溶体化処理材のビッカース硬さは47.2±1.4HVで、6時間の時効によってピーク硬さの57.9±0.9HVまで増加する。
実施例25で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が7.0mmであった。図26及び表2に示すように、実施例25の溶体化処理材の0.2%耐力は172MPaで、2%ひずみ導入時の強度は191MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は207MPaまで増加し、16MPaの焼付硬化量、268MPaの引張強度、21%の伸びを示した。
上記実施例3、13-17、22等によれば、15MPa以上の焼付硬化量、0.2%耐力が190MPa以上、エリクセン値が7.7mm以上となり、低炭素鋼や6000系アルミニウム合金に匹敵する優れた強度と加工性を兼ね備え、かつ、低コストなマグネシウム合金が得られた。
(比較例1)
実施例13及び実施例18に関連し、Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金で溶体化処理条件を変更した比較例である。合金組成及び製造条件を以下に示す。
合金組成:Mg-0.5Ca-0.4Zr-1.6Zn合金
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行った。
溶体化処理:350℃で1時間
ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図28に示すように、比較例1の溶体化処理材のビッカース硬さは49.9±0.6HVで、2時間の時効によってピーク硬さの51.6±0.5HVまで増加することが分かる。
比較例1の時効硬化量は1.7HVであり、実施例13及び実施例18の11HV、18HVに比較して低いことが分かる。
これから、溶体化処理温度が350℃という低い温度の場合には、実施例13及び実施例18に比較して、時効硬化量が低下することが判明した。
比較例2は実施例14に関連し、Mg-0.4Zr-1.6Zn合金で、合金組成中にCaを添加しない比較例である。合金組成及び製造条件を以下に示す。
合金組成:Mg-0.4Zr-1.6Zn合金
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行った。
溶体化処理:400℃で1時間
ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図30に示すように、比較例1の溶体化処理材のビッカース硬さは49.9±0.6HVで、2時間の時効によってピーク硬さの51.6±0.5HVまで増加する。
比較例2の時効硬化量は1.5HVであり、実施例14の9.4HVに比較して低いことが分かる。
これから、Caを添加しない比較例2では、実施例14に比較して、時効硬化量が低下することが判明した。
比較例3~6は、実施例24~25に関連し、Mg-Zn-Ca系合金でZn添加量の上限についての比較例である。
比較例3~6の合金組成を以下に示す。
比較例3:Mg-3.0Zn-0.3Zr-0.3Ca(質量%)
比較例4:Mg-4.0Zn-0.3Zr-0.3Ca(質量%)
比較例5:Mg-5.0Zn-0.3Zr-0.3Ca(質量%)
比較例6:Mg-6.0Zn-0.3Zr-0.3Ca(質量%)
展伸加工:温度は300℃、ロール温度は300℃で圧延を行う。
溶体化処理:450℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図32に示すように、比較例3の溶体化処理材のビッカース硬さは47.0±4HVで、6時間の時効によってピーク硬さの57.6±1.6HVまで増加する。
比較例3で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が5.9mmであった。図33及び表2から、比較例3の溶体化処理材の0.2%耐力は162MPaで、2%ひずみ導入時の強度は200MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は205MPaまで増加し、5MPaの焼付硬化量、267MPaの引張強度、23%の伸びを示した。
図34に示すように、比較例4~6の溶体化処理材のビッカース硬さは比較例3に比較して、Znの添加量の増大と共に増加し、時効処理によってピーク硬さも増加することが分かる。
表2に示すように、比較例3~6で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が4.4~5.9mmであった。図35及び表2から、比較例4~6の溶体化処理材及び時効処理材の0.2%耐力及び引張強度は、比較例3とほぼ同じで、伸びは低下した。
比較例7は、実施例3や後述する比較例8に関連し、Mg-Al-Zn系合金において、時効硬化型合金とするためには、さらにCaの添加が必要であることを示す比較例である。
合金組成:Mg-3.0Al-1.0Zn合金
展伸加工:板材の温度は100℃、ロール温度は100℃、各パス間において450℃で5分の試料再加熱を行い、再加熱後、試料温度が100℃まで低下してから圧延を行う。
溶体化処理:450℃で1時間
予ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
図36に示すように、比較例7の溶体化処理材のビッカース硬さは55.1±0.9 HVで、この試料は時効硬化を示さない。
比較例7で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が2.7mmであった。図37及び表2から、比較例7の溶体化処理材の0.2%耐力は162MPaで、2%ひずみ導入時の強度は198MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は186MPaまで低下するので、強度は1.2MPa低下し、-12MPaの焼付硬化量、254MPaの引張強度、30%の伸びを示した。
上記結果から比較例7のマグネシウム合金は時効硬化性を示さないことが判明した。これにより、時効硬化型合金とするためには、MgにAl及びZnだけではなく、さらにCaの添加が必要であることが判明した。
比較例8は、実施例4、9.10、比較例7に関連し、Mg-Al-Zn-Ca系合金において、Al添加量の上限を決める比較例であり、焼付硬化(Bake Hard、BH)性の発現に微細化材は必要ないことを示すものである。
合金組成:Mg-1Ca-3.0Al-1.0Zn合金
展伸加工:市販材のため加工条件は不明。
溶体化処理:450℃で1時間
ひずみ量と時効条件:2%ひずみ導入後、170℃で20分時効処理
比較例8で得られた冷却固体の機械的特性を測定したところ、エリクセン値が6mmであった。図38及び表2から、比較例8の溶体化処理材の0.2%耐力は147MPaで、2%ひずみ導入時の強度は167MPaである。170℃で20分の時効処理によって0.2%耐力は176MPaまで増加するので、焼付硬化量としてはわずか9MPaの焼付硬化量、255MPaの引張強度、25%の伸びを示した。
上記比較例1~8によれば、何れも焼付硬化量が得られないか、せいぜい13MPa以下であり、実施例のような15MPa以上の焼付硬化量は得られないことが判明した。
図39は、実施例21のMg-1.3Al-0.5Ca-0.7Mn-0.8Zn合金を溶体化処理後、予ひずみを加えずにピーク時効まで時効した材料の析出組織であり、(a)は暗視野透過電子顕微鏡像(DF-STEM像と呼ぶ)、(b)は3次元アトムプローブより得た3次元元素マップ、(c)は(b)の長手方向の元素分析の結果を示す図である。透過型電子顕微鏡としては、FEI社の走査透過電子顕微鏡(Titan、 G2 80-200)を用いた。透過電子顕微鏡像をTEM像と呼ぶ。
図39(b)の3次元アトムプローブの計測範囲は、3nm×3nm×10nmであり、図39(a)のDF-STEM像で観察したG.P.ゾーンが、MgとCaとZnよりなることが確認できた。数密度は、4.5×1022m-3~5×1023m-3であった。
図41に示すように、実施例21のMg-1.3Al-0.5Ca-0.7Mn-0.8Zn合金において、原子クラスターが形成されており、明視野TEM像と3次元アトムマップの比較から、実施例21において、予ひずみ導入時に導入された転位に溶質元素である、AlとZnが偏析していることが分かった。
図41(d)で観察された微細組織は、Mg、Ca及びAlよりなるG.P.ゾーンの前駆体となる原子クラスターであり、その数密度は2.04×1024/m3であった。
原子クラスターが観察されるのは、焼付硬化量を測定するために、170℃で20分という短時間の時効処理を行うからである。最大硬度が得られるまで時効処理を行った場合には、原子クラスターがG.P.ゾーンとなり、G.P.ゾーンとして観察される。
(A)予ひずみを加えずに時効処理をした時、時効硬化する材料でなければならない。 比較例1、2、7のように、時効硬化しない試料は焼付硬化を示さない。
(B)焼付硬化を示す材料は、時効硬化する材料のなかでも、予ひずみを加えずに時効処理をした時に0.1時間以内に硬化を開始する急速な時効硬化する材料に限られる。
比較例3~6のように、時効硬化する試料でも、数時間におよぶ潜伏期間を経て硬化を開始する試料は焼付硬化を示さない。
例えば、実施例21のように、溶体化処理後ただちに時効硬化を行い、ピーク時効まで時効をした時、G.P.ゾーンが析出するような試料では焼付硬化を示す。
しかしながら、比較例5のように、焼付硬化を示さない合金ではG.P.ゾーンではなくβ1’相と呼ばれるマグネシウム母相の[0001]方向に伸びるMgZn2相の析出相が析出する(図39参照)。
(D)特に、本発明において取り扱った合金元素において、焼付硬化を発現させるための合金元素の濃度は下記の通りである。
Ca:0.3質量%以上、1質量%以下
(根拠)下限はCaの固溶限であり、上限は鋳造割れなどにより合金が作製できない場合の限度。
Zn:0.5質量%以上、3質量%未満
(根拠)実験的に決定
Al:0.1質量%以上、3質量%未満
(根拠)実験的に決定
非特許文献6により、上記の元素であってもCaを添加した場合同様の析出物が形成することが明らかになっている。
Claims (8)
- 0.3質量%以上1質量%以下のCaと、
0.5質量%以上3.5質量%未満のZnと、
0.1質量%以上3質量%未満のAlと、
0.1質量%以上1質量%以下のMnと、
を含有し、残部がMg及び不可避不純物からなり、
マグネシウム合金の0.2%耐力が、150MPa以上であり、Mg、Ca及びAlよりなる析出物又はMg、Ca及びZnよりなる析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散していると共に、
前記Mg、Ca及びAlよりなる析出物又は前記Mg、Ca及びZnよりなる析出物は、G.P.ゾーン又は該G.P.ゾーンの前駆体となる原子クラスターであり、前記G.P.ゾーンの数密度は3×1022/m3以上であり、サイズは5nm以上10nm以下であり、前記原子クラスターの数密度は2.04×1024/m3以上であり、サイズは1nm以上5nm未満であり、
溶質元素のCa、Zn及びAlの何れかが転位線に固着する組織を有している、
マグネシウム合金時効処理材。 - 前記Caの含有量は、0.3質量%以上0.7質量%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金時効処理材。
- 前記Caの含有量は、0.3質量%以上0.55質量%以下である請求項1に記載のマグネシウム合金時効処理材。
- 請求項1に記載の組成比率のMg、Ca、Zn、Al及びMnを溶解して鋳造固体を得る工程1と、
前記鋳造固体を均質化処理して均質化固体を得る工程2と、
前記均質化固体を熱間または温間で加工して有形固体を得る工程3と、
前記有形固体を溶体化処理し、溶体化処理後に水冷して過飽和に固溶させた冷却固体を得る工程4と、
前記冷却固体にひずみを導入する工程5と、
前記ひずみを導入した冷却固体を時効処理してマグネシウム合金時効処理材を得る工程6と、
を含み、製造されるマグネシウム合金時効処理材は、0.2%耐力が、150MPa以上であり、Mg、Ca及びAlよりなる析出物又はMg、Ca及びZnよりなる析出物がマグネシウム母相の(0001)面上に分散していると共に、
前記Mg、Ca及びAlよりなる析出物又は前記Mg、Ca及びZnよりなる析出物は、G.P.ゾーン又は該G.P.ゾーンの前駆体となる原子クラスターであり、前記G.P.ゾーンの数密度は3×1022/m3以上であり、サイズは5nm以上10nm以下であり、前記原子クラスターの数密度は2.04×1024/m3以上であり、サイズは1nm以上5nm未満であり、
溶質元素のCa、Zn及びAlの何れかが転位線に固着する組織を有している、マグネシウム合金時効処理材の製造方法。 - 前記工程2において、400℃以上500℃以下で所定時間の均質化処理を行う、請求項4に記載のマグネシウム合金時効処理材の製造方法。
- 前記工程5において、ひずみを1~10%とする、請求項4又は5に記載のマグネシウム合金時効処理材の製造方法。
- 前記工程6において、前記時効処理の温度と処理時間は、焼付塗装処理に相当するものである、請求項4~6の何れか1項に記載のマグネシウム合金時効処理材の製造方法。
- 請求項1~3の何れか1項に記載のマグネシウム合金時効処理材を用いて焼付塗装処理が行なわれた自動車を生産する方法。
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