JP7786644B2 - 亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法

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Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法に関する。
近年、自動車業界において、地球環境の保全という観点から、CO排出量を削減すべく、自動車の燃費を改善することが重要な課題となってきた。自動車の燃費向上には、自動車車体の軽量化を図ることが有効であるが、自動車車体の強度を維持する必要がある。そこで、自動車部品用素材となる鋼板を高強度化することで強度を維持しつつ、構造を簡略化して部品点数を削減することで、自動車車体の軽量化が図られていた。
しかしながら、TSが1470MPa以上である高強度鋼板を、冷間プレス又は曲げ加工等により成形して部品とした場合、部品内での残留応力の増加、及び鋼板の耐遅れ破壊特性の劣化等により、遅れ破壊が生じるおそれがある。ここで、遅れ破壊とは、成形後の部品が水素侵入環境下に置かれたときに、水素が部品を構成する鋼板内に侵入し、原子間結合力を低下させること又は局所的な変形を生じさせること等により微小亀裂が生じ、その微小亀裂が進展することで鋼板の破壊に至る現象である。
これに対し、特許文献1には、機械特性に優れ、製造時の浸入水素量を低減し、かつ耐水素脆化特性及びめっき密着性に優れためっき鋼板とその製造方法が記載されている。また、特許文献2には、鋼板の成分組成及び残留オーステナイトを制御することにより、耐水素脆化特性が優れた超高強度薄鋼板とその製造方法が記載されている。
国際公開第2019/212047号 特開2007-197819号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2においては、特に過酷な加工が加わる伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性については考慮されておらず、本発明者らが検討したところ、改善の余地があることが判明した。また、特許文献2においては残留オーステナイト中の炭素濃度が0.8質量%以上であることが推奨されているが、本発明者らが検討したところ、穴広げ性に改善の余地があることが判明した。
上記課題を鑑みて、本発明は、引張強さ(TS)が1470MPa以上、伸び(El)が9.0%以上、穴広げ率(λ)が20%以上であり、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)下地鋼板の板厚の1/4の位置において、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計を70.0%以上、かつ、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計を10.0%以下とすることで、1470MPa以上のTSを実現できる。
(2)板厚の1/4の位置において、残留オーステナイトの体積率を6.0%以上20.0%以下とし、かつ、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計を20%以上45%以下とすることで、伸び(El)が9.0%以上、穴広げ率(λ)が20%以上の優れた加工性及び伸びフランジ加工部の優れた耐遅れ破壊特性を実現できる。
(3)亜鉛系めっき鋼板を製造する際に、所定の成分組成を有する鋼スラブを使用し、焼鈍工程後及びめっき処理工程後の保持工程又は各冷却工程において、保持時間又は冷却時間及び冷却速度を制御することにより、上記(1)、(2)を満たす組織を有する亜鉛系めっき鋼板を得ることができる。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
[1]下地鋼板と、前記下地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層と、を有する亜鉛系めっき鋼板であって、
前記下地鋼板が、
質量%で、
C :0.180%以上0.250%以下、
Si:0.800%以上1.550%以下、
Mn:2.400%以上3.200%以下、
P :0.100%以下、
S :0.0200%以下、
Al:1.000%以下、
N :0.0100%以下、及び
O :0.0100%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成と、
前記下地鋼板の表面からの深さが板厚の1/4の位置において、
焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が70.0%以上94.0%以下、
残留オーステナイトの体積率が6.0%以上20.0%以下、
フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が10.0%以下、並びに
残部組織の面積率が10.0%以下である組織と、
を有し、
前記1/4の位置において、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が20%以上45%以下であり、
前記1/4の位置において、旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度が0.60質量%未満であり、
引張強さが1470MPa以上である
ことを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
[2]前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ti :0.200%以下、
Nb :0.200%以下、
V :0.200%以下、
Ta :0.10%以下、
W :0.10%以下、
B :0.0100%以下、
Cr :1.00%以下、
Mo :1.00%以下、
Ni :1.00%以下、
Co :0.010%以下、
Cu :1.00%以下、
Sn :0.200%以下、
Sb :0.200%以下、
Ca :0.0100%以下、
Mg :0.0100%以下、
REM:0.0100%以下、
Zr :0.100%以下、
Zn :0.100%以下、
Pb :0.100%以下、
Te :0.100%以下、
Se :0.020%以下、
Ga :0.020%以下、
Ge :0.020%以下、
Sr :0.020%以下、
Hf :0.10%以下、及び
Bi :0.200%以下、
からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、上記[1]に記載の亜鉛系めっき鋼板。
[3]前記亜鉛系めっき層が、電気亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層、又は合金化溶融亜鉛めっき層である、上記[1]又は[2]に記載の亜鉛系めっき鋼板。
[4]質量%で、
C :0.180%以上0.250%以下、
Si:0.800%以上1.550%以下、
Mn:2.400%以上3.200%以下、
P :0.100%以下、
S :0.0200%以下、
Al:1.000%以下、
N :0.0100%以下、及び
O :0.0100%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブに熱間圧延を施して、熱延鋼板を得る工程と、
前記熱延鋼板に冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る工程と、
前記冷延鋼板を、以下の式(1)で定義されるAc3(℃)以上の焼鈍温度に10s以上保持する焼鈍工程と、
次いで、前記冷延鋼板を、以下の式(2)及び式(3)でそれぞれ定義されるBs及びMsを用いて、(3Bs-Ms)/3(℃)以上0.95×Bs(℃)以下の温度T1まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却する第一の冷却工程と、
次いで、以下の式(4)におけるfが0.010以上0.200以下を満たす時間t(s)だけ、前記冷延鋼板を前記T1(℃)に保持する保持工程、又は、前記冷延鋼板を1.50℃/s以下の冷却速度で冷却する第二の冷却工程と、
次いで、前記冷延鋼板を、Ms(℃)以上Bs-20(℃)以下の温度T3まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却する第三の冷却工程と、
次いで、前記冷延鋼板に亜鉛系めっき処理を施して、めっき鋼板を得る工程と、
次いで、前記めっき鋼板を、Ms-200(℃)以上Ms-80(℃)以下の温度T4まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却する第四の冷却工程と、
次いで、前記めっき鋼板を、100℃以上T4(℃)未満の冷却停止温度T5まで、3.0℃/s以下の冷却速度で冷却する第五の冷却工程と、
次いで、前記めっき鋼板を、T5(℃)超え350℃以下の焼戻し温度に5s以上1000s以下保持する焼戻し工程と、
を有する、亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
Ac3(℃)=881-205.7×[%C]+53.1×[%Si]-15×[%Mn]-27×[%Cu]-20.1×[%Ni]-0.7×[%Cr]+41.1×[%Mo] ・・・(1)
Bs(℃)=830-270×[%C]-90×[%Mn]-37×[%Ni]-70×[%Cr]-83×[%Mo] ・・・(2)
Ms=539-423×[%C]-30.4×[%Mn]-17.7×[%Ni]-12.1×[%Cr]-7.5×[%Mo] ・・・(3)
ここで、[%X]は、前記成分組成における元素Xの含有量(質量%)を示し、前記成分組成が元素Xを含有しない場合は0とする。dγ(μm)は、前記焼鈍工程の終了時における前記冷延鋼板の旧オーステナイト粒径とする。
[5]前記成分組成は、さらに、質量%で、
Ti :0.200%以下、
Nb :0.200%以下、
V :0.200%以下、
Ta :0.10%以下、
W :0.10%以下、
B :0.0100%以下、
Cr :1.00%以下、
Mo :1.00%以下、
Ni :1.00%以下、
Co :0.010%以下、
Cu :1.00%以下、
Sn :0.200%以下、
Sb :0.200%以下、
Ca :0.0100%以下、
Mg :0.0100%以下、
REM:0.0100%以下、
Zr :0.100%以下、
Zn :0.100%以下、
Pb :0.100%以下、
Te :0.100%以下、
Se :0.020%以下、
Ga :0.020%以下、
Ge :0.020%以下、
Sr :0.020%以下、
Hf :0.10%以下、及び
Bi :0.200%以下、
からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、上記[4]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[6]前記亜鉛系めっき処理が、電気亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっき処理、又は、溶融亜鉛めっき処理及びこれに続く合金化処理である、上記[4]又は[5]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
本発明によると、引張強さ(TS)が1470MPa以上、伸び(El)が9.0%以上、穴広げ率(λ)が20%以上であり、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法における、温度と時間の関係を示したグラフである。
以下、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
(下地鋼板の成分組成)
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき鋼板は、下地鋼板と、下地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層と、を有する。下地鋼板は、質量%で、C:0.180%以上0.250%以下、Si:0.800%以上1.550%以下、Mn:2.400%以上3.200%以下、P:0.100%以下、S:0.0200%以下、Al:1.000%以下、N:0.0100%以下、及びO:0.0100%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する。以下、下地鋼板の基本成分について説明する。なお、以下の説明において、下地鋼板の成分元素の含有量を表す「%」は、特に明記しない限り「質量%」を意味する。
[C:0.180%以上0.250%以下]
Cは、下地鋼板の重要な基本成分の1つであり、特に本発明では、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計に影響する重要な元素である。Cの含有量が0.180%未満では、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が減少し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加し、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、Cの含有量は、0.180%以上とし、0.200%以上が好ましく、0.210%以上がより好ましい。一方、Cの含有量が0.250%を超えると、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトが脆化し、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Cの含有量は、0.250%以下とし、0.240%以下が好ましい。
[Si:0.800%以上1.550%以下]
Siは、下地鋼板の重要な基本成分の1つであり、TSと残留オーステナイトの体積率に影響する重要な元素である。Siの含有量が0.800%未満では、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの強度が減少するため、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、Siの含有量は、0.800%以上とし、0.850%以上が好ましく、0.900%以上がより好ましい。一方、Siの含有量が1.550%を超えると、残留オーステナイトが過度に増加し、穴広げ性が低下する。したがって、Siの含有量は、1.550%以下とし、1.500%以下が好ましく、1.400%以下がより好ましい。
[Mn:2.400%以上3.200%以下]
Mnは、下地鋼板の重要な基本成分の1つであり、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計に影響する重要な元素である。Mnの含有量が2.400%未満では、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が減少し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加し、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、Mnの含有量は、2.400%以上とし、2.500%以上が好ましく、2.600%以上がより好ましい。一方、Mnの含有量が3.200%を超えると、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトが脆化し、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Mnの含有量は、3.200%以下とし、3.100%以下が好ましく、3.000%以下がより好ましい。
[P:0.100%以下]
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させるため、下地鋼板を脆化させることから、Pの含有量が0.100%を超えると伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Pの含有量は、0.100%以下とし、0.070%以下が好ましい。一方、Pの含有量の下限は特に規定しないが、Pは固溶強化元素であり、下地鋼板の強度を上昇させることができることから、Pの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
[S:0.0200%以下]
Sは、硫化物として存在し、下地鋼板を脆化させることから、Sの含有量が0.0200%を超えると伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Sの含有量は0.0200%以下とし、0.0050%以下が好ましい。一方、Sの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Sの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
[Al:1.000%以下]
Alは、酸化物として存在し、下地鋼板を脆化させることから、Alの含有量が1.000%を超えると伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Alの含有量は1.000%以下とし、0.500%以下が好ましい。一方、Alの含有量の下限は特に規定しないが、Alは連続焼鈍中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、Alの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
[N:0.0100%以下]
Nは、窒化物として存在し、下地鋼板を脆化させることから、Nの含有量が0.0100%を超えると伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Nの含有量は0.0100%以下とし、0.0050%以下が好ましい。一方、Nの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Nの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
[O:0.0100%以下]
Oは、酸化物として存在し、下地鋼板を脆化させることから、Oの含有量が0.0100%を超えると伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下する。したがって、Oの含有量は0.0100%以下とし、0.0050%以下が好ましい。一方、Oの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Oの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
(下地鋼板の任意成分)
下地鋼板は、上述した基本成分に加えて、さらに、質量%で、Ti:0.200%以下、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、B:0.0100%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Ni:1.00%以下、Co:0.010%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Zn:0.100%以下、Pb:0.100%以下、Te:0.100%以下、Se:0.020%以下、Ga:0.020%以下、Ge:0.020%以下、Sr:0.020%以下、Hf:0.10%以下、及びBi:0.200%以下からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
[Ti:0.200%以下]
[Nb:0.200%以下]
[V :0.200%以下]
Ti、Nb、及びVは、それぞれ含有量が0.200%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が多量に生成せず、下地鋼板の極限変形能を低下させないことから、λが低下せず、曲げ性も低下しない。したがって、Ti、Nb、及びVのいずれか一種以上を含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.200%以下とし、0.100%以下が好ましい。一方、Ti、Nb、及びVの含有量の下限は特に規定しないが、これらの元素は、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物または炭窒化物を形成することによって、下地鋼板の強度を上昇させることから、Ti、Nb、及びVの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。
[Ta:0.10%以下]
[W :0.10%以下]
Ta及びWは、それぞれ含有量が0.10%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が多量に生成せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Ta及びWのいずれか一種以上を含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.10%以下とし、0.08%以下が好ましい。一方、Ta及びWの含有量の下限は特に規定しないが、これらの元素は、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成することによって、下地鋼板の強度を上昇させることから、Ta及びWの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。
[B:0.0100%以下]
Bは、含有量が0.0100%以下であれば鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れを生成せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Bを含有する場合には、その含有量は0.0100%以下とし、0.0080%以下が好ましい。一方、Bの含有量の下限は特に規定しないが、Bは焼鈍中にオーステナイト粒界に偏析し、焼入れ性を向上させる元素であることから、Bの含有量は0.0003%以上とすることが好ましい。
[Cr:1.00%以下]
[Mo:1.00%以下]
[Ni:1.00%以下]
Cr、Mo、及びNiは、それぞれ含有量が1.00%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Cr、Mo、及びNiのいずれか一種以上を含有する場合には、その含有量はそれぞれ1.00%以下とし、0.80%以下が好ましい。一方、Cr、Mo、及びNiの含有量の下限は特に規定しないが、これらの元素は焼入れ性を向上させることから、Cr、Mo、及びNiの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。
[Co:0.010%以下]
Coは、含有量が0.010%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Coを含有する場合には、その含有量は0.010%以下とし、0.008%以下が好ましい。一方、Coの含有量の下限は特に規定しないが、Coは焼入れ性を向上させることから、Coの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
[Cu:1.00%以下]
Cuは、含有量が1.00%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Cuを含有する場合には、その含有量は1.00%以下とし、0.80%以下が好ましい。一方、Cuの含有量の下限は特に規定しないが、Cuは焼入れ性を向上させることから、Cuの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
[Sn:0.200%以下]
Snは、含有量が0.200%以下であれば鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れを生成せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Snを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とし、0.100%以下が好ましい。一方、Snの含有量の下限は特に規定しないが、Snは焼入れ性を向上させることから、Snの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
[Sb:0.200%以下]
Sbは、含有量が0.200%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Sbを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とし、0.100%以下が好ましい。一方、Sbの含有量の下限は特に規定しないが、Sbは表層軟化厚みを制御し、強度調整を可能にすることから、Sbの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
[Ca :0.0100%以下]
[Mg :0.0100%以下]
[REM:0.0100%以下]
Ca、Mg、及びREMは、それぞれ含有量が0.0100%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Ca、Mg、及びREMのいずれか一種以上を含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.0100%以下とし、0.0050%以下が好ましい。一方、Ca、Mg、及びREMの含有量の下限は特に規定しないが、これらの元素は、窒化物又は硫化物等の形状を球状化し、下地鋼板の極限変形能を向上させることから、Ca、Mg、及びREMの含有量はそれぞれ0.0005%以上とすることが好ましい。
[Zr:0.100%以下]
[Zn:0.100%以下]
[Pb:0.100%以下]
[Te:0.100%以下]
Zr、Zn、Pb、及びTeは、それぞれ含有量が0.100%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Zr、Zn、Pb、及びTeのいずれか一種以上を含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.100%以下とし、0.080%以下が好ましい。一方、Zr、Zn、Pb、及びTeの含有量の下限は特に規定しないが、これらの元素は、窒化物又は硫化物等の形状を球状化し、下地鋼板の極限変形能を向上させることから、Zr、Zn、Pb、及びTeの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。
[Se:0.020%以下]
[Ga:0.020%以下]
[Ge:0.020%以下]
[Sr:0.020%以下]
Se、Ga、Ge、及びSrは、それぞれ含有量が0.020%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Se、Ga、Ge、及びSrのいずれか一種以上を含有する場合には、その含有量はそれぞれ0.020%以下とする。一方、Se、Ga、Ge、及びSrの含有量の下限は特に規定しないが、これらの元素は、窒化物又は硫化物等の形状を球状化し、下地鋼板の極限変形能を向上させることから、Se、Ga、Ge、及びSrの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。
[Hf:0.10%以下]
Hfは、含有量が0.10%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Hfを含有する場合には、その含有量は0.10%以下とし、0.08%以下が好ましい。一方、Hfの含有量の下限は特に規定しないが、Hfは窒化物又は硫化物等の形状を球状化し、下地鋼板の極限変形能を向上させることから、Hfの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
[Bi:0.200%以下]
Biは、含有量が0.200%以下であれば粗大な析出物又は介在物等が増加せず、下地鋼板を脆化させないことから、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が低下しない。したがって、Biを含有する場合には、その含有量は0.200%以下とし、0.100%以下が好ましい。一方、Biの含有量の下限は特に規定しないが、Biは偏析を軽減することから、Biの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
なお、上記Ti、Nb、V、Ta、W、B、Cr、Mo、Ni、Co、Cu、Sn、Sb、Ca、Mg、REM、Zr、Zn、Pb、Te、Se、Ga、Ge、Sr、Hf、及びBiについて、各含有量がそれぞれの好ましい下限値未満である場合には、本発明の効果を害することがない。したがって、各含有量をそれぞれの好ましい下限値未満含んでもよく、その場合は不可避的不純物として扱う。本発明の一実施形態に係る下地鋼板は、上記基本成分を含有し、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物からなる。ここで、本発明の一実施形態に係る下地鋼板は、上記基本成分及び残部のみを含有し、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物であることが好ましい。
(下地鋼板の組織)
次に、下地鋼板の組織について説明する。下地鋼板は、下地鋼板の表面からの深さが板厚の1/4の位置において、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が70.0%以上94.0%以下、残留オーステナイトの体積率が6.0%以上20.0%以下、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が10.0%以下、並びに残部組織の面積率が10.0%以下である組織を有する。さらに、下地鋼板の表面からの深さが板厚の1/4の位置において、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が20%以上45%以下であり、旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度が0.60質量%未満であることを特徴とする。なお、以下で説明する組織は、下地鋼板の表面からの深さが板厚の1/4の位置における組織である。
[焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が70.0%以上94.0%以下]
焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計を70.0%以上とすることで、1470MPa以上のTSを実現することが可能となる。一方、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が94.0%を超える場合、優れた延性を実現することが困難となる。したがって、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計は70.0%以上94.0%以下とする。
特に、焼戻しマルテンサイトの面積率が80.0%以上であると、TSが好適に得られるため好ましい。一方、焼戻しマルテンサイトの面積率の上限は特に制限されないが、焼戻しマルテンサイトの面積率は概ね94.0%以下である。また、フレッシュマルテンサイトの面積率が10.0%以下であると、λが好適に得られるため好ましい。一方、フレッシュマルテンサイトの面積率の下限は特に制限されないが、フレッシュマルテンサイトの面積率は概ね1.0%以上である。
焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計は、以下のようにして求めることができる。下地鋼板のL断面を研磨後、3vol.%ナイタールで腐食し、板厚の1/4の位置(鋼板表面から深さ方向で板厚の1/4に相当する位置)を、SEMを用いて3000倍の倍率で10視野観察する。観察した画像において、平滑な表面を有する組織の面積率から、後述する方法で求めた残留オーステナイトの体積率を差し引くことで、フレッシュマルテンサイトの面積率を求めることができる。なお、フレッシュマルテンサイトは50nm以上の幅を有する凸部である。同様にして観察した組織画像において、焼戻しマルテンサイトの面積率を求めることができる。焼戻しマルテンサイトは下部組織(ラス境界、ブロック境界)を有し、かつ、炭化物が複数のバリアントを以て析出している組織である。なお、残留オーステナイトの体積率は面積率にほぼ等しいため、本発明では面積率と同等に扱う。
[残留オーステナイトの体積率が6.0%以上20.0%以下]
残留オーステナイトの体積率が6.0%未満では、優れた延性を実現することが困難になる。したがって、残留オーステナイトの体積率は6.0%以上とし、6.5%以上が好ましく、7.0%以上がより好ましい。一方、残留オーステナイトの体積率が20.0%を超えると、優れた穴広げ性を実現することが困難となる。したがって、残留オーステナイトの体積率は20.0%以下とし、15.0%以下が好ましく、13.0%以下がより好ましい。
残留オーステナイトの体積率は、以下のようにして求めることができる。下地鋼板を板厚の1/4の位置よりも0.1mm厚い位置まで研磨する。化学研磨によりさらに0.1mm研磨して板厚の1/4の位置とした面について、X線回折装置でCoKα線を用いて、fcc鉄の{200}、{220}、{311}面と、bcc鉄の{200}、{211}、{220}面の回折ピークの各々の積分強度比を測定する。得られた9つの積分強度比を平均化することで、残留オーステナイトの体積率を求めることができる。
[フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が10.0%以下]
フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が10.0%を超えると、1470MPa以上のTSの実現が困難となる。したがって、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計は10.0%以下とする。一方、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計の下限は特に限定されず、面積率の合計は0.0%であってもよい。
フェライト及びベイニティックフェライトの面積率は、以下のようにして求めることができる。下地鋼板のL断面を研磨後、3vol.%ナイタールで腐食し、板厚の1/4の位置を、SEMを用いて3000倍の倍率で10視野観察する。観察した組織画像において、フェライト及びベイニティックフェライトは凹部で組織内部が平坦な組織である。各視野においてフェライト及びベイニティックフェライトの面積率を求め、それらの値の平均値をフェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計とする。
[残部組織の面積率が10.0%以下]
本発明の鋼組織は、パーライト及びセメンタイト等の炭化物又はその他鋼板の組織として公知のものが残部組織として含まれていてもよい。残部組織の面積率が10.0%以下であれば、本発明の効果が損なわれることはない。したがって、残部組織の面積率は10.0%以下とする。一方、残部組織の面積率の下限は特に限定されず、残部組織の面積率は0.0%であってもよい。
残部組織の面積率は、以下のようにして求めることができる。下地鋼板のL断面を研磨後、3vol.%ナイタールで腐食し、板厚の1/4の位置を、SEMを用いて3000倍の倍率で10視野観察する。観察した組織画像において、残部組織の面積率は100.0%から焼き戻しマルテンサイト、フレッシュマルテンサイト、フェライト、及びベイニティックフェライトの面積率、並びに残留オーステナイトの体積率を差し引いた値とする。各視野において残部組織の面積率を求め、それらの値の平均値を残部組織の面積率とする。
[旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が20%以上45%以下]
旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計を20%以上とすることで、粒界を拡散経路とする水素の拡散を阻害し、伸びフランジ加工部の優れた耐遅れ破壊特性を実現できる。したがって、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計は20%以上とし、30%以上が好ましい。一方、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が45%を超える場合、優れた穴広げ性を実現することが困難となる。したがって、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計は45%以下とし、40%以下が好ましい。
旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計は、以下のようにして求めることができる。亜鉛系めっき鋼板のL断面を研磨後、3vol.%ナイタールで腐食し、板厚の1/4の位置を、SEMを用いて3000倍の倍率で観察し、旧オーステナイト粒界を10個、無作為に選定する。選定した旧オーステナイト粒界上において、旧オーステナイト粒界と直行方向に50nm以上の幅を有し、平滑な表面を有する凸部を、残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトが被覆している部位とする。残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトが被覆している部位の周長さの合計を、当該選定した旧オーステナイト粒界の周長さで除する。各箇所において得られた値の平均値を求め、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計とした。
[旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度が0.60質量%未満]
旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度が0.60質量%以上である場合、母相と大きく硬度の異なる第2相は加工時に応力集中部となり、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性を劣化させる。したがって、旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度は0.60質量%未満とし、0.55質量%以下が好ましい。一方、旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度の下限は特に限定されず、当該炭素濃度は概ね0.30質量%以上となる。
旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度は、以下のようにして求めることができる。まず、鋼板(試料)の表面を、圧延方向に平行な断面(L断面)が観察面となるように、ダイヤモンドペーストを用いて研磨し、さらにアルミナ研磨により鏡面に仕上げる。次いで、試料表面における炭化水素の汚染(カーボンコンタミネーション、コンタミ)を排除するため、プラズマクリーナーを用いて観察面を清浄化する。清浄化した観察面において、板厚の1/4の位置を、電界放出型電子銃を搭載した電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA:Field Emission Electron Probe Micro Analyzer)を用いて測定する。測定条件は、非特許文献(T.Yamashita,Y.Tanaka,M.Nagoshi and K.Ishida:Sci.Rep.,6(2016),DOI:10.1038/srep29825.)に記載されているとおり、加速電圧7kV、電流50nAとする。また、試料表面にコンタミが付かないように、試料を100℃に加熱、保持しながら測定する。測定結果から検量法により炭素濃度を求め、炭素の元素マッピング画像を得る。得られた元素マッピング画像において、炭素濃度が母相の平均以上であり、かつ0.6質量%未満である領域(高炭素領域)を特定する。さらに、元素マッピング画像と同視野のSEM画像を参照して、旧オーステナイト粒を識別し、その旧オーステナイト粒の粒界上に存在する高炭素領域を特定する。そして、旧オーステナイト粒の周の長さaと、その旧オーステナイト粒の周のうち、高炭素領域と重なる部分の長さbとを求め、それらの比b/aを算出する。各鋼板において、上記の測定を30回実施する。30回分の平均値を、その鋼板の旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度とする。
なお、フレッシュマルテンサイトは最終冷却時に未変態オーステナイトが変態したことにより生成している。そのため、旧オーステナイト粒界を被覆するフレッシュマルテンサイト中の炭素濃度は残留オーステナイト中の炭素濃度と同等以下となる。
(亜鉛系めっき層)
亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっき層は、電気亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層、又は合金化溶融亜鉛めっき層であることが好ましい。具体的には、Zn-Ni合金めっき層、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき層等であってもよい。なお、めっき付着量は、片面あたり20~80g/m(両面めっき)が好ましい。
(亜鉛系めっき鋼板の機械特性)
次に、亜鉛系めっき鋼板の機械特性について説明する。
[引張強さ(TS)が1470MPa以上]
亜鉛系めっき鋼板は、引張強さ(TS)が1470MPa以上であるものとする。一方、亜鉛系めっき鋼板の引張強さの上限は特に限定されないが、概ね1650MPa以下となる。引張強さは、以下のようにして求めることができる。圧延方向と垂直方向が試験片の長手となるように、供試材からJIS5号試験片(標点距離50mm、平行部幅25mm)を採取し、JIS Z 2241に従って引張試験を行う。引張試験の条件は、クロスヘッド速度が1.67×10-1mm/秒とすることができる。
[伸び(El)が9.0%以上]
亜鉛系めっき鋼板は、伸び(El)が9.0%以上であるものとする。一方、亜鉛系めっき鋼板の伸びの上限は特に限定されないが、概ね15.0%以下となる。なお、伸び(El)は、上述した引張試験にて求めることができる。
[穴広げ率(λ)が20%以上]
亜鉛系めっき鋼板は、穴広げ率(λ)が20%以上であるものとする。一方、亜鉛系めっき鋼板の穴広げ率の上限は特に限定されないが、概ね50%以下となる。穴広げ率(λ)は、以下のようにして求めることができる。JIS Z 2256に準拠して穴広げ試験を行う。供試材を100mm×100mmに剪断後、クリアランス12.5%で直径10mmの穴を打ち抜く。内径75mmのダイスを用いてしわ押さえ力9ton(88.26kN)で供試材を押さえた状態で、頂角60°の円錐ポンチを、打ち抜いた穴に押し込み、板厚を貫通する亀裂の発生を確認する。亀裂が発生した際の穴直径を測定し、以下の式(5)から、限界穴広げ率:λ(%)を求めることができる。
λ(%)={(D-D)/D}×100 ・・・(5)
ここで、Dは亀裂発生時の穴径(mm)、Dは初期穴径(mm)である。
なお、TSが1470MPa程度であるめっき鋼板においては、製造工程で鋼板に水素が含有される。また、鋼板中の拡散性水素は穴広げ率を優位に劣化させることが知られている。このため、めっき鋼板を製品として出荷する際には、鋼板を長期間安置したり、後加熱を行ったりすることにより拡散性水素を低減させている。したがって、穴広げ試験は、鋼板中の拡散性水素量が0.01wt.%以下となってから実施することが好ましい。
[伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れる]
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れる。伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性は、以下のようにして評価することができる。上述した穴広げ試験を、亜鉛系めっき鋼板(供試材)を作製してから30日以内に実施する。穴広げ試験直後の供試材の、伸びフランジ加工部の写真をデジタルマイクロスコープ(RH-2000:ハイロックス製)を用いて、20倍の倍率で撮影する。その後、供試材を室温(15~25℃)で24時間静置し、再度伸びフランジ加工部をデジタルマイクロスコープで観察する。穴広げ試験直後に撮影した伸びフランジ加工部の写真と、24時間経過後の伸びフランジ加工部の写真とを比較し、亀裂の増加又は進展が認められないものを、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れると判断することができる。
(亜鉛系めっき鋼板の製造方法)
次に、本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき鋼板の製造方法について説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法における、温度と時間の関係を示したグラフを示す。グラフの折れ線は、焼鈍工程から焼戻し工程までの間における鋼板の温度変化を示す。上述の成分組成を有する鋼スラブに熱間圧延及び冷間圧延を施して冷延鋼板を得た後、冷延鋼板を加熱し、Ac3(℃)以上の焼鈍温度に保持する焼鈍工程を行う。次いで、冷延鋼板を、温度T1まで冷却する第一の冷却工程を行う。次いで、冷延鋼板をT1(℃)に保持する保持工程、又は、冷延鋼板を温度T2まで冷却する第二の冷却工程を行う。なお、図1では第二の冷却工程を行う場合を示している。次いで、冷延鋼板を、温度T3まで冷却する第三の冷却工程を行う。次いで、冷延鋼板に亜鉛系めっき処理を施して、めっき鋼板を得る。なお、溶融亜鉛めっき処理の時間は冷却工程等と比較して短いため、図1においては温度T3の点として示している。溶融亜鉛めっき処理後の合金化処理において、めっき鋼板は合金化処理の温度に加熱及び保持される。次いで、めっき鋼板を、温度T4まで冷却する第四の冷却工程を行う。次いで、めっき鋼板を、冷却停止温度T5まで冷却する第五の冷却工程を行う。次いで、めっき鋼板を、T5(℃)超え350℃以下の焼戻し温度に保持する焼戻し工程を行う。
[鋼スラブ]
亜鉛系めっき鋼板の製造方法において用いる鋼スラブは、C、Si、Mn、P、S、Al、N、及びOを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する。さらに、Ti、Nb、V、Ta、W、B、Cr、Mo、Ni、Co、Cu、Sn、Sb、Ca、Mg、REM、Zr、Zn、Pb、Te、Se、Ga、Ge、Sr、Hf、及びBiからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。なお、各元素の含有量は上述したとおりである。
[熱間圧延工程]
本発明において、鋼スラブの溶製方法は特に限定されず、転炉又は電気炉等、公知の溶製方法いずれもが適合する。鋼スラブは、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法で製造するのが好ましい。得られた鋼スラブに熱間圧延を施して、熱延鋼板を得る。得られた熱延鋼板のまま冷間圧延を施してもよく、熱延鋼板に酸洗処理を行ってから冷間圧延を施してもよい。酸洗処理を行うことで鋼板表面の酸化物を除去することができ、最終製品の鋼板におけるめっき品質が好適に得られるため好ましい。また、酸洗処理は、1回でもよく、複数回に分けて行ってもよい。
[冷間圧延工程]
得られた熱延鋼板に、冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る。冷間圧延における圧下率と圧延後の板厚は特に限定されない。また、圧延パスの回数、各パスの圧下率についても特に限定されない。
[焼鈍工程]
得られた冷延鋼板を焼鈍工程に供する。焼鈍工程において、焼鈍温度が以下の式(1)で定義されるAc3(℃)未満の場合、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率が低下し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加するため、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、焼鈍温度はAc3(℃)以上とし、Ac3+20(℃)以上が好ましい。一方、焼鈍温度が920℃以下の場合、エネルギー効率が低下しないため、加熱コストが上昇することを好適に防ぎ、かつ、炉体の損傷を好適に防ぐことができる。したがって、焼鈍温度は920℃以下が好ましい。
Ac3(℃)=881-205.7×[%C]+53.1×[%Si]-15×[%Mn]-27×[%Cu]-20.1×[%Ni]-0.7×[%Cr]+41.1×[%Mo] ・・・(1)
ここで、[%X]は、前記成分組成における元素Xの含有量(質量%)を示し、前記成分組成が元素Xを含有しない場合は0とする。
焼鈍工程において、焼鈍温度での保持時間が10s未満の場合、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率が減少し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率が増加するため、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、焼鈍温度での保持時間は10s以上とし、40s以上が好ましい。一方、焼鈍温度での保持時間が500s以下の場合、加熱コストの増加及び製造時間の長時間化を好適に防ぐことができ、すなわち生産性が低下することを好適に防ぐことができる。したがって、焼鈍温度での保持時間は500s以下が好ましい。
[第一の冷却工程:(3Bs-Ms)/3(℃)以上0.95×Bs(℃)以下の温度T1まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却]
焼鈍工程に次いで、冷延鋼板を第一の冷却工程に供する。すなわち、焼鈍工程の終了時が第一の冷却工程の開始時となる。第一の冷却工程において、冷却速度が5℃/s未満の場合、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率が減少し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率が増加するため、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、第一の冷却工程の冷却速度は5℃/s以上とし、7℃/s以上が好ましい。一方、第一の冷却速度が20℃/s以下の場合、冷却停止温度を好適に制御することができる。したがって、第一の冷却工程の冷却速度は20℃/s以下が好ましい。
第一の冷却工程の冷却停止温度T1が、以下の式(2)及び式(3)でそれぞれ定義されるBs及びMsを用いて、(3Bs-Ms)/3(℃)未満の場合、ベイナイトノーズよりも低い位置での冷却となる。そのため、フェライト及びベイニティックフェライトの核生成が進まず、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が過剰となり、20%以上の穴広げ率の実現が困難となる。したがって、T1は(3Bs-Ms)/3(℃)以上とする。一方、T1が0.95×Bs(℃)を超える場合、ベイナイトノーズよりも高い位置での冷却となる。そのため、フェライト及びベイニティックフェライトの核生成が遅く、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率が過剰となり、20%以上の穴広げ率の実現が困難となる。したがって、T1は0.95×Bs(℃)以下とする。
Bs(℃)=830-270×[%C]-90×[%Mn]-37×[%Ni]-70×[%Cr]-83×[%Mo] ・・・(2)
Ms=539-423×[%C]-30.4×[%Mn]-17.7×[%Ni]-12.1×[%Cr]-7.5×[%Mo] ・・・(3)
ここで、[%X]は、前記成分組成における元素Xの含有量(質量%)を示し、成分組成が元素Xを含有しない場合は0とする。
[保持工程又は第二の冷却工程:fが0.010以上0.200以下を満たす時間t(s)だけ、T1(℃)に保持又は1.50℃/s以下の冷却速度で冷却]
第一の冷却工程に次いで、冷延鋼板をT1(℃)に保持する保持工程、又は、冷延鋼板を温度T2まで冷却する第二の冷却工程に供する。保持工程を行う場合、保持温度をT1(℃)とすることで、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が過剰となることを抑制し、優れた穴広げ性が得られる。
第二の冷却工程を行う場合、第二の冷却工程の冷却速度が1.50℃/sを超える場合、旧オーステナイト粒界においてフェライト及びベイニティックフェライトの核生成が十分に進まず、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率が増加し、優れた穴広げ性の実現が困難となる。したがって、第二の冷却工程を行う場合、第二の冷却工程の冷却速度は1.50℃/s以下とする。一方、第二の冷却速度が0.50℃/s以上の場合、炉の加熱コストが増大することを好適に防ぐことができる。したがって、第二の冷却工程の冷却速度は0.50℃/s以上が好ましい。
保持工程における保持時間、又は、第二の冷却工程における冷却時間は、以下の式(4)におけるfが0.010以上0.200以下を満たす時間t(s)とする。fが0.010未満となる場合、旧オーステナイト粒界においてフェライト及びベイニティックフェライトの核生成が起こらず、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率が過剰に増加し、優れた穴広げ性の達成が困難となる。したがって、時間t(s)は式(4)におけるfが0.010以上を満たす値とする。一方、fが0.200を超える場合、旧オーステナイト粒界に生成したフェライト及びベイニティックフェライトが成長し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加し、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、時間t(s)は式(4)におけるfが0.200以下を満たす時間とする。
ここで、[%X]は、前記成分組成における元素Xの含有量(質量%)を示し、前記成分組成が元素Xを含有しない場合は0とし、dγ(μm)は、前記焼鈍工程の終了時における冷延鋼板の旧オーステナイト粒径とする。
旧オーステナイト粒径dγは、以下のようにして求めることができる。鋼板のL断面(圧延方向に平行な垂直断面)を研磨後、旧オーステナイト粒界(旧γ粒界)を腐食する薬液(例えば飽和ピクリン酸水溶液又はこれに塩化第2鉄を添加したもの)で腐食する。腐食した鋼板の板厚の1/4の位置において、光学顕微鏡で400倍の倍率にて、任意の4視野を観察する。観察して得られた写真を用いて、切断法にて旧オーステナイト粒径を測定する。すなわち、写真上に、圧延方向及び圧延方向と直角方向(板厚方向)にそれぞれ20本の直線を引き、それらと交差する粒界の数を計測する。直線40本の合計線長を、直線と交差する粒界の数で除し、得られた値に1.13を乗じることで旧オーステナイト粒径dγを求めることができる。
旧オーステナイト粒径dγは、焼鈍工程後、すなわち第一の冷却工程の直前に測定することが好ましい。ラボ試験等においては、第一の冷却工程の直前に測定することができるが、製造ラインにおいては、各工程が連続しているため測定を行うことが難しい場合がある。そのような場合には、量産実績から旧オーステナイト粒径dγを推定して時間t(s)を設定する。本発明において、fを0.010以上0.200未満の範囲として時間t(s)を設定しているのは、旧オーステナイト粒径dγを推定したことによる誤差を考慮しているためである。旧オーステナイト粒径dγは、焼鈍ライン前の状態及び焼鈍工程の条件から以下のように推定できる。目的とする鋼板と同等の成分、熱延条件、冷延率によって製造した鋼板(試料)を用意し、試料に目的とする鋼板と同等の焼鈍を施す。焼鈍後の試料について、上述した手法により旧オーステナイト粒径dγの測定を行う。得られた測定結果を目的とする鋼板の旧オーステナイト粒径dγと推定することができる。
[第三の冷却工程:Ms(℃)以上Bs-20(℃)以下の温度T3まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却]
保持工程又は第二の冷却工程に次いで、冷延鋼板を第三の冷却工程に供する。第三の冷却工程の冷却速度が5℃/s未満の場合、旧オーステナイト粒界に生成したフェライト及びベイニティックフェライトが成長し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加するため、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、第三の冷却工程の冷却速度は5℃/s以上とし、6℃/s以上が好ましい。一方、第三の冷却速度が30℃/s以下の場合、冷却停止温度を好適に制御できる。したがって、第三の冷却工程の冷却速度は30℃/s以下が好ましい。
第三の冷却工程の冷却停止温度T3がMs(℃)未満である場合、フレッシュマルテンサイトが析出し、溶融亜鉛めっきの合金化時にフレッシュマルテンサイトが過度に焼戻され、1470MPa以上のTSの実現が困難となる。したがって、T3はMs(℃)以上とし、Ms+20(℃)以上が好ましく、Ms+40(℃)以上がより好ましい。一方、T3がBs-20(℃)を超える場合、旧オーステナイト粒界に生成したフェライト及びベイニティックフェライトが成長し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加するため、1470MPa以上のTSを実現することが困難になる。したがって、T3はBs-20(℃)以下とし、Bs-25(℃)以下が好ましく、Bs-30(℃)以下がより好ましい。
[めっき処理工程]
第三の冷却工程に次いで、冷延鋼板に亜鉛系めっき処理を施して、めっき鋼板を得る。亜鉛系めっき処理としては、電気亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっき処理、又は、溶融亜鉛めっき処理及びこれに続く合金化処理を例示できる。Zn-Ni電気合金めっき等の電気めっきを施してもよく、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっきを施してもよい。
冷延鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施す場合、冷延鋼板を、440℃以上500℃以下の亜鉛めっき浴中に浸漬して溶融亜鉛めっき処理を施した後、ガスワイピング等によって、めっき付着量を調整することが好ましい。なお、めっき付着量は、片面あたり20~80g/m(両面めっき)に調整することが好ましい。溶融亜鉛めっき処理は、Al量が0.10質量%以上0.23質量%以下である亜鉛めっき浴を用いることが好ましい。溶融亜鉛めっき処理は、上述したMs(℃)以上700℃以下の温度域に冷延鋼板を滞留させて実施することが好ましい。
溶融亜鉛めっき処理及びこれに続く合金化処理を施す場合、合金化温度を470℃以上とすることで、Zn-Fe合金化速度が過度に遅くなることを防ぎ、生産性が好適に得られる。したがって、合金化温度は、470℃以上が好ましい。一方、合金化温度を600℃以下とすることで、未変態オーステナイトがパーライトへ変態してTSが低下することを好適に防ぐことができる。したがって、合金化温度は、600℃以下が好ましく、560℃以下がより好ましい。また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)は、合金化処理を施すことによりめっき層中のFe濃度を7~15質量%とすることが好ましい。
なお、焼鈍工程からめっき処理工程までの一連の処理は、特に限定されないが、生産性の観点から、溶融亜鉛めっきラインであるCGL(Continuous Galvanizing Line)で行うのが好ましい。
[第四の冷却工程:Ms-200(℃)以上Ms-80(℃)以下の温度T4まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却]
めっき処理工程に次いで、めっき鋼板を第四の冷却工程に供する。第四の冷却工程の冷却速度が5℃/s未満の場合、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が減少し、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が増加し、1470MPa以上のTSを実現することが困難である。したがって、第四の冷却工程の冷却速度は5℃/s以上とする。一方、第四の冷却速度が20℃/s以下の場合、冷却停止温度を好適に制御できる。したがって、第四の冷却工程の冷却速度は20℃/s以下が好ましい。
第四の冷却工程の冷却停止温度T4がMs-200(℃)未満の場合、未変態オーステナイトの体積率が減少し、最終組織において残留オーステナイトが減少し、優れた延性の実現が困難となる。したがって、T4はMs-200(℃)以上とする。一方、T4がMs-80(℃)を超える場合、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が減り、1470MPa以上のTSを実現することが困難となる。したがって、T4はMs-80(℃)以下とする。
[第五の冷却工程:100℃以上T4(℃)未満の冷却停止温度T5まで、3.0℃/s以下の冷却速度で冷却]
第四の冷却工程に次いで、めっき鋼板を第五の冷却工程に供する。第五の冷却工程の冷却速度が3.0℃/sを超える場合、第五の冷却工程中に未変態オーステナイトへの炭素の拡散が十分に進まず、最終組織における残留オーステナイトの体積率が低下し、優れた延性の実現が困難となる。したがって、第五の冷却工程の冷却速度は3.0℃/s以下とし、2.0℃/s以下が好ましく、1.5℃/s以下がより好ましい。一方、第五の冷却速度が0.5℃/s以上の場合、炉による加熱を行うことなく冷却を行えるため好適である。したがって、第五の冷却工程の冷却速度は0.5℃/s以上が好ましい。
第五の冷却工程の冷却停止温度T5が100℃未満の場合、未変態オーステナイトの面積率が減少し、最終組織における残留オーステナイトの体積率が減少し、優れた延性の実現、及び、伸びフランジ加工部の優れた耐遅れ破壊特性の実現が困難となる。したがって、T5は100℃以上とし、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。なお、第四の冷却工程に次いで、第五の冷却工程を行うため、T5はT4(℃)未満となる。また、フレッシュマルテンサイトの低減の観点から、T5はMs-100(℃)以下が好ましい。
[焼戻し工程:T5(℃)超え350℃以下の焼戻し温度に5s以上1000s以下保持]
第五の冷却工程に次いで、めっき鋼板を焼戻し工程に供する。めっき鋼板を再加熱して焼戻しを行うことで、未変態オーステナイトを安定化する。焼戻し温度がT5(℃)以下の場合、所定の残留オーステナイトが得られないため、延性が低下する。したがって、焼戻し温度はT5(℃)超えとし、T5+50(℃)以上が好ましい。一方、焼戻し温度が350℃を超える場合、焼戻しが過度に進行し、強度が低下すると同時に残留オーステナイトが分解することにより、9%以上のElを実現することが困難となる。したがって、焼戻し温度は350℃以下とし、340℃以下が好ましい。
焼戻し工程において、焼戻し温度での保持時間が5s未満の場合、オーステナイトの安定化が不十分となり、最終冷却時にマルテンサイト変態し、最終組織における残留オーステナイトの体積率が低下するため、優れた延性の実現が困難となる。さらに、マルテンサイトの焼戻しが不十分であるため、優れた穴広げ性の実現が困難となる。したがって、焼戻し温度での保持時間は5s以上とし、40s以上が好ましい。一方、焼戻し温度での保持時間が1000sを超える場合、焼戻しが過度に進行し、強度が低下すると同時に残留オーステナイトが分解することにより、9%以上のElを実現することが困難となる。したがって、焼戻し温度での保持時間は1000s以下とし、800s以下が好ましい。
なお、本発明に記載されていない工程、条件については定法を使用することができる。
表1に示す成分組成を有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法にて鋼スラブとした。次いで、得られた鋼スラブに熱間圧延及び酸洗処理を施した後、冷間圧延を施して冷延鋼板を得た。得られた冷延鋼板に、表2に示す条件で、焼鈍工程、第一の冷却工程、保持工程又は第二の冷却工程、第三の冷却工程、めっき処理工程、第四の冷却工程、第五の冷却工程、及び焼戻し工程を順次行った。結果、板厚が0.6~2.2mmの亜鉛系めっき鋼板を得た。また、焼鈍工程後の試料の一部を採取して、上述した方法により、旧オーステナイト粒径dγをそれぞれ測定した。なお、保持工程を行った例においては第二の冷却工程の冷却速度を0.00℃/sと表記した。また、表2に示すめっき処理は、溶融亜鉛めっき処理を「GI」、合金化溶融亜鉛めっき処理を「GA」、電気亜鉛めっき処理を「EG」と表記している。
得られた亜鉛系めっき鋼板を供試材として、上述した方法により、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計、残留オーステナイトの体積率、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計、及び残部組織の面積率をそれぞれ求めた。さらに、供試材の板厚の1/4の位置において、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計、及び旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度をそれぞれ求めた。表3に測定結果を示す。
次に、得られた亜鉛系めっき鋼板を供試材として、上述した方法により、引張強さTS、伸びEl、穴広げ率λ、及び伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性をそれぞれ評価した。表3に評価結果を示す。なお、表3には、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が優れる例は「〇」、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性が優れない例は「×」と示した。
表3に示すように、本発明例では、引張強さが1470MPa以上、伸びが9.0%以上、穴広げ率が20%以上であり、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れている。一方、比較例では、引張強さ、伸び、穴広げ率、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性のいずれか1つ以上が劣っている。
本発明によれば、引張強さが1470MPa以上、伸びが9.0%以上、穴広げ率が20%以上であり、伸びフランジ加工部の耐遅れ破壊特性に優れた亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 下地鋼板と、前記下地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層と、を有する亜鉛系めっき鋼板であって、
    前記下地鋼板が、
    質量%で、
    C :0.180%以上0.250%以下、
    Si:0.800%以上1.550%以下、
    Mn:2.400%以上3.200%以下、
    P :0.100%以下、
    S :0.0200%以下、
    Al:1.000%以下、
    N :0.0100%以下、及び
    O :0.0100%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成と、
    前記下地鋼板の表面からの深さが板厚の1/4の位置において、
    焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が70.0%以上94.0%以下、
    残留オーステナイトの体積率が6.0%以上20.0%以下、
    フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が10.0%以下、並びに
    残部組織の面積率が10.0%以下である組織と、
    を有し、
    前記1/4の位置において、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が20%以上45%以下であり、
    前記1/4の位置において、旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度が0.60質量%未満であり、
    引張強さが1470MPa以上である
    ことを特徴とする、亜鉛系めっき鋼板。
  2. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Ti :0.200%以下、
    Nb :0.200%以下、
    V :0.200%以下、
    Ta :0.10%以下、
    W :0.10%以下、
    B :0.0100%以下、
    Cr :1.00%以下、
    Mo :1.00%以下、
    Ni :1.00%以下、
    Co :0.010%以下、
    Cu :1.00%以下、
    Sn :0.200%以下、
    Sb :0.200%以下、
    Ca :0.0100%以下、
    Mg :0.0100%以下、
    REM:0.0100%以下、
    Zr :0.100%以下、
    Zn :0.100%以下、
    Pb :0.100%以下、
    Te :0.100%以下、
    Se :0.020%以下、
    Ga :0.020%以下、
    Ge :0.020%以下、
    Sr :0.020%以下、
    Hf :0.10%以下、及び
    Bi :0.200%以下、
    からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  3. 前記亜鉛系めっき層が、電気亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層、又は合金化溶融亜鉛めっき層である、請求項1又は2に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  4. 質量%で、
    C :0.180%以上0.250%以下、
    Si:0.800%以上1.550%以下、
    Mn:2.400%以上3.200%以下、
    P :0.100%以下、
    S :0.0200%以下、
    Al:1.000%以下、
    N :0.0100%以下、及び
    O :0.0100%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブに熱間圧延を施して、熱延鋼板を得る工程と、
    前記熱延鋼板に冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る工程と、
    前記冷延鋼板を、以下の式(1)で定義されるAc3(℃)以上の焼鈍温度に10s以上保持する焼鈍工程と、
    次いで、前記冷延鋼板を、以下の式(2)及び式(3)でそれぞれ定義されるBs及びMsを用いて、(3Bs-Ms)/3(℃)以上0.95×Bs(℃)以下の温度T1まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却する第一の冷却工程と、
    次いで、以下の式(4)におけるfが0.010以上0.200以下を満たす時間t(s)だけ、前記冷延鋼板を前記T1(℃)に保持する保持工程、又は、前記冷延鋼板を1.50℃/s以下の冷却速度で冷却する第二の冷却工程と、
    次いで、前記冷延鋼板を、Ms(℃)以上Bs-20(℃)以下の温度T3まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却する第三の冷却工程と、
    次いで、前記冷延鋼板に亜鉛系めっき処理を施して、めっき鋼板を得る工程と、
    次いで、前記めっき鋼板を、Ms-200(℃)以上Ms-80(℃)以下の温度T4まで、5℃/s以上の冷却速度で冷却する第四の冷却工程と、
    次いで、前記めっき鋼板を、100℃以上T4(℃)未満の冷却停止温度T5まで、3.0℃/s以下の冷却速度で冷却する第五の冷却工程と、
    次いで、前記めっき鋼板を、T5(℃)超え350℃以下の焼戻し温度に5s以上1000s以下保持する焼戻し工程と、
    を有し、
    下地鋼板と、前記下地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層と、を有する亜鉛系めっき鋼板であって、
    前記下地鋼板が、前記成分組成と、前記下地鋼板の表面からの深さが板厚の1/4の位置において、焼戻しマルテンサイト及びフレッシュマルテンサイトの面積率の合計が70.0%以上94.0%以下、残留オーステナイトの体積率が6.0%以上20.0%以下、フェライト及びベイニティックフェライトの面積率の合計が10.0%以下、並びに残部組織の面積率が10.0%以下である組織と、を有し、前記1/4の位置において、旧オーステナイト粒界における残留オーステナイト及びフレッシュマルテンサイトの被覆率の合計が20%以上45%以下であり、前記1/4の位置において、旧オーステナイト粒界を被覆する残留オーステナイト中の炭素濃度が0.60質量%未満であり、引張強さが1470MPa以上であることを満たす
    亜鉛系めっき鋼板を製造する、亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
    Ac3(℃)=881-205.7×[%C]+53.1×[%Si]-15×[%Mn]-27×[%Cu]-20.1×[%Ni]-0.7×[%Cr]+41.1×[%Mo] ・・・(1)
    Bs(℃)=830-270×[%C]-90×[%Mn]-37×[%Ni]-70×[%Cr]-83×[%Mo] ・・・(2)
    Ms=539-423×[%C]-30.4×[%Mn]-17.7×[%Ni]-12.1×[%Cr]-7.5×[%Mo] ・・・(3)
    ここで、[%X]は、前記成分組成における元素Xの含有量(質量%)を示し、前記成分組成が元素Xを含有しない場合は0とする。dγ(μm)は、前記焼鈍工程の終了時における前記冷延鋼板の旧オーステナイト粒径とする。
  5. 前記成分組成は、さらに、質量%で、
    Ti :0.200%以下、
    Nb :0.200%以下、
    V :0.200%以下、
    Ta :0.10%以下、
    W :0.10%以下、
    B :0.0100%以下、
    Cr :1.00%以下、
    Mo :1.00%以下、
    Ni :1.00%以下、
    Co :0.010%以下、
    Cu :1.00%以下、
    Sn :0.200%以下、
    Sb :0.200%以下、
    Ca :0.0100%以下、
    Mg :0.0100%以下、
    REM:0.0100%以下、
    Zr :0.100%以下、
    Zn :0.100%以下、
    Pb :0.100%以下、
    Te :0.100%以下、
    Se :0.020%以下、
    Ga :0.020%以下、
    Ge :0.020%以下、
    Sr :0.020%以下、
    Hf :0.10%以下、及び
    Bi :0.200%以下、
    からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項4に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  6. 前記亜鉛系めっき処理が、電気亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっき処理、又は、溶融亜鉛めっき処理及びこれに続く合金化処理である、請求項4又は5に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
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