以下に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による搬送装置について図1A乃至図9Lを用いて説明する。
はじめに、本実施形態による搬送装置1の概略構成について図1A乃至図2Bを用いて説明する。図1A乃至図1Dは、本実施形態による搬送装置1を示す概略図である。図1Aは、搬送装置1を後述のZ方向から見た上面図である。図1Bは、搬送装置1を後述のY方向から見た側面図である。図1C及び図1Dは、後述のX方向の一方の向き及び他方の向きから見た側面図である。図2A及び図2Bは、本実施形態による搬送装置1における可動子10を示す概略図である。図2Aは、可動子10をZ方向から見た上面図である。図2Bは、可動子10をY方向から見た側面図である。以後、複数存在しうる構成要素について、特に区別する必要がない場合には共通の数字のみの符号を用い、必要に応じて数字の符号の後に小文字又は大文字のアルファベットを付して個々を区別する。
図1A乃至図1Dに示すように、本実施形態による搬送装置1は、ワーク123を保持して搬送する可動子10と、可動子10が走行する搬送路を構成する固定子20とを有している。本実施形態による搬送装置1は、磁力により重力に抗して浮上させた磁気浮上状態の可動子10を走行させて搬送する磁気浮上搬送型の搬送装置である。なお、本実施形態では、搬送装置1の一例として、可動磁石型リニアモータ(ムービング永久磁石型リニアモータ、可動界磁型リニアモータ)による搬送装置を示すが、搬送装置1は可動コイル型リニアモータによる搬送装置であってもよい。本実施形態による搬送装置1は、可動子10により搬送されたワーク123に対して加工を施す加工装置30をも有する加工システムの一部を構成している。加工システムは、加工装置30によりワーク123に対して加工を施すことにより物品を製造することができる。
搬送装置1は、例えば、固定子20に沿って可動子10を搬送することにより、可動子10に保持されたワーク123を、ワーク123に対して加工を施す加工装置30に搬送する。加工装置30は、特に限定されるものではないが、例えば、ワーク123であるガラス基板等の基板上に成膜を行う蒸着装置、スパッタ装置等の成膜装置である。
ここで、以下の説明において用いる座標軸及び方向を定義する。水平方向に沿った可動子10の搬送方向、すなわち可動子10の走行する方向に沿ってX軸をとり、可動子10の搬送方向をX方向とする。図1中の矢印Mは、X方向に沿った可動子10の搬送方向を示している。また、X方向と直交する方向である鉛直方向に沿ってZ軸をとり、鉛直方向をZ方向とする。また、X方向及びZ方向に直交する方向に沿ってY軸をとり、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。さらに、X軸周りの回転方向をWx方向、Y軸周りの回転方向をWy方向、Z軸周りの回転方向をWz方向とする。また、乗算の記号として“*”を使用する。また、可動子10のY-側をR側、Y+側をL側として記載する。なお、可動子10の搬送方向は必ずしも水平方向である必要はないが、その場合も搬送方向をX方向として同様にY方向及びZ方向を定めることができる。なお、X方向、Y方向及びZ方向は、必ずしも互いに直交する方向に限定されるものではなく、互いに交差する方向として定義することもできる。
固定子20は、互いに異なる2種類以上の複数のコイルユニットを有している。図1A乃至図1Dには、複数のコイルユニットとして、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を固定子20が有する場合を例示している。第1のコイルユニット100は、コイルコア101と、コイルコア101に巻かれたコイル102とを有している。第2のコイルユニット110は、コイルコア111と、コイルコア111に巻かれたコイル112とを有している。以下、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を固定子20が有する場合について説明する。
第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110は、可動子10の搬送方向(X方向)に沿って並ぶように設置されている。図1A乃至図1Dには、24個の第1のコイルユニット100と、8個の第2のコイルユニット110とが設置され、R側及びL側それぞれに3個の第1のコイルユニット100と、1個の第2のコイルユニット110が交互に配置された場合を例示している。この場合、第2のコイルユニット110の2個のコイル112の間に、第1のコイルユニット100の3個のコイル102が設置されている。なお、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の数は、特に限定されるものではなく、可動子10を搬送すべき搬送路長等に応じてそれぞれ適宜変更することができる。
また、第1のコイルユニット100と第2のコイルユニット110とが連続的に並ぶ数及び順番も、特に限定されるものではない。第2のコイルユニット110を連続的に設置してもよいし、第1のコイルユニット100と、第2のコイルユニット110を1個毎に交互に設置してもよい。第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110がX方向に並ぶ列数も、図1A乃至図1Dに示す2列に限定されるものではなく、1列であってもよいし、3列以上の複数列であってもよい。
図2A及び図2Bに示すように、可動子10は、複数の永久磁石121からなる磁石群と、可動子ヨーク120と、保持部122とを有している。可動子ヨーク120は、可動子10のX方向に沿ってR側及びL側の両側に配置されて取り付けられている。複数の永久磁石121は、可動子ヨーク120の長手方向であるX方向に沿って2列に並んで磁石列を構成するように可動子ヨーク120の上に設置されている。保持部122は、可動子10の底面に取り付けられて設置されている。可動子10は、固定子20に沿ってX方向に搬送される。
具体的には、R側の複数の永久磁石121Rは、可動子ヨーク120Rの長手方向であるX方向に沿って2列に並んで磁石列を構成するように可動子ヨーク120Rの上に設置されている。複数の永久磁石121Rは、X方向及びY方向ともに互いに隣り合う表面の極性が互いに異なってN極とS極とが交互に並び、X方向の磁極の1周期がPmとなる間隔で配置されている。R側と同様に、L側の複数の永久磁石121Lは、可動子ヨーク120Lの長手方向であるX方向に沿って2列に並んで磁石列を構成するように可動子ヨーク120Lの上に設置されている。複数の永久磁石121Lは、X方向及びY方向ともに互いに隣り合う表面の極性が互いに異なってN極とS極とが交互に並び、X方向の磁極の1周期がPmとなる間隔で配置されている。なお、以下では、特に区別する必要がないかぎり、可動子10に取り付けられた永久磁石を単に「永久磁石121」、可動子ヨークを単に「可動子ヨーク120」と表記する。
このように、複数の永久磁石121は、X方向及びY方向に隣接する永久磁石121の磁極が互いに異なる複数の磁石列を構成している。なお、X方向に沿った永久磁石121の磁石列は、Y方向に複数列配置されていてもよいし、1列だけ配置されていてもよい。
複数の永久磁石121は、Z方向において固定子20の第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の両方又は一方に対向可能なように配置されている。なお、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110は、それらのX方向に並んだ3個が永久磁石121の磁極の周期Pmの間に配置されるように設置されている。
保持部122は、例えば可動子10の下側において被搬送物であるワーク123を保持するように構成されている。なお、保持部122は、可動子10においてワーク123を保持することができればよく、保持部122がワーク123を保持する場所及び保持機構は特に限定されるものではない。ワーク123は、可動子10において保持部122により保持された状態で、可動子10の搬送に伴ってX方向に搬送される。可動子10は、不図示のリニアガイド等によりX方向に沿って走行可能に案内されてもよい。
また、本実施形態による搬送装置1は、固定子20に沿ったX方向への可動子10の搬送を制御する制御部40を有している。制御部40は、不図示のリニアエンコーダ、レーザー測長器等の位置検出手段を用いて可動子10の並進方向の位置(X軸、Y軸、Z軸)及び回転方向の姿勢(Wx軸、Wy軸,Wz軸)を検出する。また、制御部40は、検出した可動子10の位置に応じて固定子20の各コイル102に流す電流量を演算して各コイル102、112に通電する。後述するように、制御部40は、U相、V相及びW相の三相交流をコイル102、112に通電することができる。これにより、制御部40は、各コイル102と可動子10の永久磁石121との間に、Z方向に可動子10を浮上させる推力、及び、X方向に可動子10を駆動して走行させる推力となる磁気力を発生させることができる。また、各コイル112と可動子10の永久磁石121との間に、Y方向に可動子10を案内させる推力となる磁気力を発生させることができる。
なお、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の両方又は一方と永久磁石121との間には、それぞれ吸引力となる磁気力が浮上力の一部として働く。コイル102及びコイル112により発生させる推力を組み合わせることで、制御部40は、可動子10のX軸、Y軸、Z軸、Wx軸、Wy軸及びWz軸の6自由度を制御しながら、X方向に沿って可動子10を搬送してワーク123を搬送することができる。本実施形態では、可動子10の6自由度を制御して搬送する場合を示しているが、これに限定されるものではない。可動子10を一又は複数の軸の方向に案内する軸の案内機構を設置して、案内機構が案内する軸以外の軸の自由度を制御することもできる。例えば、可動子10のX軸及びY軸の2自由度を制御するなど、6自由度よりも少ない自由度を制御しながら可動子10を搬送してもよい。
なお、本実施形態では、固定子20が第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を有し、可動子10が複数の永久磁石121を有する可動磁石型リニアモータによる搬送装置を示すが、これに限定されるものではない。搬送装置1は、可動コイル型リニアモータによる搬送装置であってもよい。この場合、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110が可動子10に設置され、複数の永久磁石121が固定子20に設置される。
次に、本実施形態による第1及び第2のコイルユニット100、110の詳細及び推力発生原理について図3A乃至図4Cを用いて説明する。図3A乃至図3Fは、本実施形態による搬送装置1の推力発生方法を示す概略図である。図3A及び図3Bは、第1のコイルユニット100によりX方向の推力を発生させるときの通電方法を示している。図3C及び図3Dは、第1のコイルユニット100によりZ方向の推力を発生させるときの通電方法を示している。図3E及び図3Fは、第2のコイルユニット110によりY方向の推力を発生させるときの通電方法を示している。なお、図3A、図3C及び図3Eは、それぞれ可動子10の永久磁石121及び固定子20の第1のコイルユニット100又は第2のコイルユニット110をY方向から見た図である。図3B、図3D及び図3Fは、それぞれ対応する図3A、図3C及び図3Eに示す永久磁石121及び第1のコイルユニット100又は第2のコイルユニット110をX方向から見た図である。
第1のコイルユニット100は、コイルコア101とコイル102とで構成されている。コイルコア101は、バックヨーク部103と、2つのティース部104a、104bからなる。バックヨーク部103は、Y方向に沿って配置されている。ティース部104a、104bは、Y方向に並び、バックヨーク部103のY方向における一端及び他端から可動子10が走行する側に向かってZ方向下側に突出している。コイル102は、Y方向に沿った軸を巻回軸としてバックヨーク部103に巻かれている。
複数の第1のコイルユニット100の複数のコイル102は、後述するように電流が印加されることにより、永久磁石121からなる磁石列との相互作用により可動子10に対してX方向及びZ方向に電磁力を与えるコイル群を構成する。
第2のコイルユニット110は、コイルコア111とコイル112とで構成されている。コイルコア111は、バックヨーク部113と、3つのティース部114a、114b、114cからなる。バックヨーク部113は、Y方向に沿って配置されている。ティース部114a、114b、114cは、Y方向に並び、それぞれバックヨーク部113のY方向における一端、中央及び他端から可動子10が走行する側に向かってZ方向下側に突出している。コイル112は、Z方向に沿った軸を巻回軸として中央のティース部114bに巻かれている。
複数の第2のコイルユニット110の複数のコイル112は、後述するように電流が印加されることにより、永久磁石121からなる磁石列との相互作用により可動子10に対してY方向に電磁力を与えるコイル群を構成する。
なお、図3A乃至図3F中、可動子ヨーク120の下部に示している矢印Fx、Fz、Fyは、それぞれ発生する推力の方向を示している。また、コイル102、112中に示している矢印は、それぞれコイル102、112に流れる電流の方向を示している。また、永久磁石121に表記しているN及びSは、永久磁石121の上面の磁極を示している。また、ティース部104a、104b、114a、114b、114cに表記しているN及びSは、コイル102、112に所定の電流を通電することによる各ティース部104a、104b、114a、114b、114cの下面の磁極を示している。図3A乃至図3Fは推力発生原理の説明のために第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を配置した例を示し、推力発生のために第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の配置がこれらの配置に限定されるものではない。
永久磁石121の磁極のX方向の周期をPm、永久磁石121及び可動子ヨーク120を含む可動子10のX方向の位置をx、X方向において任意のU相のコイル102又はコイル112の中心と永久磁石のN極の中心とが一致する位置xの座標を原点とする。制御部40は、第1のコイルユニット100のコイル102又は第2のコイルユニット110のコイル112に通電する電流値を以下のように制御することにより、可動子10に対してX方向、Z方向又はY方向に推力を発生させることができる。
X方向に推力を発生させる場合、制御部40は、図3A及び図3Bに示すように第1のコイルユニット100のコイル102に通電する。これにより、制御部40は、電流指令をIx0として、U相のコイル102には式(1)、V相のコイル102には式(2)、W相のコイル102には式(3)で示す電流値を通電する。第1のコイルユニット100のコイル102に通電することによって、X方向及びZ方向の推力が発生する。しかし、式(1)乃至(3)に示す電流値を通電することによって、U相のコイル102、V相のコイル102及びW相のコイル102により発生するZ方向の推力は互いに相殺され、X方向には一定の推力定数の力が働く。こうして、可動子10に対してX方向に推力を発生させることができる。
また、Z方向に推力を発生させる場合、制御部40は、図3C及び図3Dに示すように第1のコイルユニット100のコイル102に通電する。これにより、制御部40は、電流指令をIz0として、U相のコイル102には式(4)、V相のコイル102には式(5)、W相のコイル102には式(6)で示す電流値を通電する。前述したように、第1のコイルユニット100のコイル102に通電することによって、X方向及びZ方向の推力が発生する。しかし、式(4)乃至(6)のように通電することによって、U相のコイル102、V相のコイル102及びW相のコイル102により発生するX方向の推力は互いに相殺され、Z方向には一定の推力定数の力が働く。こうして、可動子10に対してZ方向に推力を発生させることができる。
また、Y方向に推力を発生させる場合、制御部40は、図3E及び図3Fに示すように第2のコイルユニット110のコイル112に通電する。これにより、制御部40は、電流指令をIy0として、U相のコイル112には式(7)、V相のコイル112には式(8)、W相のコイル112には式(9)で示す電流値を通電する。第2のコイルユニット110のコイル112に通電することによって、Y方向の推力が発生し、式(7)乃至(9)に示す電流値を通電することによって、Y方向には一定の推力定数の力が働く。こうして、可動子10に対してY方向に推力を発生させることができる。
図4A乃至図4Cは、それぞれ本実施形態による搬送装置1における搬送位置による推力定数を示すグラフである。推力定数は、前述した式(1)乃至(9)において、電流指令として単位電流指令を与えた時に発生する推力である。具体的には、図4Aは、式(1)乃至(3)において電流指令Ix0として単位電流指令を与えた時に発生するX方向の推力であるX方向の推力定数を示している。図4Bは、式(7)乃至(9)において電流指令Iy0として単位電流指令を与えた時に発生するY方向の推力であるY方向の推力定数を示している。図4Cは、式(4)乃至(6)において電流指令Iz0として単位電流指令を与えた時に発生するZ方向の推力であるZ方向の推力定数を示している。図4A乃至図4Cからは、X方向、Y方向及びZ方向のどの方向においても、推力定数は、可動子10のX方向の位置によらず一定の値を示していることがわかる。
X方向及びZ方向においては、同じ第1のコイルユニット100を使って推力を発生させる。このため、式(1)乃至(3)で示される電流と式(4)乃至(6)で示される電流を重畳してコイル102に流すことで、X方向及びZ方向のそれぞれの方向に独立した推力を発生させることができる。
また、複数の第1のコイルユニット100のコイル102への三相交流の通電に際して、通電するU相のコイル102の数と、通電するV相のコイル102の数と、通電するW相のコイル102の数と、を互いに同じにすることができる。これにより、可動子10のX方向の位置によらず、X方向及びZ方向の推力定数を一定にすることができる。
また、複数の第2のコイルユニット110のコイル112への三相交流の通電に際しても、同様に、通電するU相のコイル112の数と、通電するV相のコイル112の数と、通電するW相のコイル112の数と、を互いに同じすることができる。これにより、可動子10のX方向の位置によらず、Y方向の推力定数を一定にすることができる。
なお、制御部40は、複数のコイル102からなるコイル群及び複数のコイル112からなるコイル群の少なくとも一方において、上述のように各相のコイル数が互いに同じになるように三相交流の電流を通電することができる。
制御部40は、上述のようにして第1のコイルユニット100のコイル102及び第2のコイルユニット110のコイル112に三相交流の電流を通電して、可動子10に対してX方向、Y方向及びZ方向に推力を発生させて可動子10を制御することができる。
次に、本実施形態による搬送装置1における6自由度の推力計算方法について図5を用いて説明する。図5に、本実施形態による搬送装置1における6自由度の推力計算方法を示す概略図であり、可動子10及び固定子20を示す上面図である。
磁気浮上状態の可動子10を走行させて搬送する場合、図5に示すように可動子10の重心Gとすると、重心Gの並進3自由度(X軸、Y軸、Z軸)と、回転3自由度(Wx軸、Wy軸、Wz軸)の6自由度を制御する必要がある。ここで、可動子10の重心Gを原点とし、XY平面上の任意のコイルユニット(図5の例の場合は第2のコイルユニット110)の座標を(Lx,Ly)とする。また、可動子10の並進方向のX方向に働く推力をFx、Y方向に働く推力をFy、Z方向に働く推力をFzとする。また、可動子10の回転方向のWx方向に働くモーメント力をTx、Wy方向に働くモーメント力をTy、Wz方向に働くモーメント力をTzとする。すると、それぞれの力は次の式(10)乃至(15)のように表される。
Fx = Σ (Kx * Ix) (10)
Fy = Σ (Ky * Iy) (11)
Fz = Σ (Kz * Iz) (12)
Tx = Σ (Kz * Iz * Ly) (13)
Ty =-Σ (Kz * Iz * Lx) (14)
Tz =-Σ (Kx * Ix * Ly) + Σ (Ky * Iy ・Lx) (15)
ここで、Kxは、第1のコイルユニット100に対して単位電流指令を与えたときにX方向へ発生する推力である。Kyは、第2のコイルユニット110に対して単位電流指令を与えたときにY方向へ発生する推力である。Kzは、第1のコイルユニット100に対して単位電流指令を与えたときにZ方向へ発生する推力である。Kx、Ky、Kzは、可動子10のX方向の位置xによって周期的に変化し、Kx0、Ky0、Kz0を定数として、式(16)乃至(24)のように表される。
式(10)乃至(12)に示すように、可動子10に働く並進方向の推力Fx、Fy、Fzは、それぞれ各コイルユニットから各軸方向に働く力の和となる。また、式(13)乃至(15)に示すように、可動子10に働く回転方向のモーメント力Tx、Ty、Tzは、可動子10の重心Gから回転軸と直交する成分の各コイルユニットまでの距離Lx,Lyと、各コイルユニットから回転方向に働く力との積の和となる。
図1に示す制御部40は、可動子10の6自由度の位置及び姿勢の検出値をフィードバックし、目標の位置及び姿勢になるように6自由度の推力を可動子10に与えて制御することで、可動子10の6自由度の浮上制御搬送を実現する。このとき、制御部40は、6自由度の各推力を発生する電流を重畳して各コイル102、112に通電するため、例えば同じU相のコイルでも個々に流す電流は異なる。
次に、本実施形態による搬送装置1の搬送工程毎の第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の配置例について図6A及び図6Bを用いて説明する。図6A及び図6Bは、本実施形態による搬送装置1の搬送工程毎の第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の配置例を示す概略図である。
前述したとおり、本実施形態による搬送装置1は、可動子10により搬送されたワーク123に対して加工を施す加工システムの一部を構成しており、搬送区間に複数の工程を有している。例えば、複数のワーク123を複数の可動子10により連続して搬送する場合、効率的に搬送するために、可動子10を加速・減速して前にいるワーク123を搬送中の可動子10との距離を縮めるための「加減速追付き工程」がある。その他にも、ワーク123を所定の位置にアライメントして加工する「加工工程」等がある。このような場合、それぞれの工程に適したコイルユニットの配置をすることができる。
図6Aは、加減速追付き工程の第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の配置例を示している。可動子10を加速・減速して前にいる可動子10との距離を縮める場合、ワーク123の搬送位置についての精度よりもワーク123を搬送する可動子10の加速度及び減速度が優先されることが多い。そのため、加減速追付き工程が行われる区間では、Y方向の推力を発生可能な第2のコイルユニット110よりも、X方向及びZ方向に推力を発生可能な第1のコイルユニット100が数多く配置されている。図6Aに示す例の場合、U相の第2のコイルユニット110dと、W相の第2のコイルユニット110cと、V相の第2のコイルユニット110bとが各1個ずつ永久磁石121と対向するように配置されている。それ以外は全て第1のコイルユニット100a、100b、100c、100dになっている。第1のコイルユニット100a、100b、100c、100dは、それぞれ第2のコイルユニット110の間にU相、V相及びW相のものがX方向に互いに異なる相になるように配置されている。このように配置することによって、可動子10の6自由度の制御をしつつ、可動子10に対して大きな加速度及び減速度を与えることができる。
このように、固定子20の可動子10に対向する領域において、複数のコイル102は、U相のコイル102、V相のコイル102及びW相のコイル102を少なくとも各1個以上有するように配置することができる。また、固定子20の可動子10に対向する領域において、複数のコイル112も、U相のコイル112、V相のコイル112及びW相のコイル112を少なくとも各1個以上有するように配置することができる。この場合、固定子20の可動子10に対向する領域において、複数のコイル102は及び複数のコイル112は、コイル数が互いに異なるように配置することができる。両コイル数を適宜設定することにより、可動子に与えうる加速度及び減速度を適宜設定することができる。
図6Bは、加工工程の第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110の配置例を示している。可動子10によりワーク123を加工工程まで搬送した後、ワーク123を所定の位置にアライメントして加工する場合、ワーク123について高精度の位置だし及び保持を実現するため、可動子10の6自由度それぞれに高い推力が求められる場合がある。図6Bに示す例の場合、第1のコイルユニット100a、100b、100c、100d、100e、及び第2のコイルユニット110a、110b、110c、110dが、可動子10の重心Gの回りの6自由度に対して対称になるように配置されている。このように配置することによって、加工工程では、可動子10の6自由度の制御性能を高め、高いアライメントエリア精度で位置だし及び保持をしながら、加工装置30を図6B中の矢印D(X方向)に移動しながらワーク123に加工を行うことができる。
第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110は、固定子20においてそれぞれ脱着及び交換可能になっている。これにより、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110は、搬送工程を組み換えた場合にその工程に適するように配置に変更することができる。また、コイルユニット故障が故障したときに、故障したコイルユニットのみを交換することができる。
次に、上記実施形態において説明した搬送装置1を真空装置へ適用して真空磁気浮上搬送装置を構成した例について図7を用いて説明する。図7は、搬送装置1の真空装置への適用例を示す概略図である。
真空磁気浮上搬送装置の場合、真空チャンバ内にコイルユニットを配置し、可動子と固定子との間に生じる吸引力を浮上力として、可動子を磁気浮上状態で搬送する。かかる真空磁気浮上搬送装置においては、互いに隣接する真空チャンバの境界でゲートを開閉するゲートバルブ等が配置されていることがある。ゲートバルブ等が配置されていると、固定子においてコイルユニットを隙間なく連続的に配置することができない。
本実施形態では、コイルユニットを隙間なく連続的に配置することができない以下に説明するゲートバルブ300が設置されたスペース304においても、可動子10の安定した搬送制御を実現するものである。
本実施形態による真空磁気浮上搬送装置2は、図7に示すように、第1実施形態の構成に加えて、真空チャンバ301a、301bと、ゲートバルブ300とが追加された構成を有している。
搬送装置1は、真空チャンバ301a、301bの内部に設置されている。すなわち、固定子20は、真空チャンバ301a、301bの内部に設置されている。可動子10は、真空チャンバ301a、301bの内部において固定子20により搬送される。真空チャンバ301a、301bは、搬送装置1が設置された内部空間を、ゲートバルブ300を介して互いに接続又は分離可能に連結されている。真空チャンバ301a、301bは、図示しない真空ポンプが接続されて適切な真空度に維持可能に構成されている。
ゲートバルブ300は、真空チャンバ301aと真空チャンバ301bとの連結部であるスペース304に設けられている。ゲートバルブ300は、Z方向に沿って昇降して、真空チャンバ301a、301bの連結部において真空チャンバ301a、301bを開閉する弁部として機能する。すなわち、図7に示すように、ゲートバルブ300は、上昇することにより両側の真空チャンバ301a、301bをそれぞれ開いて両者を互いに接続する。また、ゲートバルブ300は、ゲートバルブ昇降部303により下降することにより両側の真空チャンバ301a、301bをそれぞれ閉じて両者を互いに分離する。
このように、真空磁気浮上搬送装置2は、真空チャンバ301a、301bが設置された領域と、ゲートバルブ300が設置された領域であるスペース304とを含んでいる。真空チャンバ301a、301bが設置された領域は、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110が設置された領域である。真空チャンバ301a、301bが設置された領域に挟まれてそれぞれに隣接するスペース304は、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110のいずれも設置されていない領域である。
ゲートバルブ300が設置されたスペース304には、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を隙間なく連続的に配置することができない。そのため、図7に示すように、可動子10の搬送方向Mの先端部分がスペース304の中に入っている位置のとき、可動子10の先端部分における永久磁石121とコイルユニットとの間に働く吸引力、及びコイル電流による推力が低下する場合がある。かかる吸引力や推力が低下すると、特にWy方向の姿勢制御性が低下することがある。
これに対して、図7に示す構成では、真空チャンバ301aの内部に第1のコイルユニット100a、100b及び第2のコイルユニット110aが配置され、真空チャンバ301bの内部に第1のコイルユニット100cが配置されている。
Y方向の推力を発生する第2のコイルユニット110aは、先端部分がスペース304の中に位置する図示する搬送位置に可動子10があるときに可動子10の重心Gを通るWy方向の回転軸上又はその付近に位置するように配置されている。重心Gを通るWy方向の回転軸は、Y方向に沿った軸である。また、X方向及びZ方向の推力を発生する第1のコイルユニット100a及び第1のコイルユニット100bは、第2のコイルユニット110aのX方向における前後に配置されている。同じくX方向及びZ方向の推力を発生する第1のコイルユニット100cは、真空チャンバ301bの内部においてスペース304に隣接して配置されている。
上記のようにコイルユニットが配置されていることで、Wy方向に働くモーメント力Tyをより大きく発生することが可能になり、Wy方向の姿勢制御性を向上することができる。すなわち、可動子10の搬送方向Mの先端部分がスペース304を通り過ぎたとき、第2のコイルユニット110aは、可動子10の重心Gを通るWy方向の回転軸上又はその付近からずれた位置になる。このとき、可動子10の搬送方向Mの後端部分に働くWy方向のモーメント力Tyが減少する。しかしながら、スペース304を通り過ぎると、可動子10の搬送方向Mの先端部分における永久磁石121が第1のコイルユニット100cと対抗する位置になるため、可動子10全体に働くWy方向のモーメント力Tyは大きくなる。そのため、コイルユニットを隙間なく連続的に配置することができないスペース304を安定して乗り継いで可動子10を搬送することができる。
次に、本実施形態による搬送装置1における第1のコイルユニット100のその他の構成について図8A乃至図8Jを用いて説明する。図8A乃至図8Jは、本実施形態による搬送装置1における第1のコイルユニット100のその他の構成を示している。図8A、図8C、図8E、図8G及び図8Iは、それぞれ互いに異なる構成の第1のコイルユニット100をY方向から見た側面図である。図8B、図8D、図8F、図8H及び図8Jは、それぞれ対応する図8A、図8C、図8E、図8G及び図8Iに示す第1のコイルユニット100をX方向から見た側面図である。図8A、図8C、図8E、図8G及び図8Iには、固定子20のU相のコイル102、V相のコイル102及びW相のコイル102の1セット分、並びに可動子10の搬送方向の永久磁石121の1セット分を簡略化して示している。なお、コイル102中に示している矢印は流れる電流の方向を示している。また、永久磁石121に表記しているN及びSは永久磁石121の上面の磁極を示している。また、ティース部104に表記しているN及びSは、コイル102に所定の電流を通電することによる各ティース部104の下面の磁極を示している。
図8A及び図8Bは、図1で説明した第1のコイルユニット100の構成例を示している。図8C及び図8Dは、バックヨーク部103にコイル102が巻かれたことに代えて、ティース部104a、104bにコイル102a、102bが巻かれた構成例を示している。
図8E及び図8F、並びに図8G及び図8Hは、それぞれ永久磁石121のX方向に沿って並ぶ磁石列がY方向に3列に隣接して配置された場合の構成例を示している。これらの場合、コイルコア101は、Y方向に沿って配置されたバックヨーク部103と、Y方向に並び、バックヨーク部103のY方向における一端、中央及び他端からZ方向下側に突出した3つのティース部104a、104b、104cとを有している。図8E及び図8Fは、バックヨーク部103においてティース部104a、104bの間の部分及びティース部104b、104cの間の部分にコイル102a、102bが巻かれた構成例を示している。図8G及び図8Hは、ティース部104a、104b、104cにコイル102a、102b、102cが巻かれた構成例を示している。
図8I及び図8Jは、永久磁石121のX方向に沿って並ぶ磁石列がY方向に1列だけ配置された場合の構成例を示している。この場合、コイルコア101はバックヨーク部103からZ方向下側に突出した1つのティース部104を有し、ティース部104にコイル102が巻かれている。なお、このようにY方向のティース部104の数が1つの場合は、磁気抵抗を小さくするためX方向に並ぶティース部104をバックヨーク部103でつながれていてもよい。
図8A及び図8B並びに図8C及び図8Dに示すように、永久磁石121のY方向の列数が偶数の場合、第1のコイルユニット100は、Y方向のティース部104の数が偶数であるものとして構成することができる。一方、図8E及び図8F、図8G及び図8H並びに図8I及び図8Jに示すように、永久磁石121のY方向の列数が奇数の場合、第1のコイルユニット100は、Y方向のティース部104の数が奇数であるものとして構成することができる。また、同等の磁束を発生できるのでれば、コイル102はバックヨーク部103に巻かれていてもティース部104に巻かれていてもよい。
次に、本実施形態による搬送装置1における第2のコイルユニット110のその他の構成について図9A乃至図9Lを用いて説明する。図9A乃至図9Lは、本実施形態による搬送装置1における第2のコイルユニット110のその他の構成例を示す。図9A、図9C、図9E、図9G、図9I及び図9Kは、それぞれ互いに異なる構成の第2のコイルユニット110をY方向から見た側面図である。図9B、図9D、図9F、図9H、図9J及び図9Lは、それぞれ対応する図9A、図9C、図9E、図9G、図9I及び図9Kに示す第2のコイルユニット110をX方向から見た側面図である。図9A、図9C、図9E、図9G、図9I及び図9Kは、固定子20のU相のコイル112、V相のコイル112及びW相のコイル112の1セット分、並びに可動子10の搬送方向の永久磁石121の1セット分を簡略化して示している。なお、コイル112中に示している矢印は流れる電流の方向を示している。また、永久磁石121に表記しているN及びSは永久磁石121の上面の磁極を示している。また、ティース部114に表記しているN及びSは、コイル112に所定の電流を通電することによる各ティース部114の下面の磁極を示している。
図9A及び図9Bは、図1で説明した第2のコイルユニットの構成例を示している。図9C及び図9D、並びに図9E及び図9Fは、ティース部114bにコイル112が巻かれたことに代わる構成例を示している。図9C及び図9Dは、バックヨーク部113のティース部114aとティース部114bとの間の部分にコイル112aが、バックヨーク部113のティース部114bとティース部114cとの間の部分にコイル112bが巻かれた構成例を示している。図9E及び図9Fは、ティース部114a、114b、114cにコイル112a、112b、112cが巻かれた構成例を示している。
図9G及び図9H、並びに図9I及び図9Jは、それぞれ永久磁石121のX方向に沿って並ぶ磁石列がY方向に3列に隣接して配置された場合の構成例を示している。
図9G及び図9Hに示す場合、コイルコア111は、Y方向に沿って配置されたバックヨーク部113と、Y方向に並び、バックヨーク部113のY方向における一端及び他端からZ方向下側に突出した2つのティース部114a、114bとを有している。図9G及び図9Hは、バックヨーク部113にコイル112が巻かれた構成例を示している。
また、図9I及び図9Jに示す場合、コイルコア111は、Y方向に沿って配置されたバックヨーク部113と、Y方向に並び、バックヨーク部113からZ方向下側に突出した4つのティース部114a、114b、114c、114dとを有している。この場合、4つのティース部114a、114b、114c、114dは、バックヨーク部113のY方向における一端から他端までの間に間隔をあけて設けられている。図9I及び図9Jは、バックヨーク部113においてティース部114a、114bの間の部分、ティース部114b、114cの間の部分及びティース部114c、114dの間の部分にコイル102a、102b、102cが巻かれた構成例を示している。
図9K及び図9Lは、永久磁石121のX方向に沿って並ぶ磁石列がY方向に1列だけ配置された場合の構成例を示している。この場合、コイルコア111は、Y方向に沿って配置されたバックヨーク部113と、Y方向に並び、バックヨーク部113のY方向における一端及び他端からZ方向下側に突出した2つのティース部114a、114bとを有している。図9K及び図9Lは、バックヨーク部113にコイル112が巻かれた構成例を示している。
図9A及び図9B、図9C及び図9D並びに図9E及び図9Fに示すように、永久磁石121のY方向の列数が偶数の場合、第2のコイルユニット110は、Y方向のティース部114の数が奇数であるものとして構成することができる。一方、図9G及び図9H、図9I及び図9J並びに図9K及び図9Lに示すように、永久磁石121のY方向の列数が奇数の場合、第2のコイルユニット110は、Y方向のティース部114の数が偶数であるものとして構成することができる。また、同等の磁束を発生できるのでれば、コイル112はバックヨーク部113に巻いても、ティース部114に巻かれていてもよい。
このように、本実施形態によれば、第1のコイルユニット100により可動子10に対してX方向及びZ方向に力を与え、第2のコイルユニット110により可動子10に対してX方向及びZ方向に力を与えることができる。したがって、本実施形態によれば、システム構成の大型化を伴うことなく、可動子10の姿勢を制御しつつ、可動子10を非接触で搬送することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による搬送装置について図10A乃至図11Cを用いて説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
第1実施形態では、コイルに通電し、磁気随伴エネルギーの勾配を作ることによって、推力を発生させている例について説明した。これに対し、本実施形態では、磁界中に通過する電荷が力を受けるローレンツ力によって推力を発生させている例について説明する。
図10A、図10B及び図10Cは、本実施形態による搬送装置のコアレス型の例を示している。また、図11A、図11B及び図11Cは、本実施形態による搬送装置のコアレス型の別の例を示している。図10A、図10B及び図10Cは、それぞれ本実施形態による搬送装置の例のY方向から見た正面図、Z方向から見た上面図及びX方向から見た側面図である。また、図11A、図11B及び図11Cは、それぞれ本実施形態による搬送装置の別の例のY方向から見た正面図、Z方向から見た上面図及びX方向から見た側面図である。図10A乃至図11Cでは、図1に示す搬送装置1における可動子10及び固定子20に相当する構成のR側又はL側片側における第1及び第2のコイルユニット100、110、永久磁石221及び可動子ヨーク220のみを示しており、その他を省略している。また、図10A及び図11Aの上面図では、バックヨーク203を省略している。
本実施形態による搬送装置3は、可動子10と、固定子20とを有している。本実施形態による搬送装置3の構成は、固定子20における第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を除き、第1実施形態による搬送装置1の構成と同様である。
図10A乃至図11Cに示すように、可動子10は、複数の永久磁石221と、可動子ヨーク220とを有している。永久磁石221は、第1実施形態と同様に可動子ヨーク220の長手方向であるX方向に沿って2列に並んで磁石列を構成するように可動子ヨーク220の上に設置されている。複数の永久磁石221は、X方向及びY方向ともに互いに隣り合う表面の極性が互いに異なってN極とS極とが交互に並ぶように配置されている。
固定子20は、第1実施形態とは異なる構成の第1及び第2のコイルユニット100、110を有している。図10A、図10B及び図10Cに示す例と図11A、図11B及び図11Cに示す別の例とは、第1及び第2のコイルユニット100、110の構成が互いに異なっている。
図10A、図10B及び図10Cに示す例の場合、X方向及びZ方向の推力を発生させる第1のコイルユニット100は、コイル202とバックヨーク203aとからなる。Y方向の推力を発生させる第2のコイルユニット110は、コイル212とバックヨーク203bとからなる。コイル202、212は、それぞれZ方向に沿った軸を巻回軸として巻かれたコアレスコイルである。第1のコイルユニット100は、Y方向に沿って並ぶように配置された2個のコイル202を有している。第2のコイルユニット110は、1個のコイル212を有している。バックヨーク203a及びバックヨーク203bは、一体の磁性体であってもよいし、それぞれの間に隙間があってもよい。コギングトルクが小さいというコアレス型の利点を活かすには、それぞれのバックヨークは一体であることが望ましい。ただし、バックヨーク203a及びバックヨーク203bのうちの隣接する2つの間に隙間を空けてその間に磁性体を入れて、コギングトルクを小さくもよい。Y方向に沿って2つ並んでいるコイル202は、それぞれ8の字になるように結線してもよい。
図11A、図11B及び図11Cに示す別の例の場合、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110に代えて、第1のコイルユニット100及び第2のコイルユニット110を兼ねるコイルユニット210が設置されている。コイルユニット210は、バックヨーク203とコイル202、212とからなる。コイル202はX方向及びZ方向の推力を発生させるものである。コイル212は、Y方向の推力を発生させるものである。コイル202とコイル212とは、Z方向に重なるように設置されている。なお、コイル202及びコイル212は、コイル202が可動子10の側に位置するように重ねられていてもよいし、コイル212が可動子10の側に位置するように重ねられていてもよい。
なお、図10A、図10B及び図10C、並びに図11A、図11B及び図11Cに示す各例では、バックヨーク203と永久磁石221との間にそれぞれ吸引力となる磁気力が浮上力の一部として働く。
コアレスモータは、高い応答性が求められる精密位置決めに使用されることが多い。かかるコアレス型の本実施形態による搬送装置3は、第1実施形態による搬送装置1と可動子10を共通化することができるように構成されている。すなわち、共通の可動子10は、第1実施形態による固定子20と、第2実施形態による固定子20とがX方向に並ぶように配置されて構成された搬送路を走行することができる。このため、コア付きの第1実施形態による搬送装置1にコアレス型の本実施形態による搬送装置3を組み込むことができる。これにより、第1実施形態による搬送装置1により実行される複数の搬送工程の間に、コアレス型の本実施形態による搬送装置3により実行される精密位置決め工程を設ける。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態による搬送装置4について図12A乃至図12Cを用いて説明する。なお、上記第1及び第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態では、第2実施形態と同様、ローレンツ力によって推力を発生させている例で、コイルの両側に永久磁石を配置した可動コイル型コアレスリニアモータによる搬送装置の例について説明する。
図12A乃至図12Cは、本実施形態による搬送装置4を示している。図12Aは、本実施形態による搬送装置4をX方向から見た図である。図12Bは、図12AのA-A′線に沿った断面図である。図12Cは、図12AのB-B′線に沿った断面図である。
図12A乃至図12Cに示すように、本実施形態による搬送装置4において、可動子10は、コイル302、312と、可動子ハウジング330とを有している。また、固定子20は、永久磁石321と、固定子ヨーク320とを有している。
コイル302は、第2実施形態による第1のコイルユニット100のコイル202に相当し、X方向及びZ方向の推力を発生させるコアレスコイルである。コイル312は、第2実施形態による第2のコイルユニット110のコイル212に相当し、Y方向の推力を発生させるコアレスコイルである、コイル302、312は、非磁性の可動子ハウジング330に設置されている。図12A乃至図12Cでは、図10A及び乃至図10Cに示すコイル202、212と同様にコイル302、312が配置された例を示している。なお、図11A乃至図11Cのコイル202、212と同様にコイル302、312を配置することも可能である。
コイル302、312は、制御部40に接続されている。制御部40は、不図示のリニアエンコーダ、レーザー測長器等の位置検出手段を用いて可動子10の位置(X軸、Y軸、Z軸)及び回転方向の姿勢(Wx軸、Wy軸、Wz軸)を検出し、それらの検出結果に応じてコイル302、312への通電を制御する。
永久磁石321は、Z方向の上側及び下側から可動子10のコイル302、312に対向可能なように固定子ヨーク320に複数設置されている。複数の永久磁石321は、可動子10に対してZ方向の上側及び下側のそれぞれにおいて、第1実施形態による永久磁石121と同様に、固定子ヨーク320の長手方向であるX方向に沿って2列に並んで磁石列を構成するように配置されている。
複数の永久磁石321は、X方向、Y方向及びZ方向ともに互いに隣り合う表面の極性が互いに異なってN極とS極とが交互に並ぶように配置されている。固定子ヨーク320及び永久磁石321は、固定子ハウジング331に保持されている。
本実施形態のように、可動子10にコイル302、312を設置し、固定子20に永久磁石321を設置して可動コイル型コアレスリニアモータによる搬送装置4を構成することもできる。