以下、本発明に係る真空ポンプとその制御装置の実施形態について、ターボ分子ポンプを例に挙げて、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
このターボ分子ポンプ100の縦断面図を図1に示す。図1において、ターボ分子ポンプ100は、円筒状の外筒127の上端に吸気口101が形成されている。そして、外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードである複数の回転翼102(102a、102b、102c・・・)を周部に放射状かつ多段に形成した回転体103(ロータ)が備えられている。この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。回転体103は、一般的に、アルミニウム又はアルミニウム合金、あるいはステンレスなどの金属によって構成されている。
また、図1に示すように、回転体103の外周側には、外周部品である水冷スペーサ128及びアウターウォール126が配置されている。水冷スペーサ128は、温度調整手段である円環状の冷却管110(図5参照)と、温度検出手段である水冷スペーサ温度センサ185とが内蔵されたリング状の部材である。この冷却管110に冷却水(冷却媒体)が供給されることで、水冷スペーサ128の周辺の部品が冷却される。即ち、回転体103の回転により発生した熱は、冷却部品である水冷スペーサ128によって冷却される。アウターウォール126は、ターボ分子ポンプ100の略下半分を囲う円筒状の部材である。水冷スペーサ128とアウターウォール126とは、外筒127の下方に、外筒127と同軸上に順に並べて配置される。これら外筒127、水冷スペーサ128、及びアウターウォール126は、複数のボルト115により締結されて一体化されており、ベース部129と共に回転体103を収容するターボ分子ポンプ100の外装体(ケーシング)を構成している。
ここで、水冷スペーサ128は、後述する固定翼スペーサ125としての機能も備えている。即ち、水冷スペーサ128は、複数の固定翼スペーサ125のうちの1つ(1段)を構成している。なお、水冷スペーサ128は、外筒127やアウターウォール126より熱伝導率の高い部材、例えば、アルミ材からなる。
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石がX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104に近接して、かつ上側径方向電磁石104のそれぞれに対応して4個の上側径方向センサ107が備えられている。上側径方向センサ107は、例えば伝導巻線を有するインダクタンスセンサや渦電流センサなどが用いられ、ロータ軸113の位置に応じて変化するこの伝導巻線のインダクタンスの変化に基づいてロータ軸113の位置を検出する。この上側径方向センサ107はロータ軸113、すなわちそれに固定された回転体103の径方向変位を検出し、制御装置200に送るように構成されている。
この制御装置200においては、例えばPID調節機能を有する補償回路が、上側径方向センサ107によって検出された位置信号に基づいて、上側径方向電磁石104の励磁制御指令信号を生成し、図2に示すアンプ回路150(後述する)が、この励磁制御指令信号に基づいて、上側径方向電磁石104を励磁制御することで、ロータ軸113の上側の径方向位置が調整される。
そして、このロータ軸113は、高透磁率材(鉄、ステンレスなど)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
さらに、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向位置信号が制御装置200に送られるように構成されている。
そして、制御装置200において、例えばPID調節機能を有する補償回路が、軸方向センサ109によって検出された軸方向位置信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bのそれぞれの励磁制御指令信号を生成し、アンプ回路150が、これらの励磁制御指令信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bをそれぞれ励磁制御することで、軸方向電磁石106Aが磁力により金属ディスク111を上方に吸引し、軸方向電磁石106Bが金属ディスク111を下方に吸引し、ロータ軸113の軸方向位置が調整される。
このように、制御装置200は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。なお、これら上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150については、後述する。
一方、モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置200によって制御されている。また、モータ121には図示しない例えばホール素子、レゾルバ、エンコーダなどの回転速度センサが組み込まれており、この回転速度センサの検出信号によりロータ軸113の回転速度が検出されるようになっている。
さらに、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。制御装置200では、この位相センサと回転速度センサの検出信号を共に用いて磁極の位置を検出するようになっている。
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)が配設されている。これら複数段の回転翼102と複数段の固定翼123とにより、ターボポンプ部が構成される。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。固定翼123(123a、123b、123c・・・)は、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。そして、固定翼123の外周端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125(125a、125b、125c・・・)の間に嵌挿された状態で支持されている。
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部(より詳細には、アウターウォール126の底部)にはベース部129が配設されている。ベース部129の上方には排気口133が形成され、外部に連通されている。チャンバ(真空チャンバ)側から吸気口101に入ってベース部129に向かって移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
さらに、ターボ分子ポンプ100の用途によって、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間には、ねじ溝ポンプ部として機能するネジ付スペーサ131が配設される。ネジ付スペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。回転体103の回転翼102(102a、102b、102c・・・)に続く最下部には円筒部102dが垂下されている。この円筒部102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付スペーサ131の内周面に向かって張り出されており、このネジ付スペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。回転翼102および固定翼123によってネジ溝131aに移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつベース部129へと送られる。
より詳細には、ネジ溝131aに案内された排気ガスは、ベース部129の上方に形成された環状空間135へと送られ、環状空間135を周回しながら排気口133を介して外部に排出される。この環状空間135は、回転体103の円筒部102d、ネジ付スペーサ131、ヒータスペーサ153、及びベース部129とで仕切られた環状の空間である。
ここで、加熱部品であるヒータスペーサ153は、円筒状に形成された部材であり、本実施形態ではネジ付スペーサ131と一体で構成される。即ち、ヒータスペーサ153はネジ付スペーサ131の一部を構成する。勿論、ヒータスペーサ153とネジ付スペーサ131とは別体で構成されていても良い。ヒータスペーサ153は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属により構成される。ヒータスペーサ153には加熱手段としてのヒータ190及び温度検出手段としてのヒータスペーサ温度センサ186が差し込まれており、ヒータ190が発熱することで、ヒータスペーサ153を介してネジ付スペーサ131が加熱される。また、ヒータ190により、環状空間135を流れる排気ガスも加熱される。これにより、排気ガスの温度低下による堆積物の生成が抑制される。また、インナースペーサ154は、例えばステンレスなどの金属によって構成された円筒状の部材であり、水冷スペーサ128と水冷スペーサ128より下側の固定翼スペーサ125との間を断熱する。
ベース部129は、ターボ分子ポンプ100の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。ベース部129はターボ分子ポンプ100を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
かかる構成において、回転翼102がロータ軸113と共にモータ121により回転駆動されると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバから排気ガスが吸気される。回転翼102の回転速度は通常20000rpm~90000rpmであり、回転翼102の先端での周速度は200m/s~400m/sに達する。吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子などによる伝導により固定翼123側に伝達される。
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触する際に生ずる摩擦熱などを外部へと伝達する。
なお、上記では、ネジ付スペーサ131は回転体103の円筒部102dの外周に配設し、ネジ付スペーサ131の内周面にネジ溝131aが刻設されているとして説明した。しかしながら、これとは逆に円筒部102dの外周面にネジ溝が刻設され、その周囲に円筒状の内周面を有するスペーサが配置される場合もある。
また、ターボ分子ポンプ100の用途によっては、吸気口101から吸引されたガスが上側径方向電磁石104、上側径方向センサ107、モータ121、下側径方向電磁石105、下側径方向センサ108、軸方向電磁石106A、106B、軸方向センサ109などで構成される電装部に侵入することのないよう、電装部は周囲をステータコラム122で覆われ、このステータコラム122内はパージガスにて所定圧に保たれる場合もある。
この場合には、ベース部129には図示しない配管が配設され、この配管を通じてパージガスが導入される。導入されたパージガスは、保護ベアリング120とロータ軸113間、モータ121のロータとステータ間、ステータコラム122と回転翼102の内周側円筒部の間の隙間を通じて排気口133へ送出される。なお、図1に示す通り、ステータコラム122は、ベース部129の中心位置に立設している。また、本実施形態では、ベース部129に冷却手段としての水冷管149が設けられている。この水冷管149に冷却水が供給されることで、ベース部129及びステータコラム122は好適な温度に保たれている。
ここに、ターボ分子ポンプ100は、機種の特定と、個々に調整された固有のパラメータ(例えば、機種に対応する諸特性)に基づいた制御を要する。この制御パラメータを格納するために、上記ターボ分子ポンプ100は、その本体内に電子回路部141を備えている。電子回路部141は、EEP-ROM等の半導体メモリ及びそのアクセスのための半導体素子等の電子部品、それらの実装用の基板143等から構成される。この電子回路部141は、ターボ分子ポンプ100の下部を構成するベース部129の例えば中央付近の図示しない回転速度センサの下部に収容され、気密性の底蓋145によって閉じられている。
ところで、半導体の製造工程では、チャンバに導入されるプロセスガスの中には、その圧力が所定値よりも高くなり、或いは、その温度が所定値よりも低くなると、固体となる性質を有するものがある。ターボ分子ポンプ100内部では、排気ガスの圧力は、吸気口101で最も低く排気口133で最も高い。プロセスガスが吸気口101から排気口133へ移送される途中で、その圧力が所定値よりも高くなったり、その温度が所定値よりも低くなったりすると、プロセスガスは、固体状となり、ターボ分子ポンプ100内部に付着して堆積する。
例えば、Alエッチング装置にプロセスガスとしてSiCl4が使用された場合、低真空(760[torr]~10-2[torr])かつ、低温(約20[℃])のとき、固体生成物(例えばAlCl3)が析出し、ターボ分子ポンプ100内部に付着堆積することが蒸気圧曲線からわかる。これにより、ターボ分子ポンプ100内部にプロセスガスの析出物が堆積すると、この堆積物がポンプ流路を狭め、ターボ分子ポンプ100の性能を低下させる原因となる。そして、前述した生成物は、排気口133付近やネジ付スペーサ131付近の圧力が高い部分で凝固、付着し易い状況にあった。
そのため、この問題を解決するために、従来はベース部129等の外周に図示しないヒータや環状の水冷管149を巻着させ、かつ例えばベース部129に図示しない温度センサ(例えばサーミスタ)を埋め込み、この温度センサの信号に基づいてベース部129の温度を一定の高い温度(設定温度)に保つようにヒータの加熱や水冷管149による冷却の制御(以下TMSという。TMS;Temperature Management System)が行われている。
次に、このように構成されるターボ分子ポンプ100に関して、その上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150について説明する。このアンプ回路150の回路図を図2に示す。
図2において、上側径方向電磁石104等を構成する電磁石巻線151は、その一端がトランジスタ161を介して電源171の正極171aに接続されており、また、その他端が電流検出回路181及びトランジスタ162を介して電源171の負極171bに接続されている。そして、トランジスタ161、162は、いわゆるパワーMOSFETとなっており、そのソース-ドレイン間にダイオードが接続された構造を有している。
このとき、トランジスタ161は、そのダイオードのカソード端子161aが正極171aに接続されると共に、アノード端子161bが電磁石巻線151の一端と接続されるようになっている。また、トランジスタ162は、そのダイオードのカソード端子162aが電流検出回路181に接続されると共に、アノード端子162bが負極171bと接続されるようになっている。
一方、電流回生用のダイオード165は、そのカソード端子165aが電磁石巻線151の一端に接続されると共に、そのアノード端子165bが負極171bに接続されるようになっている。また、これと同様に、電流回生用のダイオード166は、そのカソード端子166aが正極171aに接続されると共に、そのアノード端子166bが電流検出回路181を介して電磁石巻線151の他端に接続されるようになっている。そして、電流検出回路181は、例えばホールセンサ式電流センサや電気抵抗素子で構成されている。
以上のように構成されるアンプ回路150は、一つの電磁石に対応されるものである。そのため、磁気軸受が5軸制御で、電磁石104、105、106A、106Bが合計10個ある場合には、電磁石のそれぞれについて同様のアンプ回路150が構成され、電源171に対して10個のアンプ回路150が並列に接続されるようになっている。
さらに、アンプ制御回路191は、例えば、制御装置200の図示しないディジタル・シグナル・プロセッサ部(以下、DSP部という)によって構成され、このアンプ制御回路191は、トランジスタ161、162のon/offを切り替えるようになっている。
アンプ制御回路191は、電流検出回路181が検出した電流値(この電流値を反映した信号を電流検出信号191cという)と所定の電流指令値とを比較するようになっている。そして、この比較結果に基づき、PWM制御による1周期である制御サイクルTs内に発生させるパルス幅の大きさ(パルス幅時間Tp1、Tp2)を決めるようになっている。その結果、このパルス幅を有するゲート駆動信号191a、191bを、アンプ制御回路191からトランジスタ161、162のゲート端子に出力するようになっている。
なお、回転体103の回転速度の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体103の位置制御をする必要がある。そのため、電磁石巻線151に流れる電流の急激な増加(あるいは減少)ができるように、電源171としては、例えば50V程度の電圧が使用されるようになっている。また、電源171の正極171aと負極171bとの間には、電源171の安定化のために、通常コンデンサが接続されている(図示略)。
かかる構成において、トランジスタ161、162の両方をonにすると、電磁石巻線151に流れる電流(以下、電磁石電流iLという)が増加し、両方をoffにすると、電磁石電流iLが減少する。
また、トランジスタ161、162の一方をonにし他方をoffにすると、いわゆるフライホイール電流が保持される。そして、このようにアンプ回路150にフライホイール電流を流すことで、アンプ回路150におけるヒステリシス損を減少させ、回路全体としての消費電力を低く抑えることができる。また、このようにトランジスタ161、162を制御することにより、ターボ分子ポンプ100に生じる高調波等の高周波ノイズを低減することができる。さらに、このフライホイール電流を電流検出回路181で測定することで電磁石巻線151を流れる電磁石電流iLが検出可能となる。
すなわち、検出した電流値が電流指令値より小さい場合には、図3に示すように制御サイクルTs(例えば100μs)中で1回だけ、パルス幅時間Tp1に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をonにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、正極171aから負極171bへ、トランジスタ161、162を介して流し得る電流値iLmax(図示せず)に向かって増加する。
一方、検出した電流値が電流指令値より大きい場合には、図4に示すように制御サイクルTs中で1回だけパルス幅時間Tp2に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をoffにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、負極171bから正極171aへ、ダイオード165、166を介して回生し得る電流値iLmin(図示せず)に向かって減少する。
そして、いずれの場合にも、パルス幅時間Tp1、Tp2の経過後は、トランジスタ161、162のどちらか1個をonにする。そのため、この期間中は、アンプ回路150にフライホイール電流が保持される。
次に、水冷スペーサ128の構造の詳細について説明する。図5は、図1のA部を拡大して示す要部拡大図である。図5に示すように、本実施形態では、複数段の固定翼123のうち、最上段と最下段との間の位置に水冷スペーサ128が配置されている。この水冷スペーサ128は、固定翼123の軸方向の位置決めを行う固定翼スペーサ125としての機能を備え、さらに、固定翼123を冷却して、輻射熱により回転翼102の温度を下げる役割を果たしている。その結果、水冷スペーサ128だけでなく固定翼123に接触するガスも冷却されることとなる。
水冷スペーサ128は、上述したように冷却管110及び水冷スペーサ温度センサ185を備えている。冷却管110は、水冷スペーサ128の外周部に設けられている。水冷スペーサ温度センサ185は、冷却管110の径方向内側であって、冷却管110の近傍に設けられている。より詳細には、水冷スペーサ温度センサ185は、水冷スペーサ128の内周部(ガス流路F1と接する部分)から距離X1だけ離れた位置、かつ、冷却管110から距離Y1だけ径方向の内側の位置に設けられている。そして、距離X1は距離Y1に比べてかなり長い。即ち、水冷スペーサ温度センサ185は、ガス流路F1から離れた位置、かつ、冷却管110に接近した位置に設けられている。
なお、距離X1と距離Y1との比は、水冷スペーサ128の材質、冷却管110を流れる冷却水の流量及び温度、ガス流路F1を流れるガスの流量及び温度などの仕様に基づいて任意に定められて良いが、例えば、2:1~10:1程度の範囲内で設定するのが好ましい。
水冷スペーサ128は外筒127とアウターウォール126との間に配置され、ボルト115により固定されている。また、水冷スペーサ128とアウターウォール126との間には断熱リング155が介在している。この断熱リング155により水冷スペーサ128とアウターウォール126との間が断熱されている。また、外筒127と水冷スペーサ128との間、及びインナースペーサ154と水冷スペーサ128との間には、Oリング192が装着されており、気密性が保たれている。
次に、本発明の第1実施形態に係るターボ分子ポンプ100の制御装置200について詳しく説明する。第1実施形態に係る制御装置200は、各種演算等を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、及び他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェースを含むハードウェアと、記憶装置に記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。制御装置200の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
図6は、第1実施形態に係る制御装置200の機能ブロック図である。図6に示すように、制御装置200の入力側は、ヒータスペーサ温度センサ186及び水冷スペーサ温度センサ185と接続され、制御装置200の出力側は、ヒータ190及び水冷バルブ195と接続されている。制御装置200は、ヒータスペーサ温度センサ186(第2温度センサ)で検出された温度TH(第2センサ信号)に基づいて、ヒータ190のオンオフを制御し(加熱部品の温度を制御し)、水冷スペーサ温度センサ185(第1温度センサ)で検出された温度TW(第1センサ信号)に基づいて、水冷バルブ195の開閉を制御する(冷却部品の温度を制御する)。なお、水冷バルブ195は例えば電磁弁であり、制御装置200からの電気信号により開閉する。
制御装置200は、ヒータスペーサ温度取得部201と、ヒータ制御部202と、ヒータ制御履歴記憶部203と、水冷スペーサ温度取得部204と、バルブ制御部205と、ガス条件推定部206と、温度補正データ記憶部207と、を有する。
ヒータスペーサ温度取得部201は、ヒータスペーサ温度センサ186で検出されたヒータスペーサ153の温度THを取得し、それをヒータ制御部202に出力する。
ヒータ制御部202は、温度THを上限閾値T1H及び下限閾値T1Lと比較し、第2制御条件である、温度THが下限閾値T1L以下の場合にヒータ190をオンにし、温度THが上限閾値T1H以上の場合にヒータ190をオフにするよう、ヒータ190のオンオフを制御する。そして、ヒータ制御部202は、ヒータ190のオンオフ制御の履歴(以下、「制御履歴」と略記する)をヒータ制御履歴記憶部203に記憶させる。
ヒータ制御履歴記憶部203は、ターボ分子ポンプ100の運転中にヒータ190から入力されるヒータ190の制御履歴の他、以下に説明するように、予め代表的なヒータ190の制御パターンが記憶されている。
図7(a)~(d)は、ヒータ190の代表的な制御パターンを示す図である。図7(a)~(d)において、縦軸はヒータスペーサ153の温度(TH)、横軸は時間(t)である。図7(a)は、ガス流量が所定値a(ただし、aはゼロ)の場合のヒータ190の制御履歴とヒータスペーサ153の温度変化を示している。図7(b)は、ガス流量が所定値bの場合のヒータ190の制御履歴とヒータスペーサ153の温度変化を示している。図7(c)は、ガス流量が所定値cの場合のヒータ190の制御履歴とヒータスペーサ153の温度変化を示している。図7(d)は、ガス流量が所定値dの場合のヒータ190の制御履歴とヒータスペーサ153の温度変化を示している。なお、所定値a,b,c,dの関係は、所定値a(=0)<所定値b<所定値c<所定値dである。
図7(a)に示すように、ガス流量が所定値a(=0)の場合(即ち、ガスが流れていない場合)には、時間t10の時にヒータ190をオフにすると、時間の経過と共にヒータスペーサ153の温度THが低下していき、時間t11の時にヒータスペーサ153の温度THが下限閾値T1Lまで下がる。すると、ヒータ190がオンになりヒータスペーサ153の温度THが上昇し、時間t12の時にヒータスペーサ153の温度THが上限閾値T1Hとなり、ヒータ190がオフになる。そして、時間t12以降は、時間t12以前と同様にヒータスペーサ153の温度THが変化する。よって、ガスが流れていない場合には、ヒータ190がオフからオンになる時間(即ち、オフ継続時間)がΔta1、ヒータ190がオンからオフになる時間(即ち、オン継続時間)がΔtb1となる。
図7(b)に示すように、ガス流量が所定値bの場合には、時間t20の時にヒータ190をオフにすると、時間の経過と共にヒータスペーサ153の温度THが低下していき、時間t21の時にヒータスペーサ153の温度THが下限閾値T1Lまで下がる。すると、ヒータ190がオンになりヒータスペーサ153の温度THが上昇し、時間t22の時にヒータスペーサ153の温度THが上限閾値T1Hとなり、ヒータ190がオフになる。そして、時間t22以降は、時間t22以前と同様にヒータスペーサ153の温度THが変化する。よって、ガス流量が所定値bの場合には、ヒータ190がオフからオンになる時間(即ち、オフ継続時間)がΔta2、ヒータ190がオンからオフになる時間(即ち、オン継続時間)がΔtb2となる。
ここで、ガスが流れている場合には、ガスの温度がヒータスペーサ153に伝わるため、ガスが流れていない場合と比べて、ヒータ190をオフにしてもヒータスペーサ153の温度低下は緩やかになる。一方、ヒータ190をオンにすると、ガスの温度もヒータスペーサ153に伝わるため、ガスが流れていない場合と比べて、ヒータスペーサ153の温度上昇は急になる。よって、Δta1<Δta2、Δtb1>Δtb2となる。
図7(c)に示すように、ガス流量が所定値cの場合には、時間t30の時にヒータ190をオフにすると、時間の経過と共にヒータスペーサ153の温度THが低下していき、時間t31の時にヒータスペーサ153の温度THが下限閾値T1Lまで下がる。すると、ヒータ190がオンになりヒータスペーサ153の温度THが上昇し、時間t32の時にヒータスペーサ153の温度THが上限閾値T1Hとなり、ヒータ190がオフになる。そして、時間t32以降は、時間t32以前と同様にヒータスペーサ153の温度THが変化する。よって、ガス流量が所定値cの場合には、ヒータ190がオフからオンになる時間(即ち、オフ継続時間)がΔta3、ヒータ190がオンからオフになる時間(即ち、オン継続時間)がΔtb3となる。
ここで、ガスの温度がヒータスペーサ153に与える影響は、ガス流量が大きい方ほど大きくなる。ガス流量は、所定値b<所定値cであるため、ガス流量が所定値bの場合と比べて、ヒータ190をオフにしてもヒータスペーサ153の温度低下は緩やかになる一方、ヒータ190をオンにするとヒータスペーサ153の温度上昇は急になる。よって、Δta2<Δta3、Δtb2>Δtb3となる。
図7(d)に示すように、ガス流量が所定値dの場合には、時間t40の時にヒータ190をオフにすると、時間の経過と共にヒータスペーサ153の温度THが低下していき、時間t41の時にヒータスペーサ153の温度THが下限閾値T1Lまで下がる。すると、ヒータ190がオンになりヒータスペーサ153の温度THが上昇し、時間t42の時にヒータスペーサ153の温度THが上限閾値T1Hとなり、ヒータ190がオフになる。そして、時間t42以降は、時間t42以前と同様にヒータスペーサ153の温度THが変化する。よって、ガス流量が所定値dの場合には、ヒータ190がオフからオンになる時間(即ち、オフ継続時間)がΔta4、ヒータ190がオンからオフになる時間(即ち、オン継続時間)がΔtb4となる。
そして、ガス流量は、所定値c<所定値dであるため、ガス流量が所定値cの場合と比べて、ヒータ190をオフにしてもヒータスペーサ153の温度低下は緩やかになる一方、ヒータ190をオンにするとヒータスペーサ153の温度上昇は急になる。よって、Δta3<Δta4、Δtb3>Δtb4となる。
以上をまとめると、Δta1<Δta2<Δta3<Δta4となり、Δtb1>Δtb2>Δtb3>Δtb4となる。図7(a)~(d)から明らかなように、ガス流量が大きいほど、ヒータ190をオフにしてもヒータスペーサ153の温度は下がりにくくなり、一方、ヒータ190をオンにするとヒータスペーサ153の温度は上がりやすくなる。
本発明は、この点に着目し、ターボ分子ポンプ100運転中におけるヒータ190の制御履歴、即ち、ヒータ190のオフ継続時間とオン継続時間から、図7(a)~(d)の何れの制御パターンに近いかを判定し、ガスの流量を推定して、最終的に水冷スペーサ128の温度を適切に制御している。
なお、図7(a)~(d)に示す制御パターンは、実際にガス流量とヒータスペーサ153の温度を計測して定めても良いし、ヒータスペーサ153の温度変化のシミュレーション結果に基づいて定めても良い。また、ガス流量だけでなくガスの種類に応じた制御パターンが予めヒータ制御履歴記憶部203に記憶されていても良い。また、図7(a)~(d)では代表的な制御パターンの数として4つを例示したが、その数は任意である。
図6に戻って、ガス条件推定部206は、ヒータ制御履歴記憶部203に記憶されている現在のヒータ190の制御履歴と、予め定められた制御パターンとを読み出し、ヒータ190の制御履歴が、予め定められた制御パターンの何れに該当するかを判定することで、ガスの諸条件(具体的には、ガスの流量)を推定する。
例えば、ヒータ制御履歴記憶部203に記憶されているヒータ190の制御履歴が図7(c)に示す制御パターンに近い場合には、ガス条件推定部206は、ターボ分子ポンプ100に供給されるガス流量が所定値cであると推定する。そして、ガス条件推定部206は、推定結果をバルブ制御部205に出力する。
水冷スペーサ温度取得部204は、水冷スペーサ温度センサ185で検出された水冷スペーサ128の温度TWを取得し、それをバルブ制御部205に出力する。
バルブ制御部205は、温度TWを上限閾値T2H及び下限閾値T2Lと比較し、第1制御条件である、温度TWが下限閾値T2L以下の場合に水冷バルブ195を閉じ、温度TWが上限閾値T2H以上の場合に水冷バルブ195を開けるよう、水冷バルブ195の開閉動作を制御する。
その際、バルブ制御部205は、ヒータ190の制御履歴に応じて、水冷バルブ195の開閉制御を変更する(補正する)。具体的には、バルブ制御部205は、ガス条件推定部206にて推定されたガス流量に基づいて、温度補正データ記憶部207に記憶されている補正データのうち、推定されたガス流量に対応するデータを参照して、水冷バルブ195を開閉するための閾値温度である上限閾値T2H及び下限閾値T2Lを変更する(第1制御条件を変更する)。
図8は、温度補正データ記憶部207の詳細を示す図である。図8に示すように、温度補正データ記憶部207は、温度制御パターンである閾値パターン1、閾値パターン2、閾値パターン3、及び閾値パターン4を記憶している。例えば、閾値パターン1は、ガス流量が上記した所定値aの場合に対応しており、上限閾値T2Hとして例えば80℃、下限閾値T2Lとして例えば70℃が予め設定されている。閾値パターン2は、ガス流量が上記した所定値bの場合に対応しており、上限閾値T2Hとして例えば85℃、下限閾値T2Lとして例えば75℃が予め設定されている。閾値パターン3は、ガス流量が上記した所定値cの場合に対応しており、上限閾値T2Hとして例えば90℃、下限閾値T2Lとして例えば80℃が予め設定されている。閾値パターン4は、ガス流量が上記した所定値dの場合に対応しており、上限閾値T2Hとして例えば95℃、下限閾値T2Lとして例えば85℃が予め設定されている。即ち、第1実施形態では、上限閾値T2Hと下限閾値T2Lとの温度差は、何れの閾値パターンであっても一定(具体的には10℃)、かつ、ガス流量が大きくなるに連れて数値が大きくなるように両閾値T2H,T2Lが設定されている。
なお、上限閾値T2H及び下限閾値T2Lの各値は任意に定められて良い。また、上限閾値T2H及び下限閾値T2Lのうち、何れか一方の値のみをガス流量に応じて変更したパターンを設定しても良い。
次に、制御装置200による制御処理について説明する。図9は、水冷バルブ195の開閉動作の制御手順を示すフローチャートである。制御装置200は、電源オンに基づいて図9に示す処理を開始し、例えば1秒毎にその処理を繰り返し実行する。
制御装置200は、まずヒータスペーサ153の温度THが下限閾値T1L以下であるかを判定する(ステップS1)。温度THが下限閾値T1L以下の場合(ステップS1でYES)、制御装置200は、ヒータ190をオンにする(ステップS2)。一方、温度THが下限閾値T1Lより高い場合(ステップS1でNO)、制御装置200は、温度THが上限閾値T1H以上であるか否かを判定する(ステップS3)。温度THが上限閾値T1H以上である場合(ステップS3/YES)、制御装置200はヒータ190をオフにする(ステップS4)。一方、温度THが上限閾値T1H未満の場合(ステップS3でNo)、処理がステップS5に進む。
なお、制御装置200は、ステップS2,S4にてヒータ190をオンまたはオフにした動作履歴を時刻と共に記憶する。
次いで、制御装置200は、ステップS5において、温度補正処理を行う。図10は、温度補正処理の詳細を示すフローチャートである。図10に示すように、温度補正処理が開始されると、制御装置200は、ヒータ190の制御履歴を分析し(ステップS5-1)、閾値パターンを決定し(ステップS5-2)、水冷バルブ195を開閉するための第1制御条件である上限閾値T2H及び下限閾値T2Lを変更する(ステップS5-3)。なお、制御装置200は、ターボ分子ポンプ100の運転開始時には、ヒータ190の制御履歴が記憶されていないので、ステップS5-2において閾値パターン1を初期値として選択し、上限閾値T2H及び下限閾値T2Lを設定する。
温度補正処理(ステップS5)が終了すると、制御装置200は、図9に示すようにステップS6に進み、水冷スペーサ128の温度TWが補正処理後の下限閾値T2L以下であるかを判定する(ステップS6)。温度TWが下限閾値T2L以下の場合(ステップS6でYES)、制御装置200は、水冷バルブ195を閉じる(ステップS7)。一方、温度TWが下限閾値T2Lより高い場合(ステップS6でNO)、制御装置200は、温度TWが補正処理後の上限閾値T2H以上であるか否かを判定する(ステップS8)。温度TWが上限閾値T2H以上である場合(ステップS8/YES)、制御装置200は水冷バルブ195を開ける(ステップS9)。一方、温度TWが上限閾値T2H未満の場合(ステップS8でNo)、処理が終了する。こうして、水冷スペーサ128の温度が、補正処理後の上限閾値T2Hと下限閾値T2Lとの間の範囲内に維持される。
次に、このように構成された第1実施形態の効果について説明する。
制御装置200は、水冷スペーサ128の温度TWに基づいて、水冷バルブ195の開閉を制御する。その際、ヒータ190の制御履歴に基づいて、水冷バルブ195を開閉動作させる契機となる閾値温度(上限閾値T2H及び下限閾値T2L/第1制御条件)が変更される。具体的には、制御装置200は、ヒータ190の制御履歴に基づいて、閾値パターン1~4の中から適したパターンを選択し、そのパターンに従って水冷バルブ195の開閉動作を制御する。図7に示すように、ヒータ190の制御履歴は、ターボ分子ポンプ100に供給されるガスの流量によって異なるので、制御装置200が、ヒータ190の制御履歴に対応する閾値パターンに基づいて水冷バルブ195の開閉動作を制御することにより、ガスの流量を計測することなく、ガス流量に応じた水冷スペーサ128の温度制御が可能となる。これにより、ガスのコンタミを防止できる。
また、第1実施形態によれば、冷却管110の温度変化を冷却管110の近傍に配置された水冷スペーサ温度センサ185により高精度で検出することで、冷却管110の温度変化を抑えるように制御しつつ、水冷スペーサ128の温度を目標温度で制御しやすくする。また、冷却管110とガス流路F1との間を距離X1だけ離すことで、水冷スペーサ128に熱伝導率の高い部材を用いた場合であっても、冷却管110の急激な温度変化をガス流路F1に接する水冷スペーサ128の内周面に伝わり難くできる。しかも、水冷スペーサ128をアルミ材などの高い熱伝導率を有する部材にすることで、冷却管110がガス流路F1から離れていても、ガス流路F1に接する水冷スペーサ128の内周面の温度を所望の温度に冷却できる。
また、水冷スペーサ温度センサ185が冷却管110より径方向の内側に設けられているため、水冷スペーサ128の周囲部品の温度影響を受けずに、冷却管110の温度を高精度で検出できるといった利点もある。
(変形例1)
次に、変形例1に係るターボ分子ポンプの制御装置200について説明する。変形例1では、制御装置200が、第1制御条件である水冷バルブ195の開時間tvを変更することで、単位時間当たりの冷却水の供給流量(温度制御サイクルにおける冷却水の供給時間)を調整して、水冷スペーサ128の温度TWを制御している点に特徴がある。以下、変形例1の特徴部分について主に説明し、上記実施形態と説明が重複する部分についてはその説明を省略する。
図11は、変形例1に係る温度補正データ記憶部207の詳細を示す図である。図11に示すように、変形例1において、温度補正データ記憶部207は、開時間パターン1、開時間パターン2、開時間パターン3、及び開時間パターン4を記憶している。例えば、開時間パターン1は、ガス流量が上記した所定値aの場合に対応しており、水冷バルブ195を閉じる所定時間tc1として例えば10秒が予め設定されている。開時間パターン2は、ガス流量が上記した所定値bの場合に対応しており、所定時間tc1として例えば20秒が予め設定されている。開時間パターン3は、ガス流量が上記した所定値cの場合に対応しており、所定時間tc1として例えば30秒が予め設定されている。開時間パターン4は、ガス流量が上記した所定値dの場合に対応しており、所定時間tc1として例えば40秒が予め設定されている。なお、所定時間tc1の値は任意に定められて良い。
次に、変形例1に係る制御装置200の制御処理について説明する。図12は、変形例1に係る水冷バルブ195の開閉動作の制御手順を示すフローチャートである。なお、変形例1の特徴はステップS5とステップS6-1,S6-2,S10であるため、これらの特徴について、以下、説明する。
制御装置200は、ステップS5において、温度補正処理を行う。図13は、変形例1に係る温度補正処理の詳細を示すフローチャートである。図13に示すように、温度補正処理が開始されると、制御装置200は、ヒータ190の制御履歴を分析し(ステップS5-1)、開時間パターンを決定し(ステップS5-12)、第1制御条件である水冷バルブ195の開時間(所定時間tc1)を変更する(ステップS5-13)。なお、制御装置200は、ターボ分子ポンプ100の運転開始時には、ヒータ190の制御履歴が記憶されていないので、ステップS5-12において開時間パターン1を初期値として選択し、所定時間tc1を設定する。
温度補正処理が終了すると、制御装置200は、図12に示すようにステップS6以降に進み、水冷バルブ195を開閉する。具体的には、制御装置200は、水冷スペーサ温度TWが下限閾値T2L以下である場合(ステップS6/YES)、水冷バルブ195を閉じる(ステップS7)。一方、水冷スペーサ温度TWが下限閾値T2Lを超えている場合(ステップS6/NO)、制御装置200は、水冷バルブ195の開時間tvが所定時間tc1未満であるか否かを判定する(ステップS6-1)。水冷バルブ195の開時間tvが所定時間tc1未満の場合(ステップS6-1/YES)、処理が終了する。
一方、水冷バルブ195の開時間tvが所定時間tc1以上の場合(ステップS6-1/NO)、制御装置200は、水冷バルブ195の開時間tvの計測を停止し(ステップS6-2)、水冷スペーサ温度TWが上限閾値T2H以上であるか否かを判定する(ステップS8)。水冷スペーサ温度TWが上限閾値T2H以上であった場合(ステップS8/YES)、制御装置200は、水冷バルブ195を開け(ステップS9)、水冷バルブ195の開時間tvの計測を開始し(ステップS10)、処理が終了する。一方、水冷スペーサ温度TWが上限閾値T2H未満の場合(ステップS8/NO)、処理が終了する。このように、変形例1では、水冷バルブ195の開時間を制御しているため、水冷スペーサ128の温度TWが、補正処理後の上限閾値T2Hと下限閾値T2Lとの間の範囲内に維持される。
以上、変形例1によっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、変形例1では、制御装置200が水冷バルブ195の開時間tvをガス流量に応じて変更できるので、水冷スペーサ128の温度制御をより細かく行うことができる。なお、水冷バルブ195の閉時間を変更しても同様の作用効果を奏することができることは言うまでもない。
また、水冷バルブ195の開閉時間を変化させるだけでなく、水冷バルブ195の開度を変化させて水冷スペーサ128の温度制御を行うことも可能である。
(変形例2)
次に、変形例2に係るターボ分子ポンプの制御装置200について説明する。変形例2では、制御装置200が、ヒータ190のオンオフ動作の履歴の代わりに、ヒータスペーサ153の温度の履歴に基づいて、水冷バルブ195の開閉動作の制御を変更している点に特徴がある。
図14は、変形例2に係る制御装置200の機能ブロック図である。図14に示すように、変形例2では、ヒータ制御履歴記憶部203の代わりに、ヒータスペーサ温度履歴記憶部208を備えている。ヒータスペーサ温度履歴記憶部208は、ヒータスペーサ温度センサ186から入力されたヒータスペーサ温度THを、入力された時刻と共に記憶する。
ガス条件推定部206は、ヒータスペーサ温度履歴記憶部208に記憶されたヒータスペーサ153の温度履歴から、ガス流量を推定する。具体的には、ガス条件推定部206は、ヒータスペーサ153の温度履歴が、図7(a)~(d)に示す温度変化の何れに相当するかを判定する。例えば、ガス流量が所定値bの場合、ヒータスペーサ153の温度履歴は、時間t20のときに温度T1Hとなり、時間t20以降、徐々に温度が下がり、時間t21のときに温度T1Lとなり、時間t21以降、徐々に温度が上昇する。この温度変化の履歴と、ヒータスペーサ温度履歴記憶部208に記憶されている温度変化とが略一致する場合、ガス条件推定部206は、現在のガス流量が所定値bであると推定する。つまり、第1実施形態では、ヒータ190のオンとオフの時間からガス流量を推定していたのに対し、変形例2では、ヒータスペーサ153の温度変化からガス流量を推定している。
そのため、図15に示す温度補正処理のフローチャートにて明らかなように、ステップS5-11において、制御装置200がヒータスペーサ153の温度履歴を分析する処理を行っている点が、第1実施形態と異なっている。
この変形例2によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し得る。即ち、変形例2によれば、ヒータスペーサ153の温度履歴に基づいてガス流量を推定し、推定されたガス流量に応じて好適に水冷スペーサ128の温度を制御できる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るターボ分子ポンプの制御装置について説明する。第2実施形態では、水冷バルブ195の制御履歴に基づいてヒータスペーサ153の温度制御を変更している点に特徴がある。以下、特徴点を中心に説明する。
図16は、第2実施形態に係る制御装置300の機能ブロック図である。図16に示すように、第2実施形態に係る制御装置300は、バルブ制御履歴記憶部211及びヒータ温度補正データ記憶部217を備えている。
バルブ制御履歴記憶部211は、水冷バルブ195の開閉動作の履歴が時刻と共に記憶されている。ガス条件推定部206は、バルブ制御履歴記憶部211に記憶されている水冷バルブ195の開閉動作の履歴から、ガス流量を推定する。
図17は、ヒータ温度補正データ記憶部217の詳細を示す図である。図17に示すように、ヒータ温度補正データ記憶部217は、ヒータ閾値パターン1、ヒータ閾値パターン2、ヒータ閾値パターン3、及びヒータ閾値パターン4を記憶している。例えば、ヒータ閾値パターン1は、ガス流量が上記した所定値aの場合に対応しており、上限閾値T1Hとして例えば140℃、下限閾値T1Lとして例えば120℃が予め設定されている。ヒータ閾値パターン2は、ガス流量が上記した所定値bの場合に対応しており、上限閾値T1Hとして例えば145℃、下限閾値T1Lとして例えば125℃が予め設定されている。ヒータ閾値パターン3は、ガス流量が上記した所定値cの場合に対応しており、上限閾値T1Hとして例えば150℃、下限閾値T1Lとして例えば130℃が予め設定されている。ヒータ閾値パターン4は、ガス流量が上記した所定値dの場合に対応しており、上限閾値T1Hとして例えば155℃、下限閾値T1Lとして例えば135℃が予め設定されている。
なお、上限閾値T1H及び下限閾値T1Lの各値は任意に定められて良い。また、上限閾値T1H及び下限閾値T1Lのうち、何れか一方の値のみをガス流量に応じて変更したパターンを設定しても良い。
次に、第2実施形態に係る制御装置300による制御処理について説明する。図18は、第2実施形態に係るヒータ190のオンオフ動作の制御手順を示すフローチャートである。制御装置300は、電源オンに基づいて図18に示す処理を開始し、例えば1秒毎にその処理を繰り返し実行する。
制御装置300は、まず水冷スペーサ128の温度TWが下限閾値T2L以下であるかを判定する(ステップS101)。温度TWが下限閾値T2L以下の場合(ステップS101でYES)、制御装置300は、水冷バルブ195を閉じる(ステップS102)。一方、温度TWが下限閾値T2Lより高い場合(ステップS101でNO)、制御装置300は、温度TWが上限閾値T2H以上であるか否かを判定する(ステップS103)。温度TWが上限閾値T2H以上である場合(ステップS103/YES)、制御装置300は水冷バルブ195を開ける(ステップS104)。一方、温度TWが上限閾値T2H未満の場合(ステップS103でNo)、処理がステップS5に進む。
なお、制御装置300は、ステップS102,S104にて水冷バルブ195の開閉動作の履歴を時刻と共に記憶する。
次いで、制御装置300は、ステップS105において、ヒータ温度補正処理を行う。図19は、ヒータ温度補正処理の詳細を示すフローチャートである。図19に示すように、ヒータ温度補正処理が開始されると、制御装置300は、水冷バルブ195の制御履歴を分析し(ステップS105-1)、閾値パターンを決定し(ステップS105-2)、ヒータ190をオンオフするための第2制御条件である上限閾値T1H及び下限閾値T1Lを変更する(ステップS105-3)。なお、制御装置300は、ターボ分子ポンプ100の運転開始時には、水冷バルブ195の制御履歴が記憶されていないので、ステップS105-2において閾値パターン1を初期値として選択し、上限閾値T1H及び下限閾値T1Lを設定する。
ヒータ温度補正処理(ステップS105)が終了すると、制御装置300は、図18に示すようにステップS106に進み、ヒータスペーサ153の温度THが補正処理後の下限閾値T1L以下であるかを判定する(ステップS106)。温度THが下限閾値T1L以下の場合(ステップS106でYES)、制御装置300は、ヒータ190をオンにする(ステップS107)。一方、温度THが下限閾値T1Lより高い場合(ステップS106でNO)、制御装置300は、温度THが補正処理後の上限閾値T1H以上であるか否かを判定する(ステップS108)。温度THが上限閾値T1H以上である場合(ステップS108/YES)、制御装置300はヒータ190をオフにする(ステップS109)。一方、温度THが上限閾値T1H未満の場合(ステップS108でNo)、処理が終了する。こうして、ヒータ190の温度が、補正処理後の上限閾値T1Hと下限閾値T1Lとの間の範囲内に維持される。
次に、このように構成された第2実施形態の効果について説明する。
制御装置300は、ヒータスペーサ153の温度THに基づいて、ヒータ190のオンオフ動作を制御する。その際、水冷バルブ195の制御履歴に基づいて、ヒータ190をオンオフ動作させる契機となる閾値温度(上限閾値T1H及び下限閾値T1L/第2制御条件)が変更される。具体的には、制御装置300は、水冷バルブ195の制御履歴に基づいて、ヒータ閾値パターン1~4の中から適したパターンを選択し、そのパターンに従ってヒータ190のオンオフ動作を制御する。水冷バルブ195の制御履歴は、ターボ分子ポンプ100に供給されるガスの流量によって異なるので、制御装置300が、水冷バルブ195の制御履歴に対応するヒータ閾値パターンに基づいてヒータ190のオンオフ動作を制御することにより、ガスの流量を計測することなく、ガス流量に応じたヒータスペーサ153の温度制御が可能となる。これにより、ガスのコンタミを防止できる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例や組合せ例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
例えば、上記した実施形態において水冷バルブ195の開閉動作を制御するための上限閾値T2H及び下限閾値T2Lを予め定められた値の中から選択したが、この構成に代えて、制御装置200がヒータ190の制御履歴に基づいて、上限閾値T2H及び下限閾値T2Lを演算により求めても良い。また、制御装置200は、変形例1にて説明した水冷バルブ195の閉時間(所定時間tc1)も同様に演算により求めても良い。即ち、制御装置200は、所定の制御特性に従い、水冷スペーサ128の制御パラメータである設定温度や開閉時間を演算により求め、その演算結果に基づいて水冷バルブ195の開閉動作を制御しても良い。例えば、制御装置200は、ヒータ190の制御履歴に基づき、線形特性に従って水冷スペーサ128の設定温度(上限閾値T2H及び下限閾値T2L)を求めても良いし、非線形特性に従って同様に設定温度を求めても良い。