JP7790347B2 - 微粒子用バインダー組成物、加工液、及び繊維製品 - Google Patents

微粒子用バインダー組成物、加工液、及び繊維製品

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Description

本発明は、微粒子用バインダー組成物、加工液、及び繊維製品に関する。
従来より、抗菌、抗ウイルス、消臭等、様々な機能を有するフィルターの提案がされている。上記フィルターにおいては、例えば、繊維に無機微粒子を結着させることにより抗菌、抗ウイルス、消臭といった機能性を発揮することができる。
無機微粒子を例えば繊維に結着させる場合、水性樹脂バインダー等の樹脂バインダーがバインダー剤として使用されている。抗菌、抗ウイルス、及び消臭といった機能を有する無機微粒子の場合、主に樹脂バインダーから露出した粒子により上記機能が発揮されることが知られている。
例えば、特許文献1には、繊維と、該繊維の表面に結着された消臭剤とを含む消臭繊維層を備える消臭フィルターが記載されている。また、特許文献1には、消臭フィルターにおける消臭繊維層中、消臭剤が樹脂バインダーにより繊維に結着されることが開示されている。
消臭効果を向上すべく、消臭剤量を増やそうとするとフィルターと消臭剤とを結着させる樹脂バインダー量も増やす必要がある。樹脂バインダーを増やすと消臭剤が埋もれるため、消臭剤含有量の増加に伴い期待されるはずの消臭効果が得られず、通気性も低下する。この問題を解決するため、特許文献1の消臭フィルターにおいては、消臭繊維層の厚さ目付量、及び消臭フィルターの通気度も所定の範囲にする方法が提案されている。
特開2018-134449号
上述したように、無機微粒子を例えば繊維に結着させる場合、無機微粒子を増やそうとすると樹脂バインダーを増やす必要があり、これにより埋没した無機微粒子によっては無機微粒子による機能を発揮することができないという問題がある。したがって、繊維等の基材に微粒子を結着させた際に、当該微粒子による機能をより高く発揮させることが求められる。
また、特許文献1の方法のように、無機微粒子を結着させる基材を無機微粒子の機能を高めるために調整する場合、適用可能な繊維基材に制限が生じることから、より汎用できる方法が求められる。
微粒子の基材への結着は、例えば、微粒子とバインダー剤とを含む加工液を基材へ塗布することにより行われる。ここで、微粒子及びバインダー剤を含む加工液中で当該微粒子が沈降しやすく作業性が悪いという課題がある。
そこで本発明は、微粒子を基材に結着させる際の作業性が高く、微粒子による機能を高く発揮させることができる、バインダー組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、ナノセルロースを含有する組成物は、微粒子を基材に結着させる際の作業性が高く、微粒子の機能を高められることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
[1]
ナノセルロースを含有する、微粒子用バインダー組成物。
[2]
微粒子と繊維との結着に用いる、
[1]に記載の微粒子用バインダー組成物。
[3]
前記ナノセルロースが、酸化ナノセルロースを含む、
[1]又は[2]に記載の微粒子用バインダー組成物。
[4]
前記ナノセルロースの平均繊維長が、100nm以上700nm以下である、
[1]~[3]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物。
[5]
前記ナノセルロースが、N-オキシル化合物を実質的に含まない、
[1]~[4]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物。
[6]
前記ナノセルロースが、原料セルロースを次亜塩素酸又はその塩で酸化して得られる酸化セルロースを解繊処理して作製する酸化ナノセルロースである、
[1]~[5]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物。
[7]
前記微粒子が、無機微粒子である、
[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物。
[8]
前記微粒子が、セラミックスである、
[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物。
[9]
前記微粒子が、消臭剤、抗アレルゲン剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、防カビ剤、及び徐放性材料からなる群より選択される少なくとも1種である、
[1]~[8]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物と、微粒子とを含む、加工液。
[11]
[1]~[9]のいずれかに記載の微粒子用バインダー組成物を用いて作製された繊維製品。
[12]
[10]に記載の加工液を用いて作製された繊維製品。
本発明によれば、微粒子を基材に結着させる際の作業性が高く、微粒子による機能を高く発揮させることができる、バインダー組成物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の組成物は、ナノセルロースを含有する、微粒子用バインダー組成物である。本発明の微粒子用バインダー組成物とは、微粒子を結着させるための組成物を指す。
本発明の微粒子用バインダー組成物から得られる乾燥塗膜はバインダー成分であるナノセルロースにより形成され、無機微粒子等の微粒子を、バインダーを介して塗布対象物に結着させることができる。また、本発明の微粒子用バインダー組成物により微粒子が作用する対象との接触効率が高まり、微粒子による消臭性、抗ウイルス作用、抗アレルゲン作用、抗菌性、及び防カビ性等の機能を高く発揮させることができると考えられる。
また、ナノセルロースは分散性能が高く、加工液中での微粒子の沈降を抑えることができるため、微粒子用バインダー組成物は作業性が高くなると考えられる。
微粒子用バインダー組成物を用いる対象の基材は、特に限定されず、無機材料、有機材料又はこれらを組み合わせた材料を含む物品とすることができる。ここでいう基材とは、微粒子を結着させる塗布対象物を指す。その形状も、特に限定されない。上記基材としては、フィルム、粒状体、一般成形品等の樹脂成形品(発泡樹脂成形品を含む);繊維;繊維を含む不織布、織布等のシート状物品等を用いることができる。基材が不織布である場合、ニードルパンチ法や水流絡合法等により交絡されている不織布、サーマルボンド法により製造された不織布及びスパンボンド法により製造された不織布が好ましい。
本発明の微粒子用バインダー組成物は、微粒子と繊維との結着に好適に用いることができる。
基材としての繊維を構成する成分としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリビニルエステル、ポリメタクリル酸エステル、レーヨン、及びアセテート等の樹脂が挙げられる。上記繊維は、1種のみの樹脂を含んでいてもよく、複数種類の樹脂を含んでいてもよい。また、上記繊維としては、綿、絹、及び羊毛等を含んでいてもよい。さらに、上記繊維としては、セルロース又はビスコース繊維を含んでいてもよい。上記繊維は、例えば、ポリエステルと綿との混紡であってもよい。
基材としての繊維の繊維径は、特に制限されないが、通常1μm以上1mm以下であればよい。
<ナノセルロース>
本発明におけるナノセルロースは、市販のナノセルロースを用いることもでき、セルロース系原料の針葉樹パルプ等から自身で調製することにより得られたものを用いることもできる。ナノセルロースを調製する場合、例えば、Cellulose Commun., 14(2), 62(2007)、及び、国際公開2018/230354号パンフレット等を参照して調製することができる。本発明におけるナノセルロースは、セルロースをナノ化したものの総称を表し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等を含む。ナノセルロースは、繊維状セルロースを微細化した繊維状セルロースであるため、「微細セルロース繊維」とも称する。
本発明におけるナノセルロースの具体的な製造方法としては、例えば、有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下、好ましくは7質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸又はその塩を用いて、セルロース系原料を酸化させて酸化セルロースを製造する工程と、該酸化セルロースを解繊処理してナノ化させる工程とを有するナノセルロースの製造方法を好適に挙げることができる。
したがって、本発明におけるナノセルロースは、酸化ナノセルロースを含むことが好ましい。また、本発明におけるナノセルロースは、原料セルロースを次亜塩素酸又はその塩で酸化して得られる酸化セルロースを解繊処理して作製する酸化ナノセルロースであることが好ましい。
本発明における酸化セルロースは、原料セルロースの酸化物である酸化セルロースともいえる。また、原料セルロースを次亜塩素酸又はその塩で酸化して酸化セルロースを得る場合、該酸化セルロースは、次亜塩素酸又はその塩による原料セルロースの酸化物である酸化セルロースともいえる。
さらに、本発明におけるナノセルロースを上記の所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸又はその塩を用いて製造する場合、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(以下、TEMPOという)等のN-オキシル化合物を用いずとも取得することができる。N-オキシル化合物は有害性が指摘されており、これを用いてナノセルロースを作製すると、ナノセルロース中にN-オキシル化合物が含まれてしまう。したがって、本発明におけるナノセルロースは、ナノセルロースがN-オキシル化合物を実質的に含まないことが好ましい。
本明細書において、N-オキシル化合物を実質的に含まないとは、酸化セルロースを製造する際にN-オキシル化合物を用いていない、又は酸化セルロース中におけるN-オキシル化合物に由来する窒素の含有量が、2.0ppm以下、好ましくは1.0質量ppm以下である。また、N-オキシル化合物の含有量が、セルロース系原料からの増加分として、好ましくは2.0質量ppm以下、より好ましくは1.0質量ppm以下である場合も、「N-オキシル化合物を実質的に含まない」ことを意味する。
残留窒素成分は、微量全窒素分析装置を用いることにより測定することができ、より詳細には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明におけるナノセルロースを上記の所定の有効塩素濃度の次亜塩素酸又はその塩を用いて製造したものを用いた場合、得られる組成物の流動性がより高まる傾向にあり、微粒子を基材に結着させる際の作業性が一層高くなる。
本発明におけるセルロース系原料とは、セルロースを主体とした材料であれば特に限定はなく、例えば、パルプ、天然セルロース、再生セルロース及びセルロース原料を機械的処理することで解重合した微細セルロース等が挙げられる。なお、セルロース系原料として、パルプを原料とする結晶セルロース等の市販品をそのまま使用することができる。その他、おからや大豆皮等、セルロース成分を多量に含む未利用バイオマスを原料としてもよい。また、次の工程で使用する酸化剤を原料パルプの中に浸透しやすくする目的でセルロース系原料を適度な濃度のアルカリで処理してもよい。
本発明におけるナノセルロースの製造方法の一例は、有効塩素濃度が6~43質量%、好ましくは7~43質量%の次亜塩素酸又はその塩を用いて、セルロース系原料を酸化させて酸化セルロースを製造する工程と、該酸化セルロースを解繊処理してナノ化させる工程とを有する製造方法である。酸化剤である次亜塩素酸又はその塩中の有効塩素濃度は14質量%以上43質量%以下であることがより好ましく、18質量%以上43質量%以下であることがさらに好ましい。
有効塩素濃度が43質量%以下であることにより、自己分解が進行することを抑え、取り扱いを容易にする傾向にある。
次亜塩素酸又はその塩における有効塩素濃度はよく知られた概念であり、以下のように定義される。
次亜塩素酸は水溶液として存在する弱酸であり、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸の水素が他の陽イオンに置換された化合物である。次亜塩素酸塩は結晶水をもった固体として存在することは出来るが、潮解性をもち、非常に不安定な物質であり、一般に水溶液として取り扱う。
例えば、次亜塩素酸塩である次亜塩素酸ナトリウムは溶液中にしか存在しないため、次亜塩素酸ナトリウムの濃度ではなく、溶液中の有効塩素量を測定する。
次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素とは、次亜塩素酸ナトリウムの分解により生成する2価の酸素原子の酸化力が1価の塩素の2原子当量に相当するため、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の結合塩素原子は,非結合塩素(Cl2)の2原子と同じ酸化力を持っていて、有効塩素=2×(NaClO中の塩素)となる。
具体的な有効塩素濃度の測定は、試料を精秤し、水、ヨウ化カリウム、酢酸を加えて放置し、遊離したヨウ素についてデンプン水溶液を指示薬としてチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し測定する。
次亜塩素酸又はその塩としては、例えば、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム及び次亜塩素酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いやすさの観点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
以下、次亜塩素酸又はその塩として次亜塩素酸ナトリウムを例にして、本発明に用いられるナノセルロースの一つの製造方法を説明する。
(1)有効塩素濃度が6質量%以上43質量%以下の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて、セルロース系原料を酸化させて酸化セルロースを製造する工程。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度を6質量%以上43質量%以下に調整する方法としては、有効塩素濃度が6質量%より低い次亜塩素酸ナトリウム水溶液を濃縮する方法、有効塩素濃度が約43質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶をそのまま、又は水で希釈して調整する方法がある。これらの中でも、次亜塩素酸ナトリウム5水和物を用いて、酸化剤としての有効塩素濃度に調整することが、自己分解が少なく、すなわち有効塩素濃度の低下が少なく、調整が簡便であるため好ましい。
酸化剤である有効塩素濃度が6質量%以上43質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量は、酸化反応が促進する範囲で選択できる。
セルロース系原料と次亜塩素酸ナトリウム水溶液の混合方法は特に限定はないが、操作の容易さの観点から、次亜塩素酸ナトリウム水溶液にセルロース系原料を加えて混合させることが好ましい。
前記酸化反応における反応温度は、15℃以上40℃以下であることが好ましく、20℃以上35℃以下であることがより好ましい。酸化反応を効率よく進めるために、反応系のpHを7以上14以下に維持することが好ましく、10以上14以下に維持することがより好ましい。pHを調整するために水酸化ナトリウム等のアルカリ剤、塩酸等の酸を添加することができる。
酸化反応の反応時間は、酸化の進行の程度に従って設定することができるが、例えば、15分以上6時間以下程度反応させることが好ましい。
前記酸化反応では、セルロース系原料中の水酸基がカルボキシ基へ酸化され酸化セルロースが生成する。該酸化セルロースのカルボキシ基量は特に限定されないが、次工程で酸化セルロースを解繊してナノ化させてナノセルロースを製造するに際し、酸化セルロース1g当たりのカルボキシ基量は、0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下であることが好ましい。上記カルボキシ基量は、より好ましくは0.2mmol/g以上2.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.35~2.0mmol/gであり、よりさらに好ましくは0.35~1.5mmol/gであり、さらにより好ましくは0.40~1.5mmol/gであり、一層好ましくは0.50~1.2mmol/gであり、より一層好ましくは0.50超過~1.2mmol/gであり、さらに一層好ましくは0.55~1.0mmol/gである。また、前記酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。
酸化セルロース中のカルボキシ基量は、次の方法で測定することができる。酸化セルロースの0.5質量%スラリーに純水を加えて60mlに調製し、0.1M塩酸水溶液を加えて、pH2.5にした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記式を用いて算出する。酸化セルロースのカルボキシ基量は、酸化反応の反応時間、反応温度、反応液のpH等を変更することにより調整することができる。
カルボキシ基量(mmol/g酸化セルロース)=a(ml)×0.05/酸化セルロース質量(g)
(2)酸化セルロースを解繊処理してナノ化させる工程
本発明において用いられるナノセルロースは、例えば、前記工程で得られた酸化セルロースを解繊してナノ化することにより製造することができる。解繊する方法は、溶媒中でスターラー等の弱い攪拌にとどめてもよく、機械的解繊を行ってもよい。機械的解繊により解繊時間の短縮が可能になる。
機械的解繊の方法は、特に限定されないが、例えば、酸化セルロースを十分に溶媒で洗浄した後、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、二重円筒型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、水流対抗衝突型分散機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー、及び一軸又は多軸混錬機等の公知の混合・攪拌装置が挙げられ、これらを単独又は2種類以上組合せて溶媒中で処理することで、酸化セルロースをナノ化して、ナノセルロースを製造することができる。
解繊処理に使用する溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキサイド等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。
前記エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
前記ケトン類としては、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
溶媒として有機溶剤を選択することにより、前記工程で得られた酸化セルロース及びそれを解繊して得られたナノセルロースの単離が容易となる。また、有機溶剤中に分散したナノセルロースが得られるため、有機溶剤に溶解する樹脂やその樹脂原料モノマー等との混合が容易となる。
ナノセルロースの平均繊維長は、100nm以上700nm以下であることが好ましく、100nm以上400nm以下であることがより好ましい。平均繊維長が100nm以上700nm以下であることにより、塗工する際の加工液が均一であり作業性が高く、適度な流動性が得られることから均一に塗工でき、また、基材への結着に優れる傾向にあり、100nm以上400nm以下であると、それらはさらに優れる傾向にある。
ナノセルロースの平均繊維幅は、2nm以上10nm以下であることが好ましく、2.5nm以上6nm以下であることがより好ましい。平均繊維幅が2nm以上10nm以下であることにより、塗工する際の加工液が均一であり作業性が高く、均一に塗工でき、また、基材への結着に優れる傾向にある。
ナノセルロースの平均繊維長及び平均繊維幅を上記の範囲に調整する方法としては、例えば、上述した酸化セルロースを解繊処理してナノ化させる工程における条件を調整すること等が挙げられる。
平均繊維幅及び平均繊維長は、ナノセルロースの濃度が概ね1~10ppmとなるようにナノセルロースと水とを混合し、十分希釈したセルロース水分散体をマイカ基材上で自然乾燥させ、走査型プローブ顕微鏡を用いてナノセルロースの形状観察を行い、得られた像より任意の本数の繊維を無作為に選択し、形状像の断面高さ=繊維幅とし、周囲長÷2=繊維長とすることにより算出した値である。このような平均繊維幅及び平均繊維長の算出には、画像処理のソフトウェアを用いることができる。このとき画像処理の条件は任意であるが、画像処理の条件によって同一画像であっても算出される値に差が生じる場合がある。画像処理の条件による値の差の範囲は、平均繊維長については±100nmの範囲内であることが好ましい。条件による値の差の範囲は、平均繊維幅については±10nmの範囲内であることが好ましい。より詳細な測定方法は、後述の実施例に記載の方法に従う。
本発明に用いられるナノセルロースあるいは酸化セルロースは、セルロースを構成するグルコピラノース環の水酸基のうち少なくとも2個が酸化された構造を有することが好ましい。より具体的には、グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有する。また、上記ナノセルロースあるいは酸化セルロースにおけるグルコピラノース環の第6位の水酸基は酸化されず、水酸基のままであることが好ましい。なお、グルコピラノース環におけるカルボキシ基の位置はモデル分子として酸化レーヨンを用いた溶液NMRスペクトルと酸化セルロースの固体13C-NMRスペクトルの比較により解析することができる。
レーヨンはセルロースと同一の化学構造を持ち、その酸化物(酸化レーヨン)は水溶性である。酸化レーヨンを重水に溶かして溶液一次元13C-NMR測定を行うことで165~185ppmにカルボキシ基に帰属される炭素のピークが観察される。本発明で用いる、原料セルロースを次亜塩素酸又はその塩で酸化して得られた酸化セルロースあるいはナノセルロースの一態様では、このケミカルシフト範囲に2本のシグナルが出現する。さらに、溶液二次元NMR測定によって、カルボキシ基は2位と3位に導入されたものと決定することができる。
原料セルロースを次亜塩素酸又はその塩で酸化して得られる酸化セルロースあるいはナノセルロースの固体13C-NMRでは、カルボキシ基の導入量が多い場合は165~185ppmに2本のシグナルが出現し、カルボキシ基導入量が少ない場合には非常にブロードなシグナルが出現しうる。酸化レーヨンの結果からわかるように、2位と3位に導入されたカルボキシ基炭素のシグナルは近接しており、分解能の低い固体13C-NMRでは2本のシグナルの分離が不十分となる。よって、カルボキシ基導入量が少ない場合にはブロードなシグナルとして観察される。つまり、固体13C-NMRスペクトルでは、165~185ppmに出現するピークの広がりを評価することで2位と3位にカルボキシ基が導入されていることを確認できる。
すなわち、固体13C-NMRスペクトルにおける165ppm~185ppmの範囲のピークにベースラインを引いて、全体の面積値を求めた後、ピークトップで面積値を垂直分割して得られる2つのピーク面積値の比率(大きな面積値/小さな面積値)を求め、該ピーク面積値の比率が1.2以上であればブロードなピークであるといえる。
また、上記ブロードなピークの有無は、165ppm~185ppmの範囲のベースラインの長さLと、上記ピークトップからベースラインへの垂線の長さL’との比によって判断することができる。すなわち、比L’/Lが0.1以上であれば、ブロードなピークが存在すると判断できる。上記比L’/Lは、0.2以上であってもよく、0.3以上であってもよく、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよい。比L’/Lの上限値は特に制限されないが、通常3.0以下あればよく、2.0以下であってもよく、1.0以下であってもよい。
また、上記グルコピラノース環の構造は、Sustainable Chem. Eng. 2020, 8, 48, 17800-17806に記載の方法に準じて解析することにより決定することもできる。
本発明に用いられるナノセルロースあるいは酸化セルロースがカルボキシ基を含むとき、塩型、プロトン型、及び修飾基による変性型の態様を包含する。修飾基としては、ナノセルロースあるいは酸化セルロースが有するカルボキシ基や水酸基とイオン結合又は共有結合を形成し得る化合物によるものであれば、特に限定されない。カルボキシ基の態様を調整することによりナノセルロースあるいは酸化セルロースの物性を調整できる。イオン結合を形成し得る修飾基を有する化合物として、例えば第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、及びホスホニウム化合物が挙げられる。共有結合を形成し得る修飾基を有する化合物として、例えばアルコール、イソシアネート化合物、及びエポキシ化合物が挙げられる。
<分散媒>
本発明の微粒子用バインダー組成物は、ナノセルロースを分散させる分散媒を含んでいてもよい。したがって、本発明の実施態様の一つは、ナノセルロース及び分散媒を含有する、微粒子用バインダー組成物である。本発明の微粒子用バインダー組成物に用いられる分散媒としては、ナノセルロースを分散させるものであれば特に制限されない。
分散媒としては、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキサイド等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。
前記エーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
前記ケトン類としては、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
本発明の微粒子用バインダー組成物は、微粒子を配合して加工液とすることができる。したがって、本発明の態様の一つは、本発明の微粒子用バインダー組成物と、微粒子とを含む、加工液である。本発明の加工液は、ナノセルロースと、分散媒と、微粒子とを含むともいえる。
本発明の微粒子用バインダー組成物において、分散媒を含むとき、ナノセルロースに対する分散媒の割合は、特に制限されない。
また、本発明の加工液中においても、ナノセルロースに対する分散媒の割合は、特に制限されない。このとき、加工液中のナノセルロース量は、分散媒を追加又は留去することにより、基材の種類や微粒子の量に応じて適宜調整すればよい。
本発明の加工液におけるナノセルロースの割合は、基材の種類や微粒子の量に応じて適宜調整すればよいが、加工液全量に対して、通常0.01質量%以上であればよく、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。ナノセルロースの割合が0.01質量%以上であることにより、無機微粒子等の微粒子を、繊維に効率良く結着させることができる傾向にある。また、ナノセルロースの割合が0.01質量%以上であることにより、加工液中での微粒子の沈降を抑えることができ、微粒子用バインダー組成物は作業性が高くなる傾向にある。
本発明の加工液におけるナノセルロースの割合の上限は、特に制限されず、通常50質量%以下であればよく、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。ナノセルロースの割合が50質量%以下であることにより、無機微粒子等の微粒子の機能を十分に発現させることができる傾向にある。
<微粒子>
本発明における微粒子は、粒径1nm以上1000μm以下の粒子を含む。本発明における微粒子は、無機微粒子であることが好ましい。
本発明における微粒子のメジアン径は、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.05μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。本発明における微粒子のBET比表面積は、10m2/g以上2000m2/g以下であることが好ましく、10m2/g以上1000m2/g以下であることがより好ましく、50m2/g以上1000m2/g以下であることがさらに好ましい。
メジアン径及びBET比表面積が上記範囲であることにより、加工液中での微粒子の沈降を一層抑えることができ、また、基材への結着性を一層高められる傾向にある。
メジアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。また、BET比表面積は、比表面積細孔分布測定装置により測定することができる。メジアン径及びBET比表面積は、より詳細には実施例に記載の方法によって測定することができる。
無機微粒子としては、特に制限されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、炭素、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、白金等の金属の金属単体、及び、このような金属を少なくとも1種含む金属化合物が挙げられる。上記金属化合物は、酸化物、塩化物、ハロゲン化物(臭化物、フッ化物等)、無機酸塩(硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩等)、及び有機酸塩(ギ酸塩や酢酸塩等のカルボン酸塩、乳酸塩やリンゴ酸塩等のオキシカルボン酸塩等)であってもよい。
金属化合物としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、無機ガラス、酸化ルテニウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、及びケイ酸銅等が挙げられる。
炭素を含む化合物には、カーボンブラック及びカーボンナノチューブ等も含まれる。
無機微粒子としては、上記のものを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明における微粒子としては、セラミックスも好適に挙げられる。ここでいうセラミックスとは無機物を加熱処理して焼き固めた焼結体を指す。上記無機物としては、特に制限されないが、例えば、炭素等の元素系材料、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、シリカ等の酸化物系材料、ヒドロキシアパタイト等の水酸化物系材料、炭化ケイ素等の炭化物系材料、炭酸塩材料、窒化ケイ素等の窒化物系材料、蛍石等のハロゲン化物系材料、リン酸塩材料等が挙げられる。これらの無機物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
セラミックスの中でも遠赤外線を放射するセラミックスが好ましい。遠赤外線を放射するセラミックスを用いることにより、抗菌作用、消臭作用、及び温度上昇作用を発揮できる傾向にある。遠赤外線を放射するセラミックスは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ等の赤外線放射特性を有する無機物が原料として使用されていることが好ましい。
微粒子としては、消臭作用を有する微粒子(消臭剤ともいう)を用いることができる。消臭剤としては、化学吸着型のように、化学吸着により悪臭成分を吸着したり、悪臭成分と化学結合を形成したりするタイプ、活性炭のように、物理吸着により悪臭成分を吸着するタイプ、光触媒のように、悪臭成分を接触時に分解するタイプが挙げられる。
消臭の対象となる悪臭成分の具体例は、アンモニア、アミン等の塩基性化合物、酢酸、イソ吉草酸等の酸性化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノネナール等のアルデヒド類、硫化水素、及びメチルメルカプタン等の硫黄化合物等がある。
これらの悪臭成分に対する消臭剤としては、無機系消臭剤及び有機系消臭剤が挙げられる。
無機系消臭剤としては、具体的には、4価金属のリン酸塩、ゼオライト、非晶質複合酸化物、Al、Ag、Cu、Zn及びMnから選ばれる原子の少なくとも1種を含有する複合物、水和酸化ジルコニウム及び酸化ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、ハイドロタルサイト系化合物、非晶質活性化合物等が挙げられる。
有機系消臭剤としては、アミン化合物等が挙げられる。
安全性及び変質しにくさの観点から、水に対して不溶性又は難溶性の無機系消臭剤が好ましい。
これらの消臭剤は、1種単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。消臭対象(悪臭成分)の異なる複数の消臭剤を用いることにより、相乗的な効果が得られることもある。例えば、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、二硫化ジメチル等を含む、排泄臭又は腐敗臭(生ごみ等の臭気)に対しては、塩基性ガス用消臭剤及び硫黄系ガス用消臭剤の組み合わせが好適であり、例えば、酢酸及びイソ吉草酸等を含む、汗臭等の体臭に対しては、塩基性ガス用消臭剤及び酸性ガス用消臭剤の組み合わせが好適である。また、塩基性ガス、アセトアルデヒド、酢酸等を含むタバコ臭に対しては、塩基性ガス用消臭剤、酸性ガス用消臭剤、及びアルデヒドガス用消臭剤の組み合わせが適している。2種以上の消臭剤を組み合わせて用いる場合の使用量の割合は、用いる消臭剤の消臭容量や消臭速度等の消臭性能と、目的とする環境のガス濃度(悪臭成分の濃度)により選択することが好ましい。例えば、2種の消臭剤を使用して、複数の悪臭成分を含む悪臭ガスを消臭する場合、十分な消臭効果を得るためのその質量比は、20:80~80:20である。なお、消臭容量とは、消臭剤1gが消臭可能な標準状態の悪臭成分の量(mL)を意味し、この値が大きいほど、消臭フィルターにおける消臭効果の持続性を得ることができる。
次に、本発明で好適に用いることができる消臭剤は以下のとおりである。
(A)4価金属のリン酸塩
4価金属のリン酸塩は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。この化合物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、塩基性ガスに対する消臭効果に優れる。
ab(PO4c・nH2O (1)
(式中、Mは、4価の金属原子であり、a、b及びcは、式:a+4b=3cを満たす整数であり、nは0又は正の整数である。)
上記一般式(1)におけるMとしては、Zr、Hf、Ti、Sn等が挙げられる。
4価金属のリン酸塩の好ましい具体例としては、リン酸ジルコニウム(Zr(HPO42・H2O)、リン酸ハフニウム、リン酸チタン、リン酸スズ等が挙げられる。これらの化合物には、α型結晶、β型結晶、γ型結晶等、種々の結晶系を有する結晶質のものと非晶質のものがあるが、いずれも好ましく用いることができる。
(B)アミン化合物
アミン化合物は、好ましくは、ヒドラジン系化合物又はアミノグアニジン塩である。これらの化合物は、アルデヒド系ガスと反応することから、アルデヒド系ガスに対する消臭効果に優れる。ヒドラジン系化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジドが例示され、アミノグアニジン塩としては、アミノグアニジン塩酸塩、アミノグアニジン硫酸塩、アミノグアニジン重炭酸塩等が例示される。なお、これらのアミン化合物は、担体に担持された消臭剤を構成することができる。この場合の担体は、通常、無機化合物であり、具体的には、後述されるゼオライト、非晶質複合酸化物や、シリカゲル等が例示される。なお、ゼオライト及び非晶質複合酸化物は、いずれも、塩基性ガスに対する消臭効果を有するので、これらを担体として用いた場合には、アルデヒド系ガス及び塩基性ガスの両方に対して有効である。
(C)ゼオライト
ゼオライトは、好ましくは、合成ゼオライトである。上記ゼオライトは、水に対して不溶性又は難溶性であり、塩基性ガスに対する消臭効果に優れる。ゼオライトの構造は、多様であるが、公知のゼオライトは、いずれも使用でき、構造としては、A型、X型、Y型、α型、β型、ZSM-5、アモルファス等がある。
(D)非晶質複合酸化物
非晶質複合酸化物は、上記ゼオライト以外の化合物であり、好ましくは、Al23、SiO2、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、ZrO2、TiO2、WO2、CeO2、Li2O、Na2O、及びK2O等から選ばれた少なくとも2種により構成される非晶質の複合酸化物である。この複合酸化物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、塩基性ガスに対する消臭効果に優れる。X2O-Al23-SiO2(Xは、Na、K、及びLiから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子)で示される非晶質複合酸化物が、消臭性能に優れることから、特に好ましい。非晶質であることは、粉末X線回折測定を行ったときに、結晶面に基づく明らかな回折シグナルが認められないことを意味し、具体的には、横軸に回折角、縦軸に回折シグナル強度をプロットしたX線回折チャートに、尖度の高い(いわゆるシャープな)シグナルピークがほとんど現れないものである。
(E)Ag、Cu、Zn、及びMnから選ばれる原子の少なくとも1種を含有する複合物
この複合物は、水に対して不溶性又は難溶性の複合物であり、硫黄系ガスに対する消臭効果に優れる。この複合物は、Ag、Cu、Zn、及びMnから選ばれる原子の少なくとも1種、並びに、該原子を含有する化合物、から選ばれた少なくとも1種と、他の材料とからなる複合材料である。Ag、Cu、Zn、及びMnのうちの少なくとも1種の原子を含有する化合物は、好ましくは、酸化物、水酸化物、リン酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、蓚酸、アクリル酸等の有機酸の塩である。従って、この消臭剤(E)として、Ag、Cu、Zn、及びMnから選ばれた少なくとも1種の金属、又は、上記化合物を、他の材料としての無機化合物からなる担体に担持させた、水に不溶性の複合物を用いることができる。担体として好ましい無機化合物は、シリカ、4価金属のリン酸塩、ゼオライト等である。なお、4価金属のリン酸塩及びゼオライトは、塩基性ガスに対する消臭効果を有するので、4価金属のリン酸塩及びゼオライトを担体として用いた場合には、硫黄系ガス及び塩基性ガスの両方に対して有効である。
(F)ジルコニウム化合物
ジルコニウム化合物は、水和酸化ジルコニウム及び酸化ジルコニウムであり、好ましくは、非晶質化合物である。これらの化合物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、酸性ガスに対する消臭効果に優れる。水和酸化ジルコニウムは、オキシ水酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、含水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物と同義の化合物である。
(G)ハイドロタルサイト系化合物
ハイドロタルサイト系化合物は、ハイドロタルサイト構造を有し、好ましくは、下記一般式(2)で表される化合物である。この化合物は、水に対して不溶性又は難溶性であり、酸性ガスに対する消臭効果に優れる。
M1(1-x)M2x(OH)2An- (x/n)・mH2O (2)
(式中、M1は2価の金属原子であり、M2は3価の金属原子であり、xは0より大きく0.5以下の数であり、An-は炭酸イオン、硫酸イオン等のn価の陰イオンであり、mは正の整数である。)
上記ハイドロタルサイト系化合物としては、マグネシウム-アルミニウムハイドロタルサイト、亜鉛-アルミニウムハイドロタルサイト等が挙げられる。これらのうち、酸性ガスに対して、より優れた消臭効果を有することから、マグネシウム-アルミニウムハイドロタルサイトが特に好ましい。なお、ハイドロタルサイトの焼成物、即ち、ハイドロタルサイト化合物を約500℃以上の温度で焼成し、炭酸根や水酸基が脱離することにより得られる化合物もハイドロタルサイト系化合物に含まれる。
(H)非晶質活性酸化物
この非晶質活性酸化物は、上記非晶質複合酸化物を含まない化合物であり、好ましくは、水に対して不溶性又は難溶性であり、酸性ガス又は硫黄系ガスに対する消臭効果に優れる。非晶質活性酸化物としては、具体的には、Al23、SiO2、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、CuO、MnO、ZrO2、TiO2、WO2、及びCeO2等が挙げられる。また、表面処理された活性酸化物を用いることもできる。表面処理物の具体例としては、オルガノポリシロキサンで表面処理した活性酸化物、アルミニウム、珪素、ジルコニウム又はスズの酸化物あるいは水酸化物で表面を被覆した活性酸化物が挙げられる。オルガノポリシロキサン等の有機系材料で表面処理する方が無機系材料で表面処理するよりも、消臭性能が高いので好ましい。
微粒子としては、抗アレルゲン作用を有する微粒子(抗アレルゲン剤ともいう)を用いることができる。抗アレルゲン剤としては、酸点濃度の高い無機物質を好適に挙げることができる。本明細書における酸点濃度の高い無機物質とは、その表面に多くの酸点をもつ固体である。酸点濃度の高い無機物質としては、特に限定されないが、例えば、非晶質ケイ酸マグネシウム、α型リン酸ジルコニウム、層状リン酸チタニウム、活性アルミナ、及び活性チタニア等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗アレルゲン作用は、コナヒョウヒダニアレルゲン(一般的にDerf2と呼ばれるアレルゲン)及びスギ花粉アレルゲン(一般的にCryj1と呼ばれるアレルゲン)等の作用を具体的に挙げることができる。抗アレルゲン効果は、上記アレルゲンを用いるELISA法のサンドイッチ法により評価することができる。
コナヒョウヒダニアレルゲンを用いた場合の試験操作は次のとおりである。
コナヒョウヒダニアレルゲン(Derf2)特異的抗体(15E11抗体、アサヒビール(株)製)を用いて常法により抗体コ-トウェルを作製する。続いて、試料を3mg秤量し、抗原希釈液で40ng/mLに調製したコナヒョウヒダニアレルゲン(Derf2)を500μL添加する。混合物を良く攪拌して、試料とアレルゲンを接触させた後、遠心沈降させ、上澄み液を回収し、ブロッキング剤で処理してある15E11抗体コ-トウェルに添加して室温で静置する。1時間後試料を捨て、各ウェルを洗浄バッファ-で洗浄し、洗浄バッファ-で200ng/mLに希釈した西洋ワサビペルオキシダ-ゼ標識抗Derf2モノクロ-ナル抗体13A4PO(アサヒビ-ル(株)製)を各ウェルへ添加し室温で静置する。1時間後抗体液を捨て、各ウェルを洗浄バッファ-で洗浄し、基質液を各ウェルへ添加して室温で静置する。5分後に2N硫酸を加え反応を停止させ、490nmの吸光度を測定する。結果は、試料を用いずに評価を行うことで吸光度に対するアレルゲン量の関係を求め、各種試料を評価した場合の吸光度から残存アレルゲン量を求め、<式1>から算出することにより各種試料のアレルゲン不活性化率%として表される。アレルゲン不活性化率(%)=(1-残存アレルゲン量/初期アレルゲン量)×100<式1>
微粒子としては、抗ウイルス作用を有する微粒子(抗ウイルス剤ともいう)を用いることができる。
抗ウイルス剤は、抗ウイルス作用を有するものであれば、特に制限されない。抗ウイルス剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、白金、亜鉛化合物、銀化合物、銅化合物、金属もしくは金属酸化物が担持された金属酸化物粒子、金属イオンでイオン交換されたゼオライト、及び銅の錯体等が挙げられる。
抗ウイルス作用の評価は、本発明の組成物又は加工液をポリエステル生地にディップコーティングして得られた抗ウイルス製品(抗ウイルス加工生地)を評価することにより行うことができる。具体的には、洗濯前又は洗濯後(洗濯とは、JIS L0217 103法による洗濯3回後である)の抗ウイルス加工生地0.4gに、ウイルス感染価が2×104PFU/mLのA型インフルエンザウイルス液0.2mLを浸透接種し、25℃で2時間静置する。その後、ウイルス液を回収し、この回収液をプラック数測定法に供し、ウイルス感染価を計測する。また、2時間静置前の接触液に対しても、ウイルス感染価を計測する。
抗ウイルス効果は、下記式で得られる抗ウイルス活性値で評価することができる。
抗ウイルス活性値=Log(接種直後のウイルス感染価)-Log(2時間後のウイルス感染価)
抗菌剤としては、特に制限されず、例えば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン、錫イオン等の抗菌作用を有する金属イオンをゼオライト等の無機担体に内包させた無機系抗菌微粒子、酸化チタン系無機系抗菌微粒子等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
防カビ剤としては、特に制限されず、例えば、金属成分を含む防カビ剤、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、シリカ、抗菌性ガラス等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
防カビ剤における金属成分としては、例えば、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、コバルト、ニッケル、白金、銅、銀、亜鉛、カドミウム、水銀等が挙げられる。これらの金属成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの金属成分の中でも、銀、銅、亜鉛が好ましい。金属成分は、多孔質担体等の担体に担持されていてもよい。担体としては、例えば、ゼオライト、シリカ、ガラス、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム等)、リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム等)等が挙げられる。
微粒子としては、機能剤を徐放する作用を有する微粒子(徐放性材料ともいう)を用いることができる。ここでいう徐放性材料とは、当該徐放性材料が含む機能剤を徐々に放出する材料を指す。徐放性材料の態様としては、例えば、機能剤を担体に担持した態様、及び機能剤がナノあるいはマイクロカプセルに内包された態様等を挙げることができる。
機能剤を担体に担持させた態様における担体としては、特に制限されず、例えば、層状無機化合物、多孔質粒子、及び層状無機化合物の層間に架橋基及び/又は修飾基を有する層間修飾層状無機化合物等を挙げることができる。
ここで上記層状無機化合物としては、グラファイト、層状金属カルコゲン化物、層状金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ニオブを主体とする層状ペロブスカイト化合物、チタン・ニオブ酸塩、モリブデン酸塩等)、層状金属オキシハロゲン化物、層状金属リン酸塩(例えば、層状アンチモンリン酸塩等)、層状粘土鉱物、層状ケイ酸塩(例えば、雲母、スメクタイト族(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト等)、カオリン族(カオリナイト等)、マガディアイト、ケニヤアイト、カネマイト等)及び層状複水酸化物等が挙げられる。層間修飾層状無機化合物としては、例えば、国際公開2019/146304号等に記載されるような、層状無機化合物の層間に有機無機複合架橋構造を有する層間架橋型層状無機化合物、及び層状無機化合物の層間をシリル基等の有機無機複合基で修飾した層間修飾層状無機化合物を挙げることができる。
ナノあるいはマイクロカプセルは、カプセルに内包される芯物質と当該芯物質を内包する壁材とから構成されるものであり、機能剤が芯物質に相当する。上記壁材を構成する成分は、マイクロカプセルに封入する芯物質や徐放時間等の条件に応じて適宜選択すればよい。
徐放性材料が含み得る機能剤としては、無機系成分、有機系成分、及びそれらの混合成分のいずれであってもよく、例えば、消臭剤、抗アレルゲン剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、防カビ剤、香料、芳香剤、農薬、植物ホルモン、除草剤、害虫や害獣の忌避剤、殺虫剤、殺菌剤、防虫剤、防腐剤、防塵剤、肥料、医薬品、医薬部外品、化粧品、酸化防止剤、潤滑剤、保湿剤、食品添加剤等を挙げることができ、これらに限定されない。
本発明の加工液における微粒子の割合は、基材の種類や用途に応じて適宜調整すればよいが、加工液全量に対して、通常0.01質量%以上であればよく、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。微粒子の割合が0.01質量%以上であることにより、結着させることができる傾向にある。
本発明の加工液における微粒子の割合の上限は、特に制限されず、通常50質量%以下であればよく、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。微粒子の割合が50質量%以下であることにより、微粒子が加工液中で沈降することなく分散し、作業性が高まる傾向にある。
本発明におけるナノセルロースと微粒子との質量比(微粒子の質量に対するナノセルロースの質量の割合:ナノセルロース/微粒子)は、使用する微粒子の種類等に応じて適宜調整すればよいが、通常0.01~50の範囲であればよい。上記質量比は、好ましくは0.05~20であり、より好ましくは0.05~10であり、さらに好ましくは0.05~5である。
本発明の微粒子用バインダー組成物又は加工液は、その他の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、多官能架橋剤等が挙げられる。多官能架橋剤は、ナノセルロース及び/又はバインダー組成物に含まれる官能基と反応して架橋構造を形成するものであれば特に制限されない。多官能架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、多価金属化合物(塩化アルミニウム、酢酸亜鉛等)、尿素ホルムアルデヒド樹脂及び/又はメラミンホルムアルデヒド樹脂、水分散性フェノール樹脂、N-メチロール化合物、メタキシレンジアミン、メチロールメラミン化合物、ヒドラジド化合物、グリオキザール化合物、ビニルスルホン化合物等が挙げられる。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、水分散性のポリイソシアネートが挙げられ、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、キシリレン-1,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,3’-ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添加トリレンジジイソシアネート、水添加キシリレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及びこれらの化合物と活性水素基含有化合物との反応によるNCO基末端化合物等が挙げられる。
また、ポリイソシアネートとして、有機イソシアネートにポリオールを付加させるとともにイソシアヌレート化触媒を加え、イソシアヌレート環構造を導入したポリイソシアネートの代わりに、ジイソシアネートの重合体や2官能以上のポリオール等とジイソシアネートあるいはポリメトリック体との反応で得られるプレポリマー的なイソシアネート化合物を用いてもよい。これらのポリイソシアネートは単独又は2種以上の混合物で使用することができる。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型等の二官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、3官能型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;TGDDM、TGIC、ヒダントイン型、TETRAD-D型、アミノフェノール型、アニリン型、トルイジン型等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;脂環型エポキシ樹脂;東レ・ファインケミカル(株)製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル-ブタジエンゴム又はNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型が好ましい。これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ化合物としては、水分散性エポキシ樹脂を用いることもできる。水分散性エポキシ樹脂の具体例としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物としては、ジイソシアネート類を脱二酸化炭素縮合反応して得られる、末端イソシアネート基が親水性基で封止されたカルボジイミド化合物が好ましい。上記カルボジイミド化合物は、例えば、特開平10-316930の実施例に示す方法で合成することができる。
また、上記カルボジイミド化合物は市販のものを使用してよい。上記カルボジイミド化合物は、例えば、日清紡より「カルボジライト」(登録商標)の商品名で市販されている。市販されているカルボジライトは、例えば商品名カルボジライトV-02、V-02-L2、V-04、V-06及びSV-02等がある。
上記オキサゾリン化合物としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手し易く好適である。
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン系重合体であってもよく、このようなオキサゾリン系重合体としては、水溶性タイプでは、エポクロス(登録商標)WS-500、WS-700、エマルションタイプでは、エポクロスK-2010、K-2020、K-2030((株)日本触媒製)等が挙げられる。
尿素ホルムアルデヒド樹脂及びメラミンホルムアルデヒド樹脂中の官能基はいずれも水酸基と反応するものであり、高分子バインダー分子間、あるいはナノセルロースと高分子バインダーとの間の結合を形成することができる。
上述した、メタキシレンジアミン、メチロールメラミン化合物、ヒドラジド化合物、グリオキザール化合物、ビニルスルホン化合物は、水溶性化合物の架橋剤である。これらの中でも、反応の進行が比較的緩やかであるため、ビニルスルホン基を複数持つ化合物が好ましい。
ビニルスルホン化合物としては、VS-B(K-FJC)、VS-C(K-FJD)(富士フイルム(株)製)等の市販品を使用することもできる。
多官能架橋剤等のその他の添加剤の添加量は、特に制限されず、適宜調整すればよい。
本発明の微粒子用バインダー組成物又は加工液は、上述のとおり、微粒子と繊維との結着に好適に用いることができる。本発明の態様の一つは、本発明の微粒子用バインダーを用いて作製された繊維製品である。本発明の態様の一つは、本発明の加工液を用いて作製された繊維製品である。
本発明の繊維製品は、例えば、本発明の微粒子用バインダー組成物と微粒子とを、任意の量比で混合して加工液を調製し、次いで、加工液を繊維製品に塗布し、任意の温度で乾燥することにより製造することができる。また、本発明の繊維製品は、例えば、本発明の微粒子用バインダー組成物と微粒子とを、任意の量比で混合して加工液を調製し、次いで、加工液に繊維製品を浸漬し、任意の温度で乾燥することにより製造することができる。
以下、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(ナノセルロースの平均繊維長と平均繊維幅の測定方法)
得られたナノセルロース分散液を純水で1000~1000000倍に希釈し、それをマイカ基材上で自然乾燥させ、オックスフォード・アサイラム製 走査型プローブ顕微鏡「MFP-3D infinity」を用いて、ACモードで、ナノセルロースの形状観察を行った。
繊維長については、得られた画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」を用いて二値化し解析を行った。繊維100本以上について、繊維長=「周囲長」÷2として平均繊維長を求めた。
繊維幅については、「MFP-3D infinity」に付属されているソフトウェアを用いて、繊維50本以上について、形状像の断面高さ=繊維幅として平均繊維幅を求めた。
(分散安定性)
100mLメスシリンダーに加工液100mLを入れて25℃にて24時間静置させ上澄みの生成を目視で評価した。分散安定性は以下の評価基準にしたがって評価した。
A:上澄みが見られた。
C:上澄みが見られなかった。
(消臭試験)
悪臭成分として、200ppmに調整したアンモニアガス、又は、120ppmに調整した硫化水素を、消臭フィルターの1面側から他面側へ通過させることにより実施した。具体的には、袋に収容した悪臭成分を、(株)ガステック製気体採取器「MODEL GV-100」を用いて吸引させつつ、経路にて面積5cm2の消臭フィルターを通過させた後、気体検知管により通過ガス中の悪臭成分の濃度を測定した。消臭率は以下の式より算出した。
消臭率=(袋に収容した悪臭成分濃度-通過ガスの悪臭成分濃度)/袋に収容した悪臭成分濃度×100
(加工液の状態)
加工液をスパチュラで軽く撹拌した後に、すくい上げて水平から垂直に傾けた際の液の流動性と、静置7日後の沈降の有無を目視にて評価した。
A:傾けて直ぐに液が流れだした。かつ沈降は無かった。
B:傾けて5秒以内に液が流れだした。かつ沈降は無かった。
C:傾けて10秒経っても液が流れず、かつ沈降は無かった。
(加工の均一性)
処理済み織布について、塗布の不均一な箇所(加工ムラ)を目視で評価した。
A:目視で加工ムラが見えなかった。
C:目視で加工ムラが見えた。
(結着性)
処理済み織布を指で10回弾いた際の粉落ち量を評価した。
A:粉落ちがなかった。
B:塗布した量の1割以下の粉落ちがあった。
C:塗布した量の1割超過の粉落ちがあった。
<実施例1>
セルロース系原料として、針葉樹パルプ(SIGMA-ALDRICH社 NIST RM 8495, bleached kraft pulp)を5mm角にハサミで切断し、大阪ケミカル(株)製「ワンダーブレンダーWB-1」にて、25,000rpmで1分間処理して、綿状に機械解繊した。
ビーカーに、有効塩素濃度が42質量%である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を350g入れ、純水を加えて撹拌し、有効塩素濃度を21質量%とした。そこへ、35質量%塩酸を加えて撹拌し、pH11の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液を新東科学(株)製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌しながら恒温水浴にて30℃に加温した後、上記セルロース系原料を50g加えた。
セルロース系原料を供給後、同じ恒温水槽で30℃に保温しながら、48質量%水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを11に調整して、30分間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。
反応終了後、目開き134μmのPTFE製メッシュフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、得られた酸化セルロースを純水で洗浄した。
酸化セルロースに純水を加え、5%分散液を作製し、(株)スギノマシン製の超高圧ホモジナイザー「スターバースト ラボ」(以下、スターバースト ラボという)にて200MPaで、10パスで処理し、ナノセルロース水分散体(微粒子用バインダー組成物)を得た。
なお、超高圧ホモジナイザーでは、内蔵された超高圧解繊部に酸化セルロース水分散液を循環通液させて解繊を進める。その解繊部への通液1回分を1パスと呼んでいる。
ナノセルロース中のN-オキシル化合物由来の残留窒素成分は、1.0ppm以下であった。なお、残留窒素成分は、微量全窒素分析装置(日東精工アナリテック(株)製、装置名:TN-2100H)を用いて窒素量として測定し、原料パルプからの増加分として算出した。
セルロースの酸化によるカルボキシ基導入位置を決定するために、まず、レーヨンをモデルとして酸化を行い、酸化レーヨンの固体13C-NMRのスペクトルデータを得た。酸化レーヨンの固体13C-NMRのスペクトルデータには、165~185ppmに2本のシグナルが出現していた。この165~185ppmに観測される2本のシグナルは、2位と3位に導入されたカルボキシ基に相当する。
次に、実施例1で得られた酸化セルロースに由来するナノセルロースを凍結乾燥させた後、23℃、50%RHで24時間以上放置した試料の固体13C-NMRを測定し、そのスペクトルデータと酸化レーヨンのスペクトルデータを比較した。その結果、上記酸化セルロースに由来するナノセルロースでも165~185ppmに2本のシグナルが観測されたことから、グルコピラノース環の2位と3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入されていることが確認された。固体13C-NMRの測定条件を以下に示す。
(1)試料管:ジルコニア製管(4mm径)
(2)磁場強度:9.4T(1H共鳴周波数:400MHz)
(3)MAS回転数:15kHz
(4)パルスシーケンス:CPMAS法
(5)コンタクトタイム:3ms
(6)待ち時間:5秒
(7)積算回数:10000~15000回
(8)測定装置:JNM ECA-400(日本電子社製)
<実施例2>
15パス処理したこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。ナノセルロース中のN-オキシル化合物由来の残留窒素成分は、1.0ppm以下であった。
<実施例3>
20パス処理したこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。ナノセルロース中のN-オキシル化合物由来の残留窒素成分は、1.0ppm以下であった。
<実施例4>
25パス処理したこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。ナノセルロース中のN-オキシル化合物由来の残留窒素成分は、1.0ppm以下であった。
参考例5>
セルロース系原料として、実施例1と同じ原料、機械処理条件にて得た綿状の針葉樹パルプを水に加えて0.5%水分散液とし、増幸産業製の微粒摩砕機(スーパーマスコロイダー)にて1500rpmで10パス予備解繊した。その後、スターバースト ラボにて200MPaで40パス処理し、ナノセルロース水分散体(微粒子用バインダー組成物)を得た。これを必要に応じてエバポレーターにて加温濃縮して使用した。ナノセルロース中のN-オキシル化合物由来の残留窒素成分は、1.0ppm以下であった。
<実施例6>
ビーカーに、TEMPO(SIGMA-ALDRICH社)0.8g、臭化ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)5gを入れ、純水5000mLを加えて新東科学(株)製の撹拌機(スリーワンモータ、BL600)にてプロペラ型撹拌羽根を使用して200rpmで撹拌し溶解させた。恒温水浴にて25℃に加温した後、セルロース系原料として、実施例1と同じ原料、機械処理条件にて得た綿状の針葉樹パルプを50g加え、0.1M-水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10の水溶液とした。次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(工業用グレード、有効塩素濃度13.5質量%)131.5gを加え反応を開始させた。次亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給後、同じ恒温水槽で25℃に保温しながら、0.1M水酸化ナトリウムを添加しながら反応中のpHを10に調整して、120分間、撹拌機にて同条件で撹拌を行った。
反応終了後、目開き20μmのPTFE製メッシュフィルターを使用して、吸引ろ過により生成物を固液分離し、得られた酸化セルロースを純水で洗浄した。
酸化セルロースに純水を加え0.5%分散液を作製し、スターバースト ラボにて200MPaで3パス処理し、ナノセルロース水分散体(微粒子用バインダー組成物)を得た。これを必要に応じてエバポレーターにて加温濃縮して使用した。
なお、ナノセルロース中のN-オキシル化合物由来の残留窒素成分は、5ppmであった。
[製造例1及び2]
実施例1及び4のナノセルロース水分散体(微粒子用バインダー組成物)をそれぞれ、ケイ酸アルミニウム粉1wt%、ナノセルロース1wt%となるように水を加えて撹拌し加工液を作製した。ケイ酸アルミニウム粉加工量が1.0g/m2となるように織布(ポリエステル100%)に加工液を塗布し乾燥した。なお、上記ケイ酸アルミニウム粉は、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置「MS2000」(以下、MS2000という)で測定したメジアン径が20μmであり、カンタクローム・インスツルメンツ社製比表面積細孔分布測定装置「AUTOSORB-1」(以下、AUTOSORB-1という)で測定したBET比表面積が600m2/gである粒子であった。
加工液を分散安定性試験に、処理済み織布をアンモニアガスでの消臭試験に供した。
[比較製造例1]
バインダーとして東亞合成(株)製アクリルバインダー商品名(以下、NW-7090という)を使用した以外は製造例1と同じとした。
[製造例3~4、比較製造例2]
ケイ酸アルミニウム粉に替えてケイ酸銅粉を使用したこと、及び、硫化水素ガスでの消臭試験を行ったこと以外は、製造例1~2、及び比較製造例1と同じとした。なお、上記ケイ酸銅粉は、MS2000で測定したメジアン径が3μmであり、AUTOSORB-1で測定したBET比表面積が500m2/gである粒子であった。
[製造例5~6、比較製造例3]
ケイ酸アルミニウム粉に替えて酸化亜鉛粉を使用したこと、硫化水素ガスでの消臭試験を行ったこと以外は、製造例1~2、及び比較製造例1と同条件とした。なお、上記酸化亜鉛粉は、MS2000で測定したメジアン径が2μmであり、AUTOSORB-1で測定したBET比表面積が100m2/gである粒子であった。
[製造例7~10、12、参考製造例11
実施例1~4、6、製造例5のナノセルロース水分散体をそれぞれ、ケイ酸アルミニウム粉5wt%、ナノセルロース0.5wt%となるように水を加えて撹拌し加工液を作製した。ケイ酸アルミニウム粉加工量が5g/m2となるように織布(ポリエステル100%)に加工液を塗布し乾燥した。
加工液を分散安定性試験に、処理済み織布を消臭試験に供した。また、ナノセルロース水分散体を、バインダーとして加工液の状態、加工の均一性、及び結着性の試験に供した。
[比較製造例4]
バインダー組成物として東亞合成(株)製アクリルバインダー(NW-7090)を使用したこと以外は製造例3と同様に行った。
なお、表中の点数は、消臭率が95%以上を4点、90%以上95%未満を2点、80%以上90%未満を1点、80%以下をDとし、Aを2点、Bを1点、Cを0点とし、加工液の状態、加工の均一性、結着性、消臭率を点数化した。点数のランクは、以下を基準とした。
A:8~10点
B:5~7点
C:2~4点
D:1点未満もしくは消臭率が80%以下
本発明の微粒子用バインダー組成物は、微粒子を接着する分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. ナノセルロースを含有する、微粒子を結着させるための組成物であって、
    前記ナノセルロースの平均繊維長が、100nm以上700nm以下であ
    前記微粒子が、粒径1nm以上1000μm以下の粒子を含む、
    前記組成物。
  2. 微粒子と繊維との結着に用いる、
    請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ナノセルロースが、酸化ナノセルロースを含む、
    請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記ナノセルロースが、グルコピラノース環の第2位及び第3位の水酸基が酸化されてカルボキシ基が導入された構造を有する、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記微粒子が、無機微粒子である、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記微粒子が、セラミックスである、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記微粒子が、消臭剤、抗アレルゲン剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、防カビ剤、及び徐放性材料からなる群より選択される少なくとも1種である、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物と、微粒子とを含む、加工液であって、
    前記微粒子が、粒径1nm以上1000μm以下の粒子を含む、
    加工液
  9. 請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を用いて作製された繊維製品。
  10. 請求項8に記載の加工液を用いて作製された繊維製品。
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