JP7797252B2 - 操舵制御装置 - Google Patents

操舵制御装置

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Description

本発明は、操舵制御装置に関する。
従来、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が存在する。操舵装置は、ステアリングシャフトに付与される操舵反力の発生源である反力モータ、および転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有している。車両の走行時、操舵装置の制御装置は、反力モータに対する給電制御を通じて操舵反力を発生させるとともに、転舵モータに対する給電制御を通じて転舵輪を転舵させる。
たとえば、特許文献1の制御装置は、ステアリングホイールの操舵角に基づき、舵角比に応じたピニオン角の目標値を演算する。ピニオン角は、転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトの回転角である。舵角比は、操舵角に対する転舵角の比である。制御装置は、転舵モータの回転角に基づき演算されるピニオン角が、ピニオン角の目標値に追従するように、ピニオン角のフィードバック制御を実行する。
また、従来、車両の駐車支援を行う駐車支援装置が存在する。たとえば特許文献2の駐車支援装置は、カメラおよびバックガイドモニタを有している。カメラは、車両の後方を撮影する。バックガイドモニタは、車両が後退駐車される場合、駐車スペースに目標駐車マーカを設定する。目標駐車マーカとステアリングの操舵とは、互いに連動する。運転者は、目標駐車マーカを確認しながらステアリングの操舵量を決定する。
特開2020-142596号公報 特開2011-230594号公報
ステアバイワイヤ方式の操舵装置では、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達が分離されている。このため、バックモニタは、たとえば転舵輪の転舵状態に基づき、車両の後退を支援するためのガイドを表示することが考えられる。この場合、つぎのようなことが懸念される。
すなわち、制御装置は、操舵装置の便宜のために、あるいは製品仕様の観点から、ステアリングの操舵とは無関係に、意図的に転舵角を変更するための制御を実行することがある。ステアリングの操舵とは無関係に変更される転舵角がガイド表示に反映される場合、運転者に違和感を与えるおそれがある。
上記課題を解決し得る操舵制御装置は、ステアリングホイールとの間の動力伝達が分離された車両の転舵輪を転舵させるための転舵力を発生する転舵モータに対する給電を制御するために、前記転舵輪の転舵動作に連動して回転するシャフトの目標角度を前記ステアリングホイールの操舵状態に応じて演算し、前記目標角度に実角度を追従させるフィードバック制御を実行する。操舵制御装置は、第1の処理部と第2の処理部とを有している。第1の処理部は、前記ステアリングホイールの操舵状態とは無関係に、前記目標角度を変更するための処理を実行する。第2の処理部は、前記第1の処理部による前記目標角度の変更が前記シャフトの実角度に与える影響を低減あるいは除去することにより、前記車両の走行を支援するためのガイドモニタ機能用の転舵状態量を演算する。前記ガイドモニタ機能は、前記車両のディスプレーに前記車両の予想進路を示すガイド線を表示させる機能を含み、前記転舵状態量は、前記ガイド線の表示を実行するために使用される。
この構成によれば、第2の処理部の処理が実行されることにより、第1の処理部による目標角度の変更の影響が低減あるいは除去されたガイドモニタ機能用の転舵状態量が得られる。この転舵状態量が、車両の走行を支援するためのガイド表示に使用されることにより、ステアリングホイールの操舵状態に応じた転舵状態量に基づくガイドモニタ表示が行われる。このため、車両の走行を支援するためのガイド表示が行われる際、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
上記の操舵制御装置において、前記第2の処理部は、前記第1の処理部の処理に伴う前記目標角度の変化量を演算し、前記目標角度の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより、前記転舵状態量を演算するようにしてもよい。
この構成によれば、第1の処理部の処理に伴うシャフトの目標角度の変化量を、シャフトの実角度、または、ステアリングホイールの操舵状態に基づく目標角度から減算することにより、ガイドモニタ表示の用に供される転舵状態量を簡単に演算することができる。
上記の操舵制御装置において、前記第1の処理部の処理は、車両電源がオンされたとき、現在の前記ステアリングホイールの操舵角に基づき演算される目標角度と、実際の前記転舵輪の転舵状態が反映される前記シャフトの実角度との乖離量であるオフセット角を演算し、前記オフセット角に対して徐変処理を施すことによって前記オフセット角を0へ向けて徐々に変化させつつ、前記徐変処理が施された前記オフセット角を前記目標角度に加算することにより前記目標角度の値を変更する第1の変更処理を実行するようにしてもよい。
この構成によれば、車両電源がオンされたとき、オフセット角が、経時的に0へ向けて徐々に変化しながらシャフトの目標角度に加算される。このため、シャフトの目標角度、ひいては転舵輪の転舵角の急変を抑制することができる。したがって、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
上記の操舵制御装置において、前記第2の処理部の処理は、前記徐変処理が施された前記オフセット角を第1の変化量として取り込み、前記第1の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより前記転舵状態量を演算する処理を含んでいてもよい。
この構成によれば、第1の変化量が、シャフトの実角度、または、ステアリングホイールの操舵状態に基づく目標角度から減算されることにより、第1の変更処理の実行に伴う目標角度の変化の影響が除去または低減された転舵制御量を得ることができる。
上記の操舵制御装置において、前記第1の処理部の処理は、さらに、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトが、定められた高軸力範囲内の位置に移動するとき、前記転舵シャフトの位置が前記高軸力範囲から転舵中立位置側へ外れるように、前記目標角度の値を変更する第2の変更処理を実行するようにしてもよい。
この構成によれば、転舵モータの出力が不足するおそれがある状況の発生を抑えることができる。このため、運転者に転舵モータの出力の不足に起因する違和感を与えることを抑制することができる。
上記の操舵制御装置において、前記第2の処理部の処理は、前記第2の変更処理の実行前後の前記目標角度を取り込み、前記第2の変更処理の実行後の前記目標角度から、前記第2の変更処理の実行前の前記目標角度を減算することにより第2の変化量を演算し、前記第2の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより前記転舵状態量を演算する処理を含んでいてもよい。
この構成によれば、第2の変化量が、シャフトの実角度、または、ステアリングホイールの操舵状態に基づく目標角度から減算されることにより、第2の変更処理の実行に伴う目標角度の変化の影響が除去された転舵制御量を得ることができる。
上記の操舵制御装置において、前記第1の処理部の処理は、さらに、前記転舵モータに発生する残留電流を低減するために、前記目標角度の値を変更する第3の変更処理を実行するようにしてもよい。
この構成によれば、転舵モータに発生する残留電流が低減される。転舵モータの残留電流が低減することにより、残留電流が転舵モータの発生トルクに及ぼす影響を低減することができる。
上記の操舵制御装置において、前記第2の処理部の処理は、前記第3の変更処理の実行前後の前記目標角度を取り込み、前記第3の変更処理の実行後の前記目標角度から、前記第3の変更処理の実行前の前記目標角度を減算することにより第3の変化量を演算し、前記第3の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより前記転舵状態量を演算する処理を含んでいてもよい。
この構成によれば、第3の変化量が、シャフトの実角度、または、ステアリングホイールの操舵状態に基づく目標角度から減算されることにより、第3の変更処理の実行に伴う目標角度の変化の影響が除去された転舵制御量を得ることができる。
上記の操舵制御装置において、前記転舵状態量は、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトの回転角であってもよい。
この構成によるように、転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトは、転舵輪の転舵状態を反映する状態変数である。
本発明の操舵制御装置によれば、車両の走行を支援するためのガイド表示が行われる際、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
操舵制御装置の一実施の形態が搭載されるステアバイワイヤ方式の操舵装置の構成図である。 操舵制御装置の一実施の形態のブロック図である。 一実施の形態における目標ピニオン角演算部のブロック図である。 一実施の形態における調整処理部のブロック図である。
以下、操舵制御装置の一実施の形態を説明する。
<全体構成>
図1に示すように、操舵制御装置1の制御対象は、ステアバイワイヤ式の操舵装置2である。操舵装置2は、操舵機構3と、転舵機構4とを有している。操舵機構3は、ステアリングホイール5を介して、運転者により操舵される機構部分である。転舵機構4は、ステアリングホイール5の操舵に応じて、車両の転舵輪6を転舵させる機構部分である。
操舵機構3は、ステアリングシャフト11と、反力モータ12と、減速機13と、を有している。ステアリングホイール5は、ステアリングシャフト11に一体回転可能に連結される。反力モータ12は、ステアリングシャフト11に付与する操舵反力の発生源である。操舵反力は、ステアリングホイール5の操舵方向と反対方向の力である。反力モータ12は、たとえば三相のブラシレスモータである。減速機13は、反力モータ12の回転を減速し、減速された回転をステアリングシャフト11に伝達する。
転舵機構4は、ピニオンシャフト21と、転舵シャフト22と、ハウジング23と、を有している。ハウジング23は、ピニオンシャフト21を回転可能に支持する。また、ハウジング23は、転舵シャフト22を往復動可能に収容する。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合う。転舵シャフト22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド24を介して、タイロッド25が連結されている。タイロッド25の先端は、転舵輪6が組み付けられた図示しないナックルに連結される。
転舵機構4は、転舵モータ31と、伝動機構32と、変換機構33とを備えている。転舵モータ31は、転舵シャフト22に付与する転舵力の発生源である。転舵力は、転舵輪6を転舵させるための力である。転舵モータ31は、たとえば三相のブラシレスモータである。伝動機構32は、たとえばベルト伝動機構である。伝動機構32は、転舵モータ31の回転を変換機構33に伝達する。変換機構33は、たとえばボールねじ機構である。変換機構33は、伝動機構32を介して伝達される回転を、転舵シャフト22の軸方向の運動に変換する。
転舵シャフト22が軸方向に移動することによって、転舵輪6の転舵角θが変更される。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合っているため、転舵シャフト22の移動に連動して回転する。ピニオンシャフト21は、転舵輪6の転舵動作に連動して回転するシャフトである。
操舵制御装置1は、反力モータ12および転舵モータ31の動作を制御する。操舵制御装置1は、つぎの3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一を含む処理回路を有している。
A1.ソフトウェアであるコンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ。プロセッサは、CPU(central processing unit)およびメモリを含む。
A2.各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の専用のハードウェア回路。ASICは、CPUおよびメモリを含む。
A3.構成A1,A2を組み合わせたハードウェア回路。
メモリは、コンピュータで読み取り可能とされた媒体であって、コンピュータに対する処理あるいは命令を記述したプログラムを記憶している。本実施の形態では、コンピュータは、CPUである。メモリは、RAM(random access memory)およびROM(read only memory)を含む。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを定められた演算周期で実行することによって各種の制御を実行する。
操舵制御装置1は、車載のセンサの検出結果を取り込む。センサは、車速センサ41、トルクセンサ42、回転角センサ43、および回転角センサ44を含む。
車速センサ41は、車速Vを検出する。トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11における減速機13の連結部分を基準として、ステアリングホイール5側に設けられている。トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11に付与される操舵トルクThを検出する。操舵トルクThは、ステアリングシャフト11に設けられるトーションバー42aのねじれ量に基づき演算される。回転角センサ43は、反力モータ12に設けられている。回転角センサ43は、反力モータ12の回転角θを検出する。回転角センサ44は、転舵モータ31に設けられている。回転角センサ44は、転舵モータ31の回転角θを検出する。
操舵トルクTh、反力モータ12の回転角θ、および転舵モータ31の回転角θは、たとえば、ステアリングホイール5を右に操舵する場合は正の値であり、ステアリングホイール5を左に操舵する場合は負の値である。
操舵制御装置1は、各種のセンサの検出結果に基づき、反力モータ12と転舵モータ31とを制御する。操舵制御装置1は、操舵トルクThに応じた操舵反力を反力モータ12に発生させるように、反力モータ12に対する給電を制御する。操舵制御装置1は、ステアリングホイール5の操舵状態に応じて転舵輪6が転舵されるように、転舵モータ31に対する給電を制御する。
<運転支援制御装置45の構成>
車両には運転支援システムが搭載されることがある。運転支援システムは、車両の安全性あるいは利便性をより向上させるための様々な運転支援機能を実現する。車両は、各種の車載システムの制御装置を統括制御する運転支援制御装置45を有している。運転支援制御装置45は、操舵制御装置1と同様に、先の3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一を含む処理回路を有している。
運転支援制御装置45は、その時々の車両の状態に基づき最適な制御方法を求め、その求められる制御方法に応じて各種の車載制御装置に対して個別の制御を指令する。運転支援制御装置45は、運転席などに設けられる図示しないスイッチの操作を通じて、運転支援機能をオンとオフとの間で切り替える。運転支援制御装置45は、CANなどの車載ネットワーク46を介して、操舵制御装置1に接続されている。
運転支援機能は、パーキングアシスト機能を含む。パーキングアシスト機能は、車庫入れなどの駐車の際、運転者の操舵を補助するための機能である。パーキングアシスト機能の実行時、運転支援制御装置45は、操舵制御装置1による操舵制御に介入する。運転支援制御装置45は、パーキングアシスト機能を実行する際、車両の走行状態および車両の周辺状況に基づき、操舵制御装置1に対する指令値θを生成する。
指令値θは、その時々の車両の走行状態および車両の周辺状況に応じて、所定の駐車位置に車両を駐車させるために必要とされる転舵状態量の目標値である。転舵状態量の目標値は、現在の転舵状態量、あるいは現在の転舵状態量の目標値に付加すべき転舵状態量の値である。転舵状態量は、転舵輪6の転舵状態が反映される状態量であって、たとえばピニオン角θである。この場合、指令値θは、ピニオン角θあるいはピニオン角θの目標値に付加すべき角度である。操舵制御装置1は、運転支援制御装置45により生成される指令値θに基づき、転舵モータ31を制御する。
運転支援制御装置45は、車速センサ41により検出される車速Vを取り込む。また、運転支援制御装置45は、操舵制御装置1から転舵状態量を取り込む。運転支援制御装置45は、車速V、および転舵輪6の転舵状態に基づき、車両の状態を認識する。運転支援制御装置45は、車載されるカメラ47に接続されている。カメラ47は、車両の後方を撮影するバックカメラを含む。運転支援制御装置45は、カメラ47を通じて、車両の周辺状況を認識する。
運転支援制御装置45は、HMI(Human Machine Interface)48に接続されている。HMI48は、運転者と運転支援制御装置45との間の情報のやり取りを媒介する。HMI48は、入力装置および出力装置を含む。入力装置は、各種の入力操作を行うボタンおよびタッチパネルを含む。出力装置は、各種の情報を表示するディスプレーを含む。
運転支援制御装置45は、運転支援機能の一つとして、バックガイドモニタ機能を有している。バックガイドモニタ機能は、車両後方の映像をHMI48のディスプレーに表示し、駐車などの後退操作を支援する。運転支援制御装置45は、車両の後退操作が行われるとき、HMI48のディスプレーに、車両後方の映像、およびガイド線を表示させる。運転支援制御装置45は、たとえば変速機のシフトレンジがリバース位置に切り替わることにより、車両の後退操作が行われることを認識する。
ガイド線は、たとえば、車両の予想進路線、車幅延長線、および距離目安線を含む。予想進路線は、ステアリングホイール5の操作あるいは転舵輪6の転舵動作と連動して、車両の進路の目安を示す線である。車幅延長線は、車両をまっすぐ後退させたときの進路の目安を示す線である。距離目安線は、車両の後部からの距離、たとえば0.5メートルあるいは1.0メートルを示す線である。
運転支援制御装置45は、運転支援機能のオンとオフとを切り替えるスイッチの状態、および変速機のシフトレンジに応じて、運転支援要求フラグFの値をセットする。運転支援要求フラグFは、運転者がシステムによる運転支援を要求しているかどうかを示す情報である。運転支援制御装置45は、運転支援機能がオンされるとき、あるいは変速機のシフトレンジがリバース位置に切り替えられるとき、運転支援要求フラグFの値を「1」にセットする。運転支援制御装置45は、運転支援機能がオフされるとき、あるいは変速機のシフトレンジがリバース位置以外であるとき、運転支援要求フラグFの値を「0」にセットする。
<操舵制御装置1の構成>
つぎに、操舵制御装置1の構成について説明する。
図2に示すように、操舵制御装置1は、反力制御を実行する反力制御部50、および転舵制御を実行する転舵制御部60を有している。
反力制御部50は、操舵角演算部51、反力トルク指令値演算部52、および通電制御部53を有している。
操舵角演算部51は、回転角センサ43を通じて検出される反力モータ12の回転角θに基づき、ステアリングホイール5の操舵角θを演算する。
反力トルク指令値演算部52は、反力トルク指令値Tを演算する。反力トルク指令値Tは、反力モータ12に発生させるべき、操舵反力の目標値である。操舵反力は、ステアリングホイール5の操舵方向と反対方向のトルクである。
反力トルク指令値演算部52は、トルクセンサ42を通じて検出される操舵トルクT、および車速センサ41を通じて検出される車速Vを取り込む。反力トルク指令値演算部52は、操舵トルクTおよび車速Vに基づき、アシストトルク指令値を演算する。アシストトルク指令値は、操舵装置2が電動パワーステアリング装置である場合のアシストトルクの目標値に相当する。アシストトルクは、ステアリングホイール5の操舵を補助するための力である。アシストトルク指令値は、ステアリングホイール5の操舵方向と同じ方向のトルクである。操舵トルクTの絶対値が大きいほど、また車速Vが遅いほど、アシストトルク指令値の絶対値は、より大きくなる。
反力トルク指令値演算部52は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θ、および電流センサ65を通じて検出される転舵モータ31の電流Iの値を取り込む。反力トルク指令値演算部52は、ピニオン角θ、および転舵モータ31の電流Iの値に基づき、転舵シャフト22に作用する軸力を演算する。反力トルク指令値演算部52は、演算される軸力をステアリングシャフト11に対するトルクに換算することにより、軸力トルクを演算する。反力トルク指令値演算部52は、アシストトルク指令値から軸力トルクを減算することにより、反力トルク指令値Tを演算する。
通電制御部53は、反力トルク指令値Tに応じた電力を反力モータ12へ供給する。具体的には、通電制御部53は、反力トルク指令値Tに基づき、反力モータ12に対する電流指令値を演算する。通電制御部53は、反力モータ12に対する給電経路に設けられた電流センサ54を通じて、給電経路に生じる電流Iの値を検出する。電流Iの値は、反力モータ12に供給される電流の値である。通電制御部53は、電流指令値と電流Iの値との偏差を求め、当該偏差を無くすように反力モータ12に対する給電を制御する。これにより、反力モータ12は、反力トルク指令値Tに応じたトルクを発生する。
転舵制御部60は、ピニオン角演算部61、目標ピニオン角演算部62、ピニオン角フィードバック制御部63、および通電制御部64を有している。
ピニオン角演算部61は、回転角センサ43を通じて検出される転舵モータ31の回転角θに基づき、ピニオン角θを演算する。ピニオン角θは、ピニオンシャフト21の回転角である。転舵モータ31とピニオンシャフト21とは、伝動機構32、変換機構33、および転舵シャフト22を介して連動する。このため、転舵モータ31の回転角θとピニオン角θとの間には相関関係がある。この相関関係を利用して、転舵モータ31の回転角θからピニオン角θを求めることができる。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22に噛合されている。このため、ピニオン角θと転舵シャフト22の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θは、転舵輪6の転舵角θを反映する値である。
目標ピニオン角演算部62は、操舵角演算部51により演算される操舵角θに基づき目標ピニオン角θ を演算する。目標ピニオン角演算部62は、製品仕様などに応じて設定される舵角比が実現されるように、目標ピニオン角θ を演算する。舵角比は、操舵角θに対する転舵角θの比である。
目標ピニオン角演算部62は、たとえば、車速Vなどの車両の走行状態に応じて舵角比を設定し、この設定される舵角比に応じて目標ピニオン角θ を演算する。目標ピニオン角演算部62は、車速Vが遅くなるにつれて操舵角θに対する転舵角θが大きくなるように、目標ピニオン角θ を演算する。目標ピニオン角演算部62は、車速Vが速くなるにつれて操舵角θに対する転舵角θが小さくなるように、目標ピニオン角θ を演算する。目標ピニオン角演算部62は、車両の走行状態に応じて設定される舵角比を実現するために、操舵角θに対する補正角度を演算し、この演算される補正角度を操舵角θに加算することにより舵角比に応じた目標ピニオン角θ を演算する。
なお、製品仕様などによっては、目標ピニオン角演算部62は、車両の走行状態にかかわらず、舵角比が「1:1」となるように、目標ピニオン角θ を演算するようにしてもよい。
ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角演算部62により演算される目標ピニオン角θ 、およびピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θを取り込む。ピニオン角フィードバック制御部63は、ピニオン角θが目標ピニオン角θ に追従するように、ピニオン角θのフィードバック制御を通じて、転舵トルク指令値T を演算する。転舵トルク指令値T は、転舵力の目標値である。
通電制御部64は、転舵トルク指令値T に応じた電力を転舵モータ31へ供給する。具体的には、通電制御部64は、転舵トルク指令値T に基づき、転舵モータ31に対する電流指令値を演算する。通電制御部64は、転舵モータ31に対する給電経路に設けられた電流センサ65を通じて、給電経路に生じる電流Iの値を検出する。電流Iの値は、転舵モータ31に供給される電流の値である。通電制御部64は、電流指令値と電流Iの値との偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵モータ31に対する給電を制御する。これにより、転舵モータ31は転舵トルク指令値T に応じたトルクを発生する。
転舵制御部60は、調整処理部66、および状態判定部67を有している。
調整処理部66は、運転支援制御装置45がバックガイドモニタ機能を実行する際に使用する転舵状態量を演算する。転舵状態量は、たとえばピニオン角θである。調整処理部66は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θを調整することにより、運転支援制御装置45が使用するバックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを演算する。
なお、調整処理部66は、たとえば、運転支援要求フラグFの値が「1」に切り替わることを契機として、動作を開始するようにしてもよい。運転支援要求フラグFの値が「0」であるとき、調整処理部66は、動作を停止した状態に維持される。
状態判定部67は、車両電源がオンされているかどうかに応じて、起動判定フラグFの値をセットする。車両電源は、運転席に設けられる起動スイッチの操作を通じて、オンとオフとの間で切り替わる。状態判定部67は、ウェイクアップ信号が取り込まれるとき、車両電源がオンされていると判定する。状態判定部67は、ウェイクアップ信号が取り込まれないとき、車両電源がオフされていると判定する。
ウェイクアップ信号は、操舵制御装置1に対する起動信号である。ウェイクアップ信号は、車両の電源ポジションがオン位置であるときに、たとえばイグニッションスイッチを経由して操舵制御装置1に供給される電力(電圧)である。状態判定部67は、車両電源がオンされたとき、起動判定フラグFの値を「1」にセットする。状態判定部67は、車両電源がオフされているとき、起動判定フラグFの値を「0」にセットする。
操舵制御装置1は、車両電源がオフされたとき、通常の操作状態から省電力モードであるスリープ状態へ遷移する。操舵制御装置1は、スリープ状態において、一部の電子回路を除き、電源がオフされた状態になる。操舵制御装置1は、スリープ状態において、車両電源がオンされたとき、起動し、スリープ状態から通常の動作状態へ遷移する。通常の動作状態は、省電力動作状態が解除された状態である。
<目標ピニオン角演算部62の詳細構成>
つぎに、目標ピニオン角演算部62の構成について詳細に説明する。
図3に示すように、目標ピニオン角演算部62は、第1の変換処理部71、第2の変換処理部72、出力補償処理部73、加算処理部74、オフセット角演算部75、徐変処理部76、および残留電流低減処理部77を有している。
第1の変換処理部71は、操舵角演算部51により演算される操舵角θを取り込む。第1の変換処理部71は、操舵角θを第1の目標ピニオン角θp1 に変換する。第1の変換処理部71は、たとえば操舵角θに調整量を加算することによって、第1の目標ピニオン角θp1 を演算する。調整量は、操舵角θに対する転舵角θの比である舵角比に基づき、操舵角θをピニオン角θに変換するために、操舵角θに加算するべき角度である。舵角比は、操舵角θと転舵角θとの間の静的な特性を定義する。第1の変換処理部71は、車速Vの値に応じて、調整量の値を変化させる。第1の変換処理部71は、たとえば、車速Vが遅いほど、操舵角θの変化に対する第1の目標ピニオン角θp1 の変化が大きくなるように、調整量の値を変化させる。
第2の変換処理部72は、第1の目標ピニオン角θp1 を取り込む。第2の変換処理部72は、フィルタを有している。第2の変換処理部72は、第1の目標ピニオン角θp1 に対してフィルタ処理を施すことにより、第2の目標ピニオン角θp2 を演算する。フィルタは、たとえば、車速Vに応じた動的な特性を定義する伝達関数を有する。すなわち、第2の変換処理部72は、車速Vに応じた動的な観点から、操舵角θと第2の目標ピニオン角θp2 との間で所望の特性が得られるように、第1の目標ピニオン角θp1 を第2の目標ピニオン角θp2 に変換する。
出力補償処理部73は、第2の目標ピニオン角θp2 を取り込む。出力補償処理部73は、転舵モータ31の出力不足を補償するための処理を実行する。転舵シャフト22が物理的な可動範囲の限界位置に近づくにつれて、転舵シャフト22に作用する軸力は大きくなる。転舵シャフト22の物理的な可動範囲の限界位置から、車両の直進状態に対応する転舵中立位置へ向けた所定の範囲は、軸力がより大きくなる高軸力範囲として設定される。高軸力範囲は、たとえば、転舵モータ31が発生可能な最大のトルクに基づき設定される。
出力補償処理部73は、たとえば、転舵モータ31の回転角θに基づき、転舵中立位置を基準とする転舵シャフト22の位置を認識する。出力補償処理部73は、転舵シャフト22が高軸力範囲内の位置に移動するとき、転舵シャフト22の位置が高軸力範囲から転舵中立位置側へ外れるように、第2の目標ピニオン角θp2 の値を補正する。出力補償処理部73は、転舵シャフト22の位置に応じて、第2の目標ピニオン角θp2 に対する補正角度を演算する。出力補償処理部73は、第2の目標ピニオン角θp2 から補正角度を減算することにより、第3の目標ピニオン角θp3 を演算する。
なお、転舵シャフト22の物理的な可動範囲の限界位置は、いわゆるエンド当てが生じることによって、転舵シャフト22の移動範囲が物理的に規制される位置である。エンド当ては、転舵シャフト22の端部であるラックエンド24がハウジング23に突き当たることである。
加算処理部74は、出力補償処理部73により演算される第3の目標ピニオン角θp3 を取り込む。また、運転支援制御装置45により指令値θが生成される場合、加算処理部74は、指令値θを取り込む。運転支援制御装置45により指令値θが生成される場合、加算処理部74は、第3の目標ピニオン角θp3 に指令値θを加算することにより、第4の目標ピニオン角θp4 を演算する。運転支援制御装置45により指令値θが生成されない場合、第3の目標ピニオン角θp3 がそのまま第4の目標ピニオン角θp4 となる。
オフセット角演算部75は、操舵制御装置1の起動時、オフセット角θo1を演算する。オフセット角θo1は、車両電源がオンされたときの現在の操舵角θに基づき演算される目標ピニオン角θ と、車両電源がオンされたときの現在の転舵角θに対応するピニオン角θとの乖離量である。ピニオン角θの値は、車両電源がオンされたときの転舵モータ31の回転角θに基づき演算される値であってもよいし、前回、車両電源がオフされるとき、操舵制御装置1の記憶装置に格納された値であってもよい。
オフセット角演算部75は、状態判定部67によりセットされる起動判定フラグFの値を取り込む。オフセット角演算部75は、起動判定フラグFの値に基づき、車両電源がオンされたこと、ひいては操舵制御装置1が起動したことを認識する。オフセット角演算部75は、起動判定フラグFの値が「1」であるとき、すなわち車両電源がオンされたとき、オフセット角θo1を演算する。オフセット角演算部75は、起動判定フラグFの値が「0」であるとき、すなわち車両電源がオフされているとき、オフセット角θo1を演算しない。
徐変処理部76は、第4の目標ピニオン角θp4 およびオフセット角θo1を取り込む。徐変処理部76は、オフセット角θo1の絶対値に対する上限値および下限値を有している。徐変処理部76は、オフセット角θo1の絶対値が上限値を超えている場合、または、オフセット角θo1の絶対値が下限値を下回っている場合、オフセット残量値θo2を演算する。オフセット残量値θo2は、オフセット角θo1の絶対値と上限値との差の値、または、オフセット角θo1の絶対値と下限値との差の値である。徐変処理部76は、オフセット角θo1の絶対値から、オフセット角θo1と上限値との差の値、または、オフセット角θo1の絶対値と下限値との差の値を減算することにより、最終的なオフセット角θo3を演算する。
なお、オフセット角θo1の絶対値が上限値と下限値とで指定される範囲以内の値であるとき、最終的なオフセット角θo3は、オフセット角θo1と同じ値になる。
徐変処理部76は、第4の目標ピニオン角θp4 に最終的なオフセット角θo3を加算することにより、第5の目標ピニオン角θp5 を演算する。ただし、徐変処理部76は、最終的なオフセット角θo3に対して、時間に対する徐変処理を施す。徐変処理部76は、運転者によるステアリングホイール5の操舵状態に応じて、最終的なオフセット角θo3を「0」へ向けて、徐々に変化させる。徐変処理部76は、たとえば、操舵角θあるいは操舵角速度に基づき、ステアリングホイール5の操舵状態を認識する。操舵角速度は、操舵角θを微分することにより得られる。
残留電流低減処理部77は、第5の目標ピニオン角θp5 を取り込む。残留電流低減処理部77は、転舵モータ31に発生する残留電流を低減するための処理を実行する。残留電流は、たとえば、ピニオン角θのフィードバック制御の実行に伴う、タイヤの捩れに起因して発生する。残留電流は、定常的に発生する。残留電流低減処理部77は、転舵モータ31の電流Iの値、あるいは転舵モータ31に対する電流指令値に基づき、残留電流の値を演算する。残留電流低減処理部77は、残留電流の値に基づき、残留電流を低減させるための補正角度を演算する。補正角度は、ピニオンシャフト21の回転角度である。残留電流低減処理部77は、第5の目標ピニオン角θp5 から補正角度を減算することにより、最終的な目標ピニオン角θ を演算する。
<調整処理部66の詳細構成>
つぎに、調整処理部66の構成について詳細に説明する。
調整処理部66は、運転支援制御装置45がバックガイドモニタ機能を実行する際に使用する転舵状態量であるピニオン角θpaを演算する。調整処理部66は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから、つぎの3つの処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響を低減あるいは除去することにより、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを演算する。
B1.第1の変更処理。第1の変更処理は、オフセット角演算部75および徐変処理部76により実行される目標ピニオン角θ の変更処理である。
B2.第2の変更処理。第2の変更処理は、出力補償処理部73により実行される目標ピニオン角θ の変更処理である。
B3.第3の変更処理。第3の変更処理は、残留電流低減処理部77により実行される目標ピニオン角θ の変更処理である。
3つの処理B1~B3の実行を通じて、目標ピニオン角θ の値が変更される。3つの処理B1~B3は、運転者によるステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に実行される。3つの処理B1~B3は、操舵装置2の便宜のために、あるいは製品仕様の観点から実行される処理である。すなわち、3つの処理B1~B3の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化量は、操舵装置2の便宜のために、あるいは製品仕様の観点から変化させる変化量である。
ピニオン角フィードバック制御部63は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θが目標ピニオン角θ に追従するように、ピニオン角θのフィードバック制御を実行する。このため、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θの値は、当初、第1の変換処理部71により演算される操舵角θに基づく目標ピニオン角θ の値と異なる。第1の変換処理部71により演算される目標ピニオン角θ は、運転者によるステアリングホイール5の操舵状態に応じた値である。
したがって、3つの処理B1~B3を経て得られる目標ピニオン角θ に基づきフィードバック制御されるピニオン角θがバックガイドモニタ機能の実行に使用される場合、車両の後退を適切に案内することができないおそれがある。また、運転者は、ステアリングホイール5の操舵状態と異なる案内が行われることに違和感を覚えるおそれがある。このため、バックガイドモニタ機能の実行時に使用されるピニオン角θpaは、3つの処理B1~B3の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響を低減あるいは除去されたものであることが好ましい。
そこで本実施の形態では、調整処理部66として、つぎの構成を採用している。
図4に示すように、調整処理部66は、たとえば、起動判定フラグFの値が「1」にセットされることを契機として動作を開始する。調整処理部66は、第1の変化量演算部81、第2の変化量演算部82、第3の変化量演算部83、および演算器84を有している。
第1の変化量演算部81は、たとえば、徐変処理部76により演算される最終的なオフセット角θo3を第1の変化量Δθとして取得する。第1の変化量Δθは、オフセット角演算部75および徐変処理部76の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化量である。
なお、第1の変化量演算部81は、最終的なオフセット角θo3に対して、定められたゲインを乗算することにより、第1の変化量Δθを演算するようにしてもよい。ゲインの値は、オフセット角演算部75および徐変処理部76の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響を低減する観点に基づき設定される。ゲインの値は、「1」であってもよい。
第2の変化量演算部82は、第2の変化量Δθを演算する。第2の変化量Δθは、出力補償処理部73の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化量である。第2の変化量演算部82は、第2の変換処理部72により演算される第2の目標ピニオン角θp2 、および出力補償処理部73により演算される第3の目標ピニオン角θp3 を取り込む。第2の変化量演算部82は、第3の目標ピニオン角θp3 から第2の目標ピニオン角θp2 を減算することにより、第2の変化量Δθを演算する。
第3の変化量演算部83は、第3の変化量Δθを演算する。第3の変化量Δθは、残留電流低減処理部77の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化量である。第3の変化量演算部83は、徐変処理部76により演算される第5の目標ピニオン角θp5 、および残留電流低減処理部77により演算される最終的な目標ピニオン角θ を取り込む。第3の変化量演算部83は、最終的な目標ピニオン角θ から第5の目標ピニオン角θp5 を減算することにより、第3の変化量Δθを演算する。
演算器84は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θの値を取り込む。また、演算器84は、第1の変化量演算部81により演算される第1の変化量Δθ、第2の変化量演算部82により演算されるΔθ、および第3の変化量演算部83により演算される第3の変化量Δθを取り込む。
演算器84は、起動判定フラグFの値が「0」から「1」へ切り替わったとき、すなわち車両電源がオンされたとき、つぎの処理を実行することにより、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを演算する。すなわち、演算器84は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θの値から、第1の変化量Δθを減算する。また、演算器84は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θの値から、第2の変化量Δθおよび第3の変化量Δθを減算する。この演算処理の実行を通じて、演算器84は、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを算出する。
<対応関係>
ピニオンシャフト21は、転舵輪6の転舵動作に連動して回転するシャフトに相当する。目標ピニオン角θ は、転舵輪6の転舵動作に連動して回転するシャフトの目標角度に相当する。ピニオン角θは、転舵輪6の転舵動作に連動して回転するシャフトの実際の回転角である実角度に相当する。
出力補償処理部73、オフセット角演算部75、および残留電流低減処理部77は、第1の処理部を構成する。第1の処理部は、ステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に、目標ピニオン角θ を変更するための処理を実行する処理部である。
調整処理部66は、第2の処理部に相当する。第2の処理部は、ステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に行われる目標ピニオン角θ の変更がピニオン角θに与える影響を低減あるいは除去することにより、バックガイドモニタ機能用の転舵状態量を演算する処理部である。調整処理部66により演算されるピニオン角θpaは、バックガイドモニタ機能用の転舵状態量に相当する。
<本実施の形態の作用>
本実施の形態は、つぎの作用を奏する。
第1の変化量Δθの値は、基本的には、徐変処理部76により演算される最終的なオフセット角θo3と同じ値を有する角度である。ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから第1の変化量Δθが減算されることにより、ピニオン角θから、オフセット角演算部75による先の処理B1の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減される。すなわち、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaは、操舵制御装置1の起動時に実行される先の処理B1の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減された角度となる。
第2の変化量Δθは、出力補償処理部73の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化量である。この第2の変化量Δθが、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから減算されることにより、ピニオン角θから、出力補償処理部73による先の処理B2の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減される。すなわち、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaは、先の処理B2の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減された角度となる。
第3の変化量Δθは、残留電流低減処理部77の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化量である。この第3の変化量Δθが、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから減算されることにより、ピニオン角θから、残留電流低減処理部77による先の処理B3の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減される。すなわち、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaは、先の処理B3の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減された角度となる。
運転支援制御装置45は、調整処理部66により演算されるバックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを使用して、バックガイドモニタ機能を実行する。バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaは、ステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に実行される先の処理B1~B3の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去または低減された角度である。すなわち、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaは、ステアリングホイール5の操舵状態に応じた仮想のピニオン角θに近似する角度である。このため、運転支援制御装置45は、ステアリングホイール5の操舵状態に即して、バックガイドモニタ機能を実行することができる。
<実施の形態の効果>
本実施の形態は、以下の効果を奏する。
(1)操舵制御装置1は、操舵装置2の便宜のために、あるいは製品仕様の観点から、ステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に目標ピニオン角θ を変化させる場合がある。運転支援制御装置45は、バックガイドモニタ機能を実行する際、調整処理部66により演算されるバックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを使用する。ピニオン角θpaは、ステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に先の処理B1~B3の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が、除去または低減された角度である。このため、運転支援制御装置45は、ステアリングホイール5の操舵状態に即して、バックガイドモニタ機能を実行することができる。したがって、バックガイドモニタ機能の実行に伴うガイド表示が、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
(2)調整処理部66は、ステアリングホイール5の操舵状態とは無関係に行われる処理に伴う目標ピニオン角θ の変化量を、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから減算することにより、ガイドモニタ表示の用に供されるピニオン角θpaを簡単に演算することができる。
(3)車両電源がオンされたとき、目標ピニオン角θ には、オフセット角θo1、より正確には上限値と下限値とで指定される範囲内の値に制限された最終的なオフセット角θo3が反映される。オフセット角θo1は、現在の操舵角θに基づき演算されるべき目標ピニオン角θ と、実際の転舵角θに対応する目標ピニオン角θ との乖離量である。目標ピニオン角θ に反映される最終的なオフセット角θo3は、時間に対して徐々に減少される。このため、車両電源がオンされたとき、目標ピニオン角θ 、ひいては転舵角θの急変を抑制することができる。このため、運転者に違和感を与えることを好適に抑制することができる。
(4)調整処理部66は、最終的なオフセット角θo3を第1の変化量Δθとして取り込む。調整処理部66は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから第1の変化量Δθ減算することにより、オフセット角演算部75および徐変処理部76の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去されたピニオン角θpaを、簡単に演算することができる。
(5)出力補償処理部73は、転舵モータ31の出力不足を補償するための処理を実行する。すなわち、出力補償処理部73は、転舵シャフト22の位置が高軸力範囲内の位置に移動するとき、転舵シャフト22の位置が高軸力範囲から転舵中立位置側へ外れるように、目標ピニオン角θ の値を変更する。このため、転舵モータ31の出力が不足する状況の発生を抑制することができる。このため、運転者に転舵モータ31の出力の不足に起因する違和感を与えることを抑制することができる。
(6)調整処理部66は、出力補償処理部73の処理が実行される前の第2の目標ピニオン角θp2 と、出力補償処理部73の処理が実行された後の第3の目標ピニオン角θp3 とを取り込む。調整処理部66は、第3の目標ピニオン角θp3 から第2の目標ピニオン角θp2 を減算することにより、第2の変化量Δθを演算する。調整処理部66は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから第2の変化量Δθを減算することにより、出力補償処理部73の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去されたピニオン角θpaを、簡単に演算することができる。
(7)残留電流低減処理部77は、転舵モータ31に発生する残留電流を低減するための処理を実行する。残留電流低減処理部77は、たとえば、転舵モータ31の電流Iの値に基づき、転舵モータ31の残留電流の値を演算する。残留電流低減処理部77は、転舵モータ31の残留電流を低減させるように、目標ピニオン角θ の値を変更する。転舵モータ31の残留電流が低減することにより、残留電流が転舵モータ31の発生トルクに及ぼす影響を低減することができる。
(8)調整処理部66は、残留電流低減処理部77の処理が実行される前の第5の目標ピニオン角θp5 と、出力補償処理部73の処理が実行された後の最終的な目標ピニオン角θ とを取り込む。調整処理部66は、最終的な目標ピニオン角θ から第5の目標ピニオン角θp5 を減算することにより、第3の変化量Δθを演算する。調整処理部66は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θから第3の変化量Δθを減算することにより、残留電流低減処理部77の処理の実行に伴う目標ピニオン角θ の変化の影響が除去されたピニオン角θpaを、簡単に演算することができる。
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・調整処理部66は、ガード処理部85を有していてもよい。ガード処理部85は、演算器84により演算されるバックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを取り込む。ガード処理部85は、ピニオン角θpaに対する上限値および下限値を有している。ガード処理部85は、ピニオン角θpaに対する制限処理を実行する。ガード処理部85は、ピニオン角θpaの絶対値が上限値を超える場合、または下限値を下回る場合、ピニオン角θpaの絶対値を上限値または下限値に制限する。この処理により、過大な値を有するピニオン角θpaの演算が抑制される。また、ピニオン角θpaの変化に対する追従遅れが抑制される。
・徐変処理部76は、オフセット角演算部75により演算されるオフセット角θo1の絶対値に対する上限値および下限値を有していなくてもよい。この場合、最終的なオフセット角θo3は、オフセット角演算部75により演算されるオフセット角θo1と同じ値になる。
・調整処理部66は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θに代えて、第1の変換処理部71により演算される第1の目標ピニオン角θp1 を取り込むようにしてもよい。第1の目標ピニオン角θp1 は、ステアリングホイール5の操舵状態に応じて演算されるピニオン角θの目標値である。調整処理部66は、第1の目標ピニオン角θp1 から、第1の変化量Δθ、第2の変化量Δθ、および第3の変化量Δθを減算することにより、バックガイドモニタ機能用のピニオン角θpaを演算するようにしてもよい。
・目標ピニオン角演算部62として、第2の変換処理部72を割愛した構成を採用してもよい。この場合、出力補償処理部73は、第1の変換処理部71により演算される第1の目標ピニオン角θp1 を取り込む。
・目標ピニオン角演算部62として、出力補償処理部73および残留電流低減処理部77のうち少なくとも一方を割愛した構成を採用してもよい。出力補償処理部73が割愛される場合、加算処理部74は、第2の変換処理部72により演算される第2の目標ピニオン角θp2 を取り込む。第2の変換処理部72および出力補償処理部73が割愛される場合、加算処理部74は、第1の変換処理部71により演算される第1の目標ピニオン角θp1 を取り込む。残留電流低減処理部77が割愛される場合、徐変処理部76により演算される第2の目標ピニオン角θp2 が最終的な目標ピニオン角θ になる。
・運転支援機能は、パーキングアシスト機能の他、たとえばレーンキープアシスト機能を含んでいてもよい。レーンキープアシスト機能は、走行中の車両が車線を逸脱しそうなとき、運転者の操舵を補助することにより車両の車線に沿った走行を支援するための機能である。運転支援制御装置45は、車両に目標車線上を走行させるための指令値として、目標ピニオン角あるいは現在の目標ピニオン角に対して付加すべき角度である付加角度を設定する。
・運転支援機能は、パーキングアシスト機能の他、車両の前進時の予想進路を示す予測軌跡線、あるいは転舵輪6の転舵角θを、HMI48のディスプレーに表示させるガイド機能を含んでいてもよい。運転支援制御装置45は、たとえばピニオン角θpaを使用して、車両の前進時の予想進路を演算する。運転支援制御装置45は、ステアリングホイール5の操舵状態に即して、ガイドモニタ機能を実行することができる。
・操舵装置2は、クラッチを有していてもよい。この場合、ステアリングシャフト11とピニオンシャフト21とは、クラッチを介して連結される。クラッチは、たとえば、励磁コイルに対する通電の断続を通じて動力の断続を行う電磁クラッチである。操舵制御装置1は、クラッチの断続を切り替える断続制御を実行する。クラッチが切断されるとき、ステアリングホイール5と転舵輪6との間の動力伝達が機械的に切断される。クラッチが接続されるとき、ステアリングホイール5と転舵輪6との間の動力伝達が機械的に連結される。
・左右の転舵輪6は、互いに独立して転舵可能であってもよい。この場合、操舵装置2は、左右の転舵輪6に対応する2つの転舵モータを有する。操舵制御装置1は、各転舵輪6に対応する転舵モータの制御を通じて、各転舵輪6を独立して転舵させる。
1…操舵制御装置
5…ステアリングホイール
6…転舵輪
21ピニオンシャフト(シャフト)
22…転舵シャフト
32…転舵モータ
66…調整処理部(第2の処理部)
73…出力補償処理部(第1の処理部)
75…オフセット角演算部(第1の処理部)
77…残留電流低減処理部(第1の処理部)
θo1…オフセット角
θ …目標ピニオン角度(目標角度)
θ…ピニオン角度(実角度)
θpa…ガイドモニタ用のピニオン角(転舵状態量)
θ…操舵角
Δθ…第1の変化量
Δθ…第2の変化量
Δθ…第3の変化量

Claims (9)

  1. ステアリングホイールとの間の動力伝達が分離された車両の転舵輪を転舵させるための転舵力を発生する転舵モータに対する給電を制御するために、前記転舵輪の転舵動作に連動して回転するシャフトの目標角度を前記ステアリングホイールの操舵状態に応じて演算し、前記目標角度に実角度を追従させるフィードバック制御を実行する操舵制御装置であって、
    前記ステアリングホイールの操舵状態とは無関係に、前記目標角度を変更するための処理を実行する第1の処理部と、
    前記第1の処理部による前記目標角度の変更が前記シャフトの実角度に与える影響を低減あるいは除去することにより、前記車両の走行を支援するためのガイドモニタ機能用の転舵状態量を演算する第2の処理部と、を有し
    前記ガイドモニタ機能は、前記車両のディスプレーに前記車両の予想進路を示すガイド線を表示させる機能を含み、前記転舵状態量は、前記ガイド線の表示を実行するために使用される操舵制御装置。
  2. 前記第2の処理部は、前記第1の処理部の処理に伴う前記目標角度の変化量を演算し、前記目標角度の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより、前記転舵状態量を演算する請求項1に記載の操舵制御装置。
  3. 前記第1の処理部の処理は、車両電源がオンされたとき、現在の前記ステアリングホイールの操舵角に基づき演算される目標角度と、実際の前記転舵輪の転舵状態が反映される前記シャフトの実角度との乖離量であるオフセット角を演算し、前記オフセット角に対して徐変処理を施すことによって前記オフセット角を0へ向けて徐々に変化させつつ、前記徐変処理が施された前記オフセット角を前記目標角度に加算することにより前記目標角度の値を変更する第1の変更処理を実行する請求項1または請求項2に記載の操舵制御装置。
  4. 前記第2の処理部の処理は、前記徐変処理が施された前記オフセット角を第1の変化量として取り込み、前記第1の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより前記転舵状態量を演算する処理を含む請求項3に記載の操舵制御装置。
  5. 前記第1の処理部の処理は、さらに、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトが、定められた高軸力範囲内の位置に移動するとき、前記転舵シャフトの位置が前記高軸力範囲から転舵中立位置側へ外れるように、前記目標角度の値を変更する第2の変更処理を実行する請求項3または請求項4に記載の操舵制御装置。
  6. 前記第2の処理部の処理は、前記第2の変更処理の実行前後の前記目標角度を取り込み、前記第2の変更処理の実行後の前記目標角度から、前記第2の変更処理の実行前の前記目標角度を減算することにより第2の変化量を演算し、前記第2の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより前記転舵状態量を演算する処理を含む請求項5に記載の操舵制御装置。
  7. 前記第1の処理部の処理は、さらに、前記転舵モータに発生する残留電流を低減するために、前記目標角度の値を変更する第3の変更処理を実行する請求項3~請求項5のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置。
  8. 前記第2の処理部の処理は、前記第3の変更処理の実行前後の前記目標角度を取り込み、前記第3の変更処理の実行後の前記目標角度から、前記第3の変更処理の実行前の前記目標角度を減算することにより第3の変化量を演算し、前記第3の変化量を、前記シャフトの実角度、または、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づく前記目標角度から減算することにより前記転舵状態量を演算する処理を含む請求項7に記載の操舵制御装置。
  9. 前記転舵状態量は、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトの回転角である請求項1~請求項8のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置。
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