以下、本発明の電力制御システム、電力制御方法、および、プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、分散リソースを単にリソースと称する場合がある。
図1は、実施形態の電力制御システムSの全体構成図である。電力制御システムSは、電力に関する複数の分散リソース50の全体に対する応動指令である集約応動指令Rsに、複数の分散リソース50それぞれによる応動量を合算した集約応動量Ysを追従させるためのシステムである。電力制御システムSは、配分演算部10と、制御演算部20と、状態推定部30と、複数の分散リソース50と、を備える。
なお、配分演算部10、制御演算部20、状態推定部30は、情報処理を実行可能な装置(例えばコンピュータ装置)である。そして、それらのうち2つ以上が同一のハードウェアで構成されていてもよいし、あるいは、それらが別々のハードウェアで構成されていてもよい。ハードウェアとしては、少なくとも処理部と記憶部を備える。処理部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成され、各種演算処理を実行する。記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などによって構成され、各種情報(電力制御に関する情報等)を記憶する。また、ハードウェアとして、入力部(例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等)や表示部(LCD(Liquid Crystal Display)等)などを備えていてもよい。
分散リソース50として、図1の例では、分散リソース1~3を備えている。なお、分散リソース1~3を区別しないときは、分散リソース50と称する場合もある。分散リソース1~3は、需要家が所有する需要家リソースであって、受電量を減少させることで、需要の予測値である基準値(過去データ等から予測)に対する応動量を創出する。
分散リソース1は、電力消費設備(不図示)のほかに、自家発PG1(自家発電設備)を備えている。分散リソース1は、制御演算部20から受電量減少指示(リソース制御指令u1)を受けた場合に、自家発PG1を稼動させることで応動(応動量を創出)できる。分散リソース2は、分散リソース1と同様であるので、説明を省略する。
分散リソース3は、電力消費設備(不図示)のほかに、蓄電池SBを備えている。分散リソース3は、制御演算部20から受電量減少指示(リソース制御指令u3)を受けた場合に、蓄電池SBから放電させることで応動(応動量を創出)できる。
なお、分散リソース50によって応動量を創出する方法は、これらに限定されず、ほかに、例えば、電力消費設備の稼働調整(停止など)により応動量を創出するようにしてもよい。
配分演算部10は、外部装置から取得した集約応動指令Rsにおける応動量を、少なくとも分散リソース50ごとの応動可能量に基づいて、分散リソース50ごとに配分することで、複数のリソース配分指令riを出力(算出および出力。以下同様)する。その際に、分散リソース50の使用順位(メリットオーダー)の情報も用いてもよい。使用順位は、例えば、応動量を創出する際の経済性や負担(例えば設備稼働停止に関する負担)の大きさ等に基づいて決定することができる。
ここで、図2は、実施形態におけるリソース配分例を示す図である。ここでは、図2(a)に示すように、使用順位の高い(運用コストの低い)ほうから順番に、分散リソース1、2、3となっている。また、分散リソース1の応動可能量の予測値は符号81に示す幅である。その場合、集約応動指令Rsにおける応動量を、分散リソース1、2に配分することができる。
ただし、図2(b)に示すように、分散リソース1の応動可能量の実際の値が、符号81に示す幅よりも狭い符号82に示す幅になる場合も考えられる。その場合、集約応動指令Rsにおける応動量を、分散リソース1、2、3に配分することで対応することができる。
なお、図2では、使用順位も考慮する場合について説明したが、これに限定されない。使用順位を考慮しない場合は、例えば、それぞれの分散リソース50が均等の分担率になるように配分するようにしてもよい。
図1に戻って、制御演算部20は、リソース制御器21a~21cを備える。なお、制御対象として分散リソース1~3を特に区別しないときには、リソース制御器21a~21cの代わりに制御演算部20と称する場合もある。
制御演算部20は、分散リソース50ごとに、リソース配分指令ri(i=1,2,3)と、リソース状態量xi(応動に関する分散リソース50の状態量)の推定値と、に基づいて、分散リソース50に対する応動の制御指令であるリソース制御指令uiを出力する。その際に、制御演算部20は、分散リソース50からフィードバックしたリソース観測量yLi(応動の観測量)も併せて用いて、リソース配分指令riとリソース応動量yiが一致するように(近づくように)リソース制御指令uiを算出する。
また、基準値と実際の需要量の偏差を含むリソース外乱も考慮する場合、制御演算部20は、分散リソース50ごとに、リソース配分指令riと、リソース外乱diを含むリソース状態量xiの推定値と、に基づいて、リソース制御指令uiを出力する。
状態推定部30は、オブザーバ31a~31cを備える。なお、制御対象として分散リソース1~3を特に区別しないときには、オブザーバ31a~31cの代わりに状態推定部30と称する場合もある。
状態推定部30は、分散リソース50ごとに、リソース配分指令riと、リソース観測量yLiと、分散リソース50の動特性および伝達むだ時間に関するモデルと、に基づいて、リソース外乱diを含むリソース状態量xiの推定値を出力する。
なお、伝達むだ時間とは、例えば、図1において、符号IN1に示す入力むだ時間や、符号OUT1に示す出力むだ時間である。符号IN1や符号OUT1の箇所では、情報の伝達に遅延が生じる。
ここで、図3は、実施形態における各モデルを用いた演算の説明図である。図4は、実施形態におけるオブザーバ31の演算の説明図である。
状態推定部30は、3つのモデルと、外乱di(k)を状態量xi(k)に含めた式(1)の状態方程式と、を用いて、分散リソース50ごとの状態量xi(k)の推定値x^i(k)を制御周期(例えば10~60秒程度)ごとに算出する(図4)。kは制御ステップである。また、x^i(k)がxi(k)の推定値を示すように、各変数について、「^」は推定値であることを示す記号である。ただし、推定値について「^」の記号を省略する場合もある。
ここで、各文字の定義は以下の式(2)~(5)の通りである。
例えば、入力むだ時間モデルMuiについて、入力するリソース制御指令ui(k)と出力するuLi(k)との関係は、以下の式(6)、(7)の通りである。
また、リソースモデルMriと出力むだ時間モデルMyiについても、同様である。
また、式(1)におけるHiとしては、以下の式(8)に示すカルマンゲイン(最適オブザーバゲイン)を用いることができる。
ここで、Siは、以下の式(9)に示すリッカチ方程式の解である。Qoi、Roiはそれぞれ想定するシステムノイズ、観測ノイズの共分散行列であり、制御系の設計定数である。
オブザーバ31では、計測できない情報を、他の計測できる情報からモデルを用いて推定するが、制御対象物の観測値にシステムノイズや観測ノイズが含まれており、カルマンゲインによってそれらのノイズがあっても精度よく推定できる。
例えば、システムノイズは、以下の式(10)におけるvi(k)である。
また、例えば、観測ノイズは、以下の式(11)におけるwi(k)である。
また、実時間(むだ時間がない場合の時間)のリソース応動量の推定値y^i(k)は、以下の式(12)、(13)で算出することができる。
ここで、図6は、実施形態における制御演算部20の演算の説明図である。符号R1は、積分を示す。符号R2、R3は、乗算を示す。制御演算部20は、図3の各モデルを対象に、以下の式(14)~(17)に示すように、riとyiを早く近づけるために積分値「∫(ri―yi)」を含む演算を行う。
そして、制御演算部20は、以下の式(18)~(21)を用いて、最適サーボ系のリソース制御指令としてui(k)を算出する。Xi(k)はオブザーバの推定値x^i(k)を用いて算出する。
なお、F1iはx^i(k)に乗算する項をまとめたものである。また、F2iは∫(ri(k)-y^i(k))に乗算する項をまとめたものである。
また、Piは、以下の式(22)に示すリッカチ方程式の解である。なお、Qi、Riは重み行列で制御系の設計定数である。
上述のようにして、制御演算部20は、分散リソース50ごとに、リソース状態量xiの推定値に基づいてリソース応動量yiの推定値を算出し、実時間のリソース応動量の推定値yiがリソース配分指令riに追従する(近づく)ようにリソース制御指令uiを算出する。
また、配分演算部10は、リソース状態量xiの推定値におけるリソース外乱diに基づいて、リソース配分指令riを補正する。例えば、配分演算部10は、分散リソース50の需要変動や、基準値と実際の需要量の偏差の定常成分(例えば、10~20分程度の平均値)に合わせて、基準値を基準にした実質のリソース応動可能量に合うようにリソース配分指令riを補正する。
ここで、図5は、実施形態における応動可能量の説明図である。例えば、分散リソース1について、需要の予測値である基準値SVに対して、計画した応動可能量は符号Q1に示す通りである。しかし、実際の需要量ADは、基準値SVより大きい値となっている。その場合、実際の応動可能量は、符号Q2に示す通りになる。ただし、基準値SVを基準にした実質の(見かけの)応動量は、符号Q3に示す通りになる。その場合、配分演算部10は、基準値SVを基準にした実質のリソース応動可能量に合うようにリソース配分指令riを補正する(図2参照)。
図1に戻って、また、状態推定部30は、カルマンゲイン(式(8))を用いたオブザーバ31に基づいて、リソース状態量xiの推定値を出力する。
また、状態推定部30は、蓄電リソース(蓄電池SBを含む分散リソース3)について、リソース状態量xiの推定値として、蓄電量および/または蓄電量変化を含む蓄電推定値を出力する。その場合、配分演算部10は、蓄電リソースについて、蓄電推定値の低下に応じて応動可能量を小さくすることで、応動量が低下するようにリソース配分指令riを変更する。
つまり、蓄電池SBの放電で応動量を創出する蓄電池リソースの実時間の蓄電量を併せて推定し、蓄電量の低下時には蓄電リソースの配分を小さくし、配分に余裕がある他の分散リソースにその分の配分を大きくするように電力制御(アグリゲーション制御)を行うことができる。蓄電量の推定値は、特定時点の蓄電量の初期値とリソース制御指令ui(放電出力の指令)の情報をもとに、以下の式(23)に示すモデルで算出する。
ここで、z^i(k)は蓄電量zi(k)の推定値である。ηiは蓄電設備の放電効率である。Δtは制御周期である。
次に、図7、図8を参照して、シミュレーション例について説明する。図7は、実施形態の各分散リソースの性能等の例を示す図である。図8は、図7を前提にしたシミュレーション結果の例を示す図である。
図7に示すように、分散リソース1~3について、応動可能量、リソース動特性、リソース使用順位、需要変動が設定されている。そして、図8(b)では、分散リソース1に関して、符号11が基準値を示し、符号12が基準値からのリソース制御指令を示し、符号13が基準値からのリソース応動量を示す。また、図8(c)では、分散リソース2に関して、符号21が基準値を示し、符号22がリソース制御指令を示し、符号23がリソース応動量を示す。
また、図8(d)では、分散リソース3に関して、符号31が基準値を示し、符号32がリソース制御指令を示し、符号33がリソース応動量を示す。また、図8(a)において、符号V1が集約応動指令を示し、符号V2が集約応動量を示す。
図8(a)~(d)からわかるように、複数の分散リソース1~3に関して高速かつ安定な応動制御を実現している。つまり、図8(a)に示すように、集約応動指令に対して集約応動量が高速に追従している。
次に、図9は、実施形態の電力制御システムSによる処理の概要を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、配分演算部10は、外部装置から集約応動指令Rsを取得する。
次に、ステップS2において、配分演算部10は、集約応動指令Rsにおける応動量を、分散リソース50ごとの応動可能量や使用順位に基づいて、分散リソース50ごとに配分することで、複数のリソース配分指令riを出力する。
次に、ステップS3において、状態推定部30は、分散リソース50ごとに、リソース配分指令riと、リソース観測量yLiと、分散リソース50の動特性および伝達むだ時間に関するモデル(図3、図4)と、に基づいて、リソース外乱diを含むリソース状態量xiの推定値を算出して出力する。
次に、ステップS4において、制御演算部20は、分散リソース50ごとに、リソース配分指令riと、リソース外乱diを含むリソース状態量xiの推定値と、に基づいて、リソース制御指令uiを出力する。
このように、本実施形態の電力制御システムSによれば、分散リソース50の動特性および伝達むだ時間に関するモデルを用いて上述の処理を行うことによって、複数の分散リソース50に関して高速かつ安定な応動制御を実現することができる。
具体的には、実時間のリソース応動量の推定値に基づいて分散リソース50の制御を行うので、各分散リソース50の応動量情報の収集に時間遅延があるシステムにおいても、速応性に優れるリソース応動を実現することができる。
また、伝達むだ時間を含む分散リソース状態量の推定値を利用して制御するので、フィードバック安定性に優れる制御を実現することができる。
また、分散リソース応動量に影響を与える外乱成分の推定値に基づいて、応動量指令のリソース配分を補正するとともに、リソース配分に一致するようにリソース制御を行うので、需要家リソースの需要変動や基準値偏差の変化影響を小さく抑えることで高精度の応動を実現することができる。
さらに、例えば、需要設備とともに太陽光発電設備等を併設した需要家リソースでは、気象変化に伴う太陽光発電量の変化が外乱成分となるが、同様の構成でこの影響を小さく抑えて応動量の精度を向上させることができる。
また、蓄電設備の放電で応動量を創出する蓄電池リソースの実時間の蓄電量を推定し、蓄電量の低下に応じてリソース配分指令を小さくする、あるいは停止するので、蓄電量低下により蓄電リソースが放電を停止する際の集約応動量への影響を抑えて応動量の精度を向上させることができる。
本実施形態の電力制御システムSで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるようにしてもよい。
また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、当該プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するようにしてもよい。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態では、需要家リソースを電力制御対象として取り上げたが、これに限定されず、例えば、応動量情報の収集に時間遅延がある発電リソース等のアグリゲーション制御に対して本発明を同様に適用することができる。
また、リソース応動量に影響を与える外乱が小さく、制御入力への追従性もよい分散リソース50に対しては、制御演算部20に一般のPID制御を適用し、さらに状態推定部30は省略してよい。すなわち、全ての分散リソース50に状態推定部30を備える構成としなくてもよい。