JP7825246B2 - 十二指腸乳頭モデル - Google Patents

十二指腸乳頭モデル

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Description

本発明は、十二指腸乳頭モデルに関する。
近年、人体に対する負担が少なく、早期回復が期待でき、入院期間を短くすることができる低侵襲手術として内視鏡を用いた手術に対する期待が高まり、その事例が増加している。例えば、臓器内部粘膜の下層に出来た腫瘍を内視鏡下で摘出する(内視鏡的粘膜下層剥離術)ことにより、通常の開腹手術と比較して小規模な傷口で手術を行うことができる。また、消化管内の出血を内視鏡下で止血する(内視鏡止血術)ことにより、出血によるショックを防ぎ、緊急手術を避けることができる。
一方、上記のような医療行為には高度な技術が要求される。技術向上および医療行為の品質向上のため、これまでに、施術訓練に用いることができる臓器モデルが提案されている(特許文献1~5)。
特開2006-116206号公報 特開2008-197483号公報 特開2018-17769号公報 特開2017-107094号公報 特開2016-38563号公報
近年、内視鏡を用いて胆管や膵管を観察、造影する施術(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:ERCP)や、十二指腸乳頭(総胆管の十二指腸への出口)を広くするために乳頭部を内視鏡を通して挿入した電気メスで切開する施術(内視鏡的乳頭括約筋切開術:EST)等の施術が一般的になりつつあるが、これらの医療行為にも高度な技術が要求される。そこで、十二指腸乳頭に対する施術を訓練でき、実際の施術において問題となる出血を再現できるモデルが求められている。
本発明は、出血を再現可能であって、十二指腸乳頭に対する施術を訓練できるモデルを提供することを目的とする。
本発明者は、様々な手段を検討した結果、十二指腸壁を模した基材層と、基材層の表面に十二指腸乳頭を模した隆起部と、隆起部の表面に乳頭開口部を模した空孔とを設け、熱可塑性樹脂から形成された管状の模擬血管を基材層又は隆起部の内部に配置した十二指腸乳頭モデルとすることで、出血を再現可能であって、十二指腸乳頭に対する施術を訓練できるモデルとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に関するものである。
[1]十二指腸壁を模した基材層と、前記基材層の表面に十二指腸乳頭を模した隆起部と、前記隆起部の表面に乳頭開口部を模した空孔とを有し、
前記基材層又は前記隆起部の内部に熱可塑性樹脂から形成された管状の模擬血管が配置されている、十二指腸乳頭モデル。
[2]前記隆起部をその対向する側から見たときに、前記空孔を含む直径60mm以内の領域内、かつ前記隆起部の隆起方向において前記空孔の先端から30mm以内の内方位置に、前記模擬血管の少なくとも一部が配置されている、[1]に記載の十二指腸乳頭モデル。
[3]前記隆起部をその対向する側から見たときに、前記空孔を含む直径8.0mm以内の領域内、かつ前記十二指腸壁を模した基材層の長軸方向を0度とした場合に、反時計回りに10度から30度までの範囲を回避するように前記模擬血管が配置されている、[2]に記載の十二指腸乳頭モデル。
[4]前記模擬血管が2本以上配置されている、[1]から[3]のいずれかに記載の十二指腸乳頭モデル。
[5]前記模擬血管が、模擬血液を供給できる装置と接続されている、[1]から[4]のいずれかに記載の十二指腸乳頭モデル。
[6]切開又は止血を含む医療手技の訓練用である、[1]から[5]のいずれかに記載の十二指腸乳頭モデル。
[7]前記医療手技が、内視鏡を用いた医療手技である、[6]に記載の十二指腸乳頭モデル。
[8]前記医療手技が、エネルギーデバイスを用いた医療手技である、[6]又は[7]に記載の十二指腸乳頭モデル。
[9]導電性組成物から形成されたものである、[1]から[8]のいずれかに記載の十二指腸乳頭モデル。
[10]前記模擬血管の厚みが、50μm~1000μmである、[1]から[9]のいずれかに記載の十二指腸乳頭モデル。
本発明によれば、出血を再現可能であって、十二指腸乳頭に対する施術を訓練できるモデルを提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る十二指腸乳頭モデルを示す図である。 本発明の第1実施形態に係る十二指腸乳頭モデルにおける血管の配置を示す図である。
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の十二指腸乳頭モデル1を示す図である。本実施形態においては、十二指腸乳頭モデル1は、十二指腸壁を模した基材層2と、基材層2の表面に十二指腸乳頭を模した隆起部3と、隆起部3の表面に乳頭開口部を模した空孔4とを有し、熱可塑性樹脂から形成された管状の模擬血管5が基材層2又は隆起部3の内部に配置されている。
{基材層}
基材層2は、図1に示されるように、十二指腸乳頭モデルを構成する1つの層であり、十二指腸壁を模して形成された構造体である。
基材層2の形状は特に限定されず、その用途に合わせて設定することができる。また、基材層2の成形方法は、成形する形状に合わせて押出成形、注型成形、射出成形、圧縮成形等から適宜選択することができる。
本発明の一実施形態において、基材層2の厚さは、3~50mm、3~30mm又は30~50mmとすることができる。
本発明の一実施形態において、基材層2をその上面に対向する側から見たときの大きさは、10~70mm×10~70mm、10~40mm×10~40mm又は40~70mm×40~70mmとすることができる。
本発明の一実施形態において、基材層2は導電性組成物から形成されてもよい。導電性組成物の組成は特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、単糖類、多糖類、たんぱく質等を用いることができ、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、任意の割合でアロイしてもよい。導電性組成物の体積抵抗率は、好ましくは1.0×10~1.0×10Ω・cmであり、より好ましくは1.0×10~5.0×10Ω・cmである。体積抵抗率は、例えばJIS C2139に準拠し、厚さ1.0mm、任意の形状のシートを、市販の抵抗率計(例えば日東精工アナリテック株式会社製ロレスターGX(MCP―T700)等)を用いて、23±1℃の条件にて測定することができる。
熱可塑性樹脂としては、ウレタン系エラストマー(TPU)、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコールが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、軟質高分子物質と硬質高分子物質を組み合わせた構造を有するものが含まれる。具体的には、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
単糖類は、加水分解によってそれ以上簡単な糖類に分解できないものであり、グルコース、フルクトース、ガラクトース等を用いることができる。
多糖類は、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類のグリコシド結合による重合体であり、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン、カラギナン、寒天、デンプン、マンナン類等を用いることができる。
たんぱく質は、アミノ酸がペプチド結合によりつながった高分子であり、コラーゲン、ゼラチン、組織状植物性たんぱく質、繊維状植物性たんぱく質等を用いることができる。
基材層2の材料に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じてオイル、導電性付与剤、着色剤、その他添加剤などを添加することができる。
・オイル
オイルとしては、特に限定されないが、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルや流動パラフィン等の鉱物油系オイル、シリコンオイル、ヒマシ油、アマニ油、オレフィン系ワックス、鉱物系ワックス等が挙げられる。
・導電性付与剤
導電性付与剤としては、特に限定されないが、電解質、カーボン系材料、金属酸化物、金属粒子、水溶性高分子含水ゲル、導電性高分子、イオン液体等が挙げられる。
・着色剤
着色剤としては、特に限定されないが、顔料、染料等を用いることができる。特に、十二指腸乳頭モデルとして利用する際に、目的を阻害しない範囲で、例えば、顔料、染料等の着色剤を使用し、生体に近似した色に着色することが好ましい。
その他の添加剤
基材層2の材料に、必要に応じて、その他の樹脂、エラストマー、ゴム、可塑剤、フィラ-や安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、分散剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、発泡剤、繊維等を配合し、用いることが出来る。
{隆起部}
隆起部3は、十二指腸乳頭を模して形成された、基材層2の表面から隆起する部分である。本発明の一実施形態において、隆起部3は導電性組成物から形成されてもよい。
隆起部3の形状としては特に限定されず、例えば略円柱状の凸部となっていてもよく、実際の十二指腸乳頭に対応する形状となっていてもよい。実際の十二指腸乳頭に対応する形状としては、猪股分類(猪股正秋、照井虎彦、斉藤慎二・他:ERCPの基礎とコツ/Pull法によるスコープの挿入、選択的カニュレーションの基本手技、カニュレーション困難例に対する工夫、消化器内視鏡. 17 : 1768-1776, 2005.を参照)に基づいて、別開口型、タマネギ型、結節型、絨毛型、平坦型及び縦長型から選択でき、その形状を模して形成してもよい。
隆起部3の直径は、隆起部3をその対向する側から見たときに、2~40mmであることが好ましく、5~30mmであることがより好ましく、5~20mmであることがさらに好ましい。隆起部3の隆起方向における基材層2の表面からの高さは、1~20mmであることが好ましく、2~15mmであることがより好ましく、2~10mmであることがさらに好ましい。
{空孔}
空孔4は、隆起部3の表面、例えば中心付近に形成された孔である。空孔4の形状としては特に限定されず、凹部もしくは基材層2及び隆起部3を貫通する孔となっていてもよい。空孔4は角度がついていてもよく、実際の乳頭開口部につながる胆管または膵管の角度を模した角度であってよい。空孔4の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。1つの空孔が途中で2股に分かれていてもよいし、2つの空孔が途中で1つに合流していてもよい。これらの空孔は胆管または膵管を模したものであってもよい。また、略円形もしくは略矩形であってもよいが、実際の乳頭開口部に対応する形状を模した形状が好ましい。具体的には、膵管・胆管合流形態の分類(大井 至:十二指腸内視鏡検査と内視鏡的膵胆管造影. Gastroenterol. Endosc., 28 : 2881-2883, 1986.、猪股正秋、照井虎彦、遠藤昌樹・他:膵管・胆管への挿管法 乳頭の解剖、内視鏡分類、挿管法の基礎. 消化器内視鏡. 20 : 1793-1803, 2008.を参照)に基づいて、分離型(別開口型、タマネギ型)、隔壁型及び共通管型から選択してその形状を模して形成することもできる。
空孔4の直径は、0.1~5mmであることが好ましく、0.3~3mmであることがより好ましく、0.5~2mmであることがさらに好ましい。
空孔4が凹部である場合、隆起部3の隆起方向における凹部の深さまたは長さは、1~50mmであることが好ましく、5~40mmであることがより好ましく、15~30mmであることがさらに好ましい。
{模擬血管}
模擬血管5は、熱可塑性樹脂組成物から成形された管状の構造体となっている。模擬血管5は、1種類の熱可塑性樹脂組成物もしくは2種類又は3種類以上の熱可塑性樹脂組成物をアロイした熱可塑性樹脂組成物から成形された単層構造であってもよく、2種類又は3種類以上の熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された多層構造であってもよい。また、これらの熱可塑性樹脂組成物から形成された単層構造体または多層構造体の外側表面または両面の少なくとも一部に導電層を配置した構造であってもよい。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、主として熱可塑性樹脂を含有する。ここで、「主として含有する」とは、熱可塑性樹脂組成物中に熱可塑性樹脂を50質量%以上含有することを意味する。別の実施形態においては、70質量%以上、もしくは90質量%以上含有するか、その熱可塑性樹脂のみからなってもよい。
また、一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、50~300℃の融点を有する。また、熱可塑性樹脂組成物の融点は、50~250℃であることが好ましく、50~200℃であることがより好ましい。融点が50℃以上の熱可塑性樹脂組成物を用いることで気温影響による樹脂組成物の形状変化を抑制することが可能であり、融点が300℃以下の熱可塑性樹脂組成物を用いることでエネルギーデバイスを用いて切開可能となる。
本実施形態においては、融点は、示差走査熱量計(DSC;METTLER TOLEDO株式会社製、DSC 3+)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minにて測定される。
一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、0.01~50MPaの引張弾性率を有する。また、熱可塑性樹脂組成物の引張弾性率は、0.05~30MPaであることが好ましく、0.1~15MPaであることがより好ましい。引張弾性率を50MPa以下とすることで、エネルギーデバイスによる把持によって模擬血管を押しつぶし、模擬血管を流れる疑似血液の出血を止めることが可能となる。
引張弾性率は、JIS K7127のプラスチックの引張試験方法に従って、1.0mm厚シートを試験片タイプ5の形状に打ち抜き、23±1℃の環境下にて、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-Xplus)を用い、引張速度50.0mm/minの条件にて測定し、応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから算出される。
本実施形態で用いられる熱可塑性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群から選択されることが好ましい。中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリウレタン、塩化ビニル系樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、水添スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
本実施形態において、エチレン-酢酸ビニル系樹脂とは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含有してもかまわない。エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとを共重合させたものであるが、塩素化エチレン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン等が共重合されていてもよい。エチレン-酢酸ビニル系樹脂の酢酸ビニル含有量は、10~35質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~35質量%であることがさらに好ましい。酢酸ビニル含有量を10質量%以上とすることで、模擬血管の柔軟性が向上し、模擬血管の表面に導電材分散液を塗布する場合には接着性が向上する。また、酢酸ビニル含有量を35質量%以下とすることで、樹脂組成物の耐熱性が向上する。
熱可塑性エラストマーとしては、軟質高分子物質と硬質高分子物質とを組み合わせた構造を有するものが含まれる。具体的には、スチレン系エラストマー、水添スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらエラストマーは一般的に市販されているものの中から選択して用いることが出来る。
一実施形態において、模擬血管5の厚みは、50~1000μmである。また、模擬血管5の厚みは、50~300μmであることが好ましく、50~150μmであることがより好ましい。模擬血管5の厚みが1000μm以下であれば、エネルギーデバイスが接触した際に、模擬血管5に短時間で熱が伝わり出血を再現することができる。
本発明の一実施形態において、模擬血管5の直径、つまり外径は0.5~10.0mmである。本発明の別の実施形態において、模擬血管5の直径は、0.5~5.0mmであることが好ましく、0.5~2.0mmであることがより好ましい。模擬血管5の直径を0.5mm以上とすることで成形時の加工安定性及び十二指腸乳頭モデル作製時のハンドリング性が高くなり、模擬血管5の直径を10.0mm以下とすることで人体血管の再現性が高くなり、エネルギーデバイスにより切開できなくなるのが抑制される。
模擬血管5の内径は、0.3~9.95mmであることが好ましく、0.3~4.95mmであることがより好ましく、0.3~1.95mmであることがさらに好ましい。
・導電層
一実施形態において、模擬血管5は、外側表面に導電材を含有する導電層を有している。導電層はなくてもよいが、設けることでエネルギーデバイスが模擬血管5に接触した時に模擬血管5を切開しやすくすることができる。
本発明の一実施形態において、導電層の厚みは、20~10000nmである。導電層の厚みは、50~5000nmであることが好ましく、150~1000nmであることがより好ましい。導電層の厚みを20nm以上とすることで、充分に高い導電性を発揮でき、かつ、模擬血管5の表面の平滑性が向上する。導電層の厚みを10000nm以下とすることで、導電層の塗工厚みが薄くなり、模擬血管5が屈曲した際のクラックを抑制することができる。
本発明の一実施形態において、導電層の導電材は特に限定されないが、1種類または2種類以上の導電性ポリマー、銀、銅、酸化錫、酸化亜鉛などの金属系材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンなどのカーボン材料であってもよい。導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子である。π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリピロール系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の別の実施形態における導電性ポリマーは、ポリアニオンをさらに含有する。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、帯電防止性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ-で測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下の範囲であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値未満であると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがあり、また、分散液における導電性複合体の分散性が低くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
導電性複合体は、ポリアニオンが、π共役系導電性高分子に配位してドープすることによって形成される。
ただし、本態様におけるポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっている。
分散媒
本発明の一実施形態においては、導電層は、前記導電材と共に分散媒を含有する。本実施形態において使用される分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、窒素原子含有溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
前記有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記分散媒のなかでも、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、N-メチルピロリドンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤が好ましい。さらには、前記分散媒のなかでも、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘプタン、トルエン、ジエチレングリコールジエチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
本実施形態の分散液における導電材の含有量は、分散液の総質量に対して、0.1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。分散液における導電材の含有量が前記下限値以上であれば、1回の塗工で厚みのある導電層を容易に形成できる。分散液における導電材の含有量が前記上限値以下であれば、分散液中の導電材の分散性を高くすること、透明性を向上させることができる。
透明バインダ成分
本発明の一実施形態における分散液は、前記導電材と共に透明バインダ成分を含有する。透明バインダ成分は、熱可塑性樹脂、熱硬化性化合物、光硬化性化合物等であって、透明な化合物が挙げられる。熱可塑性樹脂はそのままで後述のバインダ樹脂となる。熱硬化性化合物及び光硬化性化合物は、各々、モノマー又はオリゴマーであり、熱硬化性化合物は熱硬化することで後述のバインダ樹脂となり、光硬化性化合物は光硬化することで後述のバインダ樹脂となる。
導電材と共に透明バインダ成分を含有する分散液であれば、透明性、導電性及び基材への密着性を有する導電層を容易に形成できる。
透明バインダ成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、環状ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、アクリロイル基を1つ以上有するアクリル化合物、エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物等が挙げられる。これらは分散媒に溶解した状態でもコロイダルディスパージョンまたはエマルジョンで分散した状態でもよい。
前記透明バインダ成分のうち、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記透明バインダ成分のうち、熱硬化性化合物としては、アクリル化合物、エポキシ化合物が挙げられる。
光硬化性化合物としては、アクリル化合物が挙げられる。
前記透明バインダ成分のなかでも、透明性が高く、容易に硬化できることから、熱可塑性のアクリル樹脂が好ましい。
透明バインダ成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
透明バインダ成分が熱硬化性化合物である場合、導電性粒子分散液に熱重合開始剤を含有させることが好ましく、透明バインダ成分が光硬化性化合物である場合、分散液に光重合開始剤を含有させることが好ましい。
本実施形態の分散液における透明バインダ成分の含有量は、導電材100質量部に対して100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上1000質量部以下であることがさらに好ましい。本態様の導電材分散液における透明バインダ成分の含有量が前記下限値以上であれば、導電層の強度を向上させることができる。本態様の導電材分散液における透明バインダ成分の含有量が、前記上限値以下であれば、導電材の含有量が少なくなることによる導電性の低下を防ぐことができる。
本発明の一実施形態において、導電層は、導電材が分散媒中に分散された分散液を、模擬血管5の外側表面に塗工することによって形成される。別の実施形態にいては、導電材分散液に浸漬させる方法、導電材分散液をスプレーコーティングする方法等によって形成される。
導電材分散液を塗工する前に、模擬血管5にコロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理等を施し、模擬血管5の表面の親水基(ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシ基等)を形成させることが好ましい。模擬血管5が親水化処理されていると、導電層の接着性をさらに向上させることができる。または、プライマーとして透明バインダを模擬血管5に塗布してから導電材分散液を塗布することで、模擬血管5と導電層の接着性を向上させることができる。
導電層が配置された箇所における表面抵抗率は、1.0×10Ω/□以上、1.0×10Ω/□以下である。より好ましくは、1.0×10Ω/□以上、1.0×10Ω/□以下であり、さらに好ましくは1.0×10Ω/□以上、1.0×10Ω/□以下である。
本実施形態において、表面抵抗率は、JIS C2139に従い、抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製ロレスターGX(MCP―T700))を用いて、23±1℃の条件にて測定される。測定に際しては、熱可塑性樹脂組成物を160~200℃にてプレス成型し、2.5cm×2.5cm、厚さ1.0mmの樹脂シートに加工し、表面に導電層を形成した検体を用いて評価される。
(模擬血管の製造方法)
本実施形態の模擬血管は、熱可塑性樹脂組成物を押出成形することによって製造される。
導電層は、導電材が分散媒中に分散された分散液を塗工することによって形成され、別の実施形態においては、導電材分散液に浸漬させる方法、導電材分散液をスプレーコーティングする方法等によって形成される。
導電材分散液を塗工する前には、模擬血管表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理等を施し、表面の親水基(ヒドロキシル基、カルボニル基等)を形成させることが好ましい。親水化処理されていると、導電層の接着性をさらに向上させることができる。
(十二指腸乳頭モデル)
本実施形態の十二指腸乳頭モデル1は、基材層2、隆起部3及び空孔4を有し、基材層2又は隆起部3の内部に模擬血管5が配置されている。なお、十二指腸は、胃と小腸とをつなぐ管状の臓器であるが、基材層2は管状である必要はなく、十二指腸壁の一部を模して平板状に形成されていてもよい。
一実施形態においては、隆起部3をその対向する側から見たときに、空孔4を含む直径60mm以内の領域内、かつ隆起部3の隆起方向において空孔4の先端から30mm以内の内方位置に、模擬血管5の少なくとも一部が配置されている。空孔4が複数存在する場合は、前記領域は全ての空孔4を含むことが好ましい。模擬血管5は、隆起部3をその対向する側から見たときに、空孔4を含む直径40mm以内に配置されていることが好ましく、30mm以内に配置されていることがより好ましい。また、隆起部3の隆起方向において空孔4の先端から20mm以内に配置されていることが好ましく、10mm以内に配置されていることがより好ましい。
一実施形態において、前記領域は空孔4を中心とする円である。空孔4が複数存在する場合は、前記領域は空孔4のいずれかを中心とする円であってもよい。
模擬血管5は、生理的な解剖学的血管走行を再現していることが好ましい。一実施形態においては、隆起部3をその対向する側から見たときに、空孔4を含む直径8.0mm以内の領域内、かつ十二指腸壁を模した基材層2の長軸方向を0度とした場合に、反時計回りに10度から30度までの範囲を回避するように模擬血管5が配置されている。ここで、長軸方向とは、十二指腸の管軸が延びる方向に相当する方向を意味する。例えば、十二指腸乳頭モデルが管状の場合、長軸方向とは十二指腸乳頭モデルの管軸方向を意味する。十二指腸乳頭モデルが平板状の場合、長軸方向とは、訓練において十二指腸模型に取り付けられた際の十二指腸模型の管軸方向に一致する方向を意味する。上記のように模擬血管5を配置することにより、実際の施術における出血が生じやすい位置を再現することができ、出血の再現性がより高くなる。また、隆起部3をその対向する側から見たときに、空孔4を含む直径8.5mm以内の領域内、かつ十二指腸壁を模した基材層2の長軸方向を0度とした場合に、反時計回りに10度から30度までの範囲を回避するように模擬血管5が配置されていることが好ましく、隆起部3をその対向する側から見たときに、空孔4を含む直径9.0mm以内の領域内、かつ十二指腸壁を模した基材層2の長軸方向を0度とした場合に、反時計回りに10度から30度までの範囲を回避するように模擬血管5が配置されていることがより好ましい。
一実施形態において、空孔4が複数存在する場合は、前記領域は全ての空孔4を含むことが好ましい。
一実施形態において、前記領域は空孔4を中心とする円である。空孔4が複数存在する場合は、前記領域は空孔4のいずれかを中心とする円であってもよい。
一実施形態においては、模擬血管5が基材層2又は隆起部3の内部に1本以上配置されている。また、模擬血管5の数は、2本以上であってもよく、3本以上であってもよい。
一実施形態において、十二指腸乳頭モデル1のアスカーE硬度は40以下であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20であることがさらに好ましい。アスカーE硬度が40以下であることにより、実際の十二指腸乳頭に近い触感となり、医療手技の向上が望める。アスカーE硬度はJIS K 6253-3に従って測定することができる。
一実施形態においては、十二指腸乳頭モデルは、はちまきひだを模した第1の帯状隆起部をさらに有していてもよい。第1の帯状隆起部は、十二指腸壁を模した基材層2の長軸方向を0度とした場合に時計回りに-120度から120度の範囲で、空孔4から上部側(口側)に2~20mm離隔した円状の部分を有している。
また、さらなる実施形態において、輪状ひだを模した第2の帯状隆起部を有していてもよい。第2の帯状隆起部は、第1の帯状隆起部から上部側に0.5~20mm離隔して、第1の帯状隆起部と略平行に伸びている。
(十二指腸乳頭モデルの製造方法)
本実施形態に係る十二指腸乳頭モデル1は、通常の成形方法によって製造することができる。例えば、十二指腸壁、十二指腸乳頭及び乳頭開口部に対応する形状の型のキャビティ内に模擬血管5を設置し、型内に材料(例えば導電性組成物)を注型または充填して成形することによって製造することができる。または、キャビティ内に模擬血管5を設置するための貫通孔を設け、後から模擬血管5を挿入してもよい。成形時の温度は、用いる樹脂によって適宜変更できるが、例えばカラギナンを主として含有する導電性組成物を用いる場合は、70~100℃で注型し、25℃に冷却することで成形する。
[用途]
十二指腸乳頭モデル1は、切開や止血を含む医療手技、特に内視鏡を用いて胆管や膵管を観察、造影する施術(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:ERCP)や、十二指腸乳頭(総胆管の十二指腸への出口)を広くするために乳頭部を内視鏡を通して挿入した電気メスで切開する施術(内視鏡的乳頭括約筋切開術:EST)等の訓練用として用いることができる。その際、上部消化器(胃、食道、十二指腸等)模型に設けられた模型装着部に十二指腸乳頭モデル1を嵌め込んでもよいし、消化器模型の内壁に十二指腸乳頭モデル1を貼り付けてもよい。消化器模型の模型装着部は、壁が一部欠損して形成された枠又は凹みであってもよいし、模型装着用の冶具が消化器模型の内壁、又は外壁に取り付けられていてもよい。胆管模型に設けられた模型装着部に十二指腸乳頭モデル1を嵌め込んでもよいし、治具で取り付けてもよいし、貼り付けてもよい。胆管模型は膵管を含む構造としてもよい。模型装着部や模型装着用の治具は消化器模型や胆管模型から独立していてもよい。また、実際の人体の口腔から十二指腸を含む消化器までの経路を模した口腔、食道、胃、十二指腸等の模型が一体化された構造又はそれぞれの模型が接合された構造としてもよい。
十二指腸乳頭モデル1は、接着剤、粘着剤、両面テープ等を用いて消化器模型の内壁に貼り付けることができる。
切開を含む医療手技の例としては、メス類、剪刀類、エネルギーデバイスを当てて切開、切除する方法がある。止血を含む医療手技の例としては、出血した部位への止血鉗子又はクリップで把持するような、いわゆる機械法、及び、エネルギーデバイスを用いた熱凝固法等の熱凝固法がある。エネルギーデバイスとしては、高周波止血鉗子、高周波ナイフ、EST用ナイフ、電気メス、超音波メス、高周波ラジオ波メス、ヒートプローブ、マイクロ波メス、レーザーメス等が挙げられる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
実施例等で用いた各種原料及び製造方法は以下の通りである。
(A)十二指腸乳頭モデル本体部(基材層及び隆起部)
・ブドウ糖(69wt%):ぶどう糖(グルコース)(株式会社マルゴコーポレーション、商品コードmarugo41)
・ローカストビーンガム(7wt%):ローカストビーンガム(ユニテックフーズ株式会社製、商品コード83)
・カラギナン(9wt%):カッパタイプカラギナン(ユニテックフーズ株式会社製、商品コード78)
・リン酸二水素カリウム(2wt%):リン酸二水素カリウム(林純薬工業株式会社製、品番47005285)
・PVA顔料(13wt%):てのひらえのぐ しろくまくん あかいろ(ターナー色彩株式会社製)
(B)模擬血管
・エチレン-酢酸ビニル系樹脂(エバフレックスEV170、三井・ダウポリケミカル株式会社製)
・ポリチオフェン系導電性高分子分散液デナトロンPT-436(ナガセケムテックス株式会社製、純水/アルコール分散液)
(C)模擬血液
・生理食塩水
・粉末食用赤色102号
(生理食塩水に粉末食用赤色102号を0.5質量%で分散させたものとした。)
・模擬血管の製造方法
上記熱可塑性樹脂組成物を押出成形することにより、厚さ125μm、外径φ1.0mm、内径φ0.75mmの管状構造体である模擬血管を作製し、次いで、導電層としてポリチオフェン系導電性高分子分散液を管状構造体の外側表面に塗工し、室温環境下で24時間乾燥させ、表面抵抗率5×10Ω/□となる導電層を有する模擬血管を製造した。
[十二指腸乳頭モデルの製造]
(実施例1)
十二指腸壁、十二指腸乳頭及び乳頭開口部に対応する形状の型のキャビティ内に模擬血管5を後から通すために直径1.0mmの金属線を設置し、あらかじめ混合したAの材料35gと水道水100mlを混ぜ合わせ、70~100℃で加温して得た導電性組成物の水溶液を型内に充填して25℃に冷却することにより成形体を作製した。金属線を抜き取り、模擬血管5を成形体の中に通すことにより十二指腸乳頭モデルを得た。模擬血管5の配置を、図2-1に示す。
(実施例2~6)
模擬血管5をそれぞれ図2-2から図2-6のように設置した以外は、実施例1と同様にして十二指腸乳頭モデルを得た。
実施例1~6における模擬血管5の配置は、図2-1~図2-6に示すように、前記隆起部をその対向する側から見たときに、前記空孔を含む直径60mm以内の領域内、かつ前記隆起部の隆起方向において前記空孔の先端から30mm以内の内方位置に、前記模擬血管の少なくとも一部が配置されている。また、前記隆起部をその対向する側から見たときに、前記空孔を含む直径8.0mm以内の領域内、かつ前記十二指腸壁を模した基材層の長軸方向を0度とした場合に、反時計回りに10度から30度までの範囲を回避するように前記模擬血管が配置されている。
(比較例1)
模擬血管5を設置しなかった以外は、実施例1と同様にして十二指腸乳頭モデルを得た。
(比較例2)
比較例1の十二指腸乳頭モデルの外部(基材層の隆起部がない側の表面)に模擬血管を配置して十二指腸乳頭モデルを得た。
実施例等で作製した十二指腸乳頭モデルについての各種特性の評価方法は以下の通りである。
(1)十二指腸乳頭モデル本体部の切開の再現性の評価
十二指腸乳頭モデル本体部に電気メス(条件:モノポーラー、切開モードAUTOCUT、40W)を押し当てた際の、切開具合(電気メスに反応し切開できているか)の再現性を評価した。切開が再現できる場合を○、十分に再現されていない場合は×とした。
(2)出血の再現性の評価
模擬血液を供給できる注射器と接続された模擬血管について、模擬血管が電気メス(エルベ社製 高周波手術装置:VIO100C、条件:モノポーラー、切開モードAUTOCUT、40W)で切開された場合の、模擬血液の溶出度合いを目視で評価した。血管からの血液の溶出が再現されている場合は○、再現されていない場合は×とした。
(3)止血操作性の再現性の評価
模擬血液が溶出している模擬血管に対して電気メス(条件:モノポーラー、FORCED凝固モード、40W)を用いて止血操作を行い、止血操作における模擬血液の溶出度合いを目視で評価した。止血操作による止血が再現されている場合は○、再現されていない場合は×とした。
(4)十二指腸乳頭モデルの切開術の再現性の評価
十二指腸乳頭モデルに対して電気メス(条件:モノポーラー、切開モードAUTOCUT、40W)を当て、基材層の長軸方向を0度として反時計回りに20度の方向へ切開した場合の切開術の再現性を評価した。実際の切開術に近い感覚を再現できる場合を○、十分に再現されていない場合は×とした。
実施例及び比較例の十二指腸乳頭モデルを評価した結果を以下に示す。
表1に示すように、実施例1~6の十二指腸乳頭モデルは全ての評価基準を満たしたのに対し、比較例1及び2の粘膜組織モデルはいずれかの評価基準について十分な再現性が得られなかった。特に、比較例1の十二指腸乳頭モデルは、模擬血管から模擬血液の溶出が起こらないことから、実際に切開術を行う感覚が十分に再現されていなかった。比較例2の十二指腸乳頭モデルは、電気メスによる切開で基材層を貫通しない限り模擬血管から模擬血液の溶出が起こらず、実際に切開術を行う感覚が十分に再現されていなかった。
また、実施例1~6の十二指腸乳頭モデルの模擬血管を注射器に繋ぎ、用手的に拍動に合わせて注射器のピストン部分を押すことで、拍動性の噴出する大出血を再現することができた。したがって、実施例1~6の十二指腸乳頭モデルは、出血を伴う合併症を再現できることが明らかとなった。
本発明の十二指腸乳頭モデルは、十二指腸乳頭に対する施術の訓練具として利用することができる。
1 十二指腸乳頭モデル
2 基材層
3 隆起部
4 空孔
5 模擬血管

Claims (8)

  1. 十二指腸壁を模した基材層と、前記基材層の表面に十二指腸乳頭を模した隆起部と、前記隆起部の表面に乳頭開口部を模した空孔とを有し、
    前記基材層又は前記隆起部の内部に熱可塑性樹脂から形成された管状の模擬血管が配置されており、前記隆起部をその対向する側から見たときに、前記空孔を含む直径60mm以内の領域内、かつ前記隆起部の隆起方向において前記空孔の先端から30mm以内の内方位置に、前記模擬血管の少なくとも一部が配置されている、十二指腸乳頭モデル。
  2. 前記隆起部をその対向する側から見たときに、前記空孔を含む直径8.0mm以内の領域内、かつ前記十二指腸壁を模した基材層の長軸方向を0度とした場合に、反時計回りに10度から30度までの範囲を回避するように前記模擬血管が配置されている、請求項に記載の十二指腸乳頭モデル。
  3. 前記模擬血管が2本以上配置されている、請求項1又は2に記載の十二指腸乳頭モデル。
  4. 前記模擬血管が、模擬血液を供給できる装置と接続されている、請求項1又は2に記載の十二指腸乳頭モデル。
  5. 切開又は止血を含む医療手技の訓練用である、請求項1又は2に記載の十二指腸乳頭モデル。
  6. 前記医療手技が、内視鏡を用いた医療手技である、請求項に記載の十二指腸乳頭モデル。
  7. 前記医療手技が、エネルギーデバイスを用いた医療手技である、請求項に記載の十二指腸乳頭モデル。
  8. 前記模擬血管の厚みが、50μm~1000μmである、請求項1又は2に記載の十二指腸乳頭モデル。
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