JP7827059B2 - ガラス積層体とその製造方法 - Google Patents

ガラス積層体とその製造方法

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Description

本発明は、ガラス積層体とその製造方法に関する。
自動車等の車両等の用途では、ガラス板の表面に、可視光線の透過率は高く、赤外線の透過率は低い赤外線遮蔽膜を形成したガラス積層体が知られている。赤外線遮蔽膜は例えば、赤外線吸収剤等の赤外線遮蔽剤を含む膜である。
例えば、特許文献1には、ガラス板と、その表面上に形成された紫外線遮蔽膜とを備える紫外線遮蔽ガラスが開示されている(請求項1)。紫外線遮蔽膜形成用の組成物は、紫外線吸収剤および硬化性シランを含み、さらに好ましくはITO(インジウム錫酸化物)等の赤外線吸収剤および溶媒を含む(段落0035、0041、0047)。紫外線遮蔽膜は、ガラス板上に上記組成物を塗布し、乾燥し、硬化することで、形成できる(段落0042)。
国際公開第2020/141601号
本発明者らの研究により、ITO等の赤外線遮蔽粒子を含む赤外線遮蔽膜を有するガラス積層体では、耐熱性試験または耐湿性試験において、赤外線遮蔽性能が低下する場合があることが分かった。また、耐摩耗性試験において、ガラス板から赤外線遮蔽膜が剥離する場合があることが分かった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、赤外線を良好に遮蔽でき、耐熱性、耐湿性および耐摩耗性が良好な、ガラス積層体の提供を目的とする。
本発明は、以下のガラス積層体とその製造方法を提供する。
[1] ガラス板の表面上に、シリカと赤外線遮蔽粒子とを含む赤外線遮蔽膜が形成されたガラス積層体であって、
平面視にて、前記赤外線遮蔽膜の少なくとも一部の領域において、
前記赤外線遮蔽膜の厚さを100%とし、前記赤外線遮蔽膜を前記ガラス板との界面から深さ方向に見たとき、
前記赤外線遮蔽粒子の総個数に対する、前記界面と前記界面から50%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数の割合が52%以上であり、
前記界面から5%の深さと前記界面から10%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数に対する、前記界面と前記界面から5%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数の比が1.2以下である、ガラス積層体。
[2] 硬化性シランと前記赤外線遮蔽粒子とを含む液状組成物を用意する工程(S1)と、
前記ガラス板の温度をT[℃]とし、前記液状組成物の温度をT[℃]としたとき、T<Tとなるよう、前記ガラス板および/または前記液状組成物の温度を調整する工程(S2)と、
前記ガラス板の表面上に、前記ガラス板より高い温度の前記液状組成物を塗工し塗工膜を形成して、塗工膜付きガラス板を得る工程(S3)と、
前記塗工膜側が上側になるように、前記塗工膜付きガラス板を略水平に配置する工程(S4)と、
前記塗工膜付きガラス板を加熱し、前記塗工膜を硬化する工程(S5)とを有する、[1]のガラス積層体の製造方法。
本発明のガラス積層体は、平面視にて、赤外線遮蔽膜の少なくとも一部の領域において、厚さ方向に見たとき、赤外線遮蔽粒子が、ガラス板との界面側に偏って分布し、かつ、ガラス板との界面の近傍部分には過剰な赤外線遮蔽粒子が存在しない構成になっている。
本発明のガラス積層体は、赤外線を良好に遮蔽でき、耐熱性、耐湿性および耐摩耗性が良好である。
本発明に係る一実施形態のガラス積層体の模式平面図の一例である。 本発明に係る一実施形態のガラス積層体の模式断面図である。 図2の部分拡大模式断面図である。 赤外線遮蔽粒子が略均一に分布した第1の比較用のガラス積層体(左図)と、赤外線遮蔽粒子がガラス板との界面の近傍部分に高濃度で分布した第2の比較用のガラス積層体(右図)とを示す部分拡大模式断面図である。 本発明に係る一実施形態のガラス積層体の製造方法の工程(S3)を示す模式断面図である。 本発明に係る一実施形態のガラス積層体の製造方法の工程(S4)を示す模式断面図である。 例1の赤外線遮蔽膜のXPSスペクトルである。 例11の赤外線遮蔽膜のXPSスペクトルである。 赤外線遮蔽膜における赤外線遮蔽粒子の存在比率の測定方法を示す図である。 例1、11、13で得られたガラス積層体の断面SEM写真のトリミング処理後の画像と二値化処理後の画像の例である。
一般的に、薄膜構造体は、厚さに応じて、「フィルム」および「シート」等と称される。本明細書では、これらを明確には区別しない。したがって、本明細書で言う「フィルム」に「シート」が含まれる場合がある。
本明細書において、特に明記しない限り、「上下」は、ガラス積層体が車両等に嵌め込まれた状態(実際の使用状態)での「上下」である。
本明細書において、特に明記しない限り、紫外線は300~380nmの波長域の光であり、赤外線は780~2500nmの波長域の光であり、可視光線は380~780nmの波長域の光である。
本明細書において、特に明記しない限り、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[ガラス積層体]
図面を参照して、本発明に係る一実施形態のガラス積層体の構造について、説明する。
図1は、本実施形態のガラス積層体の模式平面図の一例である。図2は、本実施形態のガラス積層体の模式断面図である。図3は、図2の部分拡大模式断面図である。
図2に示すように、本実施形態のガラス積層体1は、ガラス板10の一方の表面10S上に、シリカと赤外線遮蔽粒子とを含む赤外線遮蔽膜20が形成された積層体である。
ガラス板10の表面10Sは、ガラス板10の赤外線遮蔽膜20側の表面であり、ガラス板10と赤外線遮蔽膜20との界面とも言う。
本実施形態のガラス積層体1は例えば、自動車等の車両用のガラス(例えば、フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス)に好ましく適用できる。
車両等の用途では、赤外線遮蔽膜20は、ガラス板10の内面側(乗員等がいる側、通常凹面側)に形成される。
赤外線遮蔽膜20は、ガラス板10の一方の表面10Sの全面に形成されていてもよいし、ガラス板10の一方の表面10Sの周縁部(例えば、端辺から30mm以内の領域)の少なくとも一部を除く略全面に形成されていてもよい。赤外線遮蔽膜20は、少なくとも使用状態(例えば車両等に嵌め込まれた状態)で視認される領域に形成されていればよく、使用状態で視認されない周縁部には形成されていなくてもよい。
図1は、本実施形態のガラス積層体1の模式平面図の一例である。この例では、ガラス積層体1は、自動車の運転手席または助手席の横にあるサイドガラスである。
図示例では、ガラス板10は、上辺11、下辺12、前方側辺13および後方側辺14の4辺からなる外周を有し、下辺12は凹凸を有している。
図示例では、赤外線遮蔽膜20は、上辺21、下辺22、前方側辺23および後方側辺24の4辺からなる外周を有する。視認しやすくするため、赤外線遮蔽膜20の外周のうち、ガラス板10の外周と一致していない部分は、二点鎖線で示してある。図示例では、赤外線遮蔽膜20の上辺21は、ガラス板10の上辺11より15mm程度内側に位置し、赤外線遮蔽膜20の前方側辺23はガラス板10の前方側辺13に一致し、赤外線遮蔽膜20の後方側辺24はガラス板10の後方側辺14に一致している。
ガラス板10の平面形状および赤外線遮蔽膜20の形成領域は、取り付けられる車両等の形態に応じて、適宜設計できる。
(ガラス板)
ガラス板10としては、強化ガラス、複数のガラス板を中間膜を介して貼り合わせた合わせガラス、および有機ガラスが挙げられ、車両等の用途では、強化ガラスまたは合わせガラスが好ましい。図1および図2では、ガラス板10は平坦に図示してあるが、車両等の用途では、ガラス板10は、曲面を有する形状に加工されている。
強化ガラスおよび合わせガラスの材料であるガラス板の種類としては特に制限されず、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムシリケートガラス、石英ガラス、サファイアガラス、および無アルカリガラス等が挙げられる。
強化ガラスは、上記のようなガラス板に対して、イオン交換法および風冷強化法等の公知方法にて強化加工を施したものである。強化ガラスとしては、風冷強化ガラスが好ましい。
強化ガラスの厚さは特に制限されず、用途に応じて設計される。車両のフロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等の用途では、好ましくは2~6mmである。
合わせガラスの厚さは特に制限されず、用途に応じて設計される。車両のフロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等の用途では、好ましくは2~6mmである。
合わせガラスの中間膜は、樹脂膜からなる。その構成樹脂としては、複数のガラス板を良好に接着できる樹脂であれば特に制限されない。中間膜は例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン(PU)、およびアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましい。
中間膜は必要に応じて、樹脂以外の1種以上の添加剤を含んでいてもよい。
中間膜の材料としては、上記例示の樹脂を含む樹脂フィルムが好ましい。
強化ガラスおよび合わせガラスは、表面の少なくとも一部の領域に、撥水、低反射性、低放射性および着色等の機能を有する被膜を有していてもよい。
合わせガラスは、内部の少なくとも一部の領域に、低反射性、低放射性および着色等の機能を有する膜を有していてもよい。合わせガラスの中間膜の少なくとも一部の領域が、着色等の機能を有していてもよい。合わせガラスの中間膜は、単層膜でも積層膜でもよい。
有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチック;ポリエチレンテレフタレート(PET):ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン(PS);これらの組合せ等が挙げられ、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックが好ましい。
(赤外線遮蔽膜)
図3に示すように、赤外線遮蔽膜20は、シリカと赤外線遮蔽粒子20Pとを含む。赤外線遮蔽膜20は、赤外線遮蔽粒子20Pを含むため、赤外線を良好に遮蔽できる。赤外線遮蔽膜20は必要に応じて、紫外線遮蔽剤を含むことができ、この場合、赤外線遮蔽膜20は、赤外線および紫外線を良好に遮蔽できる。
赤外線遮蔽粒子20Pとしては公知のものを用いることができ、赤外線吸収タイプでも赤外線反射タイプでもよい。
赤外線遮蔽粒子20Pとしては、1種以上の金属化合物を含む金属化合物粒子が好ましい。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、セシウムドープ酸化タングステン(CWO(登録商標))、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、六ホウ化ランタン(LaB)、および五酸化バナジウム(V)からなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む金属化合物粒子が好ましい。
赤外線遮蔽粒子20Pとしては、セシウムドープ酸化タングステン(CWO(登録商標))および/または六ホウ化ランタン(LaB)を含む金属化合物粒子が特に好ましい。この金属化合物粒子を用いる場合、800~1500nmの波長の光に対する赤外線遮蔽膜の吸光度を、赤外線遮蔽膜1cm当たりに含まれる赤外線遮蔽粒子の質量で割った値を比較的大きくでき、例えば1.5以上にできる。この場合、赤外線遮蔽膜中の赤外線遮蔽粒子20Pの含有量を減らせる。これによって、赤外線遮蔽膜20のガラス板10との界面10Sの近傍部分に存在する粒子の絶対数を減らせるため、ガラス板10と赤外線遮蔽膜20との密着性が向上し、耐摩耗性が向上する。
紫外線遮蔽剤としては公知のものを用いることができ、紫外線吸収タイプでも紫外線反射タイプでもよい。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾジチオール系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる1種以上の紫外線吸収剤が好ましい。
赤外線遮蔽膜20は必要に応じて、上記以外の1種以上の任意成分を含むことができる。
赤外線遮蔽膜20は、硬化性シランと赤外線遮蔽粒子20Pとを含み、さらに必要に応じて紫外線遮蔽剤を含んでもよい液状組成物(LC)を用意し、この液状組成物(LC)をガラス板10の表面10S上に塗工し、加熱して塗工膜を硬化することで形成できる。
硬化性シランとは、1個以上の水酸基または1個以上の加水分解性基が結合したケイ素原子を1個以上有するケイ素化合物を言う。加水分解性基は、加水分解により水酸基となり得る基であり、アルコキシ基、塩素原子、アシル基およびアシルオキシ基等が挙げられる。硬化性シランとしては、2個以上のアルコキシ基が結合したケイ素原子を有するアルコキシシランが好ましく、アルコキシ基としては炭素原子数1~4のアルコキシ基が好ましい。
硬化性シランとしては、テトラアルコキシシランおよびビスアルコキシシラン等が好ましい。テトラアルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン(TEOS)およびテトラメトキシシラン等が挙げられる。ビスアルコキシシランとしては、下式(1)で表される化合物が挙げられる。
3-nSi-Q-SiR 3-m・・・(1)
上記式中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素原子数1~3の1価の炭化水素基である。XおよびXはそれぞれ独立に、アルコキシ基である。Qは、炭素原子数3~8の直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基である。nおよびmはそれぞれ独立に、0~2の整数である。
硬化性シランを含む液状組成物(LC)を加熱すると、硬化性シランの加水分解および重縮合を経て、シリカが生成される。ただし、硬化反応の終了後に、赤外線遮蔽膜20中に、硬化性シランの部分加水分解縮合物等の中間生成物が多少残っていてもよい。
本明細書で言う「シリカ」は、特に明記しない限り、硬化性シランの反応生成物であり、硬化性シランの部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。
(赤外線遮蔽粒子の分布)
図3に示すように、本実施形態のガラス積層体1において、赤外線遮蔽膜20は、厚さ方向に見たとき、赤外線遮蔽粒子20Pの個数が分布を有する。赤外線遮蔽膜20の厚さを100%とする。
本実施形態のガラス積層体1では、平面視にて、赤外線遮蔽膜20の少なくともの一部の領域において、
赤外線遮蔽膜20をガラス板10との界面10Sから深さ方向に見たとき、
赤外線遮蔽粒子20Pの総個数に対する、界面10Sと界面10Sから50%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数の割合が52%以上であり、
界面10Sから5%の深さと界面10Sから10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数に対する、界面10Sと界面10Sから5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数の比が1.2以下である。
厚さ方向に見たとき、ある深さ範囲に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数は、後記[実施例]の項に記載の方法にて測定するものとする。
図中、符号0.1tは界面10Sから10%の深さ、符号0.5tは界面10Sから50%の深さを示す。符号20Tは膜表面20Sと膜表面20Sから50%の深さとの間の範囲(図示上半分)、符号20Bは膜表面20Sから50%の深さと界面10Sとの間の範囲(図示下半分)を示す。
図4は、厚さ方向に見て、赤外線遮蔽粒子20Pが略均一に分布した第1の比較用のガラス積層体101(左図)と、赤外線遮蔽粒子20Pがガラス板10との界面10Sの近傍部分に高濃度で分布した第2の比較用のガラス積層体102(右図)とを示す部分拡大模式断面図である。
赤外線遮蔽粒子20Pが略均一に分布した第1の比較用のガラス積層体101では、膜表面20Sの近傍部分に、比較的多くの赤外線遮蔽粒子20Pが存在する。膜表面20Sの近傍部分に存在する赤外線遮蔽粒子20Pは、空気中の酸素および/または水分により劣化して、赤外線遮蔽性能が低下する恐れがある。そのため、耐熱性試験または耐湿性試験において、赤外線遮蔽膜20の赤外線遮蔽性能が低下する場合がある。
赤外線遮蔽粒子20Pがガラス板10との界面10Sの近傍部分に高濃度で分布した第2の比較用のガラス積層体102では、ガラス板10と赤外線遮蔽膜20との密着性が低下するため、耐摩耗性が低下する。
本実施形態のガラス積層体1では、平面視にて、赤外線遮蔽膜20の少なくとも一部の領域において、厚さ方向に見たとき、図3に示すように、赤外線遮蔽粒子20Pが、ガラス板10との界面10S側に偏って分布し、かつ、ガラス板10との界面10Sの近傍部分には過剰な赤外線遮蔽粒子20Pが存在しない構成になっている。
なお、図3における粒子分布はイメージ図である。粒子形状および粒子サイズは任意であり、均一でも不均一でもよい。粒子の個数分布は、図示するものに制限されない。
本実施形態のガラス積層体1では、膜表面20Sの近傍部分に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数が比較的少ないため、空気中の酸素および/または水分に触れる赤外線遮蔽粒子20Pが少なく、空気中の酸素および/または水分による赤外線遮蔽粒子20Pの劣化およびこれによる赤外線遮蔽膜20の赤外線遮蔽性能の低下を効果的に抑制できる。本実施形態のガラス積層体1は、耐熱性および耐湿性が向上され、耐熱性試験および耐湿性試験における赤外線遮蔽膜20の赤外線遮蔽性能の低下を効果的に抑制できる。
赤外線遮蔽粒子20Pの総個数に対する、膜表面20Sと膜表面20Sから5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数の割合は、好ましくは0.1%以上10%以下、より好ましくは0.5%以上7%以下、特に好ましくは0.5%以上5%未満である。
赤外線遮蔽粒子20Pの総個数に対する、界面10Sと界面10Sから50%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数の割合は、好ましくは54%以上、より好ましくは57%以上、特に好ましくは59%以上である。
赤外線遮蔽粒子膜20Pにおける、膜表面20Sと膜表面20Sから5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの体積濃度は、好ましくは0.1vol%以上10vol%以下、より好ましくは0.1vol%以上5vol%以下、特に好ましくは0.1vol%以上2vol%以下である。
本実施形態のガラス積層体1では、ガラス板10との界面10Sの近傍部分に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数が比較的少ないため、ガラス板10と赤外線遮蔽膜20との密着性が良好で、耐摩耗性が良好である。
界面10Sから5%の深さと界面10Sから10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数に対する、界面10Sと界面10Sから5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの個数の比は、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。
赤外線遮蔽膜20における、界面10Sと界面10Sから5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの体積濃度は、好ましくは0.1vol%以上10vol%以下、より好ましくは0.1vol%以上5vol%以下である。
赤外線遮蔽膜20における、界面10Sから5%の深さと界面10Sから10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子20Pの体積濃度は、好ましくは0.1vol%以上10vol%以下、より好ましくは0.1vol%以上5vol%以下である。
本実施形態によれば、赤外線を良好に遮蔽でき、耐熱性、耐湿性および耐摩耗性が良好なガラス積層体1を提供できる。
平面視にて、赤外線遮蔽膜20において、上記個数分布の規定を充足する領域の面積は大きい方が好ましい。
平面視にて、赤外線遮蔽膜20において、上記個数分布の規定を充足する領域は、赤外線遮蔽膜20の中心または中央部を含むことが好ましい。少なくとも中心または中央部が上記個数分布の規定を充足することで、赤外線遮蔽膜20において、上記個数分布の規定を充足する領域の面積を比較的大きくでき、上記作用効果が効果的に得られ、好ましい。
ガラス板10の形状によっては、「中心」を明確に定義できない。この場合は、外周から内側に等距離縮めて面積を可能な限り小さくした相似形を描き、この相似形の領域を中心または中央部と定義する。
赤外線遮蔽膜20は必要に応じて、紫外線遮蔽剤を含むことができる。この場合、赤外線遮蔽膜20中、紫外線遮蔽剤は、厚さ方向に見て、略均一に分布していることが好ましい。紫外線遮蔽剤は、厚さ方向に見て、ガラス板10側に偏って分布していてもよい。
膜表面20Sから50%の深さとガラス板10の表面10Sとの間の範囲20B(図示下半分)に充分な量の紫外線遮蔽剤が存在していれば、ガラス板10の外面から入射し、ガラス板10を通って赤外線遮蔽膜20に入射する太陽光に含まれる紫外線が、早い段階で遮蔽されるので、紫外線による赤外線遮蔽粒子20Pの劣化が抑制され、好ましい。
[ガラス積層体の製造方法]
本発明のガラス積層体の製造方法は、
硬化性シランと赤外線遮蔽粒子とを含む液状組成物を用意する工程(S1)と、
ガラス板の温度をT[℃]とし、液状組成物の温度をT[℃]としたとき、T<Tとなるよう、ガラス板および/または液状組成物の温度を調整する工程(S2)と、 ガラス板の表面上に、ガラス板より高い温度の液状組成物を塗工し塗工膜を形成して、塗工膜付きガラス板を得る工程(S3)と、
塗工膜側が上側になるように、塗工膜付きガラス板を略水平に配置する工程(S4)と、
塗工膜付きガラス板1Cを加熱し、塗工膜20Cを硬化する工程(S5)とを有する。
本明細書において、「略水平」とは、地面に対して完全な水平方向±10°の範囲を意味する。
図面を参照して、各工程について、説明する。図5A~図5Cは、図3に対応した部分模式断面図である。
(工程(S1))
工程(S1)では、硬化性シランと赤外線遮蔽粒子20Pとを含み、必要に応じて紫外線遮蔽剤を含む液状組成物(LC)を用意する。液状組成物(LC)は必要に応じて、樹脂、表面調整剤、キレート剤、硬化触媒、酸および溶剤等の上記以外の1種以上の任意成分を含むことができる。
(工程(S2))
工程(S2)では、ガラス板10の温度をT[℃]とし、液状組成物(LC)の温度をT[℃]としたとき、T<Tとなるよう、ガラス板10および/または液状組成物(LC)の温度を調整する。好ましくはT+5≦T、より好ましくはT+10≦Tである。
従来の方法では、ガラス板10と液状組成物(LC)の温度の調整は特に行っておらず、いずれも環境温度であり、略同一である。
ガラス板10の温度Tおよび液状組成物(LC)の温度Tは上記規定を充足すれば、特に制限されない。ガラス板10の温度Tは、例えば0~50℃の範囲内、好ましくは15~25℃の範囲内、液状組成物(LC)の温度Tは、例えば5~60℃の範囲内、好ましくは15~25℃の範囲内で、上記規定を充足するように、それぞれの温度を設定できる。ガラス板10の温度Tおよび液状組成物(LC)の温度Tは、恒温槽等を用いて調整できる。
(工程(S3))
工程(S3)では、図5Aに示すように、ガラス板10の表面10S上に、ガラス板10より高い温度の液状組成物(LC)を塗工し塗工膜20Cを形成して、塗工膜付きガラス板1Cを得る。
車両等の用途では、ガラス板10は曲面を有する形状に加工されており、その内面側(通常凹面側)に、塗工膜20Cが形成される。
図中、符号0.1tcは塗工膜20Cのガラス板10との界面10Sから10%の深さ、符号0.5tcは塗工膜20Cのガラス板10との界面10Sから50%の深さを示す。符号20CTは膜表面20CSと膜表面20CSから50%の深さとの間の範囲、符号20CBは膜表面20CSから50%の深さとガラス板10の表面10Sとの間の範囲(図示下半分)を示す。
塗工方法としては特に制限されず、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、メニスカスコート法およびダイコート法等が挙げられる。
工程(S3)の環境温度は特に制限されず、通常の室温、例えば10~30℃でよい。
(工程(S4))
工程(S4)では、図5Aに示すように、塗工膜20C側が上側になるように、塗工膜付きガラス板1Cを略水平に配置(平置きとも言う。)する。
工程(S4)の環境温度は特に制限されず、通常の室温、例えば10~30℃でよい。
この工程の開始時点では、図5Aに示すように、塗工膜20C中に、赤外線遮蔽粒子20Pは略均一な濃度で分布している。塗工膜20C側を上側にした状態で平置きすると、塗工膜20C中において、赤外線遮蔽粒子20Pが重力によって全体的に沈降する。赤外線遮蔽粒子20Pの沈降を好適化することで、図5Bに示すように、赤外線遮蔽粒子20Pをガラス板10との界面10S側に偏らせつつ、ガラス板10との界面10Sの近傍部分には過剰な赤外線遮蔽粒子20Pが存在しない構成にできる。
一般的に流体中の粒子の沈降速度は、ストークスの式(下式)で表される。
上記式中の各符号は、以下のパラメータを示す。
:沈降速度[cm/s]、
:粒子径[cm]、
ρ:粒子の密度[g/cm]、
ρ:流体の密度[g/cm]、
g:重力加速度[cm/s]、
η:流体の粘度[g/(cm・s)]。
液状組成物(LC)は、組成が同じ条件であれば、液温が高いほど粘度は低下し、赤外線遮蔽粒子20Pの沈降速度が速くなる傾向がある。しかしながら、液温が高くなりすぎると、液の安定性が低下する恐れがある。
工程(S2)において、液状組成物(LC)の温度T[℃]を、液の安定性が低下しない範囲で相対的に高く調整しておくことで、塗工膜20Cにおいて膜表面20CSに近い部分の粘度を相対的に下げ、この部分の赤外線遮蔽粒子20Pの沈降速度を相対的に高められる。
工程(S2)において、ガラス板10の温度T[℃]を相対的に低く調整しておくことで、塗工膜20Cにおいてガラス板10に近い部分の温度を相対的に低め、この部分の粘度を相対的に上げ、この部分の赤外線遮蔽粒子20Pの沈降速度を相対的に低められる。
工程(S2)において、T<Tとなるよう、ガラス板10および/または液状組成物(LC)の温度を調整しておくことで、塗工膜20C中で沈降速度の差を設け、図5Bに示すように、赤外線遮蔽粒子20Pをガラス板10との界面10S側に偏らせつつ、ガラス板10との界面10Sの近傍部分には過剰な赤外線遮蔽粒子20Pが存在しない構成にできる。
工程(S4)において、塗工膜20Cの膜表面20CSの近傍部分における、平均一次粒子径の赤外線遮蔽粒子20Pの沈降深さは特に制限されず、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.3μm、特に好ましくは0.1~0.2μmである。
工程(S4)において、塗工膜20Cの膜表面20CSの近傍部分における、平均一次粒子径の赤外線遮蔽粒子20Pの沈降速度は特に制限されず、好ましくは1~50nm/s、より好ましくは1~20nm/s、特に好ましくは5~10nm/sである。
沈降深さおよび沈降速度は、上記ストークスの式に基づいて、算出できる。
例えば、赤外線遮蔽粒子20Pの密度、赤外線遮蔽粒子20Pの平均一次粒子径、液状組成物(LC)中の赤外線遮蔽粒子20Pの濃度、液状組成物(LC)の塗工前の粘度、ガラス板10と液状組成物(LC)との温度関係、および平置き時間等を調整することによって、塗工膜20Cの膜表面20CSの近傍部分における、平均一次粒子径の赤外線遮蔽粒子20Pの沈降深さと沈降速度を上記範囲に調整できる。
本明細書において、「塗工膜の膜表面近傍部分」とは、膜表面と膜表面から20%の深さとの範囲である。
赤外線遮蔽粒子20Pの密度は特に制限されない。密度が大きい程、沈降速度が速くなる傾向がある。沈降速度の好適化の観点から、好ましくは5g/cm以上、より好ましくは5~10g/cmである。
赤外線遮蔽粒子20Pの平均一次粒子径は特に制限されない。平均一次粒子径が大きい程、沈降速度が速くなる傾向がある。ただし、平均一次粒子径が過大では、赤外線遮蔽膜20にヘイズが生じる恐れがある。沈降速度の好適化および赤外線遮蔽膜20の透明性の観点から、好ましくは10~150nm、より好ましくは10~100nm、特に好ましくは50~100nmである。
赤外線遮蔽粒子20Pは、充分な密度とサイズを有することで、塗工膜20C中で良好に沈降できる。
本明細書において、「赤外線遮蔽粒子の平均一次粒子径」は、後記[実施例]の項に記載の方法にて測定するものとする。
塗工膜20C側が上側になるように、塗工膜付きガラス板1Cを略水平に配置する時間(平置き時間)は特に制限されない。長い程、赤外線遮蔽粒子20Pの沈降深さを大きくできる。沈降深さの好適化および生産性の観点から、好ましくは10~60秒間、より好ましくは10~50秒間、特に好ましくは20~40秒間である。
紫外線遮蔽剤の密度は特に制限されない。紫外線遮蔽剤の密度が赤外線遮蔽粒子20Pの密度より小さく、例えば2.5g/cm以下である場合、紫外線遮蔽剤の沈降を効果的に抑制でき、紫外線遮蔽剤については塗工膜20C中に略均一な濃度で分布した状態を維持できる。
紫外線遮蔽剤は、塗工膜20C中で沈降できる密度を有していてもよい。この場合、紫外線遮蔽剤についても、ガラス板10側に偏って分布させることができる。
紫外線遮蔽剤については、塗工膜20C中に略均一な濃度で分布した状態、または、ガラス板10側に偏って分布した状態にすることで、得られるガラス積層体1において、ガラス板10に近い部分で紫外線を効果的に遮蔽し、紫外線照射による赤外線遮蔽粒子20Pの劣化を効果的に抑制できる。
(乾燥工程)
工程(S4)と工程(S5)との間に、必要に応じて、硬化反応が進まない条件で、塗工膜20Cを乾燥する乾燥工程を実施してもよい。乾燥方法として特に制限されず、40~60℃程度の加熱乾燥、減圧乾燥および40~60℃程度の減圧加熱乾燥が挙げられる。
(工程(S5))
工程(S5)では、塗工膜付きガラス板1Cを加熱し、塗工膜20Cを硬化する。加熱は、硬化性シランが硬化してシリカとなる温度条件で行う。工程(S5)(加熱硬化工程)は、本焼成のみの1段階または仮焼成と本焼成の2段階で実施できる。
本焼成温度は特に制限されない。ガラス板10が強化ガラスである場合、好ましくは80~230℃、より好ましくは100~230℃、特に好ましくは150~230℃、最も好ましくは180~210℃である。ガラス板10が合わせガラスである場合、好ましくは80~110℃、より好ましくは90~110℃である。加熱時間は、液状組成物(LC)の組成および加熱温度等に応じて適宜設計できる。
乾燥工程および工程(S5)における塗工膜付きガラス板1Cの配置の向きは、特に制限されない。
乾燥工程および工程(S5)では、工程(S4)と同様、塗工膜20C側が上側になるように、塗工膜付きガラス板1Cを略水平に配置してよい。この場合、これらの工程でも赤外線遮蔽粒子20Pが若干沈降する可能性があるが、工程開始後の早い段階で塗工膜20Cが固体またはそれに近い状態になるため、沈降深さは短く、無視できる程度と考えてよい。
以上のようにして、図3に示したようなガラス積層体1が得られる。
以上説明したように、本実施形態によれば、赤外線を良好に遮蔽でき、耐熱性、耐湿性および耐摩耗性が良好な、ガラス積層体1を提供できる。
以下に、実施例に基づいて本発明について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。例1~5が実施例、例11~14が比較例である。
[評価項目と評価方法]
評価項目と評価方法は、以下の通りである。赤外線遮蔽膜およびガラス積層体の評価は、平面視にて、ガラス積層体の中心部分について、実施した。
(液状組成物(LC)の粘度)
粘度計(東機産業社製「RE85L」)を用いて、液状組成物(LC)の粘度を測定した。25℃または15℃での粘度を測定した。
(赤外線遮蔽膜の膜厚)
触針式表面形状測定器(ULVAC社製「Dektak150」)を用いて、赤外線遮蔽膜の膜厚[μm]を測定した。
(赤外線遮蔽粒子の平均一次粒子径)
走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製「S-4800」)を用いて、ガラス積層体の断面観察を行った。無作為に選んだ5箇所の断面SEM像(倍率20万倍)を得た。5箇所の断面SEM像で観察された全赤外線遮蔽粒子の一次粒子径の平均値を平均一次粒子径として求めた。
(赤外線遮蔽粒子の存在比率)
平均一次粒子径の測定方法と同様に、ガラス積層体の断面観察を行った。無作為に選んだ5箇所の断面SEM像(倍率:赤外線遮蔽膜の上端と下端が写る倍率、1万2000倍)を得た。
図7に示す例のように、得られた断面SEM像P1に対してトリミング処理を行って、赤外線遮蔽膜の部分のみを残した。図中、符号P2は、トリミング処理後の画像である。
次いで、このトリミング処理後の画像P2に対して、明度で二値化処理を起こって、赤外線遮蔽粒子を「黒」、その他の部分を「白」で表すように処理した。図中、符号P3は、二値化処理後の画像である。
次いで、得られた画像P3において、赤外線遮蔽膜全体または赤外線遮蔽膜の特定部分に存在する円形度0.8~1.0の赤外線遮蔽粒子の個数および体積濃度[vol%]を求めた。赤外線遮蔽膜の特定部分に存在する赤外線遮蔽粒子の個数および体積濃度[vol%]を求める際には、特定部分以外の部分をトリミング処理し、特定部分のみを残して、赤外線遮蔽粒子の個数および体積濃度[vol%]を求めた。
具体的には、
赤外線遮蔽膜全体に存在する赤外線遮蔽粒子の個数、
ガラス板との界面とこの界面から50%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数、ガラス板との界面とこの界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数(A)、
ガラス板との界面から5%の深さとガラス板との界面から10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数(B)を求めた。
赤外線遮蔽膜全体に存在する赤外線遮蔽粒子の個数を100%とし、特定部分に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の割合[%]を求めた。
また、膜表面と膜表面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の体積濃度[vol%]、
ガラス板との界面とこの界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の体積濃度[vol%]、
ガラス板との界面から5%の深さとガラス板との界面から10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の体積濃度[vol%]を求めた。
画像処理、個数カウントおよび体積濃度の測定は、画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所(NIH)製「ImageJ」)を用いて実施した。
無作為に選んだ5箇所の断面SEM像においてそれぞれ、必要なデータを求め、データごとに平均値を求めた。
(ガラス積層体の赤外線透過率)
分光光度計(日立製作所製「U-4100」)を用いて、ガラス積層体の波長1500nmにおける透過率(T1500)[%]を測定した。この透過率を、耐熱性試験および耐湿性試験を実施する前の初期状態のガラス積層体の赤外線透過率とした。
(ガラス積層体の耐熱性)
ガラス積層体を温度80℃で100時間放置した後、試験前と同じ上記方法にて、波長1500nmにおける透過率(T1500)[%]を測定した。試験前のT1500[%]に対する試験後のT1500[%]の増加量(ΔT1500)[%]を求めた。ΔT1500の増加量が小さい程、耐熱性が良好である。
(ガラス積層体の耐湿性)
ガラス積層体を温度50℃相対湿度95%で100時間放置した後、試験前と同じ上記方法にて、ガラス積層体の波長1500nmにおける透過率(T1500)[%]を測定した。試験前のT1500[%]に対する試験後のT1500[%]の増加量(ΔT1500)[%]を求めた。ΔT1500の増加量が小さい程、耐湿性が良好である。
(ガラス積層体の耐摩耗性)
テーバー式耐摩耗試験機を用い、JIS-R3212(1998年)に準拠して、ガラス積層体の赤外線遮蔽膜側の表面に対して、CS-10F摩耗ホイールを用い、100回転および500回転の2条件で摩耗試験を行った。この試験後に、赤外線遮蔽膜の剥離状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
剥離なし:目視では全く剥離が見られない。
剥離あり:目視でわずかでも剥離が見られる。
[材料]
各例で用いた材料の略号は、以下の通りである。
<ガラス板>
(G1)縦10mm×横10mm×厚さ3.5mmの平面視正方形状の平坦なガラス板(AGC社製「高熱線吸収グリーンガラス」)。
TEOS:テトラエトキシシラン、
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製「KBM-403」、
KBM-3066:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、信越化学工業社製「KBM-3066」、
EX-614B:エポキシ樹脂、ナガセケムテックス社製「EX-614B」、
ソルスパース41000:ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース41000」、
TINUVIN360:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「TINUVIN360」、
BYK307:表面調整剤、ビッグケミー・ジャパン社製「BYK307」、
Al(AcAc):アルミニウムアセチルアセトナート、
CAT-AC:アルミニウム系硬化触媒、信越化学工業社製「CAT-AC」)、
AP-1:エタノール85.5質量%、メタノール1.1質量%および2-プロパノール13.4質量%の混合溶媒。
[製造例1](液状組成物(LC1)の調製)
丸底フラスコに、メタノールを32.60g、63質量%硝酸水溶液を0.10g、純水を6.23g、テトラエトキシシラン(TEOS)を10.52g、エポキシシラン(KBM-403)を11.23g、ビスアルコキシシラン(KBM-3066)を11.50g、エポキシ樹脂(EX-614B)を15.35g、アルミニウムアセチルアセトナート(Al(AcAc))を1.87g、アルミニウム系硬化触媒(CAT-AC)を4.16g、および表面調整剤(BYK307)を0.06g入れ、28℃で2.5時間撹拌混合した。最後に、20質量%インジウム錫酸化物(ITO)分散液(三菱マテリアル社製、溶媒は混合溶媒(AP-1))を6.38g加え、固形分濃度39.0質量%の液状組成物(LC1)を得た。
主な配合組成と得られた液状組成物(LC)の固形分濃度を、表1に示す。
[製造例2~5](液状組成物(LC2)~(LC5)の調製)
表1に示す配合組成に変更した以外は製造例1と同様にして、液状組成物(LC2)~(LC5)を得た。主な配合組成と得られた液状組成物の固形分濃度を、表1に示す。
製造例2、4で用いた20質量%CWO(登録商標)分散液は、住友金属鉱山社製(溶媒は水)である。
[例1]
(工程(S1))
製造例1で得られた液状組成物(LC1)を用意した。
(工程(S2))
恒温槽を用いて、ガラス板(G1)の温度Tを15℃、液状組成物(LC1)の温度Tを25℃に調整した。
(工程(S3))
スピンコート法により、ガラス板(G1)の表面上に、工程(S2)の調整温度の液状組成物(LC1)を塗布して、塗工膜付きガラス板を得た。
(工程(S4))
塗工膜側が上側になるように、40秒間、塗工膜付きガラス板を水平に配置(平置き)した。
(工程(S5))
塗工膜付きガラス板を100℃で30分間加熱して、塗工膜を硬化し、ガラス積層体(GL1)を得た。この焼成工程では、塗工膜側が上側になるように、塗工膜付きガラス板を水平に配置(平置き)した。
主な製造条件と評価結果を、表2に示す。
塗工膜中の膜表面の近傍部分における平均一次粒子径の赤外線遮蔽粒子の沈降速度および沈降深さは、ストークスの式に基づいて、算出した。計算において、塗工膜中の膜表面の近傍部分の温度は、工程(S2)の液状組成物(LC)の調整温度を用い、液状組成物(LC)の粘度は、工程(S2)の液状組成物(LC)の調整温度における粘度を用いた。
[例2~5、例11~13]
表2および表3に示すように条件を変更した以外は例1と同様にして、ガラス積層体(GL2)~(GL5)、(GL11)~(GL13)を得た。主な製造条件と評価結果を、表2および表3に示す。表2および表3において、記載のない条件は共通条件とした。
[例14]
(工程(S1))
製造例1、5で得られた液状組成物(LC1)、(LC5)を用意した。
(工程(S2))
恒温槽を用いて、ガラス板(G1)の温度Tを25℃、液状組成物(LC1)、(LC5)の温度Tを25℃に調整した。
(工程(S3))
スピンコート法により、ガラス板(G1)の表面上に、工程(S2)の調整温度の液状組成物(LC5)を硬化後の厚みが1μmとなる量で塗布し、さらにその上に工程(S2)の調整温度の液状組成物(LC1)を硬化後の厚みが3μmとなる量で塗布して、塗工膜付きガラス板を得た。
(工程(S4)、(S5))
例1と同様に、工程(S4)、(S5)を実施して、ガラス積層体(GL14)を得た。主な製造条件と評価結果を、表3に示す。
[結果のまとめ]
例1~5では、ガラス板の表面上に、ガラス板より高い温度の液状組成物(LC)を塗工し塗工膜を形成して、塗工膜付きガラス板を得、塗工膜側が上側になるように、塗工膜付きガラス板を水平に配置した後、塗工膜付きガラス板を加熱し、塗工膜を硬化して、ガラス積層体を製造した。
これらの例では、平面視にて、赤外線遮蔽膜の中心部分において、
赤外線遮蔽粒子の総個数に対する、ガラス板との界面とガラス板との界面から50%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の割合が52%以上であり、
ガラス板との界面から5%の深さとガラス板との界面から10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数に対する、ガラス板との界面とガラス板との界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の比(表中の(A)/(B)比)が1.2以下である、ガラス積層体が得られた。
これらの例で得られたガラス積層体は、耐熱性・耐湿性試験において、試験前に対する試験後の赤外線透過率の増加量(ΔT1500)が小さく、赤外線遮蔽効果の低下が小さく、良好であった。
これらの例で得られたガラス積層体は、耐摩耗性も良好であった。特に、赤外線遮蔽粒子としてセシウムドープ酸化タングステン(CWO(登録商標))を用いた例2で得られたガラス積層体は、高い耐摩耗性が得られた。
例11、12、14では、ガラス板の温度と液状組成物(LC)の温度を同一とした。
例13では、液状組成物(LC)の粘度が高く、塗工膜中の膜表面の近傍部分における平均一次粒子径の赤外線遮蔽粒子の沈降速度および沈降深さが過小であった。
例14では、赤外線遮蔽粒子を含まない液状組成物(LC)を塗布してから、赤外線遮蔽粒子を含む液状組成物(LC)を塗布して、塗工膜を形成した。
例11、12で得られたガラス積層体は、平面視にて、赤外線遮蔽膜の中心部分において、
ガラス板との界面から5%の深さとガラス板との界面から10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数に対する、ガラス板との界面とガラス板との界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の比が1.2超であった。
これらの例で得られたガラス積層体は、耐摩耗性が不良であった。
例13で得られたガラス積層体は、平面視にて、赤外線遮蔽膜の中心部分において、
赤外線遮蔽粒子の総個数に対する、ガラス板との界面とガラス板との界面から50%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の割合が52%未満であった。
この例で得られたガラス積層体は、耐熱性・耐湿性試験において、試験前に対する試験後の赤外線透過率の増加量(ΔT1500)が大きく、赤外線遮蔽効果の低下が大きく、不良であった。
例14で得られたガラス積層体は、平面視にて、赤外線遮蔽膜の中心部分において、
ガラス板との界面とこの界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の割合が0%であり、
ガラス板との界面から5%の深さとガラス板との界面から10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の割合が0%であった。
ガラス板との界面から5%の深さとガラス板との界面から10%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数に対する、ガラス板との界面とガラス板との界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数の比が計算不能であった。
この例で得られたガラス積層体は、耐摩耗性が不良であった。
代表的に、例1、11で得られたガラス積層体の赤外線遮蔽膜のXPSスペクトルを図6A、図6Bに示す。
赤外線遮蔽粒子に含まれる任意の1種の金属元素(例えば、ITOの場合はIn)について、赤外線遮蔽膜中の膜表面からの深さ方向の元素分析を行い、XPSスペクトルを得た。スペクトルの面積比率から、深さ方向に見てある範囲内の金属元素の濃度[atomic%]を求めた。
図6Aに示す、例1で得られたガラス積層体の赤外線遮蔽膜のXPSスペクトルでは、赤外線遮蔽粒子がガラス板との界面とガラス板との界面から50%の深さとの間に偏って分布しているが、ガラス板との界面とガラス板との界面から5%の深さとの間に存在する赤外線遮蔽粒子の個数は少ないことが示されている。
図6Bに示す、例11で得られたガラス積層体の赤外線遮蔽膜のXPSスペクトルでは、ガラス板との界面とガラス板との界面から5%の深さとの間に集中して、赤外線遮蔽粒子が存在することが示されている。
代表的に、例1、11、13で得られたガラス積層体の断面SEM写真のトリミング処理後の画像と二値化処理後の画像の例を図8に示す。
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更できる。
この出願は、2021年3月29日に出願された日本出願特願2021-054925号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
1:ガラス積層体、1C:塗工膜付きガラス板、10:ガラス板、10S:表面(界面)、20:赤外線遮蔽膜、20C:塗工膜、20P:赤外線遮蔽粒子、20S:膜表面。

Claims (13)

  1. ガラス板の表面上に、シリカと赤外線遮蔽粒子とを含む赤外線遮蔽膜が形成されたガラス積層体であって、
    平面視にて、前記赤外線遮蔽膜の少なくとも一部の領域において、
    前記赤外線遮蔽膜の厚さを100%とし、前記赤外線遮蔽膜を前記ガラス板との界面から深さ方向に見たとき、
    前記赤外線遮蔽粒子の総個数に対する、前記界面と前記界面から50%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数の割合が52%以上であり、
    前記界面から5%の深さと前記界面から10%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数に対する、前記界面と前記界面から5%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数の比が1.2以下であり、
    前記赤外線遮蔽粒子の総個数に対する、前記赤外線遮蔽膜の膜表面と前記膜表面から5%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数の割合が0.1%以上10%以下である、ガラス積層体。
  2. 前記赤外線遮蔽粒子の総個数に対する、前記界面と前記界面から50%の深さとの間に存在する前記赤外線遮蔽粒子の個数の割合が54%以上である、請求項1に記載のガラス積層体。
  3. 前記赤外線遮蔽膜は、硬化性シランと前記赤外線遮蔽粒子とを含む液状組成物の単層塗工膜の硬化物からなる、請求項1または2に記載のガラス積層体。
  4. 前記赤外線遮蔽粒子は、密度が5g/cm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  5. 前記赤外線遮蔽粒子は、密度が5~10g/cmである、請求項4に記載のガラス積層体。
  6. 前記赤外線遮蔽粒子は、平均一次粒子径が10~150nmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  7. 前記赤外線遮蔽粒子は、金属化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  8. 前記赤外線遮蔽粒子は、インジウム錫酸化物、アンチモンドープ酸化錫、セシウムドープ酸化タングステン、フッ素ドープ酸化錫、六ホウ化ランタン、および五酸化バナジウムからなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む金属化合物粒子である、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス積層体。
  9. 前記赤外線遮蔽粒子は、セシウムドープ酸化タングステンおよび六ホウ化ランタンからなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む金属化合物粒子である、請求項8に記載のガラス積層体。
  10. ガラス板と、
    硬化性シラン赤外線遮蔽粒子とを含む液状組成物を用意する工程(S1)と、
    前記ガラス板の温度をT[℃]とし、前記液状組成物の温度をT[℃]としたとき、T<Tとなるよう、前記ガラス板および/または前記液状組成物の温度を調整する工程(S2)と、
    前記ガラス板の表面上に、前記ガラス板より高い温度の前記液状組成物を塗工し塗工膜を形成して、塗工膜付きガラス板を得る工程(S3)と、
    前記塗工膜側が上側になるように、前記塗工膜付きガラス板を略水平に配置する工程(S4)と、
    前記塗工膜付きガラス板を加熱し、前記塗工膜を硬化する工程(S5)とを有する、ガラス積層体の製造方法。
  11. 工程(S2)において、T+5≦Tとなるよう、前記ガラス板および/または前記液状組成物の温度を調整する、請求項10に記載のガラス積層体の製造方法。
  12. 工程(S4)において、前記塗工膜の少なくとも膜表面近傍部分における平均一次粒子径の前記赤外線遮蔽粒子の沈降深さが0.1~0.4μmである、請求項10または11に記載のガラス積層体の製造方法。
  13. 工程(S4)において、前記塗工膜の少なくとも膜表面近傍部分における平均一次粒子径の前記赤外線遮蔽粒子の沈降速度が1~50nm/sである、請求項10~12のいずれか1項に記載のガラス積層体の製造方法。
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