JP7827151B2 - 遅れ破壊特性評価方法、遅れ破壊予測方法、プログラム、及びプレス成形品の製造方法 - Google Patents
遅れ破壊特性評価方法、遅れ破壊予測方法、プログラム、及びプレス成形品の製造方法Info
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Description
このような後トリムの場合、既にプレス成形により形状が付与されたプレス部品を、その部品形状に沿って、下型と板押さえで拘束する。そして、後トリムの場合、その拘束状態で、せん断加工を実行する必要がある。
このようなことから、発明者は、プレス成形前の平坦な金属板をせん断する前トリムと、成形後にせん断する後トリムとでは、せん断端面の性質が異なることが考えられる、との知見を得た。
実際のプレス成形品、特に、量産される自動車部品の生産工程を考慮すると、このような後トリム部に関連した遅れ破壊評価が非常に重要である。本発明は、このような点に着目してなされたものである。そして、本発明は、せん断端面を形成するせん断加工のせん断条件による、せん断端面の遅れ破壊特性への影響を評価可能な技術を提供することを目的とする。
変数とするせん断条件は、例えば、金属板の拘束条件とすると良い。
この結果、本発明の態様によれば、例えば、自動車のパネル部品、構造・骨格部品等の各種部品に高強度鋼板を適用する際における、遅れ破壊特性をより向上すること可能となる。
(概要)
まず、本実施形態の概要を説明する。
発明者は、被加工材である金属板に対する板押さえの当たり方に着目した。そして、後トリムでのせん断加工の際の、板拘束の不良状態として、次のA、B、Cの3パターンに分類した。板押さえの当たり方とは、下型と板押さえによる、金属板の拘束状態を指す。
ここで、これらの不良状態は、プレス成形品に対するせん断時(後トリムの時)に発生しやすい。すなわち、本発明は、後トリムにより形成されるせん断端面の、遅れ破壊特性の評価に好適な技術である。
B:板押さえ2の面2Bが、せん断待機状態の金属板10に当たっていないが、下型1の面1Bが、せん断待機状態の金属板10に当たっている場合(図4の、一点鎖線で示される金属板10を参照)
C:板押さえ2の面2Bが、せん断待機状態の金属板10に当たっているが、下型1の面1Bが下刃1A付近で金属板10に当たっていない場合(図6参照)
なお、本明細書で、平面視とは、せん断方向から見た場合を指す。なお、試験片を作製するためのせん断加工の場合には、せん断方向と、下型1の面1Bと板押さえ2の面2Bの対向方向とは、同方向を向いている。
次に、求めた遅れ破壊の発生しないせん断条件で、プレス成形品の後トリム工程を実施する。これによって、せん断端面の耐遅れ破壊特性に優れたプレス成形品が製作できた。
なお、せん断条件以外の加工条件については、別途、せん断端面の耐遅れ破壊特性を評価すればよい。
(遅れ破壊特性評価方法)
本実施形態は、金属板10のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法である。本発明は、特に、金属板10が高強度鋼板の場合に、より効果を奏する。
本実施形態では、評価対象とする金属板10に対する遅れ破壊特性評価の処理として、実際の実験を有する試験の工程と、評価の工程とを備える。
本実施形態の遅れ破壊特性評価方法は、図1に示すように、第1の工程50A~第4の工程50Dを備える。第1の工程50A~第3の工程50Cは、試験の工程に対応する。第4の工程50Dが評価の工程に対応する。
第1の工程50Aは、平板状の金属板10にせん断加工を施して、せん断端面を有する試験片を作製する工程である。
本実施形態では、せん断加工のせん断条件を調整して、各種の試験片を作製する。
本実施形態では、調整するせん断条件として、せん断時の板の拘束条件を例示して説明する。その他の、クリアランス量などのせん断条件を変数として、せん断条件に対する遅れ破壊特性の評価を実施しても良い。
本実施形態では、後トリム時に発生しやすい板拘束の不良条件の分類毎に、スペーサー4を用いてせん断条件を定量化(変数化)して、試験片を作製するとする。試験片は、例えば、評価しやすいように短冊形状とする。
また、板拘束の不良条件の分類は、上述のように、A、B、Cの3分類とする。
せん断条件Aの拘束不良条件では、図2に示すように、対向する板押さえ2の面2Bと下型1の面1Bが金属板10に当たって、金属板10をしっかりと拘束している。しかし、平面視で、板押さえ2が、下刃1Aの位置から離れている場合である。なお、板押さえ2の面2Bと下型1の面1Bは、それぞれ拘束する金属板10側を向く面である。
使用するスペーサー4の材料は、好適にはスペーサー4の変形を無視できる金属系の材料が望ましい。しかし、スペーサー4の材料として、そのほかの硬質ゴム等の材料も適用可能である。また、スペーサー4は、離隔方向に沿った厚さが一定となった平板形状となっている。
図3に示すせん断加工装置は、肩部に下刃1Aを有する下型1と、肩部に上刃3Aを有する上型3と、板押さえ2とを備える。下型1は例えばダイであり、上型3は例えばパンチである。せん断加工装置は、せん断の際に、下型1の面1Bと板押さえ2の面2Bが、金属板10を拘束可能な配置構成となっている。そして、金属板10を拘束した状態で、下刃1Aに対し相対的に上刃3Aをせん断方向に相対移動させることで、金属板10をせん断する構成となっている。このとき、上刃3Aと下刃1AのクリアランスΔCは、予め設定した値に設定されて、せん断が実行される。
更に、図3に示すせん断加工装置は、金属板10と板押さえ2の面2Bの間にスペーサー4が介挿されて構成される。スペーサー4は、平板状の部材である。スペーサー4は、板押さえ2の面2Bの面に沿って、下刃1Aに対し接近・離隔が可能となっている。
また、スペーサー4の離隔距離Lは、不良状態を判定するためには、例えば1mm以上に設定することが好ましい。
せん断条件Bの拘束不良条件は、図4に示すように、板押さえ2の面2Bが、せん断待機状態の金属板10に当たっていないが、下型1の面1Bが金属板10に当たっている場合である。一点鎖線で示す金属板10が、せん断待機の状態である。実線で示す金属板10Aが、せん断時の状態である。
図4に示す拘束状態は、量産などのプレス成形品の実生産工程においては、板押さえ荷重が足りないなどの原因によって発生する。つまり、図4に示す拘束状態は、待機位置の金属板10に対し、板押さえ2が浮いてしまった状態を模擬したものである。図4は、その状態から、下刃1Aと上刃3Aとで金属板10のせん断が行われた状態を模擬している。この図4の拘束状態では、せん断待機時の板押さえ2の面2Bと金属板10との隙間(対向距離)が、板押さえ2の浮きに応じた不良の度合いの変数となりうる。
図5に示すせん断加工装置は、肩部に下刃1Aを有する下型1と、肩部に上刃3Aを有する上型3と、板押さえ2とを備える。下型1は例えばダイであり、上型3は例えばパンチである。せん断加工装置は、せん断の際に、下型1の面1Bと板押さえ2の面2Bが、金属板10を拘束可能な配置構成となっている。そして、板を拘束した状態で、下刃1Aに対し相対的に上刃3Aをせん断方向に相対移動させる。これによって、金属板10をせん断する構成となっている。このとき、上刃3Aと下刃1AのクリアランスΔCは、予め設定した値に設定されて、せん断が実行される。
更に、図5に示すせん断加工装置は、せん断条件Bの状態を再現するために、板押さえ2の面2Bと下型1の面1Bの間に、金属板10の板厚よりも厚さHを有するスペーサー4を介挿している。そのスペーサー4は、金属板10に接触(干渉)しない位置に配置される。
このせん断条件Bのせん断加工において、スペーサー4の厚さHは、板押さえ2の不良の影響を考慮すると、金属板10の板厚よりも0.2mm以上厚いことが望ましい。もっとも、正常な拘束状態の評価として、スペーサー4として、厚さHが金属板の板厚と等しい場合を含めても良い。
せん断条件Cの拘束不良条件は、図6に示すように、板押さえ2の面2Bが金属板10に当たっているが、下型1の面1Bが、下刃1Aの付近で金属板10に当たっていない場合である。図6中、符号H′が、下刃1Aの付近での、下型1の面1Bと金属板10との間の隙間量である。また、図6中の符号Sが、下型1の面1B及び板押さえ2の面2Bがそれぞれ、せん断待機状態の金属板10に接触している部分を例示している。ここで、図6では、下型1の面1Bと板押さえ2の面2Bにおける金属板10を拘束する部分の面が平面でない。その理由は、次に通りである。すなわち、図6は、プレス成形後の金属板10を拘束した状態を模擬しているためである。すなわち、図6では、下型1の面1B及び板押さえ2の面2Bが、せん断時に拘束するプレス成形品の拘束位置の金属板形状に沿った形状となっていることを表現した模式図である。
この図6の状態では、平面視における、下型1の面1Bと金属板10の接触部Sの、下刃1Aの接触部の間の離隔距離L′と、上刃3Aの接触部S付近でどの程度下型1の面1Bが金属板10から離れているかが不良の度合いの変数となりうる。
図7に示すせん断加工装置は、肩部に下刃1Aを有する下型1と、肩部に上刃3Aを有する上型3と、板押さえ2とを備える。下型1は例えばダイであり、上型3は例えばパンチである。せん断加工装置は、せん断の際に、下型1の面1Bと板押さえ2の面2Bが、金属板10を板厚方向で拘束可能な配置構成となっている。そして、金属板10を拘束した状態で、下刃1Aに対し相対的に上刃3Aをせん断方向に相対移動させる。これによって、金属板10をせん断する構成となっている。このとき、上刃3Aと下刃1AのクリアランスΔCは、予め設定した値に設定されて、せん断が実行される。
なお、試験片作製用のせん断加工では、金属板10は、平坦な形状である。このため、図7に示す、下型1の面1Bと板押さえ2の面2Bは、平坦な面となっている。
そして、図7に示すせん断加工装置では、せん断条件Cの状況を再現するために、下型1の面1Bと金属板10の間の少なくとも一部にスペーサー4が介挿されている。
ここで、せん断条件Cのせん断加工において、スペーサー4の厚さHは、板押さえ不良の影響を考慮して、0.5mm以上が好ましい。また、スペーサー4の離隔距離Lは、板押さえ不良の影響を考慮して、1mm以上が好ましい。
また、第1の工程50Aにおいて、せん断条件A、B、C毎に、個別に複数の試験片を作製する。
第2の工程50Bは、第1の工程50Aで作製された各種の試験片に対し、せん断端面に予め設定した外的な負荷応力を負荷し、その負荷状態で試験片を拘束する工程である。応力負荷の方法は、例えば、引張応力負荷又は曲げ応力負荷により行う。この場合、治具を用いた曲げ応力負荷による方法が、簡便性の観点から特に望ましい。この負荷の方法は、公知の方法を採用すれば良い。
例えば、せん断端面を有する試験片に、四点曲げにより応力を負荷する。応力の調整は予め金属板10に貼り付けしたひずみゲージにより実施することが望ましい。また、負荷は、軸引張による荷重等でも代替可能である。ここで負荷応力を、例えば100MPa刻みなど十分小さいスパンで変化させて、せん断条件の変数(調整量)毎に、複数の試験片を準備することが好ましい。
第3の工程50Cでは、第2の工程50Bで外的な負荷応力を負荷し、その状態で拘束した試験片を、予め設定した水素侵入環境に対し予め設定した時間設置する。そして、第3の工程50Cでは、その状態での当該試験片で、亀裂の発生状況を評価する。
このとき、水素侵入環境と設置時間は、評価の対象となる材料が実際に使用される環境下で侵入すると推定される水素量と同等の、水素侵入量が得られる条件にすることが好ましい。
そして、第1の工程50A及び第2の工程50Bで作成した各試験片について、上記の第3の工程50C~第4の工程50Dを、負荷する負荷応力の条件を変えて繰り返し実行する。このように、外的な負荷応力の負荷水準を複数とることで、せん断条件の変数毎に、遅れ破壊の発生しない負荷応力の限界値を判定することが可能である。この負荷応力の限界値を、遅れ破壊限界応力とも記載する。
第4の工程50Dでは、第1の工程50Aでのせん断条件の変数と、第3の工程50Cで求めた遅れ破壊の発生しない負荷応力の限界値(遅れ破壊限界応力)との複数の組合せデータを取得する。複数の組合せデータの取得は、せん断条件A、B、C毎に個別に、個別実行する。
その複数の組合せデータを参照して、せん断条件A、B、C毎に、せん断条件の変数と対応する負荷応力の限界値との相関の情報を求める。
このように、予め相関の情報を求めておくことで、せん断条件毎に、実際のプレス成形品や、成形予定のプレス成形品形状で、遅れ破壊が発生するかどうかを予測することが可能である。
逆に、せん断端面形成後(後トリム後)の負荷応力の上限値が決まっている場合には、後トリムに適用することのできるせん断条件の範囲を求めることで対応することも可能である。
なお、1つのプレス成形品に後トリム部の部分と前トリム部の部分とが併存する場合、後トリム部の評価と共に、前トリム部の評価も別途行ってもよい。
ここで、プレス成形品における、トリム後の成形の残留応力などは、通常のCAEによる成形解析により計算することが可能である。せん断端面の複数箇所で、せん断条件が異なる場合には、その複数の箇所毎に、又は代表とする箇所について、その部分のせん断条件を変数として、個々に遅れ破壊発生の有無を評価すればよい。
プレス成形されたプレス部品に対しせん断加工を行うせん断工程(後トリム工程)を有するプレス成形品の製造する場合、次のようにして、プレス成形品を製造することが良い。
すなわち、本実施形態の遅れ破壊特性評価方法によって、プレス成形品が遅れ破壊しないと評価される後トリム工程でのせん断条件を決定する。そして、その決定したせん断条件で後トリム用のせん断加工を行って、プレス成形品を製造する。
ここで、プレス成形後にせん断加工(後トリム)が行われる場合、外的な負荷応力は、例えば、後トリム用のせん断加工後の更なるプレス成形による残留応力となる。また、外的な負荷応力は、例えば、そのプレス成形の部品を他の構造物に組み付けた際に発生する組付け応力となる。
以上の遅れ破壊特性評価方法に使用される、プログラムの例を示す。
本例のプログラムは、せん断加工時のせん断条件の変数と、せん断端面に負荷可能な外的な負荷応力の限界値(遅れ破壊限界応力)との相関の情報40Aを、記憶部40に記憶しておく(図8参照)。せん断条件の変数は、せん断条件毎のスペーサー4の高さHや離隔距離Lである。すなわち、相関の情報は、せん断条件A、B、C毎に個別に求めて記憶しておく。
その相関の情報40Aは、上述のような遅れ破壊特性の評価方法の処理で求めればよい。そして、本例のプログラムは、相関の情報40Aを参照して、入力されたせん断加工時のせん断条件の変数に対応する、せん断加工後に負荷可能な負荷応力の限界値を求める処理を実行させるためのプログラムである。
図8に示す例は、相関情報算出部20、評価本体部30、及び記憶部40を備えている。そして、相関情報算出部20、及び評価本体部30の処理を行うプログラムは、コンピュータのRAMやROMなどの記憶部40に記憶され、コンピュータで実行される。
記憶部40は、データベースなどの記録媒体からなる。
金属板10の材料条件、水素環境の条件、せん断条件、成形ひずみ量を、種々変更しつつ、上記第1の工程50A~第4の工程50Dの処理を繰り返す。それによって、金属板10の材料条件、水素環境の条件、せん断加工時のせん断条件毎に、試験条件を変数として、せん断条件の変数に対し求めた負荷応力dのデータを、記憶部40に記憶しておく。また、記憶部40には、求めた相関の情報40Aも記憶される。相関の情報40Aは、プログラムの格納場所と同じ媒体に格納されていてもよい。
相関情報算出部20では、まず、ステップS10にて、評価の基礎条件として、材料の種類(鋼種や厚さH)の条件と、遅れ破壊の条件である水素環境の条件(酸度や設置時間)の入力を促す。その後、作業者の入力操作で、相関情報算出部20は、上記入力を取得する。
次に、ステップS20にて、せん断加工時のせん断条件の変数の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力を取得する。せん断条件の変数は、例えば、スペーサー4の厚さHや離隔距離Lである。
このデータ群は、せん断条件A、B、C毎に個別に収集する。
又は、試験によって求めた各せん断条件の変数に対する負荷応力のデータ群の入力を促し、作業者の入力操作で、上記入力情報を取得する。取得したデータは、記憶部40に記憶する。
次に、ステップS50では、ステップS40で求めた負荷応力dの関数を、下記式のような、安全率s(:0<s≦1)を考慮した式に変更する。
d =s・f(x)
そして、求めた、負荷応力dの関数の情報(相関の情報40A)は、試験条件をキーとして記憶部40に記憶する。
評価本体部30では、まず、ステップS100にて、評価の対象の、材料の種類(鋼種や厚さH)の条件と、遅れ破壊の条件である水素環境の条件(酸度や設置時間)の入力を促す。そして、作業者の入力操作で、評価本体部30は、上記入力を取得する。
次に、ステップS110では、せん断加工時のせん断条件の変数xの値と、せん断端面形成後に金属板10に負荷される負荷応力gの入力を促す。そして、作業者の入力操作で、評価本体部30は、上記入力を取得する。これらの情報は、CAE解析の解析情報から取得しても良い。
ここで、図8のステップS130では、遅れ破壊のリスクがあるか否かの判定を行っているが、遅れ破壊までの負荷応力の余裕度(=d-g)を併せて出力するようにしてもよい。
本実施形態では、プレス成形品の後トリムでのせん断条件を加味して遅れ破壊の限界応力を設定、又は遅れ破壊の発生を判定することが可能となる。この結果、本実施形態では、例えば自動車のパネル部品、構造・骨格部品等の各種部品に高強度鋼板を適用する際に遅れ破壊特性を向上することができる。
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)開示1は、高強度鋼板からなる金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
上記金属板にせん断加工を施すことで、上記せん断端面を有する金属板の試験片を作製し、
作製した上記試験片のせん断端面に負荷応力を負荷した状態で、当該試験片を水素侵入環境下に設置することで、
上記せん断加工のせん断条件に対する、上記せん断端面の遅れ破壊特性を評価する、
遅れ破壊特性評価方法。
せん断条件毎に上記金属板の遅れ破壊特性を評価する。
(3)開示3は、上記せん断条件に対する、せん断後のせん断端面における水素侵入環境下で遅れ破壊の発生しない負荷応力の限界値を求め、
求めた負荷応力の限界値に基づき、上記せん断端面の遅れ破壊特性を評価する。
その相関によって、上記せん断条件に対する、許容される負荷応力を評価する。
(5)開示5は、上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である。
(6)開示6は、上記せん断加工は、肩部に下刃を有する下型と板押さえとで、上記金属板を拘束した状態で、上記下刃と上刃とで上記金属板をせん断することで行われ、
上記拘束される金属板と上記板押さえとの間にスペーサーを介挿し、
上記下刃から上記スペーサーまでの離隔距離、及び上記スペーサーの厚さのうちの少なくとも一方の条件を変えることで、上記せん断条件を変更する。
上記金属板と接触しない位置で、上記下型と上記板押さえとの間に、上記金属板の厚さよりも厚いスペーサーを介挿することで、上記金属板を拘束する上記下型と上記板押さえの対向距離を規定し、
上記スペーサーの厚さを変えることで、上記せん断条件を変更する。
上記拘束される金属板と上記下型との間にスペーサーを介挿し、
上記下刃からスペーサーまでの離隔距離、及び上記スペーサーの厚さのうちの少なくとも一方の条件を変えることで、上記せん断条件を変更する。
本開示の遅れ破壊特性評価方法に基づき、上記せん断加工の上記せん断条件と上記負荷応力の限界値との相関を予め求め、
その相関によって、上記プレス部品へのせん断加工による、上記プレス成形品の遅れ破壊の発生の有無を予測する、
遅れ破壊予測方法。
(10)開示10は、上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である。
コンピュータに、上記記憶している相関の情報を参照して、入力されたせん断条件に対応する負荷可能な負荷応力の限界値を求める処理を実行させるためのプログラム。
本開示の遅れ破壊特性評価方法に基づき求めた、上記せん断加工の上記せん断条件と上記負荷応力の限界値との相関の情報が、記憶部に記憶され、
コンピュータに、
上記記憶している相関の情報を参照して、入力されたせん断条件に対応する負荷応力の限界値を求める第1の処理ステップと、
上記せん断加工後にプレス部品の上記せん断加工で形成されたせん断端面に負荷される負荷応力である成形応力と、第1の処理ステップで求めた負荷応力の限界値とから、遅れ破壊の発生の有無を判定する第2の処理ステップと、
を実行させるためのプログラム。
(13)開示13は、上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である。
本開示の遅れ破壊特性評価方法によって、上記プレス成形品が遅れ破壊しないと評価されるせん断条件を決定し、
その決定したせん断条件で上記せん断加工を行う、
プレス成形品の製造方法。
(15)開示15は、上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である。
肩部に下刃を有する下型と、板押さえと、肩部に上刃を有する上型とを備えて、上記金属板を、上記下型と上記板押さえで拘束した状態で、上記下刃と上記上刃とで上記金属板をせん断する構成となっており、
上記金属板と上記板押さえとの間に介挿されるスペーサーを有する、
せん断加工装置。
肩部に下刃を有する下型と、板押さえと、肩部に上刃を有する上型とを備えて、上記金属板を、上記下型と上記板押さえで拘束した状態で、上記下刃と上記上刃とで上記金属板をせん断する構成となっており、
上記金属板と接触しない位置で、上記下型と上記板押さえとの間に介挿するスペーサーを有し、上記スペーサーの厚さは、上記金属板の板厚より厚い、
せん断加工装置。
肩部に下刃を有する下型と、板押さえと、肩部に上刃を有する上型とを備えて、上記金属板を、上記下型と上記板押さえで拘束した状態で、上記下刃と上記上刃とで上記金属板をせん断する構成となっており、
上記金属板と上記下型との間に介挿するスペーサーを有する、
せん断加工装置。
本実施例では、板厚1.4mmの強度1470MPa級鋼からなる供試材Aを、評価の対象の金属板として説明する。ただし、本発明は、このような金属板に限るものではない。本発明は、せん断端面に遅れ破壊が発生する可能性が高い引張強度が980MPa以上の超ハイテンをはじめとした金属材料に対して好適に適用できる。
せん断条件Aの状況を再現するために、図3に示したような、板押さえ2の面2Bと金属板10の間にスペーサー4を挿入したせん断加工装置でせん断加工を実施した。
この状態において、スペーサー4の下刃1Aからの離隔距離Lと、スペーサー4の厚さHを変数として調整した。スペーサー4の材質には、590MPa級の鋼板材を使用した。
この実施例Aでは、スペーサー4の高さHを2mmに固定した。また、スペーサー4の下刃1Aからの離隔距離Lを、2mm、4mm、6mmと、せん断条件Aでの変数を変化させた。これによって、実施例A用の試験片を作製した。
せん断条件Bの状況を再現するために、図5に示したように、板押さえ2の面2Bと下型1の面1Bの間に、金属板10の板厚よりも厚さが大きなスペーサー4を設けた装置を用いた。そのスペーサー4は、金属板10に接触しない位置に設けた。そして、せん断待機状態では、金属板10が板押さえ2の面2Bと接触しない状態として、せん断加工を実施した。
実施例Bでは、せん断条件の調整として、スペーサー4の厚さHを調整した。実施例Bでは、スペーサー4の厚さHを、1.9mm、2.4mm、3.4mmと調整した。これは、それぞれ0.5mm、1.0mm、2.0mmの隙間が、金属板10と板押さえ2の面2Bとの間にできる状態である。
せん断条件Cの状況を再現するために、図7に示したように、下型1の面1Bと金属板10の間の少なくとも一部にスペーサー4を挿入した装置を用いて、せん断加工を実施した。この状態において、スペーサー4の下刃1Aからの離隔距離Lとスペーサー4の厚さHを調整した。
実施例Cでは、スペーサー4の厚さHを、2mmとし、スペーサー4の下刃1Aからの離隔距離Lを、2mm、4mm、6mmと変化させた。
ここでの評価は、せん断面を目視することで行った。
せん断条件Aの各条件においては、せん断端面は、通常のせん断条件とほぼ同一のせん断端面の状態となり、スペーサー4の影響はほとんどなかった。
また、せん断条件Bの各条件においては、板押さえ2から金属板10が解放されていた影響で、金属板10は、板押さえ2側に跳ね上がりながらせん断された。その影響で、せん断面が板厚に対して垂直ではなく斜め方向となっていた。そして、せん断端面も、延伸方向に対して部分的に二次せん断面が生じるなど、不安定な状態となっていた。その傾向は、スペーサー4の高さHが大きいほど強かった。
次に、上記作製した各試験片に四点曲げにより応力を負荷した。応力は、予め金属板10に貼り付けしたひずみゲージによりひずみを測定した。そして、応力は、ヤング率である205GPaをひずみ量に乗じることで測定して調整した。ここで、同じせん断条件の試験片毎に、負荷応力を100MPa刻みで変化させて、複数の試験片を準備した。
次に、負荷を付与した各試験片を、水素侵入環境下に設置して遅れ破壊の発生の有無を調査した。すなわち、応力負荷状態の試験片をpH3.5の塩酸に96h浸漬し、浸漬後にせん断端面で亀裂が発生していた場合、遅れ破壊が発生したと判定した。
(遅れ破壊特性の評価)
ここで、スペーサー4を設けない通常のせん断条件においては、遅れ破壊の限界応力は1200MPaだった。ここでは、これを評価の基準とする。
表1に、スペーサー4の高さHが2mmの場合の、実施例Aの結果を示す。
表3に、実施例Bの評価結果を示す。表3中、Dは、板押さえ2の面2Bと金属板10との間の隙間である。
表3から分かるように、高さHが1.7mm以上で遅れ破壊限界応力は低下した。そして、スペーサー4の高さHが大きくなるほど、遅れ破壊限界応力は低下した。つまり、金属板10と板押さえ2の面2Bの間に隙間が大きいほど、遅れ破壊限界応力は低下した。なお、本実施例では試験片の板厚が1.4mmである。このため、板押さえ2の面2Bと金属板10の間の隙間は、スペーサー4の高さHから、1.4mm減算した値となる。
表4に、実施例Cの評価結果を示す。表4は、スペーサー4の高さHを一定値(2mm)として、スペーサー4の離隔距離Lを変化させた場合の例である。
離隔距離L=0の場合にはスペーサー4そのものが下型1として機能したため限界応力は変化しなかった。しかし、離隔距離Lが0.5mm以上では、離隔距離Lが大きいほど遅れ破壊限界応力は低下した。
表5から分かるように、高さHが0.1mm以上で遅れ破壊限界応力の低下がみられ、高さHが増加するほどに遅れ破壊限界応力は低下することが分かった。
以上の表1~表5の結果から、最大負荷応力が1000MPaという基準で遅れ破壊が発生しない条件を考えた場合、次のことが分かった。
本例の場合、せん断条件Aの条件からは、板押さえ2は下刃1A接触部から6mm以内かつ金属板10との離隔距離は2mm以内の条件でのせん断であればよいことが分かった。
また、せん断条件Bの条件からは、板押さえ2の金属板10からの浮き上がりは0.5mm以内(すなわちスペーサー4高さHが1.9mm以下)条件でのせん断であればよいことが分かった。
更に、せん断条件Cの条件からは、下刃1A接触部から金属板10と下型1の面1Bの離隔隙間は2mm以内かつ金属板10との離隔距離は2mm以内の条件でのせん断であればよいことが分かった。
この部品を、符号12の位置でせん断した。そのせん断の際に、次の条件Dと条件Eとでせん断を実施した。
条件Dでは、板押さえ2の面2Bと金属板10の間に2mmの隙間を設けてせん断した。また、条件Eでは、板押さえ2の面2Bと金属板10の間の隙間を0.5mm以内にして、金属板10と下型1の面1Bの間の隙間も1mm以内でほぼ密着している状態でせん断した。
ここで、条件Dは、表3のスペーサー4高さHが3.4mmの場合に相当する。
また、条件Eは、金属板10が上下型1、3に接触していない箇所では表3のスペーサー4高さHが1.9mm未満の状況に相当する。そして、金属板10が下型1にのみ接触していない状況でも表4の離隔距離Lが1mm未満の状況である。このため、条件Eは、上記の最大負荷応力が1000MPaという基準で遅れ破壊が発生しない条件を満たしていると考えられる。
1A 下刃
1B 金属板を拘束する面
2 板押さえ
2B 金属板を拘束する面
3 上型
3A 上刃
4 スペーサー
10 金属板
20 相関情報算出部
30 評価本体部
40 記憶部
40A 相関の情報
50A 第1の工程
50B 第2の工程
50C 第3の工程
50D 第4の工程
H スペーサーの厚さ(高さ)
L スペーサーの離隔距離
Claims (15)
- 高強度鋼板からなる金属板のせん断端面の遅れ破壊特性を評価する遅れ破壊特性評価方法であって、
上記金属板にせん断加工を施すことで、上記せん断端面を有する金属板の試験片を作製し、
作製した上記試験片のせん断端面に負荷応力を負荷した状態で、当該試験片を水素侵入環境下に設置することで、
上記せん断加工のせん断条件に対する、上記せん断端面の遅れ破壊特性を評価する、
遅れ破壊特性評価方法。 - 上記試験片として、上記せん断加工のせん断条件が異なる複数の試験片を作製し、
せん断条件毎に上記金属板の遅れ破壊特性を評価する、
請求項1に記載した遅れ破壊特性評価方法。 - 上記せん断条件に対する、せん断後のせん断端面における水素侵入環境下で遅れ破壊の発生しない負荷応力の限界値を求め、
求めた負荷応力の限界値に基づき、上記せん断端面の遅れ破壊特性を評価する、
請求項2に記載した遅れ破壊特性評価方法。 - 請求項3に記載の遅れ破壊特性評価方法に基づき、上記せん断条件と上記負荷応力の限界値との相関を予め求め、
その相関によって、上記せん断条件に対する、許容される負荷応力を評価する、
遅れ破壊特性評価方法。 - 上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した遅れ破壊特性評価方法。 - 上記せん断加工は、肩部に下刃を有する下型と板押さえとで、上記金属板を拘束した状態で、上記下刃と上刃とで上記金属板をせん断することで行われ、
上記拘束される金属板と上記板押さえとの間にスペーサーを介挿し、
上記下刃から上記スペーサーまでの離隔距離、及び上記スペーサーの厚さのうちの少なくとも一方の条件を変えることで、上記せん断条件を変更する、
請求項5に記載した遅れ破壊特性評価方法。 - 上記せん断加工は、肩部に下刃を有する下型と板押さえとで、上記金属板を拘束した状態で、上記下刃と上刃とで上記金属板をせん断することで行われ、
上記金属板と接触しない位置で、上記下型と上記板押さえとの間に、上記金属板の厚さよりも厚いスペーサーを介挿することで、上記金属板を拘束する上記下型と上記板押さえの対向距離を規定し、
上記スペーサーの厚さを変えることで、上記せん断条件を変更する、
請求項5に記載した遅れ破壊特性評価方法。 - 上記せん断加工は、肩部に下刃を有する下型と板押さえとで、上記金属板を拘束した状態で、上記下刃と上刃とで上記金属板をせん断することで行われ、
上記拘束される金属板と上記下型との間にスペーサーを介挿し、
上記下刃からスペーサーまでの離隔距離、及び上記スペーサーの厚さのうちの少なくとも一方の条件を変えることで、上記せん断条件を変更する、
請求項5に記載した遅れ破壊特性評価方法。 - 金属板をプレス成形して製造されたプレス部品に対するせん断加工の工程を有して製造されるプレス成形品における、上記せん断加工による遅れ破壊の発生の有無を予測する予測方法であって、
請求項3に記載の遅れ破壊特性評価方法に基づき、上記せん断加工の上記せん断条件と上記負荷応力の限界値との相関を予め求め、
その相関によって、上記プレス部品へのせん断加工による、上記プレス成形品の遅れ破壊の発生の有無を予測する、
遅れ破壊予測方法。 - 上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である、
請求項9に記載した遅れ破壊予測方法。 - 請求項3に記載の遅れ破壊特性評価方法に基づき求めた、上記せん断加工の上記せん断条件と上記負荷応力の限界値との相関の情報が、記憶部に記憶され、
コンピュータに、上記記憶している相関の情報を参照して、入力されたせん断条件に対応する負荷可能な負荷応力の限界値を求める処理を実行させるためのプログラム。 - 金属板をプレス成形して製造されたプレス部品に対するせん断加工の工程を有して製造されるプレス成形品における、上記せん断加工による、遅れ破壊の発生の有無を予測するためのプログラムであって、
請求項3に記載の遅れ破壊特性評価方法に基づき求めた、上記せん断加工の上記せん断条件と上記負荷応力の限界値との相関の情報が、記憶部に記憶され、
コンピュータに、
上記記憶している相関の情報を参照して、入力されたせん断条件に対応する負荷応力の限界値を求める第1の処理ステップと、
上記せん断加工の後にプレス部品の上記せん断加工で形成されたせん断端面に負荷される負荷応力である成形応力と、第1の処理ステップで求めた負荷応力の限界値とから、遅れ破壊の発生の有無を判定する第2の処理ステップと、
を実行させるためのプログラム。 - 上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である、
請求項11又は請求項12に記載したプログラム。 - 金属板をプレス成形して製造されたプレス部品に対するせん断加工の工程を有して製造されるプレス成形品の製造方法であって、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の遅れ破壊特性評価方法によって、上記プレス成形品が遅れ破壊しないと評価されるせん断条件を決定し、
その決定したせん断条件で上記せん断加工を行う、
プレス成形品の製造方法。 - 上記せん断条件は、上記せん断加工での金属板の拘束条件である、
請求項14に記載したプレス成形品の製造方法。
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