以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、放射線検出装置10の機能構成例を示すブロック図である。放射線検出装置10は、例えば蛍光X線分析装置である。放射線検出装置10は、試料52に電子線又はX線等の放射線を照射する照射部35と、試料52が載置される試料台51と、放射線検出器2とを備えている。照射部35から試料52へ放射線が照射され、試料52では蛍光X線等の放射線が発生し、放射線検出器2は試料52から発生した放射線を検出する。図中には、放射線を矢印で示している。なお、放射線検出装置10は、試料台51に載置させる方法以外の方法で試料52を保持する形態であってもよい。
放射線検出器2には、放射線検出素子1及びプリアンプ21が含まれている。プリアンプ21は、一部が放射線検出器2の内部に含まれ他の部分が放射線検出器2の外部に配置されていてもよい。放射線検出器2には、信号処理部32と、放射線検出素子1に放射線検出のために必要な電圧を印加する電圧印加部31とが接続されている。信号処理部32には、分析装置4が接続されている。電圧印加部31、信号処理部32、照射部35及び分析装置4は、制御部33に接続されている。制御部33は、電圧印加部31、信号処理部32、照射部35及び分析装置4の動作を制御する。分析装置4には、液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescent Display)等の表示部34が接続されている。制御部33は、使用者の操作を受け付け、受け付けた操作に応じて放射線検出装置10の各部を制御する構成であってもよい。
図2は、放射線検出器2の構成の第1例を示す模式的断面図である。放射線検出器2は、SDD(Silicon Drift Detector)である。放射線検出器2は、円筒の一端に切頭錐体が連結した形状のハウジング25を備えている。ハウジング25は、板状の底板部にキャップ状のカバーが被さって構成されている。ハウジング25の先端には、開口部251が形成されている。開口部251には窓材を有する窓は設けられておらず、開口部251は塞がれていない。ハウジング25の内側には、放射線検出素子1、コリメータ22、回路基板23、冷却部24、及びコールドフィンガ26が配置されている。ハウジング25は、放射線検出素子1、コリメータ22、回路基板23及び冷却部24を収容している。冷却部24は例えばペルチェ素子である。
放射線検出素子1は、回路基板23の表面に実装されており、開口部251に対向する位置に配置されている。コリメータ22は、両端が開口した筒状であり、放射線を遮蔽する材料で構成されている。コリメータ22は、放射線検出素子1と開口部251との間に配置されている。コリメータ22の一端は開口部251に対向しており、他端は放射線検出素子1の表面に対向している。主に開口部251を通過して放射線がハウジング25の内側へ入射し、コリメータ22は、放射線の一部を遮蔽する。放射線検出素子1は、コリメータ22で遮蔽されずに入射した放射線を検出する。
回路基板23には、回路が形成されており、プリアンプ21が実装されている。図2では、プリアンプ21を省略している。回路基板23の裏面は、直接に又は介在物を介して、冷却部24の吸熱部分に熱的に接触している。冷却部24の放熱部分はコールドフィンガ26に熱的に接触している。コールドフィンガ26は、冷却部24の放熱部分が熱的に接触する平板状の部分と、ハウジング25の底板部を貫通している部分とを有している。放射線検出素子1の熱は、回路基板23を通じて冷却部24に吸熱され、冷却部24からコールドフィンガ26へ伝わり、コールドフィンガ26を通じて放射線検出器2の外部へ放熱される。
放射線検出器2は、ハウジング25の底板部を貫通した複数のリードピン27を備えている。リードピン27は、ワイヤボンディング等の方法で回路基板23に接続されている。電圧印加部31による放射線検出素子1への電圧の印加と、プリアンプ21からの信号の出力とはリードピン27を通じて行われる。なお、放射線検出器2は、その他の構成物を更に備えていてもよい。
図3は、放射線検出器2の構成の第2例を示す模式的断面図である。この第2例では、放射線検出器2は、冷却部24及びコールドフィンガ26を備えていない。回路基板23の裏面は、直接に又は介在物を介して、ハウジング25の底板部に熱的に接触している。放射線検出素子1の熱は、回路基板23を通じてハウジング25の底板部へ伝導し、底板部から放射線検出器2の外部へ放出される。この第2例においても、放射線は、主に開口部251を通過してハウジング25の内側へ入射し、放射線検出素子1へ入射する。
図4は、放射線検出素子1及びコリメータ22の例を示す模式的断面図である。放射線検出素子1は、シリコンドリフト型放射線検出素子である。放射線検出素子1は、全体的に平板状である。放射線検出素子1は、Si(シリコン)からなる板状の半導体部11を備えている。半導体部11の成分はn型のSiである。放射線検出素子1は、検出対象の放射線が入射する入射側に位置する入射面151と、入射面151の裏側に位置する電極面152とを有する。入射面151の一部は、コリメータ22で覆われている。放射線検出素子1は、電極面152が回路基板23に対向し、入射面151が開口部251に対向するように、配置されている。
放射線検出素子1の、入射面151から半導体部11までの間の部分には、表面層12が設けられている。表面層12は、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の複数の層から構成されている。電極層123は、半導体部11の入射面151側にある部分に設けられている。電極層123は、Siを半導体部11の成分とは異なる型の半導体にするドーパントがドープされている。電極層123の成分は、ホウ素等の特定のドーパントがSiにドープされたp型のSiであり、例えば、p+Siである。電極層123は、電極として機能する。電極層123は、平面視で入射面151の中央に対応する部分を含む、入射面151に沿った大半の領域に形成されている。例えば、電極層123の形状は平面視で円状である。入射面151の中でコリメータ22で覆われていない部分に対応する領域には全て電極層123が形成されている。入射面151に沿った領域の周縁には、電極層123が形成されていない部分が存在する。
電極層123の外側には、環状のガードリング電極161が設けられている。ガードリング電極161は、電極層123の周囲を囲む位置に配置されている。ガードリング電極161の電位は浮遊電位である。図4には、単一のガードリング電極161を示しているが、実際には、多重の環状になった複数のガードリング電極161が設けられている。ガードリング電極161は、半導体部11の縁と電極層123との間の絶縁破壊を防止する。なお、ガードリング電極161の外側に、接地電位に接続される接地電極が設けられていてもよい。接地電極が設けられている場合は、ガードリング電極161は、電極層123と接地電極との間の絶縁破壊を防止する。
電極層123、及び半導体部11の入射面151側の部分は、酸化膜122で覆われている。酸化膜122の成分はSiの酸化物である。電極層123は、放射線検出素子1の外部と接続されている。例えば、酸化膜122を貫通した図示しない金属電極が電極層123に接続されており、ガードリング電極161は金属電極を介して放射線検出素子1の外部と接続されている。
酸化膜122の少なくとも一部は、遮光膜121で覆われている。少なくとも、酸化膜122の、平面視でコリメータ22が重なっていない部分は、遮光膜121で覆われている。遮光膜121は、遮光性を有する物質で構成されている。例えば、遮光膜121の成分はアルミニウム又はカーボンである。遮光膜121の成分は、金、ベリリウム又はマグネシウムであってもよい。或いは、遮光膜121の成分は、アルミニウム、カーボン、金、ベリリウム又はマグネシウムを含んだ合金であってもよい。遮光膜121により、放射線検出素子1の内部へ光が入射することが効果的に防止され、光によりノイズが発生することが防止される。例えば、遮光膜121の表面が入射面151をなす。遮光膜121は、更に保護膜で覆われていてもよい。
半導体部11の電極面152側にある部分には、放射線検出時に信号を出力する電極である信号出力電極13が設けられている。信号出力電極13の成分は、半導体部11と同じ型のSiである。例えば、信号出力電極13の成分は、リン等の特定のドーパントがSiにドープされたn+Siである。また、半導体部11の電極面152側にある部分には、平面視で多重の環状になった複数の曲線状電極14が設けられている。曲線状電極14の成分は、半導体部11とは異なる型の半導体であり、ホウ素等の特定のドーパントがSiにドープされたp型のSiである。例えば、曲線状電極14の成分は、p+Siである。複数の曲線状電極14はほぼ同心であり、複数の曲線状電極14のほぼ中心に信号出力電極13が位置している。即ち、複数の曲線状電極14は信号出力電極13を囲んでおり、信号出力電極13と夫々の曲線状電極14との間の距離は異なる。
図4には四つの曲線状電極14を示しているが、実際にはより多くの曲線状電極14が設けられている。なお、曲線状電極14の形状は円環以外の環であってもよく、多重の曲線状電極14は同心でなくともよい。曲線状電極14の形状は環の一部が欠けた形状であってもよい。信号出力電極13は、多重の曲線状電極14の中心以外の位置に配置されていてもよい。放射線検出素子1は、信号出力電極13、複数の曲線状電極14及び電極層123の組を複数有する形態であってもよい。
複数の曲線状電極14の外側には、環状のガードリング電極162が設けられており、ガードリング電極162の外側には、環状の接地電極163が設けられている。接地電極163は、接地電位に接続される。ガードリング電極162の電位は浮遊電位である。ガードリング電極162は、曲線状電極14と接地電極163との間の絶縁破壊を防止する。図4には、単一のガードリング電極162を示しているが、実際には、多重の環状になった複数のガードリング電極162が設けられている。なお、接地電極163が設けられておらず、入射面151側に接地電極が設けられていてもよい。接地電極163が設けられていない場合、ガードリング電極162は、半導体部11の縁と曲線状電極14との間の絶縁破壊を防止する。入射面151又は電極面152側の少なくとも一方には、接地電極が設けられている必要がある。
ガードリング電極161及び162は、半導体部11とは異なる型の半導体であり、p型のSiである。例えば、ガードリング電極161及び162の成分は、p+Siである。ガードリング電極161及び162は同じ極性になっている。なお、ガードリング電極161及び162の電位は固定電位であってもよい。
半導体部11の電極面152側の部分は、酸化膜124で覆われている。酸化膜124の成分はSiの酸化物である。酸化膜124の代わりにSiの窒化膜が設けられていてもよい。酸化膜124は、更に保護膜で覆われていてもよい。信号出力電極13、曲線状電極14及び接地電極163は、放射線検出素子1の外部と接続されている。例えば、酸化膜124を貫通した図示しない金属電極が信号出力電極13、曲線状電極14及び接地電極163の夫々に接続されている。信号出力電極13、曲線状電極14及び接地電極163は金属電極を介して放射線検出素子1の外部と接続されている。
最も内側の曲線状電極14と、最も外側の曲線状電極14とは、電圧印加部31に接続されている。複数の曲線状電極14は、最も内側の曲線状電極14の電位が最も高く、最も外側の曲線状電極14の電位が最も低くなるように、電圧印加部31から電圧を印加される。また、放射線検出素子1は、信号出力電極13からの距離が互いに異なり隣接する曲線状電極14の間に、所定の電気抵抗が発生するように構成されている。例えば、隣接する曲線状電極14の間に位置する部分の成分を調整することで、二つの曲線状電極14が接続される電気抵抗チャネルが形成されている。即ち、複数の曲線状電極14は、電気抵抗を介して数珠つなぎに接続されている。電圧が印加されることによって、夫々の曲線状電極14は、外側の曲線状電極14から内側の曲線状電極14に向けて順々に単調に増加する電位を有する。即ち、曲線状電極14の電位は、信号出力電極13に遠い曲線状電極14から信号出力電極13に近い曲線状電極14へ向けて順々に増加する。なお、複数の曲線状電極14の中に、電位が同じ隣接する一対の曲線状電極14が含まれていてもよい。
複数の曲線状電極14の電位によって、半導体部11内には、段階的に信号出力電極13に近いほど電位が高く信号出力電極13から遠いほど電位が低くなる電界(電位勾配)が生成される。また、電極層123は、電圧印加部31に接続されている。電極層123は、電極層123の電位が最も内側の曲線状電極14と最も外側の曲線状電極14との間の電位になるように、信号出力電極13から電圧が印加される。このように、半導体部11の内部には、信号出力電極13に近づくほど電位が高くなる電界が生成される。
照射部35から試料52へ放射線が照射され、試料52では蛍光X線等の放射線が発生し、放射線検出器2へ入射する。放射線は、主に開口部251を通過し、放射線検出器2の内部へ入射する。放射線検出器2の内部へ入射した放射線の一部は、コリメータ22で遮蔽される。コリメータ22で遮蔽されなかった放射線は、入射面151から放射線検出素子1へ入射する。放射線検出素子1へ入射した放射線は、表面層12を透過し、半導体部11へ入射する。表面層12は、半導体部11へ入射する前に放射線が透過する物体であり、表面層12の厚みは、表面層12中で放射線が透過する物質の量に対応する。
半導体部11へ入射した放射線は、半導体部11内で吸収され、吸収された放射線のエネルギーに応じた量の電荷が、半導体部11内に発生する。発生する電荷は電子及び正孔である。発生した電荷は、半導体部11の内部の電界によって移動し、一方の種類の電荷は、信号出力電極13へ集中して流入する。本実施形態では、放射線の入射によって発生した電子が移動し、信号出力電極13へ流入する。信号出力電極13へ流入した電荷は電流信号となって出力される。
信号出力電極13はプリアンプ21に接続されている。信号出力電極13が出力した信号はプリアンプ21へ入力される。プリアンプ21は、電流信号を電圧信号へ変換する。プリアンプ21は、放射線のエネルギーに応じた強度の信号を出力する。プリアンプ21は信号処理部32に接続されている。プリアンプ21が信号を出力することにより、放射線検出器2は、放射線のエネルギーに応じた強度の信号を出力する。信号処理部32は、放射線検出器2が出力した信号を受け付け、信号の強度を検出することにより、放射線検出器2が検出した放射線のエネルギーに対応する信号値を検出する。信号処理部32は、信号値別に信号をカウントし、信号値とカウント数との関係を示すデータを分析装置4へ出力する。
図5は、分析装置4の内部の構成例を示すブロック図である。分析装置4は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータである。分析装置4は、演算部41と、メモリ42と、読取部43と、記憶部44と、操作部45とを備えている。また、分析装置4は、信号処理部32、制御部33及び表示部34に接続されている。演算部41は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。演算部41は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ42は、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶する。メモリ42は、例えばRAM(Random Access Memory)である。読取部43は、光ディスク又は可搬型メモリ等の記録媒体40から情報を読み取る。
記憶部44は、不揮発性であり、例えばハードディスク又は不揮発性半導体メモリである。操作部45は、ユーザからの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報の入力を受け付ける。操作部45は、例えばタッチパネル、キーボード又はポインティングデバイスである。
演算部41は、記録媒体40に記録されたコンピュータプログラム441を読取部43に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム441を記憶部44に記憶させる。演算部41は、コンピュータプログラム441に従って、分析装置4に必要な処理を実行する。なお、コンピュータプログラム441は、分析装置4の外部からダウンロードされてもよい。又は、コンピュータプログラム441は、記憶部44に予め記憶されていてもよい。これらの場合は、分析装置4は読取部43を備えていなくてもよい。なお、分析装置4は、複数のコンピュータで構成されていてもよい。或は、制御部33及び分析装置4は同一のコンピュータで構成されていてもよい。
分析装置4は、信号処理部32が出力した信号値とカウント数との関係を示すデータを受け付ける。分析装置4は、信号処理部32からのデータに基づいて、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルを生成する。信号値は放射線のエネルギーに対応し、カウント数は放射線を検出した回数に対応するので、信号値とカウント数との関係から、放射線のスペクトルが得られる。スペクトルは、放射線のエネルギーと強度との関係を示す。放射線検出器2が出力した信号を信号値別にカウントする処理は、信号処理部32ではなく分析装置4で行ってもよい。放射線のスペクトルの生成は信号処理部32で行われてもよい。分析装置4は、放射線のスペクトルを表したスペクトルデータを記憶部44に記憶する。
図6は、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルの例を示すグラフである。図中の横軸は放射線のエネルギーを示し、縦軸は放射線の強度を示す。放射線のスペクトルには、複数のピークが含まれる。より詳しくは、試料52からは成分に応じたエネルギーを有する放射線が発生し、放射線のスペクトルには、試料52の成分に応じたピークが含まれる。放射線のスペクトルには、放射線検出器2内で発生した特性X線に起因するシステムピークが含まれている。図6中には、システムピークの位置を矢印で示す。分析装置4は、放射線のスペクトルを補正するための情報処理方法を実行する。より詳しくは、分析装置4は、生成した放射線のスペクトルからシステムピークを差し引くことにより、放射線のスペクトルを補正する処理を実行する。分析装置4は、情報処理部に対応する。
前述したように、試料52からの放射線は、開口部251を通過し、表面層12を透過し、半導体部11へ入射する。開口部251は、塞がれていないので、通過する放射線に対して影響を及ぼさない。放射線の一部は、表面層12を透過する際に、表面層12に吸収される。このため、放射線は減衰する。また、放射線を吸収した表面層12からは、蛍光X線等の特性X線が発生する。特性X線は、半導体部11へ入射し、検出される。このように、検出される放射線には表面層12からの特性X線が含まれており、放射線のスペクトルには、特性X線のスペクトルが混在している。表面層12からの特性X線スペクトルが、システムピークとなっている。
記憶部44は、放射線に関する放射線検出器2の特性を表した数値を記録した特性データ442を記憶している。特性データ442に記録された数値は、分析装置4が実行する情報処理において利用される。図7は、特性データ442の内容例を示す概念図である。特性データ442は、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123での放射線の吸収特性を表した吸収係数を記録している。物体へ入射する放射線の強度をI0 、物体を透過した放射線の強度をI、物体の吸収係数をμ、放射線が透過した物体の厚みをdとすると、以下の(1)式が成り立つ。
I=I0 exp(-μd) …(1)
吸収係数は、放射線のエネルギーに応じて変化する。図8は、吸収係数と放射線のエネルギーとの関係を示すグラフである。図中の横軸は放射線のエネルギーを示し、縦軸は各エネルギーを有する放射線に対する吸収係数を示す。全般的には、放射線はエネルギーが高いほど物体を透過し易く、放射線のエネルギーの増加に伴って吸収係数が減少する傾向がある。ところが、吸収係数は、吸収端と呼ばれる特定のエネルギーで急激に増加する。吸収端のエネルギーは、物体中の電子の遷移を発生させるエネルギーである。吸収端よりも高いエネルギーの放射線が物体に吸収された場合、物体内の原子は励起され、吸収端よりも低いエネルギーの特性X線が発生する。物体に特性X線を発生させる放射線が吸収される特定の帯域を、吸収帯域とする。吸収帯域は、吸収端よりも高いエネルギーが含まれる帯域である。吸収帯域に含まれる放射線が物体に吸収されたことに応じて、吸収帯域よりも低いエネルギーを有する特性X線が物体から発生する。即ち、物体からの特性X線に起因するシステムピークは、吸収帯域よりもエネルギーの低い帯域に発生する。
吸収係数は、物体の成分によって異なる。特性データ442には、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の夫々における吸収係数が記録されている。また、特性データ442には、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の夫々について、図8に示す如き、放射線の各エネルギーに対する吸収係数の値が記録されている。特性データ442には、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の夫々における吸収帯域が記録されている。特性データ442には、吸収端が記録されていてもよい。特性データ442には、放射線の吸収特性を表した情報として、吸収係数以外の情報が記録されていてもよい。
特性データ442には、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の夫々における特性X線の発生特性が記録されている。特性X線の発生特性は、吸収帯域に含まれる放射線が物体に吸収された場合に発生する特性X線のエネルギーを示す。また、特性X線の発生特性は、どの程度の強度の放射線が吸収された場合にどの程度の強度の特性X線が発生するのかを表すための特性値からなる。例えば、特性X線の発生特性には、蛍光収率又は分岐比が含まれる。
特性データ442には、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の夫々の厚みが記録されている。遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の各層の厚みが大きいほど、各層を透過する放射線が各層中で透過する物質の量が大きくなるので、各層の厚みは放射線が各層中で透過する物質の量に対応する値である。各層の厚みは、各層で吸収される放射線の強度に影響する。各層の厚みは、各層で発生する特性X線の強度にも影響する。また、遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の各層の順番が記録されている。例えば、半導体部11から近い順番が記録されている。
特性データ442は、システムピークの強度を補正するための補正係数を記録している。表面層12で発生した特性X線には、半導体部11へ入射することのないものが含まれる。例えば、図4に示す放射線検出素子1では、表面層12で発生した特性X線の中で、図中の上側、即ち半導体部11から離れる向きに放射された特性X線は、半導体部11へは入射しない。例えば、放射線検出器2内に、特性X線を反射する部品が配置されている場合は、半導体部11から離れる向きに放射された特性X線の一部がこの部品で反射され、半導体部11へ入射することがある。このように、遮光膜121で発生した特性X線の中で半導体部11へ入射する特性X線の割合は、放射線検出器2の構成によっても変化する。このため、システムピークの強度は、放射線検出器2の構成によっても変化する。補正係数は、放射線検出器2の構成に応じて、半導体部11へ入射する特性X線の強度を補正するための係数であり、放射線検出器2に固有の値である。補正係数の値は1未満である。
特性データ442に記録された各種の数値は、理論的な計算又は実験によって得られ、記録されている。演算部41は、必要に応じて、特性データ442に記録された数値を読み出し、読み出した数値を用いて後述の情報処理を実行する。なお、放射線に関する放射線検出器2の特性を表した数値の一部又は全部は、分析装置4の外部に記憶されていてもよく、演算部41は、分析装置4の外部に記憶された数値を取得して情報処理を実行してもよい。例えば、通信ネットワークを介して分析装置4接続されたデータベースに放射線に関する放射線検出器2の特性を表した数値が記憶され、特性データ442には夫々の数値を参照するためのリンクが記録されている。演算部41は、リンクを利用して、情報処理に必要な数値をデータベースから取得してもよい。
以下、分析装置4が実行する情報処理を説明する。図9は、分析装置4が実行する放射線のスペクトルを補正する情報処理の手順の第1の例を示すフローチャートである。第1の例では、システムピークの原因として遮光膜121からの特性X線のみを扱う。酸化膜122及び電極層123から発生する特性X線は強度が小さいとして、考慮に入れないこととする。以下、ステップをSと略す。演算部41がコンピュータプログラム441に従って情報処理を実行することにより、分析装置4は以下の処理を実行する。
分析装置4は、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルに基づいて、電極層123へ入射した放射線のスペクトルを計算する(S11)。S11では、例えば、演算部41は、(1)式において、生成した放射線のスペクトルに基づいた強度をI、電極層123へ入射した放射線の強度をI0 、電極層123の吸収係数をμ、電極層123の厚みをdとして、I0 を計算する。演算部41は、各エネルギーにおけるI0 を計算することにより、電極層123へ入射した放射線のスペクトルを計算する。
分析装置4は、酸化膜122へ入射した放射線のスペクトルを計算する(S12)。S12では、演算部41は、電極層123へ入射した放射線のスペクトルに基づいて、酸化膜122へ入射した放射線のスペクトルを計算する。例えば、演算部41は、(1)式において、電極層123へ入射した放射線のスペクトルに基づいた強度をI、酸化膜122へ入射した放射線の強度をI0 、酸化膜122の吸収係数をμ、酸化膜122の厚みをdとして、I0 を計算する。演算部41は、各エネルギーにおけるI0 を計算することにより、酸化膜122へ入射した放射線のスペクトルを計算する。
分析装置4は、遮光膜121へ入射した放射線のスペクトルを計算する(S13)。S13では、演算部41は、酸化膜122へ入射した放射線のスペクトルに基づいて、遮光膜121へ入射した放射線のスペクトルを計算する。例えば、演算部41は、(1)式において、酸化膜122へ入射した放射線のスペクトルに基づいた強度をI、遮光膜121へ入射した放射線の強度をI0 、遮光膜121の吸収係数をμ、遮光膜121の厚みをdとして、I0 を計算する。演算部41は、各エネルギーにおけるI0 を計算することにより、遮光膜121へ入射した放射線のスペクトルを計算する。S11~S13での表面層12の各層へ入射した放射線のスペクトルの計算は、各層について半導体部11から近い順番に実行される。
遮光膜121は、放射線が照射されることによって特性X線を発生させる。このため、酸化膜122へ入射した放射線には、遮光膜121で発生した特性X線が含まれる。S13で計算される放射線のスペクトルは、酸化膜122へ入射した特性X線を含む放射線のスペクトルに基づいて計算されるので、実際に遮光膜121へ入射した放射線のスペクトルとは異なり、特性X線に起因するピークが含まれている。前述したように、吸収端よりも高いエネルギーの放射線が物体に吸収された場合、吸収端よりも低いエネルギーの特性X線が発生する。このため、特性X線のエネルギーは、特性X線を発生させる放射線が吸収される吸収帯域よりも低い。特性X線に起因するピークは、吸収帯域には含まれない。従って、S13で計算される放射線のスペクトルの中の、吸収帯域でのスペクトルは、実際に遮光膜121へ入射した放射線のスペクトルに相当する。分析装置4は、S13では、吸収帯域でのスペクトルのみを計算してもよい。
分析装置4は、遮光膜121で発生した特性X線のスペクトルを計算する(S14)。S14では、演算部41は、遮光膜121へ入射した放射線の吸収帯域でのスペクトルと、遮光膜121での特性X線の発生特性と、遮光膜121の厚みとに基づいて、遮光膜121で発生した特性X線のスペクトルを計算する。特性X線の発生特性は、特性X線のエネルギーと、遮光膜121へ入射した放射線の吸収帯域での強度に応じた特性X線の強度とを示す。また、遮光膜121の厚みが大きいほど、遮光膜121中で放射線が透過する物質の量が大きくなり、発生する特性X線の強度は大きくなる。遮光膜121の厚みは、遮光膜121中で放射線が透過する物質の量に対応する。演算部41は、特性X線のエネルギーを特定し、特性X線の強度を計算することにより、特性X線のスペクトルを計算する。
分析装置4は、半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する(S15)。S15では、演算部41は、遮光膜121で発生した特性X線のスペクトルと、酸化膜122及び電極層123の吸収係数及び厚みと、補正係数とに基づいて、半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する。例えば、演算部41は、遮光膜121で発生した特性X線の強度をI0 、酸化膜122を透過して電極層123へ入射した特性X線の強度をIとし、酸化膜122の吸収係数及び厚みを用いて、電極層123へ入射した特性X線の強度を計算する。また、演算部41は、電極層123へ入射した特性X線の強度をI0 、電極層123を透過して半導体部11へ入射した特性X線の強度をIとし、電極層123の吸収係数及び厚みを用いて、半導体部11へ入射した特性X線の強度を計算する。酸化膜122及び電極層123の厚みが大きいほど、酸化膜122及び電極層123中で特性X線が透過する物質の量が大きくなり、半導体部11へ入射する特性X線の強度は低下する。酸化膜122及び電極層123の厚みは、酸化膜122及び電極層123中で特性X線が透過する物質の量に対応する。
更に、演算部41は、計算した特性X線の強度に補正係数を乗じることにより、半導体部11へ入射した特性X線の強度を補正する。補正係数を用いることにより、放射線検出器2の構成に応じて、半導体部11へ入射する特性X線の強度が補正される。補正係数を用いることにより、半導体部11へ入射した特性X線の強度を正確に計算することができる。また、補正係数を用いることにより、酸化膜122及び電極層123での特性X線の吸収と、放射線検出器2の構成による特性X線への影響とを分離することができる。例えば、放射線検出素子1が同一で、放射線検出器2の放射線検出素子1以外の部分が異なる放射線検出装置10でも、同一の透過割合と、放射線検出器2の構成に応じた補正係数とを用いて、半導体部11へ入射した特性X線の強度を計算することができる。
夫々のエネルギーに対応する特性X線の強度を補正することにより、演算部41は、半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する。半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルは、当該特性X線に起因するシステムピークに相当する。従って、分析装置4は、半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算することによって、システムピークを計算する。図10は、半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルの例を示すグラフである。図中の横軸は特性X線のエネルギーを示し、縦軸は特性X線の強度を示す。図10に示す特性X線のスペクトルは、当該特性X線に起因するシステムピークに相当する。
なお、分析装置4は、S14で、特性X線の強度に補正係数を乗じることにより、遮光膜121で発生した特性X線の強度を補正する処理を行ってもよい。分析装置4は、S15で、補正係数を用いて、遮光膜121で発生した特性X線の強度又は電極層123へ入射した特性X線の強度を補正してもよい。或いは、分析装置4は、S15では、補正係数を利用しない計算により、半導体部11へ入射した特性X線の強度を計算してもよい。例えば、特性X線の発生特性を、予め、放射線検出器2の構成による影響を盛り込んだ値に定めておき、演算部41は、この発生特性を用いた計算により、半導体部11へ入射した特性X線の強度を計算してもよい。
分析装置4は、計算したシステムピークを用いて、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルを補正する(S16)。S16では、演算部41は、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルからシステムピークを差し引くことにより、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルを補正する。演算部41は、補正した放射線のスペクトルを表すデータを記憶部44に記憶する。
図11は、補正された放射線のスペクトルを示すグラフである。図中の横軸は放射線のエネルギーを示し、縦軸は放射線の強度を示す。図6に示す如き補正前の放射線のスペクトルに比べて、図10に示す如き特性X線のスペククトルに相当するシステムピークが低減している。システムピークが低減しているので、補正後のスペクトルは、放射線検出器2へ入射した放射線のスペクトルに相当する。
分析装置4は、補正された放射線のスペクトルを表示する(S17)。S17では、演算部41は、表示部34に、補正された放射線のスペクトルを含んだ画像を表示する。使用者は、システムピークが低減した放射線のスペクトルを確認することができる。分析装置4は、補正前のスペクトルをも表示してもよい。例えば、演算部41は、補正前のスペクトルと補正されたスペクトルとを並べて示した画像を表示部34に表示してもよい。例えば、演算部41は、使用者が操作部45を操作することによって受け付けた指示に従って、補正前のスペクトルの表示と、補正されたスペクトルの表示とを交互に切り替える処理を行ってもよい。S17が終了した後は、分析装置4は、放射線のスペクトルを補正する情報処理を終了する。
図12は、分析装置4が実行する放射線のスペクトルを補正する情報処理の手順の第2の例を示すフローチャートである。第2の例では、システムピークの原因として遮光膜121からの特性X線と、酸化膜122からの特性X線とを扱う。演算部41がコンピュータプログラム441に従って情報処理を実行することにより、分析装置4は以下の処理を実行する。分析装置4は、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルに基づいて、電極層123へ入射した放射線のスペクトルを計算する(S201)。S201では、演算部41は、S11と同様に処理を行う。分析装置4は、酸化膜122へ入射した放射線のスペクトルを計算する(S202)。S202では、演算部41は、S12と同様に処理を行う。分析装置4は、S202では、吸収帯域でのスペクトルのみを計算してもよい。
分析装置4は、酸化膜122で発生した特性X線のスペクトルを計算する(S203)。S203では、演算部41は、酸化膜122へ入射した放射線の吸収帯域でのスペクトルと、酸化膜122での特性X線の発生特性と、酸化膜122の厚みとに基づいて、酸化膜122で発生した特性X線のスペクトルを計算する。演算部41は、特性X線のエネルギーを特定し、特性X線の強度を計算することにより、特性X線のスペクトルを計算する。
分析装置4は、酸化膜122で発生して半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する(S204)。S204では、演算部41は、酸化膜122で発生した特性X線のスペクトルと、電極層123の吸収係数及び厚みと、補正係数とに基づいて、半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する。例えば、演算部41は、酸化膜122で発生した特性X線の強度をI0 、電極層123を透過して半導体部11へ入射した特性X線の強度をIとし、電極層123の吸収係数及び厚みを用いて、半導体部11へ入射した特性X線の強度を計算する。更に、演算部41は、計算した特性X線の強度に補正係数を乗じることにより、半導体部11へ入射した特性X線の強度を補正する。夫々のエネルギーに対応する特性X線の強度を補正することにより、演算部41は、酸化膜122で発生して半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する。
分析装置4は、遮光膜121へ入射した放射線のスペクトルを計算する(S205)。S205では、演算部41は、S13と同様に処理を行う。分析装置4は、S205では、吸収帯域でのスペクトルのみを計算してもよい。分析装置4は、遮光膜121で発生した特性X線のスペクトルを計算する(S206)。S206では、演算部41は、S14と同様に処理を行う。分析装置4は、遮光膜121で発生して半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルを計算する(S207)。S207では、演算部41は、S13と同様に処理を行う。
分析装置4は、システムピークを計算する(S208)。S208では、演算部41は、酸化膜122で発生して半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルと、遮光膜121で発生して半導体部11へ入射した特性X線のスペクトルとを足し合わせることにより、システムピークを計算する。
分析装置4は、計算したシステムピークを用いて、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルを補正する(S209)。S209では、演算部41は、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルからシステムピークを差し引くことにより、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルを補正する。S208及びS209では、分析装置4は、酸化膜122からの特性X線のスペクトルと、遮光膜121からの特性X線のスペクトルとを足し合わせることなく、スペクトルを補正してもよい。この処理では、演算部41は、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルから、酸化膜122からの特性X線のスペクトルと、遮光膜121からの特性X線のスペクトルとを差し引くことにより、半導体部11へ入射した放射線のスペクトルを補正する。演算部41は、補正した放射線のスペクトルを表すデータを記憶部44に記憶する。
分析装置4は、補正された放射線のスペクトルを表示する(S210)。S210では、演算部41は、S17と同様に処理を行う。S210が終了した後は、分析装置4は、放射線のスペクトルを補正する情報処理を終了する。
S11~S17又はS201~S210の処理は随時実行される。例えば、分析装置4は、放射線のスペクトルを生成する都度、S11~S17又はS201~S210の処理を実行する。分析装置4は、使用者が操作部45を操作することによって補正の指示を受け付けた場合に、S11~S17又はS201~S210の処理を実行してもよい。分析装置4は、システムピークの原因として遮光膜121、酸化膜122及び電極層123からの特性X線を扱って、放射線のスペクトルを補正する情報処理を行ってもよい。分析装置4は、更に、補正された放射線のスペクトルに基づいた情報処理を行ってもよい。例えば、分析装置4は、補正された放射線のスペクトルに基づいて、試料52に含まれる元素の定性分析又は定量分析を行ってもよい。
以上詳述した如く、本実施形態においては、放射線検出器2は試料52から発生した放射線を検出し、分析装置4は、放射線のスペクトルを生成し、補正する。より詳しくは、分析装置4は、半導体部11へ入射した放射線の強度を計算し、表面層12の成分及び厚みに応じてシステムピークを計算し、放射線のスペクトルからシステムピークを差し引く。放射線のスペクトルからシステムピークが差し引かれることにより、システムピークが低減したスペクトルが得られる。表面層12の成分及び厚みに応じたシステムピークを計算することにより、適切な強度のシステムピークが得られる。このため、放射線のスペクトルから適切にシステムピークを低減させることができる。
システムピークが低減されることにより、放射線検出器2へ入射した放射線のスペクトルが得られる。使用者は、放射線検出器2へ入射した放射線のスペクトルを確認することができる。システムピークが低減されたスペクトルに基づいて、従来よりも精度の良い分析を行うことが可能となる。例えば、分析装置4は、試料52に含まれる元素の定性分析又は定量分析を高精度に行うことができる。
本実施形態では、放射線又は特性X線が遮光膜121、酸化膜122及び電極層123の各層を透過する物質の量に対応する値として、各層の厚みを用いる例を示した。放射線検出装置10は、S11~S17又はS201~S210の処理を実行する際に、放射線又は特性X線が各層を透過する物質の量に対応する値として、厚み以外の値を利用する形態であってもよい。例えば、放射線検出装置10は、放射線又は特性X線が各層を透過する物質の量に対応する値として、各層での放射線若しくは特性X線の経路に沿った物質の量そのもの、各層の密度、又は質量分率を用いて、S11~S17又はS201~S210の処理を実行してもよい。
本実施形態では、ハウジング25には窓材で塞がれていない開口部251が設けられており、開口部251を通過した放射線が検出される。検出される放射線は窓材を透過する必要が無いので、放射線検出装置10は、エネルギーが低いために窓材を透過することができない放射線を検出することができる。一方で、開口部251を通過して放射線検出器2の内部へ光が入射し易くなる。放射線検出素子1の内部へ光が入射してノイズが発生することを防止するために遮光膜121が必要となり、遮光膜121を原因とするシステムピークが発生する。本実施形態では、光によるノイズの発生を防止しながらも、情報処理によって、システムピークを低減させた放射線のスペクトルを得ることができる。
なお、本実施形態においては、表面層12が遮光膜121、酸化膜122及び電極層123からなる形態を示したが、表面層12は、より多くの層からなる形態であってもよい。放射線検出器2は、開口部251が設けられておらず、窓材を有する窓を備え、窓を透過した放射線を検出する形態であってもよい。放射線検出装置10は、半導体部11へ入射する前に放射線が透過する物体として表面層12以外の物体を扱う形態であってもよい。即ち、放射線検出装置10は、表面層12以外の物体から発生した特性X線に起因するシステムピークをも放射線のスペクトルから差し引く形態であってもよい。例えば、放射線検出装置10は、放射線検出器2が備える窓又はコリメータ22から発生した特性X線に起因するシステムピークを放射線のスペクトルから差し引く。この形態では、分析装置4は、表面層12に関する処理と同様の処理を行うことにより、窓又はコリメータ22からの特性X線に起因するシステムピークを、放射線のスペクトルから差し引くことができる。
本実施形態においては、放射線検出素子1を構成する半導体がSiである形態を示したが、放射線検出素子1はSi以外の半導体で構成された形態であってもよい。本実施形態においては、半導体部11がn型の半導体からなり、電極層123及び曲線状電極14がp型の半導体からなる形態を示したが、放射線検出素子1は、半導体部11がp型の半導体からなり、電極層123及び曲線状電極14がn型の半導体からなる形態であってもよい。本実施形態においては、放射線検出素子1がシリコンドリフト型放射線検出素子である形態を示したが、放射線検出素子1は、半導体製の素子であれば、シリコンドリフト型放射線検出素子以外の素子であってもよい。このため、放射線検出器2は、SDD以外の放射線検出器であってもよい。
本実施形態においては、放射線検出器2がコリメータ22を備える形態を示したが、放射線検出器2はコリメータ22を備えていない形態であってもよい。本実施形態においては、放射線検出素子1がハウジング25に収容されている形態を示したが、放射線検出器2は、ハウジング25を備えていない形態であってもよい。本実施形態においては、放射線検出装置10が照射部35及び試料台51を備えている形態を示したが、放射線検出装置10は、照射部35又は試料台51を備えていない形態であってもよい。本実施形態においては、放射線のスペクトルの横軸はエネルギーである例を示したが、放射線検出装置10は、波長又は波数等のエネルギー以外の値を横軸としたスペクトルを扱う形態であってもよい。
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。